VERDI 1851 |
初演:1851年3月11日、ヴェネツィア、フェニーチェ劇場
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
原作:ヴィクトル・ユーゴーの戯曲『王は楽しむ』
(準備中)
《リゴレット》の初演は、1851年3月11日、ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場で行われました。
初演の出演者は以下のような人たちでした。
Il duca di Mantova | Raffaele Mirate | tenore |
Rigoletto | Felice Varesi | baritono |
Gilda | Teresa Brambilla | soprano |
Sparafucile | Feliciano Pons | basso |
Maddalena | Annetta Casaloni | contralto |
Giovanna | Laura Saini | mezzosoprano |
Il conte di Monterone | Paolo Damini | baritono |
Il cavaliere Marullo | Francesco De Kunnerth | baritono |
Matteo Borsa | Angelo Zuliani | teore |
Il conte di Ceprano | Andrea Bellini | basso |
La contessa | Luigia Morselli | mezzosoprano |
Un Usciere di corte | Giovanni Rizzi | basso |
Un Paggio della Duchessa | Annetta Modes Lovati | mezzosoprano |
Primo violino e direttore d'orchestra | Gaetano Mares |
(以下準備中)
ひょんなことからこのオペラの舞台にされてしまったマントヴァは、モデナからローカル列車で1時間ほど北上した、いたって小振りな町です。小奇麗で落ち着いた町並みをしばらく歩くと、町の中心部である旧市街に入ります。この中心部は、ポー川の支流であるミンチョ川(正確には、ミンチョ川が川幅を大きく広げた三つの連続する湖)に三方を囲まれています。旧市街には、鏡の間やマンテーニャの壁画で有名なドゥカーレ宮殿、ジューリオ・ロマーノの奇怪な壁画で知られるテ宮殿、ドゥオーモ、サンタンドレア聖堂など、様々な歴史的建造物が残されています。
マントヴァ一帯は、1328年から1627年までゴンザーガ家が支配しました。ルドヴィーコ3世(1412−1478)の時代から繁栄をし、フェデリーコ2世(1500−1540、在位1519−1540)が1530年に公爵に昇格し、領地がマントヴァ公国になってから、その4代下のヴィンチェンツォ1世(1562−1612、在位1587−1612)までの時代が全盛期でした。その後、ヴィンチェンツォ2世(1594−1627、在位1626−27)でゴンザーガ家の直系が途絶えると、フランスの分家が後を継ぎ、継承争いもあって急速に勢力が弱まってしまいました。そして1708年に、ハプスブルク家支配下にあったミラノ公国がマントヴァ公国を吸収、消滅してしまいました。
マントヴァの栄華はかなり短いものでしたが、その間はヨーロッパ文化の最先端の発信都市でした。1607年、モンテヴェルディの《オルフェオ》がドゥカーレ宮殿で初演された頃が、マントヴァの繁栄の頂点でした。
『王は楽しむ』の舞台設定をどこかに移す際、マントヴァを選んだのは、非常にうまい選択だったでしょう。小さな公国ながらも、マントヴァ公爵たちは、ヴェルディが望んだような専制君主でした。しかし公国そのものはもう存在しません。そしてもう一つ都合が良かったのは、パリにおけるセーヌ川の役目を、ミンチョ川が受け持てたことです。
今日ではマントヴァは「リゴレットの町」として知られ、あるはずのないリゴレットの家まであるのですから、おもしろいものです。
第1幕
16世紀のマントヴァ。公爵の宮殿。宴が頂点に達している。公爵は廷臣のボルサに、日曜日ごとに教会で出会う娘をどうにかものにしたいと語る。そう言いつつ、公爵は美しいチェプラーノ伯爵夫人に目をつける。ボルサは、チェプラーノ伯爵の嫉妬を心配するが、公爵は一向に気にかけず伯爵夫人を口説き、別室へと連れ去って行く。公爵お気に入りの道化師リゴレットは、苦りきっているチェプラーノ伯爵を嘲笑する。そこに廷臣のマルッロが、一大事と駆け込んでくる。リゴレットが若く美しい娘を自宅に愛人として囲っているというのだ。驚く廷臣たち。公爵は恋の火遊びをチェプラーノ伯爵に邪魔されて、不機嫌に広間に戻ってくる。リゴレットは、伯爵を追放か処刑にしたら、と進言、さすがに公爵も、ふざけが過ぎるとリゴレットを諌める。この発言に憤慨したチェプラーノ伯爵は、仲間の廷臣たちに、リゴレットの愛人を攫って仕返ししてやろうと計画する。突如、モンテローネ伯爵が公爵に会わせろと広間に押し入ってくる。娘を公爵のなぐさみものにされたモンテローネ伯爵は、抗議をしに来たのだ。公爵に代わってリゴレットが、かつて謀反を起こしたモンテローネ伯爵を公爵は赦したのに、こんな時には文句をつけるとは恩知らずめ、と嘲り答える。公爵はモンテローネ伯爵を捕らえさせる。モンテローネ伯爵は、公爵だけでなく、リゴレットにも呪いの言葉を浴びせる。慄くリゴレット。
町外れの人気のない通り。帰路につきながら、リゴレットはモンテローネ伯爵の呪いの言葉を気にしている。ふと、刺客スパラフチーレが暗殺の用を尋ねてくる。リゴレットは彼の手口を聞いた上で、今は用事は無いとスパラフチーレを去らせる。剣で人を殺す者と、言葉で殺す者、リゴレットは二人に相通ずるものを感じつつ、宮廷での道化の生活に不満をこぼす。
家に着くと、娘ジルダがリゴレットを温かく出迎える。リゴレットは娘に自分の職業も、名前すら明かしておらず、また教会に礼拝に行く以外、外出を禁じている。廷臣たちから恨みを買っているリゴレットは、ジルダが諍いに巻き込まれることを恐れている。リゴレットの妻は既に亡くなっており、だからこそリゴレットはジルダを一層愛していた。人の気配にリゴレットは外の様子を見に出る。その間に、学生に変装した公爵が侍女のジョヴァンナを買収する。公爵は「日曜日ごとに教会で出会う娘」がリゴレットの娘だと知って驚く。リゴレットは再び外出する。ジルダは、教会で出会った青年(つまり公爵)のことを父親に黙っていた。そして彼への思いを口にしていると、当の青年である学生姿の公爵が現れ、彼女に愛を打ち明ける。最初は戸惑っていたジルダも、公爵の熱烈な愛の言葉にうっとりとしてしまう。公爵は自らを貧しい学生グワルティエル・マルデと名乗って立ち去る。ジルダはその名を何度も口にして陶然とする。その頃、チェプラーノ伯爵と廷臣たちが、リゴレットの“愛人”を攫うために集まってくる。彼らはテラスに立つジルダの美しさに驚嘆する。そこにリゴレットが戻って来て、自分の家の前に集まっている人々に警戒する。廷臣たちは「隣家のチェプラーノ伯爵夫人を攫う」と誤魔化し、さらにリゴレットに仮面を被せながら同時に目隠しもしてしまう。梯子を押さえていたリゴレットが様子がおかしいことに気付いた時には、既にジルダは攫われた後。リゴレットは「あの呪い!」と叫ぶ。
第2幕
公爵の宮殿の客間。ジルダが何者かに誘拐されたという知らせを聞き、公爵は心配している。そこに廷臣たちが「リゴレットの愛人を攫ってきた」と報告する。公爵はそれがジルダだと直感して喜び、彼女が捕らわれている部屋に向かう。一方、娘は宮殿に連れて来られたはずと睨んだリゴレットは、廷臣たちから手掛かりを聞き出そうとするが、彼らはとぼけるばかり。そこに公爵夫人の小姓が、夫人が公爵との面会を求めているとやって来る。廷臣たちが、公爵は今寝ている、いや狩りに出ている、とあやふやな答えをするので、リゴレットはついに公爵が娘と一緒にいることを確信、娘を返せと公爵の部屋に突進するが、廷臣たちに阻まれる。リゴレットは泣いて懇願するが、廷臣たちは聞き入れない。ジルダが父のもとに駆け寄り、公爵に辱めにされたことを明かす。リゴレットは廷臣たちを下がらせ、娘と二人きりになる。ジルダは経緯を父親に語る。リゴレットは娘を慰め、宮殿を立ち去ろうとする。その時、処刑へと連行されるモンテローネ伯爵が通りかかり、公爵への呪いは無駄だったか、と無念を打ち明ける。リゴレットは、自分こそが復讐を果たそうと誓う。
第3幕
ミンチョ川の人気のない川岸。スパラフチーレの居酒屋がある。公爵に辱めにされてから一月たった今も、ジルダは公爵への愛情を消すことができない。リゴレットは、ジルダに公爵の本性を見せようとこの店の傍にやって来た。公爵が一人お忍びで店にやって来ると、さっそくマッダレーナを口説き出す。その姿にジルダはショックを受ける。リゴレットはジルダに、男装してヴェローナに行くよう命じる。そしてスパラフチーレに、殺しの前金として半額を渡し、残りは死体と引き換えと約束し、一旦立ち去る。嵐が近づいて来る。公爵は居酒屋で一眠りすることにする。公爵を愛してしまったマッダレーナは、スパラフチーレに命乞いをする。一方、ジルダは一人で様子を伺いに居酒屋に戻って来て、兄妹のやり取りを耳にして驚く。スパラフチーレは、誰か男が居酒屋を訪れたら、身代わりに殺すことにするが、嵐の夜中に訪問者がいるとは思えない。公爵への愛から、男装のジルダは身代わりになる決意をし、居酒屋の中へ入っていく。不気味な嵐が通り過ぎていく。リゴレットは、12時の鐘と共にスパラフチーレに残金を払い、死体の入った袋を受け取る。すぐに川に放り込もうというスパラフチーレに対し、リゴレットは自分一人で沈めたいと答える。彼が袋を引き摺って河畔に向かおうとするその時、遠くから公爵の歌声が聞こえてくる。驚いたリゴレットが袋を開けると、そこには瀕死のジルダが。彼女は父親に、愛する人の身代わりになって死ぬと侘び、公爵を許してあげてと繰り返しながら息絶える。リゴレットは「あの呪い!」と悲痛に叫ぶ。
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