ロッシーニ御殿 ホームページ
オペラ御殿 旧御殿のメインメヌー
最新更新 2024年05月18日
無断転載 厳禁
GIOACHINO ROSSINI
OTELLO
初演 1816年12月4日,ナポリ,フォンド劇場
First performance
台本作家 フランチェスコ・ベリオ・ディ・サルサ 1765―1820
Librettist Francesco Berio di Salsa 1765-1820
原作 ジャン=フランソワ・デュシス Jean-François ducis の 『オテロ Othello』 1776年出版。ウィリアム・シェイクスピア 1564 - 1616 の悲劇『オセロー Othello』(1602)の翻案。
男爵ジョヴァンニ・カルロ・コセンツァ Giovanni Carlo Cosenzaがトレドの自邸で私的に上演した『オテッロ』 1813年10月7日、ハッピーエンド。
Original
《オテッロ》は、ロッシーニのナポリ時代の前半(1815年から1818年頃まで)におけるオペラセリアの傑作である。極めて高度な歌唱を盛り込みつつ、劇的表現にも優れ、また当時としては極めて先進的な主人公の自殺という悲劇的結末を取り入れ、かつナポリ時代の後期のような音楽の巨大化がまだ見られずまとまりが良い。19世紀前半のイタリアオペラの最大のヒット作の一つであり、卓越した歌手が揃えば素晴らしい音楽を堪能することができる。
作曲
《オテッロ》の作曲については、少ないながらもいくらか情報が残されているが、しかしよく分からない点もある。
《オテッロ》の制作に関する最初の記録は、1815年10月18日付で、ナポリの劇場群の興行主であるドメニコ・バルバイヤは、ナポリの劇場委員会の委員長、ノヤ公爵ジョヴァンニ・カラーファ 1715―1768 に宛てた手紙で、ロッシーニがフィオレンティーニ劇場での復活祭向けのオペラと、サン・カルロ劇場で来年10月か11月に上演されるオペラを書く予定であると書いている。後者が《オテッロ》になり、この頃はまだ題材が決まっていなかったこと分かる。
これと同様の内容を、ロッシーニは1815年10月27日付でナポリからボローニャの母アンナに宛てた手紙に書いている。この手紙ではサン・カルロ劇場向けの新作は 相応しいバレエのある悲劇 Tragica con Balli Analoghi とある。
ところが1816年2月12日から13日にかけての夜、サン・カルロ劇場が火災で焼け落ちてしまった。当時ロッシーニはローマで《セビリアの理髪師》の作曲と準備に勤しんでいるころだった。
焼け落ちたと言っても被害はもっぱら木造部分だったようで、再建は極めて早く、僅か11か月後の1817年1月12日には再開場のこけら落としが行われた。しかし《オテッロ》初演には間に合わず、初演はフォンド劇場(現在のメルカダンテ劇場)で行われた。フォンド劇場は500席規模の中劇場で、バレエ付きのオペラを上演するには舞台が狭いためバレエは外されたと思われる。
さてフィオレンティーニ劇場の復活祭向けのオペラとは《新聞》のことである。しかしその初演は復活祭から半年も遅れ、1816年9月26日のことだった。というのもロッシーニは1815年12月から1816年2月までローマに滞在し、ここで急遽依頼を受けた新作オペラ、つまり《セビリアの理髪師》が2月20日にアルジェンティーナ劇場で初演されており、ナポリに戻るのが大幅に遅れてしまったからだった。このことが《オテッロ》の初演に影響を与えることになる。
ロッシーニは1816年3月初頭にナポリに戻った(3月5日付の母アンナへの手紙でナポリに戻ったことを知らせている)。そして1816年4月24日、王族の結婚式のための機会作品であるカンタータ《テーティとペレオの結婚》を初演する。そのちょうど3週間後の5月15日付でボローニャの母アンナに宛てた手紙で、ロッシーニは《オテッロ》に触れている。
私が書いている最中のオテッロは素晴らしい作品になるでしょう、そして確実に私の評判を増大させるでしょう、
L'Otello che sto scrivendo Srà Magnifico e Certamente accrescerà la mia riputazione,
もしかしたらこれが、私的な文書とはいえ、《オテッロ》の名前が出た最初の記録かもしれない。
その6日後の5月21日付のやはり母アンナ宛の手紙では、1か月半くらい後にオテッロが舞台に掛けられるだろう、と書いている。1か月半後というと7月上旬である。
しかしこの後ロッシーニから母に宛てた手紙には、《オテッロ》の作曲についてほとんど触れられていない。というのも、ロッシーニは本来復活祭向けの新作のはずだった《新聞》の作曲を優先せざるを得なくなったからである。
《新聞》の初演時の印刷台本の表紙には 1816年 夏のシーズンに Nella Estate dell'anno 1816 とある。劇場の夏のシーズンは一般的に6月、7月あたりで稀に8月もあるが、9月の末を夏のシーズンということはまずない。おそらく《新聞》は7月末か8月あたりでの上演が予定されていたのだろう。6月18日付の母への手紙で『《新聞》と題されたオペラ・ブッファをフィオレンティーニ劇場のために書いています』と書いているのは、これと符合する。ところが、《新聞》は旧作からの再利用の多い作品(新たに書き下ろした曲の方が少ない)だったにもかかわらず、作曲は難航し、ロッシーニが作曲を終えたのが8月末で(8月27日付の母への手紙で『オペラ・ブッファは書き終え、すぐに舞台に掛かるだろう』と書いている)、さらに何らかの理由で結局初演が9月26日までずれ込んでしまったのだろう。
《新聞》初演の13日前、1816年9月13日付でバルバイアからノヤ侯爵カラーファに宛てられた手紙で《オテッロ》の名前が公式に現れる。
私はベリオ侯爵殿の詩による2冊のオテッロと題された劇を送ります、それらが最上位の認可を得るために検閲局に提出されるよう閣下が指示していただきたく存じます
Rimetto due libri del Dramma intitolato Otello poesia del Signor Marchese Berio, che E.V. piacerà ordinare siano spinti alli rispettosi Censori per la superiore approvazione.
つまり台本が検閲を通るよう催促している。許可は9月25日に下りた。
ここから1か月以上、《オテッロ》制作についての公式な情報はない。
11月5日付でバルバイアからカラーファに宛てられた手紙で、バルバイアはロッシーニの怠慢を強く非難している。要約すると、ロッシーニがナポリに戻った3月からこの11月までの間の8か月間、許し難い振舞いをしていた、彼は10月10日までに《オテッロ》の制作を保証すると名誉にかけて明言したにもかかわらず、10月末にはそれを11月10日には提出できると改めて約束したが、それも信用し難い、というのは筆写職人によると、ロッシーニはロマンツァの歌の概要と、導入の二重唱の概要しか作曲していないというからだ。ロッシーニが脳で想像力を掻き立てても、ベリオ侯爵の素晴らしい詩に音楽を付けるのは無理だろう、というもの。
この手紙は《オテッロ》の制作を論じる時には必ずと言ってよいほど引用されるものだが、果たしてこのバルバイアの手紙をそのまま鵜呑みにしてよいのだろうか。というのも、ロッシーニは10月8日付で母に宛てた手紙では『私は《オテッロ》に苦労しています、難しい仕事ですが、しかし疑いなく効果的【≒ 観客に受ける】です Sto travagliando nell'Otello Cosa dificile ma sicuro dell'effetto.』 と書いており、さらに10月29日付の手紙では『私の《オテッロ》は上手く行っています。こんなに苦労したことはありませんでした! Il Mio Otello è a buon Porto Io non mi ricordo d'aver faticato tanto!』 とすら書いている。その8日後のバルバイアの手紙とあまりにも違い過ぎる。
ロッシーニとバルバイアと、どちらの言い分を正しいと採るかは、意見が割れるだろうが、バルバイアの手紙が監督官庁の長に宛てた報告書のようなものであるのに対し、ロッシーニの手紙が母に書いたものであるという違いを考慮しなくてはならないだろう。
ともかくも、ロッシーニにとって、オペラ史上かつて類を見ない劇的な悲劇を描くことは、経験がなく非常に苦労を要したことは容易に推測できる。
この状況を踏まえるならば、ロッシーニはベリオと密に連絡を取って、慎重に長期に作曲を進めて行ったと考えた方が納得できる。《オテッロ》という作品の革新性からすれば、ロッシーニが10月29日付の手紙に書いた『こんなに苦労したことはなかった!』という発言は、本音なのだろうと思わざるを得ない。
台本
台本を手掛けたフランチェスコ・ベリオ・ディ・サルサは、職業台本作家ではなく、スペイン由来のナポリの貴族だった。たいへんな芸術愛好家だった。彼はジョヴァンニ・シモーネ・マイールの《コーラ》(1815年)の台本も提供、さらにロッシーニの《リッチャルドとゾライデ》(1818年)の台本も手掛けている。
ベリオの台本は、シェイクスピアの『オセロー』とは相当異なる。舞台はキプロス島には移らずヴェネツィアの。デズデーモナは絞殺ではなく刺殺される。またイアーゴは策謀の人物に徹している。
ベリオは台本を書くにあたってシェイクスピアの『オセロー』を直接の原作としていない。彼が主に参考にしたのは、ジャン=フランソワ・デュシス Jean-François ducis 1733 - 1816 の翻案と、そのイタリア語訳である。近年でこそ
※普請中※
初演
初演は1816年12月4日、ナポリのフォンド劇場で行われた。
オテッロ
Otelloアンドレア・ノッツァーリ
Andrea Nozzariテノール
tenore
デズデーモナ
Desdemonaイザベラ・コルブラン
Isabella Colbranソプラノ
soprano
エルミーロ
Elmiroミケーレ・ベネデッティ
Michele Benedettiバス
basso
ロドリーゴ
Rodrigoジョヴァンニ・ダヴィド
Giovanni Davidテノール
tenore
イアーゴ
Iagoジュゼッペ・チッチマッラ
Giuseppe Ciccimarraテノール
tenore
エミーリア
Emiliaマリア・マンツィ
Maria Manziソプラノ(メッゾソプラノ)
soprano (mezzosoprano)
ルーチョ
Lucioニコラ・モッロ
Nicola Molloテノール
tenore
ドージェ (ヴェネツィア共和国の総督)
Dogeガエターノ・キッツォラ
Gaetano Chizzolaテノール
tenore
ゴンドラ漕ぎ
Gondlieroニコラ・モッロ
Nicola Molloテノール
tenore
アンドレア・ノッツァーリ 1775―1832 は、サン・カルロ劇場の看板テノールの一人。当時既に40代後半の大ベテランだった。ロッシーニ作品の初演では、《エリザベッタ》でのレイチェステル、《テーティとペレオの結婚》でのジョーヴェ、《オテッロ》のタイトルロール、《アルミーダ》でのリナルド、《リッチャルドとゾライーデ》でのアゴランテ、《エルミオーネ》でのピッロ、《湖の美女》でのロドリーゴ、《マオメット2世》でのパオロ・エリッソ、そして《ゼルミーラ》でのアンテーノレを歌っている。「テノーレ・バリトナーレ」といわれる、太い声に加えてファルセットーネで高い音域を歌える歌手で、実際バリトン役を歌ったことも少なくない。
イザベラ・コルブラン 1784―1845 は、当時のナポリのプリマドンナ。1813年春からサン・カルロ劇場を拠点とした。ロッシーニ作品の初演に多く関わり、《エリザベッタ》のタイトルロール、《オテッロ》でのデズデーモナ、《アルミーダ》のタイトルロール、《エジプトのモゼ》のエリーチャ、《リッチャルドとゾライーデ》でのゾライーデ、《エルミオーネ》のタイトルロール、《湖の美女》でのエレナ、《マオメット2世》でのアンナ、そして《ゼルミーラ》のタイトルロールを歌った。《ゼルミーラ》初演直後、1822年3月16日にロッシーニと結婚した。
ジョヴァンニ・ダヴィド 1790-1864 は当時の若い世代のトップテノール。ロッシーニのオペラなどの初演では、《イタリアのトルコ人》のナルチーゾ(ミラノ,スカラ座)、《テーティとペレオの結婚》のペレオ、《オテッロ》のロドリーゴ、《リッチャルドとゾライデ》のリッチャルド、《湖の美女》のジャコモ5世、《ゼルミーラ》のイーロを歌った。なお《パルミーラのアウレリアーノ》のタイトルロールも、本来ダヴィドが創唱するはずだったが病気でキャンセルになった。
ジュゼッペ・チッチマッラ 1790―1836 は、1816年から26年までナポリの諸劇場で、その後ウィーンの劇場で、主として脇役、準主役として活躍したテノール。ロッシーニのオペラの初演では、《オテッロ》のイヤーゴ、《アルミーダ》のゴッフレードとカルロ、《エジプトのモーゼ》のアロンネ、《リッチャルドとゾライデ》のエルネスト、《マオメット2世》のコンドゥルミエーロを歌った。彼は後年、歌唱指導の教師としても名を馳せた。
ミケーレ・ベネデッティ 1778―? はロレート生まれのバス。1810年から四半世紀に渡ってナポリで活躍した。ロッシーニのオペラの初演では、《オテッロ》のエルミーロの他、《アルミーダ》 1817 のイドラオテ、《エジプトのモセ》 1818 のタイトルロール、《リッチャルドとゾライデ》 1818 のイルカーノ、《エルミオーネ》 1819 のフェニーチョ、《湖の美女》1819 のドゥグラス、《ゼルミーラ》 1822 のレウチッポに出演、またカンタータ《感謝》初演でエルピーノを歌った。
※普請中※
近代の上演
20世紀における最初の《オテッロ》の上演は、おそらく1954年11月23日、米国、ニューヨークのアメリカン・オペラ・ソサエティ American Opera Society による演奏会形式上演だったと思われる。オテッロがトマス・ヘイウォード Thomas Hayward、デズデーモナがジェニー・トゥーレル Jennie Tourel、ロドリーゴがアルバート・ダ・コスタ Albert D aCosta、イアーゴがトマス・ロモナコ Thomas LoMonaco、エミーリアがキャロル・ブライス Carol Brice、エルミーロがチェスター・ワトソン Chester Watson、ゴンドラ漕ぎがチャールズ・アンソニー Charles Anthony。指揮はアーノルド・ギャムソン Arnold Gamson。この時の録音は残されていないようだ。ニューヨーク・タイムズの公演評ではジェニー・トゥーレルのデズデーモナを最も評価しているが、この時代のテノールたちがロッシーニの音楽に苦労したことは容易に想像ができる。
アメリカン・オペラ・ソサエティは1957年に《オテッロ》を再演している。多くの資料で10月10日(あるいはその近辺の日付)となっているが、アメリカン・オペラ・ソサエティの10月の演目はドニゼッティの《アンナ・ボレーナ》で、12月10日が正しいと思われる。オテッロのヘイウォードとエルミーロのワトソンの他はすべて歌手が入れ替わっており、デズデーモナがアイリーン・ファーレル Eileen Farrell、ロドリーゴがローレン・ドリスコル Loren Driscoll、イアーゴがヒュー・トムソン Hugh Thompson、エミーリアがマーサ・リプトン Martha Lipton、ゴンドラ漕ぎがジュゼッペ・バラッティ Giuseppe Baratti。指揮は1954年と同じくギャムソン。この時の演奏会形式上演は録音が残されており、総演奏時間が90分強と半分近くカットが入ったことが分かる。またイアーゴを歌ったトムソンはバリトンである。
1960年にはRAIローマで放送用の録音が作られている。オテッロがアゴスティーノ・ラッザーリ Agostino Lazzari、デズデーモナはヴィルジニア・ゼアーニ Virginia Zeani、ロドリーゴはヘルベルト・ハント Herbert Handt、イアーゴがジュゼッペ・バラッティ Giuseppe Baratti、エミーリアがアンナ・レイノルズ Anna Reynolds、エルミーロがフランコ・ヴェントリーリャ Franco Ventriglia、ルーチョがアルフレード・ノービレ Alfredo Nobile、ドージェとゴンドラ漕ぎがトンマーゾ・フラスカーティ Tommaso Frascati。指揮はフェルナンド・プレヴィターリ。会場はアウディトリウムRAI・デル・フォロ・イタリコ Auditorium Rai del Foro Italico だろう。放送用録音なので当然録音が残っている。ゼアーニのデズデーモナはともかく、ロドリーゴのハントがまったく非力で、またラッザーリは高い音をあらかた避けて19世紀後半的なオテッロ観で押し通しており、ロッシーニの音楽の要求に応えられていない。
この後、ラッザーリとゼアーニのコンビで《オテッロ》の上演が各地で行われた。まずそれらをまとめておく
ローマ歌劇場が1964年の春のシーズンに上演している。もしかしたらこれが舞台上演での蘇演かもしれない。
同歌劇場は1964/65年のカーニヴァルシーズンにほぼ同じキャストで再演している。この二つの上演では、当時最も優れたロッシーニテノールだったピエトロ・ボッタッツォ Pietro Bottazzo がロドリーゴを歌った。
1965年8月25日、ペーザロのロッシーニ劇場で上演。デズデーモナを歌ったヴィルジニア・ゼアーニの公式サイトの Roles & Performances のページに記載がある。ゼアーニ、ラッザーリ、ボッタッツォに加えて、イアーゴがアンジェロ・モーリ Angelo Mori、エルミーロがフランコ・ヴェントリーリャ。カルロ・フランチ指揮ボローニャ市立歌劇場管弦楽団と合唱団。2公演。
1966年10月には、ベルリン・ドイッチェオーパーで上演があったようだが、インターネット上に信頼できる情報が見付からなかった。ラッザーリ、ゼアーニ、ボッタッツォ、アンナ・レイノルズ Anna Reynolds、ヴェントリーリャ、指揮のフランチなど、ローマ歌劇場公演に出演した人たちばかりである。
Central Opera Service Bulletin - May - June, 1968によると、1968年6月25,28日,7月2日、米国ニューヨーク州ニューヨーク・シティでのリンカーン・センター・フェスティヴァルで上演があった。Central Opera Service Bulletin - January - February, 1968によると、この夏のリンカーン・センター・フェスティヴァルはローマ歌劇場の主催によるものだったそうで、オテッロがアルド・ボッティオン Aldo Bottion に代わっているものの、たしかにゼアーニ、指揮のフランチはローマ歌劇場公演と共通している。
その7年後、1975年1月にローマ歌劇場が《オテッロ》を再演している。ボッティオン、ゼアーニ、指揮のフランチは1968年のリンカーン・センター・フェスティヴァルでの公演と同じ。
年が少し戻って、1967年にはアイルランドのウェクスフォード・オペラで上演された(月日調査中)。断片的な録音を聞くことができる。ここでもロドリーゴをボッタッツォが歌っている。またオテッロの二コラ・タッジェル Nicola Tagger(ユーゴスラヴィア生まれ、イスラエル育ちのテノール) が大健闘しており、第2幕の三重唱の冒頭はようやくロッシーニの要求になんとか応えた水準に達している。
前述のリンカーン・センター・フェスティヴァルでの上演の一か月後には、同じニューヨーク州の北部、ジョージ湖の湖畔で行われたレイク・ジョージ・オペラ・フェスティヴァルで英語訳詞で上演された。ジョージ湖オペラは今日サラトガ・スプリングズを拠点とするサラトガ・オペラのこと(2011年に改称)で、同団の上演史のページに記載がある。Central Opera Service Bulletin - May - June, 1968によると、上演日は1968年7月13,19,21,23日,8月8,16,24日。歌手名は姓のみ記載されており役名がないが、ローレンス・ボイル Lawrence BoylL がオテッロ、デイヴィッド・ロイド David Lloyd がイアーゴ、おそらくフランシス・バイブル Frances Bibleがデズデーモナ、マーシャ・ボールドウィン Marcia Baldwin がエミーリア、というところまでは推測できた。
同年5月には、パリで演奏会形式上演があったようだが、インターネット上では信頼できる情報が見付からなかった。
1980年3月にはイタリア、シチリア島、パレルモのマッシモ劇場で上演されている。オテッロがフィリップ・ラングリッジ Philip Langridge、デズデーモナがマルゲリータ・リナルディ Margherita Rinaldi、ロドリーゴがブルース・ブルワー Bruce Brewer、イヤーゴがエツィオ・ディ・チェーザレ Ezio di Cesare、エミーリアがヌッチ・コンド Nucci Condò、エルミーロがアゴスティーノ・フェリン Agostino Ferrin、ドージェがピエトロ・タランティーノ Pietro Tarantino、ルーチョがジャンニ・プッドゥ Gianni Puddu、ゴンドラ漕ぎがベルナルディーノ・ディ・ドメニコ Bernardino di Domenico。指揮はアレッサンドロ・シチリアーニ Alessandro Siciliani。1980年3月11,14,16,20,23,26,28,30日の8公演。客席録音が残っている。オテッロが英国人、ロドリーゴが米国人と、ロッシーニ・ルネサンス初期の様相を示し始めている。
1986年冬にはヴェネツィアのフェニーチェ劇場で118年ぶりの上演が行われた。オテッロのカーティス・レイヤムはバロック系のテノール(ちなみにアフリカ系)。ここでもオテッロとデズデーモナが米国人、ロドリーゴがアルゼンチン人と、新大陸の歌手が重用されている。
※普請中※
1820年ローマ稿 リエート・フィーネ(ハッピー・エンド)の《オテッロ》
ロッシーニが《オテッロ》の幕切れをリエート・フィーネ(ハッピー・エンド)に変えたという話は比較的知られていると思われるが、その詳細についてはあまり知られていないだろう。
ローマのアルジェンティーナ劇場で1819/1820年のカーニヴァル・シーズンに《オテッロ》が上演されることになったる(以下、1820年ローマでの《オテッロ》 と表記)。この時はオテッロがジョヴァンニ・ダヴィド(ナポリでの初演ではロドリーゴだった)、デズデーモナがジローラマ・ダルダネッリ Girolama Dardanelli (《エリザベッタ》初演のマティルデ)、ロドリーゴがアルベリコ・クリオーニ Alberico Curioni 1785-1832 と、かなり強力な歌手たちであった。
当時はオペラが初演の後、他の劇場で上演される際に様々な調整がなされるのは普通のことだった。歌手たちのために、曲の差し替えも含めた音楽の調整をするのは、たいていは座付きの作曲家の仕事だった。しかしこの1820年ローマでの《オテッロ》 ではロッシーニ自身が手直ししている。これはデズデーモナを歌ったダルダネッリのためだったと推測されている。
ローマでの上演ということで、本来の悲劇的結末がローマの検閲を通らないことが予想された。教皇のお膝下のローマでは、主人公が自殺する幕切れを検閲が拒否したとしても不思議ではない。ロッシーニがリエート・フィーネの幕切れに応じたのは、聴衆の求めというよりは、検閲対策のためだと思われる。
この時の改変は印刷台本からほぼ分かっている。
第1幕 第4番 デズデーモナとエミーリアの二重唱を削除した上で、《エリザベッタ》第1幕 第2番 合唱とエリザベッタのカヴァティーナ Esulta, Elisa, omai / Quant'è grato all'alma mia を歌詞を多少変えて挿入、デズデーモナのカヴァティーナ(登場のアリア)とする。
第5番 合唱と第1幕フィナーレ のうち、冒頭の合唱を削除。この1820年のローマでの上演では女声合唱がいなかったと考えられている。
第2幕 第6番 ロドリーゴのアリア、削除。続くレチタティーヴォの後に、《タンクレーディ》 第2幕 第9番のイザウラのアリアをエミーリアのアリアとして挿入。
第7番 オテッロとイアーゴの二重唱、イアーゴの登場の前にオテッロのアリアを挿入。これは、ロッシーニの曲ではなく、チマローザの《ペネローペ》(1794,ナポリ)の第2幕のウリッセのアリア)が用いらている。
第9番 第2幕フィナーレ、女声合唱がいないので女声合唱の部分は男声に置き換え。
第3幕 第10番 オテッロの登場の後、Ed osi ancor, spergiura!.. から後のレチタティーヴォがまったく別のものに差し替えられている。ここでデズデーモナは、彼女に撥ね付けられたイアーゴが腹いせにオテッロに彼女が不実であると信じ込ませたとオテッロに説明し、彼は怒りが静まり剣を捨てる。これに続いて《アルミーダ》第1幕 第5番のアルミーダとリナルドの二重唱 Amor! (Possente nome!) を、いくらか歌詞を変更しつつ、丸々挿入。それからオリジナルの第4場に戻り、音楽、歌詞ともいくらか変更しつつ大筋でオリジナル通り。そして大詰めに、《リッチャルドとゾライデ》第2幕 第15番 合唱、ゾライデの大シェーナと第2幕フィナーレのうち、最後の部分 Andantino を挿入(ゾミーラとアゴランテの歌詞は省略)。
このように、第3幕の後半の改変は、既存のロッシーニのオペラから使える箇所を取り出して組み合わせた、パスティッチョになっていることが分かる。これも当時は珍しいことではなかった。
この1820年ローマ稿にロッシーニが関与していることは、彼が1819年8月3日付でナポリから当時のローマの劇場群の興行主、ピエトロ・カルトーニに宛てた手紙で裏付けられている。
私がローマを通る時にオテッロのすべての音楽をあなたに持参することは同意済みです
Resta Inteso che quando io passo a Roma vi porterò tutta La Musica dell'Otello
ロッシーニは、《湖の美女》をナポリで1819年10月24日に初演した後、《ビアンカとファッリエーロ》の初演(12月26日)の準備のために急いでミラノに向かい、10月31日に到着している。途中ボロ―ニャの家族の元に立ち寄っているはずなので、ローマでは本当に1泊したかしないか程度だったろう。公演の監修などはまったくできなかったに違いない。
仮に10月末にローマでカルト―二に修正済みの楽譜を渡したとして、2か月3か月後の上演でそれがそのまま使われたかどうかは分からない。実際、前述のチマローザのアリアを挿入するようなことは、ロッシーニ自身が行うとは思えず、オテッロ役のダヴィドの要望が受け入れられたといことではなかろうか。
この1820年ローマでの《オテッロ》は、ロッシーニ研究の第一人者であるフィリップ・ゴセットが手厳しく批判しており、そのためロッシーニ自身が関与した上演形態であるにもかかわらず、オペラ全体としてはほとんど顧みられることがない。
ただ第3幕フィナーレのリエート・フィーネのみ、しばしば話題になり、また稀に演奏もされる。
とはいえこのリエート・フィーネは、あくまで1820年ローマでの《オテッロ》の一部であり、これだけを取り出して論じるのは扱いとして正しいこととは思えない。ましてやこれをオリジナルである1816年ナポリでの《オテッロ》の悲劇的フィナーレと差し替えて上演するなど、わざわざ竜頭蛇尾を作り上げているようなもので、問題がある。
結論として、リエート・フィーネの《オテッロ》は、あくまで1820年ローマでの《オテッロ》の形態として論じられるべきものである。1820年ローマでの《オテッロ》をロッシーニの鬼子と扱わず、そろそろ復活上演があってもよいのではないだろうか。
オテッロの最後の台詞と自害
劇、特に悲劇において、主人公の最後の台詞は重要である。作者たちは誰でもその言葉が印象付けられるよう工夫する。
ロッシーニの《オテッロ》では、オテッロの最後の台詞は
Pentito m'avrà...彼女は 私を 後悔させるだろう…
という短い一言である。
実はこの台詞には別のものもある。初演時の印刷台本では
Punito m'avrà...彼女は 私を 罰せさせるだろう…
である。今日の上演でも Punito m'avrà... の方を採用する例はある。
少し文法的な解析をすると、ここでの avrà は、avere + 人 + 形容詞 で 人に―させる という使役で採った。同じくベリオが台本を書いた《リッチャルドとゾライデ》において
Se non senti pietà... crudel m'avrai.
という1行があり、そこでの crudel m'avrai は 君は 私を 残酷にさせるだろう という意味で、同様の使役の表現を取っている。
Pentito、Punito、いずれの場合も3人称単数の主語はデズデーモナである。また時制は単純未来である。したがってここを例えば 私は罰せられた のように理解することは、二重に間違っている。
さて、Pentito m'avrà... にせよ Punito m'avrà... にせよ、このオテッロの最後の台詞はこれ単独ではあまり意味がよく分からない。しかしその直前の
unirmi a lei deggio...私は 彼女と 結ばれなくてはならない…
と合わせ読むと、オテッロの自害の意図が窺える。潔白であるデズデーモナを殺害してしまったオテッロは、自ら命を絶ってデズデーモナの元に向かい、そこで彼女に改悛させられるなり、罰を与えられるなり、自らの過ちの報いを受けた上で、二人が結ばれようとしている。
ロッシーニの《オテッロ》では、デズデーモナとオテッロはまだ結婚していない。オテッロがデズデーモナとの結婚を切望していたことは疑いない。オテッロは幕切れで、自害することで結婚を果たそうとしたのであろう。
あらすじ
第1幕
トルコとの戦いに勝利したオテッロが帰還し、人々が彼を讃え出迎える。オテッロは総督の元へ向かい、勝利を報告する。褒美を問われると、ヴェネツィアの市民として認められれば十分と答える。総督はそれを認める。オテッロは喜びつつ、それ以上にデズデーモナの愛を得たいと、愛の神に祈る。一方、恋敵であるロドリーゴには、オテッロが我慢ならない。人々はオテッロを祝宴へと導く。
ロドリーゴは、デズデーモナの父、エルミーロに彼女の様子を尋ねるが、いい返事を得られない。オテッロに恨みを持つイアーゴは、ロドリーゴへの協力を約束する。イアーゴとロドリーゴは友情を誓う。
泣いているデズデーモナを、侍女のエミーリアが慰めている。そこにイアーゴがやって来るので、デズデーモナは立ち去る。かつてデズデーモナから袖にされたイアーゴは、ロドリーゴを利用して復讐するつもりなのである。エルミーロは、イアーゴに婚礼の準備を命じ、ロドリーゴにはデズデーモナとの結婚を約束する。エルミーロはデズデーモナに、結婚は隠しつつ、娘に「褒美」を与えると告げる。デズデーモナは父の言葉を不思議に思う。エミーリアは、エルミーロがオテッロへの憎しみを和らげたのだろうとデズデーモナを励ます。
広間。人々が婚礼を祝っている。エルミーロがデズデーモナをロドリーゴと結婚させようと連れてくる。エルミーロとロドリーゴはデズデーモナを説得しようとするが、彼女は戸惑うばかり。そこにオテッロが押し入る。一同に緊張が走る。オテッロはデズデーモナと愛の誓いを交わしたことを明かし、それに激怒したエルミーロは、娘を呪ってしまう。一同の混乱で幕となる。
第2幕
ロドリーゴがデズデーモナを尚も説得しているが、デズデーモナは自分が既にオテッロの妻であることを明かす。ロドリーゴはショックを受け、デズデーモナを詰る。デズデーモナは、オテッロとの結婚を明かしたことで、オテッロがさらに苦しい立場になるのではと不安に思う。
一方オテッロは、デズデーモナが結婚寸前だったことを苦しんでいる。イアーゴが現れ、言葉巧みにオテッロの疑念を掻き立てた上で、デズデーモナの手紙を渡す。オテッロはそれを、彼女がロドリーゴに宛てたものだと思い込み、デズデーモナを殺し、それから自分も死のうと決意する。イアーゴはほくそえむ。
ロドリーゴが現れ、オテッロと決闘になる。二人はそれぞれ相手を挑発し、斬りつける。そこにデズデーモナが駆けつけ、二人を止める。しかしオテッロとロドリーゴは、別の場所へと決闘に向かう。デズデーモナは気を失ってしまう。エミーリアの介抱でデズデーモナは意識を取り戻す。彼女は、オテッロの命が助かるよう天に祈る。女性たちがやって来て、オテッロの勝利を伝える。喜ぶデズデーモナ。しかしエルミーロ、娘が許しを請うにもかかわらず、再び娘を非難する。
第3幕
寝室。デズデーモナは嘆き、それをエミーリアが慰めている。外から、ゴンドラ漕ぎの悲しげな歌が聞こえてくる。デズデーモナは、柳の木の下で死んだ哀れなアフリカ女イザウラを思い出し、その悲しい物語を歌う。デズデーモナはエミーリアを退かさせる。デズデーモナは神に祈り、死んだら墓にオテッロが詣でに来てほしいと願う。
デズデーモナが寝入ると、オテッロが部屋にやって来る。オテッロは妻を殺すつもりだが、彼女の寝顔を見て、その美しさにためらってしまう。しかし、デズデーモナの「愛する人」という寝言を、オテッロはロドリーゴのことと思い、怒りをぶり返す。目を覚ましたデズデーモナは、自らの潔白を主張する。雷の轟く中、オテッロはデズデーモナに迫る。デズデーモナは、死を受け入れ、オテッロの短剣に突き抜かれる。しばらくの静寂の後、ルーチョが現れ、イアーゴの悪事が明らかになったと伝える。ドージェ、エルミーロ、ロドリーゴらもやってきて、全てが許されたとオテッロに告げる。全てを悟ったオテッロは、デズデーモナの亡骸を示し、自らに短剣を突き刺して自害する。
対訳付き音楽設計図
登場人物
オテッロ
OTELLO,ヴェネツィアに仕えるアフリカ人
Africano al servizio di Veneziaテノール
tenore
デズデーモナ
DESDEMONA,オテッロの恋人、秘密の妻、エルミーロの娘
amante, e sposa occulta di Otello, figlia diソプラノ
soprano
エルミーロ
ELMIRO
バス
basso
ロドリーゴ
Rodrigoデズデーモナから軽蔑されている彼女を愛する男
amante sprezzato da Desdemona, figliuolo del Doge.テノール
tenore
イアーゴ
IAGOオテッロの隠れた敵、ロドリーゴの政友
nemico occulto d'Otello, amico per politica di Rodrigo.テノール
tenore
エミーリア
EMILIAデズデーモナの腹心の友
confidente di Desdemonaソプラノ (メッゾソプラノ)
soprano (mezzosoprano)
ルーチョ
LUCIOオテッロの腹心の友
confidente di Otelloテノール
tenore
ドージェ (ヴェネツィア共和国の総督)
DOGE
テノール
tenore
ゴンドラ漕ぎ
Gondlieroテノール
tenore
日本語訳は極力文学的色づけをしない分析的に訳にしてある。
台本の詩句は、マイケル・コリンズ校訂のクリティカルエディション総譜に記載されている状態に合わせてある。
[Sinfonia] | Andante 4/4 D major |
序奏付きの展開部を欠いたソナタ形式の序曲。 《シジスモンド》序曲からの再利用、若干の相違がある。序奏はさらに《イタリアのトルコ男》の序曲の序奏である。 |
|
Allegro vivace 4/4 D major |
|||
Più mosso 4/4 D major |
|||
ATTO PRIMO | |||
N. 1 [Introduzione] Coro |
Allegro 4/4 F major |
SCENA PRIMA第1場 (La scena rappresenta la sala del Senato. in fondo del quale fra alcuni archi vedesi il lido coperto di popolo, che attende festoso lo sbarco di Otello. Navi in distanza)(舞台は 表現している 元老院の広間を。それ【= 広間】の奥では いくつかのアーチの間から 岸が見える 人々でいっぱいの、その者たちは 待っている 嬉し気に オテッロの下船を。遠くに船々) (Doge, Elmiro, Senatori seduti, indi Otello, Iago, e Lucio seguiti dalla schiere)(ドージェ、エルミーロ、座った元老院議員たち、それからオテッロ、イアーゴ、そしてルーチョ 【彼らは】軍隊によって従われて) CORO合唱 Viva Otello, viva il prode,オテッロ万歳、勇者万歳、 delle schiere invitto duce!軍隊の 不敗の指揮官だ! Or per lui di nuova luce今や 彼によって 新しい光で torna l'Adria a sfolgorar.アドリアは 再び 輝き始めている。 Lui guidò virtù fra l'armi彼を 案内した 徳【≒ 勇気】が 武器の中へと【≒ 勇気が 彼を 戦いの中へと 導き】 militò con lui fortuna.運【≒ 幸運】が 彼と共に 戦った。 s'oscurò l'Odrisia lunaオドリュサイの月は 陰った del suo brando al fulminar.彼の剣の 雷撃で。 |
torna l'Adria a sfolgorar. Adria は、そのまま アドリア と訳すが、この台本では明らかにヴェネツィアを意味している。 s'oscurò l'Odrisia luna odrisio は オドリュサイの という形容詞。オドリュサイ イタリア語では Odrisi は、紀元前5世紀から紀元前後あたりまで、現在のブルガリア近辺に存在した国。ずっと時代が下がって、1396年以降この地はオスマン帝国(≒ トルコ)の領土となり、したがってここでは オスマン帝国の の意味で用いられている。 |
Marciale 2/4 B-flat major |
(Sbarcato Otello, si avanza verso del Doge al suono d'una marcia militare, seguito da Iago, da Rodrigo e da Lucio)(オテッロは 下船し、進む ドージェの方に 軍隊行進曲の音で、後に続かれる イアーゴによって、ロドリーゴによって、そしてルーチョによって) |
||
[Recitativo Dopo l'Introduzione] |
Recitativo 4/4 (C major) |
OTELLOオテッロ Vincemmo, o prodi. I perfidi nemici私たちは 勝利を得た、ああ 勇敢な人たちよ。悪意のある敵たちは caddero estinti. Al lor fuoror ritolsi死に倒れた。彼らの激情から 私は 取り返した sicura ormai d'ogni futura offesa今や あらゆる 未来の侵害について 恐れのない Cipro, di questo suol forza e difesa.キプロスを、その地の強さと 守りを。 Null'altro a oprar mi resta. Ecco vi rendo行うための他のものは 私には 残っていない【≒ 私が すべきことは もうない】。そら 私は あなたに 返す l'acciar temuto; e delle vinte schiere恐れられた剣を: そして 負かされた軍隊の depongo al vostro piede armi e bandiere.武器と 【軍】旗を 私は 置く あなたの足元に。 |
sicura ormai d'ogni futura offesa / Cipro, Cipro は女性名詞で、女性形の sicura は Cipro を修飾している。 |
Allegro 4/4 (C major) |
1小節 | ||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
DOGEドージェ Qual premio al tuo valor chieder potrai?どのような褒美を 君の勇気に対して 君は 求めることができるだろうか? OTELLOオテッロ Mi compensaste assaiあなたは 十分に 私に 報いた nell'affidarvi in me. D'Africa figlio,私を 信頼したことで。アフリカの息子である、 qui straniero son io. Ma se rinserro私は ここでは 異国の男だ。だが もし 私が 再び閉じ込めている【≒ 収めている ≒ 胸の中に 抱いている】ならば un cuor degno di voi, se questo suoloあなたに相応しい心を、【そして】 もし この地に piucché patria rispetto, ammiro, ed amo,私が 祖国よりも さらに 敬意を表し、称賛し、そして 愛しているのであれば、 m'abbia l'Adria qual figlio: altro non bramo.アドリアが 私を 息子として 受け入れるように: 他のことを 私は 熱望しない【≒ 他に 望むものは ない】。 IAGOイアーゴ (Che superba richiesta!)(何という 尊大な要求だ!) RODRIGOロドリーゴ (A' voti del mio cor fatale è questa.)(私の心の念願にとって これは 致命的だ。) |
||
Allegro 4/4 (C major) |
1小節 | ||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
DOGEドージェ Tu d'ogni gloria il segno君は あらゆる栄光の限界を vincitor trascorresti. Il brando invitto勝者として 超えた。不敗の剣を riponi al fianco, e già dell'Adria figlio脇腹に 戻しなさい、そして 既に 【君は】アドリアの息子【であるから】 vieni tra i plausi a coronar il crine行きなさい 称賛の中で 頭髪に 冠をかぶせに del meritato alloro.当然受けるべきゲッケイジュの【≒ 称賛を受けて 相応しい桂冠を 頭に 載せに 行きなさい】。 RODRIGOロドリーゴ (a Iago)(イアーゴに) (Che ascolto? ahimè! perduto ho il mio tesoro.)(私は 何を 聞いているのか? ああ! 私は 私の宝【= デズデーモナ】を 失った。) IAGOイアーゴ (a Rodrigo)(ロドリーゴに) (Taci, non disperar.)(黙りなさい、望みを失うでない。) OTELLOオテッロ Confusio io sono私は 混乱している a tante prove e tanteあまりにたくさんの証しに そして あまりにたくさんの d'un generoso amor. Ma meritarle寛大な愛に。だが それらに 値することが poss'io, che nacqui sotto ingrato cielo,私は できるのか、その者は 生まれた 恩知らずの空の下で、 d'aspetto, e di costumi外見に関して、そして 衣装に関して sì diversi da voi?あなたと これほどに違っている? DOGEドージェ Nascon per tutto, e rispettiam gli Eroi.【英雄たちは】生まれている あらゆるところで、そして 私たちは 尊敬している 英雄たちを。 |
Tu d'ogni gloria il segno / vincitor trascorresti. この場合の segno は 限界,限度。trascorrere (tras- 超えて correre 走る)には 通過する の意味があり、trascorrere il segno で passare il segno 度を超す と同じような意味になる。 |
|
N. 2 [Cavatina di Otello] Otello Rodrigo Iago Coro |
Vivace marziale 4/4 D major |
OTELLOオテッロ Ah sì, per voi già sentoああ そうだ、あなたのおかげで 既に 私は 感じている nuovo valor nel petto:新しい勇気を 胸の中に: per voi d'un nuovo affettoあなたのおかげで 新しい感情で sento infiammarsi il cor.私は 感じている 心が 燃え上っているのを。 |
急/緩/急の三部形式のアリア。 急。 |
Andantino 6/8 A major |
(tra sé)(自分に) (Premio maggior di questo(これよりも大きな 報酬を da me sperar no lice:私から 期待することは 許されない: ma allor sarò feliceだが その時は 私は 幸せだろう quando il coroni Amor.)愛の神が 彼に 冠をかぶせる時には。) (Rodrigo nel massimo dispetto si vorebbe scagliare su di Otello: Iago lo trattiene)(ロドリーゴは この上ない絶望で オテッロに飛び掛かりたいと思う: イアーゴは 彼を 引き留める) IAGOイアーゴ (T'affrena, la vendetta(抑えなさい、仕返しを cauti dobbiam celar.)私たちは 慎重に 隠さなくてはならない。) |
||
[Primo Tempo] 4/4 D major |
CORO合唱 Non indugiar: deh vieni,ぐずぐずするでない: お願いだから 来なさい、 deh vieni a trionfar.お願いだから 勝ち誇りに 来なさい。 |
||
([Primo Tempo]) 4/4 D major |
OTELLOオテッロ (Amor, dirada il nembo(愛の神よ、黒雲を まばらにしなさい【≒ 追い散らしなさい】 cagion di tanti affani,【それは】多くの苦悩の原因【である】 comincia co' tuoi vanni始めなさい 君の翼をもって la speme a ravvivar.)希望に 再び活力を与えることを。) Ah sì, per voi già sentoああ そうだ、あなたのおかげで 既に 私は 感じている nuovo valor nel petto:新しい勇気を 胸の中に: per voi d'un nuovo affettoあなたのおかげで 新しい感情で sento infiammarsi il cor.私は 感じている 心が 燃え上っているのを。 CORO合唱 Non indugiar: t'affretta:ぐずぐずするでない: 急ぎなさい: deh vieni a trionfar.お願いだから 勝ち誇りに 来なさい。 IAGOイアーゴ (a Rodrigo)(ロドリーゴに) (T'affrena, la vendetta(抑えなさい、仕返しを cauti dobbiam celar.)私たちは 慎重に 隠さなくてはならない。) (parte Otello sequito dai Senatori, e dal Popolo; Elmiro rimane)(オテッロは 退場する 元老院議員たちによって従われて、そして 人々によって【従われて】; エルミーロは居残る) |
||
[Recitativo] Dopo la Cavatina di Otello |
Recitativo 4/4 (C major) |
SCENA Ⅱ第2場 (Elmiro, Iago, Rodrigo)(エルミーロ,イアーゴ,ロドリーゴ) ELMIROエルミーロ Rodrigo!...ロドリーゴよ!… RODRIGOロドリーゴ Elmiro!... Ah padre mio! deh! lasciaエルミーロよ!… ああ 私の父よ! ああ! させておきなさい che un tal nome ti dia, se al mio tesoro私が そのような名を 君に 与えることを、私の宝に desti vita sì cara.君が 与えた 【↑】からには あのような愛しい命を。 Ma che fa mai Desdemona?... che dice?...ところで デズデーモナは いったい 何をしているのか?… 彼女は 何を 言っているのか? si ricorda di me?... sarò felice?彼女は 私を 覚えているのだろうか?… 私は 幸せに なるのだろうか? ELMIROエルミーロ Ah! che dirti poss'io?ああ! 私は 君に 何を 言えるのだろうか? Sospira, piange, e la cagion mi cela彼女は 溜め息を吐き、泣き、そして 原因を 私から 隠している dell'occulto suo duol.彼女の 隠された悲しみの。 RODRIGOロドリーゴ Ma in parte almeno...だが せめて 一部は… ELMIROエルミーロ Arrestarmi non posso:私は 立ち止まることができない【≒ ここに 留まっては いられないのだ】: |
|
Allegro 4/4 (C major) |
4小節 | ||
Recitativo 4/4 (C major) |
odi lo squillo聞きなさい 高く鳴る音を delle trombe guerriere:戦闘的なラッパ【≒ 軍隊ラッパ】の: alla pubblica pompa ora degg'io公の壮麗【≒ 祝典】に 今 私は volgere il piè: ci rivedremo: addio.足を 向け 【↑】なくてはならない: 再会しよう: さようなら。 parte退場する |
||
Allegro 4/4 (C major) |
SCENA Ⅲ第3場 (Iago, Rodrigo)(イアーゴ,ロドリーゴ) |
5小節 | |
(Recitativo) 4/4 (C major) |
RODRIGOロドリーゴ Udisti?...君は 聞いたか?… IAGOイアーゴ Udii...私は 聞いた… RODRIGOロドリーゴ Dunque abbagliato Elmiroでは 目を眩ませられたエルミーロは alla gloria fallace偽りの栄光に dell'Afro insultator, potrebbe ei forse,アフリカの冒涜者の、彼は もしかして、 degenere dagl'avi, a un nodo indegno祖先に劣って、相応しくない絆に sacrificar l'unica figlia?...唯一の娘を 犠牲にする 【↑↑】ことができるかもしれないのか? IAGOイアーゴ Ah frena,ああ 抑えなさい、 frena gl'impeti alfin. Iago conosci,ようやく 激情を 抑えなさい。君は イアーゴを 知っている、 e diffidi così? Tutti ho presentiそれでも このように 希望を失うのか? 私は すべて 示した i miei torti, ed i tuoi: ma sol fingendo私の過ちを、そして 君の【過ちを】: しかし ただ とぼける【≒ 知らないふりをする】だけで vendicarci saprem. Se quell'indegno,私たちは 仕返しをすることができるだろう。たとえ あの恥ずべき男が、 dell'Africa rifiutoアフリカのクズが or qui tant'alto ascese,今や ここでは あれほどの高みに 上って、 e pel tuo ben s'accese君の最愛の人に対して 火が点いた 【↑↑↑】のだとしても d'occulta, incauta fiamma,隠された、無分別な炎で、 oppormi a lui saprò. Sol questo foglio私は 彼に 立ち向かうことができるだろう。この書類だけが |
dell'Africa rifiuto rifiutoは 拒絶、拒否 の意味だが、屑,ゴミ の意味もあり、un rifiuto della società は 人間のくず という意味になる。 |
|
Allegro 4/4 (C major) |
|||
Recitativo 4/4 (C major) |
basta a domare il suo crudele orgoglio.十分である 彼の酷い高慢さを 屈服させるには。 (gli porge un foglio)(彼【= ロドリーゴ】に 書類を 手渡す) RODRIGOロドリーゴ Che leggo! e come mai...私は 何を 読んでいるのだ! それで いったい どうやって… IAGOイアーゴ Per or t'accheta,今のところは 落ち着きなさい、 tutto saprai; ogni ritardo or puote君は すべてを 知るだろう; どの遅れも 今は できる render vana l'impresa.企てを 無駄に することが【≒ 今は 少しの遅れが 計画を 台無しに しかねない】。 RODRIGOロドリーゴ Onedggia il core心は 揺れている fra la speme, lo sdegno, ed il timore.希望と、怒りと、そして不安の間で。 |
||
N. 3 [Duetto Rodrigo - Iago] |
Allegro 4/4 B-flat major |
IAGOイアーゴ No, non temer: serenaいいや、恐れるでない: 落ち着かせなさい l'addolorato ciglio:苦しめられた眼を: prevenni il tuo periglio;君の危険を 予防しなさい; fidati all'amistà.信頼しなさい 友情を。 RODRIGOロドリーゴ Calma su i labbri tuoi落ち着きを 君の唇の上に【≒ 君の言葉に】 trova quest'alma opressa,この圧迫された【≒ 苦しめられた】魂は 見出している。 ed una sorte istessaそして それ【≒ 魂】は 同じ運命を con te dividerà.君と 分かち合うだろう。 |
|
[Larghetto] 6/8 C major |
IAGO E RODRIGOイアーゴ と ロドリーゴ Se uniti negli affaniもし 苦悩の中で noi fummo un tempo insieme,昔【≒ かつて】 私たちが 互いに 【↑】結び付けられたのであれば ora una dolce speme今は 甘い希望が più stretti ci unirà, sì sì.より きつく【≒ 親密に】 私たちを 結び付けるだろう、そうだ、そうだ。 |
noi fummo un tempo insieme, この場合の insieme は 相互に。 |
|
[Allegro] 4/4 B-flat major |
RODRIGOロドリーゴ Nel seno già sento胸の中に 既に 私は 感じている risorger l'ardire.大胆が 再び上る【≒ 勇気が 蘇る】のを。 IAGOイアーゴ Vicino il contento【↓】私は 満足の近くにいると mi pinge il pensier.考えは 【思い】描いている【≒ 私の喜びは 近いと 思っている】。 IAGO E RODRIGOイアーゴ と ロドリーゴ A un'alma, che pena魂には、それは 苦しんでいる si rende più grato,より一層 ありがたく思うようになる、 quant'è più bramato,それが より切望されるほどに、 atteso piacer.待ち望んだ喜びは【≒ 苦しむ心にとって、待望の喜びは、切望すればするほど ありがたくなる】。 IAGOイアーゴ Non tmer:恐れるでない RODRIGOロドリーゴ Non temo:私は 恐れない: IAGOイアーゴ in me t'affida.私を 信頼しなさい。 RODRIGOロドリーゴ in te m'affido.君を 私は 信頼する。 (partono)(【二人とも】退場する) |
Vicino il contento / mi pinge il pensier. pingere は、dipingere 描く と同義の場合と、spingere 押す と同義の場合と二通りある。この台本では pingere がもう一か所、第4番の二重唱のシェーナの部分で用いられており、そちらでは明らかに dipingere 描く の意味で用いられている。したがってここでも同様に理解する。 |
|
N. 4 [Scena e Duettino Desdemona - Emilia] Desdemona Emilia |
Maestoso 4/4 E-flat major |
SCENA Ⅳ (Stanza nel palazzo di Elmiro)(エルミーロの館の部屋) (Desdemona, Emilia)(デズデーモナ,エミーリア) |
|
Recitativo 4/4 E-flat major |
EMILIAエミーリア Inutile è quel pianto. Il lungo affannoその涙は 無用だ。長い苦悩が si transformi in piacer; carco d'allori喜びに 変わるように; ゲッケイジュを 背負って【≒ 栄光を 携えて】 a noi riede il tuo bene.君の最愛の人は 私たちのところに 戻っている。 |
||
Allegro 4/4 E-flat major |
|
2小節 | |
(Recitativo) 4/4 E-flat major |
Odi d'intorno君は 聞いている 周りに come l'Adria festeggia in sì bel giorno.いかに アドリアが 彼を 歓迎しているか これほどに素晴らしい日に。 |
||
Andantino 4/4 E-flat major |
|
||
(Recitativo) 4/4 E-flat major |
DESDEMONAデズデーモナ Emilia, ah tu ben saiエミーリアよ、ああ 君は よく知っている quanto finor penai: come quest'alma私が 今まで どれほど 苦しんだか: どれほど この魂が al racconto fedel de' suoi perigli, del suo valore,正確な話に 彼の危険の、彼の武勇の、 palpitante, intera si pingea sul mio ciglio;胸がどきどきしながら、すっかり 描かれていたことか 私の眼の上に【≒ 彼の危険についての、彼の武勇についての、迫真の話を聞いて 心臓が激しく高鳴りながら、どれほど この気持ちが 私の顔に すっかり 現れていたことか】; e fra i palpiti miei, fra le mie peneそして 私の鼓動の中で、私の苦悩の中で quante volte dicea, perché non viene?何度 私は 言ったか、なぜ 彼は 【帰って】来ないのか と? Ed or ch'è a me vicinoしかし 彼が 私の近くにいる 今 mi veggo in preda al più crudel destino!私は より残酷な運命の餌食にある気がしている。 EMILIAエミーリア E perché mai...それで いったい どうして… DESDEMONAデズデーモナ So. Questa sua gloria accresce私は 知っている。この彼の栄光は 増大させている in me per lui l'affetto,私の 彼への情愛を、 come nel padre mio l'odio, e il dispetto.私の父の 【彼への】 憎しみ、そして軽蔑 と同様に【≒ 彼の栄光は、私の彼への愛を 強めているばかりでなく、父の憎しみと軽蔑をも 強めている】。 EMILIAエミーリア Sicura del suo core, ogn'altra tema彼の心について 確信しているのならば、あらゆる 他の恐れは inutile si rende.無駄になる。 |
come quest'alma / al racconto fedel de' suoi perigli, del suo valore, / palpitante, intera si pingea sul mio ciglio; この場合の alma 魂 は 心 というよりは 感情,気持ち。戦地でのオテッロの話を聞いた時に、彼の活躍に喜ぶ気持ちも、危険を心配する気持ちも、どちらもデズデーモナの顔に表情ですっかり現れていた、といった意味。si pingere = si dipingere は、感情などが表に出る という意味。 なお多くの楽譜、台本では intera ではなく incerta 不確かな が用いられているが、クリティカルエディションでは intera である。 |
|
4/4 (C major) |
DESDEMONAデズデーモナ Ah! ch'io paventoああ! 私が恐れていることは ch'ei sospetti di me. Ben ti sovvieni彼【= オテッロ】が 私を 疑っているであろうことだ。君は よく 覚えている quando parte tu stessa君自身が del mio crin recidesti. Ah! che ad Otello私の頭髪の 【↑】一部を 断ち切った 【↑】時【のことを】。ああ! オテッロに dono sì caro allor non giunse: il padreそれほどに大切な贈り物は その時 届かなかった: 父は sorprese il foglio, ch'io con man tremante書類を 取り押さえた、それを 私は 震える手で a lui vergava. Al suo Rodrigo invece彼に宛てて 手書きした。ところが 彼のロドリーゴに diretto il crede: io secondai l'errore:宛てられた【書類だ】と 彼【= 父】は 信じている: 私は 思い違いに 従った: ma il labbro il disse, e lo smentiva il cuore.しかし 唇は そのことを 言ったが、だが 心は そのことを 否定した。 Fin da quel dì dell'Idol mio le usateあの日からずっと 私の偶像の いつもの note più non rividi... un dubbio atroce通達【≒ 連絡】を 私は 再び見なかった… 恐ろしい疑いが m'agita, mi confonde... 私を 掻き乱し、私を 混乱させている… Chi sa? conobbe ei forse誰が 知っているというのか? 彼は ことによると 認識したのか pegno sì dolce in mano altrui? me infidaあれほどに愛情のこもった証 あかし が 他の人の手の中に あると? 私を 不実な女と crede dunque?... だから 彼は 信じているのか?… EMILIAエミーリア Che dici?..君は 何を 言っているのか?… Timido è amore, e spesso si figura愛は 弱気だ、そして それは しばしば 思い描く un mal, che non esiste, o che non dura.悪いことを、それは 存在していない、あるいは それは 残っていない【≒ 無くなってしまった】 |
io secondai l'errore: secondare は古い意味で 後に続く というものがあり、これは位置的な言い方だけでなく、考えなどにも用いられる。 |
|
[Duettino] Andante grazioso 6/8 G major |
DESDEMONAデズデーモナ Vorrei, che il tuo pensiero私は 望んでいるのだが、君の考えが a me dicesse il ver.私に 真実を 言っている 【↑】ことを 【≒ 君が 私に 本当のことを言っているのなら よいのだが】。 EMILIAエミーリア Sempr'è con te sincero:それ 【= エミーリアの考え】は 常に 君に 正直だ: no, che non dei temer.そうだ、君は 恐れるべきではない。 DESDEMONAデズデーモナ Ma l'amistà soventeだが 友情は しばしば ciocché desia si finge.【真実であるかのように】描く 望んでいることを。 EMILIAエミーリア Ma un'anima languenteしかし 意気消沈した魂は sempre il dolor si pinge.常に 苦悩を 描いている。 DESDEMONAデズデーモナ Ah crederti vorrei,ああ 私は 君を 信じたいのだが、 ma a te s'oppone il cor.だが 心は 君に 異議を唱えている。 EMILIAエミーリア Credere a me tu dei,君は 私を 信じるべきだ、 e non fidarti al cor,そして 君の心を 信じてはいけない、 ah, credi a me.ああ、私を信じなさい。 |
この小二重唱は、速度も拍子も調性も変化はないが、前半後半の二部からなっていると理解した。 | |
(Andante grazioso) 6/8 G major |
DESDEMONA ED EMILIAデズデーモナ と エミーリア Quanto son fieri i palpitiなんと 心臓の動機が 激しいことか che desta in noi l'amor!それを 呼び起こす 私たちの中に 愛の神が。 Dura un momento il giubilo,歓喜は 一瞬 継続する、 eterno è il suo dolor.その【= 愛の】苦しみは 永遠だ。 |
||
[Recitativo] Dopo il Duettino |
Recitativo 4/4 (C major) |
DESDEMONAデズデーモナ Ma che miro? ecco che incerto i passiところで 私は 誰を 眺めているのか? そら ためらって 足を muove il perfido Iago:動かしている 不実なイアーゴが【≒ 信用ならないイアーゴが ためらいがちに 歩いて来る】: fuggiam, s'eviti: ei rintracciar potria逃げよう、避けよう: 彼は 気が付くことができるかもしれない sul mio volto l'amor, la pena mia.私の顔の上に 愛を、私の苦悩を。 partono【二人とも】退場する |
|
Allegro 4/4 C major |
SCENA Ⅴ第5場 (Iago, indi Rodrigo)(イアーゴ,それからロドリーゴ) |
||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
IAGOイアーゴ Fuggi... sprezzami pur: più non mi curo君は 逃げている… どうぞ 私を 軽蔑しなさい: もう 私は 関心を持っていない della tua destra... un tempo a' voti miei君の右手に【≒ 君と結婚することに】… 昔【≒ かつて】 私の念願に utile la credei... Tu mi sprezzastiそれ【= 右手 女性名詞 ≒ 結婚すること】が 役立つと 私は 信じた… 君は 私を 見下げた per un vile Africano, e ciò ti basti.卑しいアフリカ男のために、そして そのこと【= イアーゴを撥ね付けたこと】は 君に 十分であるのだろう。 Ti pentirai, lo giuro;君は 後悔するだろう、そのことを 私は 断言する; tutti servir dovranno a' miei disegniすべて 役に立つに違いない 私の企みに gl'involati d'amor furtivi pegni.掠め取られた 愛の密かな証 あかし が。 Ma che veggo... Rodrigo!さて 私は 誰を 見ているのか… ロドリーゴだ! RODRIGOロドリーゴ Ah del mio beneああ 私の最愛の人の il genitor dov'è?父親は どこに いるのか? IAGOイアーゴ Miralo, ei viene.彼を眺めなさい、彼が 来る。 SCENA Ⅵ第6場 (Elmiro, e detti)(エルミーロ、そして 前の場の人たち) ELMIROエルミーロ Giunto è, Rodrigo, il fortunato istante,来た、ロドリーゴよ、幸運な瞬間が、 in cui dovrai di sposoそれ【= 幸福な瞬間】に 君は 花婿【= ロドリーゴ】の dar la destra a mia figlia.右手を 私の娘に 与える 【↑】ことになるだろう。 L'amistà mel consiglia,友情が 私に そのことを 勧めている、 il mio dover, la tua virtude,私の義務が、君の美徳が、 e quell'odio ch'io serboそして あの憎しみが それを 私は 持ち続けている per l'African superbo.高慢なアフリカ人に対して。 Insiem congiunti共に 結び付けられたのならば per sangue, e per amor, facil ne fia血によって、そして 愛によって、それによって 容易になるだろう opporci al suo poter. Ma tu procura立ち向かうのが 彼【= オテッロ】の力に。だが 君は 努めなさい al padre tuo, che invitto e amato siede君の父に その者は 不敗で【≒ 無敵で】 そして 愛されて 座っている in su l'Adriaco suolo,アドリア海の地に、 svelar le trame, e il suo nascosto orgoglio.【オテッロの】陰謀を 暴くよう、そして 彼の 隠された 高慢さを【暴くよう】。 RODRIGOロドリーゴ Ah sì: tutto farò.ああ そうだ: 私は すべてを やろう。 ELMIROエルミーロ Iago, t'affrettaイアーゴよ、急いで a compir l'Imeneo. A parte sei結婚式を 成し遂げ 【↑】なさい。君は 知っている delle mie brame, e de' disegni miei.私の熱望を、そして 私の 目論みを。 RODRIGOロドリーゴ Ah di qual gioia sento acceso il mio petto!ああ 何という喜びに 私の胸が 燃えているのを 私は 感じていることか! Ma sarò felice? ELMIROエルミーロ Io tel prometto.私は 君に そのことを 約束する。 (partono [Rodrigo e Iago])([ロドリーゴとイアーゴは]退場する) SCENA Ⅶ第7場 (Elmiro solo)(エルミーロ一人) Vendicarmi dovrò; né più si vegga,私は 仕返ししなくてはならないだろう; もう見ないようにしよう、 che un barbaro stranier con modi indegni野蛮な異国人が 不適切な【≒ 粗野な】態度で ad ubbidrlo, ed a servir ne insegni.彼【= 異国人 = オテッロ】に 従うことを、そして 【彼に】 仕えることを 私たちに 教えることを。 SCENA Ⅷ第8場 (Desdemona, ed Elmiro)(デズデーモナ、そして エルミーロ) Ma la figlia a me vien... さて 娘が 私のところに 来る… DESDEMONAデズデーモナ Padre, permetti,父よ、許しなさい、 che rispettosa io baci... 私が 恭しく キスすることを… ELMIROエルミーロ Ah figlia, vieni,ああ 娘よ、来なさい、 vieni al mio seno. In questo fausto giorno私の胸に 来なさい。この 幸運な日に dividere vuo' teco il mio contento.私の満足【≒ 喜び】を 君と 分かち合いたい。 DESDEMONAデズデーモナ (a parte)(傍らで) Che mai dirmi potrà? Spero, e pavento!いったい 何を 彼は 私に言うかもしれないのか? 私は 期待し、そして 私は 恐れる! ELMIROエルミーロ Dal sen scaccia ogni duol. Un premio or t'offro,胸から 振り払いなさい あらゆる 苦悩を。褒美を 今 私は 君に 提供する、 che caro a te sarà.それは 君に 愛しくなるだろう。 DESDEMONAデズデーモナ (Forse d'Otello l'han calmato i trionfi?)(ことによると オテッロの勝利が 彼を 静めたのか?) ELMIROエルミーロ In vaga pompa優雅な壮麗【≒ 祝宴】へと seguirmi or or tu deiたった今 君は 追わなくては ならない tra novella allegria i passi miei.新たな喜びの中 【↑】私の歩みを parte退場する SCENA Ⅸ第9場 (Desdemona sola)(デズデーモナ一人) DESDEMONAデズデーモナ Comprenderlo non so! Confusa io sono.私は 彼を 理解することが できない! 私は 混乱している。 SCENA Ⅹ第10場 (Emilia, e detta)(エミーリア、そして 前の場の女) Emilia, in quai tumulti sento il povero cor!エミーリアよ、私は 何という動揺の中に 私の哀れな心があることを 感じていることか! EMILIAエミーリア Che avvenne?何が 起こったのか? DESDEMONAデズデーモナ Il padre un premio m'offre, e vuole,父が 私に 褒美を 提供している、そして 彼は 望んでいる、 che, il seno, il crine pomposamente adorno,胸は【華やかに飾られて】、頭髪は 華やかに飾られて、、 festeggi insiem con lui sì fausto giorno.彼【= 父 = エルミーロ】と共に これほどに縁起の良い日を祝うであろうことを 【望んでいる↑】 Fra la speme, e il timor che mi consigli?希望と、不安の間にあって 君は 何を 助言するのか? EMILIAエミーリア Fingon gli amanti ognor nuovi perigli.恋人たちは いつでも 新しい危険を 想像する。 Ma tu non paventar.しかし 君は 恐れるでない。 Chi sa!.. d'un padre l'amore in lui parlò.誰が 知っているというのだ!… 父の愛が 彼の中で 語ったのだ。 Forse d'Otello alla gloria offuscatoおそらく オテッロの栄光に 暗くされて ha l'odio alfine in amistà cangiato.憎しみが ついに 友愛に 変わったのだ。 Vieni, non indugiar.来なさい、ぐずぐずするでない。 DESDEMONAデズデーモナ Ti sieguo. Oh Dio!私は 君に ついて行く。 ああ 神よ! Palpita intanto il povero cor mio.そうしている間に 私の哀れな心は 動悸を打っている。 partono【二人とも】退場す |
un tempo a' voti miei/ utile la credei... イアーゴがデズデーモナとの結婚を望んだのは、愛によるものではなく、出世などの何らかの野心のためだったことが伺われる。 per sangue, e per amor, facil ne fia この場合の ne は受動態動作主を表す、つまり da congiunti A parte sei / delle mie brame, e de' disegni miei. essere a parte di ql.co. ―を知っている。ただし essere parte di ql.co. で ―の一部である,構成員である という成句もあり、こちらの意味で用いられているのかもしれない。その場合の訳は 君は 私の熱望の、そして 私の 目論みの一員である。 という意味になる。 |
|
N. 5 Coro, e Finale dell'Atto Primo Desdemona Emilia Rodrigo Otello Elmiro Coro |
Maestoso 2/4 C Major |
SCENA ⅩⅠ第11場 (Pubblica sala magnificamente adorna)(公共の広間 華やかに飾り立てられた) (Coro di Damigelle. Coro degli amici, e confidenti d'Elmiro)(侍女たちの合唱。友人たちの合唱、そして エルミーロの腹心の友たち) CORO合唱 Santo Imen! te guidi Amore聖なるイメーン【= ヒュメナイオス,ギリシャ神話の結婚の神】よ、君を 愛の神が 案内するように。 due bell'alme ad annodar.二つの美しい魂を 結ぶために。 Dell'amore il dolce ardore愛の 甘い熱情を tu procura di eternar.君【= イメーン】は 不滅にしようと 努力する。 Senza lui divien tiranno彼【= 愛の神】なしには 暴虐になる il tuo nobile poter.君の高貴な力は。 Senza te cagion di affano君【= イメーン】なしでは 苦悩の原因に è d'amore ogni piacer.なる あらゆる 愛の喜びは。 Qual momento di contento!何という 満足【≒ 喜び】の瞬間だ! Fra l'amore, ed il valore愛と、そして勇気の間で resta attonito il pensier!考えは 唖然としたままでいる! |
|
Recitativo 4/4 C major |
SCENA ⅩⅡ第12場 (Elmiro, Desdemona, Emilia e Rodrigo con suo seguito)(エルミーロ、デズデーモナ、エミーリアとロドリーゴ 彼の従者の一行と共に) DESDEMONAデズデーモナ Dove son? Che mai veggio?私は どこに いるのか? 私は いったい 何を 見ているのか? Il cuor non mi tradì!心は 私を 裏切らなかった【≒ 悪い予感は 間違っていなかった】! ELMIROエルミーロ Tutta or riponi今こそ すっかり 託しなさい la tua fiducia in me. Padre a te sono:君の信頼を 私に【≒ 私を 全面的に 信頼しなさい】。私は 君の父だ: ingannarti non posso. Eterna fede私は 君を 欺くことは できない。永遠の忠誠を giura a Rodrigo: egli la merta; ei soloロドリーゴに誓いなさい:彼は それ【= 忠誠 女性名詞】に値する; 彼だけが può renderti felice.君を 幸せに することができる。 RODRIGOロドリーゴ (Che mai dirà?..)(彼女は いったい 何を 言うのか?…) EMILIAエミーリア (Qual cenno!)(何という指示!) DESDEMONAデズデーモナ (Oh me infelice!)(ああ 不幸な私!) ELMIROエルミーロ Appaga i voti miei, in te riposo.私の願いを 叶えなさい、私は 君を 頼りにしている。 DESDEMONAデズデーモナ (Oh natura! oh dover! oh legge! oh sposo!)(ああ 万物よ! ああ 義務よ! ああ 掟よ! ああ 花婿よ!) |
Appaga i voti miei, in te riposo. riposare in qlcu = avere fidanza in qlcu ―を頼る,当てにする |
|
Allegro 4/4 F major |
ELMIROエルミーロ Nel cuor d'un padre amante愛する父の心を riposa amata figlia,愛する娘が 休ませる【≒ 安心させる】のだ。 è Amor che mi consiglia愛の神だ 私に 勧めるのは la tua felicità.君の幸せを。 RODRIGOロドリーゴ Confusa è l'alma mia私の魂は 混乱している fra tanti dubbi e tanti,たくさんの疑念の中で、 solo in sì fieri istantiこれほどに過酷な瞬間に ただ reggermi Amor potrà.愛の神 【↑】だけが 私を 支えることができるだろう。 DESDEMONAデズデーモナ Padre... tu brami... oh Dio!父よ… 君は切望しているのか… ああ 神よ! che la sua mano accetti?私が 彼【= ロドリーゴ】の手を 受け取る【= 結婚の申し出に 応じる】ことを? (A' miei tiranni affetti(私の暴虐な【≒ ひどい】感情に chi mai resisterà?)いったい 誰が 耐え【ることができ】るだろうか?) ELMIROエルミーロ (S'arresta!... ahimè!... sospira!(彼女は 【話すのを】止めている!… ああ! 彼女は 溜め息を吐いている che mai temer degg'io?)私は いったい 何を 心配しなくてはならないのか?) RODRIGOロドリーゴ Tanto soffrir, ben mio,これほど、私の最愛の人よ、 tanto il mio cor dovrà?これほど 私の心は 【↑】苦しまなければならないのだろうか? DESDEMONAデズデーモナ Deh taci!ああ 黙りなさい! ELMIROエルミーロ Che veggo!私は 何を 見ているのだ! RODRIGOロドリーゴ Mi sprezza!彼女は 私を 軽蔑している。 ELMIROエルミーロ Resiste.彼女は 抵抗している。 RODRIGO E DESDEMONAロドリーゴ と デズデーモナ Oh ciel! da te chieggoああ 天よ! 君から 私は 求める soccorso, pietà.救助を、哀れみを。 ELMIROエルミーロ Deh giura.さあ 誓いなさい。 DESDEMONAデズデーモナ Che chiedi?君は 何を 求めているのか? RODRIGOロドリーゴ Ah! vieni...ああ! 来なさい… DESDEMONAデズデーモナ Che pena!何という 苦悩! ELMIROエルミーロ Se al padre non cedi,もし 君が 父に 屈しないのであれば、 punirti saprà.彼【= 父 = エルミーロ】は 君を 罰することができるだろう。 |
||
[Larghetto] 3/4 B-flat major |
RODRIGOロドリーゴ Ti parli l'amore:愛が 君に 語るように: non essermi infida:私に 不実になるでない: quest'alma a te fidaこの魂は 【それは】君に 信頼できる【≒ 君に誠実な この心は】 più pace, non ha.もはや 平安を 持っていない。 ELMIROエルミーロ D'un padre l'amore父の愛を ti serva di guida:君が 利用するように 導きに: al padre t'affida,父を 信頼しなさい、 che pace non ha.その者は 平安を 持っていない。 RODRIGOロドリーゴ Pietà.哀れみを。 DESDEMONAデズデーモナ Di sorte il rigore運命の過酷さが a pianger mi guida:私を 泣きに 導く: quest'alma a lui fidaこの魂は 【それは】彼に 信頼できる【≒ 彼に 誠実な この心は】 più pace, non ha.もはや 平安を 持っていない。 |
D'un padre l'amore / ti serva di guida: serivir di ql.co. ―を利用する,使う。serva は servire の接続法現在1人称単数,2人称単数,3人称単数形。 |
|
[Moderato] 4/4 D major |
SCENA ⅩⅢ第13場 (Otello nel fondo del Teatro, seguito da alcuni suoi compagni, e dtti)(オテッロ 舞台の奥に、何人かの彼の仲間によって 後を追われ【≒ 何人かの彼の仲間が 後に続いて】、そして 前の場の人たち) OTELLOオテッロ L'infida, ahimè che miro!不実な女め、ああ; 私は 何を 見ているのだ! al mio rivale accanto!...私の恋敵の 脇に!… SEGUACI D'OTELLOオテッロの従者たち Taci!黙りなさい! RODRIGOロドリーゴ Ti muova il pianto mio,私の涙が 君を 動かすように、 ti muova il mio dolor.私の苦悩が 君を 動かすように。 ELMIROエルミーロ Risolvi...決心しなさい… OTELLOオテッロ Io non resisto!私は 耐え【られ】ない! SEGUACI D'OTELLOオテッロの従者たち Frenati...自制しなさい… ELMIROエルミーロ Ingrata figlia!恩知らずの娘め! RODRIGOロドリーゴ Oh Dio! chi mi consiglia?ああ 神よ! 誰が 私に 助言するのか? chi mi dà forza al cor!誰が 私の心に 力を 与えるのだ! DESDEMONAデズデーモナ Oh Dio! chi mi consiglia?ああ 神よ! 誰が 私に 助言するのか? chi mi dà forza al cor!誰が 私の心に 力を 与えるのだ! CORO合唱 Al rio destin rubello敵対する 悪い運命から chi mai sottrarla può?いったい 誰が 彼女を 救うことができるのか? DESDEMONAデズデーモナ Oh Dio! chi mi consiglia?ああ 神よ! 誰が 私に 助言するのか? chi mi dà forza al cor!誰が 私の心に 力を 与えるのだ! EMILIAエミーリア Al rio destin rubello敵対する 悪い運命から chi mai sottrarla può?いったい 誰が 彼女を 救うことができるのか? RODRIGOロドリーゴ Oh Dio! chi mi consiglia?ああ 神よ! 誰が 私に 助言するのか? chi mi dà forza al cor!いったい 誰が 彼女を 救うことができるのか? ELMIROエルミーロ Al rio destin rubello敵対する 悪い運命から chi mai sottrarla può?いったい 誰が 彼女を 救うことができるのか? Deh giura...さあ 誓いなさい… OTELLOオテッロ Ah ferma...ああ 止めなさい… DESDEMONA, EMILIA, RODRIGO, ELMIRO E COROデズデーモナ,エミーリア,ロドリーゴ,エルミーロ と 合唱 Otello!..オテッロ!… Il cuore nel sen gelò!胸の中で 心臓が 凍り付いた! |
||
Allegro 4/4 C major |
ELMIROエルミーロ Che brami?君は 何を 切望しているのか? OTELLOオテッロ Il suo core...彼女の心を… Amore mel diede,愛の神が それ【= 彼女の心】を 私に 与えた、 e Amore lo chiede,そして 愛の神が それを 求めている、 Elmiro, da te.エルミーロよ、君から。 ELMIROエルミーロ Che ardire!..何という 厚かましさだ!… DESDEMONAデズデーモナ Che affanno!何という 不安だ! RODRIGOロドリーゴ Qual'alma superba!何という 高慢な魂だ! OTELLOオテッロ (a Desdemona)(デズデーモナに) Rammenta... mi serba覚えていなさい… 私に 持ち続けなさい intatta la fè.忠誠を 手付かずのまま【≒ 私に対しての誠意を 損なわずにいなさい】。 RODRIGOロドリーゴ E qual dritto mai,それで いったい どのような権利が、 perfido! su quel core恥ずべき男め! あの心について vantar con me potrai,私と 言い張ることができるであろうというのか、 per renderlo infedel?それ【≒ 彼女の心】を 不実にしてでも【≒ 恥ずべき男め、いったい どのような権利で デズデーモナの心を 私と 争えるというのか、彼女の心を 不実にさせてまで】? OTELLOオテッロ Virtù, costanza, amore,徳、意志の強固、愛、 il dato giuramento...与えられた誓いだ… ELMIROエルミーロ Misero me! che sento?哀れな私だ! 私は 何を 聞いたのか? Giurasti?..君は 【愛を】誓ったのか? DESDEMONAデズデーモナ È ver: giurai...それは 真実だ: 私は 誓った… ELMIRO E RODRIGOエルミーロ と ロドリーゴ Per me non hai più fulmini私に 君【≒ 次行の 情け容赦しない天】は 持っていないのか さらに多くの雷を inesorabil ciel!情け容赦しない天よ! ELMIROエルミーロ Vieni.来なさい! OTELLOオテッロ T'arresta!止まりなさい! RODRIGOロドリーゴ Invano.虚しく l'avrai tu mio nemico...私の敵である 君は 彼女を 手に入れるだろう【≒ 彼女を自分のものにしようとしても 無駄なことだ】… ELMIROエルミーロ Figlia!... ti maledico...娘よ!… 私は 君を 呪う… DESDEMONA, EMILIA, RODRIGO, OTELLO E COROデズデーモナ,エミーリア,ロドリーゴ,オテッロ と 合唱 Ah!..ああ!… DESDEMONA, EMILIA, RODRIGO, OTELLO, ELMIRO E COROデズデーモナ,エミーリア,ロドリーゴ,オテッロ,エルミーロ と 合唱 che giorno d'orror!..何という 恐怖の日だ!… |
Invano. / l'avrai tu mio nemico... クリティカルエディション総譜では Invano の後にピリオドが打たれて2文になっているのだが、これだと意味が採りづらい。初演時の印刷台本ではこのピリオドがなく1文になっており、ここでもそのように理解した。 |
|
Maestoso 4/4 A-flat major |
DESDEMONA, EMILIA, RODRIGO, OTELLO, ELMIRO E COROデズデーモナ,エミーリア,ロドリーゴ,オテッロ,エルミーロ と 合唱 Incerta l'anima不確かな魂は vacilla e geme,よろめいている そして 呻いている。 la dolce speme甘い希望は fuggì dal cor.心から 過ぎ去った。 |
||
Stretta del Finale Primo Allegro 4/4 C major |
RODRIGOロドリーゴ Parti crudel.立ち去れ 酷い男め。 (Elmiro la prende, e protetto da suoi, la conduce via. Ella rimirando con dolcezza Otello, s'allontana da lui)(エルミーロは 彼女を 掴む、そして 彼の【従者たち】に守られて、彼女を 連れ去る。彼女は いたわりをもって オテッロを見詰めて、彼から遠ざかる) OTELLOオテッロ Ti sprezzo.私は 君を 軽蔑する。 DESDEMONAデズデーモナ Padre!...父よ!… ELMIROエルミーロ Non v'è perdono.許しは ない。 RODRIGOロドリーゴ Or or vedrai chi sono,今すぐ 君は 分かるだろう 私が 誰であるか、 vedrai.分かるだろう。 OTELLOオテッロ Paventa il mio furor!私の激情を 恐れよ! Paventa!恐れよ! DESDEMONA, RODRIGO, OTELLO, ELMIRO E COROデズデーモナ,ロドリーゴ,オテッロ,エルミーロ と 合唱 Smanio, deliro e fremo...私は 動揺し、錯乱し そして 震えている… no, non fu mai più fieroいいや、より残忍だったことはなかった d'un rio destin severo過酷な 悪意のある運命の il barbaro tenor!残酷な状態が! RODRIGO E OTELLOロドリーゴ と オテッロ Or or vedrai chi sono:今すぐ 君は 分かるだろう 私が 誰であるか、 paventa il mio furor!私の激情を 恐れよ! DESDEMONAデズデーモナ Padre!...父よ!… ELMIROエルミーロ Non v'è perdono.許しは ない。 DESDEMONA, RODRIGO, OTELLO, ELMIRO E COROデズデーモナ,ロドリーゴ,オテッロ,エルミーロ と 合唱 Smanio, deliro e fremo...私は 動揺し、錯乱し そして 震えている… no, non fu mai più fieroいいや、より残忍だったことはなかった d'un rio destin severo過酷な 悪意のある運命の il barbaro tenor!残酷な状態が! |
Smanio, deliro e fremo 合唱には deliro e がない。 |
|
ATTO SECONDO | |||
[Recitativo] |
Allegro vivace 4/4 c minor |
||
[Recitativo] 4/4 (E-flat major) |
DESDEMONAデズデーモナ Lasciami.私を 放っておきなさい。 RODRIGOロドリーゴ È dunque vanoそれでは 無益なのか il mio dolor, l'ira del padre.私の苦悩は、父の怒りは。 DESDEMONAデズデーモナ Ah vanne... io per te sol sono infelice.ああ 行ってしまいなさい… 私は ただ 君の理由だけに 不幸だ。 RODRIGOロドリーゴ Oh Dio! Non dirmi così...ああ 神よ! 私に そんな風に 言うでない… se mai per me sereniもし 万が一にも 私によって io veggo a scintillar questi occhi tuoi,私が 見る 【↑】のなら その 君の両目が 【↑】晴れ晴れと 輝くのを farò, bell'idol mio, ciò che tu vuoi.私は しよう、美しい 私の偶像よ、君の望むことを。 DESDEMONAデズデーモナ Placami dunque il padre,それでは 私の父を 静めなさい、 rendimi l'amor suo:彼の愛を 私に 返しなさい: mostra nel petto胸の中に 見せなさい qual grand'alma rinchiudi, e generosa.どのような偉大な魂を 君が 収めているのか、そして 寛容な【魂を】 RODRIGOロドリーゴ Ma Otello, Otello adori.だが オテッロを、君は オテッロを 熱愛している。 DESDEMONAデズデーモナ Io gli son sposa.私は 彼の花嫁だ。 |
||
N. 6 [Aria Rodrigo] Rodrigo |
Maestoso 4/4 E-flat major |
RODRIGOロドリーゴ Che ascolto! ahimè! che dici!私は 何を聞いているのだ! ああ! 君は 何を 言っているのだ! Ah! come mai non sentiああ! いったい どうして 君は 感じないのか pietà de' miei tormenti,同情を 私の苦悩に、 del mio tradito amor?私の 傷つけられた愛に? |
緩(カヴァティーナ)/急(カバレッタ)の二部形式のアリア。 緩(カヴァティーナ) 歌詞が繰り返される中で perché, や oh Dio が挟まれる。 |
Allegro 4/4 E-flat major |
Ma se costante seiだが もし 君が 確固としているならば nel tuo rigor crudele,君の 残酷な厳しさにおいて、 se sprezzi i preghi miei,もし 君が 私の願いを 無視するのならば、 saprò con questo braccio私は できるだろう この腕で punire il traditor.裏切者を 罰することが。 |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部) |
|
(Allegro) 4/4 E-flat major |
Ah come mai non sentiああ! いったい どうして 君は 感じないのか pietà de' miei tormenti,同情を 私の苦悩に、 del mio tradito amor?私の 傷つけられた愛に? Se sprezzi i preghi miei,もし 君が 私の願いを 無視するのならば、 sparò con questo braccio私は できるだろう この腕で punire il traditor.裏切者を 罰することが。 (parte)(退場する) |
急(カバレッタ) カバレッタの歌詞がすべてカヴァティーナとテンポ・ディ・メッゾで用いられた歌詞の再利用になっている。 |
|
[Recitativo Dopo l'Aria Rodrigo] | [Recitativo] 4/4 (C major) |
SCENA Ⅱ第2場 (Desdemona sola)(デズデーモナ一人) DESDEMONAデズデーモナ M'abbandonò!.. disparve!..彼は 私を 置き去りにした!… 彼は 消え去った!… Oh me infelice!ああ 不幸な私! che ma farò?..ところで 私は 何を しようか? restar degg'io?..私は 留まらなくては ならないのか? seguirlo!.. terribile incertezza!彼の後を追う!… 恐ろしい 決断のなさだ! Ahi! chi m'aita? chi mi consiglia?ああ! 誰が 私を 救けるのか? 誰が 私に 助言を与えるのか? SCENA Ⅲ第3場 (Emilia, e detta)(エミーリア、そして 前の場の女) Ah vieni, Emilia, vieni,ああ 来なさい、エミーリアよ、来なさい、 soccorrimi, previeni私を 助けなさい、起こらないようにしなさい l'ultima mia rovina.私の最後の崩壊を。 EMILIAエミーリア Che avvenne? oh ciel! perché così tremante?何が 起きたのか? ああ 天よ! どうして そのように 震えるのか? DESDEMONAデズデーモナ Io perderò per sempre il caro amante.私は 失うだろう 永久に 愛しい愛する人を。 EMILIAエミーリア Chi tel rapisce?誰が 君から 彼を 強奪するのか? DESDEMONAデズデーモナ Il suo rival Rodrigo: a lui svelai,彼の恋敵である ロドリーゴが: 彼に 私は 明かした、 che sposa...【私が】 花嫁であることを… EMILIAエミーリア Ahi! che facesti?ああ! 君は 何を したのか? DESDEMONAデズデーモナ È tardo il pentimento:後悔は 【もう】遅い: in sì fatal momentoこのように 死に至らせる瞬間【≒ 死が迫る時に】に sol m'addita un cammin, onde sicuraただ 私に 示しなさい 道を、そこから 確実に possa giungere a lui.私が 彼に 辿り着くことができるであろう【道を】。 EMILIAエミーリア Ma se sorpressa sei... se il genitore...しかし もし 君が 不意に捕まえられたら… もし 父が… DESDEMONAデズデーモナ Più riguardi non ho, non ho più tema,私は もう 用心を 持たない、私は もう 恐れない、 presente è il suo periglio al mio pensiere.彼の危険だけが 私の考えに いる。 Salvisi... a lui mi chiama il mio dovere.救おう… 私の義務が 彼へと 私を 呼んでいる。 parte退場する |
|
Allegro 4/4 (C major) |
SCENA Ⅳ第4場 (Emilia sola)(エミーリア一人) |
||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
EMILIAエミーリア Ella a perdersi va. Seguirla io deggio...彼女は 身を滅ぼしに 進んでいる。私は 彼女の後を追わなくてはならない… sola... che fo.. se giunge il padre?..【けれども】一人で… 私は 何を しているのか… もし 父【= エルミーロ】が来たら?… |
||
(Allegro) 4/4 (C major) |
|||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
Ah prima le mie compagne,ああ まず第一に 私の仲間たちが、 le sue fide de amiche avvertire si denno;彼女の友たちの頼りになる女たちが 知らされるべきだ; alcun soccorso posso almeno sperar...何らかの助けを 私は 少なくとも 期待できる… in qual cimento何という危険に è questo cuore in sì fatal momento!あるのか この心は このように 死に至らせる瞬間【≒ 死が迫る時に】に! |
||
N. 7 [Scena e Duetto Otello - Iago] |
Moderato maestoso 4/4 E-flat major |
SCENA Ⅴ第5場 (Giardino nella casa di Otello)(オテッロの家の庭) (Otello assiso nella massima costernazione)(オテッロ 座って 最大の悲嘆で) |
|
Recitativo 4/4 (E-flat major) |
OTELLOオテッロ Che feci!.. ove mi trasse私は 何を したのだ!… どこに 私を 引き寄せるのだ un disperato amor! Io gli posposi絶望した愛は! 私は それ【= 愛 男性名詞】に 低く見た la gloria, l'onor mio!栄光を、私の名誉を【≒ 私は 栄光や名誉よりも 愛を 重んじていた】! Ma che!... mia non è forse?.. in faccia al cieloだが いったい 何が!… 彼女は ことによると 私のものではないのか?… 天に向かって fede non mi giurò? Non diemmi in pegno彼女は 私に 忠誠を 誓っていなかったのでは? 彼女は 私に 与えなかったのでは 【愛の】証しに la sua destra, il suo cor?..彼女の右手を、彼女の心を?… Potrò lasciarla?私は 彼女と 別れることが できるのだろうか Obbliarla potrò?.. Potrò soffrire彼女を 忘れることが できるのだろうか?… 私は 耐えられるのだろうか vederla in braccio ad altri,見るのを 彼女が 他の男たちの 腕の中にいるのを、 e non morire?そして 死なないでいるのを【耐えられるのだろうか】 SCENA Ⅵ第6場 (Iago, e detto)(イアーゴ、そして 前の場の男) IAGOイアーゴ Perché mesto così?... scuotiti. Ah mostra,なぜ そのように 悲し気なのか?… 君は 取り乱している。ああ 見せなさい、 che Otello alfin tu sei.つまるところ 君が オテッロであることを。 OTELLOオテッロ Lasciami in preda私を 餌食 えじき に させておきなさい al mio crudo destin.私の残酷な運命の IAGOイアーゴ Del suo rigore彼女の厳しさを hai ragion di lagnarti:嘆く理由を 君は 持っている; ma tu non dei, benché nemico il fato,だが 君は たとえ 運命は 敵対しているにしても、、 cader, per nostro scorno, invendicato.倒れ 【↑】てはならない、私たちの恥なので、仕返しをせぬまま。 OTELLOオテッロ Che far degg'io?私は 何を すべきなのか? IAGOイアーゴ Ascoltami... che pensi?...私【の言うこと】を 聞きなさい… 君は 何を 考えているのか?… in te stesso ritorna...君自身に 戻りなさい… I tuoi trionfi di difesa ti son...君の勝利が きみにとって 防御である… sono bastanti i tuoi nemici ad atterrir...それらは 必要である 君の敵たちを 恐れさせるために… a farti sprezzare ogni altro affetto.君に あらゆる他の情愛を 軽蔑させるために。 OTELLOオテッロ Quai terribili accenti!何という 恐ろしい口調【≒ 言葉】だ! L'interrotto parlare,途切れ途切れの話しぶりが、 i dubbi tuoi, l'irressoluto volto君の躊躇いが、ぐずぐずした顔つき【≒ 曖昧な表情】が in quanti affanni involto何という苦悩の中に 包んだことか hanno il povero cor! Spiegati. Ah! non tenermi哀れな心を! 説明しなさい。ああ! 私を 置いておくでない in sì fiera incertezza.このような 残酷な不確かさの中に。 IAGOイアーゴ Altro dirti non so: da' labbri miei他のことを 私は 言うことができない: 私の唇【≒ 口】から altro chieder non dei.君は 他のことを 求めてはいけない。 OTELLOオテッロ Chieder non deggio?.. Oh Dio! Quanto s'accresce私は 求めてはいけないのか?… ああ 神よ! 何と 増していることか il mio timor dal tuo silenzio!.. Ah forse私の不安が 君の沈黙によって!… ああ もしかして l'infida!..不実な女なのだ!… IAGOイアーゴ Ah! placa alfin, placa i rimorsi tuoi.ああ! 静めなさい 最後には、 静めなさい 君の【良心の】呵責を。 OTELLOオテッロ Tu m'uccidi così. Meno infelice sarei君は このように 私を 殺している。 より少なく 不幸に なるだろう se il vero io conoscessi.もし 私が 真実を 知るのなら。 IAGOイアーゴ Ebbene il vuoi?.. T'appagherò...では 君は そのこと【= 真実を知ること】を 望むのか?… 君は 満足するだろう… che dico?.. io gelo!私は 何を 言っているのか?… 私は 凍り付く! OTELLOオテッロ Parla una volta.話しなさい 一度。 IAGOイアーゴ Oh qual arcano io svelo!ああ 何という謎を 私は 明かすのだ! Ma l'amistà lo chiede,だが 友情が それを 求めている io cedo all'amista. Sappi...私は 友情に 屈する。 知りなさい… OTELLOオテッロ Ah taci!.. Ahimè! tutto compresi.ああ 黙りなさい!… ああ! 私は すべてを 理解した。 IAGOイアーゴ E che farai?それで 君は 何をするだろうか? OTELLOオテッロ Vendicarmi, o morir.仕返しをする、さもなければ 死ぬ。 IAGOイアーゴ Morir non dei,君は 死んではいけない、 e nel sprezzarla avraiそして 彼女を 軽蔑することで 君は 手に入れるだろう vendetta intera.完全な復讐を。 OTELLOオテッロ Ma non tremenda e fiera,しかし 恐ろしくない そして 残酷で【ない】、 qual'io la bramo, quale Amor richiede...それを 私が 切望しているようには、愛の神が 強く求めているようには【彼女を 軽蔑することは 私が 望むほどには また 愛の神が 求めるほどには 恐ろしくも 残酷でもない復讐だ】… (con incertezza)(ためらいをもって) Ma sicuro son io del suo delitto?..だが 私は 彼女の罪を 確信しているのか?… Ah se tal fosse... quale in me... Tu Iagoああ もし 彼女が 同様であるならば… 私においてのように… 君は イヤーゴよ mi comprendi, ed il tradirmi or fora私を 理解している【≒ 君は 私が どんな人間か 分かっているな】、だから 今 私を 欺くことは delitto ancora in te.君の罪 【↑】でもあるのだが。 IAGOイアーゴ Che mai tu pensi?君は いったい 何を 考えているのか? confuso io son... ti parli私は 当惑している… 君に 語るように questo foglio per me.この書類が 私の代わりに。 OTELLOオテッロ Che miro! oh Dio!私は 何を 眺めているのだ! ああ 神よ! Sì! di sua man son questeそうだ! これらは 彼女の手【≒ 筆跡】による le crudeli d'amor cifre funeste.死を招く 残酷な 愛の組み合わせ文字【≒ 愛の文だ】だ。 |
hanno il povero cor! Spiegati. Ah! non tenermi Spiegati. がイアーゴの台詞になっている場合があるが、クリティカルエディション総譜ではこれもオテッロの台詞。 Ah se tal fosse... quale in me... Tu Iago tale... quale... の構文。 |
|
[Duetto Otello - Iago] [Moderato] 4/4 A major |
OTELLOオテッロ Non m'inganno; al mio rivale私は 間違っていない: 私の恋敵に宛てて l'infedel vergato ha il foglio;不実な者は 書類を 手書きした; più non reggo al mio cordoglio!私は もう 耐え【られ】ない 私の嘆きに。 Io mi sento lacerar.私は 引き裂かれるのを 感じている。 IAGOイアーゴ (Già la fiera gelosia(既に 残忍な嫉妬が versò tutto il suo veleno,その【≒ 嫉妬の】毒を すっかり こぼして、 tutto già gl'innonda il seno,既に すっかり 彼の胸を 溢れさせている、 e mi guida a trionfar.)そして それは 私を 勝利しに 案内している。) OTELLOオテッロ (legge)(読む) Caro bene... e ardisci ingrata?..愛しい最愛の人よ… それで 恩知らずの女は 厚かましも するのか? IAGOイアーゴ (Nel suo ciglio il cor gli veggo.)(彼の眼に 私は 彼の心を 見ている。 ) OTELLOオテッロ Ti son fida... Ahimè! che leggo!私は 君に 忠実だ… ああ! 私は 何を 読んでいるのだ! Quali smanie io sento al cor!何という動揺を 私は 心に 感じているのだ! IAGOイアーゴ (Quanta gioia io sento al cor!)(何という 歓喜を 私は 心に 感じていることか!) OTELLOオテッロ Di mia chioma un pegno... Oh cielo!私の髪の毛でできた 証しを… ああ 天よ! IAGOイアーゴ (Cresce in lui l'atroce affetto.)(彼の中で 恐ろしい感情が 増大している。) OTELLOオテッロ Dov'è mai l'offerto pegno?いったい どこに あるのか 贈られた証しは? IAGOイアーゴ Ecco... il cedo con orror!ほら ここに… それを 私は 【君に】 引き渡す 恐しさをもって! |
||
Andantino 2/4 A major |
OTELLOオテッロ No, più crudele un'anima...いいや さらに残酷な魂は no, che giammai si vide!いいや、それは 決して 見られなかった! Il cuor mi si divide私の心は 分裂している【≒ 引き裂かれている】 per tanta crudeltà.夥しい残酷さによって。 IAGOイアーゴ (No, più contenta un'anima...(いいや、さらに満足した魂は… Propizio il ciel m'arride;天は 好意的に 私に 微笑んでいる; l'indegna alfin cadrà.)恥ずべき女は ついに 倒れるだろう。) |
||
Allegro 4/4 A major |
OTELLOオテッロ Che far degg'io?私は 何を すべきなのか? IAGOイアーゴ Ti calma.落ち着きなさい。 OTELLOオテッロ Lo speri invano.そのことを 君は 無駄に 期待している【≒ そんなことを望んでも 無駄だ】。 IAGOイアーゴ Che dici?君は 何を 言っているのか? OTELLOオテッロ Spinto da furie ultrici復讐の激怒に 突き動かされて punirla alfin saprò.私は ついに 彼女を罰することができるだろう。 IAGOイアーゴ Ed oserai?..それで 君は 思い切ってするであろうか? OTELLOオテッロ Lo guiro.それを 私は 誓う。 IAGOイアーゴ E Amor...それでは 愛は… OTELLOオテッロ Io più nol curo.私は もう それに 配慮しない。 IAGOイアーゴ T'affida, i tuoi nemici信頼しなさい、君の敵たちを io dunque abbatterò.それでは 私が 打ち倒そう。 |
||
(Allegro) 4/4 A major |
OTELLOオテッロ L'ira d'avverso fato敵意のある運命の怒りを io più, no, non temerò.私は もう、いいや、恐れないだろう。 IAGOイアーゴ (L'ira d'avverso fato(敵意のある運命の怒りを temer più non dovrò.)私は もう 恐れなくてよいのだろう。) OTELLOオテッロ morrò, ma vendicato,私は 死のう、だが 復讐を果たして、 sì... dopo lei morrò.そうだ… 彼女の後に 私は 死のう。 IAGOイアーゴ Ed oserai?..それでは 君は 思い切ってするであろうか?… OTELLOオテッロ Sì, lo guiro.そうだ、それを 私は 誓う。 IAGOイアーゴ E Amor...それでは 愛は… OTELLOオテッロ Io più nol curo.私は もう それに 配慮しない。 L'ira d'avverso fato敵意のある運命の怒りを io più, no, non temerò.私は もう、いいや、恐れないだろう。 IAGOイアーゴ (L'ira d'avverso fato(敵意のある運命の怒りを temer più non dovrò:私は もう 恐れなくてよいのだろう。) OTELLOオテッロ morrò, ma vendicato,私は 死のう、だが 復讐を果たして、 sì... dopo lei morrò.そうだ… 彼女の後に 私は 死のう。 IAGOイアーゴ di lui trionferò.)彼に 私は 勝利を収めるだろう。) (parte)(【ロドリーゴは】退場する) |
||
[Recitativo] Dopo il Duetto [Otello - Iago] |
Recitativo 4/4 (C major) |
SCENA Ⅶ第7場 (Otello solo)(オテッロ一人) OTELLOオテッロ E a tanto giunger puote それで そこまで 到達することができるのだ un ingannevol cor!.. Ma chi s'avanza?人を騙す心は【≒ 欺瞞に満ちた心は これほどまでのことができるのだ】!… ところで 誰が 近付いて来るのか? SCENA Ⅷ第8場 (Rodrigo e detto)(ロドリーゴ そして 前の場の男) Rodrigo... e che mai brami?..ロドリーゴか… それで 私に 何を 切望するのか? RODRIGOロドリーゴ A te ne vengo君のところに 来ている 私が tuo nemico, se il voui:【すなわち】君の敵だ、もし それを 君が 望むならば: se al mio voler tu cedi,もし 私の望みに 君が 譲歩するなら、 tuo amico, e difensor.君の友だ、そして 擁護者だ。 OTELLOオテッロ Uso non sono私は 慣れていない a mentire, a tradir. Io ti disprezzo嘘を吐くことに、欺くことに。私は 軽蔑する 君を nemico, o difensor.敵を、あるいは 擁護者を【≒ 敵であろうが あるいは 擁護者であろうが】。 RODRIGOロドリーゴ (a parte)(傍らで) (Oh che baldanza!)(ああ 何という 向こう見ずだ!) Non mi conosci ancor?まだ 君は 私が 分からないのか? OTELLOオテッロ Sì, ti conosco,いいや、私は 君を 認識している、 perciò non ti pavento;それゆえに 私は 君を 恐れていない; sol disprezzo, il ripeto, io per te sento.ただ 私は 軽蔑しているだけだ、 |
E a tanto giunger puote giungere a tanto そこまで到達する |
N. 8 Terzetto [Desdemona - Rodrigo - Otello] Desdemona Rodrigo Otello |
Allegro 4/4 C major |
RODRIGOロドリーゴ Ah vieni, nel tuo sangueああ 来なさい、君の血の中で vendicherò: le offese:私は 侮辱の 仕返しをしよう: se un vano amor t'accese,もし 無駄な【≒ 希望のない】愛が 君に 火を点けたならば distruggerlo saprò.私は それを 消滅させることができるだろう。 OTELLOオテッロ Or or vedrai qual chiudo今すぐ 君は 見るだろう 私が 収めている様子を giusto furor nel seno:正義の激情を 胸の中に: sì, vendicarmi appienoそうだ、私は 完全に 仕返しを di lei, di te dovrò.すべきだろう 彼女に、君に。 RODRIGO ED OTELLOロドリーゴ と オテッロ Qual gioia!何という歓喜だ! Il traditor giàa parmi私には 思われる 既に 裏切者は veder traffito al suol.地に 刺し貫かれているのが 見えるように【≒ 私には 裏切者が 刺し貫かれて 地に倒れている姿が 見えるかのようだ】。 all'armi! cadrai traffito al suol.武器を持て! 君は 刺し貫かれて 地に 倒れるだろう。 SCENA Ⅸ第9場 (Desdemona giunge, e detti)(デズデーモナが 来る、そして 前の場の人たち) DESDEMONAデズデーモナ agitata取り乱して Ahimè! fermate,ああ! 止めなさい、 (arrestandoli)(彼らを 阻んで) udite...聞きなさい… solo il mio cor ferite私の心臓だけを 傷つけなさい cagion di tanto duol.これほどたくさんの 悲しみの原因である。 |
|
Andante mestoso 2/4 E-flat major |
RODRIGO ED OTELLOロドリーゴ と オテッロ Che fiero punto è questo!これは 何という 厳しい時点【≒ 瞬間】だ! L'indegna a me d'innante!責められるべき女が 私の前に! DESDEMONAデズデーモナ Che fiero punto è questo!これは 何という 厳しい時点【≒ 瞬間】だ! L'ingrato a me d'innante!恩知らずの男が 私の前に! RODRIGO ED OTELLOロドリーゴ と オテッロ Pinta ha sul reo sembiante彼女の邪な顔に 浮かんでいる tutta l'infedeltà.すべての 不実が。 DESDEMONAデズデーモナ non cangia di sembiante!彼は 表情を 変えない! non sente ancor pietà.彼は まだ 哀れみを 感じていない。 |
||
Allegro 4/4 C major |
OTELLOオテッロ Deh seguimi.さあ 私に ついて来い。 RODRIGOロドリーゴ Ti sieguo.私は 君の 後を追う。 OTELLOオテッロ Son pago alfin.私は ついに 満足している。 DESDEMONAデズデーモナ T'arresta.止まりなさい。 OTELLOオテッロ Vanne.行ってしまえ。 DESDEMONAデズデーモナ Che pena è questa!これは 何という苦悩だ! Che fiera crudeltà!何という厳しい残酷さだ! Perché da te mi scacci?...なぜ 君は 君から 私を 追い払うというのか?… Qual barbaro furoreどんな 残酷な激情が così ti accende il core,このように 君の心に 火を点けたのか che vaneggiar ti fa?何が 君に うわ言を言わせたのか? OTELLOオテッロ Ah perfida? ed ardisci...ああ 不実な女か? それで 君は 思い切ってするのか… RODRIGOロドリーゴ T'affretta.自制しなさい。 DESDEMONAデズデーモナ Che mai sento!私は いったい 何を 聞いているのだ! DESDEMONA, RODRIGO ED OTELLOデズデーモナ,ロドリーゴ と オテッロ Più barbaro tormentoさらに 残酷な 苦悩は di questo non si dà.これよりも 起こらない。 |
||
Vivace 4/44 C major |
DESDEMONAデズデーモナ Ah per pietà!ああ 後生だから! OTELLOオテッロ Mi lascia.私を 放っておきなさい。 DESDEMONAデズデーモナ Ma che ti feci mai?しかし 私が いったい 君に 何を したのか? OTELLOオテッロ Or ora lo saprai...今すぐ 君は それを 知るだろう。 RODRIGOロドリーゴ Mi siegui.私に ついて来い OTELLOオテッロ Ti sieguo.私は 君の 後を追う。 DESDEMONAデズデーモナ Ah per pietà!ああ 後生だから! OTELLOオテッロ Mi lascia.私を 放っておきなさい。 DESDEMONAデズデーモナ Ma che ti feci mai?しかし 私が いったい 君に 何を したのか? OTELLOオテッロ Vedrai... vedrai...君は 分かるだろう… 君は 分かるだろう… (fra sé)(自分い) (Ah! finge l'indegna ancor!)(ああ! 恥ずべき女は また とぼけている。) |
||
(Vivace) 4/4 C major |
RODRIGOロドリーゴ Fra tante smanie, e tanteこれほどたくさんの、そして たくさんの動揺の中で quest'alma mia delira,この私の魂は 錯乱している、 vinto è l'amor dall'ira,愛は 怒りによって 打ち負かされている、 spira vendetto il cor.心は 復讐を 表している。 DESDEMONAデズデーモナ Quest'alma che deliraこの魂は それは 錯乱している su i labbri miei già spira:【魂は】 私の唇の上で もう 息絶えている: Sento mancarmi il cor!私は 私の心が 弱っているのを 感じている。 RODRIGO ED OTELLOロドリーゴ と オテッロ Fra tante smanie, e tanteこれほどたくさんの、そして たくさんの動揺の中で quest'alma mia delira.この私の魂は 錯乱している、 DESDEMONAデズデーモナ Quest'alma che deliraこの魂は それは 錯乱している su i labbri miei già spira.私の唇の上で もう 息を引き取っている。 RODRIGOロドリーゴ All'armi!武器を取れ! DESDEMONAデズデーモナ Fermate!止めなさい! RODRIGOロドリーゴ Che gioia!何という歓喜だ! OTELLOオテッロ All'armi!武器を取れ! DESDEMONAデズデーモナ Fermate!止めなさい! OTELLOオテッロ Che gioia!何という歓喜だ! DESDEMONAデズデーモナ Ah fermate, deh sentite almen pietà!ああ 止めなさい、ああ せめて 哀れみを 感じなさい! RODRIGOロドリーゴ Fra tante smanie, e tanteこれほどたくさんの、そして たくさんの動揺の中で quest'alma mia delira,この私の魂は 錯乱している、 vinto è l'amor dall'ira,愛は 怒りによって 打ち負かされている、 spira vendetto il cor.心は 復讐を 表している。 DESDEMONAデズデーモナ Quest'alma che deliraこの魂は それは 錯乱している su i labbri miei già spira:【魂は】 私の唇の上で もう 息絶えている: Sento mancarmi il cor!私は 私の心が 弱っているのを 感じている。 RODRIGO ED OTELLOロドリーゴ と オテッロ Fra tante smanie, e tanteこれほどたくさんの、そして たくさんの動揺の中で quest'alma mia delira.この私の魂は 錯乱している、 DESDEMONAデズデーモナ Quest'alma che deliraこの魂は それは 錯乱している su i labbri miei già spira:【魂は】 私の唇の上で もう 息絶えている: OTELLOオテッロ vinto è l'amor dall'ira,愛は 怒りによって 打ち負かされている、 spira vendetto il cor.心は 復讐を 表している。 DESDEMONAデズデーモナ quest'alma che deliraこの魂は それは 錯乱している su i labbri miei già spira:【魂は】 私の唇の上で もう 息絶えている: RODRIGOロドリーゴ vinto è l'amor dall'ira,愛は 怒りによって 打ち負かされている、 spira vendetto il cor.心は 復讐を 表している。 (sviene)(【デズデーモナは】卒倒する) (parte)(【ロドリーゴは】退場する) (parte)(【オテッロは】退場する) |
||
[Recitativo] Dopo il Terzetto | Recitativo 4/4 (C major) |
EMILIAエミーリア Desdemona! che veggo! Al suol giacente...デズデーモナよ! 私は 何を 見ているのだ! 地に 横たわって… pallor di morte le ricpore il volto...死の蒼白 そうはく が 彼女の顔を 覆っている… misera... che farò? chi mi soccorre?哀れな女だ… 私は 何をしようか? 誰が 私を 援助するのか? Quale aiuto recarle?どのような助けを 彼女に もたらすのか? Ah tu dell'alma mia parte più caraああ 君よ 最も愛しい 私の魂の一部である【君よ】 ascoltami, deh riedi a questo seno...私【の言うこと】を 聞きなさい、ああ この胸に 戻りなさい… La tua amica ti chiama...君の友が 君を 呼んでいる… Ahi! non risponde!ああ! 彼女は 答えない! Gelo è il petto e la man...胸は 氷【のよう】である そして 手は 【氷のようである】… Chi me l'invola? Quel barbaro dov'è?誰が 私から 彼女を 掠め取ったのか? あの残酷な男は どこにいるのか? vorrei... Che miro?..私は したいのだが… 私は 何を 眺めているのか?… |
|
Adagio 4/4 (C major) |
Apre i languidi lumi...彼女が 弱々しげな目を 開けている… Oh ciel! respiro!ああ 天よ! 私は 息を吐いている【≒ ほっとしている】! DESDEMONAデズデーモナ Chi sei?..君は 誰なのか? EMILIAエミーリア Non mi conosci?私を 知らないのか【≒ 私が 分からないのか】? DESDEMONAデズデーモナ Emilia!エミーリアだ! EMILIAエミーリア Ah quella,ああ その女だ、 quella appunto son'io.私は まさに その女だ。 Un più fatal periglio...より死に至らせる危険が… Siegui i miei passi...私の歩みに 付いてきなさい… DESDEMONAデズデーモナ Ma potrò rivederlo?..だが 彼に 再び会うことができるのか?… Ah se nol sai, ああ もし 君が そのことを 知らないのならば、 vanne, cerca, procura...ここから 行きなさい、捜しなさい、手に入れなさい【≒ 見つけ出しなさい】… EMILIAエミーリア E che mai chiedi?それで 君は いったい 何を 求めているのか? non so...私は できない… DESDEMONAデズデーモナ Confusa, oppressa...混乱して、抑圧されて、 in me non sò più ritrovar me stessa!私の中に 私は もう 見付けることができない 自分自身を! |
||
N. 9 Finale Secondo Desdemona Elmiro Coro |
Allegro agitato 4/4 e minor |
DESDEMONAデズデーモナ Che smania? ahimè! che affanno?何の動揺なのか? ああ 何の苦悩なのか? Chi mi soccorre, oh Dio!誰が 私を 助けるのだ、ああ 神よ! Per sempre ahi! l'idol mio永遠に ああ! 私の偶像を perder così dovrò!私は このように 失わなくてはならないだろう! Barbaro ciel tiranno!暴虐な 残酷な天よ! Da me se lo dividi,もし 君【= 天】が 彼を 私から 引き離すのなら salvalo almen: me uccidi:せめて 彼を 守りなさい: 【それから】私を 殺しなさい: contenta io morirò.【そうしたら】私は 満足して 死のう。 ah salvami l'idol mio,ああ 私の偶像を 守りなさい、 contenta io morirò.【そうしたら】私は 満足して 死のう。 |
|
(Allegro agitato) 4/4 G major |
SCENA ⅩⅠ第11場 (Coro di Damgielle; indi Coro di Confidenti poi Elmiro)(侍女たちの合唱; それから 腹心の友たちの合唱 それから エルミーロ) Qual nuova a me recate?..どんな情報を 君たちは 私に 持ってきているのか?… Men fiero, se parlate,もし 君たちが 話すなら、より少なく 厳しく、 si rende il mio dolor.なる 私の苦悩は【≒ もし 君たちが 話せば 私の苦悩は 和らぐだろう】。 CORO合唱 (Coro di Demigelle)(侍女たちの合唱) Freme il mio cuore e tace.私の心は 震え そして 沈黙している。 DESDEMONAデズデーモナ De' detti ah! più loquace言葉よりも ああ! より饒舌だ【≒ 雄弁だ】 è quel silenzio ancor!さらに その沈黙は! CORO合唱 (Coro di Demigelle)(侍女たちの合唱) Freme il mio cuore e tace.私の心は 震え そして 沈黙している。 DESDEMONAデズデーモナ Che smania? ahimè! che affanno?何の動揺なのか? 何の苦悩なのか? Chi mi soccorre, oh Dio!誰が 私を 助けるのだ、ああ 神よ! Per sempre ahi! l'idol mio永遠に ああ! 私の偶像を perder così dovrò!私は このように 失わなくてはならないだろう! Deh... parlate... l'idol mio...さあ… 話しなさい… 私の偶像を… men fiero, se parlate,もし 君たちが 話すなら、より少なく 厳しく、 si rende il mio dolor.なる 私の苦悩は【≒ もし 君たちが 話せば 私の苦悩は 和らぐだろう】。 De' detti ah! più loquace言葉よりも ああ! より饒舌だ【≒ 雄弁だ】 è quel silenzio ancor!さらに その沈黙は! |
||
4/4 E major |
(si avanza i Cro di Confidenti)(腹心の友たちの合唱が 近付く) Ah ditemi almen voi...ああ 私に 言いなさい せめて 君たちは… CORO合唱 Coro di Seguaci従者たちの合唱 Che mai saper tu voi?君は いったい 何を 知りたいのか? DESDEMONAデズデーモナ Se vive il mio tesoro.私の宝の人が 生きているかどうか。 CORO合唱 Vive, serena il ciglio...彼は 生きている、眼を 静めなさい… DESDEMONAデズデーモナ Salvo dal suo periglio?..彼の危険から 守られたのか?… Altro non brama il cor.【私の】心は 他のことは 切望しない。 ELMIROエルミーロ Qui!.. indegna!ここに!… 恥ずべき女め! DESDEMONAデズデーモナ Il genitore!父だ! ELMIROエルミーロ Del mio tradito onore私の傷つけられた名誉に come non hai rossor?どうして 君は 赤面を 持っていないのか【≒ 私の名誉が傷つけられて どうして 君は 恥じていないのだ】? CORO合唱 Damigelle侍女たち Oh ciel! qual nuovo orror!ああ 天よ! 何という 新しい 恐しさだ! ELMIROエルミーロ Oh ciel! qual nuovo orror!ああ 天よ! 何という 新しい 恐しさだ! |
||
Andantino 4/4 E major |
DESDEMONAデズデーモナ L'error d'un'infelice,【↓】私の 不幸の過ちを、 ah Padre, mi perdona,ああ 父よ、容赦しなさい、 se il padre m'abbandona,もし 父が 私を 捨てるならば da chi sperar pietà?誰から 哀れみを 望むのか? CORO合唱 Qual orror!何という 恐ろしさだ! ELMIROエルミーロ No, che pietà non merti.いいや、君は 哀れみに 値しない。 Vedrai fra poco, ingrata!見るだろう 間もなく、恥ずべき女め! qual pena è riserbataどのような処罰が 取っておかれているか per chi virtù non ha.美徳を持たない者に対して。 CORO合唱 Come cangiar nel pettoどうして 変わる【↓】ことができるのか 胸の中で può il suo paterno affetto彼の 父親の情愛が in tanta crudeltà?これほどたくさんの残酷さに? Qual orror!何という 恐ろしさだ! CORO合唱 Se nutre nel suo pettoもし 彼女が 彼女の胸の中で 育んでいるならば un impudico affetto慎みのない情愛を giusta è la crudeltà.【父親の】残酷さは 当然だ。 Qual orror!何という 恐ろしさだ! DESDEMONAデズデーモナ Padre, perdono, pietà!父よ、容赦しなさい、哀れみを!A quel severo aspettoその厳しい姿に più reggere non sa!それ【= 私の心】は もう 耐えられない! ELMIROエルミーロ Odio, furor, dispetto憎しみが、激情が、軽蔑が han la pietà nel petto,哀れみを 胸の中で、 cangiata in crudeltà.残酷さに 変えた。 |
più reggere non sa! 本来台本には A quel severo aspetto の1行前に Palpita il cor nel petto, という1行があったのだが、ロッシーニがこれを省いてしまったので、sa の主語が il cor だと分からなくなってしまった。そのため旧来の台本や楽譜ではこの sa を so に変えている場合がしばしばある。クリティカルエディション総譜では sa である。 |
|
ATTO TERZO | |||
N. 10 | Andante maestoso 4/4 E-flat major |
SCENA PRIMA第1場 (La scena rappresenta una stanza da letto)(舞台は 寝室を 表している) (Emilia; Desdemona in semplicissime vesti abbandonata su di una sedia, ed immersa nel più fiero dolore)(エミーリア; デズデーモナ 簡素極まりない服を着て 椅子の上に 捨てられて【≒ 椅子に 臥せて】、そして この上なく厳しい苦悩に 浸されて【≒ 苛まれて】) DESDEMONAデズデーモナ Ah!ああ! EMILIAエミーリア Dagli affanni oppressa抑圧された苦悩によって parmi fuor di se stessa.【彼女は】彼女自身の外にいる【≒ 正気を 失っている】ように 私には 思われる。 Che mai farò?... chi mi consigilia? oh Cielo!..私は いったい 何を しようか?… 誰が 私に 助言するのか? ああ 天よ… Perché tanto ti mostri a noi severo?なぜ これほどたくさん 君【= 天--】は 私たちに 厳しい 態度を示すのか? DESDEMONAデズデーモナ (fra sé)(自分に) (Ah no! di rivederlo io più non spero!)(ああ いいや! 彼に 再び会うことを 私は もう 期待できない!) EMILIAエミーリア (facendosi coraggio, ed avvicinandosi a lei)(勇気を 出して、そして 彼女に 近づいて) Rincorati, m'ascolta... in me tu versa元気を取り戻しなさい、私【の言うこと】を聞きなさい… 私に 君は 注ぎなさい【≒ 打ち明けなさい】 tutto il tuo duol. Nell'amistà soltanto君の苦悩 すべてを。友情においてのみ puoi ritrovare alcun conforto. Ah! parla...君は 何か 慰めを 見出すことができる。 ああ! 話しなさい… DESDEMONAデズデーモナ Che mai dirti poss'io?...私が いったい 何を 君に 話せるのか?… Ti parli il mio dolor, il pianto mio.君に 話すように 私の苦悩が、私の涙が【≒ 私の苦悩、私の涙で 君に 伝わるだろう】。 |
|
4/4 (C major) |
EMILIAエミーリア Quanto mi fai pietà!... Ma almen procura,何と 君は 私に 哀れみを 催すことか!… だが せめて 努力しなさい、 da saggia che tu sei,賢人らしく その者である 君は【≒ 分別のある君らしく】 di dar tregua per poco alle tue pene.休止を与えようと しばらくの間 君の苦悩に。 |
||
Allegro 4/4 (C major) |
DESDEMONAデズデーモナ Che dici... che mai pensi?... In odio al cielo,君は 何を 言っているのか… 君は いったい 何を 考えているのか?… 天を憎み、 al mio padre, a me stessa... in duro esilio私の父を【憎み】、私自身を【憎み】 condannato per sempre il caro sposo...非難された 永遠に 愛しい花婿は… come trovar poss'io tregua, o riposo?どうやって 私は 休止を 見出せるのか、あるいは 休息を? |
||
[Canzone del Gondoliero] Maestoso 2/4 g minor |
GONDOLIEROゴンドラ漕ぎ (sentesi da lungi il Gondoliero, che scioglie all'aura un dolce canto)(聞こえる 遠くから ゴンドラ漕ぎ【の歌】が、その者は 解く 微風に 甘い歌を【≒ 甘美な歌を 夜風に乗せて 歌う】) "Nessun maggior dolore“より多く 悲しいものは ない che ricordarsi del tempo felice思い出すことよりも 幸福な時を nella miseria."惨めさの中で【≒ 悲惨な状況の中で 幸せな頃を思い出すことほど 悲しいことはない】。” |
che scioglie all'aura un dolce canto) この場合の scigliere は 高らかに歌う の意味。 "Nessun maggior dolore / che ricordarsi del tempo felice / nella miseria." ダンテ『神曲』地獄篇 第5歌 121/123行からの引用。 |
|
Recitativo 4/4 (C major) |
DESDEMONAデズデーモナ (Desdemona a quel canto si scuote)(デズデーモナは その歌に びくっとする) Oh come infino al coreああ なんと 心にまで giungon que' dolci accenti!届くことか あの甘い口調【≒ 歌】が! (alzasi, e con trasporto si avvicina alla finestra)(立ち上がり、そして 有頂天をもって【≒ 無我夢中で】 窓に近付く) Chi sei che così canti?... Ah tu rammenti君は 誰なのか その者は このように 歌う?… ああ 君は 思い出させる lo stato mio crudele!私の状態が 辛いと! EMILIAエミーリア È il Gondoliero, che cantando inganna彼は ゴンドラ漕ぎだ、その者は 歌いながら il cammin sulla placida laguna道草を喰っているのだ 穏やかな潟の上で pensando ai figli, mentre il ciel s'imbruna.子どもたちのことを思って、空が 暗くなる 間。 DESDEMONAデズデーモナ Oh lui felice! almen si torna al senoああ 彼は 幸せだ! 少なくとも 彼は 胸に 帰る dopo i travagli di colei ch'egli ama...つらい仕事の後に 彼を 愛する 女性の 【胸に】… io più tornarvi, no, non potrò.私は もう そこには、いいや、帰ることができない。 |
che cantando inganna / il cammin sulla placida laguna この場合の ingannare は 誤魔化す,(時間などを)潰す。ingannare la strada で 道草を食う という意味になり、ここでの inganna il cammin もほぼ同様の意味だろう。 |
|
Andantino 4/4 (C major) |
2小節。 | ||
4/4 (C major) |
EMILIAエミーリア Che miro!私は 何を 見詰めているのだ! s'accresce il suo dolor...彼女の 苦悩が 増している… DESDEMONAデズデーモナ Isaura!.. Isaura!イザウラよ… イザウラよ! EMILIAエミーリア Essa l'amica apella,彼女は 友【の名】を 呼んでいる、 che all'Africa involata, a lei vicinoその者は アフリカから 持ち去られ【≒ 連れて来られ】、彼女【= デズデーモナ】の傍で qui crebbe, e qui morìo...ここで育った、そして ここで 死んだ。 DESDEMONAデズデーモナ Infelice tu fosti君【= イザウラ】は 不幸だった al par di me. Ma or tu riposi in pace...私と同じように。しかし 今 君は 休息している 平安に… EMILIAエミーリア Oh quanto è ver che ratti a un core oppressoああ 何と 真実なことか 速く 抑圧された心を si nudriscon gli affani!苦悩が 食べる 【↑】ことは【≒ 打ちひしがれた心が あっという間に 苦悩の食い物にされるというのは なんと本当なことか】! DESDEMONAデズデーモナ Oh tu del mio dolor dolce strumento!ああ お前よ 私の苦悩の 優しい楽器よ! io ti riprendo ancora;私は お前を また 再び取る; e unisco al mesto cantoそして 私は 結び付ける 悲し気な歌に i sospiri d'Isaura, ed il mio pianto.イザウラの溜め息を、そして 私の涙を。 |
||
Adagio 4/4 (C major) |
|||
[Canzone del Salice] Affettuoso 2/4 g minor |
Assisa appiè d'un salice,ヤナギの足元に座って、 immersa nel dolore苦悩に 浸って【≒ 満ちて】 gemea traffita Isauraイザウラは 呻いた 刺し貫かれて【≒ 痛手を負って】 dal più crudele amore,最も残酷な愛によって、 l'aura tra i rami flebile枝々の間の 微風が 物悲しく ne ripeteva il suon.彼女の音【≒ 声】を 繰り返した。 I ruscelletti limpidi澄み切った小川は a' caldi suoi sospiri彼女の熱い溜め息に il mormorio mesceanoざわめきを 混ぜた de' lor diversi giri:彼ら【≒ 小川】の 様々な曲がりの【≒ いくつもの曲がりくねった小川のさざめきを 重ね合わせた】: l'aura fra i rami flebile枝々の間の 微風が 物悲しく ne ripeteva il suon.彼女の音【≒ 声】を 繰り返した。 Salce, d'amor delizia!ヤナギよ、愛の喜びを与えるものよ! ombra pietosa appresta哀れみの影を 差し伸べなさい (di mie sciagure immemore)(私の不幸を 忘れて) all'urna mia funesta,私の 不幸に襲われた 【骨】壺【≒ 墓】に、 né più ripeta l'aura【そして】もう 繰り返さないように 微風は de' miei lamenti il suon.私の嘆きの音【≒ 声】を。 |
柳 は、枝が垂れ下がる姿が死を悲しんでうなだれているように見えることから、しばしば死の悲しみの象徴になり、そして墓地に植えられるようになった。 ombra pietosa appresta この場合の apprestare は 与える,差し伸べる。 |
|
Recitativo 4/4 (g minor) |
Che dissi!... Ah m'ingannai!.. Non è del canto私は 何を 言ったのだ! ああ 私は 間違った!… 【↓】これは 歌の questo il lugubre fin. M'ascolta...痛ましい結末 【↑】ではない。私【の歌の結末】を聞きなさい… |
||
Allegro 2/4 g minorr |
(un colpo di vento spezza alcuni vetri della finestra)(風の一撃が 粉々にする 窓のいくつかのガラスを) |
||
Recitativo 4/4 (g minor) |
Oh Dio!ああ 神よ! Qual mai strepito è questo!..これは いったい 何という 大音響だ!… Qual presagio funesto!何という 不吉な予兆だ! EMILIAエミーリア Non paventar: rimira.心配するでない: 見詰めなさい。 Impetuoso vento è quel, che spira.それは 猛烈な風だ、それは 吹いている。 DESDEMONAデズデーモナ Io credeva che alcuno... oh come il cielo私は 信じた 誰かが… ああ 何と 天が s'unisce a' miei lamenti!..調和していることか 私の嘆きに!… Ascolta il fin de' dolorosi accenti.聞きなさい 痛ましい口調【≒ 歌】の結末を。 |
||
Primo Tempo 2/4 g minor |
Ma stanca alfin di spargereしかし ついに 疲れて 流すのに mesti sospiri, e pianto,悲しげな溜め息を、そして 涙を、 morì l'afflitta vergine死んだ 悲嘆に暮れた乙女は ahi! di quel salce accanto!ああ! あのヤナギのすぐ傍で! Ma stanca alfin di piangere,しかし ついに 泣くのに 疲れて、 morì l'afflitta vergine.死んだ 悲嘆に暮れた乙女は。 Morì... che duol! l'ingrato...彼女は 死んだ… 何という 悲しみだ! 恩知らずの男は… |
||
Recitativo 4/4 (B-flat major) |
Ahimè! che il piantoああ! 涙が proseguir non mi fa. Parti, ricevi私に 続けさせない。 |
調性は形式的なもの。 |
|
(Andante maestoso) 4/4 B-flat major |
2小節。 実質的に、冒頭と同じく、変ホ長調。 |
||
Recitativo 4/4 (B-flat major) |
proseguir non mi fa. Parti, ricevi去りなさい、受けなさい da' labbri dell'amica il bacio estremo.友の女の唇から 最後のキスを。 EMILIAエミーリア Ah che dici!.. ubbidisco... oh come tremo!ああ 君は 何を言うのだ!… 私は 従う… ああ 何と 私は 震えていることか! |
調性は形式的なもの。 |
|
(Andante maestoso) 4/4 B-flat major |
4小節。 実質的に、冒頭と同じく、変ホ長調。 |
||
[Preghiera] 6/8 A-flat Major |
SCENA Ⅱ第2場 (Desdemona nel massimo dolore dirige al cielo la seguente preghiera)(デズデーモナは 【彼女は】この上ない苦悩の中にある 送る 天に 次の祈りを) DESDEMONAデズデーモナ Deh calma, o ciel, nel sonnoどうか 静めなさい、ああ 天よ、眠りの中で per poco le mie pene,少しの間 私の苦悩を、 fa, che l'amato beneさせなさい、愛する最愛の人が mi venga a consolar.私を 慰めに 来るように。 Se poi son vani i prieghi,とはいえ もし 祈りが 無駄ならば、 di mia breve urna in seno私の簡単な壺の懐の【≒ 私の質素な骨壺の中の】 di pianto venga almeno彼が せめて 来るように 涙で il cenere a bagnar.【壺の中の】遺灰を 濡らしに。 (ella cala la tendina, e si getta sul letto)(彼女は カーテンを 下ろし、そして ベッドに 身を投げる) |
||
Maestoso 4/4 C major |
SCENA Ⅲ第3場 (Otello s'introduce nella stanza di Desdemona per una segreta porta, tenendo in mano una accesa fiaccola, ed un pugnale)(オテッロは そっと入る デズデーモナの部屋に 秘密の扉を通って、手に 火の点いた松明 たいまつ を持って、そして 短剣を 【持って】) |
||
Recitativo 4/4 (C major) |
OTELLOオテッロ Eccomi giunto inosservato, e soloさあ 私は 到達した 気付かれずに、そして 一人で nella stanza fatal... 死に至らせる部屋に… |
||
(Maestoso) 4/4 C major |
2小節。 |
||
Recitativo 4/4 (C major) |
Iago involommiイアーゴが 私を 持ち去った【≒ 救い出した】
al mio vicin periglio.私の 迫っている危険から。 |
||
(Maestoso) 4/4 C major |
2小節。 |
||
Recitativo 4/4 (C major) |
Egli i miei passi彼は 私の足取りを dirigere qui seppe.ここに 向けることができた。 (ei rimane per un momento attonito, indi attento guarda in giro)(彼は 一瞬 茫然として、それから 注意深く 周囲を 見る) Il silenzio m'addita静寂が 私に 指摘している ch'ella di mia partenza omai sicura彼女は 私の出発について 今や 確信があって sogna il rivale, e più di me non cura.恋敵のこと【ばかり】を夢見ていて、そして もう 私には 関心がない 【↑】ことを。 (riguardando verso la tendina del letto)(ベッドのカーテンの方を 見直して) Quanto t'inganni!何と 君は 間違っていることか! egli ora al suol traffitto... che dico...彼【= 恋敵 = ロドリーゴ】は 今や 地に 刺し貫かれて【倒れて】いる… 私は 何を 言っているのだ… ah tu sol colpi il mio delitto!ああ 君だけが 私の罪に 打撃を与えている【≒ 私の罪の原因だ】。 |
ah tu sol colpi il mio delitto! クリティカルエディション総譜ではこのようになっているが、初演時の印刷台本では ah sol tu colpi al mio delitto! となっている。どちらにしてもこのままでは意味が採りづらいため、多くの台本や楽譜では Ah! tu sol compi il mio delitto! ああ! 君だけが 私の罪を 遂行するのだ! などと言葉が変えられている。 |
|
(Maestoso) 4/4 C major |
(pian pian si avvicina al letto, ed apre le tendine nel massimo tumulto del cuore)(少しずつ 近付く ベッドに、そして 【ベッドの】カーテンを 開ける この上なく大きな心の動揺の中で ) |
4小節。 |
|
Recitativo 4/4 (C major) |
Che miro! ahimè!... quegl'occhi abbenché chiusi私は 何を 見ているのだ! ああ!… あの両目は 閉じているにもかかわらず pur mi parlano al cor! Quel volto, in cuiでもやはり 私の心に 語っている! あの顔は、その中に natura impresse i più bei pregi sui,自然が 刻印している その 最も美しい 祈りを、 mi colpisce, m'arresta.【彼女の顔は】私の心を打ち、私を 阻む。 (confusso s'allontana dal letto)(混乱して ベッドから 離れる) Ma se più mio non è...だが もし それ【= 彼女の顔 男性名詞】が もう 私のものでは ないならば… perché serbarlo? Struggasi...なぜ それを 取っておくのか? 破壊しよう… E chi mai puoteそして いったい 誰が できるのか (avvicinandosi di nuovo a lei)(新たに 彼女に 近付いて) riprodurne l'egual!同じものを 再現することを! (indi si allontana da lei pieno di perplessità)(それから 彼女から 遠ざかる 当惑に 満ちて) È sua la colpa,彼女の罪なのか、 se il mio temuto aspetto l'allontana da me?もし 私の 恐れられる顔付きが 彼女を 私から 遠ざけているなら? Perché un sembiante barbaro ciel non darmi,どうして 顔を 残酷な天は 私に 与えないのだ、 in cui scolpito si vedesse il mio cor?..その【= 顔の】中に 私の心が 彫刻されている【≒ 彫り込まれている】のが見えるであろう?… Forse... che allora... che dico!..おそらく… あの時… 私は 何を 言っているのだ!… E il tradimentoそして 裏切りは non merta il mio rigor? Mora l'indegna!私の厳しさに 相応しいのか【≒ 私の厳しさを 受けるに値しないのか】?恥ずべき女は 死ぬがいい! |
natura impresse i più bei pregi sui, この sui は suoi の誤植だと思われる。 |
|
(Maestoso) 4/4 C major |
(avvicinandosi di nuovo al letto)(新たに ベッドに 近付いて) |
4小節。 |
|
Recitativo 4/4 (C major) |
Ahi trema il braccio ancor! crudele indugio!ああ また 腕が 震えている! 残酷な遅滞だ! (rimirando la face)(松明 たいまつ を 凝視して) Eccone la cagion... Tolgasi...そら ここに そのことについての原因が… 取り除こう… (spegne la face gittandola a terra)(松明を消す 地に投げて) O notte che mi riedi sul ciglio, eternamenteああ 夜よ それは 私の目に 戻っている、永遠に colle tenebre tue copri l'orrore君の闇で 覆いなさい 恐怖を di questo infausto giorno.この不吉な日の。 DESDEMONAデズデーモナ in sonno眠りの中で Amato ben.愛する最愛の人よ。 OTELLOオテッロ Che sento!.. A chi quel nome?私は 何を 聞いているのだ!… その名前は 誰のか? Sogna, o è pur desta?彼女は 夢を見ているのか、あるいは けれども 彼女は 起きているのか? |
||
Allegro 4/4 (C major) |
(un lampo, che passa a traverso della finestra gli mostra ch'ella dorme)(稲光が、それは 窓を 横切って 通り過ぎる 彼に 見せる 彼女が 眠っていることを) |
||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
Ah che tra i lampi il cieloああ 稲光の間で 天が a me più chiaro il suo delitto addita,私に さらに はっきりと 彼女の罪を 示しているので、 e a compir la vendetta il ciel m'invita.そして 復讐を 遂行するよう 天は 私を 促している。 |
||
(Allegro) 4/4 (C major) |
(Un forte tuono si ascolta. Desdemona si desta, e tra frequenti lampi riconosce Otello)(強い雷鳴が 聞こえる。デズデーモナは 目を覚まし、頻繁な稲光の中で オテッロを認める) |
||
(Recitativo) 4/4 (C major) |
Indegna!恥ずべき女め! DESDEMONAデズデーモナ Ahimè!.. che veggio?..ああ!… 私は 何を 見ているのか?… come mai qui giungesti?..いったい どうやって ここに 辿り着いたのか?… Come tu puoi?.. ma no... contenta t'offroどうして 君が できるのか?… しかし いいや... 私は 満足して 君に 提供する【≒ 差し出す】 inerme il petto mio無防備な 私の胸を se più quell'alma tua pietà non sente...もし 君のその魂が もう 哀れみを 感じていないのなら… OTELLOオテッロ La tradisti crudel!それ【= 魂 女性名詞】を 君は 裏切ったのだ 残酷な者め! DESDEMONAデズデーモナ Sono innocente.私は 潔白だ。 OTELLOオテッロ Ed osi ancor, spergiura!..それで 君は まだ あえてするのか、偽証者【≒ 嘘吐きの女】め!… Più frenarmi non so. Rabbia, dispetto私は もう 自制することができない。激怒が、【そして】 軽蔑が mi trafiggono a gara!私を 刺し貫いている 競い合って! DESDEMONAデズデーモナ Ah padre! Ah che mai feci!ああ 父よ! ああ 私は いったい 何を したのだ! È sol colpa la mia d'averti amato.私の唯一の罪は 君を愛したことだ Uccidimi se vuoi, perfido! ingrato!殺しなさい もし 君が 望むなら、不実な男よ! 恩知らずの男よ! |
||
[Duetto] Allegro 4/4 D major |
DESDEMONAデズデーモナ Non arrestare il colpo...一撃を止めるでない… Vibralo a questo core,それ【= 一撃 男性名詞】を 振り下ろしなさい この心臓に、 sfoga il tuo reo furore,打ち明けなさい 君の罪のある激情を、 intrepida morrò.ものともせず 私は 死のう。 OTELLOオテッロ Ma sappi pria che moriだが 知りなさい 君が 死ぬ 前に per tuo maggior tormento,君の より大きな 苦悩として、 che già il tuo bene è spento,既に 君の最愛の人は 死んだ、 che Iago il trucidò.イアーゴが 彼を 惨殺した。 DESDEMONAデズデーモナ Iago! che ascolto!... oh Dio!イアーゴだと! 私は 何を 聞いているのだ!… ああ 神よ! fidarti a lui potesi?君は 彼を 信頼することができたのか? a un vile traditor?卑劣な裏切者を? OTELLOオテッロ Ah! vile!... ben comprendoああ! 卑劣だと!… 私は よく 分かっている perché così t'adiri...どうして 君が このように 憤慨しているのか… ma inutili i sospiriだが 【君の】溜め息は 虚しく or partono dal cor.今 心臓から 離れ去るのだ。 (i lampi continuano)(稲光が 続行する) DESDEMONAデズデーモナ Ah crudel!ああ 残酷な男だ! OTELLOオテッロ Oh rabbia! io fremo!ああ 激怒だ! 私は 震えている! DESDEMONAデズデーモナ Oh! qual giorno!ああ! 何という日だ! OTELLOオテッロ Il giorno estremo...最後の日に… DESDEMONAデズデーモナ Che mai dici?君は 何を 言っているのか? OTELLOオテッロ a te sarà.君にとって なるだろう。 |
||
Agitato 4/4 d minor |
(comincia il temporale)(嵐が 始まる) OTELLOオテッロ Notte per me funesta!私にとって 不吉な夜だ! Fiera crudel tempesta!荒々しく残忍な嵐よ! Accresci co' tuoi fulmini,増大させなさい、お前の雷鳴で、 col tuo fragore orribileお前の 恐ろしい大音量で accresci il mio furor.増大させなさい 私の激情を。 DESDEMONAデズデーモナ Notte per me funesta!私にとって 不吉な夜だ! Fiera crudel tempesta!荒々しく残忍な嵐よ! Tu accresci in me co' fulmini,お前は 増大させる 私に 雷鳴で、 col tuo fragore orribileお前の 恐ろしい大音量で accresci i palpiti, e l'orror.増大させる 心臓の鼓動を、そして 恐怖を。 (Il temporale cresce)(嵐が 大きくなる) Oh Ciel! se me punisciああ 天よ! もし 君が 私を 罰するならば è giusto il tuo rigor.君の厳格さは 公正だ。 (il tempolare cresce, i tuoni si succendono con gran fragore)(嵐が 大きくなる、雷鳴が 次々に現れる 大音響で) DESDEMONAデズデーモナ Terribil notte!恐ろしい夜だ! OTELLOオテッロ Terribil notte!恐ろしい夜だ! DESDEMONAデズデーモナ Accresci in me co' fulminiお前は 増大させる 私に 雷鳴で、 i palpiti, e l'orror.増大させる 心臓の鼓動を、そして 恐怖を。 OTELLOオテッロ Accresci co' tuoi fulmini,増大させなさい お前の雷鳴で、 accresci il mio furor.増大させなさい 私の激情を。 (cessano i tuoni e la tempesta)(雷鳴が止む そして 嵐が【止む】) DESDEMONAデズデーモナ O ciel! se me punisci è giusto,ああ 天よ! もし 君が 私を 罰するならば 公正だ è giusto il tuo rigor.君の厳格さは 公正だ。 OTELLOオテッロ Tu d'insultarmi ardisci!君は 厚かましくも 私を 侮辱するのだ! ed io m'arresto ancor?それでも 私は まだ 止まる【≒ 実行しない】のか? DESDEMONAデズデーモナ Uccidimi... t'affretta,私を 殺しなさい… 急ぎなさい、 saziati alfin crudel!ついに 満足しなさい【≒ 自らの願望を 叶えなさい】 残酷な者よ! OTELLOオテッロ Si compia la vendetta.復讐を 成し遂げよう。 (La prenda, la springe sul letto, e nell'impugnare il ferro Desdemona svienne. Egli vibra il colpo)(彼女を掴み、彼女をベッドに 押し付け、そして 鉄【≒ 剣】を握って デズデーモナは 気絶する。彼は 一撃を 振り降ろす) DESDEMONAデズデーモナ Ahimè...ああ… OTELLOオテッロ Mori infedel!死ね 不実な者め! (Otello si allontana dal letto nel massimo disordine, e spavento, cerca di occultare il suo delitto, e l'oggetto del suo dolore con tirare tendine del letto)(オテッロは 遠ざかる ベッドから 最大の混乱の中で、そして 【最大の】恐怖【の中で】、彼の罪を隠すことを 得ようとする、そして 彼の苦悩の対象を) OTELLOオテッロ (dopo un breve silenzio)(短い沈黙の後) Che sento!.. Chi batte?...私は 何を 聞いているのだ!… 誰が【扉を】叩いているのか?… LUCIOルーチョ di dentro内部で【≒ 舞台裏で】 Otello!オテッロよ! OTELLOオテッロ Qual voce!...あの声は… Occultati atroce身を隠せ 耐え難い rimorso nel cor!【良心の】呵責よ 心の中に! (Otello apre la porta)(オテッロは 扉を 開ける) Rodrigo...ロドリーゴは… LUCIOルーチョ Egli è salvo.彼は 助かった。 OTELLOオテッロ E Iago?それで イアーゴは? LUCIOルーチョ Perisce.死んだ。 OTELLOオテッロ Chi mai lo punisce?いったい 誰が 彼を 罰したのか? LUCIOルーチョ Il cielo, l'Amor.天が、【そして】愛が。 OTELLOオテッロ Che dici?.. che dici?.. tu credi...君は 何を 言っているのか?… 君は 信じているのか… LUCIOルーチョ Ei stesso le trame,彼自身が 陰謀を、 le perfide brame悪意ある熱望を sorpeso svelò.驚いたことに 明らかにした。 OTELLOオテッロ Che mai dici!... che mai dici!...君は 何を 言っているのだ!… 君は 何を 言っているのだ!… |
||
(Agitato) 4/4 E-flat major |
LUCIOルーチョ Ah già tutti deh mira contenti.ああ 既に 皆が 満足な【≒ 喜んでいる】のを そら 眺めなさい。 OTELLOオテッロ A tanto tormento resister no so.私は あまりにたくさんの苦悩に 耐えられない。 (Entrano il Doge, Elmiro e Rodrigo)(ドージェ、エルミーロとロドリーゴが入場する) IL DOGEドージェ Per me la tua colpa私を通じて 君の過ちを perdona il Senato.元老院が 容赦する。 ELMIROエルミーロ Io riedo placato私は 戻っている 【心が】静められて qual padre al tuo sen.父として 君の胸に。 RODRIGOロドリーゴ Il perfido Iago不実なイアーゴが cangiò nel mio petto変えた 私の胸の中で lo sedgno in affetto...怒りを 情愛に… Ti cedo il tuo ben.私は 君に 引き渡す 君の最愛の人を OTELLOオテッロ Che pena!..何という苦悩だ!… CORO合唱 Che gioa!何という歓喜だ! DOGEドージェ Accogli nel core受け入れなさい 心の中に RODRIGOロドリーゴ Il publico amore,万人の愛を、 la nostra amistà.私たちの友情を。 ELMIROエルミーロ La man di figlia...娘の【右】手を… OTELLOオテッロ (con sorpresa)(驚きをもって) La man di tua figlia!...君の娘の【右】手を… Sì... unirmi a lei deggio...そうだ… 私は 彼女と 結ばれなくてはならない… (scuopre la tendina)(【ベッドの】カーテンを 取る) Rimira...凝視しなさい… ELMIROエルミーロ Che veggio!..私は 何を 見ているのだ!… OTELLOオテッロ Pentito m'avrà...彼女は 私を 後悔させるだろう… (si uccide)(自殺する) RODRIGO, IL DOGE, ELMIRO E COROロドリーゴ,ドージェ,エルミーロ と 合唱 Ah!..ああ!… |
Pentito m'avrà... クリティカルエディション総譜では Pentito m'avrà... 彼女は 私を 後悔させるだろう… を採用している。自筆総譜に従っているのだろう。一方、初演時の印刷台本では Punito m'avrà... 彼女は 私を 罰するだろう… である。どちらの場合でも、オテッロが死んで彼女の元に行って― という意味である。 各地に伝わる筆写譜での扱いは割れている一方、初演からしばらくの間の印刷台本ではすべて Punito の方である。今日の上演でも Punito m'avrà... の方を採用する例はある。 ここでの avrà は、avere + 人 + 形容詞 で 人に―させる という使役で採った。同じくベリオが台本を書いた《リッチャルドとゾライデ》において Se non senti pietà... crudel m'avrai. という1行があり、そこでの crudel m'avrai は 君は 私を 残酷に させるだろう という意味で、同様の使役の表現を取っている。 Pentito、Punito、いずれの場合も3人称単数の主語はデズデーモナである。また時制は単純未来である。したがってここを例えば 私は罰せられた のように理解することは二重に間違っている。 念のため、この文は先立未来ではない(pentirsのような再帰動詞は近過去や先立未来での助動詞には essere しか取らない)。pentito は形容詞である。 |
参考資料
Otello / Gioachino Rossini / Edizione Critica a cura di Michael Collins / Fondazione Rossini Pesaro / 1994 / ISBN 9788889947647
Otello / Gioachino Rossini / Edizione Critica a cura di Michael Collins, Vocal score/ ISBN: 8875927901 / ISBN13: 9788875927905 / ISMN: M041345994
Otello / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 2007
Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /
![]() 074 3865 (Blu-ray Disc) 00044007438633 |
OtelloJohn Osborntenore DesdemonaCecilia Bartolisoprano ElmiroPeter Kálmaánbasso RodrigoJavier Camarenatenore IagoEdgardo Rochatenor EmiliaLiliana Nikiteanumezzosoprano DogeNicola Pamiotenore Lucio(Javier Camarena)tenore GondolieroIlker Arcayüreksoprano Der Zusatzchor des Opernhaus Zürich ChordirektorJürg Hämmerli Orchestra La Scintilla an der Zürich Opera Muhai Tang Stage directorMoshe Leiser & Patrice Caurier Set designChristian Fenouillat Costume designAgostino Cavalca Lighting designChristophe Forey March 2012 Opernhaus Zürich |
チューリヒ歌劇場での上演の録画。記録によると、2012年2月10,17,26日,3月1,3,6日に上演。
ジョン・オズボーン、チェチーリア・バルトリ、ハビエ・カマレナ、そしてエドガルド・ロチャも含め、極めて優秀な歌手たちが揃っており、ロッシーニの歌唱水準もここまで高まったかと感慨深くなる。しかし残念なことに、他は基本的にカットは無しなのにもかかわらず、第1幕フィナーレ冒頭の合唱がそっくり削除されている。これがゆえに高評価にできない。
なおルーチョ役はロドリーゴに回されている。
ムハイ・タンの指揮するピリオド楽器オーケストラは、情感に乏しいところも目立つものの、第3幕後半の緊迫感と迫力は凄まじい。
演出は面白くない。現代化して黒人差別を盛り込もうとしているが、切り口が中途半端に終わっている。また全体に舞台の美感の悪さが目立つ。
なおこの舞台は2014年4月にパリのシャンゼリゼ劇場で、同年6月にはザルツブルグ精霊降臨音楽祭でも上演された。
![]() |
Otellotenore Desdemonasoprano Elmirobasso Rodrigotenore Iagotenor Emiliamezzosoprano Dogetenore Luciotenore Gondolierosoprano |
![]() 432 456-2 (CD) |
OtelloJosé Carrerastenore DesdemonaFrederica von Stadesoprano ElmiroSamuel Rameybasso RodrigoSalvatore Fisichellatenore IagoGianfranco Pastinetenor EmiliaNucci Condòmezzosoprano DogeAlfonso Leoztenore LucioKeith Lewistenore GondolieroAlfonso Leozsoprano Ambrosian Singers Chorus MasterJohn McCarthy Philharmonia Orchestra Jesús López Cobos Conductor's assistantRichard Nunn 21 - 30 November 1979 Wembley, London, UK |
初の商業録音。当時としては極めて画期的な録音で、またカットもまったく入っていない。しかしその後ロッシーニルネサンスが急速に進んだことで、今となっては演奏に問題も多い。
ホセ・カレーラスはタイトルロールを極めて立派に歌っており、一貫してヴェリズモ的発声、表現という根本的な違和感は拭えないものの、装飾歌唱の捌きも悪くなく高いニ音も出し、十分な歌唱。ジャンフランコ・パスティネは、難易度のあまり高くないイアーゴを堅実に歌っている。サルヴァトーレ・フィジケッラは、高音に強いテノールで高いニ音を見事に決めているが、装飾歌唱が捌けておらずもどかしい。しかし一番の問題はデズデーモナのフレデリカ・フォン・シュターデで、準備不足だったのかなんとも表面的な歌に終始している。ただ一人エルミーロのサミュエル・レイミーだけがロッシーニルネサンス以降の水準に達している。ヘスス・ロペス・コボスの指揮はやや重ためだがそつなくまとめている。
録音直後に日本でもLPで発売され(PHILIPS 25PC-48/50)、また2005年にはCDで再発されている(PHCP-1398/9)。どちらも日本語対訳が付けられている。あずさまゆみ(戸口幸策の別名)の訳は非常に丁寧で読みやすく書かれているが、クリティカルエディション成立前で古い楽譜を用いているため、問題のある台本で訳しているのが惜しい。
![]() |
Otellotenore Desdemonasoprano Elmirobasso Rodrigotenore Iagotenor Emiliamezzosoprano Dogetenore Luciotenore Gondolierosoprano |
![]() |
Otellotenore Desdemonasoprano Elmirobasso Rodrigotenore Iagotenor Emiliamezzosoprano Dogetenore Luciotenore Gondolierosoprano |
![]() |
Otellotenore Desdemonasoprano Elmirobasso Rodrigotenore Iagotenor Emiliamezzosoprano Dogetenore Luciotenore Gondolierosoprano |