ヴェルディ御殿 ホームページ
オペラ御殿 旧御殿のメインメヌー
最新更新 2024年09月13日
無断転載 厳禁
GIUSEPPE VERDI
ATTILA
序幕と3幕のドランマ・リリカ
Dramma lirico in un prologo e tre atti
初演 1846年3月17日 ヴェネツィア フェニーチェ劇場
First performance 17 March 1846, Teatro La Fenice, Venezia
台本作家 テミストークレ・ソレーラ と フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
Librettist Temistocle Solrera e Francesco Maria Piave
原作
Original
ジュゼッペ・ヴェルディ《アッティラ》は、歴史に名高いフン族の王アッティラを描いた作品で、ヴェルディがことの外題材に入れ込んだ作品である。しかし制作は度重なるトラブルに見舞われて難航し、万全の仕上がりとは行かなかった。しかしその独自の魅力は、ことに近年、人気を呼んでいる。
作曲
1844年3月9日、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で《エルナーニ》が初演された。その直後にヴェルディは、当時の高名な劇場興行主アレッサンドロ・ラナーリ(1787―1852)から新作オペラの依頼を受けた。ヴェルディは1844年5月22日付で《エルナーニ》の台本作家フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ 1810―1876 に宛てた手紙でこの件について触れている。
私は ヴェネツィアに 1845―1846年のカーニヴァル・シーズン【で新作オペラを】書くために ラナーリによって 契約を結ばれた ラナーリが【フェニーチェ】劇場を利用できるという条件の下;
Sono stato scritturato da Lanari per scrivere a Venezia il Carnevale '45-46 sempreché Lanari abbia il teatro;
ヴェルディとラナーリには既に接点があった。ラナーリは1843年7月29日にアドリア海岸の小都市セニガッリアのフェニーチェ劇場で、ミラノで初演されて間もない《ロンバルディ》を上演し、これにヴェルディを招いたのである。ちなみにこの時ヴェルディはオロンテのアリアのカバレッタを差し替えている。
またヴェルディがヴェネツィアで《エルナーニ》初演の準備をしている1844年2月29日に、ヴェルディはラナーリとアルジェンティーナ劇場への新作オペラの契約を結んでいた。つまりラナーリは、《エルナーニ》初演の前後にヴェルディと立て続けに新作オペラの契約を結んだのである。
ラナーリとは別に、もう一つヴェルディとの新作オペラの契約を狙っていた者がいる。新興の出版社 LUCCA社である。
LUCCA社は、元々RICORDI社の従業員だったフランチェスコ・ルッカ 1802―1872 が1825年に独立開業した出版社で、フランチェスコとその妻ジョヴァンニーナ 1810頃―1894 旧姓ストラッツァ によって運営されていた。後発のLUCCA社は、イタリアオペラで急速に台頭しているヴェルディに目を付け、契約を得ようと近付いた。
実はこの頃ヴェルディは、最初のオペラ《オベルト》以来世話になっていたミラノのスカラ座の支配人バルトロメオ・メレッリ Bartolomeo Merelli 1794―1879 スカラ座支配人 1836―1850 との関係が悪化し、メレッリおよびスカラ座から離れる決意をしていた。さらにヴェルディはメレッリ、スカラ座と結び付きの強い RICORDI社ともの関係も断とうと考えていたようだ。
LUCCA社は運良くその機に乗じて、1845年1月、ラナーリが契約した新作オペラ(これが《アッティラ》になる)について権利を折半し、ラナーリはヴェネツィアなど8都市でこのヴェルディの新作オペラを上演できる一方、他都市ではLUCCA社が権利を持つという契約を取り付けた。もちろん LUCCA社はこの新作オペラを出版することになる。LUCCA社は同年10月にはあと2つの新作オペラの権利も得た(《群盗》と《海賊》になる)。ちなみにLUCCA社の女将ジョヴァンニーナはたびたびヴェルディを訪れて交渉していたのだが、ヴェルディの弟子エマヌエーレ・ムツィオ 1821―1890 によると、ヴェルディは彼女をたいへん嫌っていたそうだ。
LUCCA社と契約を結んだ1か月後の1845年2月24日付で、ヴェルディはヴェネツィアのピアーヴェに宛てて次のような手紙を書いている。
次のカーニヴァルシーズンのためのオペラについて話し合う時だ。際立った、素晴らしく、そして皆にとって少ない役割【≒ 負担の大きくない】の4人の登場人物のある題材が必要だ。プリマドンナはレーヴェ、【その他に】グワスコ、コスタンティーニ、マリーニ。全員を同程度の役に巧く扱う必要がある。題材をすぐ送れるよう準備をしなさい; あるいは 私がヴェネツィアに行くであろう時に準備ができているようにしなさい。
È tempo che parliamo dell'opera pel Carnevale venturo: Mi abbisogna un argomento che vi siano quattro caratteri decisi, belli, ed a tutti poca parte. Prima donna la Loeve, Guasco, Costantini, Marini. Tutti bisogna trattarli bene con parte eguale. Preparati al soggetto a mandamelo subito; oppure fa che sia preparato quand'io verrò a Venezia.
ヴェルディは半月後の3月12日にミラノを発ち、パドヴァを経てヴェネツィアに向かう。ただし目的はフェニーチェ劇場ではなく、彼らがオペラ化を拒んだ《二人のフォスカリ》 1844年11月3日、ローマで初演 を、ヴェネツィアのもう一つの歌劇場、サン・ベネデット劇場でヴェネツィア初演(1845年3月30日)するためだった。
先の手紙の1か月後の3月25日付で、ヴェルディが友人の詩人、翻訳家 アンドレア・マッフェイ 1798―1885 に宛てた手紙で、初めてアッティラへの言及が見られる。
君がヴェルネルのアッティラを読んだことがあるか そして そこから素晴らしいオペラを掘り当てることができると君が思っているかどうか、すぐに私に手紙を書いてくれ、というのも私はこの題材を取り扱おうとほぼ決心しているからだ。
Se hai letto l'Attila di Verner e se credi che se ne possa cavare un buon melodrama scrivimene
prontamente perché ho quasi deciso di trattare quel sogetto.
このマッフェイへの手紙には、ヴェルディが ドイツの劇作家ツァハリアス・ヴェルナー 1768―1823 の戯曲『アッティラ、フン族の王』をオペラ化する経緯の手掛かりが含まれている。第一に、ヴェルディがヴェネツィアに滞在している頃にアッティラが題材に浮上し、ヴェルディはすぐ乗り気になったこと、第二に、それがドイツ語が堪能なマッフェイから教えられたわけではなかったこと。第三に、これが最も重要だが、実はヴェルディはヴェルナーの『アッティラ、フン族の王』をあまり詳しくは知らなかったこと。もしヴェルディが『アッティラ、フン族の王』を自分でしっかりと読むことができたならば、このように手紙でマッフェイに意見を求めたりはしなかったろう。
実のところ、1845年の段階でも、1808年刊のヴェルナーの『アッティラ、フン族の王』はイタリア語にもフランス語にも翻訳されていなかった。ヴェルディが読んだのは、フランス語の抜粋訳か、概要もしくはあらすじ程度だったろう。
ただオペラから原作戯曲へと遡って見ると、ヴェルディが『アッティラ、フン族の王』のどこに惹かれたのかは見当が付く。オペラの台本は原作戯曲を奪胎換骨したと言ってよいほど大きく異なっているのだが、アッティラがレオ/レオーネに屈した場面だけは概ね原作を踏襲している。おそらくヴェルディはこの場面を読んで大いに気に入ってオペラ化を考えたのではないだろうか。
話を戻すと、マッフェイはヴェルディにヴェルナーの『アッティラ、フン族の王』を基に、台本の草案を作って送ることになった。それを受け取ったヴェルディは1845年4月12日付で、ヴェネツィアのピア―ヴェにオペラ《アッティラ》の構想を伝えている。そこでは、オペラが序幕と3つの幕になることの他、各幕の概要が書かれており、役名を除くと、概ねオペラで踏襲されているが、最終幕のフィナーレは気に入らず変更が必要との認識を示している。またアッティラ、オダベッラの2役には満足し、エツィオは原作では途中で戦死してしまうところを最後まで生き残らせるように意見している。そして4番目の役について検討しなくてはならないと述べている。
4つめの効果的な役を生み出さなくてはならないだろう、イルデゴンダ【= オペラのオダベッラ】が死んだとばかり思っているあのグワルティエーロ【= 原作のヴァルテル、オペラのフォレスト】は、【死んだのではなく】逃亡しているように 私には思われる、君は 彼を フン族の中にでも ローマ人の中にでも 登場させて、イルデゴンダとの何か美しい場面で そうした余地を与えることができるだろう; 毒殺未遂の場面で 彼に 何らかの役目を担わせなさい、そして第4幕【= 第3幕】では特に、アッティラ殺害のためにイルデゴンダと共謀する場面で【彼に 何らかの役目を担わせなさい】。
Ci sarebbe d'inventare un quarto carattere d'effetto, e mi pare che quel Gualtiero, che crede morta Ildegonda, fosse scampato, e potresti farlo figurare o tra gli Unni o tra i Romani e dare così campo a qualche bella scena con Ildegonda; farlo giocare forse nella scena del veleno , ma sopratutto nel quarto atto , d'intelligenza con Ildegonda per far morire Attila.
さて、この新作オペラはヴェネツィアのフェニーチェ劇場のためのものなので、フェニーチェ劇場の座付き詩人のピアーヴェが台本執筆を手がけるのは当然の成り行きだった。
ところが1845年の春の終わりから夏にかけて、何らかの理由で《アッティラ》の台本作家はテミストークレ・ソレーラ 1815―1878 に代わった。ソレーラは既にヴェルディの《オベルト》、《ナブッコ》、《第一回十字軍のロンバルディア人たち》、《ジョヴァンナ・ダルコ》で台本を手掛けており、これで5度目のコンビだった。
なおソレーラが《アッティラ》の題材選定にはまったく関わっていないことは留意する必要がある。
1845年8月12日、ヴェルディは遅れていたナポリの新作《アルツィーラ》の初演(ナポリ サン・カルロ劇場)を済ませた。ヴェルディは9月12日付でブッセートからマッフェイに宛てた手紙の追伸で「昨日《アッティラ》を書き始めた」と伝えている。
この年の秋から冬にかけてのヴェルディはいくつもの手紙で、《アッティラ》の題材を大いに気に入っていると書いている。
順調に思えた《アッティラ》の制作だが、予期せぬ事態となった。1845年9月、ソレーラは彼の妻でソプラノのテレーザ・ロズミーニの後を追う形でスペイン、カタルーニャのバルセロナに向かい、当地のノウ劇場【注】の支配人に収まった。《アッティラ》の台本はまだ完成しておらず、その他の調整も必要だった。
ソレーラはヴェルディに台本の完成を請け負ったものの、ソレーラからはしばらく音沙汰がなかった。
11月17日付でヴェルディがピアーヴェに宛てた手紙で、彼はソレーラから連絡が来たことを伝えている。
昨日 私はソレーラから手紙を受け取った そこには 私がアッティラに望むだけの変更を加えさせる裁量を私に与える という。
Jeri ho ricevuto lettera da Solera in cui mi lascia facoltà di far fare i cambiamenti che voglio nell'Attila.
つまり、ソレーラは《アッティラ》台本の制作を放棄してしまったのだ。彼は第3幕のフォレストのアリアまで書いていたが、エツィオが登場して以降は手付かずだった。
やむなくヴェルディは、当初の台本作家であるピアーヴェに台本の完成を依頼する。同時に彼は、ソレーラが構想した第3幕を大きく変えることにしている。
1845年12月6日、ヴェルディはヴェネツィア入りし、まずカーニヴァル・シーズンの開幕公演として《ジョヴァンナ・ダルコ》 同年2月15日、ミラノ、スカラ座 初演 を上演する。
12月25日付で、ヴェルディはバルセロナのソレーラにピアーヴェの書いた《アッティラ》第3幕の台本を送り、意見を求めている。ソレーラはすぐにかなり細かく修正を入れて返信を送ってきた。そして、自らの執筆放棄を棚に上げて、ピアーヴェの詩句を「猿真似 parodia」と非難し、合唱がほとんど用いられていない幕切れに不満を述べている。とはいえ、ソレーラはピアーヴェの台本を尊重した上で修正を加えており、しかもほとんどの場合、ソレーラが修正した詩句の方が効果的なものだった。ヴェルディは修正を受け入れて、それに基づいて作曲した。ただしソレーラとはこれで完全に縁を切った。
《アッティラ》の制作にはもう一つ大きな障害が立ちはだかった。当のヴェルディの体調不良である。
ヴェルディは既に1844年の末頃から胃痛に悩まされていたのだが、年が明けてから体調がひどくなり、ほとんど寝込んでしまった。彼は初演直後の3月20日頃に友人のオップランディーノ・アッリヴァベーネに宛てた手紙で「しつこい胃痛でほとんど2ヶ月も床に伏してた」と述べているほどだった。彼がいかに病状が深刻だったかは、2月25日付けのライプツィヒ大衆音楽新聞にヴェルディの訃報が掲載されたことからも想像できる。おそらく1月4日にフェニーチェ劇場で《エルナーニ》の再演が行われて間もなく、ヴェルディは机に向かえないほどひどい容体になって、床に臥せていたのだろう。
この胃痛が原因で、ヴェルディはこの年に長期休養せざるを得なくなる。
ともかく、《アッティラ》初演は予定された1月下旬には間に合わなくなった。ヴェルディは2月に入ってからなんとか残りを作曲して完成させたが、シーズンはもう終盤に入っていた。
注 ノウ劇場 Teatro Nou(新劇場の意)は、バルセロナのレイアル広場に面して存在した劇場。1843年開場。1847年にリセウ大劇場が開場する前の3年間だけ歌劇場に供された。ソレーラが支配人を務めたのは最終シーズン。なおソレーラはその後マドリッドに移り、新築された王室劇場の支配人を務め、若きスペイン女王イサベル2世の庇護を受けた。
※普請中※
初演
初演は1846年3月17日、ヴェネツィア フェニーチェ劇場。
アッティラ
Attilaイグナツィオ・マリーニ
Ignazio Mariniバス
basso
エツィオ
Ezioナターレ・コスタンティーニ
Natale Costantiniバリトン
baritono
フォレスト
Jacopo Foscariカルロ・グワスコ
Carlo Guascoテノール
tenore
オダベッラ
Odabellaソフィア・レーヴェ
Sophie Loeweソプラノ
soprano
ウルディーノ
Uldinoエットレ・ポロフィッリ
Ettore Profiliテノール
tenore
レオーネ
Leoneジュゼッペ・ロマネッリ
Giuseppe Romanelli バス
basso
コンサートマイスター 兼 指揮者
Primo violino e capo d'orchestraガエターノ・マレス
イグナツィオ・マリーニ 1811―1873 は、1832年にデビューしたバス。1834年12月、ドニゼッティ《ジェンマ・ディ・ヴェルジ》初演のグイード役でスカラ座に初出演。ヴェルディの最初のオペラ《オベルト》(1839年、ミラノ、スカラ座)でタイトルロールを歌っている。また、ずっと後、サンクトペテルブルグでの《運命の力》初演(1862年)でも市長を歌っている。
ソフィア・レーヴェことゾフィー・レーヴェ 1815―1866 は、ブレーメン近郊のオルデンブルク生まれのドイツ人ソプラノ。1830年代の初めにデビュー。彼女はこの2年前に、同じフェニーチェ劇場での《エルナーニ》初演 1844年3月9日 )でエルヴィーラを歌ったことで名高い。またドニゼッティ《マリア・パディッラ》初演(1841 ミラノ)でタイトルロールを歌っている。ドラマティックな声と装飾歌唱の技術を持った、初期のヴェルディのプリマドンナに打ってつけのソプラノである。
ナターレ・コスタンティーニ 1806―1846 は、セニガッリアの生まれ。22歳の時にデビュー。セニガッリアの夏のシーズンをラナーリ(彼はイエージ近郊サン・マルチェッロの生まれ)が興行していたことから彼に重用されるようになった。1840年12月26日、ミラノのスカラ座のカーニヴァル・シーズン開幕公演のメルカダンテ《刺客》に出演。1840年代前半にはヴェルディの初期のオペラのバリトン役で活躍した。しかし《アッティラ》初演直後の夏、感染症で急死した。
カルロ・グワスコ 1813―1876 は、イタリア、ソレーロの生まれ。1837年にデビュー。数年のうちに人気テノールに成長した。1843年2月11日、ミラノのスカラ座《ロンバルディ》初演でオロンテを歌い大成功を収める。同年、ウィーンのケルントナートーア劇場でのドニゼッティ《マリア・デ・ロアン》初演でリッカルドを歌う。彼もレーヴェと同じく1844年の《エルナーニ》初演に出演、タイトルロールを歌っている。甘く柔らかな美声だったことが伝えられている。
初演は、シーズンが終わる直前までずれ込んでしまったため、3月17、18(慈善公演)、19、21、22、24日の6回しか上演できなかった。
ヴェルディは3月20日頃に友人のオップランディーノ・アッリヴァベーネに宛てた手紙で、初日と2日目の公演について触れている。
《アッティラ》は初日の晩、たいへん喜ばしい成功を収め、2回目の上演では熱狂を巻き起こした。喝采を受けなかった曲はなく、したがって何度も呼び出された。友人たちは、これは私のオペラの中で一番良いものとされるだろうと期待してた。聴衆は題材に疑問を抱いていた。私は、これが私のほかのオペラよりも劣るものではなかろうと考えている。時間が必要だ。
自作の初演には厳しい評価を下すのが常のヴェルディにしては珍しく高い評価を与えている。もっとも新聞評には多少の保留がついていた。それでも初日から日を追うごとに評判が良くなったようで、最終日の評は上演の大成功を伝えている。
※普請中※
初演後の上演
ヴェネツィアでの初演後、《アッティラ》は各都市の劇場に急速に広まった。詳細を綴るだけで膨大な量になるので、まず1846年中のイタリアでの上演を列挙する。
4月16日、フィレンツェ、ペルゴラ劇場。オダベッラは、翌1847年3月14日に同劇場での《マクベス》でマクベス夫人を創唱することになるマリアンナ・バルビエーリ=ニーニ。
5月19日、レッジョ=エミーリア 市立劇場。オダベッラはマリアンナ・バルビエーリ=ニーニ。
7月18日、ヴィチェンツァ、エレテーニオ劇場。オダベッラはマリアンナ・バルビエーリ=ニーニ、エツィオはフェリーチェ・バレージ。
8月25日、クレモナ、コンコルディア劇場 Teatro della Concordia。
9月9日 リヴォルノ アッカデミア・アッヴァロラーティ劇場 Teatro degli Accademici Avvalorati。
9月12日、ヴェローナ、ヌオーヴォ劇場。この劇場のこけら落とし上演。
9月28日、トリエステ、ヌオーヴォ劇場(後述)。オダベッラはマリアンナ・バルビエーリ=ニーニ。
10月10日、ボローニャ。次の演目が10月28日なので、10日間程度は上演があったのではないだろうか。
12月26日、ミラノ、スカラ座(後述)。
同日、パルマ王立歌劇場、1847年1月26日までに9公演。オダベッラはマリアンナ・バルビエーリ=ニーニ。
1847年1月9日、ジェノヴァ。
イタリア外では
1847年3月7日 デンマーク、コペンハーゲン、王立劇場。出典 STUDI VERDIANI 15, p84
4月5日、ポルトガル、リスボン、サン・カルロス劇場。
5月15日、スペイン、バルセロナ、プリンチパル劇場。この記事の下の方で触れられている。。
1848年1月23日、キューバ、ハバナ、タコーン劇場。新大陸初演(厳密には新大陸圏の島だが)。
3月14日、ロンドン、女王劇場。英国初演。
1850年4月16日、ニューヨーク、ニブロズ・ガーデン(ブロードウェイの劇場)。キューバの歌劇団の引越し公演として北米初演。この時のタイトルロールは創唱者のマリーニ。
西海岸到達は遅れ、1859年8月18日、サンフランシスコ、アメリカ劇場。
ドイツ語圏では上演は下火だったようだ。イタリア語によるドイツ初演は、1964年5月、ブレーマーハーフェン市立劇場でのものだったという。
イタリアにおける《アッティラ》人気は、初演よりも数年後のことだったと思われる。前述の英国初演(これ自体はまったくの失敗に終わった)を手掛けた女王劇場の支配人ベンジャミン・ラムリーは、1864年に出版した彼の回想録でこう述べている。
おそらく、ヴェルディの他のどんなオペラも、イタリアにおいてこれより熱狂的に燃え上がったことはなかった。あるいは、この幸多き作曲家が《アッティラ》よりもさらにたくさんの栄誉を戴いたことはなかった。その名声は作曲家の祖国イタリアでは大きかった。
None, perhaps, of Verdi's works had kindled more enthusiasm in Italy, or crowned the fortunate composer with more abundant laurels than his "Attila." Its fame was great in the native land of the composer.
これは英国初演の行われた1848年頃の状況ではないかと思われる。
1848年はヨーロッパ全土で革命の嵐が巻き起こり、イタリアでも革命騒動が各地で勃発した。これらは短期間で鎮圧されてしまったが、これが後のリソルジメントに繋がっていく。
この頃の観客は、ソレーラが仕込んだ愛国的詩句に刺激を受けたに違いない。序幕でエツィオが歌う、
avrai tu l'universo,君は 全世界を 手に入れるだろう、
resti l'Italia a me.君は イタリアを 私に 残すように。
という台詞に、革命熱に浮かされたイタリア人たちは、あまり意味を深く考えないまま熱狂した。
※普請中※
《アッティラ》が、1846年9月28日からトリエステのヌオーヴォ劇場(現在のヴェルディ劇場)で上演された際に、ヴェルディは第3幕のフォレストのロマンツァを差し替えている。この時のフォレストは、偉大な先輩、ジョアキーノ・ロッシーニ 1792―1868 が庇護するロシア人テノール、ニコライ・イヴァノフ 1810―1880 だった。で、ロッシーニは7月21日付の手紙でヴェルディに、イヴァノフのためのロマンツァを書いてくれるよう依頼している(ちなみにロッシーニからのこうした依頼は《エルナーニ》に続いて2度目)。
歌詞はピアーヴェが書き、ヴェルディは8月頃に作曲。この Sventurato! alla mia vita は、長らく歌詞しか伝わっていなかったが、1992年、偶然から米国の高名な音楽学者フィリップ・ゴセットが発見した。
1846年12月26日、ミラノのスカラ座の1846/1847年のカーニヴァル・シーズンの開幕演目として《アッティラ》は上演された。ヴェルディは上演にか関与しなかったものの、フォレストを歌うナポレオーネ・モリアーニ 1808―1878 のために第3幕のロマンツァを差し替えている。この O dolore! ed io vivea は今日でも単独でしばしば歌われることがあり、さらに稀にオペラ本体で差し替えられて歌われることもある。
※普請中※
あらすじ
序幕
5世紀半ばのイタリア。アクイレイアを征服したフン族がアッティラを讃える。ウルディーノが連れてき
たイタリア女たちの中でも、オダベッラの勇ましさに感心したアッティラは、彼女の希望で自らの剣を与える。
ローマの使者エツィオが現れ、アッティラは旧友を歓迎する。エツィオは自分と同盟を組もうと唆すが、
アッティラはそれを断る。改めてエツィオは皇帝の意向を伝えようとするが、アッティラは聞こうともせず、
会談は決裂する。
アドリア海の潟。嵐の後、アクイレイアの人々がこの潟へと船で避難し、この地を気に入ったフォレス
トは定住を決める。彼は、愛するオダベッラの身を案じながらも、人々と共に新たな町の建設に希望を寄
せる。
第1幕
夜の森。オダベッラは、亡くなった父と行方不明の恋人フォレストを思い嘆いている。そこにフォレストが現れる。彼はオダベッラがアッティラに囲われていると思い込んでおり、オダベッラを非難する。だが彼女は、ユディト【注1】のように復讐の機会を窺っているのだと明かし、二人は和解する。
アッティラの天幕。アッティラは悪夢にうなされて目を覚まし、ウルディーノに、夢の中で老人から、神の地であるローマへの進軍を止めるよう警告されたことを明かす。アッティラは気を取り直し、兵を招集しローマへ向かおうとする。そこに老人レオーネ【注2】が現れ、アッティラが夢で聞いたのと同じ警告を発する。
アッティラは慄き、その場に平伏する。
注 ユディトは、旧約聖書の『ユディト記』に登場するイスラエル人の寡婦。攻めてきたアッシリア軍を撃退するため、将軍ホロフェルネスを宴で酔いつぶれさせ、その寝首を掻いてアッシリア軍を敗走させた。
注2 前述の通り、この老人レオーネは教皇レオ1世を表している。
第2幕
ローマ軍の陣。エツィオは皇帝ヴァレンティニアーノから、フン族と休戦し、彼を召還するという命を受
け、憤慨している。若い皇帝はエツィオを警戒し始めていた。アッティラの使者たちがエツィオを休戦の
祝宴に招く。使者に紛れたフォレストはエツィオに、アッティラを暗殺するので兵を用意しておいてくれと
頼む。
アッティラの陣。フン族たちが宴を楽しんでおり、その中にはオダベッラの姿もある。エツィオが到着す
る。祭司たちが、不吉な予兆があるのでローマ人と同席しないようにと求めるが、アッティラは耳を貸さな
い。突然、嵐に明かりが消え、一同は混乱に陥る。しかしすぐに風は収まり、宴は再開する。フォレストはウルディーノと共謀し、アッティラの盃に毒を盛る。だが自らの手で復讐を果たしたいオダベッラは、杯の中身は毒だとアッティラを止める。怒り狂うアッティラ。オダベッラは王の命を救った自分にフォレストを引き渡すよう求める。アッティラはそれを認め、さらにオダベッラを后にすると宣言する。
第3幕
森。アッティラとオダベッラの婚礼の日。ウルディーノがフォレストに、婚礼の行列が動き始めたことを知らせる。フォレストはオダベッラを思って嘆く。兵を待機させているエツィオが、まだ出撃の合図がないことに苛立ってやって来る。そこに初夜の庄で父親の霊を見て取り乱したオダベッラが駆け込んで来る。フォレストは彼女を非難する。花嫁を探しに来たアッティラは、フォレストとエツィオの姿に企みを見抜き、彼らを裏切り者と詰める。ローマ軍がフン族を急襲、オダベッラはアッティラに剣を突き刺し、復讐を果たす。
音楽
第1番 前奏曲 は Largo 4/4 ハ短調。暗く重苦しい音楽だが、40小節と短く、あくまで悲劇を予告する役目だけである。
序幕
第2番 導入 は、基本的に開幕の合唱である。合唱 Allegro assai vivo 4/4 ヘ短調/ヘ長調 Urli, rapine, の後、アッティラが登場、Allegro 4/4 ヘ長調 I figli d'Attila vengono e vincono を歌う。これはアッティラの力強い声を印象付ける第一声だが、発展せずアリアにはならない。フン族の戦士たちがアッティラを称える合唱 Allegro assai moderato e grandioso 4/4 変ホ長調 Viva il re delle mille foreste が続く。
なお《アッティラ》では基本的にトランペットは2本だが、この第2番だけ4本必要である。
第3番 シェーナとオダベッラのカヴァティーナは、シェーナを前においた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成のアリア。シェーナではオダベッラは最後に一言歌うだけだが、ここでヴェルディはオダベッラに高いハ音(と続く下行音型)を与えて、聴衆の耳を奪わせている。カンタービレ Andantino 6/8 ハ長調 Allor che i forti corronoは、穏やかに始まった後、Ma noi donne italiche, で突然勇ましくなり(grandioso e fiero 堂々とした そして 誇り高く と楽語指示がある)終盤に高いハ音が与えられている。カデンツァも難易度が高い。テンポ・ディ・メッゾ Allegro 4/4 ハ長調 でオダベッラはアッティラから剣を与えられて喜ぶ。カバレッタ Allegro moderato 4/4 変ホ長調 Da te questo or m'e concesso,は、音が上下に激しく動くかなりたいへんなアリアで、オダベッラの激しい気性が強烈に描かれている。ここでも2回高いハ音が与えられている。
第4番 エツィオとアッティラの二重唱は、レチタティーヴォ、シェーナを前に置いた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成の二重唱。カンタービレは前半後半に分かれており、まず Andante piùttosto mosso 4/4 ヘ長調 Tardo per gli anni, e tremulo でエツィオがアッティラに手を汲もうと唆す。ここで avrai tu l'universo, resti l'Italia a me. を歌う。これにアッティラは不快感を示し、Mosso quasi allegro
4/4 ヘ長調 Dove l'eroe piu valido でエツィオの申し出を撥ね付ける。エツィオの歌が戻るが、ここではアッティラの方が優勢である。テンポ・ディ・メッゾでエツィオは改めてローマの使者として皇帝の親書を送ろうとするが、カバレッタ Allegro giusto 4/4 ハ長調 Vanitosi! che abbietti e dormenti でフン族の勢いを誇示する。エツィオはその三度上の旋律で反論し、二人が三度並行で歌う。単純な作りだが、英雄的なバリトンおよびバスの二重唱は力強い魅力に満ちている。エツィオは最後に最高音のト音に至る。
第5番 は シェーナとフォレストのカヴァティーナとだけ区分されており、シェーナを前に置いた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成のアリアとなっているが、実際には暴風雨 Allegro 4/4 イ短調 と夜明け Allegro 4/4 ハ長調 の音楽が隠者たちの合唱と合わさって置かれて、大きな効果を上げている。Allegro moderato 4/4 ハ長調 に転じて、アッティラに襲われてここに逃げてきたアクイレイアの人々が現れる。フォレストはまず Qui, qui sostiamo! Propizio augurio で一声鳴らした後、アリアに入る。カンタービレは Andantino 3/4 嬰ヘ長調 Ella in poter del barbaro!...。フン族に捕らえられたオダベッラを思い苦悩するフォレストの歌は、長調でありながら翳りが強く、最高音も嬰イ音でなくイ音。短いテンポ・ディ・メッゾ(中間部) Allegro 4/4 ハ長調 で完全に嵐が収まり、フォレストは気を取り直し、合唱と共に カバレッタ Allegro assai moderato 4/4 ハ長調 で滅ぼされたアクイレイアがこの潟で新たに復活することを期待する。なお、
ma dall'alghe di questi marosi,だが この大波の中の 海藻から、
qual risorta fenice novella,あたかも 不死鳥が 生まれ変わって 復活するかように、
rivivrai più superba, più bellaおまえは より誇らしく、より立派に 取り戻すだろう
della terra, dell'onde stupor!地上における、海上における 驚異の地を!
という歌詞は、初演劇場であるフェニーチェ劇場 Teatro La Fenice が1836年に火災で焼け落ちて再建されたことに掛けている。
第1幕
第6番 シェーナと オダベッラのロマンツァは、シェーナを前に置いた オダベッラの単一構成のロマンツァ。シェーナは短いが、Andante 4/4 ト短調 の悲痛な音楽が父と恋人を亡くした(と思っている)オダベッラの悲しみを広げて、ロマンツァへの素晴らしい布石となっている。ロマンツァ Andante piuttosto mosso 3/8 変ロ長調 Oh! nel fuggente nuvolo は、ゆったりとした歌にコールアングレが絡み、そこにフルート、さらにハープと低弦が絡んで、たいへん美しい。コールアングレとハープのオブリガートのアリアや二重唱は1820、1830年代 に流行ったタイプの曲である。終盤の装飾的な歌唱で一瞬高いハ音が求められている。
第7番 オダベッラとフォレストの二重唱は、シェーナを前に置いた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成の二重唱。シェーナ Allegro mosso 4/4 ヘ長調 でオダベッラはフォレストと再会し、あたかも再会の喜びの二重唱になるかのように音楽も軽快になるが、しかしフォレストのつれない態度にオダベッラは愕然とし、音楽も暗くなる。カンタービレは前半、後半に分かれている。前半 Andante 4/4 イ短調 Si, quello io son, ravvisami, では、フォレストがアッティラの妾になったと思っているオダベッラを非難する。後半はイ長調に転じ、オダベッラが伸びやかな歌で誤解を訴える。テンポ・ディ・メッゾでオダベッラは、自分はイスラエルのユディトの再来になろうとしていると告げ、即座にフォレストの誤解が解け、カバレッタ Allegro brillante 4/4 変イ長調 Oh t'inebria nell'amplesso, になる。この文字通り一体となって歌うカバレッタは、速度指示 輝かしく快活に そのままの喜びの爆発である。
第8番 シェーナとアッティラのアリアは、シェーナを前に置いた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成のアリア。これは19世紀半ばのイタリアオペラでのバスのアリアの中でも屈指の名曲である。シェーナの前に9小節の短い前奏 Largo 4/4 ホ短調 が置かれて、アッティラが悪夢に苦しんでいる様子が描かれる。短いシェーナの後、カンタービレ Andante piuttosto mosso 6/8 ヘ短調/ヘ長調 Mentre gonfiarsi l'anima でアッティラは悪夢を物語っている。夢で彼の前に立ちふさがった老人の言葉を語るときの不気味な音楽が効果的だが、この旋律は先の序奏でオーボエとクラリネットによって奏でられている。シェーナで気を取り直したアッティラは、カバレッタ Allegro 3/4 ヘ長調 Oltre quel limite で力強くローマへの進軍を決意する。1840年代のヴェルディならではの熱っぽい魅力に溢れた名曲だ。なお最後にヘ音に上がるのはヴェルディの書いた通り。
第9番 第1幕フィナーレ は、冒頭 Allegro assai vivo 2/4 ハ長調 Parla! Imponi!、アッティラが手下たちを鼓舞し、ウォダンを称えるたいへんに勇ましい合唱になる。しかしこれはすぐに舞台裏からの乙女たちと子供たちの合唱 Largo 4/4 ハ長調 Vieni... Le menti visita, に遮られる。この強い対比はとても効果的だ。アッティラがそれに立ち向かおうとしたとき、レオーネが彼の前に立ちはだかる。Andante 3/4 ヘ短調 Di flagellar l'incarco。これはアッティラのアリアでの夢語りと同じ音楽だが、拍子が6/8から3/4に変わっており、また感嘆符の有無など僅かに相違がある。あまりのことにアッティラが怯み、コンチェルタート Largo 6/8 ヘ短調 (No! non e sogno... che or l'alma invade! が繰り広げられる。この後ストレッタに発展する予感を裏切り、第1幕フィナーレはここで幕切れとなる。おそらく第2幕フィナーレがさらに大規模なので、第1幕フィナーレは短く切り上げたのだろう。全体としてこの第1幕フィナーレは、ソレーラらしい効果的な劇の設計と巧みな詩句がヴェルディの音楽と噛み合って素晴らしい出来になっている。
第2幕
第2幕は2曲だけから成る。
第10番 シェーナとエツィオのアリア は、シェーナを前に置いた 緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の2部構成のアリア。シェーナにはエツィオの最高音であえるト音が与えられている。シェーナに最高音があるのは珍しいのではないか。カンタービレ Andante 4/4 変イ長調 Dagl'immortali culmini は、ソレーラらしい巧みな描写の詩句に、ヴェルディが朗々とした歌を書いている。オーケストラは、チェロの分散和音を軸にした控えめな伴奏だったものが、Roma nel vil cadavere / chi ravvisar, ravvisar or puo? のところで管楽器群、トランペット、ヴァイオリンが歌と重なって盛り上げる。テンポ・ディ・メッゾ Allegro mosso 4/4 変イ長調 では、アッティラからの停戦を祝う宴への招きと、そこでのフォレストによるアッティラ毒殺とフン族掃討への協力が持ち掛けられ、慌ただしく物語が2段進む。カバレッタ Allegro giusto 4/4 変ロ長調 È gettata la mia sorte, も、この時期のヴェルディらしい勇ましく熱気を孕んだ音楽。sovra l'ultimo romano / tutta Italia piangera. が何度も繰り返されて盛り上がる。このアリアは当時のヴェルディがカンタービレ/カバレッタ形式で手堅く書いたものだが、一方で少々定型的になってしまっているのも否めない。
※普請中※
史実の人々
フン族の王アッティラやその宿敵、ローマ人のフラウィウス・アエティウスについては、書籍でもインターネット上でも多くの情報があるので、オペラの物語を理解する助けになる程度の簡単な情報だけ記す。
フン族は4世紀から5世紀にかけて東ヨーロッパを中心に大きな勢力を誇った騎馬民族で、当時すでに弱体化していたローマ帝国(395年に東西分裂が決定的になった)と対立した。
アッティラは395年、フン族の王族の子として生まれた。434年頃にフン族の王となり、その勇猛さから「神の鞭」と恐れられた。彼はブルグント族を襲い、グンダハール王を戦死させるのだが、この件は叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に採り入れられ、アッティラはエッツェル王という名で登場する。
フラウィウス・アエティウスは、390年頃、ローマ帝国の属州である下モエシアのドゥロストルム(現在のブルガリアのドナウ河畔の町シリストラ)で生まれた。彼は武勲を上げ、西ローマ帝国の執政官にのし上がった。皇帝ウァレンティニアヌス3世(419―455 在位424―455)が若年だったため、彼は西ローマ帝国で最も実力を持つ人物であった。
フン族と西ローマ帝国は対立関係にあったが、アエティウスとアッティラの関係は単純な敵対関係ではなかった。というのも、アエティウスは幼い頃に西ローマ帝国から人質としてフン族に送られ、アッティラと共に十年も暮らしたからである。二人は互いによく知る間だった。アエティウスは時にはフン族と協力し、しかし彼らがローマの領土に深入りしないよう排除しなくてはならなかった。
さて皇帝ウァレンティニアヌスの姉ホノリアは、強いられた結婚を嫌い、450年、アッティラに救援を求めた。これを求婚と見做したアッティラは、452年、これを口実に西ローマ帝国への大規模な侵攻を開始。途中、アクイレイア(トリエステの北西40km程の町)を壊滅させた。市民は船で沖の潟に逃れ、後にここにヴェネツィアを築くことになる。
フン族はイタリアで略奪の限りを尽くしながら、ミラノを抜けてローマへと向かったが、教皇レオ1世(390―461 在位440―461)が直接アッティラを説得し、彼らはローマを引き上げた。
451年、ガリアのカタラウヌム(現在のフランス北部シャロン=アン=シャンパーニュ)で二人は直接対決している。この時はローマが勝利しフン族を追い返したものの、ローマ軍も追撃ができないほど損害を受けている。この件はオペラの序幕の二重唱でも触れられている。
アッティラは、453年、イルディコという娘と結婚式を挙げた夜に急死した。死因は諸説あるが、大量の鼻血を出したと伝えられている。
一方アエティウスは、彼を脅威に感じた皇帝ウァレンティニアヌスによって、454年9月に殺害された。アエティウスの死後、西ローマ帝国は崩壊への道を突き進むことになる。
※普請中※
tomba 墓場 なのか tromba ラッパ なのか tromba 竜巻なのか
第2幕 第11番 第2幕フィナーレの 巫女たちの合唱 には一つ言葉の問題がある。
この巫女たちの合唱の第5、6行目(最後から2行)は、RICORDIの旧版ではこうなっていた。
Ma fischia il vento, rumoreggia il tuono,
sol dan le corde della tromba il suono.
しかしクリティカルエディションでは、6行目の tromba を tomba に置き換えている。
Ma fischia il vento, rumoreggia il tuono,
sol dan le corde della tomba il suono.
クリティカルエディション総譜の校訂報告 Critival Commentary によると、ヴェネツィアでの初演時の出版台本では tromba だったが、ヴェルディの自筆譜や LUCCA社 の初版ピアノ伴奏譜では tomba になっており、他の多くの資料でも tomba であることが多いという。中にはリスボンに伝わる筆写譜のように、元々 tromba だったものが tomba に訂正されているものもあるという。
クリティカルエディションがヴェルディの自筆譜の記載を採用するのは間違ってはいない。とはいえ
sol dan le corde della tomba il suono.ただ 墓場の綱 つなが 音を 与えている だけだ。
では、どうにも意味が分からない。tomba には 洞窟 のような意味もあるが、それでも同様である。
一方、tromba の場合でも、意味は通じていなかった。一般的に tromba は ラッパ を意味し、おそらくすべての仏英独日訳はこれを ラッパ と採って訳している。しかし、
sol dan le corde della tomba il suono.ただ ラッパの綱が 音を 与えている だけだ。
でもさっぱり意味が通じない。corda には (楽器の)弦 の意味もあるのだが、もちろんトランペットには弦はない。
そこでほとんど訳は corde を accordi 和音,調子 だと苦しい理解をして、
sol dan le corde della tromba il suono.ただ ラッパの調べが 音を 与えている だけだ。
として解決を図っている。
ところがこれもよく考えるとまだ問題がある。
第一に、前の行で
Ma fischia il vento, rumoreggia il tuono,それどころか、 風が ヒューヒューと音を出し、雷鳴が 轟き、
と、風のうなる音、雷鳴の轟きと、自然現象の音が続いた後に、ラッパの音が続くのはどこか不自然である。しかも場面は休戦の宴の最中、そこに戦闘の楽器であるラッパが鳴るのは、矛盾している。
第二に、単数形の tromba がラッパ1本を意味するならば、和音を意味する accordi とは馴染まない。どうやって一本のトランペットで和音を鳴らすというのだろうか。
以上から分かるように、tromba か tomba か、その意味は何か、という点のみならず、corde が何を意味するのかという点も重要である。
この行の解読する鍵は、前述の通り、前の行で風、雷と自然現象の音が2つ続いていることにある。つまり、3番目にも自然現象の音が続くと考えるべきではないか。
実はイタリア語の tromba には、一般的な ラッパ の意味の他に、竜巻 の意味もある。イタリア語では竜巻は、ラッパと区別するために tromba d'aria とも呼ばれる。tromba はおそらく竜巻がラッパ状の形(日本語で言えば漏斗)をしていることに由来しているのだろう。
tromba を 竜巻 と採ると、corde の意味も理解できる。竜巻が地上から上空へと渦巻く部分は紐を縒った綱のようで、これをソレーラは corde と表現したに違いない。このような捻りの入った表現はいかにもソレーラらしい。
したがって le corde della tromba は 竜巻の渦 を意味する。そして 竜巻の渦 は風や雷と同様に不気味な音を発する。
したがって、
sol dan le corde della tromba il suono.ただ 竜巻の渦が 音を 上げている だけだ。
が、ソレーラの意図した通りの意味になると思われる。
参考画像 Web東奥 2023年10月1日、青森県佐井村の海上近くから空に向かって伸びる竜巻とみられる渦の写真。空に昇る竜巻の渦がまるで綱のようであることが分かる。
オペラ御殿では、掲載する歌詞はクリティカルエディションの楽譜に記載に合わせるという原則でいるが、この行に関しては tromba 竜巻 で理解するのが最も合理的であることから、例外として tomba ではなく tromba を採用、これを 竜巻 で訳すことにする。
さて以下はまったくの推測である。
クリティカルエディションなどで tomba が採用されたのは、何よりヴェルディが自筆総譜で tomba と記していることが理由だが、しかしヴェルディは単に tromba を tomba と書き間違えたのではないだろうか。というのも、楽譜ではこの歌詞の箇所でチェロがざわめくような音型を弾いており、これが竜巻の旋風を思わせるからである。つまり、ヴェルディはここは tromba であってそれが 竜巻 であると認識していたように思われてならない。
そして、この tomba / tromba に関しても、ソレーラが《アッティラ》の台本執筆を放り投げてしまった影響がある。彼が《アッティラ》に最後まで携わっていたならば、これほど曖昧なままにならずに済んだろう。
対訳付き音楽設計図
登場人物
台本は、歌詞、ト書き、楽曲区分も、ヘレン・M.グリーンウォルト Helen M. Greenwald 校訂のクリティカルエディションに従っている。
日本語訳は極力文学的な色づけをせず、分析的な直訳にしてある。
N. 1. Preludio |
Largo 4/4 c minor |
||
(PROLOGO) | |||
N. 2. Introduzione Attila Coro |
Allegro assai vivo 4/4 f minor |
(Piazza di Aquileia)(アクイレイアの広場) (SCENA PRIMA: La notte vicina al termine è rischiarata da una grande quantità di torcie. Tutto all'intorno è un miserando cumulo di rovine. Qua e là vedesi ancora tratto tratto sollevarsi qualche fiamma, residuo di un orribile incendio di quattro giorni)(第1場: 終わりに近い 夜が【≒ 夜明け間近の夜が】 非常に多数の松明 たいまつ によって 照らされている。周囲のすべては 廃墟の 哀れむべき 山積みしたものである【≒ 辺り一面で 哀れにも 廃墟が 山になっている】。あちこちで まだ 時折 いくらかの炎が 立ち上がっているのが 見える、4日間の恐ろしい火災の残りである【炎が】) (La scena è ingombra di Unni, Eruli, Ostrogoti, ec.)(舞台は フン族、ヘルリ族、東ゴート族で 占められている) CORO DI UNNI, ERULI, OSTROGOTI, ETC.フン族、ヘルリ族、東ゴート族 など の合唱 Urli, rapine,怒号が、略奪が、 gemiti, sangue, stupri, rovine,呻き声が、血が、婦女暴行が、破壊が、 e stragi e fuocoそして 大虐殺が そして 火災が d'Attila è giuoco.アッティラの 競技だ。 Oh lauta mensa,ああ 豪華な食事よ、 che a noi sì ricco suol dispensa!それは このように豊かな大地が 私たちに 授けている! Wodan non falla.ウォダン【= オーディン,北欧神話の主神】は 誤りを犯さない。 Ecco il Valalla!ほらここが ヴァラッラ【= ヴァルハラ、オーディンの居城】だ。 |
(Piazza di Aquileia) アクイレイアはアドリア海岸の都市。452年、アッティラはアクイレイアを襲い壊滅させた。住民はアドリア海の潟に逃れ、ここにヴェネツィアを築くことになる。 d'Attila è giuoco. 英語の sport が 競技 と 娯楽 の意味があるように(本来は後者)、イタリア語の giuoco = gioco も 競技 と 娯楽 の意味がある。ここでの giuoco はどちらの意味で採っても構わない。 Wodan non falla. イタリア語で オーディン は Odino が一般的だが、ソレーラはここで北方風の Wodan を用いている。 |
(Allegro assai vivo) 4/4 F major |
T'apri agli eroi..英雄たちに 開 ひら けなさい… terra beata, tu se' per noi.幸多き地よ、おまえは 私たちのために ある。 Attila viva;アッティラ 万歳; ei la scopriva!彼が それ【= 幸多き地 女性名詞単数 = アクイレイア】を 見付けた! a poco a poco s'avanza Attila col seguito少しずつ アッティラが 近付く 従者の一行と共に Il re s'avanza,王が 近付いている、 Wodan lo cinge di sua possanza.ウォダンが 彼の能力で 彼を【= アッティラを】 取り巻いている。 Attila è in scena: tutti si prostranoアッティラは 舞台に いる: 全員が 跪く (SCENA Ⅱ: Attila condotto sopra un carro tirato dagli Schiavi, Duci, Re, ec.)(第2場: アッティラ 馬車の上で 連れて来られて【≒ 馬車に乗って 導かれて】 奴隷たち、指導者たち、王たち、など によって引かれた) Eccoci a terra,ほら 地面に 私たちが【≒ 私たちは このように 地に 伏している】、 Dio della guerra!...戦いの神よ!… Attila scende dal carroアッティラは 馬車から 降りる |
||
4/4 F major |
ATTILAアッティラ Eroi, levatevi! Stia nella polvere英雄たちよ、起き上がりなさい! 埃の中に いるがいい chi vinto muor!負かされて 死んでいる者は! Qui! circondatemi; l'inno diffondasiここだ! 私を 取り囲みなさい; 賛歌を 拡散しなさい del vincitor.勝者の【≒ 勝者を 称える声を 広げなさい】。 |
col canto の指示があり、したがって速度指示は適用されない。 |
|
Allegro 4/4 F major |
I figli d'Attila vengono e vinconoアッティラの息子たちは 来て そして 勝利を得る a un colpo sol.ただ一撃で。 Non è si rapido solco di fulmine,【それに比べれば】 雷の跡【≒ 稲妻】は それほど 素早くない、 d'aquila vol.ワシの飛行は【それほど 素早くない】。 Attila va a sedersi sopra un trono di lance e scudiアッティラは 槍と盾でできた玉座の上に 座りに行く |
臨時記号の♭がついて、実際にはほぼ変イ長調になっている。 |
|
Allegro assai moderato e grandioso 4/4 E-flat major |
CORO合唱 Viva il re delle mille foreste千の森の王よ 万歳 di Wodano ministro e profeta;ウォダノ【= オーディン】の使者【≒ 代理人】 そして 預言者よ; la sua spada è sanguigna cometa,彼の剣は 血の色をした彗星だ、 la sua voce è di cielo tuonar.彼の声は 天の 雷鳴の轟きだ。 Nel fragore di cento tempeste百の嵐の大音響の中で vien lanciando dagl'occhi battaglia;彼は 両目によって 大隊を 疾走させ 続けている【≒ 彼は 目で 大軍を 突進させ 続けている】; contro i chiovi dell'aspra sua maglia彼の ざらざらした 鎖帷子 くさりかたびら の鋲 びょう に向かって come in rupe si frangon gli acciar.岩壁でのように 剣は 砕ける【≒ 彼の 粗い鎖帷子の 鋲に 切り付けても 剣は 岩に 当たったかのように 砕けてしまう】。 |
di Wodano ministro e profeta; ministro は、高位職の代理で職を成す者を意味する。この場合、アッティラはウォダノ = オーディンの命令を地上において実行する神の代理人であることを意味している。 vien lanciando dagl'occhi battaglia; battaglia は一般的に 戦い,戦闘 の意味だが、ここでの battaglia は battaglione (軍の)大隊 と同義、大軍。またここでの lanciare 放つ は 疾走させる。彼は 目で大軍を動かしている といった文意。 |
|
N. 3. Scena e Cavatina Odabella Odabella Uldino Attila |
Allegro 4/4 G major |
(SCENA Ⅲ: Uldino, Odabella, Vergini d'Aquileia, e detti)(第3場: ウルディーノ、オダベッラ、アクイレイアの乙女たち、そして 前の場の人たち) ATTILAアッティラ scendendo (dal trono)(玉座から) 降りて Di vergini straniere異国の乙女たちの oh quale stuol vegg'io?ああ どのような 一団を 私は 見ているのか? Contro il divieto mio私の【出した】禁令に 反して chi di salvarle osò?誰が あえて 彼女たちを 救出したのか? ULDINOウルディーノ Al re degno tributo ei mi sembrò.それは【≒ 一団は 男性名詞単数】 王に 相応しい 貢ぎ物だと 私には 思われた。 Mirabili guerriere称賛に値する 勇士の女たちは difesero i fratelli...【彼女たちの】仲間たちを 守った。 ATTILAアッティラ Che sento! a donne imbelli私は 何を 聞いているのだ! 戦争に向かない女たちに chi mai spirò valor?いったい 誰が 勇気を 奮い立たせたのか? ODABELLAオダベッラ con energia活力をもって Santo di patria indefinito amor!神聖な 際限ない 祖国への愛が! |
|
Andantino 6/8 C major |
Allor che i forti corrono【君の】強者たちが【≒ 勇者たちが】 駆け付ける時に come leoni al brandoライオンのように 剣へと stan le tue donne, o barbaro,君の 女たちは、ああ 野蛮な男よ、 sui carri lagrimando.馬車の上で 泣いた 【↑】ままでいる。 Ma noi donne italiche,だが 私たち イタリアの女たちを、 cinte di ferro il seno胸を 鉄で 巻き付けられて【≒ 鉄の鎧を 胸に まとって】 sul fumido terrenoくすぶる 地表の上で sempre vedrai pugnar.戦うのを いつでも 君は 見るだろう。 ATTILAアッティラ Bella è quell'ira, o vergine,その怒りは 美しい、ああ 乙女よ、 nel scintillante sguardo.火花を散らす 眼差しの中の【その怒りは】。 |
||
Allegro 4/4 C major |
Bella è quell'ira, o vergine,その怒りは 美しい、ああ 乙女よ、 nel scintillante sguardo;火花を散らす 眼差しの中の【その怒りは】。 Attila, i prodi venera,アッティラは、勇敢な人たちを 尊敬する、 abbomina il codardo....臆病者に 嫌悪感を抱く。 O valorosa, chiedimiああ 勇ましい女よ、私に 求めなさい grazia che più t'aggrada.頼みごとを それは 最も 君に 気に入る。 ODABELLAオダベッラ Fammi ridar la spada!...私に 剣を 返させなさい!… ATTILAアッティラ La mia ti cingi!私のものを【= 私の剣を 】 身に付けなさい! ODABELLAオダベッラ Oh acciar!ああ 剣が! |
||
Allegro moderato 4/4 E-flat major |
Da te questo or m'è concesso,君によって 今 これは 私に譲られた、 o giustizia alta, divina!ああ 気高い、崇拝すべき 正義に適った行為よ、 L'odio armasti dell'oppresso君は 虐げられた人の憎悪を 武装させた coll'acciar dell'oppressor.抑圧者の剣で【≒ 虐げられた者の憎悪に 君は 虐げる者の剣を 持たせた 】。 Empia lama, l'indovina残忍な刀よ、予言しなさい per qual petto è tua punta?おまえの先端は どちらの胸に向かって いるのか? Di vendetta l'ora è giunta...復讐の時が 来ている… fu segnata dal Signor.それは 主によって 告げられた。 ATTILAアッティラ (Qual nell'alma, che struggere anela,(魂の中に それは 破壊することを 熱望している どのような、 nuovo senso discende improvviso?...新しい感情が 突然 下りているのか?… Quell'ardire, quel nobile visoあの 向こう見ずなことが、あの気高い顔が dolcemente mi fiedono il cor!)うっとりと 私の心に 傷を負わせている!) ULDINO E COROウルディーノ と 合唱 Viva il re, che alla terra rivela万歳 王よ、その者は 地上に 明らかにする di quai raggi Wodano il circonda!どのような光線で ウォダノが 彼を 取り囲んでいるのか! Se flagella è torrente che innonda;彼が 鞭打つ 時には 彼は 奔流だ それは 洪水を起こす; è rugiada se premia il valor.彼は 露 つゆ 【≒ 慰め】だ 彼が 武勲に 褒章する時には。 (Odabella e donne part[ono])(オダベッラと 女たちは 去る) |
||
N. 4. Duetto Attila e Ezio Ezio Attila |
Recitativo 4/4 (E-flat major) |
ATTILAアッティラ Uldino, a me dinanziウルディーノよ、私の前に l'inviato di Roma ora si guidi...ローマの使者が 今 案内されるように… Uldino parteウルディーノは 去る Frenatevi, miei fidi,自制しなさい、私の 信頼できる者たち【≒ 忠臣たち】よ、 udirsi deve, ma in Campidoglio poi【人は】 聞か なくてはならない、だが その後に カンピドーリオで risposta avra da noi!彼は 私たちから 返事を 受け取るだろう! |
|
Allegro assai moderato <e> grandioso 4/4 D-flat major |
(SCENA Ⅳ: Ezio ed Ufficiali romani)(第4場: エツィオ と ローマの士官たち) EZIOエツィオ Attila!アッティラよ! ATTILAアッティラ Oh il nobil messo!ああ 高貴な使者が! Ezio! tu qui? fia vero?エツィオ! 君が ここに? 本当だろうか? Ravvisi ognuno in esso誰もが 彼に 認めるように l'altissimo guerriero最も優れた 戦士を degno nemico d'Attila,アッティラの相応しい敵【である】、 scudo di Roma e vanto...ローマの盾を そして 誇りを… EZIOエツィオ Attila, a te soltantoアッティラよ、君だけに ora chied'io parlar.今 私は 話をすることを 求める。 ATTILAアッティラ Ite!行きなさい! escono tutti全員 出る (SCENA Ⅴ:Attila ed Ezio)(第5場: アッティラと エツィオ) ATTILAアッティラ La destra porgimi...右手を 私に 差し出しなさい… Non già di pace speroもう 私は 期待していない tuoi detti...君の 【↑】平和の言葉を… EZIOエツィオ L'orbe intero全部の球体を【≒ 地球のすべてを】 Ezio in tua man vuol dar.エツィオは 君の手の中に 与えることを 望んでいる |
||
Andante piùttosto mosso 4/4 F major |
Tardo per gli anni, e tremulo年齢【≒ 高齢】によって 鈍く、そして 震えている è il regnator d'Oriente;東方【≒ 東ローマ帝国】の支配者は; siede un imbelle giovine戦う気力のない若者が 座っている sul trono d'Occidente;西方【≒ 西ローマ帝国】の 玉座の上には; tutto sara dispersoすべては 駆逐されるだろう quand'io m'unisca a te...私が 君と 団結する ならば… avrai tu l'universo,君は 全世界を 手に入れるだろう、 resti l'Italia a me.君は イタリアを 私に 残すように。 |
Tardo per gli anni, e tremulo / è il regnator d'Oriente; 東ローマ帝国皇帝 マルキアヌス 392頃―457 在位 450―457 のこと。アッティラがイタリアに侵攻した452年には60歳ほどだった。 |
|
Mosso quasi allegro 4/4 F major |
ATTILAアッティラ (severo)(厳しく) Dove l'eroe più valido最も効果的な【≒ 力強い】英雄が è traditor, spergiuro,裏切者、偽証者である 【↑】所では、 ivi perduto è il popolo,そこでは 人々は 破滅する、 e l'aer stesso impuro;そして 大気ですら 不純だ; Ivi è impotente il Dio,そこでは 神は 無力だ、 Ivi codardo è il re...そこでは 王は 臆病者だ… Là col flagello mioそこに 私の鞭で rechi Wodan la fé!ウォディンが 信仰を もたらすように! |
||
Allegro moderato 4/4 F major |
EZIOエツィオ (rimettendosi)(気を取り直して) Ma se fraterno vincoloだが もし 兄弟の【ような】 固い絆を stringer non vuoi tu meco,私と 結ぶことを 君が 望まない 【↑】ならば、 Ezio, ritorna ad essereエツィオは、戻る di Roma ambasciator:ローマの使者に 【↑】なりに: dell'imperante Cesare君臨する皇帝の ora il voler ti reco...意志を 今 私は 君に 持って来ている… ATTILAアッティラ È van! Chi frena or l'impeto無駄だ! 誰が 今 勢いを 抑える【ことができる】のか del nembo struggitor?破壊する黒雲の? |
||
Allegro giusto 4/4 C major |
Vanitosi! che abbietti e dormenti自惚れの強い奴らめ! その者たちは 惨めに そして 眠っていて pur del mondo tenete la possa,なおも世界の権力を 掴んでいる、 sovra monti di polvere ed ossa亡骸と 骨の 山々の上を il mio baldo corsier volerà:私の 大胆な 駿馬 しゅんめ が 疾走するだろう: spanderò la rea cenere ai venti私は 邪悪な遺灰を 風に まき散らすだろう delle vostre superbe citta.君たちの 高慢な町の【風に】。 EZIOエツィオ Finché d'Ezio rimane la spada,エツィオの剣が 残る限り starà saldo il gran nome romano:ローマの 偉大な名前は 確固としているだろう: di Chalons lo provasti sul pianoカタラウヌムの平野で 君は そのことを 体験した quand'a fuga t'aperse il sentier.逃走の道が 君に 開けた 時に。 Tu conduci l'eguale masnada,君は いつも同じ盗賊団を 指揮している、 io comando gli stessi guerrier.私は 同じ戦士たちを 統率している。 |
||
Poco più mosso 4/4 C major |
EZIOエツィオ io comando gli stessi guerrier.私は 同じ戦士たちを 統率している。 ATTILAアッティラ delle vostre superbe citta.君たちの 高慢な町の【風に】! (partono entrambi da opposte parti)(二人とも 去る 反対側から) |
||
N. 5. Scena e Cavatina Foresto Foresto Coro |
Allegro 4/4 a minor |
(Rio-Alto nelle Lagune Adriatiche)(アドリア海の潟の中の リオ=アルト) (SCENA Ⅵ: Qua e là sopra palafitte sorgono alcune capanne, comunicanti fra loro per lunghe asse sorrette da barche. Sul davanti sorge in simil guisa un altare di sassi dedicato a S. Giacomo. Più in là scorgesi una campana appesa ad un casotto di legno, che fu poi il campanile di S. Giacomo. Le tenebre vanno diradandosi fra le nubi tempestose: quindi a poco a poco una rosea luce, sino o che - sul finir della scena - il subito raggio del sole innondando per tutto, riabbella il firmamento del più sereno e limpido azzurro. Il tocco lento della campana saluta il mattino)(第5場: あちらこちらで 基礎杭の上に いくつかの小屋が 立ち上がっている。それらの間を 舟によって支えられた長い板を通じて 行き来できる。正面の上には 同じような様子で 聖ジャコモに 奉献された 石の祭壇が 立ち上がっている。もっと向こうに 木の小屋に 吊るされた鐘が 見付けられる、それは 後には 聖ジャコモの鐘楼だった。闇は 嵐を呼ぶ雲の間で 次第に薄くなる: それから 少しずつ 薔薇色の光が、― 【この】場の終わりの頃に―突然の 太陽の光線が あらゆるところに 押し寄せるまで、大空を 最も晴れた そして 【最も】澄み切った 青を さらに美しくする。鐘の ゆっくりと打つ音が 朝に 挨拶する) CORO D'EREMITI隠者たちの合唱 (Alcuni Eremiti escono dalle capanne, e s'avviano all'altare)(何人かの隠者達が 小屋から 出る、そして 彼らは 祭壇に 近付く) Qual notte!なんという夜だ! Ancor fremono l'onde al fieroまだ 波が 荒れている 荒々しい turbo, che Dio d'un soffio suscitò.暴風雨 【↑】に、それを 神が 一息で 引き起こした。 Lode al Signor! Lode al Signor!主に 賛美を! 主に 賛美を! L'altero尊大な elemento Ei sconvolse ed acquetò.要素【≒ 高慢な海を】を 彼は ひっくり返した そして 鎮めた。 Sia torbida o tranquilla la natura,自然が 混乱していようが 穏やかであろうが、 d'eterna pace Ei nutre i nostri cor.彼は 私たちの心を 永遠の平安で 養っている。 |
(Rio-Alto nelle Lagune Adriatiche) Rio-Alto 潟には潮の満ち引きで海水が移動する川のような水路がある。Lagune Adriatiche は ヴェネト潟 を指している。ヴェネト潟の水路の中で最も土手が高い(元々いくつかの島があったという)ところがラテン語で Rivus Altus と呼ばれ、ここにヴェネト潟で最初に人々が定住し、そしてここを中心としてヴェネツィアの街が築かれた。Rivus Altus のイタリア語表記がRio-Alto、これは現在のリアルト橋のある辺りで、ここは現在もヴェネツィア本土でも比較的海抜が高い。 L'altero elemento Ei sconvolse ed acquetò. この elemento は、いわゆる 四(大)元素 elementi 火、空気、水、土 の一つである 水 を指しており、つまりは 海。il liquido elemento で 海 を意味する。 |
(Allegro) 4/4 C major |
(sorge l'aurora)(夜明けの光が 昇る) L'alito del mattin già l'aure appura.朝の息吹が 既に 微風を 清らかにしている Preghiam, preghiam! Lode al Creator!祈ろう、祈ろう! 創造主に 賛美を! FORESTO E CORO INTERNOフォレスト と 内側の【≒ 舞台裏の】合唱 Lode al Creator!創造主に 賛美を! FORESTO E CORO INTERNOフォレスト と アクイレイアの人々 (voci interne)(内側の【≒ 舞台裏の】声) Lode al Creator!創造主に 賛美を! |
L'alito del mattin già l'aure appura. appurare は (真実性を)確かめる,立証する といった意味だが、ここでは意味が合わない。そこで pura 純粋な を動詞 purare にして接頭語 a- を付けた、純粋にする,清らかにする の意味だと理解した。 |
|
Allegro moderato 4/4 C major |
(SCENA Ⅶ)(第7場) CORO D'EREMITI隠者たちの合唱 Quai voci!... Oh tuttoなんという声だ!… ああ di navicelle coperto è il flutto!...波【≒ 海】が すっかり 小船たちで 覆われている!… Dalle navicelle, che approdano a poco a poco, escono Foresto, donne, uomini e fanciulli d'Aquileia小船たちから、それらは 次第に 着岸する、フォレスト、アクイレイアの 女たち、男たち そして 子どもたちが 出る。 Son d'Aquileia!彼らは アクイレイアからの者たちだ! Certo al furor scampan dell'Unno.疑いなく フン族の猛威から 逃げたのだ。 CORO DONNE [D'] AQUILEIA, UONIMI, EREMITIアクイレイアの女たち、男たち、隠者たち の合唱 Lode al Creator!創造主に 賛美を! FORESTOフォレスト Qui, qui sostiamo! Propizio augurioここに、ここに 留まろう! 都合の良い前兆だ n'è questa croce, n'è quest'altar.私たちにとって この十字架は、私たちにとって この祭壇は。 Ognun d'intorno levi un tugurio周囲の誰もが あばら家を 上げている【≒ 建てている】 ようだ fra quest'incanto di cielo e mar.この 空と 海の 魅力【的な地】 の中で。 CORO D'AQUILEIAアクイレイア【の人々】の合唱 Lode, lode a Foresto! Tu duce nostro,称賛を、フォレストに称賛を! 君は 私たちの指導者だ、 scudo, salvezza n'eri tu sol...わたしたちにとって 君だけが 盾、救い だった。 |
||
Meno 4/4 C major |
FORESTOフォレスト Oh! ma Odabella!... Preda è del mostro,ああ! だが オダベッラが!… 彼女は 怪物の餌食だ、 serbata al pianto, serbata al duol!...涙に 取って置かれている、苦悩に 取って置かれている【≒ 彼女は 涙する状況に 強いられている、苦悩するする状況に 強いられている】!… |
||
Andantino 3/4 F-sharp major |
Ella in poter del barbaro!...彼女は 野蛮な男の力の中にある!… fra le sue schiave avvinta!彼の 奴隷女たちの中で 縛り付けられている! ahi, che men crudo all'anima,ああ、なんと より少なく 酷い 【↓】のだが 【この】魂に、 men crudo fora il saperti estinta!【なんと】 より少なく 酷いのだが 君が 死んだと 知ることは【≒ 君が死んだと 知ることの方が 私の心にとっては なんと 酷くない ことか】! Io ti vedrei fra gl'angeli私は 君を 天使たちの間で 見たいものだ almen ne' sogni allora,その時には【≒ 君が 死んだ時には】 せめて 夢の中で、 e invocherei l'auroraそして 私は 希求したいものだ 曙を dell'immortal mio dì.私の 永久の日の【≒ 私は 私の 永遠の日の始まりを 切に願いたいものだ】。 CORO D'AQUILEIAアクイレイア【の人々】の合唱 Spera!... l'ardita vergine期待しなさい!… 勇敢な乙女は forse al crudel sfuggì.おそらく 残酷な者から 逃れるだろう。 |
||
Allegro 4/4 C major |
CORO合唱 Cessato alfine il turbine,暴風雨が ついに 止まった、 più il sole brillerà.太陽が さらに 輝くだろう。 FORESTOフォレスト Sempre il sospir dell'esule,いつでも 亡命者【≒ 祖国を逃れた人】の 溜め息を sempre la patria avrà.いつでも 祖国は 受け取るだろう。 CORO合唱 Sì, il sole brillerà.そうだ、太陽は 輝くだろう。 |
||
Allegro assai moderato 4/4 C major |
FORESTOフォレスト Cara patria, già madre e reina愛する祖国は、かつて 母 そして 女王だった di possenti magnanimi figli,活力のある 高潔な 息子たちの、 or macerie, deserto e ruina,今や 残骸、荒れ地、廃墟だ、 su cui regna silenzio e squallor!その上に 静寂と 侘しい様子が 支配している! ma dall'alghe di questi marosi,だが これらの大波【の中】の 海藻から、 qual risorta fenice novella,復活した 新たになった不死鳥のように【≒ あたかも 不死鳥が 生まれ変わって 復活するかように】、 rivivrai più superba, più bellaより誇らしく、より立派に おまえは【= 祖国は】 取り戻すだろう della terra, dell'onde stupor!地上の、海の 驚きを【≒ おまえは より誇らしく、より立派に 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! CORO合唱 Dall'alghe di questi marosi,これらの大波【の中】の 海藻から、 qual risorta fenice novella,復活した 新たになった不死鳥のように【≒ あたかも 不死鳥が 生まれ変わって 復活するかように】、 rivivrai più superba, più bellaより誇らしく、より立派に おまえは【= 祖国は】 取り戻すだろう della terra, dell'onde stupor!地上の、海の 驚きを【≒ おまえは より誇らしく、より立派に 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! |
rivivrai più superba, più bella この rivivere は他動詞 取り戻す。 |
|
Più animato 4/4 C major |
FORESTO E COROフォレスト と 合唱 rivivrai della terra, dell'onde stupor!おまえは 地上の、海の 驚きを 取り戻すだろう【≒ おまえは 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! |
||
(Primo Tempo) 4/4 C major |
FORESTOフォレスト Cara patria, già madre e reina愛する祖国は、かつて 母 そして 女王だった di possenti magnanimi figli,活力のある 高潔な 息子たちの or macerie, deserto e ruina,今や 残骸、荒れ地、廃墟だ、 su cui regna silenzio e squallor!その上に 静寂と 侘しい様子が 支配している! ma dall'alghe di questi marosi,だが これらの大波【の中】の 海藻から、 qual risorta fenice novella,復活した 新たになった不死鳥のように【≒ あたかも 不死鳥が 生まれ変わって 復活するかように】、 rivivrai più superba, più bellaより誇らしく、より立派に おまえは【= 祖国は】 取り戻すだろう della terra, dell'onde stupor!地上の、海の 驚きを【≒ おまえは より誇らしく、より立派に 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! CORO合唱 Dall'alghe di questi marosi,これらの大波【の中】の 海藻から、 qual risorta fenice novella,復活した 新たになった不死鳥のように【≒ あたかも 不死鳥が 生まれ変わって 復活するかように】、 rivivrai più superba, più bellaより誇らしく、より立派に おまえは【= 祖国は】 取り戻すだろう della terra, dell'onde stupor!地上の、海の 驚きを【≒ おまえは より誇らしく、より立派に 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! |
||
Più animato 4/4 C major |
FORESTO E COROフォレスト と 合唱 rivivrai della terra, dell'onde stupor!おまえは 地上の、海の 驚きを 取り戻すだろう【≒ おまえは 地上における、海上における 驚異の地を 取り戻すだろう】! |
||
(Più mosso) 4/4 C major |
FORESTO E COROフォレスト と 合唱 della terra, dell'onde stupor!地上の、海の 驚きを【≒ 地上における、海上における 驚異の地を】! |
||
(ATTO PRIMO) | |||
N. 6. Scena e Romanza Odabella Odabella |
Andante 4/4 g minor |
(SCENA PRIMA: Bosco presso il campo d'Attila. È notte; nel vicino ruscello bulicano i raggi della luna)(第1場: アッティラの陣営の近くの森。夜である; 近くの小川の中に 月の光線が 群れ集まっている) (Odabella sola)(オダベッラ 一人) |
|
Recitativo 4/4 (g minor) |
ODABELLAオダベッラ Liberamente or piangi...今こそ 自由に 泣きなさい… sfrenati, o cor! La queta ora, in che posa抑制を解きなさい、ああ 心よ! この時間に、それにおいて 休息を han pur le tigri,持っている トラたちでさえ、 |
||
(Andante) 4/4 g minor |
io sola私は 一人 scorro di loco in loco,流れている【≒ 歩き回っている】 場所から 場所へと【≒ トラたちでさえ 休息している この夜の時間に、私は一人で あちこちを さまよっている】、 eppur sempre, sempre quest'ora attendo e invoco.それでもなお いつでも、いつでも この時間を 私は 待っている そして 私は 【この時間を】 願い求めている。 |
scorro di loco in loco, ここでの scorrere は scorrazzare と同義; 駆け回る,歩き回る。 |
|
<Andante piùttosto mosso> 3/8 B-flat major |
Oh! nel fuggente nuvoloああ! 急いで立ち去って行く 雲に non sei tu, padre, impresso?...君が 、刻まれていないか、父よ?… Cielo! ha mutato immagine!...天よ! それは 像を 変更した!… il mio Foresto è desso.彼は 私のフォレストだ。 Sospendi, o rivo, il murmure,中断しなさい、ああ 小川よ、囁きを aura, non più fremir...微風よ、もう 呻るでない… ch'io degli amati spiriti私が 最愛の霊たちの possa la voce udir.声を 聞くことが できる 【↑】ように。 |
aura, non più fremir, non più fremir... fremire = fremere 震える,呻る。 |
|
N. 7. Duetto [Odabella e Foresto] Odabella Foresto |
Allegro mosso 4/4 F major |
(SCENA Ⅱ: Foresto, in costume barbaro, e detta)(第2場: フォレスト、野蛮人の衣装で、そして 前の場の人たち) ODABELLAオダベッラ Qual suon di passi!なんという 足取りの音が! entra Forestoフォレストが 入る FORESTOフォレスト Donna!女よ! ODABELLAオダベッラ Gran Dio!偉大な神よ! FORESTOフォレスト Ti colgo alfine!ついに 私は 君を 摘み取っている【≒ 捕らえている】 ODABELLAオダベッラ Sì... la sua voce!そうだ… 彼の声だ! Tu... Tu! Foresto? Tu, l'amor mio?君なのか… 君だ! フォレストなのか? 君なのか 私の愛する人なのか? Foresto!... io manco... m'affoga... il cor?フォレストよ… 私は 死ぬ【≒ 死にそうだ】… 私を 溺死させるのか… 私の心は【≒ 私の心は… 私の息を 詰まらせているのか】? Tu mi respingi? Tu! Sì feroce?君は 私を 拒否するのか? 君が! これほどに厳しく? FORESTOフォレスト Né a me dinanzi provi terror!私を前にして それでも 君は 恐怖を 感じないのだな! ODABELLAオダベッラ (riscuotendosi)(はっとして) Ciel! che dicesti?天よ! 君は 何を 言ったのか? FORESTOフォレスト T'infingi invano:君は 虚しく ふりをしている【≒ 装っても 無駄だ】: tutto conosco, tutto spiai...私は すべてを 分かっている、私は すべてを 垣間見ていた… per te d'amore, furente, insano君への愛に、激怒して、正気でなくなって sprezzai perigli, giunto son qui!私は 危険を ものともしなかった、【だから】 私は ここに 到達した! Qual io ti trovi, barbara il sai...私が 君を どのように 見做しているか、残酷な女よ 君は そのことを 分かっている… ODABELLAオダベッラ Tu?... tu Foresto! parli così?君が?… 君が フォレストよ! 君が そのように 話すのか? |
Foresto!... io manco... m'affoga... il cor? affogare は 溺死させる だが、転じて 窒息させる,息を詰まらせる のような意味でも用いられる。 |
Andante 4/4 a minor |
FORESTOフォレスト Sì, quello io son, ravvisami,そうだ、私が その男だ、私を 見分けなさい【≒ 見なさい】、 che tu tradisci, infida:その者を 君は 裏切っている、不実な女よ: qui fra le tazze e i canticiここで カップ【≒ 酒杯】 と 賛歌の 中で sorridi all'omicida...君は 殺害者に 微笑んでいる… e la tua patria in cenereそして 灰の中の 君の祖国は pur non ti cade in mente...君の精神に 降り すら しない【≒ 灰燼に帰した 祖国を 君は 気に掛けることすら ない】… del padre tuo morente死に行く 君の父親の l'angoscia e lo squallor...激しい苦悩は そして 悲しげな様子は【≒ 死に行く 君の父親の 激しい苦悩を そして 悲しげな様子を 君は 気に掛けることすら ない】… |
||
(Poco più animato) 4/4 A magior |
ODABELLAオダベッラ Col tuo pugnal feriscimi...君の剣で 私を 傷つけなさい… non col tuo dir, Foresto;君の言葉で ではなく、フォレストよ; non maledir la misera...,哀れな女を 罵るでない… crudele inganno è questo!それは むごい 思い違いだ! Padre, ben puoi tu leggere父よ、君は よく 読む ことができる dentro il mio sen dal cielo...天から 私の胸の中を… Oh! digli tu, se aneloああ! 君は 彼に 言いなさい、私が 熱望している かどうかを d'alta vendetta il cor.高い【≒ 強い】復讐の心を。 FORESTOフォレスト la tua patria in cenere灰の中の 君の祖国は pur non ti cade in mente...君の精神に 降り すら しない【≒ 灰燼に帰した 祖国を 君は 気に掛けることすら ない】… del padre tuo morente死に行く 君の父親の l'angoscia e lo squallor...激しい苦悩は そして 悲しげな様子は【≒ 死に行く 君の父親の 激しい苦悩を そして 悲しげな様子を 君は 気に掛けることすら ない】… Né la tua patria in cenere灰の中の 君の祖国は pur non ti cade in mente...君の精神に 降り すら しない【≒ 灰燼に帰した 祖国を 君は 気に掛けることすら ない】… del padre tuo morente死に行く 君の父親の l'angoscia e lo squallor...激しい苦悩は そして 悲しげな様子は【≒ 死に行く 君の父親の 激しい苦悩を そして 悲しげな様子を 君は 気に掛けることすら ない】… |
||
Allegro moderato 4/4 C major |
FORESTOフォレスト Va. Racconta al sacrilego infame行きなさい。悪名の高い 神聖なものを汚す男に 話して聞かせなさい ch'io sol resto a sbramar la sua fame.私だけは 彼の飢えを 満足させるために 居残っていると。 ODABELLAオダベッラ Deh!... pel cielo, pe' nostri parenti,お願いだから!… 天に かけて、私たちの先祖に かけて、 deh! m'ascolta o m'uccidi, crudele!お願いだから! 私【の言うこと】を 聞きなさい さもなければ 私を 殺しなさい、残酷な者よ! FORESTOフォレスト Che vuoi dirmi?君が 私に 何を 言いたいのか? ODABELLAオダベッラ Foresto, rammentiフォレストよ、君は 覚えているか di Giuditta che salva Israele?ジュディッタ【= ユディト】のことを その者は イスラエルを 救う? Da quel dì che ti pianse cadutoその日から 彼女【= オダベッラ】が 倒れた君を 悼んだ という con suo padre sul campo di gloria,彼の父と共に 栄光の戦場の上で【≒ 栄光の戦場で 彼の父と共に 死んだ 君を 彼女が悼んだ その日から】、 rinovar di Giuditta l'istoriaジュディッタの史実を 新しくすることを Odabella giurava al Signor.オダベッラは 主に 誓った。 FORESTOフォレスト Dio!... Che intendo!神よ… 私は 何を 耳にしているのだ! ODABELLAオダベッラ La spada del mostro vedi?怪物の剣を 君は 見るか? è questa!... Il Signor l'ha voluto!それは これだ!… 主が それを 望んだ! FORESTOフォレスト Odabella... a' tuoi piedi mi prostro...オダベッラよ… 君の足元に 私は 跪く… ODABELLAオダベッラ Al mio seno or s'addoppia il valor!私の胸で 今や 勇気が 二倍になっている! |
Va. Racconta al sacrilego infame sacrilego 形容詞 神聖なものを汚す― の名詞化。伊和辞典には名詞で 涜聖者 という訳語が載っているが、あまり一般的な語ではないので採用しない。 di Giuditta che salva Israele? Giuditta とは、旧約聖書の『ユディト記』に登場するイスラエル人の寡婦ユディトのこと。攻めてきたアッシリア軍を撃退するため、敵の将軍ホロフェルネスを宴で酔いつぶれさせ、その寝首を掻いてアッシリア軍を敗走させた。 salva 歴史的現在形。 |
|
Allegro brillante 4/4 A-flat major |
ODABELLA E FORESTOオダベッラ と フォレスト Oh t'inebria nell'amplesso,ああ 抱擁に 陶酔しなさい gioia immensa, indefinita!計り知れない喜びよ、際限ない【喜びよ】! Nell'istante a noi concesso【この】瞬間に 私たちに 認められて si disperde il corso duol!荒らされた悲しみが 消散する! Ah! qui si effonde in una solaああ! ここで 広がっている ただ一つになって di due miseri la vita...二人の哀れな者の 命が… Noi ravviva, noi consola私たちに 再び活力を与えている、私たちを 慰めている una speme, un voto sol.一つの希望が、ただ一つの念願が。 |
||
Poco più mosso 4/4 A-flat major |
sì una speme, un voto sol.そうだ 一つの希望が、ただ一つの念願が。 |
||
N. 8. Scena ed Aria Attila Attila Uldino |
Largo 4/4 e minor |
(SCENA Ⅲ: Tenda d'Attila. Sopra il suolo, coperta da una pelle di tigre, è disteso Uldino che dorme. In fondo alla sinistra, per mezzo di una cortina sollevata a mezzo, la quale forma come una stanza appartata, scorgesi Attila in preda al sonno sopra letto orientale assai basso, e coperto egualmente di pelli di tigre)(第3場:アッティラの天幕。地面の上に、トラの皮で 覆われた、 ウルディーノが横たわっている その者は 寝ている。左側【≒ 上手 かみて】の奥には、半分上げられた幕を通じて、それ【= 幕】は 孤立した部屋【≒ 個室】のように 形作っている、アッティラが 認められる、眠りに 取りつかれている とても低い 東洋の寝台の上で、そして 同様に トラの皮で覆われた) Uldino dorme sdraiato sovra una pelle di tigreウルディーノは 横になって 寝ている トラの皮の上で Attila dorme su un letto orientale assai basso coperto egualmente di pelli di tigreアッティラは 寝ている とても低い 東洋の寝台の上で 同様に トラの皮で覆われた |
|
Allegro 4/4 (D-flat major) |
ATTILAアッティラ (balzando dal letto esterrefatto)寝床から 跳ね上がって 【不意の恐怖に】 捕らわれて Uldino! Uldin!ウルディーノよ! ウルディンよ! ULDINOウルディーノ Mio re!私の王よ! ATTILAアッティラ Non hai veduto?君は 見なかったか? ULDINOウルディーノ Che mai?いったい 何を? ATTILAアッティラ Tu non udisti?君は 聞かなかったか? ULDINOウルディーノ Io? nulla!私が? 何もない! ATTILAアッティラ Eppur feroceそれでもなお 凶暴に qui s'aggirava. Ei mi parlò...それは ここを うろつき回っている。彼は 私に 話した… |
||
Andante 4/4 (D-flat major) |
sua voce彼の声は parea vento in caverna!洞穴の中の 風のようだった! ULDINOウルディーノ O re, d'intornoああ 王よ、周囲の tutto è silenzio! della vigil scoltaすべては 静寂だ! 用心深い番兵の batte soltanto il piè.足音だけが 打っている。 ATTILAアッティラ Mio fido, ascolta!私の忠実な者よ、聞きなさい! |
||
<Andante> piùttosto mosso 6/8 f minor |
Mentre gonfiarsi l'anima魂が 膨らんでいるように parea dinanzi a Roma,思われた 【↑】時 ローマの前で、 m'apparve immane un veglio,私に 恐るべき 一人の老人が 姿を現した、 che m'afferrò la chioma...その者は 私の髪を 掴んだ… Il senso ebb'io travolto,私は 感情を 押し流した【≒ 動転した】、 la man gelò sul brando;手は 剣の上で 凍った; ei mi sorrise in volto,彼は 私に 顔で 微笑んだ、 e tal mi fe' comando;そして このように 私に 命令を した Di flagellar l'incarco鞭打つことの 役目を contro i mortali hai sol:君は 人間に対してのみ 有している: t'arretra!... or chiuso è il varco;後退しなさい!… 今 通路は 閉まっている; questo de' Numi è il suol!これは 神の地だ! |
||
(<Andante> piùttosto mosso) 6/8 F major |
In me tai detti suonano私の中で 響いている そのような cupi, fatali ancor,陰鬱な、害のある 【↑】言葉が、いまだに、 e l'alma in petto ad Attilaそして アッティラの胸の中の魂は s'agghiaccia pel terror.恐怖で 凍っている。 |
||
Allegro 4/4 F major |
ULDINOウルディーノ Raccapriccio... E che far pensi?私は ぞっとしている… それで 君は 何を する つもりなのか? ATTILAアッティラ (riaccendendosi)(再び火が点いて【≒ 自分を取り戻して】) Or son liberi i miei sensi!今や 私の感情は 自由だ! Ho rossor del mio spavento.私は 私の恐怖の 赤面を 持っている【≒ 私は 恐怖を感じたことを 恥じている】 Chiama i druidi, i duci, i re.ドルイドたちを、指導者たちを、王たちを 呼びなさい。 Già più rapido del vento,風よりも ずっと より速く、 Roma iniqua, volo a te.邪悪なローマよ、私は おまえに 飛んで行く。 {Uldino parte}[ウルディーノは 去る] |
Chiama i druidi, i duci, i re. druida もしくは druido ドルイド,古代ケルトの祭司。 |
|
Allegro 3/4 F major |
(SCENA Ⅳ: Attila solo)(第2場: アッティラ一人) Oltre quel limiteあの境界線の向こうで t'attendo, o spettro!君を 待つ、ああ 亡霊よ! Vietarlo ad Attila chi mai,いったい 誰が アッティラに そのことを 禁じることが chi mai potrà?できるだろうか いったい 誰が? Vedrai, se pavido君は 見るだろう、怯えて io là m'arretro,私が そこから 後退する 【↑】かどうか、 se alfin me vindice【それとも】 ついに 私を 復讐者を il mondo avrà.世界が 受け取るであろう 【↑】かどうか【≒ 世界が 私を ローマの守護者として 受け入れるであろう かどうか】。 |
se alfin me vindice 名詞 vindice は伊和辞典には 復讐者 とだけあるが、ここでの vindice は 守護者 protettore に近いと思われる。 序幕でのエツィオとの対話にある通り、アッティラはローマに鞭を打ってオーディンの信仰を広め、それによって堕落したローマを救えると自負している。彼は無能な皇帝に代わって自分がローマの守護者になるべきと考えているわけだが、しかし西ローマ帝国では既にキリスト教が広まり教皇の権威が皇帝以上に高まっていたことに気付いておらず、それゆえ第6場においてアッティラはレオーネに阻まれてしまう。レオーネがアッティラに対して Di flagellar l'incarco contro i mortali hai sol. 鞭打つことの 役目を 君は 人間に対してのみ 有している。 と告げるのは、アッティラの魂胆を見越してのことだろう。 |
|
Poco più animato 3/4 F major |
vedrai, se pavido君は 見るだろう、怯えて io là m'arretro,私が そこから 後退する 【↑】かどうか、 se alfin me vindice【それとも】 ついに 私を 復讐者を il mondo avrà.世界が 受け取るであろう 【↑】かどうか【≒ 世界が 私を ローマの守護者として 受け入れるであろう かどうか】。 |
Allegro 3/4 F major |
Oltre quel limiteあの境界線の向こうで t'attendo, o spettro!君を 待つ、ああ 亡霊よ! Vietarlo ad Attila chi mai,いったい 誰が アッティラに そのことを 禁じることが chi mai potrà?できるだろうか いったい 誰が? Vedrai, se pavido君は 見るだろう、怯えて io là m'arretro,私が そこから 後退する 【↑】かどうか、 se alfin me vindice【それとも】 ついに 私を 復讐者を il mondo avrà.世界が 受け取るであろう 【↑】かどうか【≒ 世界が 私を ローマの守護者として 受け入れるであろう かどうか】。 |
Poco più animato 3/4 F major |
vedrai, se pavido君は 見るだろう、怯えて io là m'arretro,私が そこから 後退する 【↑】かどうか、 se alfin me vindice【それとも】 ついに 私を 復讐者を il mondo avrà.世界が 受け取るであろう 【↑】かどうか【≒ 世界が 私を ローマの守護者として 受け入れるであろう かどうか】。 |
||
Più mosso 3/4 F major |
se alfin me vindice【それとも】 ついに 私を 復讐者を il mondo avrà.世界が 受け取るであろう 【↑】かどうか【≒ 世界が 私を ローマの守護者として 受け入れるであろう かどうか】。 |
||
N. 9. Finale [Primo] Uldino Leone Attila Coro |
Allegro assai vivo 2/4 C major |
(SCENA Ⅴ: Uldino, Druidi, Re e detto)(第5場: ウルディーノ、ドルイドたち、王たち そして 前の場の男【= アッティラ】) Entrano in scena Uldino, Druidi, e Reウルディーノ、ドルイドたち、王たちが 舞台に入る CORO合唱 Parla! Imponi!言いなさい! 命じなさい! ATTILAアッティラ L'ardite mie schiere勇敢な 私の部隊たちよ sorgan tutte alle trombe guerriere,戦闘的なラッパ【≒ 軍隊ラッパ】に 全員が 立ち上がるように、 è Wodan che a gloria v'appella:ウォダンだ 君たちを 栄光に 招いているのは: moviam tosto.すぐさま 移動しよう CORO合唱 Sia gloria a Wodan.ウォダンに 栄光があるように。 Allo squillo, che al sangue ne invita,【軍隊ラッパの】高く鳴る音に、それは 私たちを 血に 招く【≒ それは 私たちの情熱を 駆り立てる】、 pronti ognora i suoi fidi saran.彼の 忠実な者たちは いつでも 用意ができている。 Sia gloria a Wodan.ウォダンに 栄光があるように。 (le trombe squillano tutto d'intorno)(ラッパが 鳴り響く 辺り一帯で) |
|
Largo 4/4 C major |
CORO DI VERGINI E FANCIULLI INTERNO E LONTANO内側の【≒ 舞台裏の】 そして 遠くの 乙女たち と 子どもたちの 合唱 (succede subito ad esse [le trombe] la seguente religiosa armonia)(それら[ラッパ]に すぐに 続く 次の宗教的な調べが) Vieni... Le menti visita,来なさい… 精神を 訪れなさい【≒ 私たちの 心の中に 入りなさい】、 o spirto creator.ああ 創造の聖霊よ。 ATTILAアッティラ Che fia!何だろう! CORO DI VERGINI E FANCIULLI INTERO E LONTANO内側の【≒ 舞台裏の】 そして 遠くの 乙女たち と 子どもたちの 合唱 dalla tua fronte piovere君の額から 降りかけ fanne il vital tesor.させなさい 私たちに 生命の宝を。 ATTILAアッティラ Non questo è l'ecoこれは こだまではない delle mie trombe! Aprite, olà!私のラッパ【の音】の! 開けなさい、そら! (SCENA Ⅵ: Il campo d'Attila. Dalla collina in fondo vedesi avanzare, preceduta da Leone e da sei Anziani, processionalmente una schiera di Vergini e Fanciulli in bianche vesti recanti palme. La scena è ingombra dalle schiere d'Attila in armi. Fra la moltitudine appare Foresto con visiera calata, Odabella, e detti)(第6場: アッティラの陣営。奥の丘から、レオーネによって そして 年長者たちによって 先行されて、行列して 乙女たちの そして 子どもたちの 長い行列が 近付くのが 見える 白い服を身に付けて ヤシ【の葉】を 持って来て。舞台は 武装したアッティラの部隊によって 溢れている。群衆の中に 下した【兜の】面頬をした フォレスト、オダベッラ、そして前の場の人たちが 見える ) S'apre la tenda e vedesi avanzare Leone con schiera di Vergini e Fanciulli天幕が 開き そして 乙女たちと 子どもたちの 長い行列を伴った レオーネが 近くづのが 見える ULDINO, ATTILA E COROウルディーノ、アッティラ と 合唱 Chi viene!誰が 来るのだ! VERGINI E FANCIULLI乙女たち と 子どもたち (sempre avanzandosi)(常に 近付きながら) I guasti sensi illumina,壊れた感情を 明るくしなさい【≒ 私たちの 傷ついた心に 光を当てなさい】、 spirane amore in sen.私たちの胸の中に 愛を 吹き込みなさい。 L'oste debella e spandasi軍勢を 打ち負かしなさい そして 広がるように di pace il bel seren!平和の 素晴らしい平穏が! ATTILAアッティラ (commovendosi a poco a poco)(少しずつ 動揺して) Uldino! è quello il biecoウルディーノよ! あれは 脅すような fantasma! Il vo' sfidar! Chi mi trattiene?亡霊 【↑】だ! 私は 勇敢に立ち向かいたい! 誰が 私を 引き留めるのか? |
dalla tua fronte piovere / fanne il vital tesor. この piovere は他動詞 降りかける。 fanne = fa(fare の命令法2人称単数現在形) + ne (私たちに) L'oste debella e spandasi この oste は 軍勢。 |
|
Andante 3/4 f minor |
LEONEレオーネ Di flagellar l'incarco鞭打つことの 役目を contro i mortali hai sol.君は 人間に対してのみ 有している。 T'arretra... Or chiuso è il varco;後退しなさい… 今 通路は 閉まっている; questo de' numi è il suol.ここは 神の地だ! |
||
(Andante) 4/4 f minor |
ATTILAアッティラ Gran Dio! le note istesse偉大な神よ! 同じ 話し方だ che la tremenda vision m'impresse!恐ろしい幻が 私【の心】に 刻み込んだ のと! (Egli leva la testa al cielo sopraffatto da subito terrore. Tutti restano sorpresi e smarriti)(彼は 頭を 天に 上げる 突然の恐怖によって 打ち負かされて) |
Gran Dio! le note istesse この nota は 話し方,口調 |
|
Largo 6/8 f minor |
(No! non è sogno... che or l'alma invade!(いいや! 夢ではない… 今 魂を 襲っているものは! Son due giganti che investon l'etra...二人の巨人だ 天空を 包囲しているものは… fiamme son gl'occhi, fiamme le spade....目は 炎だ、剣は 炎だ… le ardenti punte giungono a me.燃えるような刃先が 私に 達している。 Spirti, fermate. Qui l'uom s'arretra;霊たちよ、止まりなさい。ここで 人は 後退する; dinanzi ai numi prostrasi il re!)神々の前で 王が 跪く!) CORO VERGINI E FANCIULLI乙女たち と 子どもたち の合唱 Oh dell'Eterno mira virtude!ああ 永遠なるもの【≒ 神】の徳を 見なさい! da un pastorello vinto è Golìa,羊飼いの少年【= ダヴィデ】に ゴリアテは 負けた、 da umil fanciulla l'uomo ha salute,慎ましい少女によって 人間は 無事を 手に入れている【≒ 人類は 救われた】、 da gente ignara sparsa è la fé...知らない人々によって 信仰は 流布させられた【≒ 名もない人たちによって 信仰は 広まった】… Dinanzi a turba devota e pia信仰の厚い そして 敬虔な 多数の人の前で ora degl'empi s'arretra il re!今 邪悪な者たちの王が 後退している! ULDINO E COROウルディーノ と 合唱 (Sordo ai lamenti pur de' fratelli,(仲間たちの呻き声さえも 聞く気のない 【↓↓↓】私に、 vago di sangue, di pugne solo.【ただ】血【だけ】を 熱望している、【ただ】戦いだけを 【熱望している】 【↓↓】私に、、 La flebil voce di pochi imbelli少数の 戦争に向かない者たちの かぼそい声が qual nuovo senso suscita in me?どのような 新たな気持ちを 引き起こしているのか? Qual possa è questa?.. prostrato al suoloこれは どのような力なのか?… 地に 跪いた la prima volta degl'Unni è il re!)初めて フン族の王が!) |
da umil fanciulla l'uomo ha salute, この umil fanciulla が誰を指すのかはよく分からない。fanciulla 少女 を用いているので、未婚の若い娘のはずである。 ora degl'empi s'arretra il re! empi は 邪悪な者たち と訳したが、形容詞 empio は 不信心な,神を敬わない という意味なので、ここでの empi も、キリスト教の父なる神も神の子イエス・キリストも信じない邪教の者たち という意味。 qual nuovo senso suscita in me? 合唱には suscita in me? がない。 |
|
(ATTO SECONDO) | |||
N. 10. Scena ed Aria Ezio Ezio |
Largo 4/4 B-flat major |
(SCENA PRIMA: Campo d'Ezio. Scorgesi lontana la grande città dei sette colli)(エツィオの陣地。遠くに 7つの丘の大都市【= ローマ】が 見付けられる) (Ezio solo. Egli esce tenendo in mano un papiro spiegato e mostrando dispetto)(エツィオ 一人。彼は 手に 広げられたパピルス紙【≒ 手紙】)を 持って 出る そして 苛立ちを 見せて |
|
Recitativo 4/4 (B-flat minor) |
EZIOエツィオ Tregua è cogl'Unni. A Roma,フン族と 休戦だ。ローマに、 Ezio, tosto ritorna... a te l'imponeエツィオよ、すぐさま 戻りなさい… 君に それを 命じる Valentinian. L'impone?ヴァレンティニアンが。それを 命じる だと? |
||
Allegro 4/4 (B-flat minor) |
|||
Recitativo 4/4 (B-flat minor) |
e in cotal modo,それで このような やり方で、 coronato fanciul, me tu richiami?冠を戴いた子どもである、君が 私を 呼び戻すのか? |
||
Allegro 4/4 (B-flat minor) |
|||
Recitativo 4/4 (B-flat minor) |
Ovver, più che del barbaro le mieあるいは、野蛮人の【部隊】よりも 私の schiere paventi? Un prode部隊を 君は恐れているのか? 勇敢な guerrier canuto piegherà mai sempre白髪の戦士は いったい これからもずっと 曲がる【≒ 服従する】のか dinanzi a imbelle, a concubine servo?戦う気力のない【男の妾】の、卑屈な男の妾【≒ 母親と一緒に寝るような男】の 前で? Ben io verrò! Ma qual s'addice al forte,よろしい 私は 行こう! だが それは 強者【≒ 英雄】に 相応しい、 il cui poter supremoその者の【= 強者の】 卓越した力が la patria leverà da tanto estremo!祖国を それほどたくさんの限度から【≒ そのような極限の状態から】 【救い】上げるだろう! |
dinanzi a imbelle, a concubine servo? concubine = concubino(伊和辞典には concubino で載っている)は、con 共に + cubare 横になる が語源の名詞で、一緒に寝る者 ⇒ 男性形の場合は 内縁の夫,男の妾 の意味になる。ここでの concubine は servo が男性形なので 男の妾 である(なお concubine を形容詞、servo を名詞で採るのは誤り)。 歴史上のヴァレンティニアヌス3世は、東ローマ帝国の傀儡として6歳で西ローマ帝国皇帝に就き、まだ幼かったため母プラキディアに後見された。これによって皇帝は母に強く依存する極めて幼稚で無能な男、いわゆる マザコン男 に育ってしまった。ヴェルナーの原作でもこれは強調されている。 ここでエツィオは、母親の言いなりになっている幼稚で無能な皇帝を concubine 母親と一緒に寝るようなマザコン男 と侮蔑しているのである。たったこの一言で、オペラには登場しないヴァレンティニアヌス3世の異常な性格を明らかにしている。 Ma qual s'addice al forte, addirsi a - ―に似合う。3人称単複の形でしか用いられない。 |
|
Andante 4/4 A-flat major |
Dagl'immortali culmini永遠の 頂点から belli di gloria, un giorno,美しい 栄光の【≒ 栄光に包まれた 立派な 不滅の ローマの7つの丘の 頂上から】、いつか、 l'ombre degli avi, oh sorgano:祖先の霊たちが、ああ 立ち上がるように: solo un istante intorno!ただ 一瞬だけ 周囲に! Di là vittrice l'aquilaそこから【≒ ローマの7つの丘の頂上から】 勝利を収めたワシが per l'orbe il vol spiegò...球体【≒ 地球】をあちこちと 飛行を 示した【≒ かつて 世界中を 飛び回った】… ah, Roma nel vil cadavereああ、みじめな死体にある ローマを【≒ 悲惨な屍も同然の ローマを】 chi ravvisar, ravvisar or può?今 誰が 見分けることが できるだろうか? |
Dagl'immortali culmini この culmini は、 sette colli (ローマの)7つの丘(第10番冒頭のト書きにある)の頂上 を指している。 |
|
Allegro mosso 4/4 A-flat major |
(SCENA Ⅱ: Preceduto da alcuni soldati romani, presentasi uno stuolo di schiavi d'Attila, e detto)(第2場: 何人かのローマの兵士に 先立たれて、アッティラの奴隷たちの一団が 現れる、そして 前の場の男【= エツィオ】 ) Preceduto da alcuni soldati romani presentasi uno stuolo di schiavi d'Attila何人かのローマの兵士に 先立たれて アッティラの奴隷たちの一団が 現れる EZIOエツィオ Chi vien?誰が 来ているのか? CORO DI SCHIAVI奴隷たちの合唱 Salute ad Ezio,エツィオへの挨拶を Attila invia per noi.アッティラが 送っている 私たちを介して。 Brama che a lui convengano彼は 切望している 彼のところに 揃ってやって来ることを Ezio, ed i primi suoi.エツィオが、そして 彼の 主要な者たちが【≒ 彼の重臣たちが】。 EZIOエツィオ Ite! Noi tosto al campo行きなさい! 私たちは すぐさま 【アッティラの】陣営に verrem.行くだろう。 (SCENA Ⅲ: Tra gli schiavi che partono uno è rimasto. Egli è Foresto)(第3場: 奴隷たちの間に その者たちは 去る 一人が あとに残された。彼は フォレストである) Gli schiavi partono Uno solo è rimasto: Egli è Foresto奴隷たちは 去る 一人だけが あとに残される: 彼は フォレストである EZIOエツィオ Che brami tu?君は 何を 切望しているのか? FORESTOフォレスト Ezio al comune scampoエツィオよ 公共の救済に manca la tua virtù.君の徳が 欠けている【≒ 万人が 救われるためには 君の徳が 不可欠だ】。 EZIOエツィオ (sorpreso)(驚いて) Che intendi? Oh chi tu sei?君は 何を したいと思っているのか? ああ 君は 誰だ? FORESTOフォレスト Ora saperlo è vano;今 そのことを 知ることは 無駄だ; il barbaro profano神聖なものを汚す 野蛮人が oggi vedrai morir.今日 死ぬのを 君は 見るだろう。 EZIOエツィオ Che narri?君は 何を 話しているのか? FORESTOフォレスト Allor tu deiその時 君は l'opera mia compir.私の行為を 遂行【↑】すべきだ。 EZIOエツィオ Come?どうやって? FORESTOフォレスト Ad un cenno pronte合図に対して 準備ができて stian le romane schiere,いる ローマの部隊は【≒ ローマ軍は 合図があれば すぐに動ける 準備が整っている(はずだ)】、 quando vedran dal monte彼らが 山から 見るであろう 時に un fuoco lampeggiar,輝く炎を、 prorompano, quai fiere,彼らは 襲い掛かる、野獣のように、 sullo smarrito branco!うろたえた 一味に! Or va...今こそ 行きなさい… EZIOエツィオ Di te non manco私は 君に 不足しない【≒ 私は 君の役に立てる】 saprò vedere, e oprar.私は 【(合図の)輝く炎を】 見ることが できるだろう、そして 行動する 【ことができるだろう】 (Foresto parte rapidamente)(フォレストは 去る 素早く) |
Ezio al comune scampo クリティカルエディション総譜や LUCCA社の初版ピアノ伴奏譜では Ezio の後にカンマが打たれていないが、一方でRICORDI社の旧版のみならず、19世紀半ばの出版台本においても Ezio の後にカンマが打たれて呼び掛けになっている。当時のイタリアオペラの楽譜ではカンマ無しでも呼びかけになっている例はしばしばあることから、この Ezio は呼びかけで、主語は次行の la tua virtù と理解した。 prorompano, quai fiere, ここでの prorompere 溢れ出る,吹き出す は 突進する,襲い掛かる の意味。 |
|
Allegro giusto 4/4 B-flat major |
(SCENA Ⅳ: Ezio solo)(エツィオ 一人) È gettata la mia sorte,私の運命は 投げられた、 pronto sono ad ogni guerra;私は あらゆる戦いに 用意ができている; s'io cadrò, cadrò da forte,もし 私が 強者として 倒れるであろうならば、 e il mio nome resterà.そうしたら 私の名前は 残るだろう。 Non vedrò l'amata terra私は 見るつもりはない 最愛の地が svenir lenta e farsi a brano...ゆっくりと 卒倒するのを そして 小片になるのを【≒ ゆっくりと 倒れて 粉々になるのを ≒ 徐々に 崩壊するのを】… sovra l'ultimo romano最後のローマの男に tutta Italia piangerà.全イタリアが 泣くだろう。 |
È gettata la mia sorte, sorte には 占い,籤 くじ の意味もあり、占いや籤で結果を記した複数の木片などを投げて一つ選んで決めたやり方を、エツィオの運命にかけた表現。どのような運命が待ち受けているか分からないが事は始まった、という意味。 sovra l'ultimo romano l'ultimo romano 最後のローマ人 は、ローマ帝国末期の何人かの英雄に対して用いられる尊称だが、特にアエティウスを指すことが多い。実際、彼がヴァレンティニアヌス3世に殺されて以降西ローマ帝国は一気に弱体化し滅亡に至る。 |
|
N. 11. Finale [Secondo] Odabella Foresto Uldino Ezio Attila Coro |
Allegro maestoso 4/4 F major |
(Campo d'Attila come nell'Atto Ⅰ, apprestato a solenne convito. La notte è vivamente rischiarata da cento fiamme che irrompono da grossi tronchi di quercia preparati all'uopo)(アッティラの陣営 第1幕と同様の、厳かな饗宴の 準備された。夜は 百の炎によって 生き生きと 照らされている それは 使用に 用意された 大きな ナラの丸太から 押し入っている (SCENA Ⅴ: Unni, Ostrogoti, Eruli, ec., Mentre i guerrieri cantano, Attila, seguito dai druidi, dalle sacerdotesse, dai duci e re, va ad assidersi al suo posto, Odabella gli è presso in costume d'Amazone)(第5場: フン族、東ゴート族、ヘルリ族、等々、戦士ちが 歌っている 間に、アッティラは、ドルイドたちによって、巫女たちによって、指導者たちによって そして 王たちによって 付いて来られて【≒ ―たちを 従えて】、 彼の席に 座りに来る、オダベッラは アマゾネスの衣装を身に付けて 彼の傍にいる) CORO DI GUERRIERI, UNNI, OSTROGOTI, ERULI戦士たち、フン族、東ゴート族、ヘルリ族 の合唱 Del ciel l'immensa volta,天の 巨大な丸天井は、 terra, ai nemici tolta,地は、敵たちから 奪った、 ed aer che fiammeggiaそして 大気は それは 燃え上る son d'Attila la reggia.アッティラの 王宮だ。 La gioia delle conche酒杯の喜びが or si diffonda intorno;今 周囲に 拡散するように; Mentre i guerrieri cantano Attila, seguito dai druidi, dalle sacerdotesse, dai duci, dai re, va ad assidersi al suo posto, Odabella gli è presso di membra e teste tronche戦士たちが アッティラを 称えている間に、アッティラは、ドルイドたちによって、巫女たちによって、指導者たちによって そして 王たちによって 付いて来られて【≒ ―たちを 従えて】、 彼の席に 座りに来る、オダベッラは 彼の傍にいる di membra e teste tronche切断された 四肢と 頭を godremo al nuovo giorno!私たちは 心から喜ぶだろう 新しい日に【≒ 明日は ローマ兵どもの 頭と手足を切り落として 楽しもう】! |
La gioia delle conche conca は伊和辞典では タライ,桶、水を入れる壺 などの意味があるが、ここではお椀型の大きな盃を意味している。 |
Recitativo 4/4 (F major) |
(SCENA Ⅵ: Ezio col seguito, Uldino, Foresto, che nuovamente in abito guerriero si frammischia alla moltitudine, e detti)(第6場: エツィオ 従者の一行と共に、ウルディーノ、フォレスト、その者は 再び 戦士の服を 身に付けて 群衆に 紛れ込んでいる、そして 前の場の人たち) di tromba annuncia l'arrivo degli ufficiali romani preceduti da Uldino)ラッパが ローマの士官たちの到着を 知らせる ウルディーノによって 先行された) ATTILAアッティラ (alzandosi)(立ち上がって) Ezio, ben vieni! Della tregua nostraエツィオよ、君は よく 来ている【≒ ようこそ】! 私たちの休戦の fia suggello il convito.印であるように 饗宴が。 EZIOエツィオ Attila, grandeアッティラよ、偉大で in guerra sei, più generoso ancoraある 君は 戦いで、なお一層 気前が良い con ospite nemico.敵の客と 一緒で。 |
di tromba annuncia l'arrivo 冒頭の di はピアノ伴奏譜では無くなっており、誤植かもしれない。 |
|
Largo a tempo 4/4 d minor |
CORO DI DRUIDIドルイドたちの合唱 si avvicinano ad Attila e gli dicono sottovoceアッティラに近づき そして 彼に 小声で 言う O re; fataleああ 王よ;致命的 è seder collo stranio:である 【あの】異国の者と一緒に 座るのは: ATTILAアッティラ E che?それで 何だと? CORO DI DRUIDIドルイドたちの合唱 Nel cielo空に vedi adunarsi nembi.君は 黒雲が 集まっているのを 見る。 Di sangue tinti... Di sinistri augelli血に染まった… 不吉な鳥の misto all'infausto grido不幸をもたらす叫びに 混ざって dalle montagne urlò lo spirto infido!山々から 信用の置けない亡霊が 泣き叫んだ! ATTILAアッティラ Via, profeti del mal!出て行け、不幸の預言者たちめ! CORO DI DRUIDIドルイドたちの合唱 Wodan ti guardi.ウォダンが 君を 守るように。 ATTILAアッティラ alle sacerdotesse巫女たちに Sacre figlie degl'Unni,フン族の 聖なる娘たちよ、 percuotete le cetre, e si diffonda琴を 鳴らしなさい、そして 拡散するように delle mie feste la canzon gioconda.私の宴の 陽気な歌が。 |
||
Allegro assai moderato 6/8 C major |
(tutti si assidono. Le sacerdotesse, schieratesi nel mezzo, alzano il seguente canto)(全員が 座る。 巫女たちは、中央に 整列し、次の歌を 張り上げる) CORO DI SACERDOTESSE巫女たちの合唱 Chi dona luce al cor?... Di stella alcuna誰が 心に 光を 与えるのか?… どの星の dal cielo il vago tremolar non pende;美しい瞬きも 天から 垂れていない【≒ 降って来ない】; chi dona luce al cor?...誰が 心に 光を 与えるのか?… Non raggio amico di ridente luna笑っている月の 優しい光線は alla percossa fantasia risplende...打ちのめされた幻想には【≒ (私たちの) 打ち砕かれた夢には】 光り輝か 【↑】ない… Ma fischia il vento, rumoreggia il tuono,それどころか、 風が ヒューヒューと音を出し、雷鳴が 轟き、 sol dan le corde della tromba il suono.ただ 竜巻の綱 つな【≒ 渦】が 音を 上げている ばかりだ。 (In quel mentre un improvviso e rapido soffio procelloso spegne gran parte delle fiamme. Tutti si alzano per natural moto di terrore. Silenzio e tristezza generale. Foresto è corso ad Odabella. Ezio s'è avvicinato ad Attila)その瞬間に 突然の そして 急速な 嵐の突風が 炎の大部分を 消す。全員が 立ち上がる 恐怖の 当然な 体の動きで【≒ 全員が 恐怖に駆られて 自ずと 立ち上がる】。全体の静寂と陰鬱。フォレストは オダベッラに 駆け付ける。エツィオは アッティラに 近付く) ODABELLA, FORESTO, ULDINO, EZIO, ATTILA E COROオダベッラ、フォレスト、ウルディーノ、エツィオ、アッティラ と 合唱 Ah!ああ! |
sol dan le corde della tromba il suono. ここでの tromba については ⇒ tromba か tomba か を参照。 ここでの tromba は、ラッパではなく、竜巻。corde は corda 綱 の複数形。竜巻が地上から上空へと円柱状に渦巻く部分は縒った綱のようになっており、これを corde と表現している。したがって le corde della tromba は 竜巻の渦 を意味する。 |
|
Andantino 3/8 e minor |
CORO合唱 Lo spirto de' monti山々の精霊が ne rugge alle fronti,私たちに向かって 咆哮いを発している、 le quercie fiammanti燃えている ブナを sua mano coprì.彼の手が 覆った。 Terrore, mistero恐怖が、神秘が sull'anima ha impero...魂の上に 支配権を 持っている【≒ 心を 支配している】… EZIOエツィオ (ad Attila)(アッティラに) Rammenta i miei patti,私の取り決めを 思い出しなさい、 con Ezio combatti;エツィオと共に 戦いなさい; del vecchio guerriero老戦士の la man, no, non sprezzar.手を、いいや、見下げるでない。 FORESTOフォレスト (ad Odabella)(オダベッラに) O sposa, t'allieta,ああ 妻【≒ 愛する人,許婚】よ、喜びなさい、 è giunta la meta,到達点が 届いた【≒ 私たちは 目標とするものに 達した】、 de' padri lo scempio父たちの虐殺の vendetta otterrà.それは【= 到達点は】 復讐を 得るだろう。 ODABELLAオダベッラ (fra sé)(一人で【≒ 独白】) (Vendetta avrem noi私たちは 復讐を 手に入れるだろうか per mano de' suoi?彼のものたちの【≒ フォレストと ウルディーノの】 手によって? Non fia che egli cada彼が【= アッティラが】 倒れることは pel loro tradir.彼らの【= フォレストと ウルディーノの】 裏切ることによって 【↑】では ないだろう。 ATTILAアッティラ (ad Ezio)(エツィオに) M'irriti, o Romano...君は 私を いらいらさせている、ああ ローマの男よ… sorprendermi è vano,私を驚かせることは 無駄だ、 oh credi che il ventoああ 君は 信じているのか 風が m'infonda terror?私に 恐怖を 呼び覚ます 【↑】と? ODABELLAオダベッラ non fia che egli cada彼が【= アッティラが】 倒れることは pel loro tradir.彼らの【= フォレストと ウルディーノの】 裏切ることによって 【↑】では ないだろう。 FORESTOフォレスト de' padri lo scempio父たちの虐殺の vendetta otterrà.それは【= 到達点は】 復讐を 得るだろう。 EZIOエツィオ del vecchio guerriero老戦士の la man, no, non sprezzar.手を、いいや、見下げるでない。 CORO合唱 Ah, terrore, mistero恐怖が、神秘が sull'anima ha impero...魂の上に 支配権を 持っている【≒ 心を 支配している】… stuol d'ombre vagantiさまよう霊の 一団が nel buio apparì.闇の中に 現れた。 FORESTOフォレスト La tazza là mira,あそこのカップ【≒ 酒杯】を 見なさい、 ministra dell'ira,怒りの使者である【≒ 私たちの怒りを 代わりに 遂行する】 【↓↓】、ウルディーノが al labbro dell'empio,邪悪な者の 唇に、 Uldin l'offrirà.それを 提供するだろう。 ODABELLAオダベッラ Nel giorno segnato,決定されている日に、 a Dio l'ho giurato,それを 私は 神に 誓った、 è questa la spadaこれが 剣だ che il deve colpir.)それは 彼を 打たなくてはならない。) EZIOエツィオ Rammenta i miei patti,私の取り決めを 思い出しなさい、 con Ezio combatti;エツィオと共に 戦いなさい; del vecchio guerriero老戦士の la man, no, non sprezzar.手を、いいや、見下げるでない。 Decidi. Fra poco決心しなさい。間もなく non fora più loco.もはや 可能性は なくいなるだろう。 (Del barbaro altiero(尊大な野蛮人の già l'astro dispar.)星は 既に 消え去った。) ATTILAアッティラ M'irriti, o Romano...君は 私を いらいらさせている、ああ ローマの男よ… sorprendermi è vano,私を驚かせることは 無駄だ、 Di nembi e tempeste黒雲と 嵐に s'allietan mie feste ...私の祝宴は 喜んでいる… (Oh rabbia! non sento(ああ 怒りだ! 私は 感じていない più d'Attila il cor!)もはや アッティラの心を!) ULDINOウルディーノ (fra sé)(一人で【≒ 独白】) (Dell'ora funesta(死をもたらす時の l'istante s'appresta...瞬間が 近づいている… Uldino, paventi?ウルディーノよ、おまえは 恐れているのか? Breton non sei tu?おまえは ブルターニュ人では ないのか? O il cor più non t'angeそれとも もはや お前の心を 悩ませていないのか la rea servitù?)邪悪な過酷は? (il cielo si rasserena)(空は 雲がなくなる) |
Rammenta i miei patti, 序幕でエツィオがアッティラに tutto sara disperso / quand'io m'unisca a te... 私が 君と 団結する ならば すべては 駆逐されるだろう… とクーデターを持ち掛けたこと。 |
|
(Andantino) 3/8 E major |
ODABELLE,FORESTO, ULDINO, EZIO, ATTILA E COROオダベッラ、フォレスト、ウルディーノ、エツィオ、アッティラ と 合唱 L'orrenda procella sparì,恐ろしい嵐は 消えた、 qual lampo sparì.稲光が 消えた ように 【あっという間に】。 Di calma novella新たになった 落ち着きで il ciel si vestì!!空は 覆われた【≒ 再び 空は 穏やかになった】!! |
Di calma novella / il ciel si vestì!! si vestire di - ―で覆われる。 |
|
Allegro 4/4 C major |
ATTILAアッティラ (riscuotendosi)(我に返って) Si riaccendan le quercie,ナラが 再び火を点けられるように。 (gli schiavi eseguiscono il cenno)(奴隷たちが 指示を 遂行する) d'intorno si rannodi la danza ed il giuoco...周りで 踊りと 演技が 再び結ばれるように【≒ 再開されるように】… Sia per tutti festivo tal giorno.このような日が 皆にとって 楽しげで あるように。 Porgi, Uldino, la conca ospital!提供しなさい、ウルディーノよ、歓待する酒杯を! FORESTOフォレスト sottovoce ad Odabellaオダベッラに 小声で Perché tremi?... s'imbianca il tuo volto.なぜ 君は 震えているのか?… 君の顔は 白くなっている。 ATTILAアッティラ ricevendo la tazza (da Uldino)(ウルディーノから) 酒杯を 受け取って Libo a te, gran Wodano, che invoco!君に 乾杯する、偉大なウォダノよ、その者を 私は 祈願する! ODABELLAオダベッラ (trattenendolo)(彼を 引き留めて) Re ti ferma! è veleno!王よ やめなさい! それは 毒だ! CORO合唱 (furibondo)(怒り狂って) Che ascolto!私は 何を 聞いているのだ! ATTILAアッティラ furente激怒して Chi il temprava?だれが それを【= 毒を】 混ぜたのか? ODABELLAオダベッラ (Oh momento fatal!)(ああ 致命的な瞬間だ!) FORESTOフォレスト (avanzandosi con fermezza)(精神の強さをもって【≒ 毅然として】 進み出て) Io!私だ! ATTILAアッティラ (ravvisandolo)(彼を 見分けて) Foresto!フォレスト! FORESTOフォレスト Sì, quel che un giornoそうだ いつか la corona strappò dal tuo crine...君の頭髪から 王冠を もぎ取った 【↑】ところの者だ… ATTILAアッティラ (traendo la spada)(剣を 抜き出して) Ah, in mia mano caduto se' al fine,ああ 私の手中に 君は ついに 落ちた、 ben io l'alma dal sen ti trarrò.よく【≒ しっかりと】 私は 君の胸から 魂を 引き抜こう。 FORESTOフォレスト con scherno嘲笑をもって Or t'è lieve...現状では 君には たやすい… ATTILAアッティラ (fermandosi a tai parole)(そのような言葉に 【怒りで】 震えて) (Oh mia rabbia! Oh mio scorno!)ああ 私の 怒りだ! ああ 私の 恥辱だ! ODABELLAオダベッラ Re, la preda niun toglier mi può.王よ、一人も 私の獲物を 奪うことは できない。 Io t'ho salvo... il delitto svelai...私は 君の 命を助けた… 私は 犯罪を 暴いた… Da me sol fia punito l'indegno.私によってのみ 責められるべき男は 罰せられるだろう。 ATTILAアッティラ (compiacendosi del fiero atto)(【彼女の】 大胆な行為を 喜んで) Io tel dono! Ma premio più degno,私は 君に 彼を 与える! だが より相応しい褒美が、 mia fedele, riserbasi a te:私の 忠実な女よ、君に 取っておかれている: tu doman salutata verrai君は 明日 挨拶されるだろう dalle genti qual sposa del re.人々から 王の妻として。 |
||
Allegro 2/2 E-flat major |
Oh miei prodi! un solo giornoああ 私の 勇者たちよ! 一日だけ chiedo a voi di gioia e canto,私は 君たちに 喜びと 歌を 求める、 tuonerà di nuovo intorno再び 周囲で 轟音を立てるだろう poscia il vindice flagel.それから 復讐の鞭が。 Ezio, in Roma annuncia intantoエツィオよ、その間に ローマで 報告しなさい ch'io de' sogni ho rotto il vel.私は 夢のヴェールを 破った【≒ 休戦協定を 破棄した】 と。 |
||
(Un poco più animato) 2/2 E-flat major |
ODABELLAオダベッラ (con represso impeto a Foresto)(抑えられた激情をもって フォレストに) Frena l'ira che t'inganna;怒りを 抑えなさい それは 君を 欺いている【≒ 誤解させている】; fuggi, salvati, o fratello.急いで立ち去りなさい、逃れなさい、ああ 兄【≒ 愛する人】よ。 Me disprezza, me condanna,私を 軽蔑しなさい、私を 非難しなさい、 di' che vile, infame io son...言いなさい 【私は】 卑怯である、私は 卑劣である と… Ma deh fuggi... Al dì novelloけれども お願いだから 急いで立ち去りなさい… 新たになった日には【≒ 明日には】 avrò tutto il tuo perdon.私は すっかり 君の許しを 得るだろう。 ATTILAアッティラ sì, ch'io de' sogni ho rotto il vel.そうだ、私は 夢の覆いを 破った と。 Ezio, in Roma annuncia intantoエツィオよ、その間に ローマで 報告しなさい ch'io de' sogni ho rotto il vel.私は 夢のヴェールを 破った【≒ 休戦協定を 破棄した】 と。 Oh miei prodi! un solo giornoああ 私の 勇者たちよ! 一日だけ chiedo a voi di gioia e canto,私は 君たちに 喜びと 歌を 求める、 tuonerà di nuovo intorno再び 周囲で 轟音を立てるだろう poscia il vindice flagel.それから 復讐の鞭が。 FORESTOフォレスト (ad Odabella)(オダベッラに) Parto, sì, per viver solo私は 去る、そうだ、一人で生きるために fino al dì della vendetta:復讐の日まで: ma qual pena, ma qual duoloだが どのような苦悩が、どのような悲嘆あg a tua colpa si può dar?...君の罪に 与えられ得るのだろうか? EZIOエツィオ (Chi l'arcan svelar potea?誰が 秘密を 暴くことが できたのか? Chi fidarlo a core amante?誰が それを 恋人の心に 信託する【≒ 信頼して託す】 【ことができた】のか? Va, ti pasci, va, ti bea,行きなさい、君は 糧としなさい、行きなさい、楽しみなさい、 fatal uom, di voluttà.)害のある男よ、喜びを。) ULDINOウルディーノ (Io gelar m'intesi il sangue...(私は 私の血が 凍っているのを 感じた… Ah! chi tradir poteane omai?ああ! その時 誰が 私たちを 裏切ることが できたのか? Me dal fulmine, dall'angue,私を 雷から ヘビから、 tu salvasti, o pro' guerrier...)君は 救った、ああ 勇敢な戦士よ… CORO合唱 Oh re possente, il cor riscuoti...ああ 力強い王よ、心を 奮起させなさい【≒ 奮い立たせなさい】… ah, torna al sangue, torna al fuoco!ああ、血に 戻りなさい、 炎に 戻りなさい。 Su punisci, su percuotiさあ 罰しなさい、さあ 打ちのめしなさい questo stuolo di traditor!..この 裏切者の一団を!… |
||
Poco più mosso 2/2 E-flat major |
ODABELLAオダベッラ Ma fuggi... Al dì novelloそして 急いで立ち去りなさい… 新たになった日には【≒ 明日には】 avrò tutto il tuo perdon.私は すっかり 君の許しを 得るだろう。 FORESTOフォレスト Ah, del rimorso che t'aspettaああ、後悔の それは 君を 待っている duri eterno il flagellar.鞭打つこと【≒ 責め苦】が 永遠に 続くように【≒ 君を 待ち受ける 後悔の責め苦が 永遠に 続くがいい】。 ULDINOウルディーノ (Ah generoso! m'avrai(ああ 高潔無私な男【= フォレスト】よ! 君は 受け取るだろう sempre fido al tuo voler.)ずっと 君の意志に対する 私の忠実を。) EZIOエツィオ (Sì, ma doman su te festanteそうだ、しかし 明日には お祭り騒ぎの君を Ezio in armi piomberà.)エツィオが 武装して 襲い掛かるだろう。) CORO合唱 No, non più scherno, non più giocoいいや、もう 嘲りの的に、もう 遊びに【≒ おもちゃに】 noi sarem de' numi lor.彼らの神々の 私たちは ならないだろう【≒ 私たちは もう 彼らの神々に 嘲られ 弄ばれる者に なるつもりはない】。 |
||
[ATTO TERZO] | |||
N. 12. Scena, Romanza, Terzetto, e Quartetto Finale Ultimo Odabella Foresto Uldino Ezio Attila Coro |
Largo 4/4 G major |
(Bosco come nell'Atto Ⅰ, il quale divide il campo di Attila da quello di Ezio. È il mattino)(森 第1幕と同様の、それは 分け隔てている アッティラの陣営を エツィオのそれ【= 陣営】から。朝である。) (SCENA PRIMA: Foresto solo, indi Uldino)(第1場: フォレスト一人、それから ウルディーノ) |
|
Recitativo 4/4 (G major) |
FORESTOフォレスト Qui del convegno è il loco...ここが 集合の場所だ… qui dell'orrende nozzeここで 身の毛もよだつ 結婚式の l'ora da Uldino apprenderò...時を ウルディーノから 私は 聞くだろう… Nel petto frenati, o sdegno!...胸の中で 自制しなさい、ああ 怒りよ!… A tempo, come scoppiar di tuono,然るべき時に、雷鳴の 爆発することのように proromperò.私は 溢れ出よう【≒ 雷鳴のように 感情を 爆発させよう】 ULDINOウルディーノ Foresto!フォレストよ! FORESTOフォレスト Ebben!それで! ULDINOウルディーノ Si move動いて行く【≒ 向かっている】 ora il corteo giulivo,今 陽気な行列が、 che d'Attila alla tendaそれは アッティラの天幕へと accompagna la sposa.花嫁に 同行する。 |
||
Allegro 4/4 G major |
FORESTOフォレスト Oh mio furore!ああ 私の怒りよ! |
||
(Recitativo) 4/4 (G major) |
Uldino va!... Ben saiウルディーノよ 行きなさい!… 君は よく 分かっている di là della foresta森の向こうで in armi stanno le romane schiere...武装した ローマの部隊が いる… Ezio te attende sol, perché sull'empioエツィオが 君だけを 待っている、邪悪な者に piombino tutte.すべて【の部隊】が 突然襲い掛かるために。 (Uldino parte)(ウルディーノは 去る) (SCENA Ⅱ: Foresto solo)(第2場: フォレスト一人) Infida!不実な女め! Il dì che brami è questo:これが 日だ それを 君が 切望している: vedrai, come ritorni a te Foresto!君は 見るだろう、どのように フォレストが 君の元に 戻るか! |
||
Andante 4/4 c minor |
Che non avrebbe il misero哀れな男は 何を per Odabella offerto?オダベッラに 贈ら 【↑】なかったのだろうか【≒ この哀れな男が オダベッラに 与えなかったものが あるだろうか】? Fino, deh, ciel perdonami,すらも、ああ、天よ 私を 容赦しなさい、 fin l'immortal tuo serto.永久の 君の冠 すらも 【私は 贈っただろうに】。 Perché nel viso ai perfidiどうして 背信者に 【君の】顔の中の diffondi il tuo seren?君の 眼差しの輝きを 発散させたのか? |
||
(Andante) 4/4 C major |
Perché fai pari agl'angeliどうして 君は 天使たちと 同等に するのか chi sì malvagio ha il seno.あれほどの 悪意のある胸を 持っている者を。 |
||
Allegro 4/4 F major |
(SCENA Ⅲ: Detto, ed Ezio)(第3場: 前の場の男【= フォレスト】、そして エツィオ) EZIOエツィオ che viene frettoloso dalla parte del campo romanoその者は 慌ただしく 来る ローマの陣営のあたりから Che più s'indugia!.. attendono何と さらに ぐずぐずしていることか!… 待っている i miei guerrieri il segno...私の戦士たちは 合図を… proromperan, quai folgori,襲い掛かる、稲妻のように、 tutti sul mostro indegno.全員が 恥ずべき怪物に。 FORESTO ED EZIOフォレスト と エツィオ Non un, non un de' barbari野蛮人たちの一人も ai lari tornerà.故郷に 戻らないだろう。 |
proromperan, quai folgori, ここでの prorompere は 突進する,襲い掛かる。 |
|
Andante mosso 4/4 F major |
CORO INTERNO内側の【≒ 舞台裏の】合唱 Entra fra i plausi, o vergine,賞賛の中に 入りなさい、ああ 乙女よ、 schiusa è la tenda a te;天幕が 君のために 開かれた; entra, ed il raggio avvolgati入りなさい、そして 輝きが 君を 包むように dell'esultante re.喜びに酔った王の【輝きが】。 Bello è il tuo volto e candido,君の顔は 美しく そして 純粋だ、 qual mattutino albor,早朝の曙光のように、 al dolce spirto è simile【君の】 愛情のこもった心は ora di sol che muor.太陽の時間 【↑】と同様だ それは 死ぬ【≒ 日没の頃のようだ】。 FORESTOフォレスト Tu l'odi? È il canto pronubo!...君は あれが 聞こえるか?; 花嫁に付き添う人たちの歌だ! EZIOエツィオ Funereo diverrà.それは 葬式の【歌】に なるだろう。 FORESTOフォレスト Ah scellerata!!ああ 酷い女だ!! EZIOエツィオ Frenati.自制しなさい。 Lo esige l'alta impresa.高い【≒ 大きな】企ては それを【= 自制することを】 必要とする。 FORESTOフォレスト Sposa è Odabella al barbaro!...オダベッラが 野蛮人の花嫁だと!… Al suo voler s'è resa!!...彼女は 彼の【= アッティラの】の望みに 身を委ねた!!… EZIOエツィオ Le tue gelose smanie君の 嫉妬深い 動揺を frena per poco ancor.抑えなさい もう しばらくの間。 |
||
Allegro molto mosso 4/4 F major |
FORESTOフォレスト Tutti d'Averno i demoniすべての 地獄のデーモンたちが m'agitan mente e cor!私の精神と心を 掻き乱している! (SCENA Ⅳ: Odabella, sempre in arnese da Amazone, con manto regale e corona, che viene spaventata dal campo barbaro, e detti)(第4場: オダベッラ、今でもやはり アマゾネスの服装を身に付けて、王【族】のマントと 冠を付けて、その者は 来る 恐怖に満ちて 野蛮人の野営から、そして 前の場の人たち) Odabella che viene spaventata dal campo d'Attilaオダベッラ その者は 来る 恐怖に満ちて アッティラの野営から ODABELLAオダベッラ Cessa! deh, cessa... ah lasciami,止めなさい、お願いだから、止めなさい… ああ 私を 放しなさい、 ombra del padre irata...怒った 私の父の霊よ… Lo vedi? Io fuggo il talamo...君は それを 見たのか? 私は 新婚の床を 逃れている… Sarai.... tu...... vendicata...君は… 復讐… されるだろう… FORESTOフォレスト È tardo, o sposa d'Attila,遅い、ああ アッティラの花嫁よ、 è tardo il tuo pentir.君の後悔は 遅い。 EZIOエツィオ Il segno... il segno... affrettati,合図を… 合図を… 急ぎなさい、 o ci farem scoprir.さもなければ 私たちは 身を晒させてしまうだろう【≒ 見付かってしまうだろう】。 ODABELLAオダベッラ Tu qui! Foresto... Ascoltami,君が ここに! フォレストよ… 私の【の言うこと】を 聞きなさい、 pietà del mio martir.私の苦悩に 哀れみを。 FORESTOフォレスト È tardi.遅い。 |
フラットが臨時記号でいくつもついて、調性はかなり動く。 | |
Adagio 4/4 D-flat major |
ODABELLAオダベッラ Te sol, te sol quest'anima君だけを、君だけを この魂は ama d'immenso amore,愛している 無限の愛で、 credimi, è puro il core,信じなさい 私の、心は 清らかだ、 sempre ti fui fedel.これまでずっと 君に 誠実だった。 FORESTOフォレスト Troppo mi seppe illudereあまりにも多く 私を 騙すことが できる il tuo mendace detto!!君の 偽りの言葉は Ed osi ancor d'affettoそして なおも 情愛について あえて parlare a me, crudel.私に 語るのか、酷い者よ。 EZIOエツィオ Tempo non è di lagrime,【今は】 涙の時間ではない、 non di geloso accento;嫉妬深い 調子【≒ 言葉】の【時間】ではない; s'affretti l'alto evento,高い【≒ 大きな】事件を 急ぎなさい、 finché ne arride il ciel.空が 私たちに 微笑む までに。 |
||
Allegro 4/4 A-flat major |
(SCENA Ⅴ: Attila, che va diritto ad Odabella, e detti)(第5場: アッティラ、その者は オダベッラに 向かって行く、そして 前の場の人たち) ATTILAアッティラ Non involarti, seguimi!消え去るでない、私に ついて来なさい! perché fuggir chi t'ama?どうして 逃れるのか 君を愛している者から? accorgendosi d'Ezio e Forestoエツィオと フォレストを 認めて Che mai vegg'io? Qui perfidi私は いったい 誰を 見ているのか? ここに 裏切者たちが venite a nuova trama? Perfidi!新たな陰謀に 来ているのか? 裏切者どもめ! |
||
Allegro assai moderato 4/4 B-flat major |
ad Odabellaオダベッラに Tu, rea donna, già schiava, or mia sposa;君、有罪の女よ; かつては 奴隷女だった、今や 私の花嫁だ; a Forestoフォレストに tu, fellon, cui la vita ho donata;君、裏切者よ、その者に 命を 私は 与えた【≒ その者の 命を 私は 許してやった】; ad Ezioエツィオに tu, Romano, per Roma salvata,君、ローマの男よ、救われたローマのために【≒ ローマが 守られるために】、 congiurate tuttor contro me?...君たちは いまだに 私に 謀反を企てているのか?… Traditori... su voi sanguinosa裏切者たちめ… 君たちに 血まみれの piomberà la vendetta del re.王の復讐が 突然襲い掛かるだろう。 ODABELLAオダベッラ Nella tenda, al tuo letto d'appresso,天幕の中で、君の寝床の傍で、 minacciosa e tuttor sanguinante威嚇的に そして いまだに 血の滴って di mio padre sta l'ombra gigante...いる 私の父の 巨大な亡霊が… trucidato ei cadeva per te!!彼は 君によって 虐殺されて 倒れた!! FORESTOフォレスト Di qual dono beffardo fai vanto?どのような 人を馬鹿にした贈り物を 君は 自慢するのか【≒ 君は 私の命を救ったなどという 人を馬鹿にした恩赦を 自慢するのか】? Tu m'hai patria ed amante rapita;君は 私の 祖国と 恋人を 奪った; in abisso d'affanni la vita,人生を 苦悩の奈落に hai, crudele, cangiato per me!君は、残酷な者よ、私について 変えた! ATTILAアッティラ Rea donna!有罪の女め! EZIOエツィオ Roma hai salva?... e del mondo lo sdegno.君が ローマを 救う?… そして 世界の怒りだ【≒ そうすれば 世界を 怒らせる】。 Che t'imprechi superna vendetta?それが【≒ 世界の怒りが】 君に 神の復讐を 呪っている【≒ 願っている】の【ではない】か? Ed il sangue che inulto l'aspettaそして 血を それは 復讐を受けぬまま それを【≒ 神の復讐を】 待っている nol rammenti?... Paventane, o re.君は それを 思い出さないのか【≒ 神の復讐が 君の いまだ復讐を受けていない血を 待ち望んでいることを 君は 忘れているのか】?… そのことについて 恐れなさい、ああ 王よ。 ODABELLAオダベッラ Maledetto sarebbe l'amplesso抱擁は 呪われるであろうに che me sposa rendesse del re.私を 王の花嫁に する ところの【抱擁は】。 FORESTOフォレスト O tiranno ... con morte soltantoああ 暴君よ… ただ 【君の】死をもってのみ può frenarsi quest'odio per te.私は 君に対する この憎悪を 鎮めることが できる。 EZIOエツィオ De' delitti colmasti già il segno;君は 罪の限界を 既に いっぱいにした; pende l'ira del cielo su te.天の怒りが 君の上に 垂れ下がっている【≒ 君に 覆いかぶさっている】。 |
Tu, rea donna, già schiava, or mia sposa; ここでの reo は 有罪な。罪というのは、彼女がアッティラとの初夜の床から逃げ出したことを指す。 Di qual dono beffardo fai vanto? ここでの dono 贈り物 は、アッティラの la vita ho donata 私は 命を 与えた に対応している。 tu, Romano, per Roma salvata, この per Roma salvata, は、次行にかかると理解した。 Roma hai salva?... e del mondo lo sdegno. / Che t'imprechi superna vendetta? クリティカルエディション総譜ではこの2行の間はピリオドで区切られている。一方初演の頃の出版台本では e del mondo lo sdegno, / Che t'imprechi superna vendetta? とカンマで繋がっている。ここではクリティカルエディションの記載に従って前の行をピリオドで止めているが、後の行の Che は疑問詞ではなく関係代名詞と理解する。 avere salov - ―を救う。 Maledetto sarebbe l'amplesso / che me sposa rendesse del re. 主節で条件法現在、従属節で接続法過去が用いられており、実際にはそうではない という言い方をしている。 De' delitti colmasti già il segno; 旧版では colmasti ではなく valcasti 超えた になって いる。LUCCA社の初版ピアノ伴奏譜では colmasti。 |
|
Poco più animato 4/4 B-flat major |
ODABELLAオダベッラ (scaglia lungi da sé la corona)(冠を 自分から 遠くに 投げつける) ATTILAアッティラ (ad Odabella)(オダベッラに) Tu, rea donna, già schiava, or mia sposa;君、有罪の女よ; かつては 奴隷女だった、今や 私の花嫁だ; ODABELLAオダベッラ Di mio padre sta l'ombra gigante...私の父の 巨大な亡霊が いる… ATTILAアッティラ (a Foresto)(フォレストに) tu, fellon, cui la vita ho donata;裏切者よ、その者に 命を 私は 与えた【≒ その者の 命を 私は 許してやった】; FORESTOフォレスト Tu m'hai patria ed amante rapita;君は 私の 祖国と 恋人を 奪った; ATTILAアッティラ (ad Ezio)(エツィオに) tu, Romano, per Roma salvata,君、ローマの男よ、救われたローマのために【≒ ローマを 救うために】、 congiurate tuttor contro me?...君たちは いまだに 私に 謀反を企てているのか?… EZIOエツィオ Paventane, o re.そのことについて 恐れなさい、ああ 王よ。 pende l'ira del cielo su te.天の怒りが 君の上に 垂れ下がっている【≒ 君に 覆いかぶさっている】。 ODABELLAオダベッラ Maledetto sarebbe l'amplesso抱擁は 呪われるであろうに che me sposa rendesse del re.私を 王の花嫁に する ところの【抱擁は】。 FORESTOフォレスト o tiranno ... con morte soltantoああ 暴君よ… ただ 【君の】死をもってのみ può frenarsi quest'odio per te.私は 君に対する この憎悪を 鎮めることが できる。 |
||
Ancora più animato 4/4 B-flat major |
ODABELLAオダベッラ che me sposa rendesse del re.私を 王の花嫁に する ところの【抱擁は】。 FORESTOフォレスト può frenarsi quest'odio per te.私は 君に対する この憎悪を 鎮めることが できる。 EZIOエツィオ pende l'ira del cielo su te.天の怒りが 君の上に 垂れ下がっている【≒ 君に 覆いかぶさっている】。 ATTILAアッティラ piomberà la vendetta del re.王の復讐が 突然襲い掛かるだろう。 (s'ode internamente il rumore dell'improvviso assalto dal campo d'Attila)(内側で【≒ 舞台裏で】 アッティラの陣営のところへの 突然の攻撃の騒音が 聞こえる ) CORO INTERNO内側の【≒ 舞台裏の】合唱 con rumore di spada(剣の物音と共に) Morte... morte... vendetta!...死を… 死を… 復讐を!… ATTILAアッティラ Qual suono!何の音だ! FORESTO ED EZIOフォレスト と エツィオ Suono è questo che segna tua morte.これは 音だ 君の死を 告げる ところの。 ATTILAアッティラ Traditori!裏切者たちめ! (Foresto va per trafiggere Attila, ma è prevenuto da Odabella, che lo ferisce esclamando:)(フォレストは アッティラを 刺し貫くために 行く、しかし 彼は オダベッラによって 先を越される、その者は 彼【= アッティラ】を 傷つける 感情を露にして叫びながら) FORESTO ED EZIOフォレスト と エツィオ Decisa è la sorte...運命は 決着をつけられた… I soldati romani colla spada alla mano entrano precipitosamente in scena手に剣を持った ローマの兵士たちが 入る まっしぐらに 舞台に ODABELLAオダベッラ ferendo Attilaアッティラを 傷つけながら Padre!... ah padre, il sacrifico a te.父よ!… ああ 父よ、私は 彼を 君に 捧げる。 (abbraccia Foresto)(フォレストを 抱擁する) ATTILAアッティラ morente(死にかけて) E tu pure, Odabella!そして 君も【なのか】、オダベッラよ! cade死ぬ (SCENA ULTIMA: Guerrieri romani, che irrompono da ogni parte, e detti)(最終場: ローマの戦士たち、その者たちは あらゆる側から 押し入る、そして 前の場の人たち) FORESTO, EZIO E COROフォレスト、エツィオ と 合唱 Appien sono vendicati完全に 恨みを晴らされた Dio, popoli e re!!!神は、人々は そして 王は!!! ODABELLAオダベッラ padre!父よ! |
||
APPENDICI | |||
N. 12a. Romanza alternativa Foresto | |||
N. 12a. Romanza [Foresto] |
Recitativo 4/4 (C major) |
FORESTOフォレスト Infida!...不実な女め!… Fatta certezza è il dubbio...疑念は 確信になった… I giuri suoi smentiva!.. oh tradimento!彼女は 彼女の誓いが 偽りであることを示した!… ああ 裏切りだ! |
|
Andante 3/4 A-flat major |
Straziata dal dolor l'alma mi sen[to!...]私は 感じている 私の魂が 苦悩によって 切り苛まれているのを[!…] |
||
Andante 4/4 (C major) |
Sventurato! alla mia vita不幸な男だ! 私の命には Sol conforto era l'amor!ただ 愛だけが 慰めだった! Sventurato! or disparita不幸な男だ! 今や 消え失せた ogni gioia è dal mio cor!あらゆる喜びが 私の心から! Ah!.. perché le diede il cieloああ!… どうして 天は 彼女に 与えたのだ tanto fiore di beltá;あれほど多くの 美の花を; se ad un cor dovea far velo彼女が ヴェールを していたに違いないのならば 心に nido reo d'infedeltá.不実の 邪悪な巣を【≒ 彼女が 心の中に持つ みにく 不実の塊を 覆い隠していたに 違いないならば】。 |
||
N. 12b. Romanza alternativa Foresto | |||
N. 12b. Romanza [Foresto] |
Adagio 4/4 D-flat major |
FORESTOフォレスト Oh dolore! ed io viveaああ 苦悩だ! そして 私は 生きた sol pensando alla spergiura,ただ 偽りの宣誓をした女のことを 思いながら、 fin l'esiglio a me parea,亡命生活でさえ 私には 思われた、 men deserto e men crudel.より少なく 見捨てられて そして より少なく つらい【≒ 亡命生活ですら 私には それほど孤独でもなく それほどつらくもないと 思われた】。 Ogni colpo di sventura不幸の あらゆる打撃が mi feria, ma non nel cor...私を 傷つけた、だが 心の中までは 【傷つけ】なかった… Ah, fui beato in quell'amoreああ、私は 最高に幸せだった あの愛の中で come un angelo nel ciel.天の天使のように。 |
come un angelo nel ciel. come は2箇所で siccome に代っている。 |
参考資料
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|