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最新更新 2024年08月02日
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GIOACHINO ROSSINI
LA DONNA DEL LAGO
初演 1819年10月24日 ナポリ サン・カルロ劇場
First performance Napoli Teatro San Carlo, 24 October 1819
台本 アンドレア・レオーネ・トットラ
Libretto Andrea Leone Tottla
原作 ウォルター・スコット 湖の美女
Original Walter Scott: The Lady of the Lake
題名の邦訳について
まず、このロッシーニのオペラの La donna del lago という題名は、スコットの原作詩の題名 The Lady of the Lake をほぼそのままイタリア語に置きかえたものである。
The Lady of the Lake の日本語訳は、湖上の佳人、湖の麗人 などもあるが、この詩を日本におそらく最初に紹介した明治27年の塩井雨江 しおい うこう の訳本以来、現在まで『湖上の美人』が主流である。
湖上の美人 という訳は、詩的で言葉の響きも美しく耳に馴染みやすい訳であることは間違いない。しかし一方で正確でないという以上に誤った訳でもある。
of the Lake にせよdel lago にせよ 湖上の という意味はない。英語の of の後に地名が来る場合は、ほぼ from と同じく ―の出身を 表す。たとえば、ミュージカル《ラ・マンチャの男 Man of La Mancha》は、スペインのラ・マンチャ地方出身の男(= ドン・キホーテことアロンソ・キハーノ) を意味する。
湖上の美人 という訳は、湖に浮んだ小舟に乗る美女 を思い浮かばせる。湖畔で暮らす人々が湖に小舟で繰り出すのは当然のことだろうが、しかし原作もオペラもそれが物語の主ではない。湖上の美人 という訳には、美しい印象に仕立てるために粉飾が為されている。
実際には The Lady of the Lake には、湖(=カトリン湖)の辺りで生まれ育ち暮らしている女性 程度の意味しかない。
オペラ御殿においては of the Lake、del lago についてはそのまま 湖の とストレートに訳することにする。一方、Lady、donna とも 女性,女 と訳すとあまりに素っ気ないことから、こちらには少しだけ色を加えて 美女 にする。原作もオペラも 湖の美女 の題名でで扱う。
作曲
ロッシーニは1819年3月27日にナポリのサン・カルロ劇場で《エルミオーネ》を初演した後、翌1820年春の四旬節シーズンまでナポリ向けの新作の予定はなかった。
さて劇場支配人ドメニコ・バルバイアは、当時パリで絶大な人気を誇ったイタリア生まれの作曲家ガスパーレ・スポンティーニ 1774―1851 をナポリに招き、1819年10月に彼の新作を初演する予定にしていた。ところが王政復古後のパリで人気の陰ったスポンティーニは、プロイセン国王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世 1770―1840 在位1797―1840 に乞われてベルリンの王立歌劇場(現在のベルリン国立歌劇場)の音楽総監督に就任することになり、ナポリとの契約を一方的に破棄してしまった(違約金はプロイセンから支払われたという)。
スポンティーニの穴埋めのため、ロッシーニは夏(おそらく7月後半)になって急遽、秋の新作を書かねばならなくなってしまった。彼はこの年のカーニヴァル・シーズン(年末から新年にかけて)にミラノに新作(《ビアンカとファッリエーロ》になる)を提供する予定になっていたので、秋の新作をあまり遅くすることもできなかった。
さて、1819年10月の初演時の印刷台本の前書きに、おそらく台本作家のアンドレア・レオーネ・トットラの筆によると思われる、この題材が選ばれた経緯についての一文ががある。
Questo soggetto, tratto dal Poema Inglese del Signor Walter Scott: THE LADY OF THE LAKE, era già dalla Imresa de' Reali Teatri destinato a trattarsi per una delle nuove Opere di questo anno.
この題材は、ウォルター・スコット氏の英語の詩 湖の美女 から引き出されたもので、既に王立劇場の運営によって今年の新作オペラの一つに扱われることになっていた。
つまりウォルター・スコットの『湖の美女』を題材にすることは劇場当局からの指定だったということで、あるいはこれは本来スポンティーニが引き受けるはずだったものなのかもしれない。
当時『湖の美女』にはまだイタリア語訳がなく、トットラはフランス語訳本から台本を作成した。その台本には、当時大流行していたスコットランドの詩人、ジェームズ・マクファーソン編による『オシアン』(こちらはイタリア語版も出版されていた)の要素も多く取り入れられている。
ロッシーニの作曲に関する資料は非常に乏しい。10月8日付の母への手紙で、作曲が完成したと書いている。
なお、第4番のドゥグラスのアリアは第三者によって書かれた。また当時の慣習通り、レチタティーヴォも第三者による。
その一方で、過去の自作からの更生は少ない。オペラの題材が今までにない新しいものだったので、音楽も新たに作らなくてはならなかったのだろう。
初演
初演は1819年10月24日、ナポリのサンカルロ劇場で行われた。
Giacomo Ⅴ Re di Scozia sotto il nome del Cav. Uberto di SnowdonGiovanni Davidtenore
Duglas d'AngusMichele Benedettibasso
Rodrigo di DhuAndrea Nozzaritenore
ElenaIsabella Colbransoprano
Malcom Groeme(Benedetta )Rosamunda Pisaronicontralto
AlbinaMaria Manzisoprano
SeranoGaetano Chizzolatenore
BertramMassimo Orlandinibasso
初演の出演者の多くは、当時のサンカルロ劇場の看板歌手たちだった。
ジョヴァンニ・ダヴィド 1790―1864 は、当時の若い世代の優秀なテノール。父親も高名なテノールで、その教えで1808年にはデビューしていた。ロッシーニのオペラの初演では、ナポリ時代より前、1814年にミラノ スカラ座での《イタリアのトルコ人》でナルチーゾを歌った(その9か月前にスカラ座での《パルミラのアウレリアーノ》初演でタイトルロールを歌う予定だったが、病気降板した)。ナポリでのロッシーニのオペラの初演では、《オテッロ》 1816 のロドリーゴ、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のリッチャルド、《エルミオーネ》 1819 のオレステ、この《湖の美女》のジャコモ5世、《ゼルミーラ》 1822 のイーロを歌った。高音に極めて強いテノールで、ナポリ時代のロッシーニのテノール役に大きく貢献した。
アンドレア・ノッツァーリ 1775―1832 は、1790年代末から引退する1825年まで絶大な人気を誇った偉大なテノール。1811年にナポリの興行主ドメニコ・バルバイアと契約し活躍した。ロッシーニのオペラの初演では、《エリザベッタ、イングランドの女王》 1815 のレイチェステル、《オテッロ》 1816 のタイトルロール、《アルミーダ》 1817 のリナルド、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のアゴランテ、《エルミオーネ》のピッロ、この《湖の美女》のロドリーゴ、《マオメット2世》 1820 のパオロ・エリッソ、《ゼルミーラ》 1822 のアンテーノレを歌った。彼の声はバリトンの声質でファルセットーネで高い音域を歌う(いわゆるバリテノール)だった。
イザベラ・コルブラン 1785―1845 はスペイン、マドリード生まれのプリマドンナ。スペイン国内、パリ、ボローニャなどで歌った後、ミラノ スカラ座に出演しプリマドンナの地位を固める。それからナポリの興行主ドメニコ・バルバイアと契約し、1811年から1822年までナポリを拠点に大活躍した。ここで1815年にナポリに移ったロッシーニと出会い恋仲になり、1822年に結婚。二人はウィーン、ロンドン、パリで精力的に活動した。しかし1830年にはロッシーニはオランプ・ペリシェ Olympe Pelissier 1799―1878 と恋に落ち、夫婦関係は破綻、同時期に健康を害し、1845年、ボローニャ近郊のカステナーゾで亡くなった。一時代を築いた大プリマドンナとして多くのオペラの初演に出演しているが、ロッシーニのオペラの初演に限ると、《エリザベッタ、イングランドの女王》 1815 のタイトルロール、《オテッロ》 1816 のデズデーモナ、《アルミーダ》 1817 のタイトルロール、《エジプトのモゼ》 1818 のエルチア、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のゾライデ、《エルミオーネ》 1819 のタイトルロール、この《湖の美女》のエレナ、《マオメット2世》 1820 のアンナ、《ゼルミーラ》 1822 のタイトルロール を歌った(いずれもナポリ)。
(ベネデッタ・)ロスムンダ・ピサローニ 1793―1872 は、1810、20年代に活躍したコントラルト。ソプラノでデビューしたのちコントラルトに変わった。ロッシーニのオペラでは《リッチャルドとゾライデ》初演 1818 のゾミーラと、この《湖の美女》初演のマルコムを歌っている。男装役を得意とし、力強い声と卓越した装飾歌唱の技術を備えていた。
ミケーレ・ベネデッティ 1778―? はロレート生まれのバス。1810年から四半世紀に渡ってナポリで活躍した。ロッシーニのオペラの初演では、《オテッロ》のエルミーロの他、《アルミーダ》 1817 のイドラオテ、《エジプトのモセ》 1818 のタイトルロール、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のイルカーノ、《エルミオーネ》 1819 のフェニーチョ、《湖の美女》1819 のドゥグラス、《ゼルミーラ》 1822 のレウチッポに出演、またカンタータ《感謝》初演でエルピーノを歌った。
エレナがイザベラ・コルブラン、ウベルト/ジャコモ5世がジョヴァンニ・ダヴィド、ロドリーゴがアンドレア・ノッツァーリ、マルコムがベネデッタ・ロズムンダ・ピザローニという、当時のサン・カルロ歌劇場のスター揃い踏みによる上演だった。奇妙なことに、初日の新聞評は詳細を知らせていない。おそらく初日の評判は良くなかったのだろう。
初演後、ロッシーニはすぐさまミラノに発ったが、ナポリでは11月に続演が6回ほど行われ、さらに翌1820年6月に再演されている。数年のうちにミラノ、ボローニャ、ローマを始めイタリア各地で上演されたのみならず、《湖上の美人》は全ヨーロッパ的人気作になった。だが19世紀半ばになって上演が途絶えてしまう。
近年の上演
ロッシーニの埋もれたオペラにはしばしばあることだが、《湖の美女》は段階的な復活を遂げている。
近代蘇演は、一応、1958年5月9日、フィレンツェ五月音楽祭での上演である。エレナがロザンナ・カルテーリ Rosanna Carteri、ジャコモ5世がチェーザレ・ヴァレッティ Cesare Valletti、マルコムがイレーネ・コンパネエス Irene Companeez、ロドリーゴがエドワード・ルール Edward Ruhl、ドゥグラスがパオロ・ワシントン Paolo Washington、他。指揮はトゥッリオ・セラフィン Tullio Serafin。録音が残されており、楽譜をひどく削除、改変した不完全な上演だったことが分かる。
よりしっかりした蘇演は、1969年5月、ロンドンのキャムデン・フェスティヴァルで行われた。エレナはキリ・テ・カナワ Kiri Te Knawa、ジャコモ5世はモーリス・アーサー Maurice Arthur、マルコムがジリアン・ナイト Gillian Knight、、ロドリーゴがジョン・サージ John Serge、ドゥグラスがロバート・ロイド Robert Lloyd、など。指揮はジェラード・グローヴズ Gerard Groves。テ・カナワはこの時まだ25歳で、これが彼女のオペラ舞台デビューだったという。またドゥグラスを29歳のロイドが歌っている。かなり状態の悪い録音が残されており(YouTubeで聞ける)、それを聞くと、テノールがまだロッシーニの難易度の高い歌唱に十分な対応できておらず、試みという程度に留まっていることが分かる。
《湖の美女》が傑作であることを証明するだけの演奏は、1970年4月22日、RAIトリノによる放送用録音(したがって舞台上演ではない)でようやく現れる。エレナがモンセラート・カバリエ Montserrat Caballe、ジャコモ5世がフランコ・ボニゾッリ Franco Bonisolli、マルコルムがユリア・ハマリ Julia Hamari、ロドリーゴがピエトロ・ボッタッツォ Pietro Bottazzo、ドゥグラスがパオロ・ワシントン Paolo Washington、他。指揮はピエロ・ベッルージ。特筆すべきは当時31歳のボニゾッリで、ジャコモの至難な装飾歌唱と高音を難なくこなしている。
1970年代には他にもいくつかの上演があったようだ。そして1980年にロッシーニ財団によるクリティカルエディションが出来上がったことで、1980年代に湖の美女の上演は一気に活発になる。
クリティカルエディションを用いた最初の上演は、ロッシーニ・オペラ祭での上演、1981年9月16,18,20日、ペーザロ、ロッシーニ劇場。エレナがレッラ・クベッリ Lella Cuberli、ジャコモ5世がフィリップ・ラングリッジ Philip Langridge、マルコムがマルティーヌ・デュピュイ Martine Dupuy、ロドリーゴがデイヴィッド・キューブラー David Kuebler、ドゥグラスがルイージ・デ・コラート Luigi De Corato、他。指揮はピアニストのマウリツィオ・ポッリーニ Maurizio Pollini、オーケストラはヨーロッパ室内管弦楽団 The Chamber Orchestra of Europe。
この上演の成功を受けてROFではキャストを変えて1983年に再演、その際に初めての商業録音が行われた(後述)。【注】
近年ではほぼ毎年どこかの劇場で上演が見られる、ロッシーニがナポリで初演したオペラの中では群を抜いて人気の高い作品になっている。
注 日本の Wikipedia の該当ページには《湖の美女》の『20世紀の復活上演は、1983年のペーザロ・ロッシーニ音楽祭』としているが、上述の通りこれは蘇演どころかROFでの初演ですらなく、大間違いである。
《湖の美女》における政治的仄めかし
《湖の美女》に限らず、ロッシーニのオペラにおける政治的仄めかしはこれまであまり話題になることがなかった。しかしその一方で、当時のナポリのような旧体制的王国であれば、その王立歌劇場で上演される新作オペラに、政治的仄めかしが一切ないというのもまた考えづらいことである。
なお以下の考察は、初めから《湖の美女》における政治的仄めかしを調べようとしたものではなく、台本を分析的に直訳した結果、台本の背後にあるもの気付くに至ったものである。
まず歴史を見ていこう。
ナポレオン戦争の前の1759年、8歳のフェルディナンドはナポリ王国とシチリア王国の両方の国王に就き、両国は同君連合となった。国王は共通だが国は別というのが建て前である。
1798年、南下するナポレオン・フランス軍がナポリに近付く。フェルディナンドの拙い対処のせいで12月にフランス軍はナポリに攻め入り、王家はシチリアに逃れる。逃亡を手助けしたのは、フランスの宿敵である英国だった。
ナポリのフランス傀儡国家パルテノペア共和国はたった6ヶ月で潰えて、フランスとの関係も修復できたのだが、フェルディナンドは居心地の良いパレルモになお3年ほど留まった。フェルディナンドは大の狩り好きで、パレルモ近郊で狩猟に明け暮れた。
フェルディナンドがようやくナポリに戻ってから僅か4年ほど後の1806年、絶頂期のフランス皇帝ナポレオンがイタリア全土の支配を目論みナポリに攻め込む。またもフェルディナンドはパレルモに亡命、だが二度目となるとシチリア島民は、無能な国王フェルディナンドがシチリアに利益をもたらさない人物と見抜いて協力的でなかった。
そこで出てきたのが英国。対仏戦争のためにはシチリアでも増税が必要だったので、シチリア島民を懐柔するため、英国の提案で英国式の(つまり立憲君主式の)新しい憲法を発布し、フェルディナンドの権力を制限することにした。もちろん、英国としては国王を弱体化させシチリアの英国支配を進めるつもりだったのだろうが、ともかくもこの英国の提案はシチリア島民に受け入れられ、憲法は1812年に公布された。
この間、ナポリでは1808年にジョアシャン・ミュラがナポリ王となっていたが、1815年5月に失脚(そしてナポレオンの百日天下の後、同年10月に処刑)、直後にフェルディナンドはナポリに復帰する。すると翌1816年、ナポリとシチリアを両シチリア王国に統合してしまう。今度は本当に一つの国である。
フェルディナンドは当然ごとくシチリアを軽視し、シチリアの新しい憲法を無視し、シチリアをナポリの属国に扱い服従を強いた。当然シチリアでは不満が膨らみ、それがシチリアの分離独立運動の高まりに繋がった。ことに司法がナポリ人の手に渡ることに対してシチリア人が強く反発し、これが1820年の反乱の直接の火種になった。
話をオペラに戻す。
《湖の美女》が作られたのは1819年のナポリだが、その翌年の1820年は反乱の年だった。ナポリではカルボナーリの反乱が起き、さらにシチリアでも反乱が起きている。
この二つの反乱はある程度まで連動していたものの、しかし目指すものは根本的に異なっていた。ナポリの反乱は、ナポレオン戦争後の王政復古であまりにも反動的な王政となった政治体制に対する改革が主たる目的で、これは一時的とはいえ成果を収めている。一方シチリアでの反乱は、究極的にはシチリアのナポリからの分離独立を求めるものだった。
分離独立を目指した反乱は、《湖の美女》の物語でもある。ハイランドがスコットランドからの分離独立しようとしているのが物語の背景である。
つまり、《湖の美女》と1819年頃のナポリとシチリアは、内乱という点で結ばれており、スコットランド=ナポリ、ハイランド=シチリア、ジャコモ=フェルディナンド、という重ね合わせがかなり容易に見て取れる。《湖の美女》の台本でハイランダーたちがあまり悪者に描かれていないのも、和解が前提になっていれば納得できる。
とはいえ、設定だけで政治的仄めかしを論じることは不十分である。設定だけならどうとでも採り得るからだ。台本における政治的仄めかしを掴むには、小さなことであっても台本から具体的な根拠を見つけなくてはならない。
《湖の美女》の台本をよく読んでみると、僅かはいえ無視できないメッセージを見つけることができる。
第一に、ジャコモ/ウベルトはお忍びの狩の一行から外れてエレナの現れる湖畔にやって来るのだが、フェルディナンドは大の狩り好きとしてよく知られている(パレルモ時代の1799年にフェルナンドが狩りの拠点のために作らせたのが、今や観光名所の中国風小宮殿 Palazzina Cineseである)。狩りを介してジャコモ/ウベルトとフェルディナンドを重ねて見ることができるように書かれているのではないだろうか。
第二に、ウベルトがエレナの小船で湖を渡る時、エレナは彼にこう言っている。
Amico asilo
Ti sia la mia capanna: all'altra sponda
Meco, se il vuoi, signor, recar ti dei.
私の小屋が君にとって友に相応しい避難所になるように:
もし君がそれを望むなら、貴君よ、君は別の岸【=対岸】まで私と共に行くはずだ。
つまりエレナはウベルトに、対岸に all'altra sponda 避難しなさい、と言っている。これはフェルディナンドがメッシーナ海峡を渡ってシチリアに逃れたことを思い起こさせる。この対岸と言う表現は、ウベルトが仲間の元に帰ると言い出した時にも All'altra riva と使われている。
第三に、これは間接的な根拠に留まるが、フィナーレ直前の合唱。
Imponga il Re: siamo
Servi del suo voler.
Il Grande in lui vantiamo,
Il padre, ed il guerrier.
王は命じるように:
私たちは彼の意志の召使いだ。
彼における英雄、父、戦士を称賛しよう。
オペラでは君主を讃える合唱は珍しくないのだが、この場合、スコットランドの地方君主たちがジャコモへの恭順を示す内容で、しかも単独の曲なので、国王賛美が強く印象付けられている。ロッシーニのオペラでこれだけ国王万歳、国王への服従を歌った曲はむしろ珍しいだろう。
王立劇場でこうした合唱が歌われることが、現実の国王への賛美と無関係ということはないだろう。
そして第四がなかなか問題含みである。
最後の最後、エレナのロンドフィナーレに挟まる合唱の歌詞は、少々奇妙だ。
Cessi di stella rea
La fiera avversita.
cessi < cessare 終わる,止まる,止む。この場合は La fiera avversita'di stella rea を主語とする接続法現在3人称単数形と採って、祈念の意味と理解するのが妥当だろう。つまり、
悪い星の残忍な過酷さが終わるように。
ロンドフィナーレの直前に、ジャコモはドゥグラスに恩赦を与え、マルコムもお咎めなしにし、さらには彼が愛したエレナと結ばせている。つまり王としての寛容を大きく見せ付けて大団円を導いているのだが、にもかかわらず、人々は「悪い星の残忍な過酷さが終わるように」と祈念している。これはつまり「悪い星の残忍な苛酷さ」はまだ終わっていない、と言っているに等しい。
なぜここが過去形で「悪い星の残忍な過酷さは終った」ではないのか。物語だけではどうにも理解ができない。実はその理由を考えたことが、この作品の政治的仄めかしを考えるきっかけになった。
この不可解な祈念は、しかし反乱直前のきな臭いナポリの政治状況と重ねてみると、不可解ではなくなる。劇中では国王の寛容な徳で反乱が収まったのだが、現実のナポリ、シチリアには反乱前夜の不穏な空気が漂っている、だから国王による内乱平定を扱ったオペラの最後の最後で、現実のナポリ、シチリアでも、フェルディナンドの寛容さによって「悪い星の残忍な過酷さが終わるように」と祈念しているわけである。
《湖の美女》における政治的仄めかしについてはまだ仮説段階で、さらなる検証が必要だ。
ただ、もしこれが正しいとすると、《湖の美女》についての疑問が一つかなり解消する。
《湖の美女》は、イタリアオペラ史で初めてウォルター・スコットの作品を原作としたものとして有名だ。そしてこの作品が大成功を収めたことで、イタリアオペラでスコットブーム、スコットランドブームが巻き起こる。ご存じの通り、ドニゼッティの《ルチア》(1836年)もその流れを汲んだ作品だ。
しかしなぜ1819年のナポリで突如としてウォルター・スコットの作品がオペラ化されたのか、これまで明確な見解は示されたことがない。
さて 作曲 の項で触れた通り、スコットの『湖の美女』のオペラ化を決めたのは、トットラでもロッシーニでもなく、王立劇場当局だとされる。つまり、上からの指示である。
これが事実であれば、王立劇場は、近年の政治状況を鑑みて、当初から国王の寛容による内乱平定を題材にしたオペラを考え、しかも1819年のナポリから距離的にも時代的にも近過ぎず遠過ぎずの設定を探しているうちに、スコットの『湖の美女』に辿り着いたのではないだろうか。
なお政治的仄めかしは、あくまで作品の味付けであって、作品の主たる本質ではないことを付け加えておく。つまりそう読める人(フェルディナンドや王家の人々、貴族たちなど)はそのように理解して楽しむこともできる、という程度である。
最後に、ロッシーニから見てどうなのか、という点だが、これについては結論を出せるほどの情報がない。したがって仮定でしかものを言えないが、ロッシーニは政治関係に巻き込まれることには慎重な人なので、もし《湖の美女》に政治性が濃いと認めていたらあまりいい顔はしなかったろう。ともかく、この企画はおそらくスポンティーニ向けのものが彼のキャンセルでロッシーニに回って来たものなので、ロッシーニはいわばとばっちりを喰らったようなものであろう。
《湖の美女》は初演後、瞬く間に全欧的人気作になった。ナポリで上演されなければこの作品の政治的仄めかしは意味を失ってしまい、やがて誰もそれに気付きもしなくなった。
21世紀に入ると、バロックオペラにおける政治的仄めかしが論じられるようになる。それにより、台本に仄めかしを読み解く鍵が埋め込まれている例がしばしばあることが分かって来た。
《湖の美女》の場合、初演の時のサンカルロ劇場の観客ならば、狩り装束の王が現れたところで、あれはうちらの王様を意味しているんじゃないか? と勘付いたに違いない。この鍵さえ手に入れれば、あとは然るべく仄めかしが見えてくるように作られているのだ。
対訳付き音楽設計図
登場人物
ジャコモ5世 スコットランドの王
騎士ウベルト・ディ・スノードンを騙っているテノール
ドゥグラス・ダングスバス
ロドリーゴ・ディ・ドゥテノール
エレナソプラノ
マルコム・グロエメコントラルト
アルビーナソプラノ
セラーノテノール
ベルトラムテノール
スコットランドの羊飼いの男たち、羊飼いの女たち
吟唱詩人たち
スコットランドの貴人たち、貴婦人たち
高地人の氏族の戦士たち
狩人たち
近衛兵たち
物語の前提
日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
台本の詩句はクリティカルエディション総譜に記載されている状態に合わせてある。湖の美女では、ロッシーニは台本をかなり変えており、したがって初演時やその後の印刷台本、それを基にしたインターネット上の台本とはかなりの相違がある。
ATTO PRIMO | |||
N. 1 Sinfonia, e Introduzione Elena, Uberto, Coro |
Maestoso 2/4 E-flat Major |
(La scena presenta la famosa rocca di Benledi, che, coverta alla vetta da folta boscaglia, e quindi allargandosi al basso, forma una spaziosa valle, nel centro della quale è il lago Kattrine, originato dalle acque cadenti, cui sovrasta ardito ponte di tronchi di alberi. Sorge l'Aurora.)(舞台はベンレディ山の有名な岩山を示している、それは、頂上において密生した潅木の茂みによって覆われており、そしてそれから低い場所へと広がりながら、広々とした渓谷を形作っており、それ【=渓谷】の中央にはカトリン湖がある、【それは】落ちて行く水【=滝】が源になっている、そこに木々の幹の険しい山が聳えている。夜明けの光が昇る。) |
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Allegro vivace 2/4 E-flat Major |
Scena Ⅰ第1場 (Pastori, e pastorelle, che rendonsi a' campestri lavori. Sull'alto cacciatori, che inoltransi nel bosco)(羊飼いの男たち、そして羊飼いの女たち、彼らは野良仕事へと赴いている。高い所に狩人たち、彼らは森の中に入っている) PASTORI羊飼いたち Del dì la messaggiera日の使者の女が【=一日の始まりを告げる使者の女が】 Già il crin di rose infiora.既に頭髪を薔薇で飾り立てている。 Dal sen di lei, che adora,彼女の胸から、それを彼【=次文の l'astro maggior】は熱愛している【のだが】、 Già fugge rapido l'astro maggior.既に最も大きな星【=太陽】が急速に過ぎ去っている。 Ed al suo lucido, brillante aspettoそして彼【=太陽】の明るく、輝く姿に Ripiglia ogni essere vita, e vigor.あらゆる生命が 命を、そして生命力を回復している。 [CACCIATORI][狩人たち] Figli di Morven! Su su! alle selve!モールヴェン【=スコットランドの伝説の国の名】の息子たちよ! さあ、さあ! 森へ! Le caledonie temute belveカレドニア【スコットランドの古名】の恐ろしい野獣たちが A noi preparano novello allor.私たちに新らしい誉 ほまれ を用意している。 (perdonsi di vista)(姿を失いながら) PASTORI羊飼いたち A' nostri riedasi lavori usati.私たちのいつもの仕事に戻るように。 Come verdeggiano ridenti i prati...何と草原が青々としていることか… Al par che ombreggiano le querce annose...年数を経たオークの木々が陰を作るのと同じくらい… Come spontanee sorgon le rose...何と薔薇が自発的に発生することか… Così a' sudori del buon pastore,そのようにして善良な羊飼いたちの汗【=労働】に、 Grate rispondano le piante, e i fior.草木が感謝して応えるように、そして花々が。 (s'incamminano per varie strade)(様々な道に向かって歩き始める) CACCIATORI狩人たち (di lontano)(遠くで) Su su! alle selve! Le irsute belveさあさあ! 森へ! 毛深い野獣たちが Ci offran di gloria novello allor.私たちに栄光の新しいゲッケイジュ【=栄誉】を提供している。 |
l'astro maggior 一般的にこの表現は太陽を指す。 この部分の合唱の歌詞は表現が回りくどく分かりづらいが、日の出直前に山の稜線に赤味が差してから太陽が昇るまでの様子を描写している |
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Andantino 6/8 G Major |
Scena Ⅱ第2場 (Elena in un battello nel lago; indi Uberto dalla rocca)(湖の中の船に乗ったエレナ; その後 岩山からウベルト) ELENAエレナ Oh mattutini albori!ああ 朝の夜明けの光よ! Vi ha preceduti Amor.愛の神は 君たちに先行した。 Da' brevi miei sopori短いまどろみから A ridestarmi ognorいつも私を再び目を覚まさせるために Tu vieni o dolce immagine君は来る ああ 甘美な像よ Del caro mio tesor!私のいとしい宝の人の【像よ】! Fugge, ma riede il giorno;【日は】消え去り、しかし日は戻る; Si cela il rio talor,小川は時々隠れる、 Ma rigorgoglia intornoしかし辺りで再び音を立てて流れる Di più abbondante umor;より豊富な水分で。 Tu a me non torni, o amabile君は私【のところ】に戻って来ない、ああ愛すべき Oggetto del mio ardor!私の熱情の対象よ! |
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Allegro vivace 6/8 E-flat Major |
(si ode il vicino suono di un corno, che viene ripetuto di lontanto)(角笛の近くの響きが聞かれる、それは遠くの【響き】で繰り返されることになる) Qual suon!あの音は! |
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Recitativo [ ] - [Allegro moderato] - Allegro - [Allegro moderato] 4/4 E-flat Major |
Sull'alta rocca高い岩の上を Già le fiere a domar van di Fingallo既に野獣たちを屈服させるために進み去っている I ben degni nepoti. Oh! se fra quelli【↑】フィンガルの とても立派な子孫たちが。ああ! もしその人たちの中で S'aggirasse Malcom! vana speranza!マルコムが歩き回っていたなら! 虚しい希望だ! Rapido qual baleno稲妻のように速く Ei sarebbe volato a questo seno.彼はこの胸へと飛んで来たかっただろうに。 (giunta alla riva, scende dal battello, che attacca ad un tronco)(川岸に辿りつき、船から降りる、それは木の幹に結び付けられる) UBERTOウベルト (Eccola! alfin la rendi(そら彼女だ! ついにお前【=次文の Ciel pietoso 哀れみ深い天】は彼女を与えている All'avido mio sguardo, o Ciel pietoso!私の熱望した目線に、ああ哀れみ深い天よ! Ah, non mentì la fama,ああ、評判は嘘を吐いていなかった、 Anzi è minor di sua beltade il grido.)むしろ評判は彼女の美しさよりも小さい。) ELENAエレナ Di questo lago al solitario lidoこの人気 ひとけ のない湖岸に Chi ti guida? chi sei?誰が君を案内したのか? 君は誰だ? UBERTOウベルト Da' miei compagni,私の仲間たちから、 Una cerva inseguendo,一匹の雌鹿を追い回していて、 M'allontanai. Fra queste私は離れた。この Alpestri, incerte balze il piè inoltrai,険しい、不確かな崖 【↑】の間に 私は足を進めた、 E, già la via smarrita,そして、既に道を見失って、 Per domandarti aita io mi volgea君の助けを求めるために私は向かった A te, non donna, ma silvestre Dea.君のところに、【人間の】女性ではなく、森の女神よ。 (Fingasi.)(【人は】【迷い人の】ふりをするように【=道に迷った人のふりをしよう ≒素性を隠そう】。) ELENAエレナ Amico asilo友に相応しい避難所に【↓】なるように Ti sia la mia capanna: all'altra sponda君にとって 私の小屋が: 別の岸【=対岸】まで Meco, se il vuoi, signor, recar ti dei.私と共に、もし君がそれを望むなら、貴君よ、君は行くはずだ。 UBERTOウベルト Ah sì, del mio destin l'arbitra sei.ああそうだ、君は私の運命の決定者だ。 |
Fingasi. 非人称の si を用いた文で動詞が接続法現在の場合、勧誘の命令 ―しよう や意思未来 ―するつもりだ の意になる |
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Primo Tempo [Andantino] 6/8 G Major |
ELENAエレナ Scendi nel piccol legno,小さな船に降りなさい、 Al fianco mio t'assidi.私の傍らに座りなさい。 UBERTOウベルト Oh del tuo cor ben degnoああ 君の心にとても相応しい Eccesso di pietà!哀れみの過度は! ELENAエレナ Sei nella Scozia, e ancora君はスコットランドにいるのに、そしてまだ Non sai, che qui si onora君は知らないのか、ここでは誇りに思っていることを Pura ospitalità?純粋な手厚いもてなしを? UBERTOウベルト Deh! mi perdona... (oh Dio!ああ! 私を許しなさい… (ああ神よ! Confuso appien son'io!)私はすっかり混乱している!) ELENAエレナ Ah sgombra omai l'affanno,ああ 今ではもう不安を一掃しなさい Lieto respiri il cor.心が喜ばしく息を吐くように。 UBERTOウベルト (Un innocente inganno(悪意のないごまかしを Deh tu proteggi Amor!)ああ君が守りなさい 愛の神よ!) (guadando insieme il lago)(一緒に湖を渡りながら) |
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Allegro vivace 6/8 E-flat Major |
Scena Ⅲ (Da varie balze giungono al piano i cacciatori anelanti in traccia di Uberto)(様々な崖から平地に ウベルトの跡を追って息を切らした狩人たち) CORO合唱 Uberto! Ah! dove t'ascondi? Uberto!ウベルト! ああ! どこに君は隠れている? ウベルト! Donde tracciarlo? come trovarlo?どこから彼を追い掛けるのか? どのように彼を見つけるのか? La fosca selva... l'alpestre, il piano暗い森を… 険しいところ【=崖】を、平地を Si è già percorso, ma tutto invano!既に通り抜けたが、しかしまったく無駄だ! Fiero periglio dal nostro ciglio厳しい危険が私たちの眼 まなこ から L'invola al certo... Uberto! Uberto!確実に彼を掠め取っている… ウベルト! ウベルト! L'eco risponde! speme non v'ha!こだまが応えている! 希望はない! Veloci scorransi altri sentieri...他の道々が迅速に過ぎ去るように【=急いで他の道々を捜そう】…。 Noi là... sul monte...私たちはあそこ… 山々の上を… Noi verso il fonte...私たちは泉の方に… Chi a ravvisarlo primier sarà,最初に彼を認めるであろう者は Agli altri segno dar ne potrà.他の者たちにそのことについて合図を与えることができるであろう。 Tu, che ne leggi nel cor fedel,君よ、その者は私たちの敬虔な心を読取っている、 Al nostro sguardo lo addita, o Ciel!私たちの視線に彼を指し示しなさい、ああ天よ! (si disperdono per diverse strade)(別々の道々を抜けて消え去りながら) |
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[Recitativo] Dopo l'Introduzione | [Moderato] - [Recitativo] 4/4 C Major |
Scena Ⅳ第4場 (Albergo di Duglas. Veggonsi sospese alle pareti le sue armi, e quelle degli antenati)(ドゥグラスの住居。壁に彼の武器が吊るされている、そして祖先の【武器が】) (Albina, e Serano)(アルビーナ、そしてセラーノ) ALBINAアルビーナ E in questo dì?それでこの日に? SERANOセラーノ Tel dissi: atteso giunge私は君に言った: 待ち侘びた Il principe Rodrigo.首領のロドリーゴが 【↑】来る。 ALBINAアルビーナ (Elena! oh quanto(エレナよ! ああ何と Ti fia grave un tal dì!)君にはこの日が深刻になるであろうことか!) SERANOセラーノ Quei fidi amici,あの忠実な友たちを、 Cui spento ancor nel pettoその者たちはまだ胸の中で Non è l'avito ardor, raccoglie intorno祖先の熱情を消して【↑】いない 周囲に集めている、 Il belligero Eroe. Sacro in quell'alma好戦的な英雄【=ロドリーゴ】が。あの魂の中では 神聖に Di Patria amor tutto l'investe, e ardito祖国への愛が彼をすっかり包み込み、そして勇敢に L'impeto incauto ad arrestar lo spinge阻むように彼を急き立てている Di Giacomo, che questeジャコモの 【↑】無謀な衝動を、その者は Contra ogni legge invadeあらゆる法に反して侵攻している Pacifiche contrade. Ah! regga il Cielo【↑↑】この 平和な国土を。ああ! 天が支えるように Così nobil desio, sì puro zelo!これほどに高貴な願いを、これほどに純粋な熱意を! ALBINAアルビーナ E di Elena la destra?それでエレナの右手は? SERANOセラーノ In dolce pegno甘い証に Di tenace amistà Duglas destina強い友愛の ドゥグラスは【娘のエレナの右手を】定めている A sì prode guerrier.あれほどに勇敢な戦士に。 ALBINAアルビーナ (Tutte prevedo(私は見越している Le pene di quel cor!)あの心の中の【↑】すべての 苦悩を!) SERANOセラーノ Tu vieni intanto今のところは君は来なさい A' domestici uffici,家の勤めに、 Che maggiori in tal giornoそれらを こうした日には より重要に Fa un'ospite sì degno: il sai, divisoさせるのだ これほどに素晴らしい客は: 君はそれを知っている、分担されて Fia più lieve il lavoro.作業はより容易になるだろう。 ALBINAアルビーナ (Quanto m'affanna, o amica, il tuo martoro!)(何と私を不安にしていることか、ああ友【=エレナ】よ、君の苦悩が!) (entrano)(【二人は家の中に】入る) |
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Andantino 6/8 C Major |
Scena Ⅴ第5場 (Elena, ed Uberto)(エレナ、そしてウベルト) |
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[Recitativo] 4/4 (C Major) |
ELENAエレナ Sei già nel tetto mio: dorata stanza,君は既に私の小屋の中にいる: 金色に輝く部屋 【↓↓↓】ではない、 Dove il fasto pompeggia,そこでは豪華さが気取り、 Ove il lusso grandeggia,そこでは華美が派手に振舞う、 Questa non è;これは; |
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[Primo Tempo] 6/8 C Major |
2小節 | ||
[Recitativo] 4/4 (C Major) |
ma, semplice, ed umile,そうではなく、素朴な、そして慎ましい【部屋である】、 Qui raccoglie secureそれ【=部屋】はここへ確実に集めている Dall'invido livore嫉妬を掻き立てる嫉みから Pace, amistade, amor filiale, onore.平和、友情、子としての愛【=親への愛情】、名誉を。 UBERTOウベルト (Felice albergo! oh quanta(幸せな家よ! ああ 何という Beltà, virtù racchiudi!)美を、徳をお前は収めていることか!) |
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[Primo Tempo] 6/8 C Major |
2小節 | ||
[Recitativo] - Maestoso - Allegretto 4/4 (C Major) |
ELENAエレナ Il lasso fianco疲れた脇腹【=身体】を Posar ti piaccia.置く【=横にする】ことが君に気に入るように。 UBERTOウベルト (sorpreso)(驚いて) (Ah! qual ravviso intorno(ああ! 周りに 何という Ornamento guerrier! no... non m'inganno...戦闘的な装飾品【=武具】を 【↑】認めていることか! いや… 私は間違っていない… Di Cavalier Scozzese,スコットランド人騎士の Che gli avi miei seguì, questo è l'arnese!その者は私の祖先たちに追随した、これが道具だ【=これは私の祖先たちに侍従したスコットランド人騎士の武具だ】! Ove son'io? e in qual periglio!)私はどこにいるのか? そして何という危険の中に!) ELENAエレナ E donde il tuo cupo silenzio? a che d'intornoそれで君の陰鬱な沈黙はなぜだ? どうして辺りに Volgi dubbio lo sguardo?君は訝しげに視線を向けているのか? UBERTOウベルト Amabil diva!愛すべき女神よ! Se a te non vieta alta cagion, deh lascia,もし君に強い動機が君に禁じていないならば、ああ させなさい、 Ch'io conosca a chi deggia私が知るように 誰のおかげなのか Tratto così gentil?これほどに親切なもてなしは? ELENAエレナ Vanto nel padre私は【そのことについて】誇りとしている 父である Il famoso Duglas.名高いドゥグラスを。 UBERTOウベルト (in uno slancio, che poi reprime)(飛び上がり、それをそれから我慢する Ah!ああ! ELENAエレナ Lo conosci?君は彼を知っているのか? UBERTOウベルト Per fama... e chi nol sa?名声のために… それで誰が彼を知らないというのか? ELENAエレナ Civil discordia政治的な軋轢が Lo rapì dalla corte!彼を宮廷から強奪した。 UBERTOウベルト Oh quanto ancor[a]ああ 何と いまだに N'è Giacomo dolente!そのことをジャコモは気の毒に思っていることか! ELENAエレナ E chi tel disse?それで誰がそれを君に言ったのか? UBERTOウベルト Voce sparsa così... (mal cauto ardore!そのように流布された声【=噂】が… (拙く用心深い熱情【=無用心な熱い気持ち】よ! Non mi svelar: che mai di me sarebbe私【の正体】を明かすな: 私についていったいどうなるのだろうか Se giungesse Duglas?)もしドゥグラスが来るならば?) ELENAエレナ Ma pensierosoしかし 物思いに耽け Chi ti rende così?させているのか 誰が君に それほどに? UBERTOウベルト Di tue pupille君の両瞳の Il soave balen... di quegli accenti優美なきらめきが… あの口調【=君の言葉】の Il dolce suon...甘い響きが… ma... chi a noi vien?だが… 誰が私たちのところに来るのか? ELENAエレナ Le care compagne mie son quelle,彼女たちは私の親しい仲間たちだ、 Cha all'apparir del giornoその者たちは太陽の現れた後に Sollecite al mio sen fanno ritorno.すぐに私の胸に帰ることをする【=私のところに戻って来る】。 |
a chi deggia deggia = deva, debba、この場合は dovere の接続法現在3人称単数。この dovere は補助動詞ではなく、―のおかげである の意 Non mi svelar mal cauto ardore に対しての否定命令文 |
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N. 2 Coro, e Duetto [Elena-Uberto] Elena Uberto Coro |
Allegretto 2/4 A Major |
Scena Ⅵ第6場 (Entrano le compagne di Elena, che circondandola le dirigono il seguente Coro. Infine Albina)(エレナの仲間たちが入る、その者たちは彼女を取り囲みながら次の合唱を歌いかける。最後にアルビーナ) CORO合唱 D'Inibaca,イニバカという、 Donzella,若い娘が、 Che fèその者は D'immenso amore計り知れない愛で Struggere un dìある日 憔悴 【↑↑】させた Tremmor,トレンモールを、 Terror del Norte,北国の恐怖を【=北国ロホランに恐怖を与える者 トレンモールを】、 Sei Elenaエレナよ 君は Più bella:もっと美しい: Per te君に対して Di pari ardore同様な熱情で Avvampa cosìそのように火が点いている Ognorいつでも Rodrigo, il forte.勇者、ロドリーゴは。 UBERTOウベルト (Rodrigo! che mai sento!)(ロドリーゴだと! 私はいったい何を聞いているのだ!) ELENAエレナ (Funesta rimembranza!)(不吉な回顧だ【=嫌なことを思い出した】!) UBERTOウベルト (Di gelosia tormento!(嫉妬の責め苦よ! Io già ti provo in me.)私は既に私の中にお前を感じている。) ELENAエレナ (Affetti miei! speranza(私の情愛よ! 希望を Più il ciel a voi non diè!)もはや天はお前たちに与えなかった!) CORO合唱 Indissolubili, dolci ritorte,解 ほど けることのない、柔らかい枝紐たちが、 O coppia amabile! in te deh annodinoああ 愛すべき一対よ、君へと【=一対へと =夫婦に】 ああ 結ぶように Beltà, e valor.美【=エレナ】、そして勇気【=ロドリーゴ】を。 E dall'Eterea, celeste Corteそして 清らかな宮殿、天界から、 I Genii pronubi, il lieto innalzino恋愛を優しく見守る精霊たちが、高くする【=高らかに響かせる】ように Canto d'amor!【↑】幸せな 愛の歌を! |
D'Inibaca, donzella, イネヴァーカは『フィンガル』に登場する、スカンジナヴィアの国ロホランの王スタルノの妹。フィンガルの曽祖父である勇者トレンモールがロホランに赴いた際に二人は出会い結婚した。 che fè fè = fece Più il ciel a voi non diè! diè = diede、dareの遠過去3人称単数形 |
Maestoso 4/4 C Major |
UBERTOウベルト Sei già sposa? ed è Rodrigo,君は既に花嫁なのか? そしてロドリーゴであるのか Che dal Ciel tal sorte attende?その者は 天からそのような運命を待っている? |
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Allegretto 4/4 C Major |
ELENAエレナ Le mie barbare vicende私の残酷な変遷【=できごと ≒身の上】を Che ti giova penetrar?洞察して 何が君に役に立つのか? UBERTOウベルト Forse... ah dì... non è l'oggetto,おそらく… ああ言いなさい… 彼は対象ではないのでは、 Che tu adori? un altro amanteその者を君が熱愛する? 別の恋人が Sospirar, languir ti fa?君に溜め息を吐かせ、憔悴させて【=思い悩ませて】いるのでは? ELENAエレナ Ah! mi tolse un solo istanteああ! たった一瞬が私から取り去った Del mio cor la libertà.私の心の自由を。 |
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Andante 12/8 E-flat Major |
UBERTOウベルト Quali accenti! e deggio in seno,あの口調【=言葉】! それでは私は胸の中で、 Dolce speme, alimentarti?甘い希望よ、お前【=希望】を掻きたてる【↑】べきなのか? ELENAエレナ Quai tormenti! e come in seno何という苦悩! それで どうやって 胸の中で Posso, o speme, alimentarti?ああ希望よ、私はお前を掻きたてることができるのか? UBERTOウベルト Ah sì! annunzi un tuo balenoああ そうだ! 君の稲妻【=目の輝き】が知らせるように Tanta mia felicità!私の大きな幸せを! ELENAエレナ Da me fugge qual baleno稲妻のように 私から逃げ去っている Ogni mia felicità!私のあらゆる幸せは! |
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Allegro 4/4 C Major |
UBERTOウベルト (Ma son sorpreso se qui più resto!(しかし私は取り押さえられる【=捕まってしまうに違いない】 もしここにさらに私が留まるならば Oh qual contrasto crudele è questo!)ああ これは何という残酷な対立なことか!) (Le compagne di Elena versano delle cervogia in una tazza a guisa di piccola conca, e la porgono ad Elena, dalla quale vien presentata ad Uberto, che beve, mentre esse cantano)(エレナの仲間たちがビールを小さな貝殻の外見のカップに注ぎ、そして彼女たちはそれをエレナに渡す、それはその者【=エレナ】によってウベルトに差し出されられる ELENAエレナ L'ospital conca da me ricevi,私から 歓待する貝殻を受け取りなさい、 Gli oppressi spirti rinfranca, e bevi.圧迫された精神をより元気にしなさい【=疲れ切った心を癒しなさい】、そして飲みなさい。 CORO合唱 Ti siano fausti i Genii lari,家の守護神ラレたち【=ラルたち =ラレス】が君に好意的であるように、 E a te sorridano pace, amistà.そして君に平安、友愛が微笑むように。 UBERTOウベルト Il tuo bel core deh a me conceda,君の優しい心が ああ 私に許すように、 Che a' miei compagni ben tosto io rieda.私の 仲間たちのところにすぐに私が戻ろうとすることを。 ELENAエレナ L'amica Albina,友人のアルビーナが、 (vedendola giungere)(彼女が来るのを見ながら) che all'uopo arriva,その者は必要な時にやって来る、 All'altra riva ti guiderà.別の岸【=対岸】に君を案内するだろう。 UBERTOウベルト Bella! al tuo fianco, ah sempre sarei!美女よ! 君の横に、ああ ずっと私はいるだろうに! ELENAエレナ Hai tu obbliato君は忘れたのか (con contegno imponente)(堂々とした態度で) che ospite sei?君が客であることを? UBERTOウベルト Lascia, che imprima su quella mano...させなさい、その片手の上に私が跡を残すであろうことを【=手の甲にキスをすることを】… ELENAエレナ Costume in Morve non v'ha sì strano.モールヴェンにはそのような奇妙な習慣はない。 UBERTOウベルト (Da lei dividermi come potrò?)(どうやって彼女から別れることがでるのだろうか?) ELENAエレナ (Quai dolci immagini in me destò!)(何と優しい【マルコムの】像を彼は私の中に呼び起こしたことか!) |
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(Allegro) 4/4 C Major |
UBERTOウベルト (Cielo! in qual'estasi rapir mi sento(天よ! 何という恍惚の中へと私が私【自身の心】を奪っているのを感じていることか D'inesprimibile dolce contento!言い知れない甘い喜びの【恍惚の中へと】! Di quai delizie m'inebbria Amore!愛の神が何という歓喜で私を酔わせていることか! Che cari palpiti provar mi fa!)それ【=愛の神】は何と大切な心臓の拍動を私に感じさせていることか!) ELENAエレナ (Cielo! in qual'estasi rapir mi sento,(天よ! 何という恍惚の中へと私が私【自身の心】を奪っているのを感じていることか、 Se il mio bell'idolo talor rammento!私が 私の立派な偶像を 時折 思い出す時に! Di quai delizie m'inebbria Amore!愛の神が何という歓喜で私を酔わせていることか! Che cari palpiti provar mi fa!)それ【=愛の神】は何と大切な心臓の拍動を私に感じさせていることか!) UBERTOウベルト Addio!さようなら! ELENAエレナ Addio!さようなら! (Elena entra nelle sue stanze. Uberto esce scortato da Albina, e dalle donzelle)(エレナは彼女の部屋に入る。ウベルトはアルビーナに付き添われて出て、そして娘たちに【付き添われて】) |
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N. 3 [Recitativo e Cavatina Malcom] Malcom |
Moderato 4/4 a minor |
Scena Ⅶ第7場 (Dalla parte opposta, donde sono partiti gl'indicati attori, si avanza concentrato, ed a passo lento il giovane Malcom)(反対の側から、そこから明示された役者たち【=前の場の出演者たち】が去った、集中して【=物思いに耽って】、そしてゆっくりした足取りで 若いマルコムが進み出る) (Giunto in mezzo alla scena, si scuote dal suo letargo, guarda mestamente intorno, indi dice)(舞台の中央に達すると、彼の虚脱から身じろぎし【=ぼんやりした状態から我に返り】、それから言う) |
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4/4 (C Major) |
MALCOLMマルコム Mura felici, ove il mio ben si aggira!幸せな壁々よ、そこで私のいとしい人が歩き回っている! Dopo più lune io vi riveggo: ah! voi数ヶ月の【過ぎた】後 私はお前たち【=壁 複数形】を再び見ている: ああ! お前たちは Più al guardo mio non siete,私の視線には もはや、 Come lo foste un dì, ridenti, e liete!かつてそうであったように、嬉しそうでは、喜ばしくは 【↑】ない、 Qui nacque, fra voi crebbeここで生まれた、【そして】お前たちの内で大きくなった L'innocente mio ardor: quanto soave私の純真な熱情は: 何と甘美に Fra voi scorrea mia vitaお前たちの内で私の人生が過ぎ去ったことか Al fianco di colei,あの女性【=エレナ】の隣で、 Che rispondea pietosa a' voti miei!その者は私の願いに哀れみ深く応えた! |
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Allegro 4/4 (C Major) |
Nemico nembo or vi rattrista, e agghiaccia敵意ある黒雲が今やお前たちを悲しませ、そして凍らせている Il povero mio cor! Mano crudele私の哀れな心を! 残酷な手が A voi toglie... a me invola... oh rio martoro!お前たちから奪い去っている… 私から掠め取っている… ああ 悪意のある【=酷い】苦悩だ! La vostra abitatrice, il mio tesoro.お前たちの住人を、私の宝の人を。 |
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Cavatina Malcom Andantino 6/8 E Major |
Elena! oh tu, che chiamo!エレナ! ああ 君よ、その者を私は【そのように】呼んでいる! Deh vola a me un istante!ああ 一瞬で私のところに飛んで来なさい! Tornami a dir' «io t'amo!»私のところに「君を愛している」と言いに戻って来なさい; Serbami la tua fé!君の忠誠を私に守っていなさい! E allor, di te sicuro,そしてその時、私は君について確信がある、 Anima mia! lo giuro,私の魂の人よ! 私はそれを誓う、 Ti toglierò al più forte,私は君を最も強い者から取り戻すだろう と、 O morirò per te.さもなければ君のために死ぬだろう。 Grata a me fia la morte,私には死はありがたいだろう、 S'Elena mia non è.もしエレナが私のものでないならば。 |
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Allegro 4/4 E Major |
Oh quante lacrime finor versaiああ 何と多くの涙を今までに流したことか Lungi languendo da' tuoi bei rai!君の美しい眼差しから遠く離れて憔悴しながら Ogni altro oggetto è a me funesto;あらゆる他の対象は私に不幸をもたらす; Tutto è imperfetto, tutto detesto;すべては不完全で、すべてを私は嫌悪している; Di luce il Cielo no più non brilla,天はもはや光で輝いていない、 Più non sfavilla astro per me.星は私のためにはもはやきらめかない。 Cara! tu sola mi dai la calma,いとしい人よ! 君だけが私に平静を与える、 Tu rendi all'alma grata mercé!君【だけ】が【私の】魂に 感謝の情けを与える【=ありがたい救いをもたらしてくれる】。 |
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[Recitativo] Dopo la Cavatina di Malcom | Allegro - Un poco lento - Presto 4/4 C Major |
Scena Ⅷ第8場 (Serano, e detto, poi Duglas, ed Elena)(セラーノ、そして前の場の人、それからドゥグラス、そしてエレナ) SERANOセラーノ Signor, giungi opportuno: al vallo intorno貴殿よ、ちょうどいい時に君は来ている: 周囲の堡塁 ほうるい に Già di guerrieri eletta schiera è giunta,既に選り抜きの戦士たちの隊列が到達した、 城塞に到着し E di poco precedeそしてほどんど先行していない【=(彼らと)一緒にいる】 Il principe Rodrigo. Oh come esulta首領のロドリーゴが。ああ 何と喜んでいることか Duglas di gioia! un avvenir feliceドゥグラスは 歓喜に! 今後の幸せを Alla Scozia, alla figlia, a lui predice.彼【=ロドリーゴ】は スコットランドに、娘に、彼【=ドゥグラス】に 予告している。 MALCOLMマルコム (Qual fiero stato è il mio!(私の状況は何と厳しいことか! Straziata ho l'alma, e simular degg'io?)私は魂をひどく苦しめている、それでも私は【平静を】装わなくてはならないのか?) SERANOセラーノ Tu non rispondi? il ciglio君は答えないのか? 眼 まなこ を Grave hai di pianto?君は 持っているのか 涙で 重々しい【眼を】? MALCOLMマルコム Amico,友よ、 Lasciami al mio destin!私を私の運命に置き去りなさい! SERANOセラーノ (Ah! lo compiango!(ああ! 彼を気の毒に思う! Penetro la cagion del suo dolore!) 私は 彼の苦悩の原因を看破している!) (parte)(退場する) MALCOLMマルコム Eccola! e con Duglas! forza o mio core!ほら彼女が! そしてドゥグラスと一緒だ! しっかりしろ ああ 私の心よ! (resta inosservato)(気付かれないよう留まる) DOUGLASドゥグラス Figlia, è così: sereno è il Cielo, 娘よ、それはこのようである【=以下のようなわけだ】: 天は晴れている、 E arride alle speranze mie,そして【天は】私の希望に微笑んでいる、 Di ogni alma a' voti; e già: di lieti evviva【天は】あらゆる魂の願いに【微笑んでいる】 In queste un tempo erme contrade or sentiこのかつては人里離れた町に 今や君は聞いている Mille voci echeggiar. La Scozia oppressa,千の【多数の】声が鳴り響くのを。圧制に苦しむスコットランドは、 Le ombre irate degli avi al solo Eroe,【そしてその】祖先たちの怒りに燃える霊は ただ一人の英雄に Cui l'onor d'esser sposa è a te serbato,その者の妻になる名誉が君に取って置かれている、 Volgon fremente il ciglio, e il patrio onore【祖先たちの霊は】震えながら【一人の英雄に】眼 まなこ を 向けている、そして祖国の名誉を Affidano al suo brando. A te sol resta彼らは彼の剣に託している。 君だけに残っている Coronar tanta impresa, e la tua manoそれほど大きな企てを成就することが、そして君の手が Nel bel sentier di gloria栄光の素晴らしい道で L'alto campione affretti alla vittoria.気高い擁護者【=ロドリーゴ】を 勝利へと急がせるように。 MALCOLMマルコム smaniando fra sé動揺しながら独り言で (E resisto! e non moro!)(そして私は耐え忍ぶ! そして私はまだ死なない!) ELENAエレナ Oh padre! e quandoああ父よ! それで Ferve bollor di guerra, allor che all'armi戦争の熱狂が燃え上がっている 【↑】時に、戦いに Corre ogni età, mentre lo scudo imbracciaあらゆる年齢が駆けつけている時に、盾を腕に載せている【=盾の緒に手を通している】時に La debil fanciullezza,弱い少女が、 La tremula canizie, e tutto al guardo震える白髪【=老人】が、そして全員が視線に Stragi presenta, e bellici furori,大虐殺を示す【=誰もが大虐殺を目にする】時に、そして戦争に関する激情を【目にする時に】、 Parli di nozze, e vai destando amori?結婚式について君は話すのか、そして君は愛を呼び覚ますのか? MALCOLMマルコム (Ah! mi è fedel!)(ああ! 彼女は私に忠実だ!) DOUGLASドゥグラス Sul labbro tuo stranieri君の唇の上での【=君の口から発せられる】 Son questi accenti, e fia l'estrema volta,これらの口調【=言葉】は 【↑】奇異だ、そして最後の機会だろう Ch'io da te l'oda. Ad obbedirmi apprenda私が君からそれを聞くであろうことは。私に服従することを習得するように Chi audace mi disprezza:向こう見ずにも私を侮辱する者は: Onte a soffrir non è quest'alma avvezza.この魂は侮辱を我慢することには慣れていない。 |
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N. 4 Aria Duglas Duglas |
Allegro maestoso 4/4 E-flat Major |
DOUGLASドゥグラス Taci, lo voglio, e basti:黙りなさい、それを私は望んでいる、そして君は【それで】十分である: Meglio il dover consiglia:それ以上に 義務が【君に】進言している: Mostrami in te la figlia君の中に娘【であること】を私に見せるようにと Degna del genitor.父に相応しい【娘でであることを】 Di un passaggiero orgoglio束の間の傲慢さの Perdono in te l'eccesso:君の中における行き過ぎを私は大目に見る。 Ti dica questo amplesso,この抱擁が君に言うように Che mi sei cara ancor.私にとって君は やはり 愛する者であることを。 (Si sentono da lungi squillar le trombe)(遠くから喇叭 らっぱ が鳴り響くのが聞こえる)) Ma già le trombe squillano!既に喇叭が鳴り響いている Giunge Rodrigo! oh sorte!ロドリーゴが到着している! ああ 運命よ! Io ti precedo... sieguimi...私は君に先行する… 私の後を追いなさい… Ed offri al prode, al forteそして勇者に捧げなさい、強者に In puro omaggio il cor.清らかな敬意で 【君の】心を。 Di quelle trombe al suonoあの喇叭の音で Ah! ridestar mi sentoああ! 私は蘇るのを感じている Nel cor, di forze spento,心の中に、【その心は 今は】力を失っている、 L'usato mio valor.かつての私の勇気が【蘇るのを感じている】! (parte)(退場する) |
Di un passaggiero orgoglio passaggiero = passeggero, passeggiero 早く過ぎ去る,束の間の |
[Recitativo] Dopo l'Aria Duglas | 4/4 (C Major) |
ELENAエレナ E nel fatal conflittoそして不可避の衝突の中で Di amore, e di dover, fra tante pene,愛の、そして義務の【=愛と義務の避けられない衝突の中にあって】、夥しい苦悩の間で、 Elena! che farai?エレナよ! 君はどうするのであろうか? MALCOLMマルコム Mio caro bene!私の愛するいとしい人よ! ELENAエレナ Malcom! Numi! tu qui?マルコム! 神々よ! 君がここに? MALCOLMマルコム Mi chiama in campo私を戦場に呼んでいる Quella ragione istessaあの同じ理由が Che arma i prodi di Scozia.それはスコットランドの勇者たちに武器を持たせている。 ELENAエレナ Ah! in quale istanteああ! 何という瞬間に Giungesti!君は来たことか! MALCOLMマルコム E che? dell'amor tuo poss'io,それで何が【=いったいどうして】? 私は君の愛を、 Elena, dubitar?エレナよ、疑う 【↑】かもしれないのか? ELENAエレナ Crudele! e puoi酷い人! それで君は するかもしれないのか Oltraggiarmi così?そのように私を侮辱する? MALCOLMマルコム Se fida è dunqueそれでは 誠実ならば A me quell'alma, io sfiderò le stelle...私に その魂が、私は星々【=星占いの星々 ≒運命】に挑もう… Sì, de' nostri tiranniそうだ、私たちの抗し難い力の Resisterò al poter.力に私は抵抗するだろう。 ELENAエレナ Saprò morire私は死ぬことができるだろう Esempio di costanza.固い意志の模範【として】。 MALCOLMマルコム A me la mano私に【君の右】 手を Di giuramento in pegno...誓いの証 あかし に… ELENAエレナ Eccola...ここにそれが… ELENA E MALCOMエレナとマルコム O sposi, o al tenebroso regno.花婿花嫁【=夫婦 になる】か、闇に包まれた国に【向かう】か。 |
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N. 5 Duettino [Elena - Malcom] Elena Malcom |
Andante grazioso 4/4 A Major |
ELENA E MALCOMエレナとマルコム Viver io non potrò,私は生きることができないだろう Mio ben, senza di te;私の愛する人よ、君なしでは; Fra l'ombre scenderò影【=黄泉の国】の中へと私は降りるだろう Pria che mancar di fé.忠実が無くなるより前に。 (partono)(退場する) |
Viver io non potrò, 二人が並行して重なって歌う最初のところだけ、未来形の potrò ではなく 条件法現在形の potrei が用いられている。 私は生きることができないだろうに、 という意 |
N. 6 Coro e Cavatina Rodrigo Rodrigo Coro |
Allegro moderato 4/4 C Major |
Scena Ⅸ第9場 (Vasta pianura, circondata da alti monti: si vede da lungi altra parte del lago. Rodrigo si avanza in mezzo de' guerrieri del Clan, che lietamente l'accolgono, indi Duglas)(広い平原、他の山々に取り囲まれている: 遥か遠くから湖の別の側【=対岸】が見える。ロドリーゴはクランの戦士たちの中央へ近付き、その者たち【=戦士たち】は彼【=ロドリーゴ】を喜ばしく歓待する、それからドゥグラス) CORO合唱 Qual rapido torrente,速い急流のようである、 Che vince ogni confin,それはあらゆる境界に打ち勝ち、 Se torbido, e frementeもし濁っても、そして轟いても Piomba dal giogo alpin,アルプスの山間の道から急に落ちている、 Così, se arditi in campoこのように、もし戦場において 勇敢さを Ne adduce il tuo valor,君の勇気が私たちにもたらすならば Non troverà più scampoもはや逃げ道を見つけないだろう L'ingiusto, l'oppressor.不正な者は、抑圧者は。 sorte Rodrigoロドリーゴが外に出る【=登場する】 Vieni, combatti, e vinci,来なさい、戦いなさい、そして勝ちなさい、 Corri a' novelli allori:生まれたばかりのゲッケイジュ【=新たな栄光】に駆けつけなさい: Premio di dolci ardori甘い熱情の報酬を Già ti prepara Amor.既に愛の神は君に用意している。 |
se arditi in campo / Ne adduce il tuo valor, この arditi は形容詞の名詞的用法 |
(Allegro Giusto) 4/4 C Major |
RODRIGOロドリーゴ Eccomi a voi, miei prodi,ここに私が、私の勇者たちよ、 Onor del patrio suolo;祖国の地の名誉【である私】が; Se meco siete, io volo君たちが私と一緒にいる以上は、私は疾走している Già l'oste a debellar.既に【敵の】軍勢を打ち負かしに【=駆けつけている も同然だ】。 Allor che i petti invade【君たちの】胸【=心】を満たしている時には Sacro di patria amor[e],祖国愛の神聖さが、 Sa ognor di mille spade常に千本の剣に Un braccio trionfar. 一本の腕が勝利を収める 【↑】ことができるのだ。 CORO合唱 Sì, patrio amor c'invada,そうだ、祖国愛が私たちを満たしている、 Deh! guidaci a trionfar!ああ! 私たちを勝利を収めに案内しなさい! Ci guida a trionfar!私たちを勝利を収めに案内しなさい! |
Già l'oste a debellar. この oste は 客 ではなく 軍勢 の意 |
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Andante con moto 2/4 F Major |
RODRIGOロドリーゴ Ma dov'è colei, che accendeだが彼女はどこだ、その者は火を点けている Dolce fiamma nel mio seno?私の胸の中に甘い炎を De' suoi lumi un sol baleno彼女の目のたった一度の稲妻【=一瞥】が Fa quest'anima bear!この魂を幸福に浸らせる |
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Allegro 4/4 C Major |
CORO合唱 Premio di dolci ardori甘美な熱情の報酬を Già ti prepara Amor.既に愛の神は君に用意している。 |
歌詞は既出の繰り返し | |
(Allegro) 4/4 C Major |
RODRIGOロドリーゴ Se a miei voti Amor sorride,もし愛の神が 私の願いに微笑むならば、 Altro il cor bramar, non sa!この心は別のものを切望することは、できない! Ed allor, qual nuovo Alcide,そして今、新しい【=第二の】アルチーデ【=アルケイデス =ヘラクレス】のように、 Saprò in campo fulminar 私は戦場で【敵を】雷撃する【=すぐさま殺す】ことができるだろう。 CORO合唱 A' tuoi voti Amore arride,君の願いに愛の神が微笑んでいる、 Vieni in campo a fulminar.戦場で雷撃しに来なさい。 |
Se a miei voti amor sorride, / Altro il cor bramar, non sa! この2行は、古い印刷台本のいくつかでは Fausto amor se a me sorride, / Io non so che più bramar! となっている。クリティカルエディションでは左記の通り |
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[Recitativo] Dopo la Sortita di Rodrigo |
4/4 (C Major) |
DOUGLASドゥグラス Alfin mi è dato, o Prence,ついに私に与えられた、ああ 首領よ、 Stringerti al sen: ah! di sì grato istante君を胸に抱きしめることが: ああ! これほどにありがたい瞬間を Bramosa l'alma mia, più dell'usato切望している私の魂は、いつもよりも Le ali al Tempo agitò.時の翼を振り動かした【=私の心はこれほどにありがたい瞬間を待ち望んでいたので、時が過ぎるのが速かった】。 RODRIGOロドリーゴ Di egual desio同じ欲求のために Fu anelante il mio cor.私の心は息を弾ませていた。 DOUGLASドゥグラス Venga, e ne offenda彼は来るがいい、そして私たちを傷つけるがいい Or Giacomo, se il può. Rodrigo è in campo?今こそジャコモは、もし彼がそれをできるならば。ロドリーゴが戦場にいるのに? Seco è vittoria. Eventi i più felici勝利は彼と共にある。最も幸運な出来事が Brillano già da così lieti auspici.既にこれほどの喜ばしい占い師たちによって輝いている。 RODRIGOロドリーゴ Se il saggio tuo consiglioもし君の懸命な助言が Il mio braccio avvalora,私の腕の価値を高める【=私の腕に勇敢さを与える】のであれば、 Non dubitar, salva è la patria allora.疑うでない、今は祖国は【危険から】守られている。 DOUGLASドゥグラス Il presagio felice幸せな予言を Avveri il Ciel!天が現実化するように。 RODRIGOロドリーゴ Ma tecoしかし 君と一緒に A che non è la figlia?どうして娘がいないのか? DOUGLASドゥグラス Io la precedo私は彼女に先行している Di pochi passi.数歩。 RODRIGOロドリーゴ Ignora forse il mioまさか彼女は知らないのか Impaziente ardor?【私の】辛抱できない熱情を? DOUGLASドゥグラス Eccola!そこに彼女が! RODRIGOロドリーゴ Amici!友たちよ! Voi l'amata mia Diva君たちは 私の最愛の女神を Accogliete con plausi, e lieti evviva.賞賛で歓迎しなさい、そして喜ばしい万歳【で】。 |
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N. 7 Coro, e Finale Primo Elena Albina Malcom Rodrigo Serano Duglas Coro |
Marziale 4/4 E-flat Major |
Scena ultima (Elena, Albina, donzelle, indi gli altri attori, che verranno indicati)(エレナ、アルビーナ、娘たち、それから他の役者たち、その者たちは指示されるであろう【=後で指示のある他の登場人物たち】) CORO合唱 Vieni, o stella, che lucida e bella来なさい、ああ 星よ、それはピカピカと光りそして美しい Vai brillando sul nostro orizzonte!輝きながら私たちの地平線の上に行きなさい Tu serena deh mostra la fronte澄み切った君よ ああ 顔を見せなさい A chi altero è di tanta beltà.たくさんの美を自慢している【=誇っている】者に。 E come brina, che mattutina,そして霜 しも のように、それは早朝に、 La terra adusta bagnando va.陽に焼けた大地を濡らして行く。 Così l'aspetto de' tuoi bei lumiそのようにして君の美しい目の一瞥は Di gioia il petto gl'inonda già.既に彼の胸を歓喜でずぶ濡れにしている【=喜びでいっぱいにさせている】。 |
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Finale [Primo] Andantino 6/8 G Major |
RODRIGOロドリーゴ Quanto a quest'alma amanteどれだけ この愛する魂に Fia dolce un tale istanteこうした一瞬が甘美であろうか Non può il mio labbro esprimere,私の唇【=口】は言い表すことができないし Né trova accenti Amor.愛の神は口調【=言葉】を見つけていない【=言葉を失っている】。 Ma che? tu taci, e pavidaだがどうしたのか? 君は黙り込み、そしておどおどして Il ciglio abbassi ancor?ずっと 眼 まなこ を 下げているのか? DOUGLASドゥグラス Loquace è il suo silenzio;彼女の沈黙は意味深長だ: Il sai: Loclinia vergine君はそれを知っている: ロホランの乙女は Gli affetti suoi più teneri彼女のとても甘い情愛を Consacra al suo pudor.恥じらいに捧げているのだ。 ELENAエレナ (Come celar le smanie(どうやって動揺を隠すのか Che straziano il mio cor?それは私の心を酷く苦しめている? Non posso, oh Dio! resistere私は、ああ 神よ! 耐えられない A così rio dolor!)これほどにひどい苦悩を!) DOUGLASドゥグラス (Se al tuo dover dimentica(もし君の義務について Ti rende altro amator?別の恋人が君に忘れさせているとしたら? Figlia sleal! sì, sì, paventami,不誠実な娘よ! そうだ、そうだ、私を恐れよ、 Ah! trema del mio furor.)ああ! 私の激情で震えろ。) RODRIGOロドリーゴ (A che i repressi gemiti?(抑えられたうめきはどうしてなのか【=彼女はどうして声を押し殺して嘆いているのか】? A che quel suo pallor?あの彼女の青白さはどうしてなのか【=彼女が顔面蒼白なのはなぜなのか】? Ondeggio incerto, e palpito私は不確かに波打っている【=揺れている =動揺している】、そして【心臓が】激しく打っている Fra speme, e fra timor!)希望の中で、そして不安の中で!) ELENA, RODRIGO E DOUGLASエレナ、ロドリーゴとドゥグラス (Di opposti affetti un vortice(向かい合った【=対立する】感情の渦巻きが Già l'alma mia circonda...既に私の魂を取り囲んでいる… Caligine profonda深い霧 きり が Già opprime i sensi miei既に私の感覚を圧迫している Del più fatale orror!)とても不可避の恐怖で!) (Per sempre io ti perdei,(永久に私はお前を失った、 O calma del mio cor!)ああ 私の心の平静よ!) |
Loclinia vergine Loclinia < loclinio ロホランの。⇒ N. 2の注 Se al tuo dover dimentica / Ti rende altro amator? この dimentica < dimentico は形容詞。rendere + 形容詞 で ―させる なおここでの tuo と Ti は直接エレナに呼びかけているわけではないことに注意 Per sempre io ti perdei, 最初に歌われる時だけ io が外されている |
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[Allegro] 2/4 E-flat Major |
(Malcom alla testa de' suoi seguaci si presenta a Rodrigo, e gli dice)(彼の家来たちの先頭に立っているマルコムがロドリーゴの前に出る) MALCOLMマルコム La mia spada, e la più fida私の剣と、そして最も忠実な Schiera eletta a te presento:選りすぐりの舞台を私は君に差し出す: Al cimento, a fier periglio,試練に、苛酷な危険に、 Alla morte ancor me guida:さらに死に私を案内しなさい: Mostrerò, che un degno figlio私は見せるだろう、相応しい息子を Può vantar la patria in me.祖国が私に称賛することができることを【=祖国が私を立派な息子だと称賛することができる様 さま を】。 ELENAエレナ (Ah! lo veggo, e di consiglio(ああ! 私は彼を見ている、すると慎重さ【=冷静になること】を Più capace il cor non è!)心はもはやできない!) MALCOLMマルコム (Ah! di freno, e di consiglio(ああ! 抑制【=自制】を、そして慎重さ【=冷静になること】を Più capace il cor non è!)心はもはやできない!) DOUGLASドゥグラス (Figlia iniqua! il tuo scompiglio(非道な娘よ! 君の混乱状態を Veggo or ben chi desta in te!)君の中に引き起こしている者を 今 私は良く見ている!) |
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Allegro maestoso 12/8 C Major |
RODRIGOロドリーゴ Questo amplesso a te fia pegnoこの抱擁が 君への証になるだろう Di amichevoli ritorte:友情を込めた枝帯【=絆】の: La mia gioia or colma è al segno私の歓喜は 今や 限界まで満ちている Fra l'amico, e la consorte!友と、そして配偶者【=妻】の間で! Oh quai vincoli soaviああ 何と快い固い絆なことか Di amistade, e pura fé!友情と、そして純粋の忠実の! MALCOLMマルコム La consorte!... e chi?配偶者だって!… それで誰が? RODRIGOロドリーゴ Nol sai:君はそれを知らないのか: DOUGLASドゥグラス Qual sopresa?どのような驚きなのか? RODRIGOロドリーゴ A' dolci rai優しい眼差しに Ardo ognor d'Elena bella...美しいエレナの【眼差しに】 私はずっと燃えている。 MALCOLMマルコム (in uno slancio inconsiderato)(軽率な衝動で) Ah! non fia...ああ! それはないであろう… DOUGLASドゥグラス Che?何が? MALCOLMマルコム No...いや… RODRIGOロドリーゴ Qual favella?彼は何を言っているのか? ELENAエレナ Ah! non fia che a te contrastiああ! ないだろう 君に対して逆らうであろうことは Sorte avversa il bel contento...敵対する運命が 素晴らしい満足を【=不運が 君の素晴らしい喜びを阻むようなことはないだろう】… Volea dir...彼は【次のように】言いたかった… MALCOLMマルコム Ma...しかし… ELENAエレナ Tal momentoこのような瞬間は Fa quell'anima gioir...あの【=彼の】魂をとても喜ばせている と… (rapidamente, e di nascosto a Malcom per frenarlo)(彼を抑制するために素早く、そして隠れてマルコムに) (Taci... oh Dio! per te pavento!(黙りなさい… ああ 神よ! あなたのせいで私は恐れている! Ah! pietà del mio martir!)ああ! 私の苦悩に哀れみを!) |
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Moderato 2/4 A-flat Major |
RODRIGOロドリーゴ (Crudele sospetto,(残酷な疑い、 Che mi agiti il petto,それは私の胸を掻き乱している、 Ah taci! comprendo...ああ 黙れ! 私は理解している【=私には分かった】… Già d'ira m'accendo!)私は既に怒りに燃え上がっている!) DOUGLASドゥグラス (Ah l'ira, il dispetto(ああ 怒りが、苛立ちが Mi straziano il petto!私の胸をひどく苦しめている! Ei tutto comprende!彼はすべてを理解している! Minaccia! si accende!彼は威嚇している! 彼は燃え上がっている! ELENA E MALCOLMエレナとマルコム (Ah! celati o affetto(ああ! 隠れなさい ああ 情愛よ Nel misero petto!哀れな胸の中に! Ei tutto comprende!彼はすべてを理解している! Minaccia! si accende!)彼は威嚇している! 彼は燃え上がっている!) ALBINAアルビーナ (Crudele sospetto(残酷な疑いが Gli serpe nel petto!彼の胸の中で蛇行している! Quai triste vicende!何という悲しいできごとなことか! Si adira! si accende!彼は憤慨している! 彼は燃え上がっている! RODRIGOロドリーゴ (Le furie di Averno(地獄の復讐の女神たちが In seno mi stanno!私の胸の中にいる! Sì barbaro affanoこれほどに残酷な感情は No, pari non ha, no!)そうだ、匹敵するものを持たない!) DOUGLASドゥグラス Sì... sono implacabil...そうだ… 私は静められない… Vendetta mi affretta...復讐が私を急かしている… Un padre più miserさらに悲惨な父親を La terra no ha, no!)世界は持っていない!) ALBINA E COROアルビーナ Il Ciel par che ingombri天を占め塞いでいるように見える Un nembo assai fiero...とても荒々しい黒雲が… Sì cupo misteroそうだ 暗闇に包まれた謎は Qual termine avrà?)どのような終わりを持つであろうか?) ELENA E MALCOLMエレナとマルコム (E intanto quest'alma(そしてついに この魂は Oppressa, smarrita圧迫されて、途方に暮れて Non trova più aita,もはや救いを見出していない、 Più pace non ha!)もはや平安を見出していない!) |
Oppressa, smarrita alma にかかる形容詞だが、副詞的に訳した |
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Spiritoso 3/4 C Major |
(Giunge Serano frettoloso. I bardi lo seguono)(セラーノが慌して来る。吟唱詩人たちが彼の後に従う) SERANOセラーノ Sul colle a Morve oppostoモールヴェンとは反対側の丘の上で Ostil drappello avanza...敵の分隊が近付いている… CORO合唱 Nemici!敵たちが! DOUGLASドゥグラス Oh qual baldanza!ああ 何と不敵なことか! CORO合唱 Nemici!敵たちが! RODRIGOロドリーゴ Andiam... disperdansi...行こう… 【大胆な者どもが】追い散らされるように… Distruggansi gli audaci...大胆な者どもが殲滅されるように… ELENAエレナ (Oh quai sanguigne faci(ああ 何という血の松明 たいまつ を Veggo al mio sguardo ognor!)私は いつも 私の視線に見ることだろうか!) MALCOLM, RODRIGO E DOUGLASマルコム、ロドリーゴとドゥグラス (Privato affanno ah taci(個人的な不安よ ああ 黙りなさい Trionfa o patrio amor!)勝利を収めなさい ああ祖国愛よ!) RODRIGOロドリーゴ (Rodrigo a' Bardi)(ロドリーゴは吟唱詩人たちに) A voi, sacri cantori!君たちにおいて、聖なる歌い手たちよ! Le voci ormai sciogliete:声を 今こそ 解放しなさい【=君たちの歌を高らかに歌いなさい】: In sen bellici ardori胸の中に 戦いの熱意を Destate su... movete;目覚めさせなさい… 引き起こしなさい; Ed al tremendo segno,そして凄まじい合図に、 Che a battagliar ne invita,それは私たちを戦うことへと呼び集める、 |
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Moderato 3/4 C Major |
Mi giuri ogn'alma arditaあらゆる勇敢な魂が私に誓うように Di vincere o morir.勝利を収めることを さもなくば死ぬことを。 MALCOLM, DOUGLAS E COROマルコム、ドゥグラスと合唱 Giura quest'alma arditaこの勇敢な心は誓う Di vincere o morir.勝利を収めることを さもなくば死ぬことを。 (Un Capitano reca e solleva in alto un grande scudo che fu del famoso Tremmor secondo la tradizione degli antichi Brettoni. Rodrigo con la sua lancia vi batte sopra tre volte. Rispondono egualmente tutti i guerrieri, battendo le aste su loro scudi)(一人の隊長が大きな盾を持って来る高く持ち上げる それ【=盾】は古代ブリタニア人たちの伝承によると 高名なトレンモールのものだった。ロドリーゴは彼の槍でそれを3回以上打つ。すべての戦士たちが一様に【それに】応える、彼らの盾の上に槍を打ちながら) |
secondo la tradizione degli antichi Brettoni Brettoni < brettone = bretone この語はブルターニュの,ブルターニュ人の意で、現在ではフランス最西部の半島近辺を指しているが、この場合は britanno ブリタニア人(の) の意で用いられていると思われる(そもそもブルターニュはブリタニアに由来している) |
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Moderato 4/4 E-flat Major |
CORO DI BARDI吟唱詩人たちの合唱 Già un raggio既に 光線が Forier d'immenso splendor壮大な輝きの前兆の【光線が】 Addita il sentier道を指し示している! Di gloria e d'onor!栄光と栄誉の! Oh figli d'Eroi!ああ 英雄たちの息子たちよ! Rodrigo è con voi.ロドリーゴは君たちと共にある、 Correte, struggete走りなさい、苦しめなさい Quel pugno di schiavi...あの一握りの奴隷たち【=少人数の卑しい奴ら】を… Già l'ombre degli avi既に 先祖の霊たちは Vi pugnano allato...君たちの側らで戦っている… Voi, fieri all'esempio君たちは、【祖先の】手本を 誇りとして、 Di tanto valor,たくさんの勇気の【誇りとして】、 Su su! fate scempioさあさあ! 虐殺をしなさい【=殲滅しなさい】! Del vostro oppressor!君たちの抑圧者の! ALBINAアルビーナ E vinto il nemico,そして敵が打ち負かされ、 Domato l'audace,傲慢な者どもが屈服すれば La gioia, la pace栄光と平和が In voi tornerà.あなた方に戻って来るでしょう CORO DI DONNE女性たちの合唱 E allora feliciそしてその時 Col core sereno 晴れ晴れとした心で 【↑】幸せな Le spose, gli amici花嫁たち、友たちは Stringendovi al seno,君たちを胸に抱きしめるだろう、 CORO DI BARDI吟唱詩人たちの合唱 Oh figli d'Eroi!ああ 英雄たちの息子たちよ! Rodrigo è con voi.ロドリーゴは君たちと共にある、 ALBINA E CORO DI DONNEアルビーナと女性たちの合唱 L'ulivo all'alloroオリーヴがゲッケイジュの Succeder saprà.後に続くだろう。 CORO DI BARDI吟唱詩人たちの合唱 Correte, struggete走りなさい、苦しめなさい Il vostro oppressor.君たちの抑圧者を。 |
L'ulivo all'alloro / Succeder saprà. ゲッケイジュは栄誉、オリーヴは平和の象徴 |
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Allegro 4/4 E-flat Major |
RODRIGOロドリーゴ All'armi, o campioni!武器を取れ、ああ 仲間たちよ! La Gloria ne attende...栄光が私たちを待っている… (qui una brillante meteora sfolgoreggia nel Cielo; fenomeno in quella regione non insolito. Sorpresa in tutti)(ここできらめく流星が天に光り輝く; その地方では滅多にないことではない【=珍しくはない,時々ある】現象。全員に驚嘆が) TUTTI全員 Di luce si accende燃えついている Insolita il Ciel!いつもと違う 【↑】光で 空が RODORIGO E DOUGLASロドリーゴとドゥグラス D'illustre vittoria煌々とした勝利の Annunzio fedel!忠実な【=信頼できる】前兆だ。 |
Di luce si accende / Insolita il Ciel! ト書きで流星について non insolito 滅多にないわけではない =時々ある とわざわざ断りを入れているにもかかわらず、ハイランダーたちが流星を見て insolita いつもと違う と言っていることに注意 |
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Stretta Allegro 2/4 E-flat Major |
MALCOM, RODRIGO, DOUGLAS. CORO DI GUERRIERI E CORO DI BARDIマルコム、ロドリーゴ、ドゥグラス、戦士たちの合唱と吟唱詩人たちの合唱 Su... amici! guerrieri!さあ… 友たちよ! 戦士たちよ! Marciamo, struggiamo,進軍しよう、苦しめよう、 Il nostro oppressor!私たちの抑圧者を! ALBINA, ELENA E CORO DI DONNEアルビーナ、エレナと女性たちの合唱 Su i nostri guerrieriさあ 私たちの戦士たち Compagne! imploriamo仲間たちよ! 懇願しよう Del Cielo il favor.天の恩寵を。 (Le donzelle con Albina si ritirano seguendo Elena, mentre Rodrigo marciando alla testa di poderosa schiera, Malcom guidando i suoi seguaci, ed altri duci facendo lo stesso pel piano, e per le colline, sgombrano interamente la scena, e si cala il sipario)(アルビーナと娘たちはエレナについて行きながら退場する、一方ロドリーゴは力強い隊列の先頭で進軍しながら【退場する】、マルコムは彼の従者たちを率いながら【退場する】、そして他の隊長たちは同じことをする 平地を抜けて、そして丘を抜けて、彼らは舞台をすっかり明け渡す【=舞台はすっかり空になる】、そして幕がゆっくり下りる) |
最後のト書きは後奏を想定して書かれているように思われるが、ロッシーニは最後の小節まで全員を歌わせているので、このト書きは上演ではまず実現不可能である | |
ATTO SECONDO | |||
N. 8 Cavatina Uberto Uberto |
Andantino 6/8 E Major |
Scena prima第1場 (Folta boscaglia: grotta da un lato. Uberto da pastore, indi Elena, e Serano dalla grotta)(密生した藪: 片側に洞穴 ほらあな。羊飼いのような【=羊飼い姿の】ウベルト、それからエレナ、そして洞穴からセラーノ) UBERTOウベルト Oh fiamma soave,ああ 快い炎よ、 Che il seno m'accendi!それは 私の胸を 燃やしている! Pietosa ti rendi哀れみ深くなりなさい A un fido amator.信頼できる 愛する者には【≒ 誠実に 愛する者には】。 Per te forsennato君がために 正気を失って Affronto il periglio:私は危険に直面している: Non curo il mio stato,私は 私の地位を 重んじていない【≒ 気にしていない】 Non ho più consiglio:私は もはや慎重さを【≒ 冷静な判断力】を持っていない: Vederti un momento,【ほんの】一瞬 君を見ることは、 Bearmi in quel ciglioあの眼 まなこ の中で【≒ 君の視線を 浴びて ≒ 君に 見つめられて】 喜びに浸ることは È il dolce contento甘美な満足【=うっとりとする喜び】だ Che anela il mio cor.それを 私の心は 熱望している。 |
Oh fiamma soave, ウベルトが 甘い炎 と呼びかけているものは、歌詞の内容から明らかにエレナである。オペラ御殿での歌詞訳では、非生物に対しての呼びかけで2人称を用いる場合は原則として お前(たち) にしているが、ここではそういう理由で 君 を用いている Che il seno m'accendi! 関係代名詞 Che の先行詞 fiamma を次行以下で tu として呼びかけていることから、動詞 accendere が直説法2人称単数形を採っている |
[Recitativo] Dopo la Cavatina Uberto | [ ] - [Presto] - [Andante con moto] 4/4 C Major |
UBERTOウベルト Sì, per te, mio tesoro, in rozze spoglie,そうだ、君へと、私の宝の人よ、粗野な【=質素な】服で【=羊飼いの服を身に纏って】、 Che al guardo altrui celar mi sanno, e in questaそれは他の人の視線から私を隠すことができる、そしてこの Inospita foresta無愛想な【=人を寄せ付けない】森の 【↑】中で Mi guida un cieco amor. Da che ti vidi盲目の愛が私を【君へと】案内している。 Perdei la pace, e porti in salvo io bramo私は平安を失った、そして私は君を安全な場所に据えたい【=救出したい】 Dagli eventi di guerra, or che di sangue...戦争の出来事から、血で… Di patrio sangue... ahi lasso!祖国の血で… ああ 不幸な! Rosseggerà la Scozia. Ah! fu mendaceスコットランドは赤くなっているであろう 【↑↑】からには。ああ! 嘘吐きな【奴】だったのか Forse colui, che, da me compro, il tuoおそらく あの男は、その者は、私によって買収された、君の Solingo asilo a me svelò? qual fato人気のない非難所を私に暴露した【=私から金を貰ってエレナが隠れ住む場所を私に打ち明けたあの男は、ひょっとして嘘を言っていたのだろうか】? どのような 【↓】むごい 運命が Crudele a me t'asconde?私から君を隠しているのか? Solo a' gemiti miei l'Eco risponde.私の呻き声に こだまだけが応えている。 (inoltrandosi nel folto della selva)(森の深いところの中に進みながら) ELENAエレナ (a Serano)(セラーノに) Va.., non temer... è meco Albina... Ah vola行きなさい… 心配するでない… アルビーナが私と共にいる… ああ 飛んで行きなさい Del padre in traccia. Egli tornar promise父の足跡をたどって。彼は戻ることを約束した Pria della pugna, e il termine già trascorre戦闘の前に、そして既に期限が過ぎている Che al ritorno prefisse. Oh quanti in senoそれは【彼の =父の =ドゥグラスの】帰還を前もって決めた。ああ 何と 胸の中に Nuovi palpiti desta新たな【心臓の】動悸を引き起こしていることか Tanta tardanza, al mio timor funesta!ずいぶんな遅滞が、私の不吉な恐れによって! SERANOセラーノ Calma l'affanno: ad appagarti or vado.不安を静めなさい: 君の要望を叶えに 今 私は行く。 Abbi cura di te.自分の面倒をみなさい。 (parte)(退場する) ELENAエレナ Da quanti affanni何という苦悩によって È trafitto il mio cor!私の心は刺し貫かれていることか! UBERTOウベルト (ravvisandole)(彼女を認めながら) Nume possente!強力な神よ! Tu arridi a' voti miei!君は私の願いに微笑んでいる! ELENAエレナ Un uom! si fugga...男だ! 【人は】逃げるように【=逃げよう】… UBERTOウベルト Ah ferma!ああ 止まりなさい! ELENAエレナ E chi tu sei?それで 君は誰なのか? UBERTOウベルト Non mi ravvisi?君は私を見分けていないのか? ELENAエレナ E chi?それで誰なのか? UBERTOウベルト Cure ospitaliもてなしの良い世話を Mi prodigò la tua bell'alma...君の美しい魂は私に惜しみなく与えた… ELENAエレナ Ah! è vero!ああ! それは本当だ! Or ti conosco. Ebben? da me che chiedi?今私は君を見分けた。それで? 君は私から何を求めているのか? Chi spinge i passi tuoi? qual nudri ardire?誰が君の歩みを押し動かしているのか? どのような大胆を 君は胸に育んでいるのか? UBERTOウベルト Dirti, ch'iol t'amo, e di tua man morire.君に言うことを、私が君を愛していることを、そして君の手で死ぬことを。 |
Rosseggerà la Scozia. この部分は初演時には省かれているが、後の上演で追加されている。物語上あるべきものなので、クリティカルエディションでは採用されている che, da me compro, この compro は動詞ではなく、形容詞 なお元々この場面はさらに二十数行続いており、それは初演時の印刷台本には掲載されているものの、楽譜には採用されなかった。そこではエレナが、彼女の愛する人はマルコムであると明かしている。ウベルトはマルコムに会っていないので、第2幕終盤の展開を考えると物語的には必要な箇所だが、レチタティーヴォが長くなり過ぎることを避けてカットされたのだろう 補遺に対訳を載せる(予定) |
N.9 Terzetto Elena Uberto Rodrigo Coro |
Allegro giusto 4/4 C Major |
ELENAエレナ Alla ragion deh rieda理性に ああ 戻るように L'alma agitata, oppressa,取り乱した、苦しめられた魂が、 Ed all'amor succedaそして愛に取って代わるように La tenera amistà.優しい友愛が。 UBERTOウベルト Arcani sì funestiそれほどに不幸をもたらす秘密を Perché tacermi, ingrata!なぜ私に黙っていたのか、恩知らずの女【=非情な女】よ! Allor che mi rendesti君が私を Preda di tua beltà?君の美しさの餌食 えじき に 【↑】した途端に? ELENAエレナ Te amante io non sapea...私は 君について【私を】愛する者だとは分からなかった… UBERTOウベルト Non tel diss'io?私は君にそれを言わなかったか? ELENAエレナ Credea,私は判断した、 Che gentilezza...親切な言葉【=社交辞令】だと… UBERTOウベルト Amore,愛の神が、 Sì... in me possente Amoreそうだ… 私の中に 強力な愛の神が Fiamma destò vorace...食い尽くすような【=激しい】炎を引き起こした… E la sua cruda faceそしてその残酷な松明 たいまつ 【=火】は Struggermi appien saprà!徹底的に私を溶かす【=焼き尽くす】ことができるだろう! |
Struggermi appien saprà! struggere は単純に 苦しめる,苛む と訳すことも可能だが、本来の意味である 溶かす から考えると、愛の神が点した炎によって自分の身は焼き尽くされて無くなってしまうだろう という理解の方が妥当に思われる、 |
Andantino 3/4 A-flat Major |
ELENAエレナ (Nume! se a' miei sospiri(神よ! もし私の溜め息に Pace donar non sai,君が平安を与えることができないのであれば、 Almen de' suoi martiri,せめて 彼の苦悩の Deh! calma la crudeltà!)ああ! 惨たらしさを静めなさい!) UBERTOウベルト (Io del suo cor tiranno?(私は彼女の心の圧制者なのか【=私は彼女の心を苦しめているのか】? Farla infelice io stesso?私自身が彼女を不幸にしているのか? Ah no... di amore a dannoああ いけない… 損害を与える愛【=彼女の心を傷つける愛】に Virtù trionferà.)徳が勝利を収めるだろう。) |
di amore a danno / Virtù trionferà. trionfare は自動詞で、trionfare di... ―に勝利を収める の意。したがって di amore a danno は、意味としても、愛の損害に ではなく 損害を与える愛に と採るのが妥当。つまり a danno = dannoso |
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Allegro 4/4 C Major |
Vincesti... addio!.. rispetto君は勝った… さようなら!… 私は尊重する Gli affetti tuoi...君の情愛を! ELENAエレナ Ten vai?君は行ってしまうのか? UBERTOウベルト E a che mirar quei raiそれでは 何のために その眼差しは【私に】狙いを合わせている【=向けている】のか Severi ognor per me?常に私に対して厳しい【眼差しは】? ELENAエレナ Se de' tuoi giusti laiもし 【↓】私が 君のもっともな哀歌【=嘆き】の La rea cagion son'io,有罪の【≒非難されるべき】原因であるならば、 Squarciami un cor, che mai私の心臓を引き裂きなさい、というのは決して Darti saprà mercé!それは 君に哀れみを与えることはできないだろうから! UBERTOウベルト No, cara: anzi desioいや、いとしい人よ、むしろ私は熱望している Pegno di mia costanza私の意志の強固【=変わらぬ思い】の証を Lasciarti in rimembranza,思い出に君に置いておくことを、 Che sacro io sono a te.私は君に捧げられているのだから。 ELENAエレナ E qual?それで どのような? UBERTOウベルト Da rio periglio悪質な危険から Salvai di Scozia il Re.私はスコットランドの王を救った【ことがある】。 Il suo gemmato anello彼の宝石を散りばめた指輪を Egli mi diè: tel dono.彼は私に与えた: それを私は君に与える。 (le mette al dito il suo anello)(彼は 彼女の指に彼の指輪を取り付ける) Se mai destin rubelloもし万が一 反逆する運命が Te, il genitor, l'amante君を、【君の】父を、【君の】恋人を Sa minacciar, dinante脅かすことができる時には、 Ti rendi al Re: la gemma王の 【↑】前に 赴きなさい: 宝石が Appena mostrerai,君が見せるであろうとすぐに Grazia per tutti avrai;君は すべてについて恩赦を受けるだろう; E ad appagarti intentoそして君を要望を叶えるために 専念する Sempre il suo cor sarà.だろう 彼の心は いつでも ELENAエレナ E il mio rigor contentoそれでは 私の厳格さが 満足【=喜び】を Renderti... oh Dio! non sa?君に与えることは… ああ 神よ! できないのか? UBERTOウベルト Ah! basta al mio tormentoああ! 私の苦悩に対して Destar la tua pietà.君の哀れみを呼び覚ます 【↑】だけでよい。 sorte Rodrigoロドリーゴが外に出る【=登場する】 Scena Ⅱ第2場 (Rodrigo in osservazione, e detti)(【彼らを】注視しているロドリーゴ,そして前の場の人たち) ELENA E UBERTOエレナとウベルト (Qual pena in me, già desta)(何という苦悩を私の中に、既に引き起こしていることか (la mia fatalità!)私の運命は!) RODRIGOロドリーゴ (Misere mie pupille!(惨めな私の両目よ! Che più a mirar vi resta?お前たち【=両目】に これよりもさらに見るべきものが残っているのだろうか? Oh gelosia funesta!ああ 不幸をもたらす嫉妬! Oh ria fatalità!)ああ 邪悪な宿命!) UBERTOウベルト Ah! basta al mio tormentoああ! 私の苦悩に対して Destar la tua pietà.君の哀れみを呼び覚ます 【↑】だけでよい。 (Qual pena in me, già desta)(何という苦悩を私の中に、既に引き起こしていることか (la mia fatalità!)私の運命は!) ELENAエレナ E il mio rigor contentoそれでは 私の厳格さが 満足【=喜び】を Renderti... oh Dio! non sa?君に与えることは… ああ 神よ! できないのか? (Qual pena in me, già desta)(何という苦悩を私の中に、既に引き起こしていることか (la mia fatalità!)私の運命は!) |
E a che mirar quei rai / Severi ognor per me? この mirare は自動詞 狙いを定める の意 エレナの 君は行ってしまうのか? という問いに対して、ウベルトは、なぜなら君が常に私に厳しい目で見ているからだ、と答えている dinante = dinazi |
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Maestoso 4/4 E Major |
RODRIGOロドリーゴ (scovrendosi, e dirigendosi ad Uberto)(自分の正体を明かしながら、そしてウベルトの方に行きながら) Parla... chi sei?話せ… 君は誰なのか? ELENAエレナ (Rodrigo!)(ロドリーゴだ!)) UBERTOウベルト (Egli! o furor!)(彼だ! ああ 激情が!) ELENAエレナ (Destino crudel!)(残酷な運命だ!) RODRIGOロドリーゴ Non sembri Alpin!君は 高地の人間【=ハイランダー】ではないように思われる! Sei tu del Clan?君はクラン【=氏族】の出身なのか? UBERTOウベルト Ne aborroそれについて 私は憎悪している L'infausto nome.不吉な名前を。 RODRIGOロドリーゴ Amico forse del Re?..おそらく 王の友だな?… UBERTOウベルト Lo sono...私はそれだ… RODRIGOロドリーゴ Che ascolto?私は何を聞いているのか? ELENAエレナ Ah incauto!ああ 無分別な! UBERTOウベルト E tale,そして そのような者だ、 Che te non teme, e quantiその者は君を恐れず、そして Perversi ha il Re nemici.王が持っているだけの邪悪な敵たちを【=その王の友である私は、君を恐れていないし、王の邪悪な敵たちすべてを恐れていない】。 RODRIGOロドリーゴ Perversi?邪悪な? ELENAエレナ Oh Ciel! che dici!ああ天よ! 君は何を言うのか! Deh! Frenati!.. ah qual martir!ああ! 自制しなさい!… ああ 何という苦しみ! RODRIGOロドリーゴ (Qual temerario ardire!(何という向こう見ずな大胆だ!) UBERTOウベルト Pria mi vedrai morir...先に 君は 私が死ぬのを見るだろう… ELENAエレナ (Mi sento... oh Dio! morir!(私は 気分である …ああ 神よ! 死んでいる!) RODRIGOロドリーゴ Frenarsi e chi potrà?)そして 誰が彼【の感情】を抑えることができるだろうか?) UBERTOウベルト Non so che sia viltà.私は 臆病であろうことを知らない【=臆病と呼ばれるようなことは私には無縁だ】。 ELENAエレナ Mancando il cor mi va!)私の心は弱って行く!) RODRIGOロドリーゴ Né ancor ti arrendi, audace?まだ屈しないのか、不敵な者よ! UBERTOウベルト Ov'è il tuo stuol seguace,君の従者の軍勢はどこにいる、 Che i suoi doveri obblia?それ【=その軍勢】はその【=彼らの】義務を忘れている? Alla presenza mia私の居ることに Impallidir saprà.それは青ざめることができるだろう。 |
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Allegro vivace 4/4 c minor |
RODRIGOロドリーゴ Da' vostri aguati uscite,君たちの待ち伏せ場所から出て来い、 Figli di guerra!戦いの息子たちよ! (al suo grido vedesi tutta la scena ingombra in un istante di guerrieri del Clan, che erano nascosti ne' folti cespugli del bosco)(彼【=ロドリーゴ】の叫び声【=呼び声】に 一瞬で氏族の戦士たちで溢れた舞台が見える、彼らは森の密生した茂みの中に隠れていた) CORO合唱 A' cenni tuoi siam pronti.君の指示に私たちは準備ができている。 RODRIGOロドリーゴ Ostentaひけらかしなさい Coraggio, or più, se il puoi...勇気を、今こそ より一層、もし君がそれをできるなら… ELENAエレナ Che miro! oh Dio!私は何を眺めているというのだ! ああ 神よ! RODRIGOロドリーゴ Paventa怖がれ【=慄け】 Di quegli acciari al lampo...あの剣々のきらめきに。 Per te non v'è più scampo...君にはもはや逃げ道はない… Punite un traditor.裏切り者を罰しろ! (a' guerrieri, che nello slanciarsi si fermano alle grida di Elena)(戦士たちに、その者たちは【ウベルトに】飛び掛ろうとしてやめる エレナの叫び声に) ELENAエレナ Fermate!止まりなさい! UBERTOウベルト E tu guerriero?それで 君が戦士だと? ELENAエレナ Deh! cedete a' pianti miei...ああ! 私の涙に譲歩しなさい… UBERTOウベルト No... di vil gregge seiいや… 君【=ロドリーゴ】は 卑怯な愚衆の Malvagio conduttor!悪辣な指導者だ! RODRIGOロドリーゴ Cessate! io basto solo...止めろ! 私は一人で十分だ… Domar vo' tant'orgoglio...私は【彼の】 あれほどたくさんの高慢さを屈服させたい… UBERTOウベルト Un ferro... un'arme io voglio...剣を… 私は武器が欲しい… (Rodrigo gli dà la spada di un guerriero)(ロドリーゴは彼に ある戦士の刀を与える) ELENAエレナ Pace in voi descenda...君たちに平和が降りるように… UBERTO E RODRIGOウベルトとロドリーゴ All'armi!武器を持て! No... più non so frenarmi!だめだ… 私はもはや自制することができない! Mi guida il mio furor!私の激情が私を率いている! ELENAエレナ Io son la misera,私は哀れな女だ、 Che morte attendo!..その者は死を待っている!… Su me scagliatevi...私に飛び掛りなさい… Non mi difendo...私は身を守らない… Se i giorni mieiもし私の日々を Troncar vi piace,打ち切ることが君たちに好まれるなら【=もし君たちが私の命を断ちたいならば】 Di orror la face恐怖の松明 たいまつ は Si spegnerà.消えるだろう。 UBERTO E RODRIGOウベルトとロドリーゴ Vendetta! accendimi復讐だ! 火を点けろ 私の Di rabbia il seno!胸に 怒りで Nel petto ah versami私の胸の中に ああ 注げ Il tuo veleno!君の毒を! Vieni al cimento...試練へと来い… Io non ti temo...私は君を恐れていない… L'istante estremo最後の瞬間が Ti giungerà.君に達するだろう。 |
Da' vostri aguati uscite, aguati < aguato = agguato 待ち伏せして襲い掛かること,待ち伏せの場所 tutta la scena ingombra in un istante di guerrieri del Clan, ここでの ingombra は動詞ではなく形容詞 Ostenta / Coraggio, or più, se il puoi... 動詞が命令法2人称単数形なので、これはウベルトに対して言っている |
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(Allegro vivace) 4/4 C Major |
ELENA, UBERTO E RODRIGOエレナ、ウベルトとロドリーゴ Come resistere a tanti affetti!これほどたくさんの感情に どうやって持ちこたえるというのか! Sento che l'anima vacilla già.私は 魂が既によろめいているのを感じている。 CORO合唱 A tanto ardireこれほどたくさんの向こう見ずに Ne' nostri petti私たちの胸の中に Lo sdegno e l'ire憤慨と怒りが Destando va!目覚めて行く! Come resistere a tanti affetti!これほどたくさんの感情に どうやって持ちこたえるというのか! Sento che l'anima vacilla già.私は 魂が既によろめいているのを感じている。 (Rodrigo ed Uberto partono per un lato. Elena li segue co' Guerrieri)(ロドリーゴとウベルトは一方の側に退場する。エレナは戦士たちと共に彼らを追いかける) |
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[Recitativo] Dopo il Terzetto | Allegro - [Recitativo] - Allegro - Andante - [Allegro] - Lento - Allegro 4/4 (C Major) |
Scena Ⅲ第3場 (Grotta. Albina, indi Malcom, poi Serano, infine coro di Alpini(洞穴。アルビーナ、その後マルコム、それからセラーノ、最後に高地人たちの合唱) ALBINAアルビーナ Quante sciagure in un sol giorno aduna何と多くの災難を たった一日の中に 集めることか L'avverso Ciel per tormentare un core!敵意ある天は 一つの心を苦しめるために! Elena sventurata!不幸なエレナよ! Per quanti cari oggetti幾人のいとしい対象のために Palpitar ti vegg'io? Né splende in Cielo君の心臓が激しく拍動するのを私は見るのだろうか? 天には輝いていない Raggio di luce a dissipar quel velo,光の光線が あのヴェールを消散させるために、 Che covre il tuo destin...それは君の運命を覆っている… MALCOLMマルコム frettoloso大急ぎで Elena... ah dimmi...エレナは… ああ 私に言いなさい… Dov'è?どこにいるのか? ALBINAアルビーナ Di questo specoこの洞穴の All'ingresso non era?入り口に 彼女はいなかったのか? MALCOLMマルコム Ah! no...ああ! いや… ALBINAアルビーナ Del padre父親の Serve al cenno così? Qui preservarla指示に 彼女は それほどに従っているのか? ここで彼女を守ることを Credea dall'ira ostil.彼は信じていた 敵の怒りから。 MALCOLMマルコム Ah! ferve intantoああ! そうしている間に 燃え上がっている Terribil pugna... han le Reali Schiere恐ろしい戦いが… 王の隊列【=軍勢】が Penetrato nel Clan...: Rodrigo istesso氏族【の支配地】に押し入った…: ロドリーゴは Con ignoto campione未知の決闘者と È a singolar certame... Un cor pietoso単一の戦い【=決闘】にある… 【私の】哀れみ深い心が Mi fé sperar, che qui trovata avrei私に期待させた、ここで 見つけるかもしれないことを Elena mia... Salvarla... o in sua difesa私のエレナを… 彼女を救うことを【欲していた】… さもなければ 彼女の守護で【彼女を守って】 Perir volea...死ぬことを 私は欲していた… ALBINAアルビーナ Mosse le piante al fianco彼女は 足の裏を移動させた【=歩いた】 Del fedele Serano... e poi...忠実なセラーノの 【↑】横で【=彼女は忠実なセラーノと行動を共にしていた】… そして その後は… Ma!やれやれ! (a Serano che giunge)(【ちょうど】やって来たセラーノに) vieni!来なさい! Dimmi... e teco non riede私に言いなさい… それで君と一緒に戻らないのか La figlia di Duglas?ドゥグラスの娘は? SERANOセラーノ Del padre in traccia父親の足跡をたどるように Un suo cenno mi trasse... il vidi... oh Dio!彼女の指示が 私を引っ張った【=彼女は私に父親の足跡をたどらせた】… 私は彼を見た… ああ 神よ! Smarrito in volto... «Ah vanne...顔の中で途方に暮れて【=私はうろたえた顔をした彼を見つけた】… 「ああ ここから行きなさい… Vanne», disse «alla figlia, e la difendi...ここから行きなさい」、彼は言った、「そして彼女を守りなさい… Dille, che al Re m'invio... se la mia morte彼女に言いなさい、私が王に身を送ることを【=私がスコットランド王の元に赴くことを】… もし私の死が Può placar l'ira sua, se in questa guisa彼の怒りを静めることができるのならば、もしこの仕方で Pace alla patria mia donar mi è dato,私の祖国に平和を贈ることが 私に与えられるのであれば、 Dille, che il mio morir troppo mi è grato!»彼女に言いなさい、私の死はとても私にはありがたい!」と MALCOLMマルコム Come!何という! ALBINAアルビーナ E ad Elena tu?それで君はエレナに? SERANOセラーノ Tutto narrai...すべてを話した… E già fuor di se stessaすると 既に彼女自身から外れて【=我を忘れて】 Corre alla reggia.彼女は王宮へ急いで向かっている。と ALBINAアルビーナ Oh sciagurata! oh pena!ああ 不運に見舞われた女だ! ああ 苦悩だ! MALCOLMマルコム Ah tu il sentier mi addita,ああ 君は私に道を指し示しなさい、 Che segnò l'infelice...それに不幸な女は痕跡を残した【=不幸な女が足跡を残して行った道を私に教えなさい】 SERANOセラーノ Al par del lampo電光石火のごとく Dal guardo mio sparì.彼女は 私の視線から消えた。 MALCOLMマルコム Stelle spietate!無情な星々【≒運命】よ! E a tante pene i giorni miei serbate?それでお前たちは これほど多くの苦悩に 私の日々【≒命】を残すのか? |
Serve al cenno così? 本来であれば serve は servire の直説法3人称単数形で、またこの場合の servire は自動詞なので、servire a ... ―の役に立つ の意で採ることになる。しかしこの場合は serve が serva < servare と同じ意味で用られているようで、しかも他動詞の servare を自動詞として用いているようである。 |
N.10 Aria Malcom Malcom Albina Serano Coro |
Maestoso 2/4 F Major |
MALCOLMマルコム Ah si pera: ormai la morteああ 【人は】死ぬように【≒私は死ぬだろう】: 今や 死は Fia sollievo a' mali miei,私の不幸にとって慰めだろう、 Se s'invola a me coleiもしあの女【=エレナ】が私から姿を消すのなら Che mi rese in vita ognor.その者は 【私の】人生において常に私を支えた【=もし 私の人生をいつも支えてくれたエレナが私の前からいなくなるのなら】。 Ah! mio tesoro! io ti perdei!ああ! 私の宝の人よ! 私は君を失った! Dolce speme del mio cor!私の心の甘い希望の人よ! |
緩(カンタービレ cantabile)―急(カバレッタ cabaletta)の二部形式のアリア 緩 カンタービレ Ah si pera pera = perisca < perir 死ぬ。オペラの台本では、非人称の si を用いた文で動詞が接続法現在の場合、勧誘の命令 ―しよう や未来 ―するだろう の意になることがある なお、あまり使われない perirsi 死ぬ という再帰動詞もあるが、この場合主語は3人称単数形なのでエレナになってしまう |
Allegro 4/4 F Major |
CORO合唱 di dentro内側から Duglas! Duglas! ti salva!ドゥグラスよ! ドゥグラスよ! 身を守りなさい! ALBINA E SERANOアルビーナとセラーノ Quai voci!何という声! MALCOLMマルコム E chi si avanza?それで 誰が近づいてくるのだろうか? CORO合唱 (fuora)(外で) Duglas dov'è?ドゥグラスはどこにいるのか? MALCOLMマルコム Che avvenne?何が起こったのか? CORO合唱 Ah! più non v'è speranza...ああ! もはや希望は無い… Cadde Rodrigo estinto...ロドリーゴが死に倒れた… ALBINA E SERANOアルビーナとセラーノ Avverso Ciel!敵意のある天よ! CORO合唱 Ha vinto di Scozia il Re...スコットランドの王が勝った… MALCOLMマルコム Che sento!私は何を聞いているのだ! CORO合唱 Ne insegue, e dà spavento私たちを追跡している、そして恐怖を与えている Già l'oste vincitrice...既に 勝利を収めた軍勢は… |
中間部 Tempo di mezzo | |
(Allegro) 4/4 F Major |
MALCOLMマルコム Che tento! oh me infelice!私は何を試みているのだ【=私は何をするというのだ】! ああ 不幸な私! Elena! amici! oh Dio!エレナよ! 友たちよ! ああ 神よ! |
経過区 カバレッタへの導入 |
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(Allegro) 4/4 F Major |
Fato crudele, e rio!残酷な運命よ、そして邪悪な! Fia pago il tuo furor!お前の激情は【これで】満足するのだろう! Ah! chi provò del mioああ! 誰が感じたというのか 私よりも Più barbaro dolor?さらに残酷な苦悩を? ALBINA, SERANO E COROアルビーナ、セラーノと合唱 Fato crudele, e rio!残酷な運命よ、そして邪悪な! Fia pago il tuo furor.お前の激情は【これで】満足するのだろう! Fia pago il tuo rigor.お前の手厳しさは 満足するのだろう! (Malcom parte co' guerrieri.)(マルコムは戦士たちと共に退場する) |
急 カバレッタ Fia pago il tuo rigor. アルビーナ、セラーノと合唱は、この部分の後半では furor ではなく rigor で歌っている |
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[Recitativo] Dopo l'Aria Malcom | Andantino sostenuto 6/8 (C Major) |
Scena Ⅳ第4場 (Stanza nella reggia di Stirling. Giacomo, Duglas da guerriero, ma senza elmo e spada, Guardie, infine Bertram)(スターリングの王宮の中の部屋。ジャコモ、戦士姿のドゥグラス、しかし【彼には】兜と剣がない、衛兵たち、最後にベルトラム) |
前奏 4小節 初演時の印刷台本では、このレチタティーヴォの前に、マルコムのアリアから繋がるアルビーナとセラーノの短い対話があったが、レチタティーヴォには採用されなかった 補遺で訳す(予定) |
[ ] - Lento - Allegro 4/4 (C Major) |
GIACOMOジャコモ E tanto osasti?そして君は ずいぶんなことを あえてしたのか【=ずいぶん思い切ったことをしたのか】? DOUGLASドゥグラス Io mi presento, o Sire,私は身を差し出している、ああ 陛下よ、 Volontario al tuo piè. Grazia non chieggo自発的に 君の足元に。私は恩赦を求めてはいない Pe' giorni miei. Di sanguinosa guerra私の日々【=命】のためには。血塗れの戦いの Arde la face, e la mia morte松明 たいまつ 【=火】 が燃えており、そして私の死は Basta a spegnerla appieno. Ah! sulla figlia,それ【=松明】を完全に消すためには十分だ。 ああ! 娘の上に、 E su quanti, pietosi al mio destino,そして、私の運命に哀れみを催して【くれて】、 Mi difesero in campo,戦場で私を守った 【↑】者たちすべての上に、 Scenda la tua clemenza!君の慈悲が下りるように! GIACOMOジャコモ E quale oggettoそれで どのような目的が Sotto ignote divise知られていない服の下で【=見知らぬ服を身に着けて】 Te condusse al torneo, che celebrava君を馬上試合に導いたのか、それは祝った La mia vittoria? Audace! a che ostentarmi私の勝利を【=何の目的で 変装して 私の勝利を祝う馬上試合にやってきたのか】? 大胆な男め! 何のために 私に見せびらかすのか Tanto valor, tutti atterrando i prodi,それだけたくさんの勇敢さを、すべての勇者たちを打ち倒すことで、 Che venner teco al paragon dell'armi,その者たちは 君と武器を比較しに来た【=君と一戦交えに来た】、 E in aperta tenzon?そして公開の戦いにおいて【=それほどの見事な勇敢さを、公開試合で君に勝負を挑んだすべての勇者たちを打ち倒すことで、どうして私に見せ付けたのか】? DOUGLASドゥグラス Sperai destarti私は期待した 君に呼び覚ますことを Delle antiche mie gesta私の以前の武勲の Rimembranza così: Giacomo solo,回顧を このように【=私は、こうすることによって、私のかつての武勲を君に思い出させることを期待した】: ジャコモだけが、 Del precettor, che l'educò alla gloria,個人教師の、その者が彼に武功を教育した、 Riconoscer potea gli usati modi認識することができた 通例のやり方を Nel battagliar.戦う時における【=ジャコモだけが、彼に(一騎打ちの)戦い方を教えた教師の定番の戦術を認識することができた】。 GIACOMOジャコモ Ma a cancellar non bastaだが 取り消すことには十分でない I tuo fallo un tal passo.君の過ちを このような足の運びは【=このように来訪しても、君の罪を赦免するわけにはいかない】。 (alle Guardie, che circondano Duglas)(衛兵たちに、その者たちはドゥグラスを取り囲んでいる) Olà! serbateおい! 取っておけ Al mio sdegno costui.この男を 私の怒りのために【=私が怒りの判決を下すまで この男を捕らえておけ】。 DOUGLASドゥグラス Lo merto: attendo私はそれ【=怒り】に値する: 私は待つ Tranquillo i cenni tuoi. Figlia infelice!心穏やかに 君の指示を。不幸な娘よ! Sol mi è grave il morir, perché lasciartiただし 死は私に重苦しい、なぜならば君を Deggio misera, e sola!哀れに、私は【↑】残さなくては ならないからだ、そして一人孤独に! GIACOMOジャコモ E ancor non parti?それで まだ君は去らないのか? (Duglas è condotto via)(ドゥグラスは連れ去られる) Quanto all'alma tu costi【私の】 魂に お前【=次文の Simulato rigor 見せかけの厳しさ】は 何と多く【苦労を】 要するのか Simulato rigor! Son ne' miei lacci見せかけの厳しさよ【=厳しいふりをすると、何と心に堪えることか】! 私の策略の中にいる I più forti nemici... Ah! se Malcom...最も強い敵たちが… ああ! もしマルコムが… Se quel rival...もし あの恋敵が… BERTRAMベルトラム Signor, parlarti brama陛下、君に話すことを切望している Donna, molle di pianto, e quella gemma,女が、涙に濡れて、そしてあの宝石を、 Che ornò tua destra, a me mostrando...それは【かつて】君の右手を飾った、【彼女はその宝石を】私に見せながら… GIACOMOジャコモ (È dessa!)(彼女は彼女自身だ!) Venga, ed a lei si taccia,彼女が来るように、そして彼女に【人は】黙っているように、 Ch'io sono il Re. Ti attendo alle mie stanze:私が王であることを。私は私の部屋で君を待つ: Quanto voglio saprai.君は 私が望むことを知るだろう。 BERTRAMベルトラム Vado...私は行く… parte退場する GIACOMOジャコモ Quale distanzaどのような隔たりが V'ha dal mio core al tuo, donna! vedrai.私の心から君のまであるのか【=私の心と君の心の間の距離を】、女よ! 君は見るだろう。 (entra)(入る) Scena Ⅴ第6場 (Bertram introduce Elena)(ベルトラムがエレナを引き入れる) BERTRAMベルトラム Attendi: il Re fra poco待ちなさい: 王は間も無く Ti ascolterà.君【の話】を聞くだろう。 (entra nelle regie stanze)(王の部屋の中に入る) ELENAエレナ Reggia, ove nacqui, oh quanto王宮よ、そこで私は生まれた、ああ 何と Fremo in vederti! alle sventure mieお前を見て 私は身震いすることか! 私の【数々の】不幸にとっての Tu fosti culla! assai di te più gratoお前は揺り籠【=揺籃の地】だった【=私の幾多の不幸は王宮から生まれ出た 】! お前よりも ずっと Mi era l'albergo umil, dove or nel padre,私には慎ましい家が居心地がよい、そこでは 時には 父において、 Or nell'oggetto amato時には 愛する対象【=マルコム】において Pascea lo sguardo, e lor posava allato!私は【私の】視線に糧を与えたを【=私は、時に父を見て、時にマルコムを見て、私の目を楽しませた】、そして彼らの側で私は休んだ【=寛いだ】。 Ma qui sola! ov'è il Re? chi al regio aspettoしかし ここには私一人だ! 王はどこにいるのか? 誰が 王の顔つきへと【=王の面前に】 Mi guiderà? Se il generoso amico私を案内するのだろうか? もし高潔な友が Non m'ingannò, del genitor la vita,私を欺いていなかったなら、父の命、 Di Malcom, di Rodrigoマルコムの【=命】、ロドリーゴの【=命】を Spero salvar.救うことを私は期待している。 |
dove or nel padre, / Or nell'oggetto amato / Pascea lo sguardo, pasea は pascere の直説法3人称単数形 = pasceva の古い形で、そしてこの3人称の活用形のまま1人称で用いられることもある(オペラの台本では credea が credevo と同じ意味で用いられている例が多い)。この場合の pascere は、(家畜に)餌を与える が転じて ―を糧として与える さらに転じて 楽しませる の意 e lor posava allato! この posava も 一人称単数形の posavo と同じ |
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N.11 [Canzoncina] sul Palco Elena Giacomo |
6/8 B-flat Major |
ELENAエレナ Che sento?私は何を聞いているのか? Qual soave armonia! Che bel concento!何という快い調和【=素敵な調べ】なことか! 何という美しい演奏なことか! GIACOMOジャコモ (Giacomo canta dalle sue stanze)(ジャコモは彼の部屋から歌う) Aurora! ah sorgerai夜明けの光よ! ああ お前は昇るのであろうか Avversa ognor per me?いつでも私に対して敵対して? D'Elena i vaghi raiエレナの美しい眼差しを Mostrarmi... oh Dio! perché?なぜ 私に見せるのか?… ああ 神よ! E poi rapirmi, o barbara!そしてそれから 私から奪うのか、ああ 残酷な者よ【残酷な夜明けの光よ】! Quel don, ch'ebb'io da te?その贈り物を、それを私はお前から受けた?【=お前が私に与えてくれた贈り物を、その後 私から奪うというのか? ああ、残酷な夜明けの光よ!】 |
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[Recitativo Dopo la Canzoncina] | [ ] - Allegro - Andante - Allegro 4/4 (C Major) |
ELENAエレナ Stelle! sembra egli stesso! Ah! qual sorpresa!星々よ! 彼は 彼自身のように見える! ああ! 何という驚き! Né mi pose in obblio?彼は私を忘却の中に置かなかったのか【=彼は私を忘れていなかったのか】? Di me si duole! e che sperar poss'io?彼は私のことを悔やんでいる! それで私は何を望むことができるのだろうか? Scena Ⅵ第6場 (Comparisce Giacomo: Elena va frettolosa ad incontrarlo)(ジャコモが現れる: エレナは素早く彼に会見しに【謁見しに】行く) ELENAエレナ Eccolo! amica sorteあそこに彼が! 好意的な運命が Ti presenta a' miei voti,私の願いで【=私の望みを叶えて】 君を引き合わせている、 O generoso cor!ああ 高潔な心【の人】よ! GIACOMOジャコモ Da me che chiedi?君は私から何を求めているのか? ELENAエレナ Il tuo don non rammenti? ah sì, tu stesso君は 君の贈り物を覚えていないのか? ああ そうだ、君自身が Mi guida al Re.私を王に案内するのだ。 GIACOMOジャコモ Tu lo vedrai.君は彼を見るだろう。 ELENAエレナ Perdona許しなさい All'impazienza mia... di un breve istante私の焦燥を… 短い一瞬に Non indugiar... sacro dover di figliaぐずぐずするでない【=僅かな時間でも遅れないでほしい】… 娘の神聖な義務が Al trono mi avvicina...玉座に私を近づけている… GIACOMOジャコモ Ebben tu il vuoi?それでは君は彼を求めているのか? E chi sa opporsi a' desideri tuoi?そして誰が切望に異議を唱えることができるのか? (si appressa ad una gran porta in fondo, che aprendosi lascia vedere quanto di magnificenza possa comprendere la sala del Trono)(奥にある大きな扉に近付く、それが開くことで 豪華さが玉座の広間を包み込むことができるであろう全てのことを見せている【=それが開くと、豪華な玉座の広間が見える】) |
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N.12 Coro |
6/8 B-flat Major |
Scena ultima最終場 (Bertram, Grandi, e dame, che circondano il trono. Indi gli attori, che verranno enunciati)(ベルトラム、貴人たち、貴婦人たち、その者たちは玉座を取り囲んでいる。その後に役者たち、その者たちは発表されるだろう【=その後にドゥグラスとマルコム、彼らは後で登場が告知される】 CORO合唱 Imponga il Re: siamo王は命じるように: 私たちは Servi del suo voler.彼の意志の召使いだ【=王が命じれば、私たちは彼の意思に従う】。 Il Grande in lui vantiamo,彼における偉人【=偉大な人物 ≒英雄】を称賛しよう、 Il padre, ed il guerrier.父を、そして戦士を【称賛しよう】。 |
Indi gli attori, che verranno enunciati attori < attore は 役者 だが、この場合は 主要役(の歌手)の意で、具体的には次のレチタティーヴォで登場するドゥグラスとマルコムを指している。che 節は venire +過去分詞による受動態の未来形。enunciare 発表する は、ここでは 告知する,知らせる(annunciare)に近い。つまり、後で二人の主要役、ドゥグラスとマルコムの登場が告知される、という意 |
[Recitativo] Dopo il Coro | [ ] - Moderato - Allegro - Moderato - Allegro vivo - Andante 4/4 (C Major) |
ELENAエレナ Ah! che vedo! qual fasto!ああ! 私は何を見ているのだ! 何という豪奢 ごうしゃ! Ma fra tanti ov'è il Re? Proni, e devotiだが 多くの人たちの中で 王はどこなのか? 服従した【人たち】、そして忠実な【人たち】 Miro tutti, ma invano全員を私は眺めている【=私には、(王に)従順で誠実な人たちばかりが見える】 Cerco chi sia fra questi il lor Sovrano.私は探している これらの人々の中で誰が彼らの君主であろうか。 GIACOMOジャコモ Eppure è qui.だが 彼はここにいる。 ELENAエレナ Ma qual?.. stelle! ogni sguardoしかしどの人が?… 星々よ! どの視線も È a te rivolto? il capo tuo coverto,君に向けられているのか? 君の覆われた頭は、 La piuma, che dagli altri ti distingue...羽根が、それは他の人たちから君を区別している… Saresti mai?.. Gran Dio!ひょっとして君かもしれないのか?… 偉大な神よ! Deh avvera i dubbi miei...ああ 私の疑念を現実のものにしなさい… GIACOMOジャコモ Il Re chiedesti? e al fianco suo tu sei.君は王を求めているのか? だが 君は彼の横にいる。 (indicando se stesso)(彼自身を指し示しながら) ELENAエレナ Tu stesso! ah! qual sorpresa! a' piedi tuoi...君自身が! ああ! 何という驚き! 君の足元に… GIACOMOジャコモ Sorgi... l'amico io son... di mie promesse立ち上がりなさい… 私は友だ… 【私は】私の約束の Il fido esecutor... parla... che brami?忠実な遂行者だ… 話なさい… 君は何を切望しているのか? ELENAエレナ Ah! non l'ignori... il genitor...ああ! 君は それを知らないふりをしないように… 父が… GIACOMOジャコモ Ebbene...それでは… Il padre è reo, ma alla sua figlia il dono...君の父は有罪だ、しかし彼の娘に私は彼を贈る【=引き渡す】… Vieni Duglas...来なさい ドゥグラスよ… (ad un suo cenno vien fuora Duglas)(彼の指示にドゥグラスが外に来る【=舞台に登場する】) l'abbraccia... io ti perdono.彼女を抱擁しなさい、私は君を許す。 DOUGLASドゥグラス Ah figlia!ああ 娘よ! ELENAエレナ Ah padre mio!ああ 私の父よ! ELENA E DUGLASエレナとドゥグラス Signor... deh lascia...陛下… ああ させなさい… GIACOMOジャコモ Obblio私は忘れている Tutto per te: tu, Lord Bothwel, riprendi君に関するすべてを: 君は、ボトウェル卿よ、取り戻しなさい Gli stati tuoi...君の国々を… DOUGLASドゥグラス Tutto il mio sangue in segno私の血すべてを 印【=証】として Di grato cor...恩に感じる心の… GIACOMOジャコモ Appien contenta, il veggo,私はそれを見ている、 Elena ancor non è? Favella.エレナはまだ 【↑】完全に満足しては、いないのか? ELENAエレナ Ah Sire!ああ 陛下! I giorni di Rodrigo...ロドリーゴの日々【≒命】を… GIACOMOジャコモ Egli! infelice!彼は! 不幸な者だ! Ah! non è più!ああ! もはやいない! ELENAエレナ Che ascolto! Oh sventurato!私は何を聞いているのだ! ああ 運の悪い人だ! DOUGLASドゥグラス Oh amico sciagurato!ああ 痛ましい友だ! GIACOMOジャコモ Alla clemenza慈悲に関しては Diedi abbastanza, e di giustizia or deggio私は十分に【君たちに】与えた、そして今は私は 裁きの Dar rigoroso esempio...厳格な手本を示さ 【↑】なくてはならない… Venga Malcom...マルコムが来るように… ELENAエレナ Ah Sire!ああ 陛下! GIACOMOジャコモ Alcun non osi誰も思い切ってしない Chieder grazia per lui...彼に恩赦を求めることを… ELENAエレナ (Come salvarlo?)(どのようにして彼を助けよう?) MALCOLMマルコム (viene tra le Guardie)(彼は衛兵たちの中で【=衛兵たちに囲まれながら】来る) (Elena! oh rio destin!)(エレナだ! ああ 悪意のある運命め!) GIACOMOジャコモ Giovane audace!向こう見ずな若者よ! A me ti appressa: un traditor degg'io私に近付きなさい: 裏切り者を 私は Punire in te...君において 罰し 【↑】なくてはならない【=私は君を裏切り者として罰せねばならない】… MALCOLMマルコム Ah Prence! il fallo mio...ああ 君主よ! 私の過ちは… GIACOMOジャコモ Pietà non merta, e dell'error ben degnaそれ【=君の過ち】は哀れみ【=同情】に値しない、そして過ちに相応の Avrai tu pena.処罰を君は受けるだろう。 (depone la sua ostentata fierezza, lo alza, lo abbraccia, e gli appende al collo la sua gemmata collana) (彼は 彼の装われた残忍さを捨てて【=冷酷なふりをするのを止めて】、彼を起こし【=マルコムを立ち上がらせて】、彼を抱擁し、そして彼の首に宝石を散りばめた首飾りを掛ける。) Ah sorgi, e questo siaああ 立ち上がりなさい、そしてこれが Pegno del mio favor. Porgi la destra...私の恩寵の証であるように。 右手を差し出しなさい… Siate felici, il Ciel vi arrida.君たちが幸せになるように、天が君たちに微笑むように。 (unisce le destre di Elena, e di Malcom)(エレナの右手を結びつける、そしてマルコムの【右手を】) ELENA E MALCOMエレナとマルコム Oh Cielo!ああ 天よ! BERTRAM E COROベルトラムと合唱 Oh Re clemente!ああ 寛容な王よ! GIACOMOジャコモ Altro a bramar ti resta?他に切望するものが君に残っているのか? ELENAエレナ Io... Sire... qual piacer!... qual gioia è questa!私は… 陛下… 何という喜び!… これは何という喜びなことか! |
il capo tuo coverto, coverto = coperto < coprire deh lascia... 続くジャコモの台詞に riprendi / Gli stati tuoi... とあることからすると、故郷に帰らせてくれ、という意だろう |
N. 13 Rondò Elena - Finale Elena (Malcom) (Giacomo) (Serano) (Bertram) (Duglas) Coro |
Maestoso 4/4 E-flat Major |
ELENAエレナ Tanti affetti in tal momento多くの感情が このような瞬間に Mi si fanno al core intorno,私の心の周りで動いている【=私の心の周りに渦巻いている】ので、 Che l'immenso mio contento私の計り知れない満足を Io non posso a te spiegar.私は君に説明することができない… Deh! il silenzio sia loquace...ああ! 沈黙が饒舌 じょうぜつ であるように【=言葉を失っていることが多くを語るように】… Tutto dica un tronco accento...途切れた口調【=やっと口にする一言】がすべてを言うように… Ah Signor! la bella paceああ 陛下! 美しい平和を Tu sapesti a me donar.君は私に与えることができた。 |
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Allegro 4/4 E-flat Major |
TUTTI COL CORO合唱を伴った全員 Ah sì... torni in te la pace,ああ そうだ… 君に平和が戻るように、 Puoi contenta respirar.君は満足して息を吐くことができる。 ELENAエレナ Fra il padre, e fra l'amante父の間で、そして恋人の間で Oh qual beato istante!ああ 何と最高に幸せな瞬間なことか! Ah! chi sperar poteaああ! 誰が望むことができただろうか Tanta felicità!これほどたくさんの幸せを! TUTTI COL CORO合唱を伴った全員 Cessi di stella rea終わるように 悪い星の La fiera avversità.残忍な過酷さが。 |
参考資料
La donna del lago / Gioachino Rossini / Critical editon
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Vocal score, published by Schott, Meinz, Germany, about 1821 / IMSLP #107713
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Full score, Garland Publishing, New York and London, 1980, reprint from full score published by Ratti, Cencetti, Roma, Italy, ca 1828
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1990
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1996
Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /
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