HANDEL 1720 |
数年間のイタリアオペラの空白を埋めようと、1719年4月、ロンドンに常時イタリア・オペラを供給するためロイヤル・アカデミー・オヴ・ミュージックが設立されます。
キャノンズのシャンドス公爵の別荘にいたヘンデルも俄かに慌しくなります。彼はドレスデンなどいくつかの都市を旅し歌手と契約を済ますと、ロンドンで作曲に上演にと極めて多忙な活動を始めます。
この時期はヘンデルの創作意欲も高く、傑作が揃っています。
HWV12a
オペラ イタリア語
初演:1720年4月27日、ロンドン、ヘイマーケット国王劇場
台本:不明
1719年に設立されたロイヤル・アカデミー主催の初めてのオペラ公演は1720年4月2日でしたが、この時はヘンデルの作品ではありませんでした。ヘンデルは4月27日の「ラダミスト」まで待たなくてはなりませんでした。これは国王が臨席できる日に合わせたためです。
この《ラダミスト》は典型的な「暴君もの」です。
アルメニアの王ティリダーテは、トラキアの王子ラダミストの妻ゼノービア目当てにトラキアを攻撃、夫妻は逃げる途中自殺を図りますが、妻は川に身を投じ、夫は敵につかまってしまいます。彼の父も捕虜で、さらにティリダーテの妻はラダミストの妹、という複雑な状況が様々な感情状態を生み出しています。ラダミストが囚われの妻に近づくため使者に変装するというスリリングな(同時に滑稽でもあるのですが)場面もあります。
音楽的なクライマックスは、正体がばれてしまったラダミストがティリダーテを非難するアリアです。これはレチタティーヴォ・アッコンパニャートから激しいアリアに続くのですが、実に効果的でカッコイイ。当時のご婦人方が熱狂するのも当然です。
また大詰め、ティリダーテに抵抗をやめるよう詰め寄る四重唱(ヘンデルのオペラには珍しいです)。スター四人が同じ舞台上で歌い競う姿を想像するだけで、当時の大興奮が思い浮かべます。
4月の初演時にはまだイタリアからのスター歌手たちが到着しておらず、半分以上がイギリス人歌手たちで占められていました。それでも初演は大成功。彼は自分の音楽に大きな自信を持ったようです。
ロイヤル・アカデミーは順調な滑り出しを見せたのです。
Joyce DiDonato, Patrizia Ciofi, Maite Beaumont, Domenique Labelle, Laura Cherici, Zachary Stains, Carlo Lepore
Complesso Barocco
Alan Curtis
San Martino al Cimino, 14-26 September 2003
Virgin Classics 5456732
HWV12b
初演:1720年12月28日、ロンドン、ヘイマーケット国王劇場
台本:不明
1720年春に成功を収めた《ラダミスト》は、その年の暮れにイタリアからのスター歌手たちが到着したことで大幅に改訂されました。
例えば、声種は次のように変更されました。
ラダミスト | ソプラノ | → | アルト・カストラート |
ゼノービア | アルト | → | |
ティリダーテ | テノール | → | バス |
フラアルテ | ソプラノ・カストラート | → | ソプラノ |
Popken,Gondek,Saffer,Hanchard,Frimmer,Dean,Cavallier
Freiburger Barockorchester
McGegan
Gottingen,14-18 June 1993
HARMONIA MUNDI FRANCE HMU 907111.13