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ROSSINI
1819-2



LA GAZZA LADRA
Napoli, Teatro del Fondo, luglio 1819

初演:1819年7月15日、ナポリ、フォンド劇場

 1819年7月15日から、ナポリのフォンド劇場で《泥棒かささぎ》が上演されました。


NinettaIsabella Colbransoprano
PodestaAntonio Ambrosibasso
GiannettoGiovanni Davidtenore
FernandoAndrea Nozzaribasso
PippoRosmunda Pisaronimezzosoprano

 ニネッタは当然イザベッラ・コルブラン。ミラノ初演でポデスタを歌ったアントーニオ・アンブロージがこの上演の数ヶ月前にバルバイヤと契約、ナポリで歌うことになったため、アンブロージが初演と同じくポデスタを歌いました。ピッポはロズムンダ・ピサローニ。《リッチャルドとゾライデ》のゾミーラ、《エルミオーネ》のアンドローマカ、《湖の女》のマルコルムを創唱した名コントラルトです。

 公演は大成功を収め、ロッシーニも7月27日付けの母アンナへの手紙で「《泥棒かささぎ》は熱狂を巻き起こし、コルブランは圧倒的に良かった(superbmente bene)です。」と報告しています。

 この時の楽譜は残っていませんが、台本からほぼ再現が可能です。ロッシーニは二つのアリアを追加しています。

 この上演でピッポ役を歌ったロズムンダ・ピサローニ Rosmunda Pisaroni(1793−1872)は、ピッポのような役にはもったいないほどの名コントラルトでした。彼女に見せ場を作るため、ロッシーニはピッポ役を少し変えています。
 オリジナルではピッポは第1幕の導入から登場しますが、このナポリの上演ではここにピッポを登場させず(代わりにチェッコ Ceccoという召使いの役を登場させ、かささぎとやり取りさせています)、ジャンネットが帰還して乾杯するところで初めて舞台に出しています。そしてロッシーニは、オリジナルの乾杯の歌 Tocchiamo, beviamo a gara(N.5)を外し、代わりに、レチタティーヴォと、《デメトリオとポリビオ》第1幕のシヴェーノのアリア Pien di contento in seno を転用した新たなカヴァティーナ Beviam, tocchiamo a gala に替えています。
 このカヴァティーナは、元になった《デメトリオとポリビオ》の Pien di contento in seno と比べると、歌詞が全面的に新しくなっており、オーケストレーションが強化され、歌の一部がより華やかになっています。しかし音楽の概要はほとんど変わりません。ロッシーニが18歳頃に書いたと推測されている音楽ですから、《泥棒かささぎ》の他の音楽と比べるといくらか様式的に古めかしい印象はあります。しかし、オリジナルの素朴なピッポの乾杯の歌 Tocchiamo, beviamo a gara(N.5)と比べると、技巧のあるコントラルトの実力が発揮できる音楽になっています。

 このナポリの上演でフェルナンドを歌ったのは、なんとアンドレア・ノッツァーリでした。彼は《オテッロ》のタイトルロールを創唱した名テノールです。彼はテノールといってもバリテノール(基本がバリトンの音域で、高音域をファルセットーネで歌う)だったので、モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》のタイトルロールのようなバリトン役も歌っています。ここでもフェルナンドをバリトンとして歌っているのです。
 ミラノ初演でフェルナンドを歌ったフィリッポ・ガッリは完全なバッソでしたので、ノッツァーリのために音域を調整しなくてはなりませんでした。おそらく第2幕のフェルナンドのアリア Accusata di furto... oh rossore! がノッツァーリには全く合わなかったのでしょう、これを外して、その代わりとして、第1幕に新たなフェルナンドのアリアを加えました。正確には、第1幕のニネッタとフェルナンドの二重唱 Come frenar il pianto! を、その前のレチタティーヴォ共々外し、さらにそれに先立つレチタティーヴォ・セッコの途中から、レチタティーヴォとフェルナンドのアリア Barbara sorte! に差替えているのです。一方、削除された第2幕の Accusata di furto の前に置かれていたシェーナ(ルチアとのやり取り)はレチタティーヴォ・セッコに置き換えられました。


関連項目

《泥棒かささぎ》 初演稿
《泥棒かささぎ》 ペーザロ ヌオーヴォ劇場 1818年6月
《泥棒かささぎ》 ナポリ サンカルロ劇場 1820年8月

Marilyn Horne
Orchestra sinfonica di Torino della RAI
Alberto Zedda
Torino, 11, 12 Decenber 1982
FONIT CETRA CDC18

マリリン・ホーンの歌った、ロッシーニの差替えアリア集。差替えられたカヴァティーナ Beviam, tocchiamo a gala を収録しています。


LA DONNA DEL LAGO

移転。
《湖の美女》


BIANCA E FALLIERO

初演:1819年12月26日、ミラノ、スカラ座
台本作家:フェリーチェ・ロマーニ
原作:アントワーヌ・ヴァンサン・アルノ『ブランシュとモンカッサン』(1798)

 《ビアンカとファッリエーロ》はスカラ座への二年半ぶりの、そして最後の新作です。

あらすじ

第1幕
 サンマルコ大聖堂前の広場。
人々が、スペイン人たちによる陰謀にヴェネツィアが勝利したことを喜んでいる。長年の宿敵だった元老のコンタレーノとカペッリオは和解となった。カペッリオはコンタレーノの娘、ビアンカを愛していることを打明ける。勢いの落ちているコンタレーノは、娘がカペッリオと結婚することで一家に再び栄光が戻ると喜ぶ。ドージェ(ヴェネツィア共和国の統領)が現れ、一同はヴェネツィアを讃える。ドージェはコンタレーノに、許可なく外国の使節と接したものは死刑に処すという法律が可決したことを告げる。それを聞いたカペッリオは、もし自分が出席していたらそんな厳しすぎる法律には賛成しなかったろう、と異議を唱える。ドージェは、ヴェネツィアはまだ完全に平和を取り戻してはいない、いまだスペインに脅かされている、と答える。そして、若い将軍ファッリエーロが戦死した噂を心配して話す。しかし士官が、ファッリエーロが勝利を収め、無事帰還したことを報告し、一同は喜ぶ。
 ファッリエーロが凱旋する。彼はスペン人勢力に勝利を収めたことを報告する。武勇を讃えるドージェに対し、ヴェネツィアの息子として祖国のために戦ったことは当然である、答える。ファッリエーロを祝うため、一同は大聖堂へと向かう。
 コンタレーノの家。ビアンカは、愛するファッリエーロが無事に帰還したことを喜び、 侍女たちたちからもらった薔薇や百合の花に気持ちをなぞらえ、愛する人との再会を待ち望む。コスタンツァは、ファッリエーロはビアンカに求婚するつもりでしょう、と語る。しかしビアンカは、父コンタレーノが結婚に反対するのではないかと心配している。コンタレーノが戻り、娘にふさわしい花婿を見つけたと語る。ファッリエーロではと期待するビアンカ。しかし父の選んだ相手はカペッリオ。反抗するビアンカを、コンタレーノは叱りつけ、さらに泣きを入れるので、父に従順なビアンカは受入れざるを得ない。嘆くビアンカの元に、密かにファッリエーロが訪れる。しかし喜びの再会になるはずが、ビアンカは激しく動揺し、父がファッリエーロとの結婚を認めないことを打明け、ここにいてはいけないとファッリエーロを立ち去さらせる。ファッリエーロは事態を飲込めず、不安に駆られる。
 ビアンカとカペッリオの婚礼が催されている。花嫁姿のビアンカが打ちひしがれて現れる。カペッリオはビアンカの様子がおかしいことに気付くが、ビアンカは父のためと堪える。しかし結婚証明書に署名するに至って、ビアンカの動揺は激しくなる。そこにファッリエーロが押し入って来る。彼はビアンカに裏切られたと思っているのだ。そして、ビアンカと愛し合っており、彼女は自分のものだと宣告する。怒るコンタレーノ。激しい混乱で幕となる。

第2幕
 郊外のコンタレーノの館。夜。コスタンツァはこの館で、ビアンカとファッリエーロに最後の別れをさせようとしている。ビアンカは父が踏み込んでくることを心配しているが、コスタンツァは、ファッリエーロなら壁を越えて向こうに逃げることができるだろう、と彼女を安心させる。ファッリエーロが現れ、駆け落ちするか共に死のう、とビアンカに訴える。しかしビアンカは、どんなにファッリエーロを愛していても、名誉のため娘としての義務に背く訳にはいかない、と苦しむ。ファッリエーロも、自分の命も彼女の決断次第だ、と訴える。ファッリエーロの熱意に押され、ビアンカは駆落ちを決意する。二人が出かけようとした時、コスタンツァがコンタレーノが現れたことを告げる。実は壁の向こうはスペイン大使館。ビアンカは危険だと引き止めるが、ファッリエーロは壁を越えて逃げる。コンタレーノはビアンカに、改めてカペッリオとの婚礼を今すぐ執り行うと告げる。遅れてカペッリオも到着、しかしビアンカが未だ結婚に躊躇しているので、帰ろうとする。コンタレーノがそれを引き止め、娘を叱りつけていると、書記ピサーニが三頭会議への召集の令状を持ってくる。ファッリエーロがスペイン大使の敷地で捕まり、その裁きが行われることになったのだ。それを聞いたビアンカは絶望し、父にファッリエーロを助けてほしいと訴える。しかしコンタレーノは娘を部屋に閉じ込めてしまう。
 三頭会議の部屋。人々が、ファッリエーロが本当に裏切り者なのだろうか、と呟いている。ファッリエーロは、自分以上に、ビアンカを心配している。しかし、初期から彼を審判する三人のうち二人がコンタレーノとカペッリオと知り、ファッリエーロは希望を失う。書記は、カペッリオは寛大な人間だと慰め、さらに、コンタレーノも息子になる者の意見には耳を傾けるだろうと語る。ビアンカがカペッリオと結婚することを知り、ファッリエーロは死など小さな苦しみだと苦悩する。そして、若い盛りに栄光も幸せも、そして命までも失うことを嘆きつつ、それ以上にビアンカは大きなものを自分から奪った、彼女もいつかそれを後悔するだろう、と苦悶する。
 裁きが始まる。ファッリエーロは尋問に対して抗弁せず、判決書類に署名しようとする。そこに、ファッリエーロを弁護する、とヴェールをかぶった女性が登場、ビアンカである。追い返そうとするコンタレーノ。しかしカペッリオは、彼女の話を聞くことにする。ビアンカは事件の真相を明かし、ファッリエーロの無実を証明する。それを聞いたファッリエーロは、彼女の誠実な愛に喜び、自らも無罪を主張する。コンタレーノともう一人は判決書類に署名する。しかしカペッリオは署名を拒み、元老院で再度審議することになる。喜ぶビアンカとファッリエーロ。
 コンタレーノの家。カペッリオがビアンカを連れて来て、そのまま元老院へと向かう。ビアンカはファッリエーロの裁判の結果を心配する。すると、無罪を勝ち取ったファッリエーロがやってくる。ビアンカとファッリエーロは抱き合って喜ぶ。しかしコンタレーノは、尚も二人を引き離そうとする。ビアンカは、父の言葉は従わざるをえないと、一度は覚悟を決めるが、人々のビアンカへの同情とコンタレーノへの非難の声に強情な父親も折れる。ビアンカは皆に感謝し、一同の喜びの声で幕となる。

音楽

Maria Bayo, Daniela Barcellona, Francesco Meli, Carlo Lepore, Dario Benini, Ornella Bonomelli, Jiri Prudic, Karel Pajer, Stefan Cifolelli
Orquesta Sinfónica de Galicia, Coro da Camera di Praga
Renato Palumbo
Jean-Louis Martinoty
Pesaro, August 2005
DYNAMIC DVD33501

Maria Bayo, Daniela Barcellona, Francesco Meli, Carlo Lepore, Dario Benini, Ornella Bonomelli, Jiri Prudic, Karel Pajer, Stefan Cifolelli
Orquesta Sinfónica de Galicia, Coro da Camera di Praga
Renato Palumbo
Pesaro, August 2005
DYNAMIC CDS501

Majella Cullagh, Jennifer Larmore, Barry Banks, IIdebrando D'Arcangelo, Gabriella Colecchia, Simon Bailey, Ryland Davies
London Philharmonic, Geoffrey Mitchell Choir
David Parry
London, November 2000
OPERA RARA ORC 20

Ricciarelli,Horne,Merritt,Surjan
The London Sinfonietta Opera Orchestra
Renzetti
Pesaro,August 1986
OPERA RICORDI FONIT CETRA RFCD 2008




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