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HANDEL
1713



TESEO

HWV9
音楽のための悲劇 イタリア語
初演:1713年1月10日、ヘイマーケット女王劇場
台本:ニコラ・フランチェスコ・ハイム
原作:ジャン=バティスト・リュリ Jean-Baptiste Lully の《テゼ Théseé》(1675)のための、フィリップ・キノー Philippe Quinault による台本


《テゼオ》の作曲


《テゼオ》の初演

 初演は、1713年1月10日、ヘイマーケット女王劇場で行われました。

TeseoValeriano PellegriniSoprano castrato
AgileaFrancesca Margherita de l'E'pineSoprano
MedeaElisabetta Pilotti-SchiavonettiSoprano
EgeoValentino UrbaniAlto castrato
CliziaMaria GalliaSoprano
ArcaneJane BarbierContralto
Sacerdote di MinervaRichard LeveridgeBasso

 2月17日までに10公演があり、その後3月17日、4月18日、5月16日に3回、計13公演がありました。

 この公演の第2夜、大変な事件が巻き起こりました。劇場支配人のオーウェン・スウィニーが、売上金を持ち逃げしてしまったのです。歌手たちは止む無く自分たちの支出でオペラの上演を続け、売り上げを分配することにしたそうです。予定された公演は6回だったというので、残りの7回は、収益を上げるための意地の上演だったのかもしれません。


《テゼオ》のあらすじ

登場人物 (〔 〕内はギリシャ神話での名前表記)

テゼオ 〔テセウス〕 英雄
メデア 〔メディア〕 (コルキスの)王女
アジレア エジェオの庇護下にある王女
エジェオ 〔アイゲウス〕 アテナイの王
クリツィア アジレアの侍女
アルカーネ エジェオの部下
ミネルヴァの祭司

古代ギリシャ、アテナイ。

第1幕
 シンフォニアで戦いの様子が描かれている。ミネルヴァの神殿。王女アジレアは侍女クリツィアと戦いの行方を案じている。アジレアは英雄テゼオと愛し合う仲である。戦場から戻ったアルカーネは、激しい戦いがまだ続いていることを報告する。アジレアはテゼオを心配し、クリツィアに、アルカーネを戦場に向かわせテゼオを守らせるようにと告げ、自らは祈りを捧げに去っていく。アルカーネはクリツィアと愛し合っているが、クリツィアは、自分を愛しているのならテゼオ様を守りなさいと言うので、彼は嫉妬し気分を害してしまう。アルカーネは名残を惜しみつつ別れを告げ、戦場へ向かう。
 反乱を鎮めた国王エジェオは、アジレアに結婚を申し出る。彼女は、かつてエジェオが婚約したメデアが怒るのではないかと心配する。エジェオは気にかけず、勝利を喜ぶ民衆のもとへと向かう。思いがけない話にアジレアは戸惑うが、テゼオを愛する気持ちは変わらない。

第2幕
 エジェオの宮殿。メデアは、愛によって狂っていく自らの運命を嘆いている。エジェオは彼女に戦いへの協力を感謝する。そして、エジェオとの結婚に乗り気でないメデアに、自分の息子との結婚を勧める。メデアは、エジェオがアジレアを愛していることを見抜いており、また彼女自身テゼオを愛していることから、エジェオとの婚約には関心がない。二人はお互いに、相手に愛などなかったと皮肉りあう。アルカーネが、民衆がテゼオを次期国王に求めていると報告、エジェオは立腹する。
 アテネの広場。民衆がテゼオを讃え、彼はそれに礼を言いつつ、散会させる。メデアは、エジェオの怒りをだしにテゼオに揺さぶりをかけるが、彼は動じない。しかし、テゼオがアジレアへの愛を打ち明けるので、エジェアが彼女との結婚を望んでいることをメデアが告げると、テゼオも動揺してしまう。メデアは、自分がうまく解決すると約束するが、一人になると、嫉妬に苦悶する。

第3幕
 エジェオの宮殿。アルカーネはクリツィアに、国王が二人の結婚を許してくれたと告げ、二人は喜ぶ。一方、テゼオを待ちわびているアジレアのもとにもテゼオがやって来て、二人は再会を喜び合う。テゼオは改めてアジレアとの愛を貫く決意をする。メデアが現れ、アジレアと言い争いになる。テゼオへの愛を諦めようとしないアジレアに対し、メデアは呪文をかけ、舞台を荒れ地に変え、恐ろしい怪物たちを呼び出す。アルカーネが怪物に襲い掛かるが、剣を奪い取られてしまう。メデアの怒りの対象はアジレアだけなので、クリツィアとアルカーヌは逃がしてやる。そして悪霊を呼び出すと、恐怖に陥ったアジレアを連れ去っていく。

第4幕
 アルカーネはエジェオにメデアの悪事を報告、王は復讐を誓う。アジレアはメデアに捕らわれても、テゼオへの愛を諦めようとはしない。メデアは呪文を唱え、眠らせたテゼオを運び込ませる。そしてアジレアがテゼオを諦めねば、復讐の女神たちにテゼオを殺させると脅す。ついにアジレアは屈し、エジェオと結婚することを認める。舞台は魔法の島に変わる。目を覚ましたテゼオは、アジレアが目を背けていることに驚く。しかし、メデアが座を外した間に、アジレアは、テゼオを愛しているが、愛してはいけない状況になったことをほのめかし、涙する。その様子を見ていたメデアはテゼオに剣を返し、二人の結婚を認め、立ち去る。アジレアとテゼオは喜ぶ。

第5幕
 メデアの魔法の宮殿。メデアは嫉妬に狂っている。そしてエジェオに、テゼオを王にしたら、王の非嫡男が疎まられることになると説得し、テゼオを毒殺するよう唆す。テゼオとアジレアが国王の前に現れる。エジェオは、テゼオを後継者に指名し、毒の入った盃を渡す。テゼオがまさに飲まんとした時、エジェオはテゼオの剣に、自分の息子の印があるのを見つけ、間一髪で盃を払う。思わぬ事態にメデアは逃亡する。エジェオはアジレアを諦め、二人を結びつける。そこに、龍に引かれた車に乗ったメデアが空を飛び、復讐はまだ終わっていないと宮殿に火を放つ。そこにミネルヴァが降臨し、ミネルヴァの祭司の宣言で一瞬にして宮殿は再建、一同の喜びで幕となる。


《テゼオ》の音楽

 《テゼオ》は、いくつかの点でヘンデルのオペラでも非常に風変わりです。例えば5幕立てをとっていることや、アリアを歌った後退場するという当時のイタリアオペラの大原則があまり守られていないことが指摘できます。これは台本がリュリのトラジェディ・リリカ(当然キノが書いています)を翻訳したものだからです。音楽的にもヘンデルがフランスの音楽を意識したような部分がかなり指摘できます。こうした特異性のためか、ヘンデルの成功したオペラでは珍しいほど全く再演の機会なく今世紀まで埋もれていました。


参考資料

Franco Fagioli, Jutta Böhnert, Helene Schneiderman, Kai Wessel, Olga Polyakova, Matthias Rexroth, Mark Munkittrick
Staatsorchester Stuttgart
Konrad Jünghanel
Stuttgart, 2-14 May 2009
CARUS 83.437

Jacek Laszczkowski, Sharon Rostorf-Zamir, Maria Riccarda Wesseling, Miriam Meyer, Thomas Diestler, Martin Wölfel
Lautten Compagney Berlin, Chor der Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg
Wolfgang Katschner
Ptsdam, July 2004
Arthaus Musik 100709 (DVD NTSC)

Eirian James, Della Jones, Julia Gooding, Derek Lee Ragin, Catherine Napoli, Jeffrey Gall, Francois Bazola
Les Musiciens du Louvre
Marc Minkowski
Paris, January 1992
ERAT 2292-45806-2


リュリ《テゼ》のCD

Howard Crook, Ellen Hargis, Laura Pudwell, Harry Van der Kamp, Olivier Laquerre, Suzie LeBlanc, Yulia Van Doren, Teresa Wakim, Ilona Ziesemer-Schroder, Moritz von Cube, Mireille Lebel, Amanda Forsythe, Marc Molomot, Marek Rzepka, Aaron Engebreth, Aaron Sheehan
Boston Early Music Festival Orchestra, Boston Early Music Festival Choir
Paul O'Dette, Stephen Stubbs
Bremen, 8-9 September 2006
CPO 777240

原作になったリュリのオペラのCD。序幕がある以外は、あらすじもおおよそ同じです。


SILLA

移転。
ヘンデル《シッラ》へ。




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Appendix 1 Appendix 2 Appendix 3


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