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HANDEL
1729



 第一次のロイヤルアカデミーが座礁したとはいえ、ヘンデルのオペラへの意欲が衰えたわけではありません。彼は迅速に次の手を打ちます。
 1729年1月末に、ヘンデルはハイデッガーと国王劇場で5年間のオペラ活動の契約をします。2月にはヘンデルは新しい歌手の獲得のためロンドンを後にします。およそ五ヶ月の間イタリアやドイツの各地を回り、ヘンデルは7人の歌手と契約をします。第1次アカデミーの豪華キャストには及ぶべくもないのですが、ともかく新たなアカデミーを発進させることにはこぎつけたのです。


LOTARIO

HWV26
オペラ イタリア語
初演:1729年12月2日、ロンドン、ヘイマーケット国王劇場
台本:ジャコモ・ロッシ Giacomo Rossi
原作:ピエトロ・トッリ Pietro Torri 作曲のオペラ《アデライデ Adelaide》(1722年10月,ミュンヘン)のためのアントーニオ・サルヴィ Antonio Salvi による台本


作曲

(準備中)
 1729年11月16日に作曲終了の日付が記されています。


初演

 《ロターリオ》の初演は、1729年12月2日、ヘイマーケットの国王劇場で行われました。初演に出演した歌手は、以下のような人たちでした。

AdelaideAnna Maria Stradasoprano
LotarioAntonio Maria Bernacchialto castrato
BerengarioAnnibale Pio Fabritenore
IdelbertoFrancesca Bertollicontralto
MatildeAntonia Maria Merighicontralto
ClodomiroJohann Gottfried Riemschneiderbasso

 1730年2月13日までの間に9公演がありました。
 しかし、まだ《ロターリオ》の上演が続いている1730年1月17日から、同じ歌手による《ジューリオ・チェーザレ》の再演が始まって並行して上演されており、3月31日までに11公演があったことから、《ロターリオ》の人気は芳しくなかったと思われます。
(以下準備中)


史実の人々

 《ロターリオ》の登場人物のモデルについては、ロッシーニ《アデライデ・ディ・ボルゴーニャ》をご参照ください。
 ヘンデルのオペラの台本は、基本的にはドイツ王(後の神聖ローマ帝国皇帝)オットー1世が、ベレンガリオ2世に攻められたブルゴーニュ王女アデライデを救出するという史実に基づいています。
 しかし、ヘンデルのオペラでは一つややこしい変更があります。アデライデを救出するドイツ王の名が、オットーネ(=オットー)ではなく、ロターリオに変えられていることです。ロターリオは、アデライデの夫で、ベレンガーリオに殺害されたと噂されるイタリア王の名前です。つまり、「救出する英雄」の名前を「殺された人物」に置き換えてしまったのです。
 なぜこんな混乱の元になる変更をしたのかについては、ヘンデルが1723年に既に《オットーネ》という題名のオペラを作っていたからという意見もありますが、今一つはっきりしません。


あらすじ

登場人物

アデライデ イタリア女王
ロターリオ ドイツ王、アデライデを愛する
ベレンガーリオ スポレート公
イデルベルト ベレンガーリオの息子、アデライデを愛する
マティルデ ベレンガーリオの妻
クロドミーロ ベレンガーリオの将軍

 ボルゴーニャ伯ロドルフォの娘アデライデは、その美貌で広く知れ渡っていた。彼女はイタリア王と結婚したが、スポレート公ベレンガーリオが野心を燃やし、アデライデの夫を毒殺してしまった。さらに息子のイデルベルトをアデライデと結婚させようと企むが、アデライデがこれを拒んだため、ベレンガーリオはパヴィアのアデライデの居城を包囲。それを知ったドイツ王ロターリオが彼女を救いにアルプスを越えて行く。

第1幕
 パヴィア。ベレンガーリオが考え耽っている。彼の息子イデルベルトは、アデライデを愛しているが、思いを遂げられず悩んでいる。将軍クロドミーロがやって来て、ロターリオが大群を率いてアルプスを越えてきたと報告する。しかしマティルデは、既にパヴィア側に一部を賄賂で篭絡しているので、パヴィアを手中にするのも間近と述べる。ベレンガーリオはアデライデに使者を送っており、もし彼女がイデルベルトとの結婚を認めるのであれば、王国を返すが、そうでなければ報復すると伝えているのだった。イデルベルトは、なんとしてもアデライデの命は守らねばと誓う。
 王宮の謁見室。アデライデが状況を嘆いている。変装したロターリオがアデライデに謁見する。彼は自分がドイツ王であることを明かし、まだアデライデが結婚する前、彼女の父王の宮殿で彼女に会って恋に落ちたのだと明かす。彼女は、勝利した折には望みが叶えられましょうと答える。続いてクロドミーロが現れ、ベレンガーリオの要求を繰り返すが、アデライデはこれを拒否する。ロターリオが戻り、裏切り者がベレンガーリオに城門を開いたと伝える。死を覚悟するロターリオに対して、アデライデは戦うよう励ます。ロターリオは喜び、戦いへと向かう。
 町の凱旋門。ベレンガーリオたちが現れ、人々が歓呼する。不機嫌なアデライデに、ベレンガーリオは、希望するなら夫、王国、自由を与えようと言うが、アデライデの怒りをかき立てるだけである。そこにクロドミーロがやって来て、ロターリオがティチーノ川(パヴィアの脇を流れる)まで到達したと報告、男たちは迎撃に向かう。マティルデは高慢なアデライデに、鎖の抱擁を与えると言い放ち去って行く。アデライデは希望を捨てない。

第2幕
 郊外の平原。戦いの様子がシンフォニアで描かれている。戦いに敗れ逃走するベレンガーリオが絶望し自害しようとするが、ロターリオに捕らえられ、ベレンガーリオは武器を捨てる。勝利を収めたロターリオは、アデライデへの愛が彼の心を支配していることを感じる。
 牢。アデライデが嘆き悲しんでいる。クロドミーロがやって来て、一方に剣と毒、もう一方に王冠と笏を差し出し、どちらかを選ぶよう迫る。アデライデが剣と毒を選ぶので、クロドミーロは思い直すよう促す。アデライデが躊躇っている、マティルデが現れ、アデライデに毒を呷るよう急かす。アデライデがまさに毒を飲もうとしたその時、短剣を持ったイデルベルトが牢にやって来て、アデライデと共に死ぬと言い出す。なおもマティルデがアデライデに毒を飲むよう急かすと、イデルベルトは短剣を自分の胸に押し当てる。たまらずマティルデは二人を止める。するとクロドミーロが、ベレンガーリオが敵に捕らえられたことを報せる。マティルデはクロドミーロに対策を指示し、アデライデを鎖で繋ぎ、愛のことしか考えないふがいない息子に皮肉を言う。アデライデが、イデルベルトの気持ちに応えることが出来ないことを詫びると、彼は、ただアデライデを愛せれば満足なのだと答える。一人残ったアデライデは、ロターリオが救出に来ることを切望する。
 パヴィアの城壁。ロターリオは、愛の力で勇気が湧くと歌う。城壁の上に現れたマティルデに対して、ロターリオはアデライデの解放しなければ攻撃すると告げる。マティルデはアデライデを城壁に引き出し、ロターリオが撤退せねば彼女を殺すと脅す。怒ったロターリオはベレンガーリオを連れて来いと命じる。アデライデは、自分の危険など考えなくて良いとロターリオに語る。そこにイデルベルトが現れ、アデライデが解放されるまで自分が捕虜になると自らをロターリオに差し出す。マティルデは息子を裏切り者と詰る。アデライデは牢に戻される。ロターリオは引き出されたベレンガーリオをマティルデのもとに送り、アデライデと町を解放させるよう説得させようと考える。もしベレンガーリオが戻らなければ、イデルベルトが死ぬことになる。悪態をつきながらベレンガーリオはマティルデのもとへ向かう。ロターリオはイデルベルトを天幕の中に下げ、アデライデ救出を誓う。

第3幕
 武器の置かれた回廊。城内に入ったベレンガーリオとマティルデが、捕らわれのアデライデを呼び出し、ロターリオに自分たちの自由を保障する手紙を書くよう求める。しかしアデライデは、勝者に命令など出来ないとこれを断り、まず自分に王位を戻すことが先だと要求し、牢へ戻っていく。息子が心配になったベレンガーリオはロターリオのもとへと戻っていく。マティルデはまだ希望を捨てない。
 ロターリオの野営地。戻ったベレンガーリオから何も譲歩が得られなかったため、ロターリオは城壁の攻撃を命じる。城壁を破ると、その向こうにアデライデを連れたマティルデの姿が見える。ロターリオは攻撃を中止し、マティルデに対し、ベレンガーリオを連れてこさせ、もしアデライデを戦場から遠ざけなければ、ベレンガーリオもイデルベルトも失うことになると警告する。そしてロターリオはイデルベルゴを解放し、アデライデ解放に向かわせ、ベレンガーリオを天幕に連れ戻す。
 城壁傍の人気のない場所。クロドミーレがロターリオに出くわし、正体を明かさず、マティルデの敗北が近いことをほのめかす。伝令がロターリオに手紙を渡す。そこにはパヴィア市民がロターリオに服従するという報せだった。ロターリオは喜び、アデライデ救出を急ぐ。
 王宮の広間。剣を持ったマティルデの前をイデルベルゴが立ちふさがっている。マティルデは弱腰の息子をなじる。クロドミーレがマティルデに、パヴィアが陥落したことを報せる。マティルデはマティルデを殺すため連れてくるよう命じるが、彼女は既にイデルベルゴによって解放されていた。一人になったマティルデは、怒り心頭に発するものの、夫と息子への愛にも苦しむ。ロターリオが兵を連れて押し入り、彼女を捕らえる。マティルデは自害しようとするが、現れたベレンガーリオに、自殺は卑しい行為だと諭され、剣を落としてしまう。アデライデは、イダルベルトによって命を救われたこともあって、マティルデとベレンガーリオを許すようロターリオに願う。イデルベルトがベレンガーリオの後を継ぐことになる。アデライデとロターリオはやっと訪れた平和に満足する。一同の喜びで幕となる。


参考資料

Händel / Lotario / Klavierauszug nach dem Urtext der Hallischen Händel-Ausgabe / Bärenreiter-Verlag / BA4074A
Handel's operas 1726-1741 / Winton Dean / Boydell & Brewer Ltd / 2006 / ISBN 1843832682
Handel / Donald Burrows / Oxford University Press / 1994
ヘンデル 作曲家・人と作品シリーズ / 三沢寿喜 / 音楽之友社 / 2007 / ISBN 9784276221710
ヘンデル / クリストファー・ホグウッド / 三沢寿喜 訳 / 東京書籍 / 1991
ヘンデル 大音楽家人と作品 15 / 渡部恵一郎 / 音楽之友社 / 1966

Simone Kermes, Sara Mingardo, Steve Davislim, Hilary Summers, Sonia Prina, Vito Priante
Il Complesso Barocco
Alan Curtis
Salerno, 22-28 June 2004
deutsche harmonia mundi 82876-58797-2

歌手はいずれも適材適所。ことにケルメス、ミンガルド、プリーナが立派。
カーティスは、とりあえず破綻なく作品を纏めてはいますが、いつもながら温く緩い音楽。これだけ優れた歌手なら、もっと生き生きとした演奏ができたでしょうに。
英文対訳がどうも読みづらいと思ったら、1729年のロンドン初演の時の英訳をそのまま流用していました。えらい手抜きです。

Nuria Rial, Lawrence Zazzo, Andreas Karasiak, Annette Markert, Huub Claessens
Basle Baroque Chamber Orchestra
Paul Goodwin

OEHMS CLASSICS OC-902S

抜粋。




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Appendix 1 Appendix 2 Appendix 3


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