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最新更新 2024年08月10日
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GIOACHINO ROSSINI
BIANCA E FALLIERO
2幕のメロドランマ
Melodramma in due atti
初演 1819年12月26日 ミラノ スカラ座
First performance 26 December 1819, Milano, Teatro alla Scala
台本作家 フェリーチェ・ロマーニ
Librettist Felice Romani
原作 アントワーヌ・ヴァンサン・アルノ『ブランシュとモンカッサン』(1798)
Original
《ビアンカとファッリエーロ》は、ロッシーニがミラノのスカラ座のために書いた最後の新作オペラである。やや古めかしいオペラセリアの形態を取りながらも、1820年代のロッシーニを予感させる手の込んだ充実した音楽に満ちている。
作曲
ロッシーニとスカラ座の関係は不安定なものだった。スカラ座のために初めて提供した新作《試金石》 1812年9月26日 は大成功を収めた。しかしスカラ座への初のオペラセリアかつ初のカーニヴァルシーズンの開幕演目だった《パルミラのアウレリアーノ》 1813年12月26日 は、直前の《タンクレーディ》の大成功で期待が高過ぎたこともあって十分な成功は収められなかった。《イタリアのトルコ男》 1814年8月14日 も冷淡に受け止められた。こうしたことから、ロッシーニは次のスカラ座への新作《泥棒かささぎ》 1817年5月31日 では、準備に3か月もかけて大成功を収めた。
《泥棒かささぎ》初演時のスカラ座の興行主、アンジェロ・ペトラッキ Angelo Petracchi スカラ座興行主 1816―1820 は、1817年10月8日付の手紙でナポリのロッシーニに、翌年末のスカラ座への新作オペラを打診している。
私はあなたに1818/1819年のカーニヴァルシーズンの最初のオペラを 申し出ます。それは確実に 私があなたに申し出ることのできる 最も重要な、そして最も名誉あるものです。
Io vi offro la prim'Opera del Carnevale 1818. in 19. essa è certo la più importante, e la più onorevole ch'io possa offrirvi.
しかしロッシーニはこの手紙に返信しなかった。5か月経った1818年3月4日付で、ペトラッキは、先の手紙の写しと共に再度ロッシーニに手紙を送った。今度はロッシーニは返信をしたが、今のところこれは発見されていない。ただそれに対するペトラッキの1818年5月6日付でボローニャにいたロッシーニへの手紙によって、ロッシーニが3月16日付で(つまりペトラッキの2通目の手紙を受け取ってすぐに)ペトラッキに返信を出したこと、そしてロッシーニが、1818/1819年のカーニヴァルシーズンではなく、1年後の1819/1820年のカーニヴァルシーズンの開幕公演ならば引き受けるという内容だったことが察せられる。
題材は、フランスの作家アントワーヌ=ヴァンサン・アルノ Antoine-Vincent Arnault 1766―1834 の5幕の悲劇『ブランシュとモンカサン Blanche et Montcassin』 1798 パリ から取られた。
台本作家は、当時スカラ座で精力的に活動していたフェリーチェ・ロマーニ Felice Romani 1788―1865。ロッシーニのオペラでは、《パルミラのアウレリアーノ》 1813年12月26日、《イタリアのトルコ男》 1814年8月14(どちらもスカラ座で初演) の台本を書いていた。
ロマーニは、概ね原作に忠実に従ってオペラの台本を書いたが、幕切れだけはハッピーエンドに変えた。
原作では、カペロ(= オペラでのカペッリオ)の寛容でモンカサン(= ファッリエーロ)はお咎め無しとなるが、コンタリニ(= コンタレーノ)は彼の娘ブランシュ(= ビアンカ)とモンカサンが結ばれる前に、モンカサンを殺してしまった。
ミラノはナポリとはまた異なった検閲の厳しさがあり、主人公の死には神経を尖らせていた。例えば《ビアンカとファッリエーロ》から23年も経った1842年12月26日にカーニヴァルシーズン開幕公演として初演されたドニゼッティ《マリア・パディッラ》でも、タイトルロールの自殺が検閲から咎められ、喜びによって死に至る、という非常に奇妙な幕切れに改変させられてしまったほどである。アルノの原作の悲惨な幕切れが1819年のミラノでそのまま許されるはずがなかった。
さてロッシーニは1819年8月31日付でナポリからミラノのロマーニに手紙を送っている。
Il Sogetto mi piace La Tua Bell'anima troverà certamente di che pascersi da Bravo Offrirmi Tela che mi trovo buonai colori per Sporcarla.
私は題材を気に入った。君の素晴らしい魂は 疑いなく その題材を 見事に 糧にするだろう【≒ その題材から 素晴らしい台本を 作り上げることでしょう】私に キャンバスを 提供しなさい それに 私は 素敵な色を 見付けるだろう それを汚すために。
この手紙をロッシーニが書いていた頃、彼はたいへんな目に遭っていた。
《泥棒かささぎ》の時と同様、ロッシーニはスカラ座への新作には十分な時間をかけるつもりでいた。実際、1819年秋には彼はナポリの劇場へ新作オペラを書く予定はなかった。おそらくロッシーニは9月中か遅くとも10月初めにはミラノに到着するつもりだったろう。
この1819年秋、ナポリでは、パリで絶大な人気を誇ったガスパーレ・スポンティーニを招いて彼の新作オペラを上演する予定になっていた。ところがスポンティーニは、プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世 1770―1840 在位1797―1840 に乞われてベルリンの王立歌劇場(現在のベルリン国立歌劇場)の音楽総監督に就任することになり、ナポリとの契約を一方的に破棄してしまった(違約金はプロイセンから支払われたという)。その穴を埋めるべく、ロッシーニは急遽秋のシーズンのために新作オペラを描くことになった。これが《湖の美女》になる。《湖の美女》は、1819年10月24日、サン・カルロ劇場で初演された。
スカラ座でカーニヴァルシーズンの開幕公演、つまり12月26日に新作を初演するにはもうあまり時間がない。ロッシーニは《湖の美女》初日の翌日、10月25日にはナポリを出立し、ボローニャで家族と僅かな時間を過ごした後、すぐにミラノへと向かい、10月31日に到着した。
ミラノ入りしてからロッシーニが《ビアンカとファッリエーロ》を作曲する様子はほとんど伝わっていない。かろうじて11月10日付でボローニャの母アンナに宛てた手紙に簡単な報告が見られる。
私の新作オペラの台本は良質なものです、だから 私は 私に相応しい そして 私への関心で満たされている素晴らしいミラノ人たちに相応しい音楽に専念するために あらゆることをするつもりです。
Il Libro della Mia nuova Opera è buono, e farò tutto per aplicarvici una musica degna di me e de ' bravi milanesi che mi colmano di atenzioni.
前述の手紙からロッシーニは8月末にはナポリで《ビアンカとファッリエーロ》の台本を受け取っており、したがってナポリにいた時から《ビアンカとファッリエーロ》の作曲に取り掛かっていたと考えられている。しかしこの母への手紙では farò と単純未来形を使っていることからするに、実際にはナポリではそんな余裕はなく、ミラノでもこの時点では作曲はまだ本格的に始まっていなかったのかもしれない。
初演
初演は、1819年12月26日、ミラノのスカラ座で行われた。
Priuli (Doge)Alessandro De Angelibasso
ContarenoClaudio Bonolditenore
CapellioGiuseppe Fioravantibasso
LoredanoN. N.
FallieroCarolina Bassicontralto
BiancaViolante Camporesisoprano
CostanzaAdelaide Ghinzanisoprano
Un CancelliereFrancesco Antonio Biscottinitenore
ファッリエーロのカロリーナ・バッシ 1781―1862 は1820年代を中心にイタリアで活躍したコントラルト。ナポリの生まれ。1813年12月18日、ミラノのレ劇場 Teatro Re のこけら落とで上演された《タンクレーディ》のタイトルロールで大成功をおさめ、しマイヤベーア《正体が明かされたセミラーミデ》初演 1819年 トリノ でのセミラーミデ、メルカダンテ《スコットランド女王マリア・ストゥアルダ》初演 1821年 ボローニャ でのオルフレード などを歌った。
ヴィオランテ・カンポレージ 1785―1839 は、ローマ生まれのソプラノ。少女の頃から歌の才能は秀でていたが、若い頃はアマチュアの歌手だった。経済的事情でプロに転じ、そこからパリへ赴き、ナポレオンのお気に入り歌手だったカストラート、ジローラモ・クレシェンティーニ 1762―1846 の指導を受けた。彼女は断続的にミラノのスカラ座でプリマドンナとして活躍し、またロンドンでも人気を博した。ロッシーニのオペラの初演にかかわったのはこの《ビアンカとファッリエーロ》のビアンカだけだが、ミラノでもロンドンでもロッシーニのオペラのヒロインで活躍した。1829年に引退。
クラウディオ・ボノルディ 1783―1846は、1803年にトリノでデビューした後、1810年からミラノのスカラ座でブッファ、セリア両方で活躍する。ここで1812年、ロッシーニの第1出世作と言える《試金石》初演で騎士ジョコンドを歌う。ロッシーニのオペラの初演では他に、《シジスモンド》 1814、ヴェネツィア のラディスラオ、《アルミーダ》 1817、ナポリ のジェルナンドとウバルド、そしてこの《ビアンカとファッリエーロ》のコンタレーノを歌っている。晩年はミラノで歌唱指導者として活躍した。
ジュゼッペ・フィオラヴァンティは、父親が作曲家のヴァレンティーノ・フィオラヴァンティ Valentino Fioravanti 1764―1837(《村の歌い手》というオペラで知られている)、また弟のヴィンチェンツォ Vincenzo Fioravanti 1799―1877 もオペラ作曲家として名を成した、音楽一家の生まれ。ミラノのスカラ座やナポリの諸劇場で活躍、特に後者はドニゼッティのナポリ時代と重なったため、ドニゼッティのオペラの初演に多く出演した。ロッシーニのオペラの初演では、この《ビアンカとファッリエーロ》のカペッリオ。《マティルデ・シャブラン》 1821、ローマ のアリプランドを歌った。
《ビアンカとファッリエーロ》の初演は、新聞評は良くなかった。
1819年12月29日付のミラノの新聞、ミラノの新聞 Gazzetta di Milano紙 の公演評は長ったらしいものだが、その中から要点だけ抜き取ってみる。
私の考えでは、この新作の音楽は、主に3つの欠点によって批判されるべきである。第一の欠点は 想像力豊かな楽想と 独創的な旋律が不足していることによる。ロッシーニのいつもの作品では それらはとても豊かであるのだが。第2の欠点は 歌において装飾を濫用していることにある。それは 真の感情表現を 妨げている。第3の欠点は、音楽のフレーズの過度の繰り返しと、オペラセリアの領域に喜劇的性格を持つモティーフを頻繁に応用することに認められる。登場人物たちは 強い激情に 掻き乱されて、ゴルゲッジョ【注1】から、ヴォラータ【注2】から、母音唱法から 立ち止まることがない! このことは 感情を描いたり 感情を呼び覚ますのに 適切な歌の様式ではないというのみならず、その調子でずっと続いたら、人間の心は 長くは 持ち堪えられないだろうと 私は 思う。私の見解では、この新作オペラが それに 熱狂を持って 喝采を送るつもりだった観客から、そして この名高い作曲家が あらゆる楽譜において 以前用いられたのと同じ主題を繰り返すという汚名からも雪がれるのを見ようと期待していた観客から、冷淡に迎えられたのは、ここに主な理由がある。[…]【ファッリエーロ役の】バッシのいくつかのレチタティーヴォ、二重唱と四重唱は この作品の他の部分よりも 際立っており、そこに 作者の天才が 認められ、特に 大いに喝采を受けた四重唱は素晴らしい仕上がりである、とはいえストレッタは他の部分と釣り合わなかったが。[…]ロッシーニは、何度となく オペラで勝利を誇って来たが、今回初めて彼の星が陰ったのを見た、とはいえ星の光が消えたわけではないが。
Di tre difetti principali, a parer mio, accagionar si debbe questa nuova musica; il primo consiste nella penuria di pensieri immaginosi e di melodie originali, di cui Rossini suol essere sì ricco ne' suoi componimenti; il secondo sta nell'abuso dei frastagli del canto, che esclude la vera espressione dell'affetto; il terzo si riconosce nelle soverchie ripetizioni delle frasi musicali, e nella frequente applicazione al genere serio di motivi che hanno un carattere buffo. I personaggi sono agitati da forti passioni, e non ristanno dai gorgheggi, dalle volate, dai vocalizzamenti! oltrecché non è questo il genere di canto, proprio a dipingere e a destare gli affetti; se si andasse troppo innanzi di tal passo; dubito assai che umani petti potessero resistere a lungo. Ecco i principali motivi per cui, secondo me, la nuova opera fu accolta freddamente da un pubblico ch'era si disposto ad applaudirla con trasporto, e che s'aspettava di vedere il celebre compositore lavato perfino dalla macchia di riprodurre in ogni spartito quei pensieri medesimi di cui erasi preventivamente giovato. [...] Qualche recitativo della Bassi, un duetto e un quartetto emergono dal resto della composizione, e vi si riconosce l'ingegno dello scrittore; il quartetto principalmente fu applauditissimo ed è di bella fattura, se non che la stretta non fu trovata corrispondente al resto; [...] Rossini, avvezzo da tanto tempo a contare colle opere i trionfi, ha veduto per la prima volta impallidir la sua stella, ma non eclissarsi.
注1 1つの母音を素早く装飾的に歌うこと。
注2 音階的な音型を素早く繰り返すこと。
第2、第3の欠点については、要するに、装飾歌唱も含めて音楽が強過ぎる、と言っている。これについては ⇒ 音楽 でも触れる。
1820年1月4日付の 劇場について論じられた小新聞 Giornaletto Ragionato Teatrale 紙の論調もこれに近い。
ロマーニ氏の劇で、ロッシーニ氏によって音楽が付けられた《ビアンカとファッリエーロ》について、いくつかのレチタティーヴォ、二重唱、し重唱は喝采を受けたが、残りのすべては 気に入られなかった。このマエストロの流儀に好意的な人たちも好意的でない人たちも、彼の音楽の不幸な結果についてのお喋りで持ち切りだった、たとえ上演では カンポレージ夫人、バッシ夫人 そしてベノルド氏によってよく支えられたにしても。
Di Bianca e Faliero, melodramma del sig. Romani, posto in musica dal sig. Rossini, furono applauditi alcuni recitativi, un duetto, un quartetto, e tutto il resto non piacque. Gli amici ed i nemici dello stile di questo maestro fecero a gara nel cianciare su la infelice riuscita della sua musica, quantunque nell'esecuzione ben sostenuta dal valore delle signore Camporesi e Bassi e del signor Bonoldi.
新聞評が厳しかった一方で、《ビアンカとファッリエーロ》は2月13日までに39回の公演が催された。1819/20年カーニヴァルシーズンは1820年2月15日までで(2月16日が灰の水曜日でここから四旬節)、そのギリギリまで上演されたことが分かる。上演数の上では大成功である。
一見矛盾しているようだが、しかし十分あり得ることだ。ロッシーニは予定より1か月程度遅れてミラノ入りし、初日まで時間が迫っていたにもかかわらず、非常に手の込んだ難しい音楽を書いた。当然書き上げたのは初日の直前だろう。となると、歌手たちが準備不足のまま初日を迎えることはいかんともしがたい。その結果、初日の新聞評は芳しくなかったのだろう。しかし上演を重ねるにつれて歌手たちも至難な音楽をこなし、上演の評判も高まった、ということだろう。
初演後
近代の上演
《ビアンカとファッリエーロ》は、ロッシーニのナポリ外のオペラセリアとしては比較的早くに復活したが、しかしその後の上演は散発的である。
近代蘇演は1986年のロッシーニ・オペラ・フェスティバルでの公演。上演記録。公演は8月23、29日、9月1、4日に、アウディトリウム・ペドロッティ(ペーザロ音楽院のホール)で催された。出演者などはリンク先を。
マリリン・ホーン、カーティア・リッチャレッリ、クリス・メリット、ジョルジョ・スルヤンと名歌手を集めた上演は大成功を収め、《ビアンカとファッリエーロ》がロッシーニの隠れた名作であることを知らしめた。一方でファッリエーロ役がロッシーニメッゾにとって最大難易度の過酷な役であることも証明してしまった。ライヴ録音がCDで発売され、また YouTube には全曲映像が上がっているのだが、ホーンですらファッリエーロ役にはかなり苦労しており、第2幕の大アリアは全体を全音下げて歌わざるをえなかった。
翌1987年、米国フロリダ州マイアミの大マイアミ歌劇場 Greater Miami Opera(現在のフロリダ大歌劇場 Florida Grand Opera の前身の一つ)で《ビアンカとファッリエーロ》は米国初演された。1987年8月2日付のロサンゼルス・タイムスの公演案内によると、公演は12月で、ビアンカがジャンナ・ロランディ Gianna Rolandi、ファッリエーロがキャスリーン・クールマン Kathleen Kuhlmann、指揮がウィリー・アンソニー・ウォーターズ Willie Anthony Waters、演出がフランチェスカ・ザンベッロ Francesca Zambello とある。インターネット上を探せば全出演者の名前も出て来るが、信頼度に疑問があるのでここには載せない。全曲の音声がYouTubeに上がっている。第2幕の大アリアでクールマンは Contaren! son perduto. から後を全音下げて歌っているが、ここに限らずファッリエーロを大変立派に歌っている。
ROFでは1989年に再演があった。上演記録。ファッリエーロはフランス人メッゾソプラノ、マルティヌ・デュピュイ。彼女はは高音に余裕のあるメッゾで、大アリアは原調で歌った。しかしそれを除くとファッリエーロにはかなり力不足で、なんとか歌えたという程度だった。
ROFでは次の《ビアンカとファッリエーロ》は16年後になる。
2000年11月、OPERA RARAがCD用に録音。⇒ 参考資料。今のところこの作品の唯一のセッション録音。
1999年、ROFで上演された《タンクレーディ》でタイトルロールを歌ったダニエラ・バルチェッローナが男装役を得意とするロッシーニメッゾソプラノとして一躍脚光を浴びた。彼女は翌2000年、ROFでの Ah! Qual notte と題された演奏会に出演、《ビアンカとファッリエーロ》第2幕のファッリエーロの大アリアを歌って大喝采を得た。これによってバルチェッローナがファッリエーロを歌う全曲上演への期待が高まった。
これが実現したのは2005年8月8、11、14、17、20日、ペーザロのロッシーニ劇場。この公演は大きな話題となり、映像収録もなされたが(⇒ 参考資料)、上演は大成功までには至らなかった。バルチェッローナは声も容姿もファッリエーロに打って付けだったが、スタミナ的には余裕はなく、込み入った装飾歌唱をいくらか端折っており、また第2幕の大アリアは最後の Allegro vivace だけ全音下げている。この上演ではむしろそれまであまり目立つ活躍のなかったフランチェスコ・メーリの集中力のあるコンタレーノが絶賛された。
このプロダクションは再演されることなく、ROFでの次の《ビアンカとファッリエーロ》の上演は19年後のことになる。
2008年4月には、米国のワシントン・コンサート・オペラ Washington Concert Opera が《ビアンカとファッリエーロ》を演奏会形式上演したことは同団の過去の上演一覧から分かるが、同団のサイトには出演者などの情報はない。いくつかのインターネット上の情報を寄せ集めると、公演は2008年4月13日、プリウリ(ドージェ)がリアン・モラン Liam Moran、カペッリオはダニール・モブズ Daniel Mobbs(急な代役だったらしい)、コンタレーノはチャールズ・ワークマン Charles Workman、ファッリエーロはヴィヴィカ・ジュノー Vivica Genaux、ビアンカはアンナ・クリスティ Anna Christy、コスタンツァはカイル・エングラー Kyle Engler、書記官はパトリック・トーミー Patrick Toomey、役人はピーター・バローズ Peter Burroughs、職員はティム・オーガスティン Tim Augustin、指揮は同団音楽監督のアンソニー・ウォーカー Antony Walker。ジュノーは第2幕のファッリエーロの大アリアを原調で歌った。
2020年4、5月、ドイツのフランクフルト歌劇場が《ビアンカとファッリエーロ》を新制作上演する(初日は4月5日)予定だったが、新型ウィルス禍によって中止となった。フランクフルトと提携したオーストリア、エルルのチロル夏音楽祭 Tiroler Festspiele Erk Sommer での上演(7月11、17、19日に予定された)も中止になった。
このプロダクションは2022年2月にようやく上演された。上演記録は既に公式サイトになく、Opera Onlineの記録によると、公演は2022年2月20、25、27日、3月3、5、11、17、19、26日に催された。出演者は、プリウリ(ドージェ)がボジダル・スミリャニチ Božidar Smiljanić、カペッリオがセオ・リボウ Theo Lebow(米国人)、ファッリエーロだけダブルで マリア・シェレンベルク Maria Schellenberg とベス・テイラー Beth Taylor、ビアンカがヘザ・フィリップス Heather Phillips、書記官、役人、職員はカルロス・アンドレス・カルデナス Carlos Andrés Cárdenas。なおコスタンツァは演出で削除されたという。指揮はジュリアーノ・カレッラ Giuliano Carella、演出はティルマン・ケーラー Tilmann Köhler。
これを受けてチロル夏音楽祭では、同年7月20、24、28日に上演された。ファッリエーロがマリア・オストロウホヴァ Maria Ostroukhova / Мария Остроухова、カペッリオがジョヴァンニ・バッティスタ・パローディ Giovanni Battista Parodi、指揮者がシモーネ・ディ・フェリーチェ Simone Di Felice に代わった他はフランクフルトでの公演と同じ。
フランクフルト歌劇場ではさらに2025年5、6月の再演が予告されている。
更生
※普請中※
音楽
総論
《ビアンカとファッリエーロ》の総譜を見ると、場所によっては譜面が非常に込み入っていることに驚かされる。オーケストラの編成はほぼ2管編成でそれほど大きいわけではないが、各パートに与えられた音楽はナポリ時代のオペラセリに比べても細かく密である。ロッシーニがスカラ座の優秀なオーケストラを最大限活用使用としたのは疑いない。当時のスカラ座のオーケストラは、コンサートマスター(兼指揮者)のアレッサンドロ・ロッラ(1757―1841 スカラ座コンサートマスター 1802―1833 パガニーニの師匠として知られる)の下でたいへんに充実していた。
同様に歌に関しても非常に要求が高い。ビアンカもファッリエーロもコンタレーノも、音域も装飾歌唱の技術も極めて高度な要求がなされている。ことにファッリエーロは第2幕の大アリアの長丁場の終わり近くに2回高いハ音が与えられており、そのままでは一般的なコントラルトでは太刀打ちできない。後述のように現代においてもこの大アリアは全体もしくは部分的に音を下げて歌うことが普通になっている。なおカペッリオの音楽だけは、初演で歌ったジュゼッペ・フィオラヴァンティがまだ若かったことから難易度はあまり高くない。
手応えの大きな傑作であるにも関わらず、《ビアンカとファッリエーロ》が、ロッシーの時代にも現代でも、上演が盛んにならないのは、ひとえに歌手の負担が大きいことによる。
序曲
序奏+三部構成の主部 からなる序曲。
序奏はA / B / A' の三部構成、87小節と長い。Aは後に《コリントスの包囲》の序曲に更生されてそちらで良く知られている。力強く勇ましい音楽。Bは《リッチャルドとゾライデ》序曲の Largo の更生。この序奏はAとBの対比が強い。
主部は一応三部構成 としたが、実際にはソナタ形式に基づいている。ただし展開部がない(これはオペラの序曲ではむしろ一般的)上に、第2主題もまったくない。第2主題を完全に欠いたソナタ形式をソナタ形式と呼べるのか、という点から主部は三部構成とした。主部の(第1)主題はいたって簡潔であり、結果的にコデッタが目立っている。コデッタは《エルミオーネ》の序曲のコデッタの更生で、これ自体第2幕のグラン・シェーナに由来している。全体として主部は緊張感に満ちた充実した音楽である。
第1幕
第1番 導入 は、開幕の合唱+コンタレーノとカペッリオを中心としたアンサンブルから成っている。
アンサンブルは緩(カンタービレ) Andante mosso 12/8 変ホ長調 と 急(カバレッタ) Stretta Allegro 4/4 ト長調 の二部構成。緩 Andante mosso では 12/8 の調子のよい音楽に乗ってヴェネツィアの勝利の喜びと解放感が表されている。しかしここに、変ホ音、変イ音、変ハ音、ニ音 (A♭マイナーの和音+根音-5度)とナチュラルのホ音(しかも十六分音符で刻まれる)の強烈な不協和音が挟まれ、それが4回もある。
ストレッタである 急 Allegro の音楽は、合唱、独唱とも、冒頭曲の末尾とは思えないほど手が込んでいる。とりわけコンタレーノはアリア並みに動きの激しい音楽で、金持ちのカペッリオが娘に求愛した喜びを爆発させている。
第2番 合唱とファッリエーロのカヴァティーナは、合唱+レチタティーヴォ+ファッリエーロのカヴァティーナ から成っている。
合唱 Allegro giusto 4/4 ハ長調 Viva Fallier, は、救国の英雄の凱旋を歓迎する人々の喜びに溢れた、躍動感のある音楽。
ファッリエーロのカヴァティーナは、緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ) の二部構成のアリア。緩(カンタービレ) Maestoso 4/4 ハ長調 は、伴奏は簡素にして、ファッリエーロにたっぷり装飾歌唱を与えている。一方 急 Allegro 4/4 ハ長調 Il ciel custode di queste mura では若き英雄の力強さが描かれている。とはいえここでも既に部分的には込み入った装飾歌唱が用いられている。このカヴァティーナは演奏会で取り上げられることもあるような素敵なアリアだが、《ビアンカとファッリエーロ》の中では比較的定型的なものである。
第3番 合唱とビアンカのカヴァティーナは、合唱+レチタティーヴォ+カヴァティーナ から成る。
合唱 Andantino 6/8 ホ長調 Negli orti di Flora, はたいへん優美な女声合唱で、ビアンカの善良差を予告している。
カヴァティーナは、緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ) の二部構成のアリア。緩(カンタービレ) Andantino 6/8 イ長調 Della rosa il bel vermiglio は、ファッリエーロに渡す花束の花に思いを託すビアンカの喜びが簡素で落ち着いた音楽で描かれている(しかしこれも一部の装飾歌唱は非常に込んでいる)。テンポ・ディ・メッゾ無しで急(カバレッタ)に続く。ここでも歌の動機は分かりやすいもので、それが何度も繰り返される。曲尾の前に3小節の込み入った装飾歌唱が2回現れる。
第4番 レチタティーヴォとコンタレーノのアリアで、このオペラの雰囲気が大きく変わる。ファッリエーロのカヴァティーナもビアンカのカヴァティーナも優れた曲ながらあくまで穏当な性格の音楽だったのに対し、ここではコンタレーノの異常な父性が音楽にも露わになっている。
まずレチタティーヴォ・セッコでビアンカがファッリエーロを愛していることを明かしてしまう。続くレチタティーヴォ Allegro 4/4 (C major)はコンタレーノの怒りの爆発で始まる。
アリアは 急 / 緩 / 急の三部構成。急 Allegro 4/4 変ホ長調 Pensa che omai resistere では、コンタレーノの上下に激しく動く装飾歌唱が彼の苛立ちを表し、また伴奏に随所に不協和音が配されている。緩 Andantino 3/4 変イ長調 Figlia mia, se forza al core でコンタレーノは泣き落としにかかる。切々とした訴えかけのようではあるが、終盤にフルートとクラリネットによる半音階的な下行音型が2回現れ、コンタレーノの内心をうかがわせるかのようである。経過句でビアンカは父の意向に屈し、急 Allegro 2/2 変ホ長調 Il piacer di mia ventura, では、コンタレーノは喜びの余り喘ぐがんばかりになる。
一家、一族の事情で娘に望まぬ結婚を押し付けるという点で、コンタレーノは《タンクレーディ》のアルジーリオや《オテッロ》のエルミーロ、《湖の美女》のドゥグラスと同様な役回りであるが、彼らに比べると遥かに利己的で、娘に対して高圧的であるのみならず、奸邪ですらある。ロッシーニはコンタレーノの性格を急 / 緩 / 急の三部分の変化の大きさで強く描いている。
第5番 レティタティーヴォと二重唱 は第1幕の要の曲である。
二重唱は 急 / 緩 / 急の三部構成。急 Allegro 4/4 イ長調 は、先行するビアンカの旋律をファッリエーロが概ね4度下で歌い、この箇所の最後まで二人の心情の差として表れている。緩 Andante 4/4 ホ長調 と 急 Allegro 4/4 イ長調 Ah! dopo cotanto はどちらも大変美しいのみならず、幸福を目の前にして予期せぬ障害に傷つく若者の心情を繊細に情感豊かに描いている。
第6番 合唱、と第1幕フィナーレ は、10近い部分からなる大規模なフィナーレ、しかも極めて手が込んでいる。大雑把に言って、合唱+シェーナ+三重唱+シェーナ+コンチェルタート(四重唱と合唱)+シェーナ+ストレッタ という作り。
実質の三重唱 Andantino 6/8 ヘ長調 Bianca, alla mia ventura は、同様の音楽を カペッリオ → ビアンカ と受け継ぐところまでは定型に則っているが、カペッリオがビアンカの様子がおかしいことに気付いて以降、三者の絡みが立体的になり、三者三様の感情に奥行きが生まれている。
コンチェルタート Andante maestoso 2/4 変イ長調 Importuno!... in qual momento は手堅くも緻密に作られおり、様々な感情が渦巻きつつ一体となってじっくりとした音楽を聞かせる。
ストレッタ Veloce 2/2 ハ長調 Flutti irati e resistenti は、ロッシーニが書いた第1幕フィナーレのストレッタの中でも特に充実した音楽だろう。音楽を聞きながら総譜を追いかけるのが容易でないほど音楽は速く激しく、しかも最後に Pi&ugarve; mosso でもう一段加速する。もしこのストレッタがキチッと正確に演奏できたのなら、初演の新聞評で褒められないはずがないだろう。
第2幕
第7番 レチタティーヴォと小二重唱もたいへん美しい曲だ。小二重唱は速度、拍子、調性の変わらない単一構成だが、しかし緩やかに 前半 / テンポ・ディ・メッゾ / 後半 の3つの部分に分かれているように感じられる。ビアンカが駆け落ちを決意した後の Questo istante, mia speranza, は簡素な伴奏と滑らかな歌の絡みによって陶酔的に美しい。ただ、終盤に唐突に2度ぶつけられるフルート、クラリネット、第1ヴァイオリンによる音楽は、二人の胸の高鳴りを描いているのか、それとも二人の駆け落ちを批判しているのか。
第8番 シェーナと二重唱 は、第2幕の転換点で、再びドラマが大きく動く。二重唱は急 / 緩 / 急 の三部構成だが、経過句が2回挟まれて規模の大きな二重唱になっている。急 Allegro 4/4 ハ長調 Non proferir tal nome, では、第1幕と異なり、ビアンカがコンタレーノに立ち向かっていることが音楽からも伺える。ファッリエーロが捕らえられたことが知らされた後の 緩 Andantino 12/8 変ホ長調 (Cadde il fellone... oh! giubilo! は、同様な音楽で並行して歌われる二重唱でありながら、ファッリエーロを心配し嘆くビアンカと、彼をいかようにでも処せる喜びに浸るコンタレーノが、微妙な音楽の違いで巧妙に描き分けられている。二人の感情の差は 急 Allegro 2/2 ハ長調 の急速な音楽で増幅し、二重唱が締め括られる。
第9番 合唱、シェーナ、カヴァティーナとファッリエーロのアリア は、ロッシーニが書いた男装女声役のアリアで最も大規模で至難な音楽である。これを歌い切るにはロッシーニ・メッゾソプラノでもなお高度な力量を求められる。合唱+レチタティーヴォ+カヴァティーナ+レチタティーヴォ・セッコ+アリア から成っている。
合唱 Moderato 4/4 イ短調 Ah! qual notte di squallore では、ロッシーニはこのオペラの本体で初めて明確な短調を用いており、重苦しく陰鬱な音楽で、祖国の英雄が死罪に問われるという異常な事態を嘆いている。続くオーケストラ伴奏のレチタティーヴォも非常に劇的である。カヴァティーナ Andantino 6/8 イ長調 Alma, ben mio, si pura は、まずフルートの長く技巧的なオブリガートが置かれており、これはビアンカを思うファッリエーロの心情を象徴しているかのようだ。ファッリエーロの歌は、伴奏ともども、簡素で美しい。甚だしい不運の中にあって、ファッリエーロはビアンカを思うことで心の平安を見出している。
しかし書記官からビアンカとカペッリオの結婚式が準備されると聞き、ファッリエーロの心は激しく乱れる。アリアは 急 / 緩 / 急 の三部構成。急 Agitato 4/4 ヘ短調 Tu non sai qual colpo atroce, は、ロッシーニが Agitato の速度指定をした短調の曲を書いたというだけでも異例だろう。ファッリエーロは書記官に喰ってかかって動揺を露にする。しばしば喘ぐような音型が現れ、オーケストラも激しい。緩 Andantino 2/4 変ニ長調 Lasso! cessar di vivere では、ファッリエーロは悲嘆に暮れている。第2ヴァイオリンとヴィオラの十六分音符の伴奏が彼の心の痛みを表しているかのようだ。急 Allegro vivace 4/4 ヘ長調は、ファッリエーロの死の覚悟に、ロッシーニメッゾソプラノ限界に挑むかのように広い音域と激しい装飾歌唱を要求している。
第10番 レチタティーヴォと四重唱 は、特にその Andantino の音楽が初演の際に最も好評を博したことで知られている。ロッシーニアンのスタンダールもこの四重唱を絶賛していた。
まず先立つレチタティーヴォセッコで、ファッリエーロの『従犯者』が現れたと告げられる。レチタティーヴォ Allegro 4/4 (ハ長調) でそれがビアンカと分かる。四重唱は、緩 / 急 の二部構成を基本としつつ、テンポ・ディ・メッゾ(中間部)に当たる部分が大きく拡大されている。緩 Andantino 6/8 ホ長調 (Cielo, il mio labbro inspira, は、ほぼ同じ旋律を四人が追い合って歌うフガートな音楽。美しさのみならず気高さも感じられる名曲である。ロッシーニもこの音楽は自信があったのだろう、《マオメット2世》 1820 ナポリ を1823年、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場のカーニヴァルシーズンの開幕公演として上演する際、この四重唱の Andantino を第1幕挿入している。Allegro 4/4 ホ長調 Parla dunque: qual mistero は、テンポ・ディ・メッゾ(中間部)に当たるが、実際にはここは劇的なシェーナで、会話が速やかに進行しつつ、音楽がたいへん充実している。ことにオーケストラが伴奏に留まらず雄弁で、《エルミオーネ》第2幕フィナーレでの成果の反映のようにも思われる。Stretta del Quartetto と銘打たれた 急 Vivace 4/4 ホ長調 (Grazie o cielo! vi e un'anima ancora は、第1幕フィナーレのストレッタと同様、極めて急速な音楽に歌もオーケストラも音符を密に盛り込んだ手の込んだもの。これは練習不足であればたしかに「他の部分と釣り合わなかったが」と言われてしまうほど難易度の高いアンサンブルである。
台本の作劇としては《ビアンカとファッリエーロ》の物語はこの四重唱でほぼ決着がついてしまう。第2幕フィナーレ前のこのアンサンブルがたいへんに見事な出来栄えなのは、それを反映していると言えるだろう。
第11番 合唱、とビアンカのアリア [と 第2幕フィナーレ]は、まず短い女声合唱 Allegro 4/4 ハ長調 Vieni: per te tremante で始まる。続くレチタティーヴォセッコでファッリエーロが元老院でも無罪の評決を得たことが知らされる。残る障害はなおも利己と体面にこだわるコンタレーノだけである。ビアンカのアリアと第2幕フィナーレ は 緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成のアリアである。このアリアは、直前に初演された《湖の美女》第2幕のエレナのロンド―フィナーレ を更生したものであるが、そのまま用いているのではなく、特にオーケストラはかなり異なっている。緩(カンタービレ) Andante 4/4 変ホ長調 では、まずコンタレーノの要求をを呑み、続いてファッリエーロに二人の愛を諦めるよう告げる。彼女はいわば逆転負けを認めたことになるのだが、ここでの音楽は沈んでいるものの悲痛ではない。テンポ・ディ・メッゾ(中間部)ではこれに一同が異を唱えて、ついにコンタレーノも折れる。急 (カバレッタ)Allegro 4/4 変ホ長調 O padre! o Eroe benefico! でようやくビアンカは喜びを爆発させ、ずっと抑え込んでいた思いのたけを高度な装飾歌唱で皆にぶつける。
一般的なフィナーレであれば、ファッリエーロが無罪放免になったところでビアンカのアリアに入り、ひたすら喜びの歌を繰り広げるところだろう。ロマーニはそうせずに、ビアンカが父に屈することで、アリアの中で陰と陽の対比を付けたかったのかもしれない。この試みは余計な展開を生じてあまり成功しているとは言えない。ただロッシーニの Andante の音楽を聞いていると、ビアンカには余裕があり、この状況で父に屈すると表明すれば皆がコンタレーノに詰め寄ることを分かっていたように思えてならない。従順なばかりの娘は大騒動を経て成長し、自分の運命を切り開く術を手に入れたのだろう。
この 従順な娘から大人への成長物語 という観点でこの作品を見直すと、ロマーニもロッシーニも随所に布石を置いていたようにも思われる。
あらすじ
第1幕
サンマルコ大聖堂前の広場。
人々が、スペイン人たちによる陰謀にヴェネツィアが勝利したことを喜んでいる。長年の宿敵だった元老のコンタレーノとカペッリオは和解となった。カペッリオはコンタレーノの娘、ビアンカを愛していることを打明ける。勢いの落ちているコンタレーノは、娘がカペッリオと結婚することで一家に再び栄光が戻ると喜ぶ。ドージェ(ヴェネツィア共和国の統領)が現れ、一同はヴェネツィアを讃える。ドージェはコンタレーノに、許可なく外国の使節と接したものは死刑に処すという法律が可決したことを告げる。それを聞いたカペッリオは、もし自分が出席していたらそんな厳しすぎる法律には賛成しなかったろう、と異議を唱える。ドージェは、ヴェネツィアはまだ完全に平和を取り戻してはいない、いまだスペインに脅かされている、と答える。そして、若い将軍ファッリエーロが戦死した噂を心配して話す。しかし士官が、ファッリエーロが勝利を収め、無事帰還したことを報告し、一同は喜ぶ。
ファッリエーロが凱旋する。彼はスペン人勢力に勝利を収めたことを報告する。武勇を讃えるドージェに対し、ヴェネツィアの息子として祖国のために戦ったことは当然である、答える。ファッリエーロを祝うため、一同は大聖堂へと向かう。
コンタレーノの家。ビアンカは、愛するファッリエーロが無事に帰還したことを喜び、 侍女たちたちからもらった薔薇や百合の花に気持ちをなぞらえ、愛する人との再会を待ち望む。コスタンツァは、ファッリエーロはビアンカに求婚するつもりでしょう、と語る。しかしビアンカは、父コンタレーノが結婚に反対するのではないかと心配している。コンタレーノが戻り、娘にふさわしい花婿を見つけたと語る。ファッリエーロではと期待するビアンカ。しかし父の選んだ相手はカペッリオ。反抗するビアンカを、コンタレーノは叱りつけ、さらに泣きを入れるので、父に従順なビアンカは受入れざるを得ない。嘆くビアンカの元に、密かにファッリエーロが訪れる。しかし喜びの再会になるはずが、ビアンカは激しく動揺し、父がファッリエーロとの結婚を認めないことを打明け、ここにいてはいけないとファッリエーロを立ち去さらせる。ファッリエーロは事態を飲込めず、不安に駆られる。
ビアンカとカペッリオの婚礼が催されている。花嫁姿のビアンカが打ちひしがれて現れる。カペッリオはビアンカの様子がおかしいことに気付くが、ビアンカは父のためと堪える。しかし結婚証明書に署名するに至って、ビアンカの動揺は激しくなる。そこにファッリエーロが押し入って来る。彼はビアンカに裏切られたと思っているのだ。そして、ビアンカと愛し合っており、彼女は自分のものだと宣告する。怒るコンタレーノ。激しい混乱で幕となる。
第2幕
郊外のコンタレーノの館。夜。コスタンツァはこの館で、ビアンカとファッリエーロに最後の別れをさせようとしている。ビアンカは父が踏み込んでくることを心配しているが、コスタンツァは、ファッリエーロなら壁を越えて向こうに逃げることができるだろう、と彼女を安心させる。ファッリエーロが現れ、駆け落ちするか共に死のう、とビアンカに訴える。しかしビアンカは、どんなにファッリエーロを愛していても、名誉のため娘としての義務に背く訳にはいかない、と苦しむ。ファッリエーロも、自分の命も彼女の決断次第だ、と訴える。ファッリエーロの熱意に押され、ビアンカは駆落ちを決意する。二人が出かけようとした時、コスタンツァがコンタレーノが現れたことを告げる。実は壁の向こうはスペイン大使館。ビアンカは危険だと引き止めるが、ファッリエーロは壁を越えて逃げる。コンタレーノはビアンカに、改めてカペッリオとの婚礼を今すぐ執り行うと告げる。遅れてカペッリオも到着、しかしビアンカが未だ結婚に躊躇しているので、帰ろうとする。コンタレーノがそれを引き止め、娘を叱りつけていると、書記ピサーニが三頭会議への召集の令状を持ってくる。ファッリエーロがスペイン大使の敷地で捕まり、その裁きが行われることになったのだ。それを聞いたビアンカは絶望し、父にファッリエーロを助けてほしいと訴える。しかしコンタレーノは娘を部屋に閉じ込めてしまう。
三頭会議の部屋。人々が、ファッリエーロが本当に裏切り者なのだろうか、と呟いている。ファッリエーロは、自分以上に、ビアンカを心配している。しかし、初期から彼を審判する三人のうち二人がコンタレーノとカペッリオと知り、ファッリエーロは希望を失う。書記は、カペッリオは寛大な人間だと慰め、さらに、コンタレーノも息子になる者の意見には耳を傾けるだろうと語る。ビアンカがカペッリオと結婚することを知り、ファッリエーロは死など小さな苦しみだと苦悩する。そして、若い盛りに栄光も幸せも、そして命までも失うことを嘆きつつ、それ以上にビアンカは大きなものを自分から奪った、彼女もいつかそれを後悔するだろう、と苦悶する。
裁きが始まる。ファッリエーロは尋問に対して抗弁せず、判決書類に署名しようとする。そこに、ファッリエーロを弁護する、とヴェールをかぶった女性が登場、ビアンカである。追い返そうとするコンタレーノ。しかしカペッリオは、彼女の話を聞くことにする。ビアンカは事件の真相を明かし、ファッリエーロの無実を証明する。それを聞いたファッリエーロは、彼女の誠実な愛に喜び、自らも無罪を主張する。コンタレーノともう一人は判決書類に署名する。しかしカペッリオは署名を拒み、元老院で再度審議することになる。喜ぶビアンカとファッリエーロ。
コンタレーノの家。カペッリオがビアンカを連れて来て、そのまま元老院へと向かう。ビアンカはファッリエーロの裁判の結果を心配する。すると、無罪を勝ち取ったファッリエーロがやってくる。ビアンカとファッリエーロは抱き合って喜ぶ。しかしコンタレーノは、尚も二人を引き離そうとする。ビアンカは、父の言葉は従わざるをえないと、一度は覚悟を決めるが、人々のビアンカへの同情とコンタレーノへの非難の声に強情な父親も折れる。ビアンカは皆に感謝し、一同の喜びの声で幕となる。
対訳付き音楽設計図
登場人物
プリウリ 【注1】
PRIULI,ヴェネツィアのドージェ
Doge di Veneziaバス 【注2】
basso
コンタレーノ
CONTARENO元老院議員
Senatoreテノール
tenore
カペッリオ
CAPELLIOSenatore
元老院議員バス
basso
ロレダーノ
LOREDANOSenatore
元老院議員【注3】
ファッリエーロ
FALLIERO,ヴェネツィアの将軍
Generale di Veneziaコントラルト
contralto
ビアンカ
BIANCA,コンタレーノの娘
figlia di Contarenoソプラノ
soprano
コスタンツァ
COSTANZA,ビアンカの乳母
nutrice di Biancaソプラノ
soprano
書記官 【注4】
UN CANCELLIERE三人評議会の
del Consiglio dei Treテノール
tenore
[役人]
[Ufficiale]
テノール
tenore
[職員]
[Usciere]
テノール
tenore
注1 オペラの中では プリウリ Priuli という名前は用いられていない。
注2 与えられた最低音は、中央ハ音の下の変ホ音と比較的高く、バリトン、あるいはテノールでも歌える音域。
注3 第2幕 第10番で合唱の一員として歌う箇所がある。
注4 劇中では ピザーニ/ピサーニ Pisani という名前で呼ばれている。
日本語訳は極力文学的な色づけをせず、分析的な直訳にしてある。
音楽部分と歌詞は、基本的に ガブリエーレ・ドット Gabriele Dotto による校訂のクリティカル・エディション総譜の記載に従っている。
Sinfonia | Allegro vivace 4/4 D major |
三部構成の序奏を前に置いた 二部形式の序曲。 序奏は A-B-A' の三部形式。 A。 |
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Andantino 2/4 d minor |
B。 《リッチャルドとゾライデ》序曲の Largo の更生。 |
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Primo Tempo 4/4 D major |
A'。 | ||
4/4 Dmajor |
主部。二部構成 C-D-C'-D'。 D は、《エルミオーネ》序曲のコデッタ(小結尾)の更生。 |
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ATTO PRIMO | |||
N. 1 Introduzione Contareno Capellio Coro |
Allegro con brio 4/4 G major |
SCENA PRIMA第1場 (Piazza di S. Marco)(サン・マルコ広場) (Le procuratie son piene di popolo. Nobili Veneziani d'ambi i sessi trascorrono la piazza)(行政館は 人々で いっぱいである。両性の【≒ 男女の】ヴェネツィア貴族たちが 広場を 歩き回っている) CORO合唱 Dalle lagune Adriacheアドリア海の潟から fin dell'Ionia ai lidiイオニアの海岸まで si spanda un suon che ai popoli音が 広がるように それ【= 声】は 人々に terribilmente gridi:厳しく 叫ぶ: veglia il Leon magnanimo高潔な獅子は 見守っている né di poter scemò.【その】力は 弱まらなかった。 Invan con arti perfide無益に 背信の術 すべ で lacci gli ordì l'Ispano;スペインは 策略を 企てた【≒ スペインは 信頼を裏切るやり方で 策略を 企てたが 無駄だった】; contro di lui s'armarono彼【= 獅子】に対して 武器を取った braccia ribelli invano;反逆する腕々が 無益に【≒ ヴェネツィアの獅子に対して 反逆の手が 武器を取ったが 無駄だった】; levò la fronte indomita彼は 不屈の額を 上げた e i traditor prostrò.そして 裏切者たちを ねじ伏せた。 (la moltitudine si disperde per le procuratie)(群衆は 行政館の方に 消散する ) |
(Le procuratie son piene di popolo. procuratie は、ヴェネツィアのサン・マルコ広場に面して建てられた、ヴェネツィア共和国の政府職員たちの住居、事務所の建物のこと。日本では 行政館 と訳されることが多い。旧行政館 Procuratie Vecchie、新行政館 Procuratie Nuove、最新行政館 Procuratie Nuovissime とある。《ビアンカとファッリエーロ》の舞台は17世紀なので、旧行政館は既に建っており、新行政館が建築中もしくは完成直後の頃である。 fin dell'Ionia ai lidi イオニアは、アナトリア半島西部のエーゲ海沿岸地域。 |
Andante mosso 12/8 E-flat major |
SCENA Ⅱ第2場 (Contareno, e Capellio)(コンタレーノ、そして カペッリオ) CONTARENOコンタレーノ Pace alfin per l'Adria splende,やっと 平和が アドリアに 輝いている、 Tutto è gioia, e festa intorno:辺りは すべてが 歓喜だ、そして お祭り騒ぎだ: per noi soli in questo giornoこの日に 私たちに だけ non vi è speme, no, d'amistà.友愛の、いいや、希望がない。 CAPELLIOカペッリオ Sol da te, signor, dipendeただ 君次第である、貴君よ、 d'obbliar lo sdegno antico:昔からの怒りを 忘れることは: il mio cor ti brama amico,私の心は 君を 友に 切望している、 odio alcun per te non ha.それは 君に対して 何一つ 憎しみを 持っていない。 CONTARENOコンタレーノ Tu non m'odii?...君が 私を 憎んでいない だって?… CAPELLIOカペッリオ (con trasporto)(熱狂をもって【≒ 激しく】) E odiar potreiそれで 憎む ことができるものか te di Bianca genitore!ビアンカの父である 君を! CONTARENOコンタレーノ Bianca...ビアンカだって… (sospeso)(驚いて) l'ami?君は 彼女を 愛しているのか? CAPELLIOカペッリオ Ah! sol di leiああ! 彼女だけで da gran tempo è pieno il core:かなり前から 心は いっぱいだ: cedo a te, se lei mi doni,私は 君に 譲る、もし 君が 彼女を 私に 与えるならば、 la contesa eredità.争われている遺産を。 CONTARENOコンタレーノ L'ami?君は 彼女を 愛しているのか? CAPELLIOカペッリオ Sì,そうだ、 CONTARENOコンタレーノ l'ami?君は 彼女を 愛しているのか? (Ah! Grazie, o sorte; alfin sereno(ああ! ありがとう、ああ 運命よ; ついに 晴れ晴れと mi volgesti il tuo sembiante,お前は お前の顔を 私に 向けた、 lo splendor di Contarenoコンタレーノの栄華は a brillar ritornerà.)再び 輝き 始めるだろう。) CAPELLIOカペッリオ Si decide in questo istante,この瞬間に 決定される、 della mia tranquillità.私の平安について【≒ 私の心の平安は 今こそ 決まるのだ】。 CONTARENOコンタレーノ Vien, Capellio, a questo seno:来なさい、カペッリオよ、この胸に: ama Bianca, e tua sarà.ビアンカを愛したなさい、そして 彼女は 君のものに なるだろう。 CAPELLIOカペッリオ Oh! piacer! felice appienoああ! 歓喜だ! 幸せで いっぱいに questo amplesso alfin mi fa.する この抱擁が ついに 私を |
Pace alfin per l'Adria splende, Adria はそのまま アドリア と訳すが、ヴェネツィアを指している。 la contesa eredità. 詳しいことは分からないが(おそらく原作には描かれているのだろう)、カペッリオは遺産相続で係争中ということだろう。 |
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Stretta Allegro 4/4 G major |
(odesi sparo d'artiglieria: ricompare la moltitudine)(大砲の発射が聞こえる: 群衆が 再び現れる) CORO合唱 Esce il Doge.ドージェが 出る【≒ 姿を現す】。 CONTARENO E CAPELLIOコンタレーノ と カペッリオ Alla festa solenne厳かな祝宴へと col Senato già movesi al tempio.彼は 元老院と共に 既に 寺院へと 身を動かしている。 CORO合唱 Viva il Prence, che l'Adria sostenne, viva!君主 万歳、その者は アドリアを 助けた、万歳! che rimosse dell'Adria lo scempio! Viva!その者は アドリアの崩壊を 取り除いた! 万歳! Misto al suon di guerrieri stromenti戦闘的な音と 混合して【≒ 軍楽に 合わせて】 salga al ciel del suo nome l'onor!天へと 彼の名前の誉が 昇るように! Della patria fra i prosperi eventi祖国の 幸運な出来事の中で il presente fia sempre il maggior.このことは これからもずっと 最高であるだろう。 CONTARENOコンタレーノ Ma forier di più grandi contenti,だが この上なく大きな歓喜の前兆に、 o Capellio, è tal giorno al mio cor.ああ カペッリオよ、この日が 私の心にある。 CAPELLIOカペッリオ Ma forier di più grandi contenti,だが この上なく大きな歓喜の前兆に、 Contareno, è tal giorno al mio cor.コンタレーノよ、この日が 私の心にある。 CORO合唱 Misto al suon di guerrieri stromenti戦闘的な音と 混合して【≒ 軍楽に 合わせて】 salga al ciel del suo nome l'onor!天へと 彼の名前の誉が 昇るように! Della patria fra i prosperi eventi祖国の 幸運な出来事の中で il presente fia sempre il maggior.このことは これからもずっと 最高であるだろう。 |
il presente fia sempre il maggior. この場合の presente は 目下のもの,こと といった意味。 |
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[Recitativo] Dopo l'Introduzione |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅲ第3場 (Esce il Doge coi Senatori dal Palazzo di S. Marco. Gli uscieri che sono al loro seguito recano il decreto del Gran Consiglio. All'avanzarsi del Doge si fa silenzio)(ドージェが 元老院議員たちと共に サン・マルコ宮殿から 出て来る。職員たちが その者たちは 彼らに ついて来ている 大評議会の通達を 運んでいる。ドージェが 近付くと 静粛になる) DOGEドージェ (agli Uscieri)(職員たちに) Ministri del consiglio, ite, e per tutte評議会の使者たちよ、行きなさい、そして すべての di Vinegia le vie tosto si affiggaヴェネツィアの道に すぐさま 掲示されるように del Senato il decreto.元老院の通達が。 (gli uscieri escono da varie parti. La moltitudine si affolla in fondo, ec.; il Doge si appressa a Contareno)(職員たちは 様々な方へ 出て行く。群衆は 【舞台の】 奥に 押し寄せる、等々; ドージェは コンタレーノに 近づく) O Contareno,ああ コンタレーノよ、 il tuo parer prevalse. Un'altra volta君の見解が 勝った【≒ 正しかった】。もう一度 ristabilito è il tribunal temuto恐れられている裁判所が 回復された della patria custode: accorti i padri祖国の守衛である【≒ 祖国を守る 峻厳な裁判所が 再び 開設された】: 元老院議員たちは 用心深く dal passato periglio過去の危険から【≒ 近々の危険を 懸念して】 han segnato la legge in pien consiglio.最大限の議会で【≒ 全会一致で】 法律に 署名した。 CAPELLIOカペッリオ Signor, perdona; ma s'io pur presente貴君よ、容赦しなさい; しかし もし 私も 出席して era al consesso, io non avrei segnatoいた 【↑】ならば 会議に、私は 署名しなかったろうに così terribil legge. Ed a che giovaそのような 恐ろしい法律には。 そして 何に 役立つのだろうか di nuovo armarsi del rigore antico,昔の手厳しさで 再び 武装することが or che svanito è il congiurar nemico?敵の 陰謀の企てが 消え失せた 今では? CONTARENOコンタレーノ A che giova, o Capellio? a prevenire何に 役立つのだろうか だと、ああ カペッリオよ? 起こらないようにするためだ nuovi attentati, a vigilar sull'opre新たな陰謀を、見張るために 行為を dei legati stranieri, a preservarne異国の国使たちの、私たちを 守るために da novelle congiure e nuovi orrori.第二の陰謀から そして 第二の 恐ろしいこと 【から】。 CAPELLIOカペッリオ Tutti gli ambasciatoriすべての大使たちが non sono Bedamar; e omai dell'Adriaベダマルではない; そして 今は アドリアの la sicurtade è ferma.安全は 確固としている。 DOGEドージェ Ancor del tuttoまだ 完全には l'Adria non è secura.アドリアは 安全ではない。 Pur dalle Orobie muraオロビエの壁【≒ オロビエ・アルプス,東アルプス山脈のイタリア側】から なおも ci minaccia l'Ispano, e tutto intornoスペインは 私たちを 脅かしている、そして 辺り一帯で vasto incendio di guerra arde il paese.戦争の 広い火災が 国土を 燃やしている。 A rintuzzar le offese攻撃を 撥ね付けるために di sì fiero nemico invan si mosseそのように残忍な敵の【攻撃を】 無益に 身を動かした il giovane Fallier: voce si sparse若いファッリエーロが: 噂が 流布した che giacque il generoso in campo estinto.勇敢な男が 戦場で 死んで 横たわった と。 CAPELLIOカペッリオ Cielo! estinto Fallier?天よ! ファッリエールが 死んだと? SCENA Ⅳ第4場 (Un Uffiziale, e detti)(役人、そして 前の場の人たち) UFFIZIALE役人 (inchinandosi al Doge)(ドージェに 跪いて) Falliero ha vinto.ファッリエーロが 勝利を収めた。 in questo punto approdaこの時点で 彼は 上陸している alla vicina riva, e a te, al Senato近くの海岸に、そして 君に、元老院に reca l'annunzio della sua vittoria.彼は 彼の勝利の報告を 持って来ている。 Ei già s'appressa.彼は もう 近付いている。 CONTARENO, DOGE E CAPELLIOコンタレーノ、ドージェ と カペッリオ Onore al prode, e gloria!勇者に 名誉を、そして 栄光を! |
Gli uscieri che sono al loro seguito recano il decreto del Gran Consiglio. usciere は辞書には 案内係 あるいは 守衛,門衛 などの訳語が載っているが、ここではあまり合わない。ここでの usciere は、ドージェや元老議員たちのような高位の人物に付き従って雑務をこなす低位の役人のことだと思われる。ここでは大雑把に 職員 で訳すことにする。 han segnato la legge in pien consiglio. 英訳では in pien consiglio を in the Great Council 大評議会で あるいは in plenary session 本会議で としているものもある。ここでは 全会一致で と理解した。 non sono Bedamar; e omai dell'Adria ベドマル Bedamar とは、アロンソ(もしくは アルフォンソ)・デ・ラ・クエヴァ・イ・ベナヴィデス Alonso (or Alfonso) de la Cueva y Benavides 1574―1655 のこと。スペインのベドマル出身で、1614年にベドマル侯爵 Marquesado de Bedmar の称号が創設され彼に与えられたことから彼もしばしば ベドマル と呼ばれる。1606年にヴェネツィア共和国のスペイン大使に任命される。ヴェネツィアは1613から1617年にハプスブルク家のオーストリア(スペインの同盟国)と紛争状態で、このため国内が不安定な状態だった。ベドマルはこれに乗じてヴェネツィア政府の転覆を計画したが、本格的な陰謀の前に露見し、スペインに送還された。 |
N. 2 Coro e Cavatina Falliero Falliero Coro |
Allegro giusto 4/4 C major |
CORO合唱 Viva Fallier,ファッリエーロ 万歳、 lode al guerrier勇士に 称賛を del patrio onor祖国の名誉の conservator.保護者である【勇士に】。 SCENA Ⅴ第5場 (Falliero con seguito d'Uffiziali, e detti)(ファッリエーロ 役人たちに) |
合唱とレチタティーヴォを前に置いた 緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ) の二部構成のアリア。 合唱。 |
Recitativo 4/4 (C major) |
FALLIEROファッリエーロ Inclito Prence, illustri padri, e quanti気高い君主よ、令名名高い元老院議員たちよ、そして 人 すべてよ amor di patria in questo istante aduna,祖国愛が この瞬間に 集合させている 【人 すべてよ】、 la Veneta fortunaヴェネトの幸運は di se stessa maggiore è alfin risorta.ついに それ自身よりも より優れて 復活した【≒ 以前にも増して 蘇った】。 Pace, spoglie, trofei, Fallier vi porta.平和を、戦利品を、戦利品を、ファッリエールは 君たちに 持って来ている。 Vinte e disperse come polve al vento打ち負かされた そして 離散した 風に吹かれる埃のように fûr dei ribelli, e dell'Ispan le schiere.反逆者たちの、そして スペインの 隊列【≒ 軍隊】は。 In sulle mura altere誇り高い 城壁の上では dell'orobia città sventola il nostroオロビオの町の【城壁の上では】 はためいている 私たちの glorioso vessillo, e al mondo insegna栄光に満ちた軍旗が、そして それ【= 軍旗】は 世界に 教えている【≒ 知らしめている】 che il temuto Leon pur vince e regna.恐ろしい獅子は 常に 勝利を得て そして 支配している ことを。 DOGEドージェ Giovane valoroso, a te la patria勇敢な若者よ、君に 祖国は va debitrice di salute e pace:安全の そして 平和【の】債務者である【≒ 祖国は 君に 安全と平和を 負っている】: te figlio suo verace君を その【= 祖国の】真の息子と appellerà mai sempre, e il tuo gran nomeそれ【= 祖国】は 永久に 呼ぶだろう、そして 君の 偉大な名前は vivrà nei fasti dell'Adriaco impero:アドリア海の帝国の 豪奢【≒ 繁栄】の中で 生き続けるだろう: in ogni cor vivrà.それは あらゆる心の中で 生きるだろう。 CONTARENO, CAPELLIO E COROコンタレーノ、カペッリオ と 合唱 Viva Falliero!ファッリエーロ万歳! FALLIEROファッリエーロ Le tue parole, e il plauso君の言葉は、そして 称賛は di così nobil gente, oh! qual mi sonoこれほどに高貴な人々の【称賛は】、ああ! preziosa mercé di quanto oprai!私が行動したことの 尊い褒美だ! Più che non diedi a te, Patria, mi dai.祖国よ、私が お前に 与えた よりも多く お前は 私に 与えている。 |
レチタティーヴォ。 Inclito Prence, illustri padri, e quanti この場合の padre は 元老院議員 のこと。 Pace, spoglie, trofei, Fallier vi porta. spoglia も trofeo も日本語では 戦利品 になってしまうが、spoglia(特に複数形で)は spogliare 衣服を脱がせる,剥ぎ取る に由来した、敗戦の兵士から奪い取った鎧や武具などを指す。 Più che non diedi a te, Patria, mi dai. non は冗語。 |
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Maestoso 4/4 C major |
Se per l'Adria il ferro io strinsi,アドリアのために 私が 鉄【≒ 剣】を 握った時、 il dover compiei di figlio:私は 息子の義務を 果たした: sacro a lei nel suo periglioその【= アドリアの】危機において それ【= アドリア 女性名詞】に 捧げられた era il braccio, il ferro, il cor.腕は、鉄【≒ 剣】は、心は。 Seguitai, se in campo io vinsi,私は 辿った【≒ 倣った】、戦場で 私が 勝利を得た時、 l'orme sue, l'avito onor.その【= アドリアの】手本を、祖先の名誉を。 CORO合唱 Vero prode!真の勇者だ! |
カンタービレ 緩。 |
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Allegro 4/4 C major |
CORO合唱 Vero prode! ai detti tuoi真の勇者だ! 君の言うことのゆえに sembri a noi più grande ancor.君は 私たちには さらにもっと 偉大に 思われる。 |
テンポ・ディ・メッゾ 中間部。 |
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(Allegro) 4/4 C major |
FALLIEROファッリエーロ Il ciel custode di queste mura天が この 町を囲う壁の 守護者が ogni congiura disperderà.あらゆる陰謀を 追い払うだろう。 Per far che l'Adria felice siaアドリアが 幸福であるように するために la vita mia si spenderà.私の命は 費やされるだろう。 CORO合唱 Il ciel custode di queste mura天が この 町を囲う壁の 守護者が ogni congiura disperderà.あらゆる陰謀を 追い払うだろう。 |
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[Recitativo] Dopo la sortita di Falliero |
4/4 (C major) |
DOGEドージェ Grata Vinegia, o prode,【君に】感謝しているヴェネツィアは、ああ 勇者よ、 accetta i voti tuoi. Sì bel desio君の願いを 受け入れる。そのように 素晴らしい欲求を segui a nutrir, e il tuo sublime esempio心に抱き 続けなさい、そして 君の 卓越した例は mille di onore desterà faville多くの 名誉の閃光【≒ 輝かしい光栄】を 呼び覚ますだろう in ogni cor di patrio amore ardente.あらゆる 燃えるような祖国愛の心の中に。 Intanto il ciel clemente今のところは 慈悲深い天が conservator dei regni abbia di lodi君主国の保護者【である 天が】 称賛の e d'incensi tributo: ei di là sopraそして 香 こう の煙の 捧げ物を 受け取るように: あの上の方に siede moderator d'ogni bell'opra.あらゆる立派な行為の 支配者が 座っている。 (s'avviano tutti verso il tempio)(全員が 聖堂に 向かう) |
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N. 3 Coro e Cavatina Bianca Bianca Coro |
Andantino 6/8 E major |
SCENA Ⅵ第6場 (Atrio in casa di Contareno, che mette a un canale. Il luogo è tutto adorno di vasi di fiori)(コンタレーノの家の柱廊玄関、それは 運河に 通じている。場所は 花々の壺で すっかり 飾られている) (Le ancelle di Bianca ne van raccogliendo or da questo, or da quello. Indi esce Bianca medesima)(ビアンカの侍女たちが それについて 次第に 摘み取っている 今は ここから、今は あそこから。それから まさにビアンカが 出る) CORO DI DONNE女性たちの合唱 Negli orti di Flora,植物の庭園【≒ 花壇】の中に、 nel regno d'aprile四月の王国の中に un fior più gentileもっと優美な花は di Bianca, no, non v'ha.ない ビアンカよりも。 Men vermiglia è di lei questa rosa.このバラは 彼女よりも より少なく 鮮紅色だ。 Questo giglio è men puro di lei.このユリは 彼女より より少なく清純だ。 Men modesta tu mammola sei.君 スミレは より少なく 謙虚だ。 Questo anemone ha men di beltà.このアネモネは 美しさで 劣る。 |
Negli orti di Flora, orto は伊和辞典では 菜園,野菜畑 とあるが、野菜でないものが栽培されている場合でも用いられる。 |
Recitativo 4/4 (E major) |
BIANCAビアンカ Come sereno è il dì! come più bello日【≒ 空】が なんと 晴朗なことか! なんと より美しく risplende il sole, e l'aura è queta e pura!太陽が 光り輝いていることか、そして 微風は 穏やかで そして 澄み切っていることか! |
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Primo Tempo 6/8 E major |
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Recitativo 4/4 (E major) |
Tu sorridi, o natura,お前は 微笑んでいる、ああ 自然よ、 lieta come il mio cor...私の心と同様に 喜ばしく… |
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Allegro 4/4 (E major) |
O mio Falliero!ああ 私のファッリエーロよ! Se ogni cosa si allegra a me d'intornoもし 私の周囲で あらゆるものが 喜んでいるのならば è prodigio d'amor pel tuo ritorno.それは 彼の帰還のための 愛の奇跡だ。 Caro, amato Falliero! io pur ti apprestoいとしい人よ、最愛のファッリエーロよ! 私も 君に 準備をしている con l'Adria intera un serto... io di mia mano全アドリアと共に 花冠を… 私は 私の手で tel porgerò... grato ti fia per certo...それを 君に 手渡そう… それは 確実に 君には ありがたい だろう【≒ 君は 間違いなく それを 気に入るだろう】… non val quello d'amor di gloria il serto.栄光の冠は 愛のそれ と 等価ではない【≒ 愛の花冠は 栄光の冠よりも 大切だ。】。 |
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Andantino 6/8 A major |
(prende dalle ancelle i fiori e gl'intreccia in ghirlanda)(彼女は 侍女たちから 花々を 受け取る そして それらを 花輪に 編む) Della rosa il bel vermiglioバラの 美しい鮮紅色は l'amor mio gli pingerà.彼に 私の愛を 描写するだろう。 Il candor di questo giglioこのユリの純白は la mia fé gli mostrerà.彼に 私の誠実を 提示するだろう。 Qua l'emblema di costanza...ここには 意志の強固の印 しるし が… là il color della speranza...そこには 希望の色が… qua un pensiero... un altro qua...ここには 思いが… 別のここには… ogni affetto del mio core私の心の あらゆる情愛を ogni fiore a lui dirà.あらゆる花々が 彼に 語るだろう。 CORO DI DONNE女性たちの合唱 Ogni affetto del tuo core君の心の あらゆる情愛を ogni fiore a lui dirà, sì.あらゆる花々が 彼に 語るだろう。 |
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Allegretto 2/4 A major |
BIANCAビアンカ (alzandosi, e contemplando le ghirlande con tenera malinconia)(立ち上がって、そして 花輪を 凝視して 柔らかい哀愁で【≒ 穏やかに 物思いに沈んで】) Oh! serto beato,ああ! 最高に幸せな花冠よ、 invidia mi fai.お前は 私に 妬みの気持ちを起こさせる。 All'idolo amato最愛の偶像の vicino sarai;傍に お前は いるだろう; baciarti l'udrai,お前は 彼が お前に キスすることを 聞き入れるだろう、 parlarti di me.私について お前に 話すことを 【お前は 聞くだろう】。 (ritornando lieta)(陽気に 戻って) Ma spero... ma sentoけれども 私は 願っている… けれども 私は 感じている lusinga nel core心の中に 甘い期待を che a tanto contento大きな喜びに mi serba l'amore,愛の神は 私を 残している 【↑】という【甘い期待を】、 che il dolce momento甘美な瞬間は lontano non è.遠くない 【↑】という【甘い期待を】。 CORO合唱 Sì, tanto contentoそうだ、大きな満足 【≒ 喜び】が serbato è per te.君のために 取っておかれている。 |
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[Recitativo] Dopo la sortita di Bianca |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅶ第7場 (Costanza e Bianca)(コスタンツァと ビアンカ) BIANCAビアンカ Costanza? ebben? che rechi?コスタンツァなのか? それで? 君は 何を 持ってきているのか? vedesti il mio Fallier?君は 私のファッリエーロを 見たか? COSTANZAコスタンツァ Lo vidi, o Bianca,私は 彼を 見た、ああ ビアンカよ、 fatto più bello ancor dalla sua gloria.さらに より美しく された 彼の栄光によって【≒ 彼の栄光が 彼を より美しくしていた】。 Sì nobile vittoria,あれほどの 気高い勝利は、 l'onor che a lui si rende, ardir gli danno名誉は それを 彼は 彼に 自らに 与えている、彼に 大胆【≒ 勇気】を 与えている di chieder la tua mano:君の手を 求める【大胆を】: a me lo disse...彼は 私に そのことを言った… BIANCAビアンカ Ah! non la chieda invano.ああ! 彼が それ【= ビアンカの手】を 無駄に 求めないように。 COSTANZAコスタンツァ Che temi? e qual vi è padre君は 何を 心配しているのか? それで どんな父親が いるというのか che superbo non fora esser di questoその者は 誇りとするであろう あの valoroso guerriero勇敢な戦士 【↑】の suocero fortunato?義父に 幸運にも 【↑↑】なる ことを? BIANCAビアンカ O amica! è vero.ああ 友の女よ! それは 真実だ。 Ma tu del padre mioしかし 君は 私の父の l'alma conosci appieno:魂を 十分に 知っている: è povero Fallier.ファッリエーロは 貧しい。 COSTANZAコスタンツァ Vien Contareno.コンタレーノが来る。 (parte)(去る) SCENA Ⅷ第8場 (Contareno e detta)(コンタレーノと 前の場の人たち) CONTARENOコンタレーノ Bianca, in sì lieto giorno, al par di quanteビアンカよ、これほどに喜ばしい日に、 nobili donne ha l'Adria, io te vo' lieta,アドリアが持つ 【↑】ところのすべての 高貴な女性たちと 同じだけ、私は 君が 喜ばしいことを 望んでいる、 e in mio pensiero ne ho già volto il modo.そして そのことについて 私は 既に 私の考えの中で 方法を 思いめぐらせた【≒ 私は そのこと{= ビアンカが 喜ばぶこと}について 既に 思案した】。 Avventuroso nodo幸運な縁を d'illustre imene oggi ha per te formato令名名高い結婚の【縁を】 今日 君のために 形作った il mio paterno amore.私の 父の愛が。 BIANCAビアンカ Padre! qual nodo?... (oh come batte il core!)父よ! どんな縁を?… (ああ なんと 心臓が 鼓動していることか!) CONTARENOコンタレーノ Lo sposo ch'io t&ho scelto è tal che pari花婿は その者を 私は 君に 選んだ そのような者だ その者は 匹敵する者を in Venezia non ha: d'onore esempio,ヴェネツィアに 持っていない【≒ ヴェネツィアには 匹敵する者のいない者だ】: 名誉の模範、 specchio di valor vero.真の勇敢さの鑑だ。 BIANCAビアンカ (Cielo! chi è questi se non è Falliero?)(天よ! その人は 誰なのか もし ファッリエーロでないならば?) CONTARENOコンタレーノ A te fra pochi istanti君に 僅かな瞬間の後【≒ すぐに】 presentarlo promisi, e so che grata彼を 引き合わせることを 私は 約束した、そして 私は 分かっている ありがたく思う 【↓】であろう ことを tu men sarai... nel tuo sembiante io leggo君が 私に そのことについて… 君の顔に 私は 読んでいる la gioia che tal nuova in cor ti desta.歓喜を それを この情報が 君に 引き起こしている。 BIANCAビアンカ Dov'è desso, o Signor? che mai lo arresta?彼は どこにいるのか、ああ 貴君よ? いったい 何が 彼を 止めているのか? CONTARENOコンタレーノ Pria di mostrarsi a te mi fea preghiera君に 姿を現す 前に 彼は 私に 懇願を した d'investigar se inclina調査するように と ad amarlo il tuo cor.君の心が 彼を 愛し 【↑】たくなる かどうか。 BIANCAビアンカ (con trasporto)(熱狂をもって) E del mio coreそれでは 私の心の non gli è noto l'amore,愛は 彼に 知られてないのか、 non rammenta i sospir?彼は 覚えていないのか 溜め息を? CONTARENOコンタレーノ (sorpreso)(仰天して) Bianca! che parli?ビアンカよ! 君は 何を 言っているのか? quando svelasti mai君は いったい いつ 打ち明けたのか a Capellio il tuo cor?カペッリオに 君の心を? BIANCAビアンカ (atterrita)(ぞっとして) Capellio! oh Dio!カペッリオ! ああ 神よ! Son perduta!...私は 破滅した!… CONTARENOコンタレーノ Che ascolto?私は 何を 聞いたのか? BIANCAビアンカ O padre mio...ああ 私の父よ… CONTARENOコンタレーノ Parla... d'altr'uom saresti離しなさい… 君は 他の男の amante forse, o Bianca?...恋人 【↑】なのだろうか ことによると、ああ ビアンカよ?… BIANCAビアンカ Oh! me infelice!ああ! 不幸な私! Sventurato Fallier!不運な ファッリエーロ! CONTARENOコンタレーノ Perfida!...恩知らずな女め!… BIANCAビアンカ Ah! padre...ああ! 父よ… non ti sdegnar...憤慨するでない… CONTARENOコンタレーノ Trema... se ancor ti sfugge震えなさい… もし もう一度 君から 漏れるならば il nome di Fallier, l'amor paternoファッリエーロの名前が【≒ もし もう一度 君が ファッリエーロの名を 口にしたならば】、父の愛を hai perduto per sempre.君は 永遠に 失う。 BIANCAビアンカ Oh ria minaccia!ああ 悪意のある【≒ ひどい】脅しだ! Padre... il tuo sdegno di terror m'agghiaccia.父よ… 君の怒りは 恐怖で 私を 凍らせる【≒ ぞっとさせる】 |
e qual vi è padre / che superbo non fora esser di questo / valoroso guerriero / suocero fortunato? = e qual padre v'è che non sarebbe superbo d'essere fortunatamente suocero di questo valoroso guerriero? hai perduto per sempre. 近過去形は、未来に動作が完了する場合に用いられることがある。 |
N. 4 Recitativo ed Aria Contareno Contareno Bianca Coro |
Recitativo Allegro 4/4 (C major) |
CONTARENOコンタレーノ Se l'amor mio ti è caroもし 私の愛が 君にとって 大切ならば rispetta il mio voler... Se a me t'opponi...私の意志を 尊重しなさい… もし 君が 私に 抵抗するならば… paventa l'ira mia. Tutto in Vinegia,私の怒りを 恐れなさい。ヴェネツィア中で tutto poss'io. Farti obbliar Falliero,私は すべてを することができる【≒ ヴェネツィアでは 私は 何でも できる】。君に ファッリエーロを 忘れさせる、 altrimenti saprò... per lui pur trema...さもなければ 私は できるだろう… 彼のために どうぞ 震えなさい… BIANCAビアンカ Ah! che dici?ああ! 君は 何を 言うのか? CONTARENOコンタレーノ Intendesti.君は 【もう】 聞いた! BIANCAビアンカ O pena estrema!ああ 甚だしい苦悩よ! |
altrimenti saprò... per lui pur trema... ファッリエーロに危害を加えることを仄めかしている。 |
Aria Contareno Allegro 4/4 E-flat major |
CONTARENOコンタレーノ Pensa che omai resistere考えなさい もはや 抵抗することは al mio comando è vano;私の命令に 【抵抗することは】 無駄な 【↑】ことを; |
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(Allegro) 4/4 E-flat major |
pensa che al nobil giovane考えなさい 高貴な青年に giurai di dar tua mano;私が 誓った 【↑】ことを 君の【右】手を 与える と; che un Contareno, un venetoコンタレーノは、ヴェネトの男は non può mancar di fé.誠意を欠くことはできない 【↑】ことを。 BIANCAビアンカ Padre... al mio pianto muoviti,父よ… 私の涙に 心を動かしなさい、 mira... io ti cado al piè.見なさい… 私は 君の足元に 倒れている。 (cadendo ai piedi di Contareno)(コンタレーノの足元に 倒れて) CORO DI DONNE女性たちの合唱 (sollevandola)(彼女を 持ち上げて) Al genitore arrenditi,父親に 従いなさい、 si placherà con te.【そうすれば】彼は 君に対して 静まるだろう【≒ 彼の 君に対する怒りは 収まるだろう】。 |
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Andantino 3/4 A-flat major |
CONTARENOコンタレーノ (accostandosi a Bianca con bontà)(ビアンカに 近付いて 善意をもって【≒ 優しく】) Figlia mia, se forza al core私の娘よ、もし 【↓】君の 心に 力を non ti dà figlial rispetto;与えないようなら 子としての【≒ 親への】敬意が; deh! ti vinca il mio dolore;お願いだ! 私の苦悩が 君に 勝つように; da tal nodo io tutto aspetto;そのような縁から 私は あらゆるものを 待っている tutto io perdo se ti opponi:私は すべてを 失う もし 君が 反対するならば: disperato io morirò.【そうなったならば】 私は 絶望して 死ぬだろう。 |
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Allegro 2/2 E-flat major |
BIANCAビアンカ Tu morir! di me disponi...君が 死ぬ! 私を 思い通りに使いなさい… CONTARENOコンタレーノ (Io trionfo, sì.)(私が 勝利を収めている、そうだ。) BIANCAビアンカ Ubbidirò.私は 言うことを聞こう。 CONTARENOコンタレーノ Ah! mi abbraccia: alfin ritrovoああ! 私を 抱擁しなさい;ついに 私は 再び会っている la mia Bianca, la mia figlia.私のビアンカに、私の娘に。 Lo splendor di mia famiglia私の一族の栄華が per te sorgere vedrò.君によって 上がるのを 私は 見るだろう。 M'abbraccia.私を 抱擁しなさい。 |
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(Allegro) 2/2 E-flat major |
Il piacer di mia ventura,私の運命の喜びを、 figlia mia, spiegar non so.私の娘よ、私が 説明することが できない。 CORO合唱 Viva Bianca! alfin naturaビアンカ 万歳! ついに 本性が dell'amore trionfò.愛に 勝利を収めた。 BIANCAビアンカ (Giusto Ciel, più ria sventura(公正な天よ、さらに悪い不幸を della mia chi mai provò?)私のもの【= 私の不幸】よりも いったい 誰が 体験しただろうか?) CONTARENOコンタレーノ Ah! mi abbraccia: alfin ritrovoああ! 私を 抱擁しなさい;ついに 私は 再び会っている la mia Bianca, la mia figlia.私のビアンカに、私の娘に。 Lo splendor di mia famiglia私の一族の栄華が per te sorgere vedrò.君によって 上がるのを 私は 見るだろう。 M'abbraccia.私を 抱擁しなさい。 (partono tutti)(全員 去る) |
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[Recitatiov] Dopo l'Aria Contareno |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅸ第9場 (Sala in casa di Contareno)(コンタレーノの館の広間) (Falliero e Costanza)(ファッリエーロと コスタンツァ) FALLIEROファッリエーロ Mai con maggior coraggio in queste soglie決して より大きな勇気を持って この敷居に non posi il piè, Costanza. Alfin venirne私は 足を 置かなかった【≒ いまだかつて 私が これほど自信を持って この館に来たことは なかった】、コスタンツァよ。ついに 来ることが potrò palese, io spero, e non indegno私は 出来るだろう 明らかに【≒ 私は ついに 堂々と ここに来る ことができるのだろう】、私は 期待している、そして 相応しくなくはない del genitor di Bianca.ビアンカの父に【会うことには】。 COSTANZAコスタンツァ Il ciel secondi天が 手助けをするように la tua speranza: io ne sarei, tel giuro,君の期待に: 私は それについて なるだろう、私は 君に 誓う、 lieta di Bianca al paro.喜ばしく【なるだろう】 ビアンカと対 つい で【≒ そのことで 私は ビアンカと一緒になって 喜ぶだろう】。 FALLIEROファッリエーロ O amica mia,ああ 私の 友の女よ、 conosco a prova il tuo bel cor qual sia;私は 分かっている 確実に 君の 美しい心が どのようなものなのか; né forse il dì fia lungeことによると その日は 遠くないのだろう che far chiaro potrò quant'io son grato【私が 人に】知らせることができるであろう【日は】 どれほど 私が 感謝しているか al tuo cortese oprar. Ma di'; qual trovo君の 親切な行動に。だが 言いなさい; どのように 私は 見出すのか l'adorata mia Bianca?熱愛する 私のビアンカを【≒ 愛する私のビアンカは どんな様子か】? COSTANZAコスタンツァ Ognor fedele,常に誠実で、 tenera sempre; oltre ogni dir feliceいつでも 優しい【≒ 愛情に満ちている】; 口では言えないほど 幸せだ dei tanti allori onde tu riedi adorno多くのゲッケイジュ【≒ 栄誉】で それに 飾られて 君は 戻っている【≒ 君が たくさんの栄誉に飾られて 帰って来て 【彼女は】 言葉にできないほど 幸せだ 】 di vederti sospira.彼女は 待ち望んでいる 君に会うことを。 FALLIEROファッリエーロ Oh lieto giorno!ああ 喜ばしい日だ! Deh! tu, Costanza, or compiどうか! 君よ、コスタンツァよ、今こそ 遂行しなさい il beneficio tuo: per poco almeno君の恩恵を【≒ 君に 協力を してほしい】。 少なくとも 今から僅かな時間の後 fa ch'io favelli a lei.私が 彼女に 話す ように しなさい【≒ 話ができるように 取り計らいなさい】。 COSTANZAコスタンツァ Mira: ella stessa見なさい: 彼女自身が sola vêr noi si appressa.一人で 私たちの方に 近付いて来る。 Seco io ti lascio...私は 君を 彼女と一緒に させる… (parte)(去る) SCENA Ⅹ第10場 (Bianca e Falliero)(ビアンカと ファッリエーロ) BIANCAビアンカ (arrestandosi sull'ingresso)(入り口で 立ち止まって) (Oh! ciel! Falliero!)(ああ! 天よ! ファッリエーロが!) FALLIEROファッリエーロ (correndo a lei con trasporto)(彼女に 駆け付けて 熱狂をもって【≒ 夢中になって】) O Bianca!ああ ビアンカよ! io ti rivedo alfin!私は ついに 君に 再会している! BIANCAビアンカ (lentamente avanzandosi)(ゆっくりと 前に進み) (Il cor mi manca.)(心臓が 私において 弱っている【≒ 心臓が 止まりそうだ】。) FALLIEROファッリエーロ Ma che vedo? tu tremi?しかし 私は 何を 見ているのか? 君は 震えているのか? impallidisci? ed evitar ti sforzi君は 青ざめているのか? そして 君は 避けるように 精いっぱい努力しているのか l'incontro de' miei sguardi? in questa guisa,私の視線の遭遇を【≒ 私と 目を合わせないように しているのか】? Bianca, m'accogli tu?ビアンカよ、君は 私を 迎えているのか? BIANCAビアンカ Falliero!... (Oh Dio!ファッリエーロよ!… (ああ 神よ! che deggio dir?)私は 何を 話す べきなのか? FALLIEROファッリエーロ (Che mai pensar degg'io?...)(私は いったい 何を 考える べきなのか?…) BIANCAビアンカ (facendosi forza)(自分の感情を抑えて) Falliero, hai tu coraggio?...ファッリエーロよ、君は 勇気を 持っているか?… FALLIEROファッリエーロ Pari al sommo amor mio.私の 崇高な愛と 等しく。 BIANCAビアンカ Soffrir potrai君は 耐える ことができるだろうか il colpo a cui ti serba avversa sorte?打撃を それに 敵意のある運命は 君を 取っておいた? FALLIEROファッリエーロ Tutto; l'istessa morteすべてを; 死ですら fuor che perderti, o Bianca.君を 失うことを 除いて、ああ ビアンカよ。 BIANCAビアンカ E se il destinoそれでは もし 運命が ci volesse divisi, ed infelici...私たちが 引き離されるのを 望むならば、そして 不幸に【≒ もし 運命が 私たちを 引き離して、不幸にしようとしている ならば】… |
Mai con maggior coraggio in queste soglie coraggio はそのまま 勇気,度胸 と採っても良いのだが、功を成してヴェネツィアの英雄となったファッリエーロが、愛するビアンカの館に 自信を持って 来ると理解した方が良いように思われる。 conosco a prova il tuo bel cor qual sia; a prova は様々な意味で採れるが、この場合は a tutto prova 絶対に信頼できる,確固とした と同様だろう。 che far chiaro potrò quant'io son grato fare chiaro qlcu. ―に知らせる。 al tuo cortese oprar. Ma di'; qual trovo quale = come dei tanti allori onde tu riedi adorno この onde は di cui で、この場合は d'allori。これが adorno di ql.co. ―で飾られた と繋がる |
N. 5 Recittivo e Duetto [Bianca - Falliero] Bianca Falliero |
Recitativo Allegro 4/4 C major |
FALLIEROファッリエーロ Divisi noi!私たちが 引き離されて! BIANCAビアンカ Pur troppo.残念ながら。 FALLIEROファッリエーロ Oh! ciel!... che dici?ああ! 天よ!… 君は 何を 言っているのか? Fremer mi fai... favella...君は 私を 震えさせている… 話しなさい… Fremo in interrogarti... avresti forse私は 震えている 君に 尋問しながら… ことによると 君は obbliata la fé che mi giurasti?忘れたのか 忠誠【≒ 約束】を それを 君は 私に 誓った? mi avresti tu tradito?...君は 私に 不実であったのか? BIANCAビアンカ Ah!... no: giammai.ああ!… いいや: 決してない。 Ma ti perdo, o Fallier.けれども 私は 君を 失う、ああ ファッリエーロよ。 FALLIEROファッリエーロ Spiegati omai.今こそ うまく説明しなさい。 |
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Duetto Allegro 4/4 A major |
BIANCAビアンカ Sappi che un Dio crudele知りなさい 残酷な神が al nostro amor si oppone...私たちの愛に 反対している 【↑】ことを… Sappi che il padre impone知りなさい 父が 強要している ことを ch'io più non pensi a te.私が もはや 君のことを 思わない ようにと。 FALLIEROファッリエーロ Se tu mi sei fedele,もし 君が 私に 誠実ならば、 se il cor non hai cambiato,もし 君が 心を 変えていないならば、 il genitore, il fato父親に、宿命に io sfido rapirti a me.私は 挑む 君を 私から 奪うように【≒ 君を 私から 奪えるものなら奪ってみろと 挑む】。 BIANCAビアンカ Vana speranza!... Deh, lasciami.虚しい希望だ!… お願いだから、私を 放っておきなさい。 FALLIEROファッリエーロ Qui Contareno aspetto.私は ここで コンタレーノを 待ち受ける。 BIANCAビアンカ Ah! no: dal suo cospettoああ! いけない: 彼の面前から sempre fuggir dei tu...君は いつでも 急いで立ち去ら なければならない… FALLIEROファッリエーロ Perché? favella, o barbara.なぜだ? 話しなさい、ああ 残酷な女よ。 BIANCAビアンカ Non domandar di più.さらに 尋ねるでない。 |
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Andante 4/4 E major |
FALLIEROファッリエーロ Ciel! qual destin terribile天よ! 何と 恐ろしい運命が tronca ogni mia speranza!私の あらゆる 私の希望を 打ち砕いている ことか! BIANCAビアンカ Ciel! come è mai possibile,天よ! いったい どうやったら 可能なのか、 serbar la mia costanza!私の意志の強固【≒ 誠意】を 持ち続けることを BIANCA E FALLIEROビアンンカ と ファッリエーロ A questo colpo orribileこの 恐ろしい一撃に manca la mia virtù.私の徳は 弱っている。 |
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Allegro 4/4 A major |
BIANCAビアンカ Deh! va, ti scongiuro,お願いだから! 行きなさい、私は 君に 懇願する、 restar più non dei.君は もう 留まっては いけない。 FALLIEROファッリエーロ Andrò, ma securo私は 行こう、だが 確信している che infida non sei.君が 不誠実では ないことを。 BIANCAビアンカ T'adoro... lo giuro...私は 君を 熱愛している… 私は そのことを 誓う… consolati... va.安心しなさい… 行きなさい。 |
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(Allegro) 4/4 A major |
BIANCA E FALLIEROビアンンカ と ファッリエーロ Ah! dopo cotantoああ! これほど多くの penar per trovarsi;出会うための苦しみ 【↑】の後で vedersi nel pianto,泣きながら 出会う、 nel pianto lasciarsi;泣きながら 別れる; è pena, è doloreそれは 苦悩だ、悲しみだ che eguale non v'ha,それは 匹敵するものが ない、 è affanno che un coreそれは 悲しみだ それを 心は soffrire non sa.耐える ことができない。 BIANCAビアンカ Deh! va... ti scongiuro.お願いだから! 行きなさい… 私は 君に 懇願する。 FALLIEROファッリエーロ Andrò, ma securo私は 行こう、だが 確信している che infida non sei.君が 不誠実では ないことを。 BIANCAビアンカ T'adoro... lo giuro...私は 君を 熱愛している… 私は そのことを 誓う… consolati... va.安心しなさい… 行きなさい。 |
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[Recitativo] Dopo il Duetto [Bianca - Falliero] |
4/4 (C major) |
SCENA ⅩⅠ第11場 Falliero, indi Costanza.ファッリエーロ、それから コスタンツァ。 FALLIEROファッリエーロ Ella mi fugge: a mille dubbi in preda彼女は 私を 逃れている: 多数の疑いのえじきに me lascia, e a mille angoscie. Un rio sospetto彼女は 私を 放置している、そして 多数の不安の【えじきに】。悪質な疑いが mi sorge in cor ch'ogni tormento avanza.私の心の中に 発生している それは あらゆる苦悩を 凌いでいる。 COSTANZAコスタンツァ (frettolosa)(慌ただしく) Signor...貴君よ… FALLIEROファッリエーロ Fedel Costanza,忠実なコスタンツァよ、 trammi d'angoscia tu.君が 私を 不安から 引き抜きなさい。 COSTANZAコスタンツァ Vieni: è periglio来なさい: 危険だ oltre restar... partir tu dei.もっと長く 留まることは… 君は 去らなければならない。 FALLIEROファッリエーロ Ma priaしかし その前に rassicura l'oppressa anima mia.苦しめられた 私の魂を 元気づけなさい。 COSTANZAコスタンツァ Ah! no: seguimi tostoああ! いいえ: すぐに 私に ついて来なさい se ti cale di Bianca... In queste soglieもし 君に ビアンカについて 気にかかる のならば【≒ 君が ビアンカを 気にかけているならば】… この敷居【≒ 館】で Contaren non ti trovi. A miglior tempoコンタレンが 君と 出会わないように。より適切な時に forse tornar potrai.ことによると 君は 戻る ことができるだろう。 FALLIEROファッリエーロ Ciel! qual mistero!天よ! 何という謎だ! COSTANZAコスタンツァ (traendolo seco)(彼女と一緒に 彼を引っ張って行って) Andiam, vieni, il saprai.行こう、来なさい、君は そのことを 知るだろう。 (partono per una piccola porta)(去る 小さな扉を通って) |
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N. 6 Coro, e Finale Primo Bianca Falliero Contareno Coro |
Maestoso 4/4 C major |
SCENA ⅩⅡ第12場 (Dalla gran porta escono i parenti di Contareno e di Capellio. Dame, cavalieri e gran seguito di Servi, indi Contareno e Capellio medesimi, poi Bianca)大扉から コンタレーノの親族が そして カペッリオの【親族が】 出て来る。侍女たち、騎士たち そして 召使たちの大勢の一行、それから コンタレーノと カペッリオ自身、その後に ビアンカ) CORO合唱 Fausto imene e di gioia cagione【↓】この 幸運な結婚が 歓喜の原因 sovra ogni altro per l'Adria fia questo:になるだろう アドリアにとって あらゆる他のものにまして【≒ この 幸せな結婚は アドリアにとって 他の何よりも 喜びの理由になるだろう】: di due grandi famiglie componeそれは 和解する 二つの大きな一族の l'odio antico alla patria funesto,祖国に 不幸をもたらす 古くからの憎悪を、 e noi tutti congiunge con nodiそして 私たち 皆を 絆で 結び付ける di verace e di salda amistà.真の そして 堅固な 友情が; Sovra ogni altro di gioia cagioneあらゆる他のものにまして 歓喜の原因【になるだろう】 questo Imene per l'Adria sarà.この結婚は アドリアにとって。 |
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Allegro moderato 4/4 C major |
CONTARENOコンタレーノ Sì, congiunti, omai son pieniそうだ、親族たちよ、今こそ いっぱいだ【≒ 満たされた】 i miei voti in questo dì.私の願いは この日に。 CAPELLIOカペッリオ Dei Capellî e Contareni,カペッリ家と コンタレーニ家の le discordie Amor finì.不和を 愛の神が 終わらせた。 CONTARENO E CAPELLIOコンタレーノ と カペッリオ Spettatori al lieto evento喜ばしい出来事の目撃者に rimanete, illustri amici,なりなさい、令名名高い 友たちよ、 dividete in tal momento分かち合いなさい このような瞬間に il contento dei mio cor.私の心の 満足【≒ 喜び】を。 CORO合唱 Il mirarvi appien felici,君が 完全に 幸せであるのを 見ることは、 rende noi felici ancor.私たちも また 幸せに させる。 CAPELLIOカペッリオ Ove è Bianca? appaga omaiビアンカは どこに いるのか? 今こそ 彼女は 満たす di sua vista il mio desire.彼女の見ることで【≒ 彼女を 見ることで】 私の欲求を。 CONTARENOコンタレーノ Qua l'attendo: la vedrai,私は ここで 彼女を 待っている: 君は 彼女を 見るだろう né fia lenta a comparire:彼女が 現れるのは 遅く ない だろう: mira: è dessa.見なさい: 彼女だ。 CAPELLIOカペッリオ Oh come bellaああ 彼女は なんと美しく sempre più rassembra a me!よりいっそう 私に 思い起こすことか【≒ 彼女が なんと ますます美しく 思われることか】! CORO合唱 (incontrando Bianca)(ビアンカに 出会って) Vieni, o nobile donzella,来なさい、ああ 高貴な娘よ、 ogni cor sospira a te.あらゆる心が 君に 溜息をついている。 |
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Andantino 6/8 F major |
SCENA ⅩⅢ第13場 (Bianca e detti)(ビアンカと 前の場の人たち) BIANCAビアンカ Padre... Signor...父よ… 貴君よ… CONTARENOコンタレーノ Appressati.近付きなさい。 (presentandole Capellio)(彼女に カペッリオを 引き合わせて) Ecco il tuo sposo.ここに 君の花婿が。 BIANCAビアンカ (Oh! Dio!)(ああ! 神よ!) CAPELLIOカペッリオ (accorgendosi del turbamento di Bianca)(ビアンカの動揺に 気付いて) Bianca!...ビアンカよ!… (piano a Contareno)(小声で コンタレーノに) Turbata sembrami...私には 彼女は 動揺したように 思われる… che mai pensar degg'io?私は いったい なにを 考える べきなのか【≒ どう 思えば いいのか】? CONTARENOコンタレーノ Nulla, Signor: tremante何もない、貴君よ: 震えている è sempre in tale istanteそうした瞬間に いつでも d'una donzella il cor.若い娘の心は (a Bianca)(ビアンカに) Figlia, al dover per poco娘よ、少しの間 義務に dia loco il tuo pudor.君の恥じらいが 場所を譲るように。 |
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(Andantino) 6/8 F major |
CAPELLIOカペッリオ Bianca, alla mia venturaビアンカよ、私の運命に manca il tuo solo assenso:ただ 君の同意 だけが 欠けている: né il tuo bel labbro, io penso,私は 思っている、君の美しい唇は、 vorrà negarlo a me.私に それを 否定する つもりではない と。 BIANCAビアンカ (facendosi forza)(自分の感情を 抑えて) Certo, già n'eri allora君は 既に それを 確実にしていた、 che la mia man chiedesti.君が 私の手を 求めた 【↑】時に。 Del padre quello avesti,君は 父のそれ【≒ 同意】を 受け取った、 e bastò quello a te.それ【≒ 同意】は 君に 十分であった。 CAPELLIOカペッリオ (Ah! qual nel suo rispondere(ああ! なんと 彼女の返事に traspar cordoglio e pena!)深い悲しみと 苦悩が 現れている 【↑】ことか! CONTARENOコンタレーノ (Ah! che non sa nascondere(ああ!彼女は 隠すことを できない le smanie ond'ella è piena.動揺を それで 彼女は いっぱいである。 Ma la saprò costringere:しかし 私は 彼女に 強いることが できるだろう: ma il voler mio farà.)しかし 彼女は 私の望むことを するだろう。) BIANCAビアンカ (Ah! che non so nascondere(ああ! 私は 隠す ことができない le smanie ond'io son piena.動揺を それで 私は いっぱいである。 Tanto soffrire e fingere,これほどたくさんの 我慢することは そして ふりをすることは è duol che egual non ha.)苦悩だ それは 匹敵するものを 持たない。) CAPELLIOカペッリオ (Oh ciel! tal nodo a stringere(ああ 天よ! このような契りを 結ぶために mesta così verrà?)彼女は これほどに 悲し気に なるのだろうか?) |
楽譜上では速度、拍子、調性とも変わらず前から続いているが、ここから三重唱を成しているので区切りを入れた。 Certo, già n'eri allora クリティカルエディション総譜では Carto, とカンマが打ってあるが、これだと もちろん、 と一区切りになってしまう。実際にはカンマ無しで、eri certo 採るべき。ne = di questo、この場合は d'assenso。つまり Certo n'eri = eri certo d'assenso。 |
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Allegro 4/4 C major |
CONTARENOコンタレーノ Ecco espressi in questo foglioほら ここに 私は 表現した【≒ 書いた】 この書類に i tuoi patti in un coi miei.君の取り決めを 私のもの【≒ 私の取り決め】と共に 一つに。 il tuo nome e quel di lei君の名前と 彼女のそれ【≒ 彼女の名前】が il contratto compirà.契約を 完了する。 CAPELLIOカペッリオ (prende il foglio e va a segnarlo ad un tavolino)(書類を 手に取り そして それに 署名するために 小テーブルに 行く) Al cospetto de' congiunti親族の面前で segno il foglio.私は 書類に 署名する。 BIANCAビアンカ (appressandosi supplichevole a Contareno)(嘆願するように コンタレーノに 近付いて) Ah! padre mio.ああ! 私の父よ。 CONTARENOコンタレーノ Ubbidisci.従いなさい。 BIANCAビアンカ Ah! non poss'io.ああ! 私は できない。 ([Capellio si alza] dal tavolino)([カペッリオは 立ち上がる] 小テーブルから) CORO合唱 Bianca segni.ビアンカが 署名するように。 CONTARENOコンタレーノ (a Bianca)(ビアンカに) Taci... va.黙りなさい… 行きなさい。 BIANCAビアンカ (avviandosi)(【小テーブルに】 向かって) (Cruda sorte!) Si ubbidisca.(残酷な運命だ!) 従おう。 SCENA ULTIMA最終場 (Falliero invano trattenuto da Costanza, e detti)(ファッリエーロ 虚しく コスタンツァによって 引き止められて、そして 前の場の人たち) FALLIEROファッリエーロ Bianca!... arresta.ビアンカよ!… 止めなさい! BIANCAビアンカ Oh ciel!ああ 天よ! CAPELLIOカペッリオ Che sento?私は 何を 聞いているのか? FALLIEROファッリエーロ (inoltrandosi)(入り込んで) Pria m'uccidi.まず 私を 殺しなさい。 CONTARENOコンタレーノ Che ardimento!なんという大胆! BIANCAビアンカ Ah Fallier!...ああ ファッリエール!… CONTARENOコンタレーノ (Oh! mio furor!)(ああ! 私の怒りが!) FALLIEROファッリエーロ Questa, o Bianca, è la tua fede?これが、ああ ビアンカよ、君の誠意なのか? così serbi i giuramenti?このように 誓いを 守るのか? CONTARENOコンタレーノ Temerario!向こう見ずな男め! CAPELLIO E COROカペッリオ と 合唱 Quali accenti?どんな口調なのか【≒ 【ファッリエーロは】 何を 言っているのか】? FALLIEROファッリエーロ Deh! perdonami, o Signor.お願いだから! 私を 容赦しなさい、ああ 貴君よ。 Bianca adoro, a me si diede...私は ビアンカを 熱愛している、彼女は 私に 自身を 与えた… mi giurò costanza e amor.彼女は 私に 意志の強固【≒ 不変の心】と 愛を 誓った。 |
Bianca adoro, a me si diede... a me si diede から、既に二人が肉体的にも結ばれていたことが仄めかされている。なおこの一節は印刷台本では la fé mi diede... 彼女は 私に 誠実を 与えた… になっている。この場合の fé は fedeltà と同義で、貞節を意味する。 |
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Andante maestoso 2/4 A-flat major |
BIANCAQ, CONTARENO, CAPELLIO E COROビアンカ、コンタレーノ、カペッリオ と 合唱 Ah!ああ! CONTARENOコンタレーノ (Importuno!... in qual momento(うるさい奴め!… 何という瞬間に si presenta, e mi sorprende!彼は 現れて、そして 彼は 私を 驚かせる ことか! Il furore che mi accende激怒が それは 私を 燃やす m'impedisce il favellar.)私に 話すことを 邪魔している【≒ 怒りが 私を 燃え上らせて 言葉が 出てこない】。) FALLIEROファッリエーロ (Da un istante, da un accento一瞬によって、一口調【≒ 一言】によって la mia vita, o ciel, dipende:私の命は、ああ 天よ、決まる: se pietà di me non prendeもし 彼女が 私に 哀れみを 感じなければ non mi resta che spirar.)私には 死ぬ他は 残っていない。) CAPELLIOカペッリオ (Ah! di Bianca il turbamento(ああ! ビアンカの動揺を abbastanza il cor comprende, sì.心は 十分に 理解している、そうだ。 La sorpresa mi contende驚きが 私に 拒否している di alzar gli occhi e di parlar.)両目を 上げることを そして 話すことを。) BIANCA E FALLIEROビアンンカ (Da un istante, da un accento(一瞬によって、一口調【≒ 一言】によって la mia vita, o ciel, dipende:私の命は、ああ 天よ、決まる: se pietà di me non prendeもし 彼が 哀れみを 感じなければ non mi resta che spirar.)私には 死ぬ他は 残っていない。) COSTANZA E COROコスタンツァ と 合唱 (Più non ponno favellare.)(彼らは もはや 話す ことができない。) |
コンチェルタート。 |
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Allegro 4/4 A-flat major |
CONTARENOコンタレーノ Con qual dritto il piè ponesti,どのような権利で 君は 足を 置いたのか【≒ やって来たのか】、 temerario, in queste porte?向こう見ずな男よ、この門々【≒ 館】に? FALLIEROファッリエーロ Con qual dritto? ah! l'intendesti:どのような権利で だと? ああ 君は それを 聞いた: Bianca adoro.私は ビアンカを 熱愛している と。 CAPELLIOカペッリオ (avanzandosi)(近付いて) È mia consorte.彼女は 私の 配偶者だ。 FALLIEROファッリエーロ Ella è mia: concorde affetto彼女は 私の女だ: 合意している情愛が non le destre, i cori unì.【二人の】右手ではなく、心を 結び付けた。 Pria dovrai passarmi il petto君は 私の胸を 貫きなさい che rapirla a me così.彼女を 私から 強奪するよりも 【↑】前に。 CAPELLIOカペッリオ Esci, audace.出て行け、大胆な男よ。 BIANCAビアンカ Oh ciel!... fermate.ああ 天よ!… 止めなさい。 FALLIEROファッリエーロ (a Bianca)(ビアンカに) Infedele!不実な者め! BIANCAビアンカ Oh pena!ああ 苦悩だ! CONTARENOコンタレーノ Oh ardire!ああ 不遜だ! CONTARENO E CAPELLIOコンタレーノ と カペッリオ Esci... parti.出て行け… 去れ。 CORO合唱 Ah vi calmate!ああ 落ち着きなさい! CONTARENOコンタレーノ Trema!恐れよ! CAPELLIOカペッリオ Indegno! io so punire...恥ずべき男め! 私は 罰する ことができる… CONTARENOコンタレーノ Servi, olà; dal mio cospetto召使たちよ、そら; 私の面前から sia scacciato.彼が 追い出されるように。 BIANCAビアンカ Oh rio dolor!ああ 悪質な【≒ ひどい】苦悩だ! FALLIEROファッリエーロ (ai servi che si avanzano verso di lui, indi a Contareno e Capellio)(召使たちに その者たちは 彼に向かって 迫って来る、それから コンタレーノに そして カペッリオに) Ah! codardi... questa offesa,ああ! 臆病者たちめ… questo tratto infame e vile,この 悪辣な態度は そして 卑劣な【態度は】、 chi voi siete appien palesa,それを 君たちは 完全に 明らかにしている、 pone il colmo al mio furor. 頂点を 私の怒りに 置いている【≒ ―な態度で 私の怒りは 頂点に 達している】。 CONTARENO E CAPELLIOコンタレーノ と カペッリオ Va: t'invola a noi davanti行け、私たちの前から 消え去れ se ti cal del proprio onor.もし 君に 気にかかるのならば 自分の名誉が。 BIANCAビアンカ Ah! fra tanti affetti e tantiああ! たくさんの情愛の間で そして たくさんの geme oppresso e scoppia il cor.心は 苦しめられて 呻いている そして 破裂している。 FALLIEROファッリエーロ Scorgerete in brevi istanti君たちは 見付けるだろう 短い瞬間で quel che può furente amor.激怒した愛が できる ことを。 CORO合唱 Se ti cal del proprio onor.もし 君に 気にかかるのならば 自分の名誉が。 |
Pria dovrai passarmi il petto この場合の dovere は命令。 |
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Veloce 2/2 C major |
FALLIERO, CONTARENO E CAPELLIOファッリエーロ、コンタレーノ と カペッリオ Flutti irati e resistenti荒れ狂った そして 抵抗力のある【≒ 逆らう】波が al furor delle tempeste,嵐の激情で UFFICIALE E CORO役人 と 合唱 Flutti irati荒れ狂った波が al furor delle tempeste,嵐の激情で、 BIANCA E COSTANZAビアンカ と コスタンツァ Al furor delle tempeste,嵐の激情で、 FALLIERO, CONTARENO E CAPELLIOファッリエーロ、コンタレーノ と カペッリオ fiero turbine di venti残忍な 風の旋風が che scompiglia le foreste,それは 森を めちゃくちゃにする、 UFFICIALE E CORO役人 と 合唱 fiero turbine残忍な旋風が che scompiglia le foreste,それは 森を めちゃくちゃにする、 BIANCA E COSTANZAビアンカ と コスタンツァ che scompiglia le foreste,それは 森を めちゃくちゃにする、 BIANCA, FALLIERO, CONTARENO E CAPELLIOビアンカ、ファッリエーロ、コンタレーノ と カペッリオ flutti irati e resistenti荒れ狂った そして 抵抗力のある【≒ 逆らう】波が al furor delle tempeste,嵐の激情で、 UFFICIALE E CORO役人 と 合唱 Etna ardente che disserra燃えているエトナ山は それは 発射する【≒ 吹き出す】 mille fiamme di sotterra,多数の 地下の炎を、 BIANCA, FALLIERO, CONTARENO E CAPELLIOビアンカ、ファッリエーロ、コンタレーノ と カペッリオ Etna ardente che disserra燃えているエトナ山は それは 発射する【≒ 吹き出す】 mille fiamme di sotterra,多数の 地下の炎を、 non eguaglian lo scompiglio匹敵しない 混乱に che in quest'anima si fa,それは この魂に 引き起こされた、 BIANCA, FALLIERO, CONTARENO, UFFICIALE, CAPELLIO E COROビアンカ、ファッリエーロ、コンタレーノ、役人、カペッリオ と 合唱 flutti irati e resistenti荒れ狂った そして 抵抗力のある【≒ 逆らう】波が al furor delle tempeste,嵐の激情で fiero turbine di venti残忍な 風の旋風が che scompiglia le foreste,それは 森を めちゃくちゃにする、 Etna ardente che disserra燃えているエトナ山は それは 発射する【≒ 吹き出す】 mille fiamme di sotterra,多数の 地下の炎を、 non eguaglian lo scompiglio匹敵しない 混乱に che in quest'anima si fa,それは この魂に 引き起こされた、 BIANCA, COSTANZA E CORO SOPRANIビアンカ、コスタンツァ と 合唱 ソプラノ Priva sono di consiglio,私は 慎重さ【≒ 理性】を欠いている、 il mio duol più fren non ha.私の苦悩は 抑制を 持つことができない【≒ 止まる所を知らない】。 FALLIERO, CONTARENO, UFFICIALE E CORO TENORI E BASSIファッリエーロ、コンタレーノ、役人 と 合唱 テノール と バス Privo sono di consiglio,私は 慎重さ【≒ 理性】を欠いている、 l'ira mia più fren non ha.私の怒りは 抑制を 持つことができない【≒ 止まる所を知らない】。 CAPELLIOカペッリオ Io privo sono di consiglio,私は 慎重さ【≒ 理性】を欠いている、 l'ira mia più fren non ha.私の怒りは 抑制を 持つことができない【≒ 止まる所を知らない】。 |
ストレッタ。 |
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Più mosso 2/2 C major |
CONTARENO, UFFICIALE E CAPELLIOコンタレーノ、役人 と カペッリオ no, l'ira mia più fren non ha.いいや、私の怒りは 抑制を 持つことができない【≒ 止まる所を知らない】。 BIANCA, FALLIERO, COSTANZA E COROビアンカ、ファッリエーロ、コスタンツァ と 合唱 no, il mio duol più fren non ha.いいや、抑制を 持つことができない【≒ 止まる所を知らない】。 |
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ATTO SECONDO | |||
[Recitativo] |
4/4 (C major) |
SCENA PRIMA第1場 (Atrio interno nel palazzo di Contareno. In fondo vedesi un muro che comunica col palazzo dell'Ambasciatore di Spagna. È notte)(コンタレーノの館の内側の中庭。奥には 壁が 見える それは スペイン大使の館につながっている。夜である (Bianca e Costanza escono guardinghe. Bianca è tremante)(ビアンカと コスタンツァが 用心深く 出て来る。ビアンカは 震えている) BIANCAビアンカ Al mio timor, deh! cedi: alle mie stanze私の恐れに、どうか! 譲歩しなさい: 私の部屋に ritorniamo, o Costanza.戻ろう、ああ コスタンツァよ。 COSTANZAコスタンツァ Ei muore, o Bianca,彼は 死ぬ、ああ ビアンカよ、 sì di sua mano ei muor, ove tu neghiそうだ 彼【自身】の手で 彼は死ぬ、もし 君が 拒むなら d'ascoltarlo una volta. Or via, ten prego,もう一度 彼【の言うこと】を 聞くことを。さあ 向こうへ、私は 君に そのことを 懇願する、 resta, e fa cor... Vedi? deserto è il loco,留まりなさい、そして 勇気を 出しなさい… 君は 見えるか? 【この】場所は 無人だ、 alta la notte, e per un solo ingresso夜は 深く、そして 一つの入り口を通ってしか in quest'atrio si viene.この中庭に 入れない。 BIANCAビアンカ E se per quelloそれでは もし あれ【= あの扉】を 通って al suo partir si fraponesse inciampo?...彼が 去る時に 邪魔者が 間に入ったならば? COSTANZAコスタンツァ Oltre quel muro avria Fallier lo scampo.あの壁の向こうに ファッリエールは 逃げ道を 手に入れるだろうに。 BIANCAビアンカ Qual muro?あの壁? COSTANZAコスタンツァ Quel che del ministro ispanoあれだ それは スペインの公使の mette al palagio.館に 通じている。 BIANCAビアンカ Oh! ciel! perduto ei foraああ! 天よ! 彼は 破滅するだろう se lo scoprisse alcun.もし 誰かが 彼を 見付けたら。 COSTANZAコスタンツァ Il tuo pensiero君の考えは finge perigli, ed il verace obblia.危険を 憶測している、そして それは 真実を 忘れている。 Tua cruda ritrosia君の 酷い引っ込み思案は al misero dà morte.哀れな男に 死を 与えるだろう。 BIANCAビアンカ Va... l'introduci...行きなさい… 彼を 招き入れなさい… (Costanza parte)(コスタンツァは 去る) è fissa omai mia sorte.今や 私の運命は 定められた。 SCENA Ⅱ第2場 (Bianca indi Falliero)(ビアンカ それから ファッリエーロ) BIANCAビアンカ Lassa! ogni istante addoppiaああ! あらゆる瞬間が 倍加している l'affanno del mio cor... facil fui troppo私の心の心配を… 私は あまりにも 容易だった a cederti, o Costanza... Oh! ciel, non sia君に 譲歩するのは【≒ 私は あまりにも 安易に 君に 譲歩してしまった】、ああ コスタンツァよ… ああ! 天よ、 di estremo danno il mio timor foriero!私の不安がが 甚だしい打撃の前触れで 【↑】ないように! Oh incertezza crudel!ああ ひどい躊躇いよ! FALLIEROファッリエーロ (entra agitato)(取り乱して 入る) Bianca!ビアンカよ! BIANCAビアンカ (andandogli incontro tremando)彼の方に 行って 震えながら Falliero!ファッリエーロよ! FALLIEROファッリエーロ Tutto è perduto... invan discesi ai prieghi...すべてが 失われた… 虚しく 私は 懇願に 身を屈めた【≒ 私は 伏して懇願したが 無駄だった】… in questa notte istessaまさに この夜に n'andrai sposa a Capellio... a noi non resta君は カペッリオの花嫁に なるだろう… 私たちには 残っていない che la fuga o la morte.駆け落ちか あるいは 死か の他には BIANCAビアンカ Oh! Dio! non avviああ! 神よ! ないのか riparo dunque a questo passo estremo?それでは 手段を この 甚だしい歩み【≒ 一大事】に? FALLIEROファッリエーロ Che fuggire, o morir... Decidi...駆け落ちするか、それとも 死ぬか… 決めなさい… BIANCAビアンカ (Io tremo.)(私は 震える) FALLIEROファッリエーロ Bianca!... esitar puoi tu?ビアンカよ!… 君は 躊躇う ことができるのか? BIANCAビアンカ Tal onta al padreそれほどの不名誉を 父に recar dovrei?私が もたらす べきだろうか? FALLIEROファッリエーロ Maggior dell'onta ei reca彼は もたらしている 不名誉よりも 大きな sventura eterna a te. Se ancor ricusi,永遠の不幸を 君に。もし なおも 君が 拒むならば、 se incerta ancor ti staiもし なおも 君が 躊躇った ままでいるならば o più non m'ami, o non mi amasti mai.あるいは 君は もう 私を 愛していないのか、あるいは 君は 私を まったく 愛していなかったか だ。 BIANCAビアンカ Ah! t'amo sì: più di me stessa t'amo,ああ! 私は 君を これほどに 愛している: 私自身よりも 私は 君を 愛している、 ma figlia io sono... Deh ti caglia almenoけれども 私は 娘だ… お願いだから 少なくとも 心配しなさい dell'onor mio.私の名誉を。 |
Tutto è perduto... invan discesi ai prieghi... この場合の discendere = scendere は piegarsi と同義 身を屈める。 Oh! Dio! non avvi avvi = vi + ha ある。c'è と同義。 ma figlia io sono... Deh ti caglia almeno この場合の cagliare は 心配する。 |
N. 7 Recitativo e Duettino [Bianca - Falliero] Bianca Falliero |
Recitativo Moderato 4/4 (C major) |
FALLIEROファッリエーロ Dell'onor tuo! crudele!君の名誉の だって! 酷い人だ! Caglia a te di mia vita: essa dipende君にあっては 私の人生を 心配しなさい: それ【= (ファッリエーロの)命 女性名詞】は 決まる da questo istante, da un tuo solo accento.この瞬間によって、君のたった一言によって。 BIANCAビアンカ La tua vita... oh! Fallier! qual rio cimento!君の人生… ああ! ファッリエーロよ! なんと 酷い試練だ! |
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Duetto Maestoso 12/8 E-flat major |
FALLIEROファッリエーロ Va crudel... vedrai l'effetto行きなさい 残酷な者め… 君は 見るだろう 結果を della tua virtù fatale:君の 害のある美徳の: Te consorte al mio rivale,私の恋敵の配偶者である 君を 【太陽が 見るであろう 時】 me trafitto il sol vedrà.【明朝の】太陽は 刺し貫かれた 私を 見るだろう。 BIANCAビアンカ Senti, oh Dio... l'orrendo aspetto聞きなさい、ああ 神よ… 恐ろしい局面を de' miei mali appien discerno.私の不幸の 私は 見極めている。 Mi condanna a pianto eterno私を 永遠の涙に 強いている del destin la crudeltà.運命の残酷さが。 FALLIEROファッリエーロ Vinci meco il tuo destino.私と共に 君の運命に 打ち勝ちなさい。 BIANCAビアンカ Ah! sperarlo il cor non osa.ああ! 私の心は それを 思い切って 期待する ことはできない。 FALLIEROファッリエーロ Deh! risolvi... è il dì vicino.お願いだから! 決心しなさい… 日【≒ 夜明け】は 近い。 BIANCAビアンカ Sì;... decisi... io son tua sposa.そうだ… 私は 決心した… 私は 君の花嫁だ。 FALLIEROファッリエーロ Ch'io ti abbracci: ha vinto amore.私が 君を 抱擁するように:愛が 勝った。 BIANCAビアンカ Più timore il cor non ha.心は もう 不安を 持っていない。 BIANCA E FALLIEROビアンカ と ファッリエーロ Questo istante, mia speranza,この瞬間が、私の希望【の人】よ、 de' miei dì, de' tuoi decide;決める 私の日【≒ 人生】を、君の【人生を】; ma se è ver che alla costanza,しかし もし 本当ならば 意志の強固【≒ 不変の心】に、 se a virtude il ciel sorride;もし 美徳に 天が 微笑むことが【≒ もし 天が 不変の心に、美徳に 微笑むことが 本当であるならば】; mille giorni di contento多数の 喜びの日々を tal momento apporterà.こうした瞬間【= この瞬間 = 今】が もたらすだろう。 FALLIEROファッリエーロ Ch'io ti abbracci.私が 君を 抱擁するように。 BIANCAビアンカ Son tua sposa.私は 君の花嫁だ。 |
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[Recitativo] Dopo il Duett[in]o |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅲ第3場 (Costanza frettolosa, e detti)(コスタンツァ 大急ぎで、そして 前の場の人たち) COSTANZAコスタンツァ (entra mentre Bianca, e Falliero stanno per uscire)(入る ビアンカと、ファッリエーロが まさに 出ようと している時に) Fermate... siam perduti: a questa volta止まりなさい… 私たちは 破滅だ: この回に【≒ 今】 si appressa Contareno: impor lo intesiコンタレーノが 近付いている: 私は 聞いた 彼が 命じるのを che qui scenda tu stessa.ここに 君自身が 赴くことを。 BIANCAビアンカ Avversa sorte!敵対する運命よ! Fu verace il timor.不安は 本当だった。 FALLIEROファッリエーロ Vieni: sottrarci来なさい: 私たちは 逃れる per altra parte a quel crudel sapremo.ことができるだろう 別の側を通って あの残酷な者から。 BIANCAビアンカ Ah! null'altra ve n'ha.ああ! 別のもの【≒ 反対側】は 何もない。 FALLIEROファッリエーロ Null'altra!.. io fremo.別のもの【≒ 反対側】は 何もない だって!… 私は 震える。 Che far?...どうすればよいのか?… COSTANZAコスタンツァ Fuggir dei solo: a te non resta君は 一人で 逃げるべきだ: 君には 残っていない che quel muro varcar.あの壁を 越えることの 他は。 FALLIEROファッリエーロ Guidami.私を 案内しなさい。 BIANCAビアンカ Ah! quelloああ! あれは è dell'ispano Ambasciator l'ostello.スペイン大使の住居だ。 Morte ti sta sul capo.死が 君の頭の上に ある。 FALLIEROファッリエーロ A te lo sdegno君には 怒りが del padre tuo... peggior di morte assai君の父の… 死よりも さらに 悪い s'ei qui mi scopre... addio... mi rivedrai.もし 彼が ここで 私を 見つけるならば… さようなら… 君は 私に 再会するだろう。 parte (frettoloso [assieme a Costanza])去る (大急ぎで [コスタンツァと共に]) SCENA Ⅳ第4場 (Bianca, indi Contareno con seguito)(ビアンカ、それから コンタレーノ 従者の一行と共に) BIANCAビアンカ Veglia, o ciel, su di lui: guida i suoi passi注意を払いなさい、ああ 天よ、彼に: 彼の歩みを 案内しなさい per quel funesto loco. Ardir mio core,あの 不幸をもたらす場所に。私の心は 思い切ってする、 si appressa il genitor.父親が 近付いている。 CONTARENOコンタレーノ Bianca!ビアンカよ! BIANCAビアンカ Signore.貴君よ。 CONTARENOコンタレーノ Il tuo venir qua pronta君の来ることが ここに 素早く chiaro mi fa che ti arrendesti alfine私に 明らかに している【≒ 君が 速やかかに ここに 来たことで 私には はっきり 分かった】 君が ついに 従った ことを al paterno voler. Capellio è presso.父の希望に。カペッリオは 近くにいる。 In questo istante istessoこの まさに瞬間に nel domestico tempio io vo' compito私は 家族の聖堂で 遂行されることを 望んでいる segretamente di tue nozze il rito.密かに 君の結婚式の儀式を。 BIANCAビアンカ Padre!...父よ!… CONTARENOコンタレーノ Non più: intendesti.もう よい: 君は 【私の言うことを】 分かった。 Giunge il tuo sposo.君の花婿が 着く。 BIANCAビアンカ Oh! mia sventura estrema!ああ! 私の 甚だしい不幸よ! m'uccidi pria...その前に 私を 殺しなさい… CONTARENOコンタレーノ Taci, ubbidisci... e trema.黙りなさい、従いなさい… そして 震えなさい。 SCENA Ⅴ第5場 (Capellio con seguito, e detti)(カペッリオ 従者の一行と共に、そして 前の場の人たち) CONTARENOコンタレーノ Vieni Capellio: le tue rare doti来なさい カペッリオよ: 君の たぐいまれな天分が vinsero Bianca alfin: ella consenteついに ビアンカを 射止めた: 彼女は 同意している all'imeneo bramato.切望された結婚に。 (a Bianca)(ビアンカに) Avvicinati.近付きなさい。 BIANCAビアンカ (Oh pena!)(ああ 苦悩だ!) CAPELLIOカペッリオ Oh! me beato!ああ! 私は 最高に幸せだ! Bianca, te sposa a forzaビアンカよ、君を 花嫁に 力ずくで io non avrei voluto, e altrui lasciarti私は 望んでいなかったのだが、そして 他の人に 君を 放置する【≒ 手放す】 non potea senza pena. Or che all'altareことを 私は できなかった 苦悩なしに。今 祭壇に spontanea vieni e il bel cor mi dai,君が 自発的に 来て そして 美しい心を 私 与えている 【↑】からには、 lieto e felice oltre ogni dir mi fai.君は 私を 喜ばしく そして 幸福に している あらゆる言葉を 越えて。 BIANCAビアンカ (Misera me!)(哀れな私!) CAPELLIOカペッリオ Un tuo detto君の言葉が mi rassicuri alfin... ma che vegg'io?ついに 私に 確信を抱かせるように… だが 私は 何を 見ているのか? Pur turbata sei tu!君は なおも 混乱している! CONTARENOコンタレーノ (minacciosamente)(ひどい剣幕で) Bianca!ビアンカ! BIANCAビアンカ Ah! non possoああ! 私は できない più tacer, né soffrir... Tropp'oltre, o padre,さらに 黙っていることを、耐えることも 【できない】… あまりにも もっと先へ、ああ 父よ、 estendi i dritti tuoi.君は 君の権利を 拡大している【≒ 父の権利を 濫用している】。 CONTARENOコンタレーノ Perfida!恩知らずな女め! CAPELLIOカペッリオ (a Contareno)(コンタレーノに) All'onta恥辱に di un novello rifiuto eccomi esposto,新たな拒否の 私は ここに 晒された、 Contareno, per te. L'ultima è questaコンタレーノよ、君によって【≒ コンタレーノよ、君のせいで (ビアンカから) 再び 拒まれるという 不名誉を 私は 被った】。最後だ この offesa ch'io ricevo... Addio.冒涜が それを 私は 受け止める… さようなら。 (per partire)(去ろうとする) CONTARENOコンタレーノ (arrestandolo)(彼を 止めて) Ti arresta.止まりなさい。 |
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N. 8 Scena e Duetto [Bianca - Contareno] Bianca Contareno Coro |
Recitativo Moderato 4/4 major |
CONTARENOコンタレーノ (volgendosi a Bianca)(ビアンカの方に 向いて) Come potesti, indegna,どうして 君は できたのだ、恥ずべき女め、 proferir tai parole, e con qual fronteそのような言葉を 言うことが、そして なんという 顔つきで sfidar l'ira paterna! Essa fia grave,父の怒りに 立ち向かう 【ことができたのだ】! それ【= (2行下の)不名誉 (女性単数)】は 深刻だろう、 irreparabil fia修復できないだろう come il tuo fallo, e la vergogna mia.君の過ちと 同じくらい、そして 私の恥は【≒ 私の被った不名誉は、君の過ちと同様に 重大かつ取り返しがつかないだろう】。 Trema: da questo punto震えなさい: この時点から più figlia a me non sei: tu mi costringi,君は もはや 私の娘ではない: 君は 私に 無理にさせている、 la paterna pietà posta in obblio,父の哀れみを 忘却に 置かれて、 perfida, a maledir...不実な女よ、呪うことを【≒ 君は、私が 父の哀れみを 忘れて 君を呪うように 仕向けている、恩知らずの女め】… |
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Allegro 4/4 (C major) |
BIANCAビアンカ Ah!...ああ!… (atterrita prostrandosi)(恐怖に取りつかれて 平伏して) Padre mio!私の父よ! CAPELLIOカペッリオ (movendosi)(心を動かして【≒ 同情して】) Ah!...ああ!… |
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[Duetto] Allegro 4/4 C major |
CONTARENOコンタレーノ Non proferir tal nome,そのような名前を 口に出すでない、 sdegno ed orror mi desta:私に 怒りと 憎悪を 引き起こす: tutto a soffrir ti appresta,すべてを 耐える 用意をしなさい【≒ どんなことも 耐えられるよう 覚悟しておきなさい】、 bandita andrai da me.君は 私から 追放され なければならない。 BIANCAビアンカ Quanto ho sofferto, e comeどれだけ 私が 耐えたか、そして どのようにして piansi al tuo piede il sai.私が 君の足元で 泣いたか 君は それを 知っている。 Più non mi resta omai今は 私には もう 残っていない a sopportar da te.君がもとで 耐えることは。 CONTARENOコンタレーノ Perfida!恩知らずの女め! (odesi picchiare fortemente all'ingresso. Contareno si arresta)(入り口で 強く 【扉を】 打つのが 聞こえる。コンタレーノは 【話すのを】 止める) BIANCAビアンカ Oh ciel!ああ 天よ! CONTARENOコンタレーノ Chi battere誰が 【↓】厚かましくも 叩いているのか ardisce a queste porte?この戸を? SCENA Ⅵ第6場 (il Cancelliere del Consiglio dei tre, e detti)(三人評議会の書記官、そして 前の場の人たち) CONTARENO E CAPELLIOコンタレーノ と カペッリオ Pisani!ピサーニだ! (Il Cancelliere porge un foglio a Contareno)(書記官は 書類を コンタレーノに 手渡す) CONTARENOコンタレーノ (sorpreso)(驚いて) Che sarà?それは 何だろうか? CAPELLIOカペッリオ (sorpreso)(驚いて) Che sarà?それは 何だろうか? BIANCAビアンカ (sorpresa)(驚いて) Che sarà?それは 何だろうか? CONTARENOコンタレーノ legge (da sé)(自分一人で) Vieni dei tre al Consiglio: in questo istante三人評議会に 来なさい: この瞬間に entro il palagio del ministro ispanoスペイン大使の館の中で dalle veglianti scorte注意を払っている護衛隊【≒ 巡回中の警備員】によって Fallier fu colto.ファッリエールは 不意を襲われた【≒ たった今 ファッリエーロが スペイン大使の館の敷地内で 巡回中の警備員に 取り押さえられた】。 (a Capellio)(カペッリオに) Prendi, leggi. (Oh sorte!)手に取りなさい、読みなさい。(ああ 天よ!) |
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Andantino 12/8 E-flat major |
(Cadde il fellone... oh! giubilo!(裏切り者は 落ちた… ああ! 歓喜だ! oh! non pensato evento!ああ! 思いもしなかった 出来事だ! BIANCAビアンカ (Ciel, qual mistero!... ahi misera!(天よ、何という謎だ!… ああ 哀れな女だ! Si accresce il mio spavento.私の不安は 増大している。 A qual maggior tormentoどのような より大きな苦悩に son io serbata ancor?)私は さらに 取って置かれているのか【≒ どのような より大きな苦悩が なおも 私を 待ち受けているのか】?) CONTARENOコンタレーノ Dà loco al mio contento,私の喜びに 場所を 与えている furor, che m'empi il cor.)怒りは、それは 私の心を 満たしている【≒ 私の心を 満たしていた 怒りは 喜びに かき消された】。) |
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Allegro 4/4 C major |
CAPELLIOカペッリオ (a Contareno)(コンタレーノに) Prendi il foglio: andiamo: affrettati.書類を 手に取りなさい: 行こう: 急ぎなさい。 (esce con Pisani)(出る ピザーニと一緒に) CONTARENOコンタレーノ (per seguir Capellio)(カペッリオを 追うために) Si punisca il traditore.裏切り者が 罰せられるように。 BIANCAビアンカ (spaventata)(ぎょっとして) Traditor? chi mai? deh! spiegati.裏切り者 だって? いったい 誰が? お願いだから! うまく説明しなさい。 CONTARENOコンタレーノ Lo saprai per tuo terrore.それを 君は 知るだろう 君の恐怖を 通じて。 BIANCAビアンカ Forse?... ahi!... lassa!...ことによると?… ああ!… 哀れな!… CONTARENOコンタレーノ Il vil Falliero卑劣なファッリエーロは è un fellone.裏切り者だ。 BIANCAビアンカ Ah! non è vero.ああ! それは 真実ではない。 CONTARENOコンタレーノ Vanne.ここから 行きなさい。 BIANCAビアンカ Ascolta.聞きなさい。 CONTARENOコンタレーノ Taci... scostati.黙りなさい… 遠ざかりなさい。 BIANCAビアンカ Pria m'uccidi o genitor.その前に 私を 殺しなさい ああ 父よ。 CONTARENOコンタレーノ Servi, ancelle, alle sue stanze従者たちよ、侍女たちよ、彼女の部屋に quell'indegna trascinate.この恥ずべき女を 連れて行きなさい。 BIANCAビアンカ Ah! crudeli! mi lasciate...ああ! 残酷な者たちよ! 私を 放っておきなさい… CONTARENOコンタレーノ Ubbidite.従いなさい。 BIANCAビアンカ Oh! mio dolor!ああ! 私の苦悩よ! |
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[Allegro] 2/2 C major |
CONTARENOコンタレーノ Sorte amica, a vendicarmi好意的な運命よ、仕返しをするための opportune a me dai l'armi:適切な武器を 私に 与えなさい: del piacer della vendetta復讐の喜びを già si pasce il mio furor.私の怒りは 既に 糧としている。 BIANCAビアンカ Deh! consenti di ascoltarmi...お願いだから! 私【の言うこと】を 聞くことを 同意しなさい… padre mio... deh! non lasciarmi...私の父よ… お願いだから! 私を 【部屋に】 残すでない… Ciel pietoso, a te si aspetta慈悲深い天よ、君に 期待する di proteggere Fallier.ファッリエールを 保護することを。 CONTARENOコンタレーノ Quell'indegna trascinate.あの恥ずべき女を 連れて行きなさい。 BIANCAビアンカ Ah! crudeli! mi lasciate...ああ! 残酷な者たちよ! 私を 放っておきなさい… CONTARENOコンタレーノ Ubbidite.従いなさい。 BIANCAビアンカ Oh! mio dolor!ああ! 私の苦悩よ! CONTARENOコンタレーノ Oh! furor!ああ! 怒りよ! |
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N. 9 Coro, Scena, Cavatina ed Aria Falliero Falliero Cancelliere Coro |
n. 9-i [Coro, Scena, Cavatina Falliero] Moderato 4/4 a minor |
SCENA Ⅶ第7場 (Sala ove si raduna il Consiglio dei Tre addobbata di nero)(黒く飾られた広間 そこに 三人評議会が 集まる) (Alcuni uscieri vanno assettando il tavolino e preparando le sedie pei giudici: alcuni arcieri vengono a schierarsi d'ambi i lati.(何人かの職員が 小テーブルを 次第に整理している そして 椅子を 用意している 判事たちのための: 何人かの弓兵が 両側に 配置されに来る) CORO合唱 Ah! qual notte di squalloreああ! なんと 悲しげな様子の夜が è seguita al più bel di!最も素晴らしい日の 後に続くことか! Della patria il difensore祖国の防衛者が a perir verrà così?このように 死ぬことになるのだろうか? Se Falliero è traditore...もし ファッリエーロが 裏切者ならば… se mentita è sua virtù...もし 彼の徳が 偽だったならば… che in un'alma alberghi onor名誉は 魂に 宿る と chi può credere mai più?いったい 誰が さらに【≒ なおも】 信じる ことができるだろうか? |
(Sala ove si raduna il Consiglio dei Tre addobbata di nero) addobbata は女性単数形なので、sala に掛かる。 |
Recitativo 4/4 (C major) |
SCENA Ⅷ第8場 (Falliero in mezzo alle guardie e scortato dal Cancelliere del Consiglio)(ファッリエーロ 衛兵たちの中央に【衛兵たちに 囲まれて】 そして 評議会の職員に 付き添われて) FALLIEROファッリエーロ Qual funebre apparato, e qual d'intornoどのような 暗い装飾が、そして どのような 辺りの languida e smorta luce活気のない そして 弱々しい 灯火が l'orror ne addoppia? Oh come ai rei tremendoそれらの恐怖を 倍加しているのか? ああ なんと恐ろしく 犯行者たちに deve apparirne il taciturno aspetto,物静かな様子が 現われざるをえないのか、 se scuote a me innocente il cuore in petto!無実の私において 心臓が 胸の中で 揺れているのならば【≒ 無実の私でも 胸の中で 心臓が 激しく 鼓動するほどだから、罪人には この【部屋の】陰鬱な様子は なんと恐ろしく 映ることか】! |
Oh come ai rei tremendo / deve apparirne il taciturno aspetto, / se scuote a me innocente il cuore in petto! この場合の dovere は 必ず―する といった必然性を表している。 se 節は ―なほどだから。se 節の現実によって主節での想像を対比強調している。無実の自分が―であれば、犯罪者は… という文意。 |
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Andantino 4/4 (C major) |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
O Bianca, fu presagoああ ビアンカよ、予言だった il tuo timor: eccomi in ceppi, e forse君の懸念は: ここに 私は 束縛されている【≒ 監獄に入っている】、そして ことによると volgeran molti giorniたくさんの日々が 巡るだろう anzi che a te ritorni. Oh dio!... se intanto私が 君の元に 戻る 前に。 ああ 神よ!… もし そうしている間に dal padre astretta... al mio rival cedessi...父親に 強いられて… 君が 私の恋敵に 屈したならば… se ti perdessi mai... pensier crudele!もし 万一にも 私が 君を 失うならば… 残酷な考えだ! |
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Allegro 4/4 (C major) |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
lungi, ah! lungi da me... Bianca è fedele.遠く離れて、ああ! 君から 遠く離れて… ビアンカは 誠実だ。 |
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Andantino 6/8 A major |
Alma, ben mio, sì pura私の最愛の人よ、これほどに 清らかな魂は come la tua, no, non v'è.君のもののように いいや ない【≒ 君の心のように 清らかな心は ない】。 La stessa mia sventura私の まさしく 不運は mi fa più caro a te.私を より一層 君に いとしく させる【≒ 私の 不運としか言いようのない状況が 私の君への愛を より一層 強める】。 |
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N. 9-ii [Recitativo] Dopo la Cavatina di Falliero 4/4 (C major) |
CANCELLIERE書記官 Vieni, Signor: in altra stanza è duopo来なさい、貴君よ: 必要がある 別の部屋で。 che i tuoi giudici attenda.君は 判事たちを 待つ。 FALLIEROファッリエーロ Il nome loro彼らの名前を saper mi lice almeno?せめて 知ることは 私に 許されるのか? CANCELLIERE書記官 Loredano, Capellio e Contareno.ロレダーノ、カペッリオと コンタレーノだ。 FALLIEROファッリエーロ Contaren! son perduto.コンタレンだって! 私は 破滅だ。 CANCELLIERE書記官 Il suo rigore彼の手厳しさは è inflessibil è ver; ma spera, è giusto頑固だ それは真実だ; だが 期待しなさい、公正だ Capellio e generoso: avrà su quelloカペッリオは そして 寛大だ:彼は あの男【= コンタレーノ】に 持つだろう quant'aver puote su paterno core【↓】息子が 父の心に できる限りの forza e poter un figlio.影響力と力 を【≒ 彼は 息子として 父の心に できる限りの 働きかけを コンタレーノに するだろう】 FALLIEROファッリエーロ Un figlio! come?息子 だって! どういうことなのか? che dici tu?君は 何を 言っているのか? CANCELLIERE書記官 Sì: di Capellio sposaそうだ: カペッリオの花嫁に Bianca divenne.ビアンカは なった。 FALLIEROファッリエーロ Tu deliri.君は うわ言を言っている。 CANCELLIERE書記官 Io stesso私自身が vidi la pompa e l'apparecchio intero豪華を 見た そして 完全な装飾を 【見た】 delle sue nozze: ella è a Capellio unita.彼女の結婚式の【≒ 私自身が 豪華に飾り立てられた彼女の結婚式を 目撃した】: 彼女は カペッリオと 結ばれた。 FALLIEROファッリエーロ (con tutta la disperazione)(完全な絶望をもって) Bianca... la mia sentenza è proferita.ビアンカよ… 私の判決が 発せられた【≒ 私に 判決が 下された】。 CANCELLIERE書記官 Tu tremi... impallidisci?... il tuo delitto君は 震えている… 君は 青ざめているのか?… 君の罪は certo saria?確実なのであろうか? FALLIEROファッリエーロ La mia sventura è certa.私の不運は 確実だ。 CANCELLIERE書記官 Né speme hai tu?君は 希望を 持っていないのか? FALLIEROファッリエーロ Quella che agl'infelici不幸な者たちに sola rimane: morte.唯一 残っている 【↑】それ【= 希望】: 【それは】死だ。 TUTTI全員 (accostandosi a lui)(彼の方に 近付いて) Oh ciel! che dici?ああ 天よ! 君は 何を 言っているのか? |
Oh ciel! che dici? この行は、クリティカルエディションの総譜では Tutti 全員、つまり書記官と合唱が歌うことになっている。が、一方ピアノ伴奏譜では書記官だけになっている。 上演では書記官だけが歌うか、あるいはこの行を削除してしまうか、どちらかがほとんど。OPERA RARAのCDでは合唱がこの行を歌っている。 |
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N. 9-iii [Aria Falliero] Agitato 4/4 f minor |
FALLIEROファッリエーロ (prendendo per mano il Cancelliere dice con somma passione)(書記官の手を 掴んで 言う 最高の苦悶をもって) Tu non sai qual colpo atroce,君は 分かっていないのだ どのような 耐え難い打撃を、 qual pugnal mi hai fitto in core:短剣のように 君が 私の心に 打ち込んだか を: è la morte un duol minore死は より小さい苦悩だ del dolor che a me recò.苦悩よりも それを それ【= 打撃】が 私に 引き起こした【≒ 耐え難い打撃が 私に 引き起こした 苦悩は 死よりも つらい】。 CORO合唱 Deh! ti spiega.お願いだから! うまく説明しなさい。 FALLIEROファッリエーロ Umana voce人間の声は non può dir l'affanno mio.私の苦悩を 言う ことはできない【≒ 私の苦悩を 言葉で言い表すことは できない】。 CORO合唱 Deh! favella.お願いだから! 話しなさい。 FALLIEROファッリエーロ Ah! nol poss'io:ああ! 私は それを できない: fino il pianto a me mancò.涙さえ 私から なくなった。 CORO合唱 Deh! ti spiega.お願いだから! うまく説明しなさい。 FALLIEROファッリエーロ No, non poss'io.いいや、私は できない。 CORO合唱 Deh! favella.お願いだから! 話しなさい。 FALLIEROファッリエーロ No, non poss'io.いいや、私は できない。 |
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Andantino 2/4 D-flat major |
(da sé)(一人で【≒ 独白】) Lasso! cessar di vivere哀れな! 生きるのを やめるとは degli anni suoi sul fiore...彼の 花の頃の年齢で【≒ その人生の盛りで】… in un istante perdere一瞬で 失うとは gloria, fortuna, onore...栄光を、未来を、名誉を… ah! dove è un cor sì barbaroああ! どこに それほどに 残酷な心が あるのか che me non piangerà?それは 私に 涙を流さないだろう【≒ 私のことを思って 涙を流すようなことのない 冷酷な心など どこにあるというのか】? |
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Allegro vivace 4/4 F major |
(risoluto)(決然と) Ma più che onore e vitaだが 名誉と 命 よりも多くを a me rapì l'ingrata:不実な女は 私から 奪った: si mora, e sia compita死のう、そして 達成されるように la sorte mia spietata;私の 無慈悲な運命が【≒ 【私が 死ぬことで】 私を支配する 無情な運命が 果たされるがいい】; del mio morir la perfida不実な女は 私の死について un dì rimorso avrà.ある日【≒ いつの日か】 後悔を 抱くだろう。 CORO合唱 Ah! dove è un cor sì barbaroああ! どこに それほどに 残酷な心が あるのか che te non piangerà?それは 君に 涙を流さないだろう【≒ 君のことを思って 涙を流すようなことのない 冷酷な心など どこにあるというのか】? FALLIEROファッリエーロ (si ritira in mezzo agli arcieri)(下がる 弓兵たちの真ん中に) |
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[Recitativo] Dopo l'Aria di Falliero |
4/4 (C major) |
SCENA Ⅸ第9場 (Il Cancelliere, indi Loredano, Capellio e Contareno)(書記官、それから ロレダーノ、カペッリオと コンタレーノ) CANCELLIERER書記官 No, non è reo, misero è solo: ei chiudeいいや、彼は 邪ではない、彼は ただ 哀れなだけだ:彼は 【胸の中に】 閉じ込めている fatal segreto che lo guida a morte.死をもたらす秘密を それは 彼を 死に 案内している。 Ma chi sarà sì forteだが 誰が とても 強いだろうか di alzar per lui la voce? A noi non spetta彼のために 声を 張り上げるほどに? 私たちに 属していない innanzi a questi giudici temutiこれらの 怖れ敬れた判事たちの前では che vedere, tremar, e starsi muti.見ること、震えること、そして 黙っていること の他には【≒ 私たちは 見て、震えて、そして 黙っている ことしかできない】。 (i tre Giudici siedono al Tribunale; gli Uscieri e gli Arcieri si ritirano)(3人の判事たちが 法廷に 座る; 職員たちと 弓兵たちは 後ろに下がる) CONTARENOコンタレーノ (al Cancelliere)(書記官に) Pisani, il reo si avanzi.ピザーニよ 犯行者が 進み出るように。 CAPELLIOカペッリオ (O mia virtute(ああ 私の徳よ stammi d'intorno al cor: su tanti affetti私の心の周囲に 留まりなさい: たくさんの感情の上で che mi fan guerra abbi tu sola impero.)それらは 私と 戦っている お前だけが 絶対的な権力を 持ちなさい【≒ 私を 攻め立てる 様々な感情のうちで、徳だけが 支配するように】。) SCENA Ⅹ第10場 (Il Cancelliere introduce di nuovo Falliero, indi va a collocarsi presso di Contareno su di una sedia più bassa, e scrive)(書記官が 再び ファッリエーロを 招き入れる、それから コンタレーノのそばに より低い椅子の上に 身を 置きに 行く) CONTARENOコンタレーノ (a Falliero)(ファッリエーロに) Il tuo nome?君の名前は? FALLIEROファッリエーロ Falliero.ファッリエーロだ。 CONTARENOコンタレーノ La tua patria?君の祖国は? FALLIEROファッリエーロ Vinegia.ヴェネツィアだ。 CONTARENOコンタレーノ Il tuo rango?君の階級は? FALLIEROファッリエーロ Patrizio.貴族だ。 CONTARENOコンタレーノ Era a te nota君に 知られていたか tremenda legge, che ai patrizi vieta恐ろしい法は、それは 貴族たちに 禁じている ogni commercio con ministro estrano?あらゆる交流を 外国の大使との? FALLIEROファッリエーロ Sì.はい。 CONTARENOコンタレーノ Del ministro ispanoスペインの大使の fosti tu nel palagio.館の中に 君は いた。 FALLIEROファッリエーロ È ver.それは 本当だ。 CAPELLIOカペッリオ Qual puoi君は できるのか どのような scusa trovar al fallir tuo?弁解を 思いつくことが 君の 誤りを犯すことに? FALLIEROファッリエーロ Nessuna.何もない。 CAPELLIOカペッリオ Alcun disegno, alcuna何か 計画が、何か alta cagion ti spinse?高い【≒ 大きな】動機が 君を 仕向けたのか? FALLIEROファッリエーロ È manifesto明らかだ il mio delitto: è mio segreto il resto.私の罪は: 残りは 私の秘密だ。 CONTARENOコンタレーノ Pensa che sul tuo capo考えなさい 君の頭の上には pende il vindice ferro復讐の剣が ぶら下がっている 【↑】ことを della legge.法の。 FALLIEROファッリエーロ Lo so.私は それを 知っている。 CONTARENOコンタレーノ Che questo scrittoこの書類に segnar dovrai.君は 署名しなくてはならない。 FALLIEROファッリエーロ Pronto son io.私は 用意ができている。 (corre risoluto a sottoscrivere)(署名しに 決然と 急いで向かう) CONTARENOコンタレーノ Pisani,ピザーニよ、 a noi porgi lo scritto: ei s'allontani.私たちに 書類を 渡しなさい: 彼【= ファッリエーロ】が 【ここから】 離れるように。 SCENA ⅩⅠ (Mentre Falliero sta per ritirarsi, un Usciere si presenta, indi esce Bianca; Falliero si arresta)(ファッリエーロが まさに 下がろうとしている時、職員が 現れる、それから ビアンカが 出る; ファッリエーロは 立ち止まる) USCIERE Signor, l'ingresso chiede貴君よ、入ることを 要求している un complice del reo.犯行者の従犯者が FALLIEROファッリエーロ (tornando indietro)(後ろに 戻って) Complice mio?...私の従犯者だって?… CONTARENOコンタレーノ Entri...入るがいい… |
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N. 10 Recitativo e Quartetto Bianca Falliero Contareno Capellio Coro |
Allegro 4/4 (C major) |
(esce Bianca velata)(ヴェールで覆われた ビアンカが 出る) Donna chi sei?婦人よ 君は 誰か? BIANCAビアンカ (avanzandosi e togliendosi il velo)(前に進んで そして ヴェールを 外して) Bianca son io.私は ビアンカだ。 CORO合唱 (sorpresi)(驚いて) Bianca!...ビアンカ!… FALLIEROファッリエーロ (sorpreso)(驚いて) Bianca!...ビアンカ!… CONTARENOコンタレーノ (sorpreso)(驚いて) Bianca!...ビアンカ!… CAPELLIOカペッリオ (sorpreso)(驚いて) Bianca!...ビアンカ!… CONTARENOコンタレーノ (levandosi e seco tutti)(立ち上がって そして 彼と共に 全員が 【立ち上がって】) Che ardire è il tuo?君の厚かましさは 何か? Giudici, al mio palagio判事たちよ、私の館に si riconduca.彼女が 連れ戻されるように。 CAPELLIOカペッリオ No: resti... La guidaいいや: 留まりなさい… 彼女を 案内した alta cagion per certo: a noi la legge高い【≒ 大きな】動悸が 確実に: 私たちに 法が impone d'ascoltarla...義務付けている 彼女【の言うこと】を聞くことを… Giudici siam.私たちは 判事だ。 (si avanza verso di lei)(彼女の方に どんどん近付く) Bianca, fa' core, e parla.ビアンカよ、勇気を出しなさい、そして 話しなさい。 |
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Quartetto Andantino 6/8 E major |
BIANCAビアンカ (Cielo, il mio labbro inspira,(天よ、私の口に 霊感を与えなさい、 reggi il mio cor tremante:私の 震える心を 支えなさい: dammi virtù bastante私に 必要な 勇気を 与えなさい。 ad ottener pietà.)哀れみを 得るために。) FALLIEROファッリエーロ (Ciel, se a salvarmi aspira,(天よ、もし 彼女が 私を助けることを 渇望しているならば、 fa ch'ella sia costante:彼女が 誠実であるように しなさい: se del rivale è amanteもし 彼女が 恋敵の恋人であるならば la morte mia vedrà.)彼女は 私の死を 見るだろう。) CONTARENOコンタレーノ (Mio cor, nascondi l'ira,(私の心よ、怒りを 隠しなさい、 frenati un solo istante:一瞬だけ 自制しなさい: nulla a salvar l'amante恋人を 救うためには 何も il suo dolor potrà.)できないだろう 彼女の苦悩は。) CAPELLIOカペッリオ (Fra la pietade e l'ira(哀れみと 怒りの 間で ondeggia il cor tremante:震える心は 揺れている: ma solo in questo istanteだが この瞬間に l'onore ascolterà.)それ【= 心】は 名誉 【↑】だけを 聞くだろう。) |
(Cielo, il mio labbro inspira, ここでの inspirare は ispirare の意味で用いられていると理解した。 |
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Allegro 4/4 E major |
CONTARENOコンタレーノ Parla dunque: qual misteroそれでは 話しなさい: どのような謎を svelar devi al tribunal?君は 法廷で 明かす つもりなのか? BIANCAビアンカ Che innocente è il mio Falliero,私のファッリエーロが 無実であることを、 che lo perde amor fatale.宿命的な愛が 彼を 破滅させている ことを。 CONTARENOコンタレーノ Folle...狂気だ… CAPELLIOカペッリオ Segui.続けなさい。 BIANCAビアンカ (affannosa)(息せき切って) Al fianco mio私の横で meco stava, ed ecco, oh Dio!私と一緒に 彼は いた、そして そこに、ああ 神よ! sopraggiunge il genitor,父が 不意に 来ている、 via di scampo a lui non resta彼には 逃走手段の道は 残されていない fuor che quella sì funestaあのような 死をもたらす あれ【= あの道 女性単数】を 除いては d'onde all'atrio si discendeそこから 中庭に 下りる dell'Ispano ambasciator.スペイン大使館の (crescendo di forza e di passione fino all'ultimo del suo discorso)(力を 強めて そして 激情を 彼女の話しの最後まで) Quella elegge... cieco il rende彼は あれ【= あの道 女性単数】を 選ぶ… 彼を 盲目に【= がむしゃらに】 させる il mio rischio, il nostro amor.私の危険が、私たちの愛が。 Deh! se barbari non siete,お願いだから! もし 君たちが 残酷でないならば、 il mio ben non m'uccidete:私の最愛の人を 殺すでない: e se in voi di sangue è seteそして もし 血の渇きが 君たちに あるならば【≒ 君たちが 血に飢えているならば】 tutto il mio versate ancor.すべての 私のもの【= 私の血】を FALLIEROファッリエーロ (con gioia)(喜びをもって) Bianca... oh gioia! or lieto io moroビアンカよ… ああ 喜びだ! 私は 喜ばしく 死ぬ 今 che ritrovo il tuo bel cor.君の美しい心を 私が 再び見出している 【↑】からには。 CONTARENOコンタレーノ Di sottrarlo alla sua sorte彼の運命から 彼を 救うおうと tenti invan, donzella audace,君は 虚しく 試みている【≒ 救おうとしても 無駄だ】、無謀な娘よ、 folle amor ti fa mendace,狂気の愛が 君を 嘘吐きにしている、 egli è reo, perir dovrà.彼は 犯行者だ、彼は 死な なければならない。 FALLIEROファッリエーロ (a Contareno)(コンタレーノに) Reo non son[o],私は 犯行者ではない、 (a Capellio)(カペッリオに) a te consorte君の配偶者だと a me infida la pensai,私に 不実だと 私は 彼女を 思っていた、 tacqui allor, morir bramai,それゆえに 私は 黙った、死を 切望した、 ma innocente: il ciel lo sa.だが 【私は】 無実だ: 天が それを 知っている。 CONTARENOコンタレーノ Fé non merta un traditore,裏切者は 信頼に 値しない、 come tale io ti condanno.そのような者【= 裏切り者】なので 私は 君を 有罪としている。 (si appressa al tavolino e segna la sentenza; Loredano fa lo stesso)(小テーブルに 近付いて そして 判決文に 署名する; ロレダーノは 同じことを する) BIANCAビアンカ Me infelice!不幸な私だ! FALLIEROファッリエーロ Ciel tiranno!暴虐な 天よ! CONTARENOコンタレーノ (appressandosi a Capellio)(カペッリオに 近付いて) Tu pur segna.君も 署名しなさい。 CAPELLIOカペッリオ (rigettando il foglio)(書類を 撥ね付けて) No: vivrà.いいや: 彼は 生きるだろう。 CONTARENOコンタレーノ Che mai dici?君は いったい 何を 言っているのか? BIANCA E FALLIEROビアンカ と ファッリエーロ Oh nobil core!ああ 寛大な心だ! CONTARENOコンタレーノ Segna il foglio, o sconsigliato.書類に 署名しなさい、ああ 無思慮な男め! CAPELLIOカペッリオ Di lui giudichi il Senato.元老院が 彼を 裁くように。 BIANCA E FALLIEROビアンカ と ファッリエーロ Oh contento!ああ 満足だ! CONTARENOコンタレーノ Oh qual viltà!ああ なんという 卑劣な行為だ! CORO合唱 (Loredano, Pisani e tutti gli altri)(ロレダーノ、ピザーニ と すべての他の者たち) Sì: ben parli:そうだ: 君は よく 言っている【≒ 君の言うことは 道理だ】: il sol Senato元老院だけが giudicar di lui dovrà.彼を 裁くべきだろう。 |
sopraggiunge il genitor, これ以降しばらく、ビアンカは過去のことを直接法現在形で述べている(歴史的現在)。ここでもそれに従って訳す。 tacqui allor, morir bramai, この場合の allora は dunque と同義。 |
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Stretta del Quartetto Vivace 4/4 E major |
BIANCAビアンカ (Grazie o cielo! vi è un'anima ancora(ありがとう ああ 天よ! 一つの魂が まだ ある che a pietade e a giustizia si arrende.それは 哀れみに そして 公正さに 従っている。 Nuova speme nel petto mi scende,新たな希望が 私の胸の中に 下りている、 mi consola, e coraggio mi dà.それは 私を 安心させて、そして 私に 勇気を 与えている。 Grazie al cielo!天に 感謝を! CONTARENOコンタレーノ (Il furore che il cor mi divora,(怒りが それは 私の心を 蝕む le parole al mio labbro contende.【怒りが】 私の口から 言葉を 拒否している。 Una benda sul ciglio mi stende目隠しを 私の眼の上に 広げている la vendetta che sfogo non ha.復讐が それは はけ口を 持っていない【≒ 復讐を 果たせず 私の眼の前が 真っ暗になった】。 CAPELLIOカペッリオ Dal Senato Falliero dipende,ファッリエーロは 元老院 次第だ、 su lui dritto il Consiglio non ha.評議会は 彼に 権利を 持っていない【≒ 評議会には 彼を 裁く 権限がない】。 (Oh giustizia! quel cor che ti onora(ああ 公正さよ! その心は それは お前【= 公正さ】に 敬意を表する d'ogni affetto maggiore si rende.)どんな感情よりも 大きく なっている【≒ 公正さを 尊重する 気持ちが 他のどんな感情よりも 大きくなっている 】。) FALLIEROファッリエーロ (Una speme coraggio mi dà.(希望が 私に 勇気を 与えている。 mi consola, e coraggio mi dà.それは 私を 安心させている、そして 勇気を 私に 与えている。 Grazie o cielo! vi è un'anima ancoraありがとう ああ 天よ! 一つの魂が まだ ある che a pietade, a giustizia si arrende.それは 哀れみに そして 公正さに 従っている。 Nuova speme nel petto mi scende,新たな希望が 私の胸の中に 下りている、 mi consola, e coraggio mi dà.それは 私を 安心させている、そして 勇気を 私に 与えている。 CORO合唱 Pende, dal Senato Falliero dipende,彼は 未解決である、ファッリエーロは 元老院 次第である、 su lui dritto il Consiglio non ha.評議会は 彼に 権利を 持っていない【≒ 評議会には 彼を 裁く 権限がない】。 |
Pende, dal Senato Falliero dipende, この pende は一応 pendere 垂れる,ぶら下がる/懸案になっている,未解決である と理解した。 |
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Più mosso 4/4 E major |
BIANCA E FALLIEROビアンカ と ファッリエーロ mi consola, e coraggio mi dà.)それは 私を 安心させている、そして 勇気を 私に 与えている。) CONTARENOコンタレーノ la vendetta, no, non ha.)復讐が、いいや、持っていない CAPELLIOカペッリオ no, non ha.いいや、持っていない。 CORO合唱 su lui dritto il Consiglio non ha.評議会は 彼に 権利を 持っていない【≒ 評議会には 彼を 裁く 権限がない】。 (partono tutti)(全員 去る) |
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[Recitativo] Dopo il Quartetto |
4/4 (C major) |
SCENA ⅩⅡ第12場 (Sala nel palazzo di Contareno, come all'Atto Ⅰ)(コンタレーノの館の広間、第1幕と同様に) (Costanza sola entra agitata, indi frettoloso Capellio)(コスタンツァ一人が 取り乱して 入る、それから 大急ぎで カペッリオが) COSTANZAコスタンツァ Innoltra il dì... lassa! per ogni via日が 進んでいる… ああ! あらゆる道を通って Bianca ho cercato invan... Allorché il padre私は 虚しく ビアンカを 捜した【≒ あらゆる場所で ビアンカを 捜したが 無駄だった】… 父親は dal Consiglio ritorni, e a me richieda評議会から 戻る 【↑】時には、そして 私に 彼が 尋ねる 【時には】 la figlia sua che dir degg'io? qual posso彼の娘を 私は 何を 言う べきなのだろうか? どのように 私は できるのだ trovar discolpa a disarmar bastante釈明を 見付けることを 十分に 静めるために il suo giusto furor... Crudele amica彼の 正当な怒りを… 酷い友の女は a che mai mi esponesti? Alcun s'avanza...いったい 何に 私を 晒したのか? 誰かが 近付いている… Cielo! è Capellio... ah... mio Signor...天よ! それは カペッリオだ… ああ… 私の貴君よ… CAPELLIOカペッリオ (entra premuroso)(入る せわしく) Costanza, io stesso riconducoコスタンツァよ、私自身が 連れ戻している Bianca al paterno tetto... a te l'affido,ビアンカを 父親の屋根【≒ 家】に… 私は 君に 彼女を 任す、 veglia tu su di lei... fa di salvarla君が 彼女に 注意を払いなさい… 彼女を 救うように 務めなさい dall'estremo suo duol... Corro al Senato:彼女の 甚だしい苦悩から… 私は 元老院に 急いで向かう: se fia secondo il fatoもし 運命が 応じるならば al mio giusto desio私の 公正な願いに cesseranno i suoi mali... Eccola... addio.彼女の不幸は 終わるだろう… そら ここに 彼女が… さようなら (parte)(去る) |
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N. 11 Coro, ed Aria Bianca [e Finale Secondo] Bianca Falliero Contareno Capellio Coro |
Allegro 4/4 C major |
SCENA ⅩⅢ第13場 (Costanza va incontro a Bianca: ella viene circondata dalle sue ancelle, e da alcuni servi)(コスタンツァは ビアンカの方に向かって 行く: 彼女は 来る 彼女の侍女たちによって 取り囲まれて そして 何人かの召使いたちによって) CORO SOPRANI E CONTRALTI合唱 ソプラノ と コントラルト Vieni: per te tremante来なさい 君のために 震えて afflitto è ognun per te.誰もが 君のために 悲しんでいる。 Spera: tuo fido amante期待しなさい: 君の誠実な恋人は perduto ancor non è.まだ 亡くなっていない。 |
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[Recitativo, Proseguimento della] Scena ⅩⅢ 4/4 (C major) |
BIANCAビアンカ Perdona o mia Costanza;容赦しなさい ああ 私のコスタンツァよ; tu soffristi per me. Ma le tue pene君は 私のために 苦しんだ。しかし 君の苦悩は non eguaglian le mie. Mille ho provate私のものに 匹敵しない。私は 体験した 多数の in pochi istanti angoscie, eppur maggiori激しい苦悩を 僅かな瞬間に【≒ 短い間に】、それでもなお より多くの me ne apprestano ancor gli astri tiranni.それ【= 激しい苦悩】を 暴虐な星々は いまだに 私に 用意している。 COSTANZAコスタンツァ Bianca... fa core... hanno confin gli affanni.ビアンカよ… 勇気を出しなさい… 苦悩は 限界を 持っている【≒ 苦悩が終わる時は 来る】。 BIANCAビアンカ In questo istante, o cruda,この瞬間に、ああ 残酷な女よ、 proferisce il Senato元老院が 表明している il destin di Falliero.ファッリエーロの運命を。 COSTANZAコスタンツァ Ei fia salvo: mel credi.彼は 無事だろう: 私を 信じなさい。 BIANCAビアンカ (sorgendo)(立ち上がって) Ah fosse vero!ああ それが 本当であれば! Odi? indistinto parmi君は 聞こえるか? 私には かすかに suon di grida ascoltar... gente si appressa?叫び声の音が 聞こえる 【↑】ように思われる… 人々が 近付いているのか? o m'inganna il pensiero?それとも 気持ちが 私を 欺いているのか? VOCI声 (di dentro)(内部から【≒ 舞台裏から】) Bianca!...ビアンカ!… BIANCAビアンカ Qual voce, oh Dio!あの声は、ああ 神よ! SCENA ULTIMA最終場 (Falliero, Capellio, nobili veneziani e dette; indi Contareno)(ファッリエーロ、カペッリオ、ヴェネツィアの貴族たちと 前の場の人たち; それから コンタレーノ) FALLIEROファッリエーロ (correndo a Bianca)(ビアンカに 駆け付け) Bianca!ビアンカ! BIANCAビアンカ (precipitandosi nelle sue braccia)(彼の腕の中に 身を投げて) Falliero! sei tu? respiri ancor? Qual Dio ti rende a me?ファッリエーロ! 君なのか? 君は まだ 息をしているのか? どの神が 君を 私に 返しているのか? FALLIEROファッリエーロ Capellio, o cara,カペッリオが、おお いとしい女よ、 il Principe, il Senato.君主【≒ ドージェ】が、元老院が。 CAPELLIOカペッリオ All'ira ingiusta不当な怒りから del padre tuo voglion sottrarti i padri.君【= ビアンカ】の父親の 元老議員たちは 君【= ファッリエーロ】を 救うことを 望んでいる。 FALLIEROファッリエーロ Segui i miei passi.私の歩みに ついて来なさい。 BIANCAビアンカ Ah! che mai dici?ああ! 君は いったい 何を 言っているのか? CAPELLIOカペッリオ È questaこれが del Senato la legge.元老院の法律だ【≒ 元老院が それを 決定した】。 FALLIEROファッリエーロ (prendendo Bianca per mano)(ビアンカの腕を 掴んで) Andiam.行こう。 CONTARENOコンタレーノ (esce rapidamente, e si oppone)(素早く出る、そして 異議を唱える) Ti arresta.立ち止まりなさい。 FALLIEROファッリエーロ Crudele! ancor ti opponi? ancor non sei残酷な者よ! まだ 君は 異議を唱えるのか? まだ 君は sazio de' pianti miei,私の涙で 十分に満たされて 【↑】いないのか、 pago del suo dolor?彼女の苦悩に 満足していないのか? CONTARENOコンタレーノ Bianca! dal padreビアンカよ! 父から fuggir vuoi tu? compier potrai tu stessa君は 逃げる つもりなのか? 君自身が 成し遂げる かもしれないのか la mia vergogna estrema? il mio rossore?私の 甚だしい恥辱を? 私の赤面を? Rispondi...答えなさい… BIANCAビアンカ Ah padre!... mi si spezza il core.ああ 父よ!… 私の心は 引き裂かれる。 |
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Aria Bianca e Finale Secondo Andante 4/4 E-flat major |
Tteco io resto: in te rispetto私は 君と一緒に 留まる: 私は 君において 尊重する la cagion dei giorni miei;私の日々【≒ 命】の原因を【≒ 私は 君が 私に 命を与えたことに 感謝している】; se crudel con me tu sei,たとえ 君が 私に 非情であっても figlia amante io sono a te.私は 君の 愛娘である。 (a Falliero)(ファッリエーロに) Tu lo vedi, o mio diletto:君は そのことを 見ている、ああ 私の 愛する男よ、 non nascesti, oh Dio, per me.君は 生まれなかった、ああ 神よ、私のために【≒ ああ 私の愛する人よ、これで分かっただろう、君は、ああ、私と 結ばれる 運命にないと】。 | ||
Allegro 4/4 E-flat major |
CORO合唱 O virtude!... e tu potrai,ああ 【なんという】徳だ!… それでも 君【≒ コンタレーノ】は できるだろうか、 fiero cor, lasciarla in pianto!残酷な心【を持つ者】よ、彼女を 涙に 放置することが【≒ 娘を 涙に暮れさせることが できるというのか】! FALLIEROファッリエーロ Deh! ti placa.お願いだから! 静まりなさい。 CAPELLIOカペッリオ Cedi omai.今こそ 折れなさい。 CONTARENOコンタレーノ Ah! non son così tiranno.ああ! 私は それほどに 暴虐ではない。 Bianca ha[i] vinto: è tuo Falliero.ビアンカよ 君が 勝った: ファッリエーロは 君のものだ。 Il tuo cor assai penò.君の心は あまりにも 苦しんだ。 FALLIEROファッリエーロ Bianca! oh gioia!ビアンカよ! ああ 喜びだ! BIANCAビアンカ Oh mia ventura!ああ 私の幸運よ! CORO合唱 La natura trionfò.【愛の】本性が 勝利を収めた。 BIANCAビアンカ Deh! respirar lasciatemiお願いだから! 私に 息をつかせなさい un sol momento almeno.せめて ほんの一瞬だけ。 Sento che oppresso in seno私は 感じている 胸の中で 圧迫されているのを è dal piacere il cor.心が 喜びに。 | ||
(Allegro) 4/4 E-flat major |
(a Contareno)(コンタレーノに) O padre!ああ 父よ! (a Capellio)(カペッリオに) o Eroe benefico!ああ 慈善心に富む英雄よ! (a Falliero)(ファッリエーロに) o sposo!... oh bel momento!ああ 花婿よ!… ああ 素晴らしい瞬間だ! A tanto mio contentoたくさんの 私の喜びに non presto fede ancor.私は まだ 信じ【ることができ】ない。 CORO合唱 Respira, alfine han termine息をつきなさい、ついに 終わりを 持っている le nostre rie vicende:私たちの 悪い出来事は: sorride amor.愛の神が 微笑んでいる。 BIANCAビアンカ O padre! [o] Eroe benefico!ああ 父よ! [ああ] 慈善心に富む英雄よ!! o sposo!... [oh] bel momento!ああ 花婿よ!… [ああ] 素晴らしい瞬間だ! A tanto mio contentoたくさんの 私の喜びに non presto fede ancor.私は まだ 信じ【ることができ】ない。 CORO合唱 Respira, alfine han termine息をつきなさい、ついに 終わりを 持っている le nostre rie vicende:私たちの 悪い出来事は: sorride amor.愛の神が 微笑んでいる。 |
non presto fede ancor. prestare fede 信じる,信用する。 |
参考資料
Priuli (Doge)Laurent Kublabasso ContarenoKenneth Tarvertenore CapellioBaurzhan Anderzhanovbasso FallieroVictoria Yarovayacontralto BiancaCinzia Fortesoprano CostanzaMarina Viottimezzosoprano Un CancelliereArtavazd Sargsyantenore UfficialeArtavazd Sargsyantenore UsciereArtavazd Sargsyantenore Camerata Bach Choir, Poznań Chorus-masterAnia Michalak Virtuosi Brunensis Antonino Fogliani 18, 24, 26 July 2015 Trink Halle, Bad Wildbad, Germany |
2015年、バート・ヴィルトバートの ヴィルトバートでのロッシーニ での上演のライヴ録音。上演記録は既に公式サイトからは削除されているが、その他のサイトの情報から、公演は上記3日と思われる。この公演が《ビアンカとファッリエーロ》のドイツ初演だったという。
コンタレーノのケニス・ターヴァーが最も安定している。線は細めだが美声と卓越した技術が素晴らしい。ファッリエーロのヴィクトリア・ヤロヴァヤは大健闘、この難役をなんとか歌いこなし、大アリアも原調で歌っている(ただし最後の2回の高いハ音は回避している)。男装女声の英雄役としてはやや薄味だが、これだけ歌えればまずは良し。ビアンカのチンツィア・フォルテは破綻はないものの込み入った装飾歌唱は少々苦しい。
アントニーノ・フォリアーニがキビキビとした指揮で引き締まった音楽を聞かせてくれる。ただそれゆえにオーケストラの非力がだいぶ目立っている。
第1幕第3場、第7場、第11場、第2幕第1場、第9場、第12場が丸々削除されているなど、レチタティーヴォ・セッコに多めのカットあり。
会場の制約ゆえなのだろうが、ライヴ録音にしても音がだいぶぼやけ気味なのが惜しい。
Priuli (Doge)Dario Beninibasso ContarenoFrancesco Melitenore CapellioCarlo Leporebasso LoredanoJirí Prudicbasso FallieroDaniela Barcellonacontralto BiancaMaria Bayosoprano CostanzaOrnella Bonomellisoprano Un CancelliereStefan Cifolellitenore UfficialeKarel Pajertenore UsciereKarel Pajertenore Coro da Camera di Praga / Pražsky komorni sbor Maestro del CoroLubomír Mátl Orquesta Sinfónica de Galicia DirettoreRenato Palumbo RegiaJean-Louis Martinoty SceneHans Schavernoch CostumiDaniel Ogier Lighting designerGigi Saccomandi |
2005年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルでの上演の収録。上演記録。公演は8月8、11、14、17、20日、ペーザロのロッシーニ劇場で催された。
1999
Priuli (Doge)Simon Baileybasso-baritone ContarenoBarry Bankstenore CapellioIldebrando D'Arcangelobasso FallieroJennifer Larmoremezzosoprano BiancaMajella Cullaghsoprano CostanzaGabriella Colecchiasoprano Un CancelliereRyland Daviestenore UfficialeDominic Natolitenore UsciereDominic Natolitenore The Geoffrey Mitchell Choir chorus masterGeoffrey Mitchell The London Philharmonic Orchestra conductorDavid Parry November 2000 Henry Wood Hall, London, UK |
現時点で《ビアンカとファッリエーロ》の唯一のセッション録音。公演のライヴ録音と違って、歌手たちが加減、配分をする必要がないので、最も楽譜に忠実に演奏されている演奏になっている。既にメトロポリタン歌劇場でブレイクしていた(この録音までに彼女はMETに38回出演していた)ジェニファー・ラーモアが難役ファッリエーロを歌い録音で残したはたいへん幸運である。至難な装飾歌唱を見事に捌き、第2幕の大アリアも原調で歌い、したがって2回の高いハ音を出している。装飾歌唱の技術も十分で、しかも可能な限り楽譜通りに歌っている。声があまり男装役っぽくないというのが唯一の欠点だが、大した問題ではない。マジェラ・クラー(Cullagh は カラーフ ではない)は英国を中心に19世紀前半のイタリアオペラで活躍したソプラノだが、METやスカラ座、ウィーン国立歌劇場などには出演しておらず、トップスターというわけではなかった。それでもここでは最善を尽くしており、やはり装飾歌唱などは極力ロッシーニが書いた通りに歌っている。技術的には極めて優れていながら癖のある声質で好みの割れるバリー・バンクスだが、異常な性格のコンタレーノは彼に打って付けで本領を発揮している。録音当時30歳だったイルデブランド・ダルカンジェロが朗々とした素晴らしい美声でカペッリオを歌っている。
デイヴィッド・パリーの指揮はいつも通りやや重め緩め、それでも大きな不満はない。
CD |
Priuli (Doge)Ambrogio Rivabasso ContarenoChris Merritttenore CapellioGiorgio Surjanbasso FallieroMarilyn Hornemezzosoprano BiancaKatia Ricciarellisoprano CostanzaPatrizia Orcianisoprano Un CancelliereErnesto Gavazzitenore UfficialeDiego D'Auriatenore UsciereDiego D'Auriatenore Coro Filarmonico di Praga / Pražsky filharmonický sbor Maestro del CoroLubomír Mátl The London Sinfonietta Opera Orchestra DirettoreDonato Renzetti August 1986 Auditorium Pedrotti, Pesaro, Italy |
ロッシーニ・オペラ・フェスティバルでの蘇演の録音。上演記録。公演は8月23、29日、9月1、4日に催された。RAIによる収録なので、基本的に初日、あるいは他日と総練習も部分的に含めての収録かもしれない。
マリリン・ホーンのファッリエーロ、カーティア・リッチャレッリのビアンカ、クリスメリットのコンタレーノ、ジョルジョ・スルヤンのカペッリオと豪華な歌手が集められており、立派な蘇演になった。ただ、当時ファッリエーロを歌えるメッゾソプラノはホーンくらいしかいなかっただろうが、そのホーンでもファッリエーロ役にはかなり苦労しており、第2幕の大アリアは全体を全音下げてなんとか歌い切ったようなところである。
レチタティーヴォセッコに多くのカットあり。
なおこの時の公演のCDは、LEGATO CLASSICS LCD-138-3 という海賊CDでも発売されたことがあるが、両者の内容がまったく同一かどうかは突き合わせてみないと分からない。