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1815-2



IL TURCO IN ITALIA
Roma, Teatro Valle, novembre 1815

初演:1815年11月7日、ローマ、ヴァッレ劇場

 ロッシーニは、1815年10月の末頃にナポリを発ち、ローマに向かいます。ヴァッレ劇場で《イタリアのトルコ人》を上演するためです。
 この上演の際、ロッシーニは以下のような改編をしています。

 第1幕のドン・ジェローニオのアリア Vado in traccia d'una Zingara を削除。この曲は元々ロッシーニが作曲した曲ではなかったので、削除してしまったのでしょう。
 第1幕のフィオリッラの登場のアリア Non si dà follia maggiore を、新たに作った Presto, amiche, a spasso, a spasso に差替えています(N.3-ia)。この差替えアリアは、後に《新聞》のリゼッタの登場のカヴァティーナに転用されます。
 第1幕に、ナルチーゾのカヴァティーナ Un vago sembiante を追加(N.3bis。フィオリッラとセリムの二重唱の後に挿入)。
 第2幕の合唱 Non v'è piacer perfetto(N.9)と、フィオリッラとセリムの二重唱 Credete alle femmine(N.10)を削除。
 ジェローニオに、アリア Se ho da dirla avrei molto piacere を追加。これはN.11bis のナルチーゾのアリアの後に挿入されます。スタイルとしてはやや古めかしいけれど、典型的なブッフォのアリアです。
 第2幕のアルバザールのアリア Ah! sarebbe troppo dolce(N.12)を削除。この曲もロッシーニの書いた曲ではなかったので削除してしまったのでしょう。
 第2幕のフィオリッラの大アリア Squallida veste, e bruna に多少加筆しています。

 今日の上演では、ミラノ初演稿とローマ稿から、音楽を適宜取捨選択して上演されることが一般的です。

 ローマ稿で新たに採用された音楽を含むCDについては、ミラノ初演稿のところで紹介します。


TORVALDO E DORLISCA

初演:1815年12月26日、ローマ、ヴァッレ劇場
台本:チェーザレ・ステルビーニ
原作:ジャン=バティスト・クードレの小説『騎士フォーブラの人生と愛』
   →ルイージ・ケルビーノの《ロドイスカ》(1791年7月18日 パリ 3幕)
   →ジョヴァンニ・シモーネ・マイールの《ロドイスカ》(1796年1月26日 ヴェネツィア 3幕)
   →その改訂稿(1799年12月26日 ミラノ 2幕)

あらすじ

第1幕
 北ヨーロッパのとある国。森の中のオルドウ公爵の城。門番のジョルジョが公爵の凶暴な性格をぼやいている。公爵は夜に出かけてまだ戻ってこない。公爵を捜しに森に入った従者たちが戻ってくるが、公爵を見つけられなかったと言う。公爵はジョルジョにピストルや剣を用意させ、兵士長のオルモンドと何やら話をして出かけたのだ。公爵が戻ってくる。実は公爵は、彼の愛するドルリスカを強奪しようと、結婚したばかりの彼女の夫、トルヴァルドを夜の森で襲ったのだが、肝心のドルリスカには逃げられてしまったのだ。オルモンドと兵士たちも、ドルリスカを見つけられなかったことを報告する。公爵はオルモンドたちを再び捜索に遣わせ、ジョルジョに口止めをする。
 森からドルリスカが一人現れる。ここが公爵の城とは知らない彼女は、ここに助けを求めに来たのだ。彼女は、別れてしまったトルヴァルドに思いを馳せる。
 ジョルジョの妹、カルロッタがドルリスカを城内に入れてやる。ジョルジョは、ドルリスカが公爵の捜していた女性だと気付き、ここがオルドウ公爵の城であることを告げる。驚いたドルリスカは立ち去ろうとするが、折り悪く公爵が戻って来る。彼女を見つけた公爵は喜び、ドルリスカに愛を打ち明けるが、彼女は毅然として撥ね付ける。公爵は怒りと愛の間に挟まれ苦悶する。ドルリスカは夫を捜しに森へ戻ろうとする。しかし公爵に、ドルリスカは死んだと知らされ、ドルリスカは公爵を激しく非難する。怒った公爵は、城門の鍵をかけてドルリスカが逃げないようにしてしまう。そして、オルモンドにはトルヴァルドの亡骸を捜しに行くように、ジョルジョにはカルロッタにドルリスカを監視させるよう命じる。
 トルヴァルドが城門にやって来て、ここに妻が捕らえられていることを確信している。彼は、結婚の喜びが悲しみに変わってしまったことを嘆き、城内にいるはずの妻に優しい言葉をかける。トルヴァルドは木こりに変装し、ジョルジョを呼び出すと、城内のご婦人に手紙を渡すよう託されたと告げる。ジョルジョは始め“ご婦人”などここにはいないと否定する。トルヴァルドは、ジョルジョを信頼できる人物だと見抜き、正体を明かす。  出て来た公爵は、トルヴァルドが持ってきた、瀕死の騎士から託されたという手紙を読む。トルヴァルドが死んだと確信した公爵は喜ぶ。そして、ドルリスカが彼に慈悲を乞わせようと、手紙をドルリスカの元に届けるよう命じる。トルヴァルドは、再び妻に会えると喜ぶ。三人が城内へ入ると、オルモンドが戻って来る。トルヴァルドの死体は見つからなかった。彼は、人使いの荒い公爵をぼやく。
 城内。カルロッタはドルリスカを慰めているが、彼女は悲しみに打ちひしがるばかり。公爵たちが現れる。公爵の呼びかけには何の反応も示さなかったドルリスカも、ジョルジョからトルヴァルドの(偽の)手紙を渡され読むと、絶望し気を失いかける。そこに木こりに変装したトルヴァルドがドルリスカに話し掛けるので、ドルリスカは驚く。その様子に疑いを感じた公爵がトルヴァルドに剣を向けるので、ドルリスカは思わず「夫」と呼びかけてしまう。トルヴァルドも正体を明かし、隠していた剣を抜く。しかし公爵はオルモンドたちにトルヴァルドを捕らえさせてしまう。

第2幕
 ジョルジョが公爵の兵士たちと共に地下に降りて行く。彼は、夕暮れに連隊が到着する時に鐘を打ち鳴らし、城の扉を開けて連隊や村人を城内に入れ、トルヴァルドとドルリスカを救出するつもりだ、と告げる。トルヴァルドは、その前に殺されてしまうのではないかと心配している。ジョルジョは、地下牢への扉の鍵は自分だけが持っている、と彼を安心させる。トルヴァルドはジョルジョに、ドルリスカを愛していると彼女に伝えてくれ、と頼み、剣があれば公爵を討つのに、と嘆く。
 公爵はドルリスカを呼び出し、もし自分との結婚に同意するならトルヴァルドを助けてやるが、拒むなら彼を殺す、と告げる。ドルリスカはこの申し出を拒絶し、毅然とした態度で公爵を非難する。公爵は、それならお前も死ぬことになる、と脅すが、彼女は、愛する夫のために、そして名誉を守って死ぬのは喜びだ、と答える。公爵はジョルジョに、オルモンドを部屋に呼ぶよう命じると共に、地下牢への鍵を決して無くさないよう厳命する。そこにカルロッタがやって来て、ドルリスカがトルヴァルドに会えるよう地下牢への鍵を貸してほしい、と兄に頼む。ジョルジョは躊躇しつつも、鍵を渡してやる。カルロッタは、すぐ戻ってくると言い、ドルリスカと地下牢へ向かう。すると、トルヴァルドを殺す決意をした公爵が戻って来て、ジョルジョに鍵を求める。ジョルジョは、部屋に置いてきたと誤魔化し、さらに妹が鍵を持っていってしまったと言い訳する。公爵は激怒する。
 地下牢で再開したトルヴァルドとドルリスカは、逃亡の計画を話し合いながらも、恐怖を感じる。公爵が現れ、ドルリスカを連れ去ろうとしたその時、鐘が打ち鳴らされる。オルモンドは、城が村人たちに包囲されたことを告げ、公爵は城門の防衛に向かう。オルモンドはトルヴァルドに剣を渡す。村人たちの攻撃に押し戻された公爵に、トルヴァルドが剣を向ける。武器を取り上げられ、公爵は観念し、運命の酷さを嘆く。トルヴァルドとドルリスカは抱き合って喜び、ジョルジョとカルロッタ、人々が二人を祝福し、幕となる。

Michele Pertusi, Darina Takova, Francesco Meli, Bruno Praticò, Jeannette Fischer, Simone Alberghini
Orchestra Haydn di Bolzano e Trento, Coro da Camera di Praga
Víctor Pablo Pérez
Mario Martone, Sergio Tramonti, Ursula Patzak, Cesare Accetta
Pesaro, August 2006
DYNAMIC DVD33528 (DVD NTSC)




DYNAMIC CDS528

大成功を収めたROFの上演のライヴ。

Michele Bianchini, Patrizia Cigna, Huw Rhys-Evans, Mauro Utzeri, Annarita Gemmabella, Giovanni Bellavia
Czech Chamber Soloists Brno, Chamber Choir Ars Brunensis
Alessandro de Marchi
Bad Wildbad, 10, 12 and 17 July 2003
NAXOS 8.660189-90

バート・ヴィルトバートのロッシーニ音楽祭での上演のライヴ。若手主体の公演です。
頑張ってはいますが、公爵とトルヴァルドが力不足で、作品の評価を覆すほどではありません。ドルリスカ役のチーニャもほどほど。カルロッタ役のジェンマベッラが一番立派に聞こえます。
デ・マルキは、良い部分もあるものの、時々妙に超スピードで飛ばすのが気になります。
ペーザロやルガーノの上演で削除していた、第2幕幕切れ近くの二箇所のレチタティーヴォ・セッコ(第8場のオルモンドがトルヴァルドに鍵と剣を渡す場面と第2幕フィナーレの前のジョルジョのレチタティーヴォ。ただし前者はここでは短縮されています)が収録されています。

Stefano Antonucci, Fiorella Pediconi, Ernesto Palacio, Mauro Buda, Nicoletta Culiento, Antonio Marani
Orchestra e Coro Radiotelevisione Svizzera Italiana
Massimo de Bernart
Lugano,11 January 1992
ARKADIA AK 123.2

スイス・イタリア語放送の録音。演奏会形式上演のライヴ録音。
悪くない演奏ですが、より優れた演奏の新しい録音が登場してしまうと、存在意義はだいぶ薄れてしまいました。

Siegmund Nimsgern, Lella Cuberli, Pietro Bottazzo, Enzo Dara, Lucia Valentini-Terrani, Gianni Socci
Orchestra della RAI di Milano
Alberto Zedda
Milano, 2 February 1976
VOCE VOCE-25

放送用録音。おそらくこの演奏が近代蘇演だと思います。
今となっては時代を感じさせる演奏ですが、ジョルジョ役のダーラとカルロッタ役のヴァレンティーニ=テッラーニが聞ける点で価値ありです。




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1815-1 1815-2 1816-1 1816-2 1817-1
1817-2 1818 1819-1 1819-2 1820
1821 1822 1823 1825 1826
1827 1828 1829 appendix


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