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HANDEL
1745




HERCULES

HWV 60
初演:1745年1月5日、ロンドン、ヘイマーケット国王劇場
台本:トーマス・ブロートン

作曲

 トーマス・ブロートンが台本を書いた。
 原作は、ソフォクレスの《トラキスの女たち》を中心に、オウィディウスの《変身物語》を加味。部分的には、シェイクスピアの影響も見られる。
 台本では、ハーキュリーズは実際には浮気しておらず、デジャナイラの思い込みに過ぎない。
 
 作曲は、1744年7月19日から8月17日までの一ヶ月弱。

初演

 初演は、1745年1月5日、ロンドンの国王劇場。12日にも再演された。

Hercules ... Henry Theodore Reinhold
Dejanira ... Robinson
Iole ... Elisabeth Duparc
Hyllus ... John Beard
Lichas ... Susanna Maria Cibber

 ひどい失敗。
 初日は、入りが悪かった上に、シバーが病気でほとんど歌えなかった。
 二日目は、シバーは回復したが、入りが初日以上に悪かった。

再演

1749年2月24日、ロンドン、コヴェントガーデン劇場
1回のみ。

1752年2月21日、ロンドン、コヴェントガーデン劇場
1回のみ。

音楽

《ハーキュリーズ》 音楽設計一覧

あらすじ

※登場人物は英語読みを原則とし、地名は一般的に用いられている読みを用います。

 ハーキュリーズ(ヘラクレス)は、デジャナイラ(デイアネイラ)と結婚して、息子ハイラス(ヒュロス)を得た。一家がトラキア(現在のブルガリアからトルコかけての地中海沿岸)に移住する際に、川を渡らなくてはならなかった。ハーキュリーズはハイラスを担いで渡った。デジャナイラは、渡守をしていたセントール(ケンタウロス 馬の首が人間の上半身になっている半人半獣の怪物)のネッサス(ネッソス)が担いだが、デジャナイラを襲ったので、怒ったハーキュリーズによって射殺された。ナッサスは死ぬ間際、デジャナイラに、自分の血は愛の薬になると伝えた。デジャナイラはナッサスの血に服を浸し、それを密かに保管しておいた。
 トラキアに居を構えた後、ハーキュリーズはオイカリアに戦いに出たまま音信不通になってしまう。

※ハーキュリーズが親から与えられた名は、オルサイディス Alcides(アルケイデス)。作品中でも度々この名で呼ばれています。

第1幕
 ハーキュリーズの伝令官でデジャナイラの従者であるライカス(リカス)は、デジャナイラを心配している。デジャナイラは、夫ハーキュリーズが戦いから戻らないので、深く悲しんでいる。ライカスは、すぐに帰って来るでしょうと慰めるが、デジャナイラの悲嘆は収まらない。息子のハイラスが、祭司の神託を語る。それによると、ハーキュリーズは既に死んでいるという。デジャナイラは絶望し、天国でハーキュリーズと再会することを夢見る。ハイラスは神託を信じず、父を捜しに世界中を旅しようと言う。人々は、父を思う息子の愛に感動する。
 すると、ハーキュリーズが帰還した報せが届き、デジャナイラは喜ぶ。ライカスは、捕虜たちの中に、美しい王女アイオル(イオレ)の姿を見つける。ハイラスは彼女の美しさに心惹かれる。デジャナイラはハーキュリーズを迎えに行く。ライカスは、デジャナイラが喜びを取り戻したことに安堵し、人々は諦めなければ天が運命を救ってくれると歌う。
 ハーキュリーズが凱旋する。彼は天に勝利を感謝し、アイオルにここでも自由にして良いと慰める。しかしアイオルは父を思い、嘆くばかり。ハーキュリーズは、これからは武器をおいて愛に生きようと宣言する。人々は祝う。

第2幕
 アイオルは、王女に生まれたが故の不幸を嘆き、田舎の娘の幸せを夢見る。デジャナイラが現れ、アイオルの美貌がヘラクレスの心を奪ってしまったと、彼女に嫉妬する。さらにデジャナイラは、ハーキュリーズがオイカリアを攻め落としたのも、アイオルをものにするだめだったとアイオルを罵る。アイオルはデジャナイラに、嫉妬は不幸を招くと警告する。ライカスは、ハーキュリーズが浮気をするとは信じられない。合唱が、デジャナイラを狂わせる嫉妬の恐ろしさを歌う。
 ハイラスはアイオルに愛を打ち明ける。しかし彼女は、祖国を滅ぼしたハーキュリーズの息子を愛することはできないと退け、ハーキュリーズの息子とは思えない気弱な愛を諦めるように諭す。しかしハイラスは恋を抑えられない。合唱が、愛の不可抗力を歌う
 デジャナイラはハーキュリーズに、オイカリアには勝利したが、今は敗者に落ちぶれた、と非難する。ハーキュリーズは、今の自分は栄光の頂点にあると反論する。デジャナイラは、捕らわれの娘が英雄を支配するとは、と嘆き、ハーキュリーズに武器を棄てて糸紡ぎでもしたらいい、となじる。ハーキュリーズは誤解を解こうと必死になるが、デジャナイラは夫への疑念を棄てられない。彼女は、ハーキュリーズかつて、彼女を裏切ったら陽が昇らなくなるだろう、と言ったことを思い出し、ハーキュリーズの悪事を暗闇に閉じ込めてしまえ、と呟く。ふと彼女は、ネッサスの血に浸した服を思い出す。彼女は、ハーキュリーズがそれを着れば、彼女への愛が蘇えると思っている。彼女はハイラスに、仲直りの印として、この服をハーキュリーズに持っていくように頼む。
 デジャナイラはアイオルに謝罪する。アイオルは神に感謝し、再び捕らわれの身を嘆く。デジャナイラはアイオルに、ハーキュリーズはいずれ祖国に帰ることを許してくれるでしょうと慰める。一人になると、デジャナイラはジュピター(ハーキュリーズの父でもある)に、服の効果が出るように祈る。合唱が、愛の神と婚礼の神を呼び寄せる。

第3幕
 ライカスが民衆に、ハーキュリーズの死を告げる。デジャナイラが送った服を着たハーキュリーズは、服に染み込んでいた毒がまわり亡くなったのだ。ライカスは嘆き、民衆は、暴君を痛めつけたハーキュリーズが亡くなったことで世が荒れることを憂れる。
 ジュピターの神殿。ハーキュリーズが悶え苦しんでいる。ハイラスは、ジュピターに救いを求める。ハーキュリーズは、デジャナイラの裏切りをなじる。そして息子ハイラスに、生きているうちに自分を火で焼いてほしいと願う。ハイラスは、オケリアにまでハーキュリーズの死が広まらないように祈る。
 デジャナイラは、ナッススの血の毒がもとでハーキュリーズを亡くしてしまったことで、錯乱している。彼女は、復讐の女神達に襲われる幻覚にとらわれる。現れたアイオルに、デジャナイラは食って掛かる。ハーキュリーズによって大きな不幸に落とされたアイオルだったが、この事件には同情している。
 祭司が現れ、火にかけられたハーキュリーズが、ジュピターに召し上げられたことを告げる。ハーキュリーズは神々の仲間を入りをしたのである。デジャナイラに、悲しみと喜びの感情が渦巻く。祭司はさらに、ジュピターが、アイオルとハイラスを結ぶよう命じたことを告げる。二人は喜びあう。祭司がハーキュリーズを讃え、民衆が唱和して幕となる。

Peter Kooij, Nicola Wemyss, Knut Schoch, Gerlinde Sämann, Franz Vitzthum, Liselotte Kuhn, Franz Schneider
Barockorchester Frankfurt, Junge Kantorei
Joachim Carlos Martini
Rheingau, 4 June 2006
NAXOS 8.557960-62

William Shimell, Joyce DiDonato, Toby Spence, Ingela Bohlin, Malena Ernman, Simon Kirkbride
Les Arts Florissants
William Christie
Luc Bondy
Paris, 22 December 2004
Bel Air Classiques BAC 013

パリのガルニエ宮で舞台上演されたもの。上演は、12月4,6,8,11,14,16,19,22,24,27日と行われました。

Gidon Saks, Anne Sofie von Otter, Richard Croft, Lynne Dawson, David Daniels
Les Musiciens du Louvre, Chœr des Musiciens du Louvre
Marc Minkowski
April 2000, Poissy
ARCHIV PRODUKTION UCCA-1026/8(Japanese Domestic)

ミンコウスキのヘンデルのCDの中では、《ジューリオ・チェーザレ》と共に、今一つの出来です。フォン・オッターのデジャナイラが明らかにミスキャスト。
第1幕のライカスのアリア The smiling hours of joyful train は、ダ・カーポ形式のうちAの部分のみ、さらに後奏12小節をカットして、次の合唱にすぐ続けています。
第1幕のアイオルのアリア Daughter of gods, bright liberty! とそれに先立つレシタティーヴ(始めの17小節をカット)は、ハーキュリーズのアリアの後、つまり幕切れ合唱の前に置かれています。
第2幕のライカスのアリア As stars, that rise and disappear は、本来の位置ではなく、第2幕のもう一つのアリア Constant lovers, never roving の場所に置かれています。Constant lovers, never roving はカット。
第2幕のアイオルのアリア Banish love from thy breast は、ダル・セーニョ形式のAの部分のみ。

John Tomlinson, Sarah Walker, Anthonyu Rolf Johnson, Catherine Denley
The English Baroque Soloists, The Monteverdi Choir
John Eliot Gardiner
August 1982, London
ARCHIV PRODUKTION 423 137-2


BELSHAZZAR

HWV 61
初演:1745年3月27日、ロンドン、ヘイマーケット国王劇場
台本:チャールズ・ジェネンズ
原作:『ダニエル書』など

Kenneth Tarver, Rosemary Joshua, Bejun Mehta, Kristina Hammärström, Neal Davies, Christina Sampson, Lucy Taylor, Andrew Radley, Richard Wilberforce, Vernon Kirk, Andrew Davies
RIAS Kammerchor, Akademie für Alte Musik Berlin
René Jacobs
Christof Nel, Roland Aeschlimann, Bettina Walter, Olaf Freese
July 2008, Aix-en-Provence
harmonia mundi HMD 9809028(Blu-Ray)

エクサンプロヴァンス音楽祭での舞台上演の収録。

Mark LeBrocq, Miriam Allan, Patrick van Goethem, Michael Chance, André Morsch
Hanoverian Court Orchestra, Maulbronn Chamber Choir
Jürgen Budday
Kloster Maulbronn, 25 & 26 September 2004
K&K VERLAGSANSTALT KuK67

Markus Brutscher, Simone Kermes, Christopher Robson, Patrick van Goethem, Franz-Josef Selig
Collegium Cartusianum, Kölner Kammerchor
Peter Neumann
Köln, 11 February 2001
MDG GOLD MDG 332 1079-02

Anthony Rolf Johnson, Arleen Auger, Catherine Robbin, James Bowman, David Wilson-Johnson, Nicolas Robertson, Richard Wistreich
The English Concert, Choir of The English Concert
Trevor Pinnock
London, July 1990
ARCHIV 431 793

丁寧ながら、メリハリのない演奏。
歌手ではボウマンがミステリアスな存在感を発揮しているほか概ね上々です。
第2幕の合唱 Oh glorious prince! は改訂後の拡大されたものを、また第3幕の二重唱 Great victor, at your feet I bow も改訂後のイ長調のものを、さらに第3幕幕切れ近くのサイラスのレチタティーヴォ・アッコンパニャート Yes, I will magnify thee は新たに作曲されたものを使用しています。

Robert Tear, Felicity Palmer, Maureen Lehane, Paul Esswood, Peter van der Bilt, Thomas Sunnegårdh, Staffan Sandlund
Concentus musicus Wien, Stockholm Kammerkören
Nikolaus Harnoncourt
Wien, 1976
TELDEC 0630-10275

アーノンクールにしてはおとなしい演奏です。エスウッドの柔らかい声とパルマーの表現力が光ります。




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1735 1736 1737 1738 1739
1740 1741 1742 1743 1744
1745 1746 1747 1748 1749
1750 1751 1752 1757
Appendix 1 Appendix 2


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