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ROSSINI 1819-1




MOSÈ IN EGITTO
Napoli, Teatro San Carlo, marzo 1819

初演:1819年3月7日、ナポリ、サンカルロ劇場


《エジプトのモゼ》 1819年稿での改編

 1818年3月5日に初演された《エジプトのモゼ》が、翌1819年の四旬節でも取り上げられることになり、その際にロッシーニは第3幕の手直しを図っています。つまり、今日たいへんに有名な、紅海を前にしてモゼが祈る Dal tuo stellato soglio を加えたのです。この曲はたいへんに好評で、《エジプトのモゼ》は3月7日から23日まで連日上演されました。
 また、この時の上演では、第2幕のアマルテアのアリア(N.7) La pace mia smarrita がカットされました。この曲は1812年の《バビロニアのチーロ》のアリアを転用したもので、様式的にも《エジプトのモゼ》の中では異質でした。おそらく初演時に不評で、あるいは上演の早い段階で外されていたのかもしれません。


《エジプトのモゼ》 1819年稿のあらすじ

ファラオーネ エジプトの王 バス
アマルテア ファラオーネの妻 ソプラノ
オジリデ 王位継承者[ファラオーネの息子] テノール
エルチア ヘブライの娘、オジリデの秘密の妻
マンブレ [エジプトの大祭司]
モゼ [ヘブライの預言者]
アロンネ [モゼの兄]
アメーノフィ [アロンネの姉]

 エジプトのファラオは、捕囚しているヘブライの民を、一旦は解放すると約束したものの、その後それを撤回した。そのため、モゼはヤハウェ(イスラエルの唯一絶対神)に祈り、エジプトを暗闇にしてしまった。

第1幕
 王宮。エジプトの民は暗闇の恐怖に怯えている。ファラオーネはモゼを呼び、太陽を戻せばヘブライの民の解放を履行すると約束する。モゼの兄アロンネは、ファラオーネが何度も約束を反故にしてきたことから、モゼに注意をする。モゼが神に祈ると、すぐさま光が戻り、人々は喜ぶ。モゼとアロンネは、ヤハウェの力を讃える。ファラオーネはへブライの民の出発を認める。
 ファラオーネの息子、オジリデは、へブライの娘エルチアと愛し合っていた。ヘブライの民が出発するということは、彼にとってエルチアを失うことだった。オジリデは、モゼとアロンネの行為に憤慨している大神官マンブレに、ヘブライの民の出発を阻止するよう訴える。マンブレはエジプトの民を扇動しに行く。
 エルチアがオジリデに別れを告げるためにやって来る。オジリデは彼女に、行かないでほしい、と懇願する。遠くから出発の準備をするヘブライの民の音が聞こえ、エルチアは去って行く。
 ファラオーネの妻、アマルテアはマンブレに、エジプトの民が宮殿を囲み、ヘブライの民の出発許可を取り消すよう要求していると告げる。ファラオーネはオジリデに説得され、意を翻したのだ。ファラオーネは、マンブレとオジリデに、モゼに対して出発許可の取り消しを伝えるよう命じる。アマルテアは、さらなる災難がエジプトを襲うのではないかと不安に駆られる。
 ヘブライの民が、出発を祝い、神を讃えている。その中で一人エルチアだけが悲しんでおり、アメーノフィが彼女を慰めている。ファラオンが解放を取り消したとの報せを聞き、モゼは激しく怒り、神の怒りを買うぞと警告する。ファラオーネも現れ、激しい言い争いとなる。モゼが杖を振ると、雷が鳴り、雹が激しく振り、炎の雨が降ってくる。

第2幕
 ファラオーネはアロンネに、すぐ出発するよう伝える。ファラオーネはオジリデを呼び出し、アルメニアの王女と結婚するよう告げる。それを聞いて悲しげなオジリデに、ファラオーネは理由を尋ねるが、理由は言わない。
 ファラオーネの決定の裏には、アマルテアの説得があった。モゼは彼女に礼を述べるが、アマルテアはファラオーネの気紛れな性格を心配している。
 アロンネはモゼに、オジリデがエルチアと駆け落ちを考えていることを告げる。モゼは、アマルテアと共に二人が隠れている場所を捜すよう命じる。
 暗い地下の部屋。オジリデは不安げなエルチアを連れて来る。彼は、父から結婚を命じられたことを告げ、二人で駆け落ちをしようと訴える。そこにアマルテアが、アロンネと兵士たちを伴なって現れる。オジリデは王位を放棄するとまで言い出すが、アマルテアの命令で、兵士たちが二人を引き離す。
 その頃、ファラオーネはモゼと話し合っていた。エジプトは多数の外敵の脅威に晒されており、ヘブライの民がいなくなると、侵略を受けてしまうと、またも約束を反故にすると告げる。モゼは、エジプトの王子と全ての初子が、雷に打たれ死ぬであろうと予言する。ファラオーネはモゼを捕らえさせる。
 オジリデが雷に打たれるという予言を恐れたファラオーネは、貴族たちを招集、オジリデと王位を共にすると宣言する。モゼとアロンネが引っ立てられる。そこにエルチアが現れ、オジリデと愛し合っていることを打ち明ける。そしてヘブライの民を解放し、オジリデにアルメニアの王女との結婚を受け入れるよう説得する。しかしオジリデは、エルチアこそ彼の心の女王だと言い、剣を抜きモゼに斬りつける。その時、雷がオジリデを打ち、彼は死んでしまう。ファラオーネは息子の亡骸にとりすがり、エルチアは恋人の死に激しく嘆き悲しむ。

第3幕
 ヘブライの民は紅海の海岸に辿り着いている。モゼは跪いて祈り、人々がそれに続く。遠くから物音が聞こえてくる。息子の死に怒り狂ったファラオーネが、自らエジプト軍を率いて後を追ってきたのだ。目の前は海で、逃げ道はない。ヘブライの民はモゼに助けを求める。モゼは跪き、杖で海に触れる。すると、海は真っ二つに割れ、道が開ける。ヘブライの民は対岸へと逃げる。その直後、ファラオーネとマンブレに率いられたエジプト軍が到着、ヘブライの民を追いかけるが、割れていた海が閉じ、彼らは水に飲まれてしまう。


関連項目

《エジプトのモゼ》 (初演稿)
《エジプトのモゼ》 1820年3月,ナポリ,サンカルロ劇場
《モイーズとファラオン》


参考文献

Gioachino Rossini / Mosè in Egitto / Edited by Charles S. Brauner / Fondazione Rossini / 2004 / ISBN 978-0-226-72866-7
Gioachino Rossini: Mosè in Egitto / A facsimilie edition of Rossini's original manuscript edited by Philip Gossett / Garland, New York / 1979
Eduardo Rescigno: Dizionario Rossiniano / Biblioteca Unicersale Rizzoli / 2002 / ISBN 88-17-12894-5
Philip Gossett: Mosè or Moïse? An original masterpiece restored / I Programmi del Rossini Opera Festival / 1983
トーマス・レーメル:『モーセの生涯』 / 矢島 文夫 監修 / 遠藤 ゆかり 訳 / 創元社 / 2003 / ISBN 9784422211688

Lorenzo Regazzo, Akie Amou, Wojtek Gierlach, Filippo Adami, Rossella Bevacqua, Giorgio Trucco, Karen Bandelow, Giuseppe Fedeli
Württemberg Philharmonic Orchestra, Wildbad Wind Band, San Pietro a Majella Chorus, Napoli
Antonino Fogliani
Bad Wilbad, 1, 7 & 12 July 2006
NAXOS 8.660220-21

バート・ヴィルトバートでのロッシーニ音楽祭の公演のライヴ録音。
ミケーレ・カラーファが作曲したファラオーネのアリア A rispettarmi apprenda を採用しています。


ERMIONE

移転。
《エルミオーネ》


EDUARDO E CRISTINA

移転。
《エドゥワルドとクリスティーナ》




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