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最新更新 2024年05月18日
無断転載 厳禁
GIOACHINO ROSSINI
LA GAZZA LADRA
初演
First performance
台本
Libretto
原作
Original
作曲
《泥棒かささぎ》は、速筆で知られるロッシーニにしては珍しく、3か月弱の時間をかけて製作されている。
このシーズンのスカラ座で興行主を務めたアンジェロ・ペトラッキは、1816年11月9日付けの手紙で『題材はとても滑稽で、趣味がよくて(gracioso)、俗っぽくないフランスの劇から採られるだろう。』と書いている。つまり題材はほぼ決まっていたようで、したがってロッシーニとスカラ座との契約は10月頃までには結ばれていたと思われる。
ロッシーニの手紙から、当初台本作家はフェリーチェ・ロマーニが予定されていたようなのだが、翌年の3月にロッシーニがミラノに到着するまでの間に、何らかの理由で変更された。
台本作家のジョヴァンニ・ゲラルディーニ 1778-1861 は、1806年から1815年まで、ジョルナーレ・イタリアーノ誌の編集者を務めてた。彼は1815年にスカラ座が主催した台本コンクールに《裁判官たちへの通知》という台本で応募、受賞は逃がしたものの、この台本が2年後に取り上げられて《泥棒かささぎ》になる。後に引用するロッシーニの手紙にもある通り、台本作家としての経験はほとんどなく、30代にもかかわらず『新人』の台本作家だった。
さて、ロッシーニは、1817年1月25日にローマで《ラ・チェネレントラ》の初演が行われた後、2月11日にローマを発ち、3月の始め頃にミラノに到着する。初演が5月31日なので、随分と早くに現地に赴いているのだが、それがなぜなのかは分かっていない。
3月19日付けでボローニャの母アンナに宛てた手紙において、ロッシーニは《泥棒かささぎ》の作曲について初めて触れている。
私は《泥棒かささぎ》という題名のオペラを書いています。台本は、新人 fresca data の詩人によって詩が書かれたもので結果としてそれは僕の気を狂わさせています:しかし、題材はこの上なく美しく、もし神様のお気に召していただけるなら、私たちは呪わしい失敗 Fiasco Fotutoをするでしょう。
逆説的で皮肉な書き方だが、ともかくこの時期、ロッシーニが《泥棒かささぎ》を作曲中だったことが分かる。
この手紙からおよそ二ヵ月後の5月17日付けの母への手紙では、オペラが完成し、5月26日に初演されるだろう、と書いている。しかし実際には初演はもう5日遅れている。
初演
初演は、1817年5月31日、ミラノのスカラ座で行われた。
ファブリーツィ・ヴィングラディート
Fabrizio Vingraditoヴィンチェンツォ・ボッティチェッリ
Vincenzo Botticelliバス
basso
ルチーア
Luciaマリエッタ・カスティリョーニ
Marietta Castiglioniソプラノ(メッゾソプラノ)
soprano (mezzosoprano)
ジャンネット
Giannettoサヴィーノ・モネッリ
Savino Monelliテノール
tenore
ニネッタ
Ninettaテレーザ・ベッロク
Teresa Belloc[注1]ソプラノ
soprano
フェルナンド・ヴィッラベッラ
Fernando Villabellaフィリッポ・ガッリ
Filippo Galliバス
basso
ゴッタルド(代官)
Gottardo (Podestà)アントーニオ・アンブロージ
Antonio Ambrosiバス
basso
ピッポ
Pippoテレーザ・ガッリアニス
Teresa Gallianisコントラルト
contralto
イザッコ
Isaccoフランチェスコ・ビスコッティーニ
Francesco Biscottiniテノール
tenore
アントーニオ
Antonio不詳
N. N.テノール
tenore
ジョルジョ
Giorgioパオロ・ロジニョーリ
Paolo Rosignoli[注2]バス
basso
エルネスト
Ernestoアレッサンドロ・デ・アンジェリ
Alessandro De Angeliバス(バリトン)
basso (bariton)
コンサートマスター(指揮者)アレッサンドロ・ロッラ
Primo Violino, Capo d'OrchestraAlessandro Rolla
注1 テレーザ・ベッロクの名前はしばしば Teresa Belloc-Giorgi あるいは Teresa Giorgi-Belloc となっているが、初演時の印刷台本の配役表では Teresa Belloc だけである。
注2 しばしば Paolo Rossignoli とs2つになっているが、初演時の印刷台本の配役表ではs一つ。
コンサートマスターのアレッサンドロ・ロッラ 1757-1841 が実質的な指揮者を務めた。ロッラは、パガニーニの師匠としても知られているヴァイオリンの名手で、1802年から1833年までの30年以上に渡ってスカラ座のオーケストラのコンサートマスターを務めた。
マエストロ・アル・チェンバロ、すなわち歌唱指導は、ヴェルディの師として知られるヴィンツェンツォ・ラヴィーニャ Vincenzo Lavigna。
演出は、アレッサンドロ・サンキリコ。
ニネッタのテレーザ・ベッロク 1784―1855 は北イタリアで活躍したソプラノ。パイジェッロの《ニーナ》のタイトルロールが当り役であることから分かるように、娘役に定評があった。《幸福な間違い》初演 1812年1月8日 ヴェネツィア サン・モイゼ劇場 でイザベッラを歌った。
フィリッポ・ガッリ 1783-1853 はロッシーニ時代の極めて重要なバス。ロッシーニの初演に関わったものだけでも、《幸せな間違い》のバトーネ、《試金石》のアスドゥルバーレ、《アルジェのイタリア女》のムスタファ、《イタリアのトルコ人》のセリム,《トルヴァルドとドルリスカ》のオルドウ公爵、《泥棒カササギ》のフェルナンド、マオメット2世のタイトルロール、《セミラーミデ》のアッスール。もちろんその他のロッシーニのバス役も各地で歌った。
代官のアントーニオ・アンブロージ 1786―? は、スカラ座や、後にサンカルロ劇場でも活躍したバス。ロッシーニのオペラの初演では、《ブルグントのアデライデ》 1817 のベレンガーリオ、《マティルデ・ディ・シャブラン》 1821 のジナルド、《ゼルミーラ》 1822 のポリドーロを歌った。
サヴィーノ・モネッリ 1784―1836 は、1820年代を中心に、主として北イタリアで活躍したテノール。ロッシーニのオペラの初演では、《ブルグントのアデライデ》(1817)のアデルベルトを歌った。
初演は大成功を収め、全部で27回の上演があった。ロッシーニ自身、6月3日付けの母への手紙で《泥棒かささぎ》の成功を報告している。
ロッシーニの関与した上演での改変
※普請中。分量が多いので別ページにする予定。
近代の上演
ロッシーニのオペラではしばしばあることだが、《泥棒かささぎ》の近代蘇演は二段階を経ている。
1941年8月21日、ロッシーニの生地ペーザロで《泥棒かささぎ》が上演された。この時、当時ペーザロ音楽院の院長を務めていた作曲家リッカルド・ザンドナーイが大幅に短縮するなど改編した楽譜を作成して、これが用いられた。会場はロッシーニ劇場。オーケストラはペーザロ音楽院の面々、指揮はザンドナーイ自身。主要歌手は分かっているもののどの役を受け持ったかが分からない。ニネッタがリーナ・アイマーロ Lina Aimaro / Aymaro、ジャンネットがルイージ・フォルト Luigi Fort、フェルナンドがルチアーノ・ネローニ Luciano Neroni、代官がカルメロ・マウジェーリ Carmelo Maugeri は間違いない。二人のメッゾソプラノのうち、クロエ・エルモ Cloe Elmo がおそらくピッポ、マリア・マルクッチ Maria Marcucci がおそらくルチーア。ダーリオ・カゼッリは脇役が主のバスで、おそらくファブリーツィオ。演出はアレッサンドロ・ブリッソーニ Alessandro Brissoni。
その後しばらく、Ricordi社ではこのザンドナーイの改竄譜が基本になった。ペーザロでの上演の後、ザンドナーイ改竄版を用いた上演があったはずだが、確認できたのは翌1942年5月12、17、20日、ローマ歌劇場での上演。フォルト、ネローニ、マウジェーリの3人はここにも出演している。
第二次世界大戦後、《泥棒かささぎ》の初めての上演は、おそらく1958年7月24日、英国、オーピントンでのケント歌劇団 Kentish Opera での上演と思われる。
その翌年、ウェクスフォード・フェスティヴァル・オペラでも1959年10―11月(最終公演が11月1日)に上演されている。どちらもザンドナーイ改竄譜が用いられた。
イタリアでは、1965年5月11、13、15、19日とフィレンツェ五月音楽祭で上演されたが、これもザンドナーイ改竄版を用いていた。初日の5月11日の録音が残されている。
このような状況に、ロッシーニを愛する人々が危機感を抱いたのは当然だろう。指揮者アルベルト・ゼッダを中心に、ロッシーニ本来の意図を反映した楽譜の製作に乗り出した。これは1973年11、12月、ローマ歌劇場での上演で初めて用いられた。上演は11月24、27、29日、12月2、5、20、22、28日。この時ヒロインのニネッタを歌ったのは林康子だった。初日の11月24日の録音が残されている。これが2度目の、そして本格的な蘇演と言えるだろう。この時の楽譜が、後に成立したロッシーニ財団による全集版での《泥棒かささぎ》のクリティカル・エディション総譜の初稿と位置付けられている。
1978年には、この新しい楽譜を用いた初の全曲録音が行われた(後述)。
1979年には決定稿が成立し、ロッシーニ財団による全集版での《泥棒かささぎ》のクリティカル・エディション総譜として出版。
翌1980年にペーザロでロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル ROF が始まると、その初年度の演目の一つに《泥棒かささぎ》が選ばれた。8月28,30日,9月1日の3公演、会場はロッシーニ劇場。この時はヒロイン、ニネッタ役を葉玉洋子 が歌った。このプロダクションは翌1981年にも再演された(8月26,28,30日、ロッシーニ劇場)。
初演劇場であるスカラ座では第二次世界大戦後の上演は大幅に遅れ、初演100周年記念公演である2017年4,5月の公演でようやく上演された。4月12,15,18,22,26,29日,5月2,5,7日。初日4月12日の出演者一覧。
※以下普請中。
あらすじ
登場人物
ファブリッツィオ・ヴィングラディート裕福な小作農バス
ルチーアファブリツィオの妻メッゾソプラノ
ジャンネットファブリツィオの息子; 兵士テノール
ニネッタファブリツィオの家の召使いの娘ソプラノ
フェルナンド・ヴィッラベッラニネッタの父; 兵士バス
ゴッタルド[注1]村の代官[注2]バス
ピッポ若い農夫 ファブリツィオの家で働いているメッゾソプラノ
イザッコ行商人テノール
アントーニオ看守テノール
ジョルジョ代官の従者バス
エルネストフェルナンドの同僚で友人; 兵士バス
村の裁判官バス
注1 台本および楽譜にはゴッタルドという名前は一度も用いられていない。
注2 Podestà は 地方行政長官 の意味。《泥棒かささぎ》の場合、一般的に 代官 と訳されている。
第1幕
ファブリツィオ家の庭。兵役についていた息子のジャンネットが帰ってくるというので、召使いたちが陽気に昼食の用意をしている。ピッポは、誰かが自分の名前を呼ぶので戸惑うが、それがカササギだとわかって立腹、その姿に召使いたちは笑ってしまう。
ファブリツィオの妻ルチーアが現れ、召使いたちに準備を急かす。そしてニネッタを呼ぶが、彼女の姿はない。ファブリツィオがやって来て、息子にそろそろ結婚相手を見つけねば、と言うと、それを聞いたかのようにかささぎが ニネッタ と答える。しかしルチーアは、ニネッタが銀のフォークをなくしたことに腹を立てている。ファブリツィオは、母を亡くし父が長く従軍中のニネッタに同情的である。
苺摘みからニネッタが戻ってくる。愛するジャンネットだけでなく、父フェルナンドも村に帰ってくるというので、彼女は大喜びしている。ルチーアはニネッタに銀食器類を渡し、今度はなくさないようにと釘を刺す。夫婦は息子の出迎えに行く。
旅の行商人イザッコが口上を歌いながらやって来る。ピッポから今日は用がないと言われ、必要な時は呼んでくれと去っていく。
ジャンネットが帰り、ニネッタとの再会を喜ぶ。ピッポが乾杯の音頭を取り、酔っ払って上機嫌になる。ジャンネットは伯父に挨拶するため、人々と出かけていく。
一人残ったニネッタの元に、彼女の父フェルナンドが現れる。ニネッタは喜ぶが、フェルナンドは隊長を喧嘩で傷つけてしまい、死刑を宣告されて逃亡してきたのだ。父と娘は嘆き合う。そこに代官の姿が見えるので父娘は慌てる。代官は、目をつけていたニネッタを我がものにするため、彼女が独りでいる時を狙ってやって来たのだった。ニネッタは父を疲れた旅人と誤魔化し、フェルナンドは寝た振りをする。代官はニネッタを口説きにかかるが、代官の召使いジョルジョが来て、警察からの緊急の報せを届ける。それは、フェルナンドの手配書だった。代官が眼鏡を捜している隙に、ニネッタは父親を逃がそうとする。フェルナンドはお金がないので、娘に銀のスプーンとフォークを渡し、売ってお金にして、栗の木の洞に隠してくれと頼む。フェルナンドが立ち去ろうとすると、眼鏡を忘れた代官がニネッタに手配書を読ませる。ニネッタは咄嗟に、手配書の名前、人相、年齢を全く変えて変えて読む。代官はフェルナンドの顔を見て、全く違う風貌に、出て行くよう命じる。二人きりになり、代官はニネッタを口説き出すが、フェルナンドが恥を知れと代官に食って掛かる。代官は怒り立ち去る。
イザッコが再びやってくるので、ニネッタはピッポにかささぎの鳥篭を取りに行かせ、その間にイザッコに銀食器を売ってお金を得る。かささぎは鳥篭から逃げていたが、自分で鳥篭に戻ってくる。ニネッタは、お金が必要だったので、イザッコに少しばかり食器を売ったと話す。ピッポが去ると、ニネッタはお金を栗の木に隠しに行こうとするが、ちょうどそこにジャンネットたちが代官を連れて帰宅する。ルチーアは、スプーンが一本足りないとニネッタを叱る。代官が、召使いの盗みは死刑だというので、一同は驚く。代官は捜査に乗り出す。ニネッタは無実を訴える。代官は、ニネッタの姓から、彼女が脱走兵の娘であることに気付く。ニネッタは涙を拭うためにハンカチを取り出そうとして、先ほどのお金を落としてしまう。ピッポは彼女をかばおうと、イザッコに何か物を売って得たお金だと証言するので、逆に彼女は疑われてしまう。代官は証拠としてお金を奪い取ってしまう。イザッコが呼び出され、ニネッタからスプーンとフォークを一本ずつ(無くなった食器の数と同じ)買ったというので、ジャンネットまで彼女に疑いの目を向け始める。イザッコはさらに、それらはもう転売してしまった、そして頭文字に(ファブリツィオの頭文字と同じ)F.Vとあったことを証言する。代官はニネッタを投獄するよう命じ、彼女を抱きしめるジャンネットを引き離す。ニネッタは悲しみ別れを告げ、他の人たちは代官への怒りを露にし、幕となる。
第2幕
牢獄。アントーニオがニネッタを牢の中から明るいところへ出してあげている。彼女がピッポに伝言を頼む。ジャンネットがニネッタと面会しに来る。彼女を助けたいジャンネットは、彼女が抗弁しない理由を聞き出そうとするが、彼女は、理由は言えない、処刑された後にいつか分かるでしょう、と答える。二人は悲しむ。アントーニオが、代官が来るので二人に戻るよう告げる。二人は天に、愛する人を返してくださいと祈る。
代官はニネッタに、助かりたいなら自分のものになれ、と迫るが、ニネッタは拒む。衛兵たちが代官に、会議に向かうよう催促する。代官は処刑をちらつかせニネッタにもう一度迫るが、彼女は撥ね付ける。判決の時に後悔しても遅いぞと言い放ち、代官は会議に向かう。その様子を見ていたアントーニオは、代官の悪巧みに感づく。ピッポがやって来る。ニネッタは彼に、お金を栗の木の穴に隠してほしいと頼み、その抵当として十字架を渡す。ピッポは抵当なんていらないと断るが、ニネッタは、今日にも処刑されるかもしれないのだから、形見として十字架を持っていてほしいと頼む。ピッポは涙ぐむ。さらにニネッタは、自分が処刑される時にジャンネットに指環を渡し、死ぬまで愛していたと伝えてほしいと頼む。ピッポは彼女の誠実さに打たれ、全てを約束する。二人は泣きながら別れる。
ルチーアは一人、ニネッタが本当に犯人なのかと考える。そこにフェルナンドが現れ、娘について尋ねる。そして、盗みの罪で彼女に判決が下ることを知る。フェルナンドは激しく驚き、娘を救うことを決意する。ルチーアは、こうなったのも自分のせいだと、天に救いを願う。
裁判所。判事たちは全員一致でニネッタに死刑の判決を下す。ニネッタが呼び出され、裁判官が判決を読み上げる。ジャンネットが、彼女には何か隠している秘密があるはずだ、と異議を申し立て、裁判官と判事たちはニネッタに秘密を明かすよう促す。しかし彼女はそれを拒む。ニネッタは処刑場に連行するよう命じられる。そこにフェルナンドが駆け込んで来る。彼は自分の命と引き換えに娘を助けようとしたのだが、代官が手配書を持っていたので正体が分かり、逮捕されてしまう。フェルナンドの必死の訴えにもかかわらず、娘は処刑場に、父は牢獄に送られることになる。ニネッタはフェルナンドに、父を救うため死に行くのに、どうして捕まりに来てしまったのか、と嘆く。ジャンネットたちは、詳しい事情を話すよう求めるが、判事たちに遮られ、二人はばらばらに連れて行かれる。代官は、思わぬ事態になってしまったことに動揺する。
教会でニネッタの疑いが晴れるよう祈ってきたルチーアは、ニネッタを娘として愛し、怒りっぽい自分の性格を直そうと決意する。
フェルナンドの友人エルネストが村にやって来るが、誰もいないので不審に思う。ようやく見つけたピッポに彼は、代官の家とファブリツィオ家の場所を尋ねて去っていく。ピッポは栗の木の洞にお金を隠したのだが、残りが幾らだか数えている。彼がアントーニオから裁判の様子を聞いている間に、鳥篭から逃げ出したかささぎが、ニネッタの十字架を奪って飛び去ってしまう。ピッポとアントーニオはかささぎを追って鐘楼を上る。
ニネッタが処刑台へと連れられて行く。彼女は教会の前で立ち止まり、自分が犠牲になるので父の命は救ってください、と神に祈る。そして再び死刑台に向かい、彼女を哀れむ人々が後に続く。
鐘楼でピッポが鐘を打ちならし、無くなった食器類などがすべてかささぎが盗んだと大声で伝える。そして集まった人たちに、無実のニネッタの処刑を止めさせろと訴える。ジャンネットとファブリツィオは証拠の食器を持って急いで刑場に向かう。そこに銃声が轟く。ルチーアはニネッタが死んだと思い気を失う。代官も狼狽する。だが銃声はニネッタの無実が判明した祝砲だった。間一髪で助かったニネッタを人々が出迎える。ジャンネットは、ニネッタ釈放の証書を代官に渡す。だがニネッタは、自分が助かったことよりも、父の安否を心配している。するとフェルナンドが、恩赦が下ったと現れ、父娘は抱き合って喜ぶ。ニネッタとジャンネットの結婚が許され、後悔する代官を尻目に、皆の喜びで幕となる。
音楽
序曲は、単独でも演奏されることの多い非常に有名な曲。序奏付きの展開部のないソナタ形式。冒頭の印象的な2つの小太鼓は、処刑の合図を表している。小太鼓は曲中でも活用されている。第1主題は、第2幕 第12番 ニネッタとピッポの二重唱のアレグロから採られている。第2主題に続く小結尾(コデッタ)は第2幕 第11番 ポデスタのアリアのヴィヴァーチェから採られている。
第1幕 第1番 導入は、陽気な開幕の合唱(ピッポとカササギの登場を含む)、ルチーアとファブリーツィオの登場が続き、それぞれの役の性格が提示される。特にルチーアのガミガミっぷりはカヴァティネッタ(小カヴァティーナ)で良く印象付けられている。そして Allegro con brio の生き生きとしたアンサンブルに至る。
第2番 ニネッタのカヴァティーナは、緩/急のカンタービレ/カバレッタ形式のアリア。テンポ・ディ・メッゾ(中間部)を欠いたコンパクトなもの。カンタービレ部は最高音が嬰ヘ音止まりで、娘役のソプラノにしてはだいぶ低めである。ここで抑えていた喜びが、カバレッタ部で高まって、イ音まで達する。父との、そして恋人との再会に喜び溢れる姿がよく描かれた素敵なアリアだ。
第3番 イザッコのカヴァティーナ は、二部形式のアリア。緩/急に聞こえるのでカバティーナ/カバレッタ形式と言えなくもない。物売りの口上を模した小歌だが、とても印象に残る音楽である。
第4番 合唱とジャンネットのカヴァティーナ は、合唱の導入付きのカンタービレ/カバレッタ形式のカヴァティーナ。カンタービレ部 Maestoso ではニネッタへの愛をたっぷりと歌う一方、カバレッタ部では再会の喜びの迸りを装飾歌唱を多用した動きのある歌で表している。è così dolce e nuovo と歌う箇所は、1度目は最高音であるロ音まで上がるが、2度目は♭が付いて変ロ音になり、陰りが入ることでジャンネットが感極まっているかのように聞こえる。様子すら窺える。ハ音以上の著しく高い音は無いものの、高めの音域に留まることが多く、高音に強いテノールでないと厳しい曲である。
第5番 ピッポの乾杯の歌 は、緩/急の二部形式のアリア。これもカンタービレ/カバレッタ形式と言えなくもない。Moderato では、ピッポの歌、合唱、木管楽器が前面に出る音楽、の3つの部分が続いており、これが2回繰り返される。木管楽器が活躍する部分は舞曲なのだろう。Allegro になってからは合唱の比重が高まる。3/8の2拍目がしばしば強音になるのは、彼らが酔っ払っているのを表しているのだろう。
第6番 レチタティーヴォと二重唱は、それまで明るい雰囲気で進んできた物語を一変させる転換点である。急/緩/急の三部形式の二重唱が拡大されている。劇的な管弦楽伴奏のレチタティーヴォの後、急 Allegro moderato では、弦の十六分音符の刻みが二人の不安を際立たせている。ここは一応ニ長調だが、臨時記号でしばしば調整が揺れる。緩 Andantino は、ほぼ同じ歌詞をソプラノとバスが並行して歌う美しい音楽。ヘ長調の穏やかさが生きている。Tempo Ⅰ に変わってすぐにニ長調に転じて、代官がやって来ることが判明する(ここは経過句に相当する)。ロッシーニはカバレッタに当たる4行 [Vivace]を、2行+2行に分けて、後半をストレッタのように扱うことで緊張感を高めている。そしてそのまま次の代官のカヴァティーナに続く。
第7番 代官のカヴァティーナ は、緩/急のカバティーナ/カバレッタ形式のアリア。代官は悪役だが、このアリアは完全にブッファの様式で書かれている。Moderato は一貫してウキウキした気分で、代官はファルセットでニネッタの声真似までする。Ciance solite e ridicole; 以降は歌とヴァイオリンに笑いの描写が加わっている。カバレッタ Allegretto では、前半と後半の間の中間部の前半がバッソブッフォならではの早口で、ここだけ Presto が指定されている。このように代官は登場した時にははまったくのブッファ役に仕立てられている。
※以下普請中。
代官は暴君なのか
《泥棒かささぎ》では、ヒロインのニネッタは代官の企みで死刑寸前に追いやられる。代官は村の権力者であり、ニネッタをものにするために権力を悪用する、いわば暴君である。
この点から、《泥棒かささぎ》ではしばしば代官が著しく悪役に扱われがちである。暴君なのだからそれも当然、のようにも思えるが、しかし台本上は代官は我々が思っているほど悪役には作られていない。
古典的な劇において暴君は、幕切れで改心して自らの非を詫び、徳を示すことが多い。近年になると、暴君が逮捕されたり殺害されたり、あるいは暴君が自ら命を絶ったりする幕切れも出て来る。
ところが《泥棒かささぎ》の幕切れでは代官はこのいずれにも当てはまらない。改心するというよりは自らしでかしたことをしきりに後悔する。逮捕されることも殺害されることもなく、それどころかニネッタの釈放とフェルナンドの恩赦に喜び沸き立つ人々は、代官の非を責めることすらない。幕切れで彼らはもう代官のことはほとんどどうでもよいのだ。それは、幕切れの段階で代官は物語の中心から外れてしまっていることを示している。
代官はニネッタを口説いて拒まれ、腹いせに窃盗の疑いで裁判にかけたわけだが、しかし彼は彼女を死刑で脅して言うことを聞かせようと思ったものの、実際に死刑にしてしまうつもりなぞまったくなかった。牢獄の場面でニネッタに再度キッパリと拒まれた時には、代官は怒りを露わにするのだが、しかしこの時点で彼の目論みは終わっている。彼女が裁判に掛けられると、代官といえどももう手出しができず、つまりニネッタは彼の手から離れてしまう。だから代官は、フェルナンドの逮捕をは職務として遂行した後は、もう物語を引っ張ることはなく、幕切れでも相手にされていない。
第2幕の終盤、代官ははしきりと後悔を口にしている。
(Maledisco il mio furor.)(私は 私の怒りを 呪う。)
(Qual rimorso!)(何という 後悔だ!)
(Quanto costa una vendetta!(仕返しが 何と 高くついたことか!!
di rimorsi ho pieno il cor.)私の心は 後悔で いっぱいだ。)
(Son confuso e strabiliato;(私は 混乱している そして 驚いている;
di me stesso sento orror.)私は 自分自身に 強い嫌悪を 感じている。)
こんな後悔の言葉は、あらゆる権力を握っている暴君はそう簡単に言わないだろう。
実のところ、代官は基本的にはオペラブッファの役まわりである。
御存知の通り、若い娘に邪な愛を燃やす老人というのは、オペラブッファの定番の登場人物である(《セビリアの理髪師》のドン・バルトロなど)。また、音楽の項に書いたように、第1幕の代官のカヴァティーナはまったくのバッソブッフォのアリアに仕立てられている。つまり、代官はオペラブッファの傲慢な老人の流れを汲んだ役であり、それがオペラ・セミセリアの救出オペラの中で人物像が著しく拡大されたにすぎない。
さて《泥棒かささぎ》の大きな特徴が、裁判の場面である。前述の通り、代官はニネッタを脅かせば言うことを聞くだろうととタカをくくっていたわけだが、その思惑は裁判という公的で自分がコントロールできない領域の中で暴走を始めてしまう。裁判官や判事たちも含め、誰もニネッタの死を望んでいないのに、法の下で悲劇へ突き進み、代官自身ですらどうにもできない。この、誰にも止められぬ悲劇の加速という不気味さと恐ろしさが、《泥棒かささぎ》の悲劇性を増している。それも代官が小権力者だからこそで、したがって代官を最後まで悪役として扱うと、この悲劇の加速が曖昧になってしまう。
暴君が、すべてを支配できるからこそ悪役として強力なのであれば、代官はあまり暴君ではないのだ。
対訳付き音楽設計図
日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
台本の詩句はクリティカルエディション総譜に記載されている状態に合わせてある。
Sinfonia | Maestoso marziale 4/4 E major |
序奏付きの展開部を欠いたソナタ形式。 冒頭の小太鼓は、直接の引用ではないが第2幕フィナーレ冒頭における小太鼓と同じ働きをしており、つまり処刑を知らせる合図である。 第1主題は第2幕 第12番 ニネッタとピッポの二重唱のアレグロから採られている。 第2主題に続く小結尾(コデッタ)は第2幕 第11番 ポデスタのアリアのヴィヴァーチェから採られている。 再現部の第2主題でホ長調に転じる。 |
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[Allegro] 3/4 e minor / G major |
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([Allegro]) 3/4 E major |
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Più mosso 3/4 E major |
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ATTO PRIMO | ||||
N.1 Introduzione Lucia Pippo Fabrizio La Gazza Coro |
Brillante 2/4 G major |
Scena Ⅰ第1場 (Ampio cortile della casa di Fabrizio. Sul dinanzi domina un portico rustico con pergolato; ad un pilastro è appesa una gabbia aperta, dentro della quale si vede una gazza. Nel fondo e verso il mezzo è collocata una porta con cancello, per cui si entra nel cortile. Al di là la scena rappresenta alcune collinette)(ファブリーツィオの家の 広い中庭。前部では 日陰棚を伴った 田舎風の柱廊玄関が 支配している; 一つの柱に 開けっ放しの鳥籠が吊るされており、その中にはカササギが見える。奥と そして 中央のあたりに 格子を伴った門が 置かれており、それを通って 人は中庭に入れる。その向こうでは 舞台が 小さな丘々を表している) (Diversi abitanti del villaggio; alcuni famigli recanti le cose necessarie per apparecchiare una mensa; subito Pippo; indi Lucia con un canestro di biancherie; finalmente Fabrizio ed altri servi con bottiglie di vino)(村の様々な住人; 何人かの使用人たち 食卓の準備をするために必要な物を 運んでいる; すぐにピッポ; その後に 白布類の手籠を持ったルチーア; 最後に ファブリーツィオと 他の使用人たち ワインの瓶を持った) CORO合唱 Oh che giorno fortunato!ああ 何と 幸運な日だ! Oh che gioia si godrà!ああ なんという喜びが享受されるだろうか! PIPPOピッポ Dopo tanti e tanti mesi多くのそして多くの月々の後で spesi in guerra e fra gli stenti,戦争に費やされた【月々の後で】 そして困難の間で費やされた【月々の後で】 oggi alfine a' suoi parenti今日 ついに 彼の両親に il padron ritornerà.主人が 帰って来るだろう。 CORO合唱 Vieni, vieni, o padroncino!来なさい、来なさい、ああ 主人の息子よ! PIPPOピッポ Vieni, vieni!来なさい、来なさい! CORO合唱 vieni a noi, Giannetto amato.私たちのところに来なさい、愛するジャンネットよ。 PIPPOピッポ Vieni, vieni!来なさい、来なさい! CORO合唱 Oh che giorno fortunato!ああ 何と 幸運な日だ! PIPPO E COROピッポと合唱 Oh che gioia si godrà!ああ なんという喜びが 享受されるだろうか! LA GAZZAカササギ Pippo? Pippo?ピッポ? ピッポ? PIPPOピッポ Chi ha chiamato?誰が 呼んだのか? CORO合唱 Non so niente.私は 何も知らない。 (essendosi accorti della gazza e deridendo Pippo)(カササギに 気付いて そしてピッポを嘲笑して) Ah ah ahà!ハハハハ! LA GAZZAカササギ Pippo? Pippo?ピッポ? ピッポ? PIPPOピッポ Ancora?またか? CORO合唱 (additandogli la gazza)(カササギを 指し示して) Ve' chi è stato.見なさい 誰がいたか。 PIPPOピッポ Brutta gazza maledetta,忌々しい 嫌なカササギめ、 che ti colga la saetta!稲妻が お前に当たるように! LA GAZZAカササギ Pippo? Pippo?ピッポ? ピッポ? PIPPOピッポ Taci là, taci là!そこ 黙れ、そこ 黙れ! CORO合唱 (deridendo Pippo)(ピッポを 嘲笑して) Pippo? Pippo? Ah ah ah ah!ピッポ? ピッポ? アハハハ! (deridendo Pippo)(ピッポを 嘲笑して) |
un portico rustico con pergolato 日陰棚を伴った 田舎風の柱廊玄関 と直訳すると物々しいが、南欧の田舎でよく見かける、建物の出入り口から中庭に向けて据えられた蔓状の植物を茂らせたアーケードのこと。 che ti colga la saetta! saetta を 矢 と採って 矢が お前を射るように! と訳すこともできる。ここでは、天罰を喰らえ という意味合いで 稲妻 で採った。 なお、第1幕三重唱でも saetta が用いられているが、ここでは明らかに 稲妻 の意味で用いられている。 後奏部分にも (deridendo Pippo) (ピッポを嘲笑して) のト書きが付けられている。 |
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Cavatinetta Moderato 3/4 C major |
LUCIAルチーア [entrando][入場して] Marmotte, che fate?怠け者の女たちよ、君たちは 何を しているのか? Così m'obbedite?このようにして 私に従っているのか? Movetevi, andate;動きなさい、歩きなさい; la mensa allestite食卓を 準備しなさい là sotto alla pergolaあそこの 蔓棚の下の【食卓を 準備しなさい】 che invita a mangiar.それ【= 食卓】は 食事を するよう 誘って いざなって いる。 Che flemma! sbrigatevi:なんという鈍重【≒ 何を ぐずぐずしているのだ】! 急ぎなさい: pigliate, stendete.取りなさい、広げなさい。 Mio figlio, il sapete,私の息子は、君たちは それを知っている、 dee tosto arrivar.すぐに 到着するはずだ。 PIPPO E COROピッポ と 合唱 Che giorno beatoなんという 最高に幸せな日を dobbiamo passar!私たちは 過ごすことになっているのか! LUCIAルチーア Alfine cessatoついに終える avrò di tremar.ことであろう 怯えるのを【≒ ようやく 心配も 終わりになることだろう】。 |
pigliate, stendete. ルチーアが籠に入れて持ってきたテーブルクロスを、取って食卓に広げなさい という意味。 dee tosto arrivar. dee = deve < dovere |
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Recitativo 4/4 C major |
LUCIAルチーア Ehi, Ninetta?...ちょっと、ニネッタは?… Quand'io chiamo,私が 呼ぶ時は、 tutti perdono l'udito.皆が 聴力を失う【= 耳が 聞こえなくなる ≒ 聞こえないふりをする】。 E colui di mio maritoそして 私の夫である あの男は dove adesso se ne sta?今 どこに いるのか? PIPPO E COROピッポ と 合唱 Tuo marito eccolo qua.君の夫は ほら ここに。 |
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12/8 E-flat major |
FABRIZIOファブリーツィオ Egli viene, o mia Lucia,彼【= その男 = ファブリーツィオ】は 来ているぞ、ああ 私のルチーアよ、 come Bacco trionfante;勝ち誇った バッカスのように; egli reca l'allegria,彼【= ファブリーツィオ】は 喜びを携えている、 reca il nettare spumante【そして】 発泡性の ネクタル【= 発泡酒,スプマンテ】を 持って来ている che mantiene nelle veneそれ【= 発泡酒】は 血管の中に 維持する il vigor, la sanità.活力を、健康を。 LUCIA, PIPPO E COROルチーア、ピッポ と 合唱 Viva Bacco e la cantina,バッカス万歳 そして 酒蔵庫 【万歳】、 medicina d'ogni età!【酒は】あらゆる年齢の 特効薬だ! LUCIAルチーア (a Fabrizio)(ファブリーツィオに) Ah che alfin col suo congedoああ ついに 彼の除隊で oggi torna il figlio amato!今日 愛する息子が帰るとは! FABRIZIOファブリーツィオ Certamente; ed ammogliato確実に; そして 妻をめとった lo vorrei ben'io veder.彼を 私は ぜひとも見たいものだ。 LUCIAルチーア A me tocca il dargli moglie;私に 属している 彼に 妻を 与えることは【≒ 彼の結婚相手を見つけるのは私の役目だ】; questo affare a me s'aspetta.この仕事は 私に関わっている【≒ これは私がやるべき仕事だ】 Egli dee sposar...彼は 結婚するに違いない… LA GAZZAカササギ Ninetta, Ninetta.ニネッタ、ニネッタ。 FABRIZIOファブリーツィオ Ah! La gazza ha indovinato.ああ! カササギが 予言した。 LUCIAルチーア Insensato!馬鹿な男だ【≒ 何を馬鹿なこと言っているの】! FABRIZIOファブリーツィオ Si vedrà. Brava, brava!今にわかるさ。素晴らしい、素晴らしい! (s'avvicina alla gazza, l'accarezza e ne resta beccato)(カササギに近づき、それ【= カササギ】を撫でる そしてそれ【= カササギ】によってつつかれる) Ahi, ahi!ああ、ああ! LUCIAルチーア Che è stato?何が あったのか? FABRIZIOファブリーツィオ M'ha beccato.それ【= カササギ】が 私をつついた。 LUCIAルチーア E ben ti sta.そして それは君に 相応しい【≒ 当然の報いだ】。 FABRIZIOファブリーツィオ Ma la gazza ha indovinato.しかし カササギは 予言した。 LUCIAルチーア Insensato!馬鹿な男だ【≒ 何を 馬鹿なこと 言っているの】! FABRIZIOファブリーツィオ Si vedrà.今に 分かるさ。 PIPPO E COROピッポと合唱 Se la gazza ha indovinatoもしカササギが 予言したのなら ogni core esulterà, sì, sì.あらゆる心は 歓喜するだろう、そうだ、そうだ。 |
Egli viene, o mia Lucia, この Egli 彼は はファブリーツィオ自身を指している。その直前でルチーアと合唱がファブリーツィオを話題にしていることを受けて、彼が自らを『その男は―』と称している。 nettare ネクタルは、ギリシャ神話で神々が飲む酒。不老不死をもたらすとされる。 Insensato! 男性形なので、カササギ(女性名詞)に向けて言っているのではない。ファブリーツィオに向けて。 Brava, brava! 女性形なのでカササギ(女性名詞)に向けて言っている。 e ne resta beccato この場合の ne は受動態の『―によって』を示している。ここでは ne= da lei 彼女【= カササギ】によって。 |
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Allegro con brio 6/8 G major |
FABRIZIOファブリーツィオ (additando la mensa)(食卓を指し示して) Là seduto l'amato Giannettoあそこに 愛するジャンネットが 座って a suo padre, alla sposa vicino,彼の父親の、花嫁の隣に【座って】 or d'orgoglio brillar lo vedremo,私たちは見るだろう 彼【= ジャンネット】が 時に 誇りで輝くのを、 or di bella pietà sospirar.時に 美しい哀れみに溜息するのを。 LUCIAルチーア Là seduto l'amato Giannettoあそこに 愛するジャンネットが 座って a sua madre, alla sposa vicino,彼の母親の、花嫁の隣に【座って】、 or d'orgoglio brillar lo vedremo,私たちは 見るだろう 彼【= ジャンネット】が 時に 誇りで輝くのを、 or di bella pietà sospirar.時に 美しい哀れみに溜息するのを。 PIPPOピッポ Là seduto l'amato Giannettoあそこに 愛するジャンネットが 座って a suo padre, alla sposa vicino,彼の父親の、花嫁の隣に【座って】 or d'orgoglio brillar lo vedremo,私たちは 見るだろう 彼【= ジャンネット】が 時に 誇りで輝くのを、 or di bella pietà sospirar.時に 美しい哀れみに溜息するのを。 FABRIZIO, LUCIA E PIPPOファブリーツィオ、ルチーア と ピッポ Noi l'udremo narrar con diletto私たちは 彼が 語るのを 喜びをもって聞くだろう le battaglie, le stragi, il bottino;戦いを、殺戮を、戦利品を【語るのを】; CORO合唱 E fra i brindisi intanto faremoそして乾杯の間に そうしている間に 私たちは i bicchieri ricolmi sonar.溢れんばかりの杯を 響か【↑】せるだろう。 FABRIZIO, LUCIA E PIPPOファブリーツィオ、ルチーア と ピッポ E fra i brindisi intanto faremoそして乾杯の間に そうしている間に 私たちは i bicchieri ricolmi sonar.溢れんばかりの杯を 響か【↑】せるだろう。 (partono gli abitanti del villaggio)(村の住人は 退場する) |
or di bella pietà sospirar. この行が意味することは分かりづらい。あるいは亡くなった戦友への哀悼かもしれない。 |
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[Recitativo] Dopo l'Introduzione |
FABRIZIOファブリーツィオ (guardando l'oriuolo)(時計を 見て) Oh cospetto! Undici ore già passate.ああ 何ということだ! もう 11時を 過ぎている。 E Giannetto ne scriveそしてジャンネットは 私たちに書いた che sarà qui sul mezzogiorno.ここに 正午の頃に いるであろうことを。 LUCIAルチーア Oh diavolo, già così tardi!ああ 何てこと、もうこんなに遅い! E la Ninetta ancora non veggo.そして 私は まだ ニネッタを 見ていない。 Ov'è costei? Pippo, rispondi.あの女は どこに いるのか? ピッポ、答えなさい。 PIPPOピッポ Per la collina, io credo,丘の方に、私は信じている、 a cogliere le fragole.イチゴを 摘みに。 LUCIAルチーア Ah Fabrizio, da qualche tempoああ ファブリーツィオよ、いくらか前から son molto scontenta私はたいへん不満だ di questa tua Ninetta.この 君のニネッタに。 Pippo, Ignazio, Antonio, andateピッポ、イニャツィオ、アントーニオ、行きなさい tutti a preparar il resto.皆 残りを準備しに。 (Pippo e gli altri famigli si ritirano)(ピッポと 他の使用人たちは 退場する) LUCIAルチーア Ah se la colgoああ もし 私が 彼女を 摘み取るなら【≒ もし 彼女を ひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)】 quella smorfietta!...あの気取った娘っ子を!… FABRIZIOファブリーツィオ Eh via, cessa una volta!こらこら、一度で 止めなさい【≒ そこまでに しておきなさい】! tu sempre la rimbrotti,君は いつでも 彼女を叱責している、 e sempre a torto.そして いつでも間違っている【= 君は いつでも 間違って 彼女を 叱責している ≒ 君は いつも 彼女を 見当違いに 叱りつけている】。 LUCIAルチーア A meraviglia! E quando【まあ】驚いた! では ridendo e civettando ella mi perde笑いながら そして 媚びを売りながら【≒ ニコニコと 愛想を振り撒いて ばかりいて】 彼女が失くす【↑】時 le forchette d'argento, dimmi, allora【↑】私の 銀のフォークを、私に言いなさい、その時 se mi viene la bile, ho torto ancora?胆汁が 私に 来るならば【≒ 私が 腹を立てるのなら】、私は やはり 間違っているのか? FABRIZIOファブリーツィオ Gran cosa! Finalmenteたいしたことだ【≒ 大げさな】! 最終的に è una forchetta solaフォーク1本だけだ che si smarrì per caso;たまたま なくなっているのは【≒ 詰まるところフォークが1本たまたま見当たらないだけのことでしかない】; e chi sa forseそして いったい 誰が分かるというのだ che un dì non si ritrovi!ある日 それが見つかるかもしれないことを! Orsù, Lucia, bada a trattareさあ、ルチーアよ、扱うように注意しなさい con maggior dolcezzaより大きな優しさをもって quella fanciulla.あの娘を。 LUCIAルチーア (in aria di sprezzo)(軽蔑の態度で) Ah, ahà!アハハ! FABRIZIOファブリーツィオ Rispetta in lei le sue sventure.彼女において 彼女の不幸を丁寧に扱いなさい【≒ 彼女が不幸なことに配慮してやりなさい】。 Sai ch'ella è pur figlia君は知っている 彼女は まさに 娘だ di quel bravo e onestoあの勇敢な そして誠実な Fernando Villabellaフェルナンド・ヴィッラベッラ【↑】の【娘だ】 che fra le schiere incanutisce; e s'ella,その者は 部隊の中で白髪になっている【≒ 何年も兵役に就いたままだ】; orfana della madre, e senza doni母親の孤児で【≒ 母親を亡くし】、そして della fortuna, colle sue fatiche財産の【↑】贈与【= 遺産】はなく、彼女の苦労で qui si procaccia una meschina vita,ここで 貧しい生活を 手に入れようとしている、 non debb'esser perciò da noi schernita.だから 彼女は 私たちから 嘲笑されてはならないのだ。 LUCIAルチーア E chi dice il contrario? Ma finiamola.それで 誰が 反対を 言っているのか【≒ 誰も 反論している訳ではない】? だが これを止めよう【≒ この話は ここまでにしよう】。 Il tempo vola: io corro時間は飛んでいる【≒ 飛ぶように過ぎている】: 私は 急いで向かう un momento in cucina; e poi, se credi,一瞬【≒ 少しの間】 台所に; そしてそれから、もし君が信じるならば【≒ よろしければ】、 andremo insieme ad incontrar Giannetto.私は一緒に行くだろう ジャンネットを出迎えに。 (via)(去る) FABRIZIOファブリーツィオ Dici ben; vò nell'orto, e là ti aspetto.君は よく 言っている【≒ それはいい】; 私は 果樹園に 行く、そして そこで 君を 待つ。 (via)(去る) |
Ah se la colgo / quella smorfietta!... se qlcu. colgo もし ―を ひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)。 smorfietta < smorfia 伊和辞典では しかめ面,引きつった顔付き / 愛想笑い,媚 といった意味が並んでいるが、伊伊辞典にはさらに 気取った態度 という意味も載っている。したがって この場合の smorfietta は 気取った娘っ子 といった意味。 A meraviglia! この場合の a meraviglia は meraviglioso で採った。 ridendo e civettando ella mi perde / le forchette d'argento, この場合の2つのジェルンディオは、原因(―なので)の意味合いも含んでいる。 Sai ch'ella è pur figlia この pur < pure は強調。ルチーアもよく知っているあのフェルナンドのまさに娘だ、とニネッタがフェルナンドの娘であることを強調している。 Ma finiamola. この la は性数無関係に話者たちが認識を共有することものを指しており、特に finire の命令形+laで (話題にしていることを)もう止めろ の意味になる。 vò nell'orto, ortoは伊和辞典では 菜園,野菜畑 とあるが、orto は 家に隣接している 農作物を栽培する小中区画 を意味しており、つまり栽培されているものは野菜に限らない。実際、ここでは次の場でファブリーツィオが梨を採って持って来るので、ここでの orto は果樹園だと考えられる。 |
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N. 2 [Cavatina Ninetta] Ninetta |
Moderato 3/4 E major |
SCENA Ⅱ第2場 (Ninetta con un panierino di fragole, che scende dalla collina ed entra nel cortile; poscia Fabrizio; e finalmente la Lucia col canestro delle posate)(イチゴの小さな籠を 携えた ニネッタ、その者は 丘から 下りて そして 中庭に入る; それから ファブリーツィオ; そして 最後に ルチーア 食卓用具一式の籠を携えた) NINETTAニネッタ Di piacer mi balza il cor;喜びで 私の心臓は 跳ね上がる【≒ 高鳴る】; ah bramar di più non so:ああ 私は さらに 熱望することはできない【≒ これ以上 望むものはない】: e l'amante e il genitorそして 恋人と 父に finalmente io rivedrò.ついに 私は 再会するだろう。 L'uno al sen mi stringerà;一人は 胸に 私を抱きしめるだろう; l'altro, l'altro... ah che farà?もう一人は、もう一人は… ああ 彼は 何をするだろうか? Dio d'amor, confido in te;愛の神よ、私は 君に 任せる; deh tu premia la mia fé!お願いだから 君は 私の忠誠【誠実さ】に褒賞を与えなさい! |
緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の二部形式のアリア。 緩(カンタービレ) |
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Andantino 6/8 E Major |
Tutto sorridereすべてが 微笑んでいるのを mi veggo intorno;私は見ている 私の周りで; più lieto giornoさらに 喜ばしい日が brillar non può.輝くことは できない。 Ah già dimenticoああ 既に 私は 忘れている i miei tormenti:私の苦悩を: quanti contenti何と多くの 満足を alfin godrò!ついに 私は享受するであろうことか! (va a deporre il suo panierino sulla mensa)(置きに行く 彼女の小さな籠を 食卓の上に ) |
急(カバレッタ)。 | ||
[Recitativo] Dopo la Cavatina Ninetta Ninetta Lucia Fabrizio |
FABRIZIOファブリーツィオ (uscendo dall'orto con alcune pere che va a deporre sulla mensa)(いくつかの梨を 携えて 果樹園から 出て来て それらを 食卓の上に 置きに行く) Oh come il mio Giannettoああ 何と 私のジャンネットが gradirà queste pere!これらの梨を 喜んで受ける【≒ 気に入る】であろう【↑】ことか! NINETTAニネッタ (a Fabrizio)(ファブリーツィオに) Addio; buon giorno!ごきげんよう; こんにちは! FABRIZIOファブリーツィオ Alfin sei giunta, amabile Ninetta.やっと 君が 来た、かわいらしい ニネッタよ。 Hai raccolte le fragole?君は イチゴを 摘んだのか? NINETTAニネッタ Un intero panierin n'ho ricolmo. Eccole.小さな籠 全体を 私は それで いっぱいにした。ほら ここに それらが。 FABRIZIOファブリーツィオ Oh belle, e fresche al par di te!ああ 凄い、そして 君のように 新鮮だ! Senti, mia cara; quest'oggi vo'聞きなさい、私の愛する女【≒ かわいい娘】よ; この日 私は望んでいる che tutto spiri d'intorno a noi私たちの周りのすべてが 発散するであろうことを gioia, letizia e amore.喜びを、幸福感を そして 愛を【≒ 私たちの周りで 皆に 喜びと 幸せと 愛を 感じてもらいたい】。 NINETTAニネッタ Oh sì, lo spero. Vostro figlio...ああ そうです、それを 私は 望みます。あなたの息子が… FABRIZIOファブリーツィオ Ah, ahà! mio figlio, il so, ti piace... Basta...アハハ! 私の息子は、私は そのことを 知っている、君に気に入っている… 十分だ…【≒ 君が 私の息子を 好きなことは 知っている… これ以上は 言わないが…】 NINETTAニネッタ Come! Che dite?何と! あなたは 何を言うのか? FABRIZIOファブリーツィオ Già da un pezzo io leggoもう しばらく前から 私は【そのことを】 読んでいる in quegli occhi, in quel core.その両目の中に、その心の中に。 NINETTAニネッタ (Oh Dio!)(ああ 神よ!) FABRIZIOファブリーツィオ Sta lieta; non t'arrossire. Al padre suo Giannetto喜びなさい; 赤くなるでない。彼【= ジャンネット】の父には ジャンネットは non v'è cosa che asconda: ei t'ama; ed io彼が隠すであろうことはない【≒ ジャンネットは 父には 隠し事はしない】: 彼は 君を 愛している; そして 私は questo amor non condanno.この愛を 非難しない。 NINETTAニネッタ Oh me felice!ああ 私は 幸せだ! FABRIZIOファブリーツィオ Taci, chè vien Lucia.黙りなさい【≒ 静かに】; ルチーアが来る。 NINETTAニネッタ Caro Fabrizio!愛する ファブリーツィオよ! (gli bacia la mano; ed egli le fa una carezza)(彼の片手に キスをする; そして 彼は 彼女を 撫でる) LUCIAルチーア [entrando][入場して] Ma brava! E tu, quando farai giudizio?しかし 立派な【≒ まあ 大した娘なこと】! それで君は、いつ良識をするのだろうか【≒ いつになったら 分別を わきまえるのだろうか ≒ いつになったら一人前になるのか】? (alla Ninetta)(ニネッタに) Prendi queste posate, e bada beneこれらの食卓用具を 受け取りなさい、そして 十分に 気を付けなさい che non si perda nulla.一つも 無くならないように。 NINETTAニネッタ Ah no! Vorreiああ はい! 私は in pria morir, che ancora真っ先に【≒ すぐさま】死にたい、再び mancar dovesse...それが 不足する 【↑】場合には…。 LUCIAルチーア Solite proteste.いつもの異議【≒ 言い訳】だ。 Ma intanto la forchetta se n'è ita.しかし ともあれ フォークは 行ってしまった【≒ 行方不明になった】。 NINETTAニネッタ Io non ci ho colpa!私は それについて 過失を持っていない【≒ それは 私のせいではない】! LUCIAルチーア Ma però...しかし けれども… FABRIZIOファブリーツィオ Che vita!何という人生だ【≒ 何てことだ】! (prende la Lucia per un braccio, mostrandosi alquanto adirato)(ルチーアを腕によってつかまえ【≒ ルチーアの腕を掴み】、いささか怒った態度を見せて) Andiamo.行こう。 LUCIAルチーア Andiamo pure.どうぞ 行こう。 FABRIZIOファブリーツィオ (si stacca dalla Lucia, e va a parlare nell'orecchio alla Ninetta)(ルチーアから 離れて、そして ニネッタの耳の中に 話しに行く【≒ ニネッタ の耳元に 声を掛けに 行く】) Addio, Ninetta.さようなら、ニネッタ。 LUCIAルチーア (tirando a sé Fabrizio)(ファブリーツィオを自分の方へ引っ張って) Eh quante tenerezze! Ad una servaええ 何と 多くの愛情! 使用人の女に non bisogna dar tanta confidenza.そんなに多くの信頼を 与える必要はない。 FABRIZIOファブリーツィオ Non pianger, mia fanciulla; abbi pazienza.泣かないで、私の少女よ; 忍耐を持ちなさい【≒ 辛抱するんだ】 (Lucia e Fabrizio escono, e prendono la via della collina. Ninetta chiude il cancello, e poi rientra nell'abitazione.)(ルチーアとファブリーツィオは出て行く、そして彼らは丘の道を取る。ニネッタは格子の門を閉じて、そしてそれから住居の中に戻る) |
Vorrei / in pria morir, in prima = primamente |
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N.3 Cavatina Isacco Isacco |
Allegro moderato 2/4 G major |
SCENA Ⅲ第3場 (Isacco, prima di dentro, e poscia affacciandosi al cancello, colla sua cassa di merci; e subito Pippo, arrecando qualche cosa per la mensa)(イザッコ、はじめは 内側【≒ 舞台裏】で、そして それから 格子門のところに 現れて、彼の商品箱を 携えて; そして すぐに ピッポ、食卓のための何らかのものを 持って行って) ISACCOイザッコ Stringhe e ferri da calzette,紐と 短い 靴下用の鉄【≒ 編み棒】、 temperini e forbicette,折り畳みナイフと 小鋏、 aghi, pettini, coltelli,針、櫛 くし、包丁、 esca, pietra e zolfanelli.火口 ほくち、石【≒ 火打石】と 着火剤。 |
ferri da calzette calzette < calzetta は calza 靴下 の縮小形。ferri da calzette は靴下を編むための鉄の棒を指しており、おそらくそれが転じて編み物全般の編み棒を指していると思われる。 forbicette forbicette は forbice 鋏 はさみ の縮小形。概ね裁ち鋏程度の大きさまでが forbice で、それよりも小さなものが forbicette。したがって、糸を切る時に使うような小ぶりの鋏を指していると思われる。 esca, pietra e zolfanelli. zolfanelli < zolfanello は溶かした硫黄を染み込ませた綿や麻を小さな棒状にした着火剤。火口から炎を得る際に用いられた。 なお、これを受けて zolfanello は古いタイプのマッチも指すが、《泥棒かささぎ》が初演された1816年にはまだマッチは実用化されていない。 |
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Moderato 3/8 G major |
ISACCOイザッコ Avanti, avanti chi vuol comprar,前へ、前へ 買いたい人は、 e chi vuol vendere o barattar.そして売りたい人は あるいは交換し【たい人は】。 |
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[Recitativo] Dopo la Cavatina Isacco |
PIPPOピッポ Oh, senti il vecchio Isacco.ああ、聞きなさい 老イザッコよ。 Andate, galantuomo;行きなさい、旦那よ; risparmiate una voce si bella:それほどの美しい声を 節約しなさい: quest'oggi abbiamo vuota la scarsella.この日 私たちは 空の財布を 持っている【≒ 今日は 私たちは お金がない】。 ISACCOイザッコ Io compro, se volete;私は買う、もしあなたが 望むなら; baratto, se vi piace:【物々】交換する、もし それが あなたに 気に入るなら。 guardate che bei capi,見なさい この美しい衣類を che belle mercanzieこの素晴らしい商品を tutte di modaすべて流行っていて e più che mai perfette.そしてこの上なく 非の打ち所がない。 PIPPOピッポ Andate, vi ripeto.行きなさい、私は あなたに 繰り返して言う。 ISACCOイザッコ Salutatemi la signora Ninetta:ニネッタ嬢に 私から 挨拶しなさい【≒ ニネッタさんに よろしく】: se per sorte ella bisogno avesseもし 運命によって【≒ 何かの事情で】 彼女が 必要とするならば de' fatti miei, ditele che mi trovo私の行動【≒ 商売】を、彼女に言いなさい 私は いることを fino a dimani nell'Albergo nuovo.明日まで新しい宿に。 (parte)(退場する) SCENA Ⅳ第4場 (Pippo e Ninetta con de' fiori per adornar la mensa)(ピッポと 食卓を飾るための花々を携えたニネッタ) NINETTAニネッタ (a Pippo)(ピッポに) Mi par d'aver udito la voce私には 声を 聞いたように 思われた di quel vecchio merciaiuoloあの年老いた小間物商人の【声を】 che suole tutti gli anniその者は 毎年 passar di qua.このあたりを 通って行く 【↑】のが常だ。 PIPPOピッポ Non v'ingannaste: è desso;あなたは 間違っていない: それは 彼だ; e mi chiamò di voi.そして 彼は あなたについて 私を呼んだ【≒ 私に あなたの話を していた】。 NINETTAニネッタ Gli son tenuta assai.私は 彼に たいへん 感謝している。 PIPPOピッポ Un usuraio egual non vidi mai.同じくらいの守銭奴を 私は これまで 一度も 見なかった【≒ あんなぼったくり商人は 今まで 見たことない】。 |
guardate che bei capi, capi < capo この場合の capo は 本来 服の単位 着 ちゃく であり、capo di abbigliamento あるいは capo di vestiario で 衣類 を意味する。ここでの capi はその後ろの部分を端折ってこれだけで 衣類 を意味している。 Un usuraio egual non vidi mai. ピッポがイザッコをがめついぼったくり商人だと不快に思っていることは、第1幕第11場で彼がイザッコについて述べる言葉 quel sordido avaraccio あの強欲な守銭奴 にも現れている。sordido は 汚い,汚れた の意味で、人に使う時は 卑しい,あさましい のように見下した意味になる。 |
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N. 4 Coro e Cavatina Giannetto Giannetto Ninetta Pippo Coro |
Brillante 6/8 A major |
(s'ode dietro alla collina una sinfonia campestre)(丘の後ろ【≒ 向こう】で 田舎の交響楽【≒ 村の楽隊音楽】が聞こえる) NINETTAニネッタ Ma qual suono!ところで 何という音だ! CORO合唱 (Coro di contadini)(農夫たちの合唱) (da lontano)(遠くから) Viva!万歳! NINETTAニネッタ Ma quai grida!ところで 何という叫び声だ! CORO合唱 (come sopra)(上と同様に) Ben tornato!おかえりなさい! PIPPOピッポ (saltando per gioia)(喜びで 立ち上がって) È Giannetto!彼は ジャンネットだ! NINETTAニネッタ Oggetto amato,愛する対象【≒ 最愛の人】よ、 deh mi vieni a consolar!ああ 私を 慰めに 来なさい【≒ 喜ばせに 来て】! Ah momento fortunato!ああ 幸運な瞬間【≒ 幸せな時】よ! Oh che dolce palpitar!ああ 何という甘美な鼓動【≒ 何と 甘い喜びに 心臓が ドキドキしていることか】! PIPPOピッポ (correndo sulla soglia dell'abitazione e chiamando i famigli)(住居の 戸口の上に 駆け寄って そして 使用人たちを 呼んで) Fuori, fuori! È ritornato:外に、外に【≒ 皆 外に出て】! 彼が 帰って来た: deh, venitelo a mirar!ああ 彼を 眺めに 来なさい! SCENA Ⅴ第5場 (Ninetta, Pippo, Giannetto, Fabrizio, Lucia, contadini e contadine che si veggono discendere dalla collina, ed i famigli di Fabrizio che escono nel cortile)(ニネッタ、ピッポ、ジャンネット、ファブリーツィオ、ルチーア、農民の男たち そして農民の女たち その者たちは 丘から 下りて来る、そして ファブリーツィオの使用人たち その者たちは 中庭から出て来る)) (Giannetto, vedendo la Ninetta, si spicca dalla comitiva, corre, e trovasi alla porta che dalla strada mette al cortile, nel momento che vi giunge la Ninetta per riceverlo)(ジャンネットは、ニネッタを見ると、同行者たちから 離れて、走り、そして 気が付くと門のところにいる それ【= 門】は 道から 中庭へと 通じている、ニネッタが そこへと 彼を迎えに到達する瞬間に) CORO合唱 Bravo! Ben tornato!素晴らしい! おかえりなさい! Qui dovete ognor restar.ここに あなたは いつまでも 留まらなくてはならない。 |
合唱の導入付きのカンタービレ/カバレッタ形式のカヴァティーナ 導入 nel momento che vi giunge la Ninetta per riceverlo クリティカルエディション総譜では giunge を giugne と誤植している。 |
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[Cavatina] Maestoso 3/4 D major |
GIANNETTOジャンネット (alla Ninetta)(ニネッタに) Vieni fra queste braccia...来なさい この両腕の間に… Mi balza il cor nel sen!胸の中で 私の心臓が 跳ね上がっている【≒ 激しく 鼓動している】! D'un ver amor, mio ben,真の愛の、私の最愛の人よ、 quest'è il linguaggio.これは【真の愛の】 言葉だ。 Anche al nemico in faccia敵の前ですら m'eri presente ognor:君は いつも 私といた。 tu m'inspiravi allorその時 君は 私に吹き込んだ forza e coraggio e valor.力と 勇気と 勇敢さを。 |
緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の二部形式のアリア。 緩(カンタービレ)。 |
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Allegro 4/4 D major |
CORO合唱 Bravo!素晴らしい! Qui dovete ognor restar.ここに あなたは いつまでも 留まらなくてはならない。 Viva!万歳! |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部) |
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(Allegro) 4/4 D major |
GIANNETTOジャンネット Ma quel piacer che adesso,しかし その喜びは それを今、 o mia Ninetta, provo,ああ 私のニネッタよ、私は感じている è così dolce e nuovoこれほどに甘美で そして新しい【≒ 今までにない】ので che non si può spiegar.うまく説明できない【≒ しかし、ああ ニネッタよ、今 私が感じている喜びは、とても甘美で これまでに味わったことがないものなので、私は【それを】言葉で言い表すことができない】。 CORO合唱 Mi sembrano due tortore:私には 2羽のキジバトに 思われる: mi fanno giubilar!それらは 私を 大喜びさせる! Viva!万歳! (tutti fanno festa a Giannetto. - Ad un cenno di Lucia, Pippo e gli altri famigli rientrano in casa)(皆は ジャンネットを大喜びで迎える。―ルチーアの指示で、ピッポと 他の使用人たちは 家の中に 戻る) |
急(カバレッタ)。 終盤で合唱が Caro! 親愛なる男よ! と2回歌う。 Mi sembrano due tortore: tortore < tortora キジバト キジバトのつがいは仲睦まじいことから、夫婦円満の象徴とされる。 |
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N. 5 Brindisi Pippo Coro |
Moderato 6/8 F major |
(alcuni famigli portano fuori delle sottocoppe coperte di bicchieri, e mescono ai contadini. Pippo esce con un nappo in mano, si mette in mezzo alla festosa turba, e fa il seguente brindisi:)(何人かの使用人たちが カップで覆われた受け皿を【≒ 酒器を 盆に 乗せて】外に【≒ 舞台へと】 持って行く。ピッポが 手に 酒杯を持って 出てきて、陽気な群衆の中に 身を置き、そして 次に続く 乾杯を する:) PIPPOピッポ Tocchiamo, beviamo当てよう【≒ 酒器をぶつけよう】、飲もう a gara, a vicenda:競って、交互に: il petto s'accenda di dolce furor.胸が 甘い炎で燃え上がる。 CORO合唱 Tocchiamo; e discenda当てよう: そして 下りて行くように la gioia nel cor.歓喜が 心の中に。 PIPPOピッポ Se il nappo zampilla,酒杯が迸り出るならば【≒ 酒杯に注がれた酒が溢れるならば】、 se spuma, se brilla,それが泡立っているならば、、輝いているならば、 e ricchi e pitocchi金持ちたちも 物乞いたちたちも esultano allor.その瞬間 狂喜する【≒ 酒が酒杯に 並々と注がれて 泡を立てて 輝くと、金持ちも 貧しい者も 大喜びする】。 CORO合唱 Beviamo; e trabocchi飲もう; そうして 溢れるように di gioia ogni cor.どの心も 喜びで。 |
Se il nappo zampilla, zampilla < zampillare は、液体などが噴出する という自動詞で、主語が nappo 酒杯 では本来合わない。一方、次行の spuma < spumare 泡立つ、brilla < brillare 輝く,きらめく は、共に主語は 酒 だと思われる。そこでここでの nappo は 酒杯 そのものでなく、酒杯に注がれた酒 を意味していると理解した。 |
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Allegro 3/8 F major |
PIPPOピッポ Il nappo è di Pippo,酒杯は ピッポの la pipa e la poppa:パイプ【↑】である そして乳房【↑】である。 il pecchero accoppa大きな酒杯は やっつける le pene del cor.心の苦悩を。 CORO合唱 Che pipa, che poppa,パイプも、乳房も、 che pretto sapor!何と純粋な味なことか! (finiscono le danze, e tutti si levano da tavola)(踊りを 終える、そして全員が食卓から遠ざかる) [Pippo e] (i contadini escono)[ピッポと](村人たちは 出て行く) |
Il nappo è di Pippo, / la pipa e la poppa: 語呂を揃えた言葉遊びではあるが、ピッポにとって酒杯から酒を飲むのは、大人の男がパイプからタバコの煙を吸うのや、赤ん坊が乳房から母乳を吸うのと同じく、幸福感を得る行為である、といった意味合いになっていると思われる。 Che pipa, che poppa, ここでの che は anche で採った。 |
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[Recitativo dopo il Brindisi di Pippo] |
GIANNETTOジャンネット O madre, ancor non mi diceste nullaああ 母よ、あなたは まだ 私に 何も 言っていない del caro zio. Che fa?愛する叔父に ついて。彼は 何をしているのか? LUCIAルチーア Sempre trafittoいつも 貫かれている dalla sua gotta.彼の通風によって【≒ 彼は いつも 通風で 苦しんでいる】。 GIANNETTOジャンネット Ah voglioああ 私は欲する vederlo ed abbracciarlo.彼に会うことを そして 彼を 抱擁することを【≒ 彼に 会って 抱きしめたい】。 FABRIZIOファブリーツィオ E ben, possiamoそれでは、私たちは or tutti in compagnia今 全員が 一緒に andar da lui: che te ne par, Lucia?彼のところに 行く【↑↑】ことができる:それについて 君には どう思われるか、ルチーア? LUCIAルチーア Andiamci pur. Ninetta,さあ 行こう。ニネッタ、 tien l'occhio a tutto. Pippo?...すべてに 片目を保ちなさい【≒ あらゆるものから 注意の目を 逸らすな】。ピッポは?… PIPPOピッポ (uscendo subito)(すぐに出て来て) Signora...主人の女よ… LUCIAルチーア Là in cucina raccogli la mia gente,あそこに 台所に 私の人々を集めなさい e mangiate e bevete allegramente.そして 陽気に 食べて そして飲みなさい。 PIPPOピッポ Oh, vi faremo onore!ああ 私たちは あなたに 敬意を表するだろう! (rientra in casa)(家の中に再び入る) GIANNETTOジャンネット (alla Ninetta)(ニネッタに) A rivederci, mia cara!さようなら、私の愛する女よ! NINETTAニネッタ Sì; ma ritornate presto.はい; でも すぐに戻りなさい。 LUCIAルチーア (alla gazza)(カササギに) Povera bestiolina, vien qua;かわいそうな小動物、ここに 来なさい; bacia la mano: addio, carina.手にキスを しなさい:さようなら、かわいい子。 (Fabrizio, Lucia e Giannetto escono dalla porta che mette alla strada. Intanto ch'essi dilungansi al basso, Fernando compare sulla collina, e ne discende guardandosi sempre dintorno in aria di sospetto)(ファブリーツィオ、ルチーアとジャンネットは門から出て行く それ【= 門】は道路に通じている。彼らが低いところに向かって【≒ 坂を下って】遠ざかる間、フェルナンドが丘の上に現れ、そしてそこから下りる 常に疑わし気な様子で周囲を注意して) SCENA Ⅵ第6場 (Ninetta, e subito Fernando)(ニネッタ、そして すぐに フェルナンド) NINETTAニネッタ Idolo mio!... Contiamo queste posate.私の偶像よ!… これらの食卓用具を 数えよう。 Oh come, come sento ch'io l'amo!ああ どれほど、どれほど 私は 感じていることか 彼を 愛していることを! FERNANDOフェルナンド (riconoscendo la casa di Fabrizio)(ファブリーツィオの家を 認識して) No, non m'inganno.いいや、私は 間違っていない。 NINETTAニネッタ Il conto è giusto.計算は 正確だ。 FERNANDOフェルナンド Oh, Dio! quella certo è mia figlia!...ああ、神よ! あれは たしかに 私の娘だ!… Ahi di qual colpo a ferire ti vengo!ああ 何という災難で 君を傷付けに 私は来ているのだ! NINETTAニネッタ Oh, cielo! Un uomo: par ch'egli pianga.ああ、天よ! 男の人だ: 彼は 泣いているかのように 見える。 (gli si accosta timidamente)(彼に おずおずと 近づく) Dite, in che poss'io?...言いなさい、何において 私は できるのか【≒ 私に何ができるのか ≒ 私が力になれることはないか】?… FERNANDOフェルナンド (scoprendosi, e con dolore)(自分の正体を示して、そして苦悩をもって) Adorata mia figlia!愛する 私の娘よ! NINETTAニネッタ (con trasporto, e gettandosi fra le braccia di suo padre)(熱狂で持って【≒ 喜びに 我を忘れて】、そして 彼女の父の 両腕の間に 身を投げて) Oh, padre mio!ああ、私の父よ! FERNANDOフェルナンド Zitto! Non mi scoprir.静かに! 私の覆いを 取るでない【≒ 私が 誰かに 気付かれないようにしなさい】。 NINETTAニネッタ Come! Che dite?なんということ! あなたは 何を 言うのか? FERNANDOフェルナンド Ascolta, e trema.聞きなさい、そして震えなさい。 |
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N. 6 Recitativo e Duetto [Ninetta - Fernando] Ninetta Fernando |
(Recitativo) 4/4 C major |
FERNANDOフェルナンド Ieri, sul tramontar del sole,昨日、太陽の沈む頃に giunse a Parigi la mia squadra.パリに 私の分隊が 着いた。 Io tosto del capitano imploro私は すぐさま 懇願する 隊長の di vederti il favor.好意に 君に 会うことを【≒ 隊長に 娘に会いに行きたいと願った】。 Bieco e crudele ei me lo niega.意地悪く そして容赦なく 彼は 私に それを拒む。 Con ardir, con fuoco,大胆をもって【≒ 勇気を奮って】、熱をもって【≒ 熱心に】 a' detti suoi rispondo.彼の言葉に 私は 言い返す。 Sciagurato! ei grida;悪人め! 彼は 叫ぶ; e colla spada già già m'è sopra.そして 剣を 持って 早くも 既に 彼は私の上にいた【≒ 私に向かって来た】 Agli occhi mi fa un velo il furor;激怒が 私の両目に 覆いをかけた【≒ 怒りで 私は目が眩んだ ≒ 私は 怒りのあまり 自制できなくなった】; la sciabla impugno, m'avvento,私は サーベルを 握り、私は 突進する、 e i nostri ferri già suonano percossi;そして 私たちの鉄【= 刀】は 既に 激しく当たって鳴り響く; quand'ecco a noi sen vieneちょうど その時 私たちのところに やって来る pronto un soldato素早く 一人の兵士が e il braccio mio trattiene.そして 彼は 私の腕を 押さえておく【≒ 掴んだ】。 NINETTAニネッタ E allora, padre mio?そして それでは、私の父よ? FERNANDOフェルナンド Barbara sorte!残酷な運命だ! Fui disarmato, e condannato a morte.私は 武器を取り上げられ、そして 死の刑を 申し渡された。 NINETTAニネッタ Misera me!哀れな私! FERNANDOフェルナンド Gli amici procurâr la mia fuga.友たちが 私の逃走を 世話する【≒ 私が逃走できるよう手配してくれた】。 Il prode Ernesto di questi cenci mi coperse,勇敢なエルネストが このぼろで 私を包み、 e scorta mi fu fino al primo villaggioそして 私に 付き添った 最初の村まで dove entrambi piangendo ci lasciammo.そこで 両者は 泣きながら別れた。 Amico mio, ei disse;私の友よ、彼は言った; e dir non mi poteva: Addio!そして 【その後にはもう】 彼は 私に 言うことができなかった: さようなら! とは |
Gli amici procurâr la mia fuga. クリティカルエディション総譜では procurar の a にアッチェント・チルコンフレッソ(サーカムフレック)が付いている。 |
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[Duetto] Allegro moderato 4/4 D major |
NINETTAニネッタ Come frenar il pianto!どうやって 涙を 抑えるというのだ! Io perdo il mio coraggio!...私は 私の勇気を 失っている!… E pur di speme un raggioそして それにもかかわらず 希望の光線が ancor vegg'io brillar.輝いているのを 私は まだ 見ている。 FERNANDOフェルナンド No, non v'è più speme;いや もはや 希望はない。 è certo il mio periglio:私の危険は 確実だ。 solo un eterno esilio,ただ 永遠の逃亡生活だけが oh Dio! mi può salvar.ああ 神よ! 私を 救うことができる。 |
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Andantino 3/4 F major |
NINETTAニネッタ Per questo amplesso, o padre...この抱擁で、ああ 父よ… (Ah regger non poss'io!(ああ 私は耐えることができない! Chi vide mai del mioいったい 誰が見たのだ 私のもの【= 苦悩】よりも più barbaro dolor!)さらに残酷な【≒ 過酷な】苦悩を!) FERNANDOフェルナンド Per questo amplesso, o figlia...この抱擁で、ああ 娘よ… (Ah regger non poss'io!(ああ 私は 耐えることができない! Chi vide mai del mioいったい 誰が 見たのだ 私のもの【= 苦悩】よりも più barbaro dolor!)さらに 残酷な【≒ 過酷な】苦悩を!) |
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Tempo Ⅰ 4/4 F major |
FERNANDOフェルナンド Deh! m'ascolta.ああ 私【の言うこと】を 聞きなさい。 NINETTAニネッタ Sì, parlate.はい、話しなさい。 FERNANDOフェルナンド Fra l'orror di tante pene,多くの苦悩の恐怖の中で、 |
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(Tempo Ⅰ) 4/4 D major |
se sapessi...もし 君ができるなら… (si vede in questo momento arrivare dalla collina il Podestà)(この瞬間に丘から代官がやって来るのが見える) NINETTAニネッタ Oh Dio, chi viene!ああ 神よ、誰が来るのだ! FERNANDOフェルナンド Chi mai dunque?いったいぜんたい 誰なのか? NINETTAニネッタ Il Podestà!代官だ! FERNANDOフェルナンド Ah che dici? Son perduto.ああ 君は 何を言っているのか? 私は 失われた【≒ もうおしまいだ】。 Come far?どのようにするのか【≒ どうすればよいのか】? NINETTAニネッタ (conducendolo verso la mensa)(彼を 食卓の方に 導いて) Qui, qui sedete.ここに、ここに 座りなさい。 FERNANDOフェルナンド Se mi scopre...もし 彼が 私を 見つけたら… NINETTAニネッタ Nascondete quelle vesti.あの服を 隠しなさい。 FERNANDOフェルナンド Ma se mai...しかし もし 万が一にも… FERNANDO E NINETTAフェルナンドとニネッタ Oh crudel fatalità!ああ 残酷な運命よ! |
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[Vivace] 4/4 D major |
FERNANDO E NINETTAフェルナンドとニネッタ Io tremo... pavento...私は 動揺している… 恐れている… Che fiero tormento!何という 激しい苦悩だ! |
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([Vivace]) 4/4 D major |
Il nembo è vicino!黒雲が 近い! Tremendo destino,恐ろしい運命め、 mi sento gelar!私は 凍り付くのを 感じる! Che barbara sorte!何という 残酷な運命だ! (Fernando si ravviluppa nel suo gabbano, e si colloca nell'angolo più lontano della tavola. La Ninetta si occupa a sparecchiar la mensa.)(フェルナンドは 彼のオーバーの中に 身を包む。 ニネッタは 食卓の後片付けを することに 従事している。) |
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N. 7 Cavatina Podestà Podestà |
Moderato 4/4 A major |
SCENA Ⅶ第7場 (Il Podestà, Ninetta e Fernando)(代官、ニネッタと フェルナンド) (Il Podestà, avviandosi verso l'abitazione, dice quanto segue. Frattanto la Ninetta versa da bere a suo padre, e lo conforta in segreto)(代官は 住居の方に 近づいて、以下のことを言う。そうしている間に ニネッタは彼女の父に飲み物を注ぎ、そして こっそりと 彼を勇気づける) PODESTÀ代官 Il mio piano è preparato,私の計画は 準備された【≒ 用意が整った】、 e fallire non potrà.そして それ【= 計画】は 失敗する はずがないだろう。 Pria di tutto, con destrezza,何よりもまず、抜け目のなさをもって le solletico l'orgoglio.私は 彼女の高慢さを くすぐる【≒ 彼女の 自尊心を 刺激する】 (contraffacendo la Ninetta)(ニネッタを真似て) No, non posso... ohimè!... non voglio...いいえ、私は できません… ああ! 私は 望みません… deh partite, o Podestà!お願いだから 立ち去りなさい、ああ 代官よ! Ciance solite e ridicole;戯言だ いつもの そして 滑稽な; formolario omai smaccato!【そして それは】今では 大げさな 決まり文句【≒ 時代がかった 大仰な台詞】だ! Ma frattanto il cor piagatoだが そうしている間に 傷付けられた【≒ 攻撃を受けた】心は un belsì dicendo va.徐々に 素敵な はい を 言いつつある。 Il mio piano è preparato,私の計画は 準備された【≒ 用意が整った】、 e fallire non potrà.そして それ【= 計画】は 失敗する はずがないだろう。 |
緩―急の二部形式のアリア。 緩 formolario omai smaccato! formolario = formulario は 規則集 といった意味だが、ここでは formola = formula 決まり切った表現 の意味だと思われる。 |
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Allegretto 3/4 A major |
PODESTÀ代官 Sì, sì, Ninettaそうだ、そうだ、ニネッタよ sola soletta独りの 独りぼっちの ti troverò.君を 私は見つけよう。 Quel caro viso【↓↓】君の そのかわいい顔を brillar d'un riso微笑みで【≒ 微笑みを 浮かばせて】 io ti farò.私は 輝かせてやろう; |
急。 |
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Presto 3/4 A major |
E poi che in estasiそして それから 陶酔の中で di dolce amore甘美な愛の【陶酔の中で】 ti vedrò stendere私は見るだろう 伸ばすのを 君の la mano al core,片手が 心臓【≒ 胸】に【≒ 君が 甘美な愛に 恍惚となって その手を 胸の上に置くのを 私は見ることだろう】、 rinvigorito, ringiovanito,再び気力を回復されられて、若返らせられて、 ringalluzzito, rimbaldanzito気持ちを昂らせられて、自信を取り戻されて【≒ (君のおかけで私は)気力を取り戻し、若返って、心ウキウキとして、自信を取り戻し】、 trionferò.私は 勝利を収めるだろう。 |
rinvigorito, ringiovanito, / ringalluzzito, rimbaldanzito これも言葉遊び的な語呂の良い表現で、要は代官がニネッタに欲情を燃やし興奮しているということ。 なお代官についてはあまり人物設定がなされていないが、ここで ringiovanito を用いていることから、中年から初老であろうことは推測できる。 |
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Tempo Ⅰ 3/4 A major |
Ah tutto in giubiloああ すっかり 歓喜の中へと io già men vo.私は もう 進んでいる。 Sì, sì, Ninettaそうだ、そうだ、ニネッタよ sola soletta独りの 独りぼっちの ti troverò.君を 私は見つけよう。 Quel caro viso【↓↓】君の そのかわいい顔を brillar d'un riso微笑みで【≒ 微笑みを 浮かばせて】 io ti farò.私は 輝かせてやろう; rinvigorito, ringiovanito,再び気力を回復されられて、若返らせられて【≒ (君のおかけで私は)気力を取り戻し、若返って】、 trionferò.私は 勝利を収めるだろう。 ringalluzzito, rimbaldanzito気持ちを昂らせられて、自信を取り戻されて【≒ (君のおかけで私は)心ウキウキとして、自信を取り戻し】、 trionferò.私は 勝利を収めるだろう。 |
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[Recitativo] Dopo il Duetto, e la Cavatina del Podestà Ninetta Lucia Fabrizio |
NINETTAニネッタ (versando a suo padre un altro bicchiere di vino)(彼女の父に もう一つの酒器のワインを 注いで【≒ ワインを もう一杯注 いで】 Un altro, un altro: questoもう一つの、もう一つの【≒ もう一杯、もう一杯】;これが vi darà forza a camminar.あなたに 歩く力を 与えるだろう。 PODESTÀ代官 (avendo udita la voce di Ninetta e solo accorgendosi di lei in questo punto)(ニネッタの声を聞いて そして この瞬間にだけ【≒ この時になってようやく】 彼女に気付いて) Buon giorno,こんにちは、 bella fanciulla.美しい娘よ。 NINETTAニネッタ Vi son serva.あなたにとって 私は召使の女【≒ 私は あなたの召使 ≒ 何なりと用を申し付けに】。 PODESTÀ代官 (a parte alla Ninetta)(ニネッタの傍らで) Ditemi: chi è quell'uomo?私に言いなさい: あの男は誰なのか? NINETTAニネッタ Un povero viandante気の毒な 徒歩巡礼者だ che mi chiedea soccorso...その者は 私に救援を求めた… PODESTÀ代官 E voi gli deste a bere.それで あなたは 彼に 飲むために与えた【≒ 彼に飲み物を与えた】と。 Oh brava, brava!ああ 素晴らしい、素晴らしい! Anch'io, mia cara,私も、私の愛する女【≒ かわいい娘】よ、 ho una gran sete...激しい渇きを 持っている【≒ とても 喉が 渇いている】 NINETTAニネッタ Subito, vi servo.今すぐに、私は あなたに 仕える。 PODESTÀ代官 (trattenendola)(彼女を 引き留めて) No, no; per la mia seteいいや、いいや;私の渇きには non ci vuole del vin.ワインは 必要ない。 NINETTAニネッタ Dunque dell'acqua?それでは 水を? PODESTÀ代官 (accarezzandole la mano)(彼女の片手を 撫でて) Tu non mi vuoi capir.君は 私を理解しようと望んでいない【≒ 君は 私が 何を言いたいのか 分かろうとしないのだな】)。 NINETTAニネッタ [al Podestà][代官に] Lasciate.放しなさい。 (a suo padre)(彼女の父親に) Ebbene, come lo ritrovaste?それで、あなたは どのように それ【= ワイン 男性名詞】を 認めたのか【≒ ワイン(の味)はどうだったか】? (e poi sottovoce)(それから その後に 小声で) Fingete di dormire.寝ているふりをしなさい。 (ritornando verso il Podestà)(代官の方に 戻って) Oh, voi sapreteああ、あなたは 知るだろう ch'è arrivato Giannetto.ジャンネットが 到着したことを。 PODESTÀ代官 Ed ero appuntoそして 私は ちょうど venuto a salutarlo.【彼のところに】行って、彼に挨拶した【↑】ところだ。 NINETTAニネッタ Mi rincresceそれ【= che節】は 私には 残念である che sono tutti usciti.全員が 出かけていることは。 PODESTÀ代官 Eh non importa!ふむ それは 重要ではない! Ci siete voi, mi basta!あなたが いる、それは 私には 十分だ! (accennando Fernando, il quale finge di dormire, ma di tempo in tempo alza la testa per osservare che cosa succede)(フェルナンドを【目で】示して、その者は 寝ているふりをしている、しかし 彼は 時々 頭を上げる 何が 起こっているのか 監視するために) Ma colui perché non se ne va?しかし この男は なぜ行ってしまわないのか? Cacciatelo.彼を追い払いなさい。 NINETTAニネッタ Vedete, è tanto stanco見なさい、彼は あまりにも 疲れているので che già s'è addormentato.彼は もう 眠ってしまった。 PODESTÀ代官 (Can che dorme non dà molestia.)(犬は それは寝ている 煩わしさを与えない【≒ 眠ている犬は 邪魔はしない】) Ah se sapeste, o cara,ああ もしあなたが 知るなら、ああ 愛する女よ、 da quanto tempo io cercoどれほどの時間の前から 私が 探し求めているか di ritrovarvi sola...一人でいる あなたを 見つけることを【≒ 私が どれほど前から あなたが 一人でいるところを 見つけようとしていたか あなたが分かってくれたら】… NINETTAニネッタ Andate, andate; non vi fate burlare.行きなさい、行きなさい; からかわさせるな【≒ (私を)からかうな】。 PODESTÀ代官 Ah, mia Ninetta,ああ、私のニネッタよ、 perché così ritrosa?どうして そのように 嫌がるのか? Rispondi, anima mia.答えなさい、私の魂よ。 SCENA Ⅷ第8場 (Giorgio e detti)(ジョルジョと 前の場の人たち) GIORGIOジョルジョ Il cancellier Gregorio a voi m'invia.書記官グレゴーリオが あなたに 私を 遣わしている。 PODESTÀ代官 Un corno. (Uh! maledetto.)ばかな。(うう! 忌々しい!) GIORGIOジョルジョ Questo piego pressante è a voi diretto.この急を要する封書は あなたに 宛てられている。 PODESTÀ代官 Ah ah! chi l'ha recato?ああ、ああ! 誰が それを 持って来たのか? GIORGIOジョルジョ Un birro.警官だ。 FERNANDOフェルナンド (a parte e con ispavento)(傍らで そして 驚きをもって) Un birro!警官が! PODESTÀ代官 Giorgio, dammi una sedia.ジョルジョ、私に 椅子を 与えろ。 Vediamo che cos'è. Vattene pure.それが 何なのか 見よう。さあ 立ち去れ。 (Giorgio parte)(ジョルジョは 去る) SCENA Ⅸ第9場 (Il Podestà, Ninetta e Fernando)(代官、ニネッタとフェルナンド) (Il Podestà, assiso verso il mezzo della scena, si leva di tasca un portafogli, ne toglie le forbici onde tagliare il sigillo del piego; poi cerca gli occhiali, e, non trovandoli, s'impazientisce di non poter riuscire a leggere. Intanto succede in disparte fra la Ninetta e suo padre il seguente dialogo, che viene a suo tempo interrotto dal Podestà)(代官は、舞台の中央当たりに 座らせられ【≒ 椅子に腰かけて】、彼のポケットから 財布を 取り出し、そこから 鋏を 取り出す 封筒の 封印を 切るために; それから 彼は 眼鏡を 探す、そして、それら【=眼鏡 複数形】を 見付けないので、読むことに 成功することができずに 苛立つ【≒ 眼鏡が見当たらず 書類がうまく読めないので イライラする】。そうしている間に 離れて【≒ 代官から離れたところで】 ニネッタと 彼女の父の間で 次の会話が起こる、それ【= 対話】は 代官によって 然るべき時に 遮られることになる ) NINETTAニネッタ Ah! Caro padre, udiste? Io tremo!ああ! 愛する父よ、あなたは 聞いたか? 私は 震えている! Intanto ch'ei legge, deh! fuggite.彼が 読んでいる その間に、ああ! 逃げなさい。 FERNANDOフェルナンド E come, o figlia?それで どうやって、ああ 娘よ? Sono senza denari.私は金 かね を持っていない。 NINETTAニネッタ Oh cielo! Ed ioああ 天よ! そして私は non ho più nulla.もう何も持っていない。 FERNANDOフェルナンド Ebben, prendi questa posata,それでは、この食卓用具を受け取りなさい、 unico avanzo di quanto io possedea.【それは】唯一の残りだ 私が所有していたものの。 Deh tu procura di venderla dentr'oggi,ああ 君は それ【= 食卓用具】を 売ることを 努力しなさい 今日中に、 ma in segreto! Là dietro al colle io vidiだが 秘密に! あそこの 丘の後ろ【≒ 向こう】に 私は見た un gran castagno, a cui la lunga etade大きな栗の木を、それに 長い年齢が scavato ha il sen.胸【≒ 木の幹】。に穴を空けた【≒ 大きな洞 うろ のある栗の老木を見付けた】。 NINETTAニネッタ Me ne sovvengo.私は それを思い出している。 FERNANDOフェルナンド Quivi cela il denaroあそこに 金を 隠しなさい che potrai ritrarne.それを 君は受け取ることができるだろう【≒ 君が 質屋で 食器用具を 売って 得られるであろう(金を 受け取ることが できるだろう)】。 Nel folto della selva森の一番茂ったところで io mi terrò nascoso; e come il cielo私は 隠れたままでいる; そして 空が imbruni, fa che in quel castagno io trovi暗くなるであろう【↑】とすぐに、しなさい あの栗の木の中で 私が見つけるように almen questo sussidio.できれば この援助を【≒ 日が暮れたら すぐに、できれば(食器用具を売って得た)支援のお金を 私が あの栗の木の 洞の中に 見付けられるようにしておくれ】。 NINETTAニネッタ (Ah! Se tornasse quel merciaiuolo che pur dianzi...)(ああ! あの小間物商人が 戻って来るならば その者は まさに ほんの少し前…) O padre, farò di tutto. Andate...ああ 父よ、私は すべてにおいて するだろう【≒ できる限りのことをするつもりだ】。行きなさい… FERNANDOフェルナンド Figlia mia, abbracciami!私の娘よ、私を 抱擁しなさい! PODESTÀ代官 (alzandosi)(立ち上がって) Ninetta?ニネッタは? NINETTAニネッタ (Giusto cielo!)(公正な天よ!) PODESTÀ代官 (a Fernando che faceva per uscire)(フェルナンドに その者は 出ようとしていた) Galantuomo, restate.紳士【≒ そこの方】よ、留まりなさい。 FERNANDOフェルナンド (Io tremo!)(私は 震える) NINETTAニネッタ (Io gelo!)(私は 凍る) NINETTAニネッタ (piano a suo padre il quale torna a sedersi, e finge ancora di dormire)(彼女の父に 小声で その者は 座りに戻っている、そして 彼は また 寝るふりをする) Traetevi in disparte.脇に 移動しなさい。 PODESTÀ代官 (a parte alla Ninetta)(ニネッタの傍らで) Son questi, almen suppongo, i contrassegniそれらは これらだ、 d'un disertor.Fernando par che dica.脱走兵の。フェルナンドと言っているであろうかのように 思われる【≒ フェルナンドと書いてあるようだ】。 NINETTAニネッタ (volgendo un guardo a suo padre)(彼女の父に 視線を向けて) (Fernando!...)(フェルナンド!…) FERNANDOフェルナンド (O reo destino!)(ああ 邪な 運命よ!) PODESTÀ代官 Ma il resto, senza occhiali,しかし 残りは、眼鏡なしでは、 è impossibile a leggere.読むのは不可能だ。 Mia cara, fate il piacer, leggete voi.私の愛する女【≒ かわいい娘】よ、親切をしなさい【≒ 頼み事を聞いてくれ】、あなたが読みなさい。 NINETTAニネッタ (prendendo il foglio, trascorrendolo, e tremando)(書類を 手に取って、一読して、そして震えて) (Gran Dio! o m'uccidi,(偉大な神よ! あるいは 私を 殺しなさい、 o mi salva il padre mio!)あるいは 私の父を 守りなさい!) |
Tu non mi vuoi capir. それまでニネッタを 敬称 voi で呼んでいた代官が、ここから親称 tu で呼ぶようになる。 Ebbene, come lo ritrovaste? この文は直訳だと それで、あなたはどのように彼を再び見つけたのか? となる。この lo 彼を を 代官を で採っても意味がよく分からない。 さて原作 La pie voleuse においてこの行に相当するのはこうである; Eh bien , bon père , l'avez-vous trouvé bon? ここでの pere は おじさん という程度。そして2つめの bon は。前からの流れから 美味しい で、また l' < le は男性名詞の vin を指していると考えられる。つまり ところで、おじさん、お酒は美味しかった? といった意味。 これを踏まえると、オペラの台本でも、 それで、お酒はどうだった? と尋ねている(ふりをしている)と理解すべきだろう。 Ci siete voi, mi basta! 代官は再びニネッタを敬称 voi で呼ぶ。 |
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N. 8 Scena e Terzetto Ninetta Podestà Fernando |
Moderato 4/4 (C major) |
NINETTAニネッタ M'affretto di mandarvi i contrassegni私は 急いで あなたに届ける 目印を d'un mio soldato... condannato a morte,ある私の兵士の… 【その者は】死の刑を宣告された、 e fuggito pur or dalle ritorte...だが それにもかかわらず 現在 縄【≒ 拘束 ≒ 捕らわれの身】から 逃亡した… Ei chiamasi...彼は と呼ばれる【≒ 彼の名前は】… PODESTÀ代官 Su via.さあ【先を読み上げろ】。 NINETTAニネッタ Fer... Fer... Fernando...フェル… フェル… フェルナンド… (Suggeritemi, o Dei,(私に示唆しなさい、ああ 神々よ、 qualche pietoso inganno!)なんらかの 哀れみ深い虚言【≒ 父を 救うための 方便】を!) PODESTÀ代官 (Oh, come il duolo(ああ、何という苦悩が la rende ancor più bella!)彼女を さらにより美しくさせていることか!) NINETTAニネッタ Ei chiamasi Fernando Vi... Vinella...彼は 呼ばれている フェルナンド・ヴィ… ヴィネッラと… (guardando a suo padre, come per indicargli la bugia ch'ella proferisce)(彼女の父を見て、彼に 嘘を 指し示すためのように それを 彼女が言っている【≒ 彼女の言っている嘘を 父に 伝えようとしているかのように】) PODESTÀ代官 Continuate.続けろ。 NINETTAニネッタ (Oh Dio! se leggo ancora,(ああ 神よ! もし私が さらに読むなら、 tutto è perduto.すべてが 失われる【≒ 何もかも おしまいだ】。 Età: quarantott'anni;年齢: 48歳; statura: cinque piedi...)身長: 5ピエーディ【≒ 148cm】…) PODESTÀ代官 Ebben, che avete?それで、あなたは 何を持っているのか【≒ どうかしたのか】? Non sapete più leggere?あなたは もう読むことができないのか? FERNANDOフェルナンド (Infelice!)(不幸な者だ!) NINETTAニネッタ È una mano diabolica!それは 悪魔的な手【≒ 酷い筆跡 ≒ 悪筆】なのだ! PODESTÀ代官 (in atto di toglierle il foglio, e cercando nelle sue tasche)(書類を 取り戻す そぶりで、そして 彼のポケットの中を 捜して) Ah, se avessi gli occhiali!ああ、私が 眼鏡を 持っていれば! NINETTAニネッタ (ritenendo il foglio)(書類を 【渡さないように】 引き留めて) Permettete. (Il ciel m'inspira.)許しなさい【≒ 失礼だが(書類を 私に)】。(天が 私に 霊感を与えている。) Età: venticinqu'anni; statura:年齢:25歳; 身長: cinque piedi, undici pollici.5ピエーディ【と】、11ポーリチ【≒ 176cm】。 PODESTÀ代官 Peccato!.. Andate avanti.残念だ!… 先に【読み】進めろ。 NINETTAニネッタ Capei biondi, occhi neri,金髪、黒い瞳 ampia fronte, e tondo il viso.広い額、そして丸顔。 PODESTÀ代官 Cospetto! egli debb'essere un Narciso!驚いた! 彼は ナルチーゾ【= ナルキッソス】に 違いない! E tondo il viso!.. E poi?そして 丸顔!… そして それから? NINETTAニネッタ (guardando di mano in mano a suo padre per nominar de' colori diversi da quelli di esso)(手から手へと【≒ 次々に ≒ 何度も】 彼女の父を 見て 口に出すために 彼【= 父】のそれら【= 色々】)と違う色々を 口に出すために【≒ 父の身に着けている色と 違う色を 言うために、書類と父を 交互に見て】) Divisa gialla con mostre rosse;黄色い 制服 赤い 襟章; stivaletti bianchi.白い 短ブーツ。 Se mai costui passasseもし この男が 通過するならば sul vostro territorio, a dirittura君たちの管区を、直ちに fatelo imprigionar...彼を 投獄させよ… PODESTÀ代官 (facendosi rendere il foglio dalla Ninetta, e riponendolo in tasca)(ニネッタに 書類を 返させる、そして それを ポケットに しまい込んで) Sarà mia cura.それが 私の関心ごとになるだろう【≒ 書類に記載されている特徴のある男を捜すことが 私の役目になるのだろう】。 Vediam se mai per caso...見てみよう もし 万が一… Olà, buon uomo?おい、そこの方よ? NINETTAニネッタ (Ohimè!)(ああ!) FERNANDOフェルナンド (fingendo di risvegliarsi)(再び目覚める ふりをして) Signor.貴君よ。 PODESTÀ代官 Alzatevi: cavatevi il cappello.立ちなさい: 帽子を取りなさい。 NINETTAニネッタ (Io muoio!)(私は 死んでいる【≒ 死にそうだ】) PODESTÀ代官 (ridendo)(笑って) Ah ah!ハハ! Venticinqu'anni;25歳; (alla Ninetta)(ニネッタに) è vero? capei biondi,それは本当か【≒ そう書いてあったのかね】? 金髪、 occhi neri, ampia fronte, e tondo il viso.黒い瞳、広い額、そして丸顔。 No, no, un sì vago Adon qui non ravviso.いいや、いいや、あのように優雅なアドーネ【≒ アドニス】を ここに 私は 認めない【≒ この顔に 優美な若者は 見て取れない】。 |
調性は便宜的なもの。 Ebben, che avete? che + avere (+主語)? どうしたのか?,何かあったのか? Permettete. (Il ciel m'inspira.) inspira < inspirare 息を吸い込む, 吹き込む この場合はispirare 霊感を与えるの意味。 |
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Maestoso 3/4 F major |
NINETTAニネッタ (Respiro.)(私は 息をついている【≒ ほっとした】。) PODESTÀ代官 (prendendo per mano la Ninetta)手によって ニネッタを 掴んで【≒ ニネッタの手を 取って】 Mia cara!私の愛する女よ! FERNANDOフェルナンド (alla Ninetta in atto di voler dirle qualche cosa)(ニネッタに 彼女に 何かを 言いたい素振りで) Signora...貴女よ… PODESTÀ代官 (a Fernando con severità)(フェルナンドに 厳しさをもって) Partite!立ち去りなさい! Udite?聞いているか? Uscite di qua!ここから去りなさい! (Fernando esce, ma sta in agguato dietro ad un pilastro della porta; la Ninetta lo accompagna collo sguardo)(フェルナンドは 去る、しかし 門の一つの柱の後ろに 待ち伏せて【≒ 隠れて】いる) FERNANDOフェルナンド (Oh Nume benefico(ああ 恵深い神よ che il giusto difendi,その者は 正義を守るであろう、 propizio ti rendi;情け深くなりなさい; soccorso, pietà!)救援を、哀れみを!) PODESTÀ代官 (L'istante è propizio!瞬間は恵まれた【≒ 好機が 訪れた】 Amore, discendi;愛の神よ、降りて来なさい! se il core le accendi,もし 君【= 愛の神】が 彼女の心に 点火するならば、 che gioia sarà!)なんという歓喜だろうか!) NINETTAニネッタ (Oh Nume benefico(ああ 恵深い神よ che il giusto difendi,その者は 正義を守るであろう、 propizio ti rendi;情け深くなりなさい; soccorso, pietà!)救援を、哀れみを! |
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Allegro 4/4 F major |
PODESTÀ代官 (dopo aver veduto uscire Fernando)(フェルナンドが去るのを見た後に) Siamo soli: Amor seconda私たちだけだ: 愛の神が 手助けしている le mie fiamme, i voti miei:私の【≒ 恋の】炎を、私の願いを: ah! se barbara non sei,ああ! もし君が 残酷でないならば、 fammi a parte del tuo cor.私を 君の心の一部にしなさい【≒ 私を 君の心の中に 受け入れてくれ】 NINETTAニネッタ Benchè sola, vi potrei【私】一人では あるものの、私は あなたを far gelare di spavento:恐怖で 凍らせる【↑】ことが できるのだが。 traditor! per voi non sento裏切者! あなたに対して 私は感じない che disprezzo e rabbia e orror.軽蔑と 怒りと 恐怖の ほかは【≒ あなたには軽蔑と怒りと恐怖しか感じない】。 (Fernando è rientrato nel cortile)(フェルナンドは 中庭の中に 再び入った) Ninetta, Fernando e Podestàニネッタ、フェルナンドと代官 (Già mi bolle nelle vene(既に 私の血管の中で 沸騰している il furore e la vendetta!激情と復讐が! Freme il nembo; e la saetta黒雲が唸る; そして 稲妻は già comincia a balenar.)既に ぴかっと光り始めている。) NINETTAニネッタ (Ma frenarsi qui conviene(しかし ここでは 自制することが 必要だ (accennando il padre)(父を 示して) egli sol mi fa tremar.)ただ彼【= フェルナンド】だけが 私を 震えさせる【≒ ただ父のためだけに 私は震えている】。) PODESTÀ代官 (Ma frenarsi qui conviene:しかし ここでは 自制することが 必要だ: colle buone vo' tentar.)私は 優しさをもって 誘惑することを 望んでいる【≒ 甘い言葉を 用いて 彼女を 口説きたい】。) FERNANDOフェルナンド (Ma frenarsi qui convieneしかし ここでは 自制することが 必要だ (accennando la figlia)(娘を 示して) ella sol mi fa tremar.)ただ彼女【= ニネッタ】だけが 私を 震えさせている【≒ ただ娘のためだけに 私は震えている】。 PODESTÀ代官 Via, deponi quel rigore;さあ、その手厳しさを 捨てなさい; vieni meco, e lascia far.私と一緒に 来なさい、そして 【私の】するがままに させなさい【≒ 私に身を委ねなさい】 FERNANDOフェルナンド (avanzandosi con impeto)(激情をもって 近づいて) Vituperio! Disonore!恥ずべき行為だ! 面汚しめ! Abbastanza ho tollerato.私は かなり我慢した。 Uom maturo, e magistrato,成熟した男【≒ 立派な立場の男】よ、そして行政官よ、 vi dovreste vergognar.あなたは あなたを 恥じ入るがいい。 PODESTÀ代官 (contro a Fernando)(フェルナンドに 面と向かって) Ah per bacco!..ああ 何事だ!… FERNANDOフェルナンド (al Podestà)(代官に) Rispettate il pudore e l'innocenza.慎みを 尊重しろ そして 純潔を【尊重しろ】。 NINETTAニネッタ (a parte a Fernando)(フェルナンドの傍らで) Caro padre, oh Dio! Prudenza.愛する父よ、ああ 神よ! 分別を【≒ 落ち着いて】。 PODESTÀ代官 (a Fernando)(フェルナンドに) Temerario!厚かましい男だ! FERNANDOフェルナンド (con impeto)(激情をもって) Non gridate.大声を 出すな。 NINETTAニネッタ (a parte a Fernando)(フェルナンドの傍らで) Vi volete rovinar!あなたは 身を亡ぼすことを 望んでいる【≒ 破滅する気なのか】! PODESTÀ代官 (alla Ninetta)(ニネッタに) Vieni meco...私と 一緒に 来なさい… NINETTAニネッタ (respingendo)(撥ね付けて) Sciagurato!悪人め! FERNANDOフェルナンド (al Podestà)(代官に) Rispettate l'innocenza.純潔を 尊重しろ PODESTÀ代官 (a Fernando)(フェルナンドに) Cos'è questa impertinenza?この 無礼な態度は 何だ? NINETTAニネッタ (a parte a Fernando)(フェルナンドの傍らで) Ah partite!ああ 去りなさい! FERNANDOフェルナンド (a parte alla Ninetta, e poi si ritira lentamente)(ニネッタの傍らで、そして それから ゆっくりと 退場する) Sì, t'intendo!そうだ、私は 君【の言うこと】を 理解している。 PODESTÀ代官 Brutto vecchio, se più tardi...不快な老人よ、もし君が さらに 遅くなるなら【≒ まだぐずぐずしているようなら 】… (alla Ninetta in atto di prenderla per mano)(ニネッタに 彼女を 手によって 掴む 素振りで【≒ 彼女の手を取ろうとして】) E tu senti.そして 君は 聞きなさい。 NINETTAニネッタ (respingendolo)(撥ね付けて) Mostro orrendo!身の毛もよだつ 怪物め! FERNANDOフェルナンド (Infelice! Tu mi guardi,(不幸な者だ! 君は 私を 見詰めている【のに 】、 e ti debbo, oh Dio! lasciar.)だが 私は、ああ 神よ! 君と 別れなければならない。) NINETTAニネッタ (Infelice! Tu mi guardi,不幸な者だ! 君は 私を 見詰めている【のに 】、 e ti debbo, oh Dio! lasciar.)だが 私は、ああ 神よ! 君と 別れなければならない。) PODESTÀ代官 (Trema, ingrata! Presto o tardi(震えろ、恩知らずな【≒ つれない】女め! すぐに あるいは 遅く【= 遅かれ早かれ】 te la voglio far pagar.)私は 君に それを 払わせることを 望んでいる【≒ 君に そのすげなさの 代償を 払わせてやる】。) |
Uom maturo, e magistrato, ここでの maturo は年齢においてのみならず、社会的地位においても『熟した』状態であることを示している。 |
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Stretta [del Terzetto] Allegro 2/2 F major |
NINETTA, Podestà E FERNANDOニネッタ、代官 と フェルナンド (Non so quel che farei;私は知らない 私がするであろうことを【≒ 私は どうすればよいのか 分からない】; smanio, deliro e fremo.私は 動揺し、錯乱し【≒ 取り乱し】 そして 身震いしている。 A questo passo estremoこの極度の歩みに mi sento il cor scoppiar.)私は感じている 私の心臓が 破裂するのを。) PODESTÀ代官 Presto o tardiすぐに あるいは 遅く【= 遅かれ早かれ】 te la voglio far pagar.私は 君に それを 払わせることを 望んでいる【≒ 君に そのすげなさの 代償を 払わせてやる】。) NINETTAニネッタ (Infelice! tu mi guardi,(不幸な者だ! 君は 私を 見詰めている【のに 】、 e ti debbo, oh Dio! lasciar.)だが 私は、ああ 神よ! 君と 別れなければならない。) (Intanto che esce il Podestà, e che la Ninetta protende le braccia a suo padre, il quale si vede salir la collina, la gazza scende sulla tavola, rapisce un cucchiaio e se ne vola via. In questo momento cala la tela, e si cambia scena come segue.)(代官が去る間に、そして ニネッタが 彼女の父に 両腕を差し伸べる【間に】、その者【= フェルナンド】が 丘を 登っているのが 見える、カササギが 食卓の上に 下り、スプーンを 強奪し【≒ 盗み】 そして 飛び去って行く。この瞬間に幕が下り、そして 後に続くような場面に 変わる) |
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[Recitativo] Dopo il Terzetto |
SCENA Ⅹ第10場 (Stanza terrena in casa di Fabrizio: nel fondo una porta con finestre che guardano sulla strada)ファブリーツィオの家の 地上階【≒ 1階】: 奥に 窓々のある門 それ【= 門】は 面している 道に) (Pippo; quindi Ninetta che viene dal cortile col canestro delle posate; e in fine Isacco)(ピッポ; それから ニネッタ その者は 食卓用具の手籠を 持って 中庭から やって来る; そして 最後に イザッコ) PIPPOピッポ O pancia mia, tu deiああ 私のお腹よ、お前は quest'oggi esser contenta;この日【ばかり】は 満足【↑】せざるを得ない; e cibi e vino io te ne diediそして 食べ物と ワインを 私は お前に a così larga mano che un ministroそれほどに 幅広い手で【≒ 気前よく】 【↑】与えたので 大臣 sembravo, anzi un sultano.のように 私は 思われた、それどころか スルタンのように 【思われた】。 [Isacco (dalla strada) ripete la Cavatina "Stringhe e ferri da calzette" indi segue:][イザッコ(道路から)が カヴァティーナ“紐と 短い靴下用の鉄【≒ 編み棒】”を繰り返し それから【次の場面が】続く] PIPPOピッポ Vattene alla malora.破滅に行ってしまえ【≒ 地獄に落ちろ ≒ くたばってしまえ】。 NINETTAニネッタ (entrando in scena)(舞台に 入って) Il merciaiuolo!小間物商人だ! come opportuno ei viene!何と ちょうどよい時に 彼が 来ることか! (aprendo la porta che mette alla strada)(門を 開けて それは道路に通じている) Isacco, Isacco?イザッコ、イザッコは? ISACCOイザッコ Son qua, mia cara signorina.私は ここにいる、私の愛する娘よ。 NINETTAニネッタ (con imbarazzo)(困惑をもって) Pippo, mi par che voglia piovere;ピッポよ、私には思われる 雨が降りそうであると; e però sarà bene di ritirareそして それゆえ 引っ込めるのが良いだろう in casa la gabbia della gazza.家の中に カササギの鳥籠を。 (Pippo esce)(ピッポは 【舞台を】 出る ) NINETTAニネッタ (ad Isacco)(イザッコに) Orsù,さあ、 (togliendosi da una tasca del grembiale la posata datale da suo padre)(エプロンのポケットから 彼女の父によって 彼女に与えられた 食卓用具を 取り出して) vorrei vender questa posata.私は この食卓用具を 売りたい。 ISACCOイザッコ Ed io la compro.それでは 私はそれを 買う。 NINETTAニネッタ Quanto mi date?あなたは いくら 私に与えるのか? ISACCOイザッコ È assai leggera; pureそれは とても軽い; けれども vi do due scudi.私は あなたに 2スクーディ 与える。 NINETTAニネッタ Oh indegnità! nemmenoああ 卑劣な 行為だ! un terzo del valore.価値の 三分の一【↑】すらない。 ISACCOイザッコ Via, non andate in collera.そら、激怒に行くな【≒ 腹を立てるな】。 Vi do un zecchino, perché siete voi.私は あなたに 1ゼッキーノを与える、なぜなら あなたは あなたであるから。 NINETTAニネッタ Non basta.それ【= 1ゼッキーノ】は 十分ではない。 ISACCOイザッコ Ebbene, voglio fare uno sforzo.それでは、私は 努力を したい。 Questi son tre scudi:これらは 3スクーディだ: siete alfine contenta?あなたは ようやく 満足したか? NINETTAニネッタ Eh sì, per forza!うーん そうだ、力によって【≒ しかたなく】! ISACCOイザッコ Uno... due... tre: tenete; ma ci perdo.1… 2… 3: 取っておきなさい; だが そのことから 私は損をしている。 (Ne vale più di quattro.)(それについて それは4【スクーディ】よりもっと多い価値がある。) NINETTAニネッタ Andate, andate;行きなさい、行きなさい; e non dite a nessun...そして 誰にも話すでない… ISACCOイザッコ Non dubitate.疑うでない。 (parte)(去る) SCENA ⅩⅠ第11場 (Ninetta, e Pippo recante la gabbia della gazza)(ニネッタ、そして ピッポ カササギの鳥籠を持って来て) NINETTAニネッタ (mettendosi il denaro in una tasca del grembiale)(彼女の前掛けのポケットの中に 金 かねを入れて) Oh povero mio padre!ああ かわいそうな 私の父よ! PIPPOピッポ Ecco la gabbia;ここに 鳥籠が; ma quella scellerataしかし あの d'una gazza, chi sa dove n'è andata?カササギの【↑】悪党【≒ いたずら好きなカササギ】め、誰が知っているのか どこに彼女【= カササギ 女性名詞】が 行ってしまったのか? (depone la gabbia al suo luogo solito)(鳥籠を いつもの場所に 置く) LA GAZZAカササギ (sulla finestra)(窓の上で) Pippo?ピッポ? NINETTAニネッタ Vedila là che ti canzona.あそこにいる 彼女【= カササギ】を 見なさい; それは 君を からかっている。 PIPPOピッポ Mi vuol fare impazzir quella stregona.あの魔法使いの女は 私を狂わせることを 望んでいる【≒ あのカササギは 僕の頭をおかしくするつもりだ】。 (la gazza dopo qualche istante vola nella sua gabbia)(カササギは いくらかの瞬間の後【≒ しばらくしてから】 彼女【= カササギ】の鳥籠の中に 飛んで行く) PIPPOピッポ Ma perché mai, se la domanda è lecita,しかし いったい なぜ、もし質問が許されるなら【≒ 訊いてもよいのであれば】、 faceste entrar quel sordido avaraccio?あなたは あの強欲な 守銭奴を 【門から 敷地の中へと】 入れさせたのか? NINETTAニネッタ Avea bisogno di denaro;私は いくらか金 かねが 必要だった; e quindi gli ho venduto...それで だから 私は 彼に 売った… PIPPOピッポ Ah! capisco: qualche galanteria...ああ! 私は 理解している: 何か 装飾品を… NINETTAニネッタ Sì, che per oraそうだ、それは 差し当たり non m'era necessaria.私には 必要ではなかった。 PIPPOピッポ Oh che sproposito!ああ 何という愚行だ【≒ 早まったことを】! Perché non dirlo a me? Cara signora,どうして そのことを 私に 言わなかったのか? 愛する娘よ、 voi dovete disporre in tutto e sempreあなたは 自由に 使いなさい【≒ ぜひ 自由に 使っておくれ】 全部 そしていつでも del mio salvadanaio.私の貯金箱を。 NINETTAニネッタ Ti ringrazio.私は 君に 感謝する。 Ma lasciami; tu saiだが 私を 放っておきなさい; 君は 知っている che ho tante cose a fare...私は するための たくさんことを 持っていることを【≒ 私には しなければならないことが たくさんあることを】 PIPPOピッポ Ed io, per Bacco,そして 私は、おやまあ、 ne ho da fare altrettante,そのことについて 同じくらい すべきことを 持っている【≒ 私も 同じくらい しなければならないことが たくさんある】。 e son già stracco.そして 私は 既に 疲れ切っている。 (via)(去る) SCENA ⅩⅡ第12場 (Ninetta; subito Giannetto, e poscia Fabrizio, ambedue dalla porta che mette alla strada)(ニネッタ; すぐに ジャンネット、そして 次いで ファブリーツィオ、両者とも 門から それは 道路に 面している) NINETTAニネッタ Andiam tosto a deporre entro il castagnoすぐに 行こう 栗の木の中に 置きに questo denaro. Oh se potessi ancoraこの金 かねを。ああ もし 私が また rivederti, o mio padre!...君に 会う【↑】ことができるなら、ああ 私の父よ!… (incontrandosi in Giannetto [e Lucia], mentre fa per uscire)(ジャンネット[とルチーア]に出会って、出ようとしている時に) Ah!ああ! SCENA ⅩⅢ第13場 (Lucia che riconduce la Ninetta; il Podestà, il cancellier Gregorio, e detti; infine Pippo)(ルチーア その者は ニネッタを 連れ戻す; 代官、書記官グレゴーリオ、そして 前の場の人たち; 最後にピッポ) LUCIAルチーア Brutta fraschetta,手に負えない 移り気な娘め【≒ 勝手気ままな娘め】、 in casa, in casa.家の中に、家の中に。 Se ti colgo ancora...もし 私が 再び 君を 摘み取るならば【≒ 今度 君を ひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)】… NINETTAニネッタ (Pazienza! È d'uopo rinunziar per ora.)(忍耐だ! 今のところは 断念する必要がある【≒ 今は 諦めなくてはならない】。) LUCIAルチーア (presentando suo figlio al Podestà e al Cancelliere)(彼女の息子を 代官に 紹介して; そして 書記官に 【紹介して】) Eccovi, o miei signori, quel Giannettoさて あなた方、ああ 私の貴君たちよ、あのジャンネットだ【≒ ここにいるのがジャンネットだ】 che si fe' tanto onor.その者は 自ら たくさんの名誉を 成した【≒ 数々の名誉を 得た】。 (la Lucia si fa recar dalla Ninetta il paniere delle posate e si mette a contarle)(ルチーアは ニネッタに 食卓用具の籠を 持って来させ そして それらを 数えるため 席につく) PODESTÀ代官 (a Giannetto)(ジャンネットに) Me ne rallegro. Io lessi nei giornali私は そのことについて 祝う。私は 新聞で読んだ più volte il vostro nome; e ben rammento何度も あなたの名前を; そして 私は よく覚えている e la bandiera che di mano togliesteそして 旗を それを あなたは取り戻した all'inimico, e i due cavalli uccisi敵の【↑】手から、そして 殺された2頭の馬 sotto di voi. Sì giovine, e sì prode...あなたの下で【≒ あなたが 乗っていた 馬が 2頭 殺されたと】。これほど若く、そして これほど勇敢な【≒ この若さにして その勇敢さは】… GIANNETTOジャンネット Degno ancor non son di tanta lode.私は それほど多くの称賛には まだ 値しない。 FABRIZIOファブリーツィオ (al Podestà ed al Cancelliere)(代官に そして 書記官に) Bravo!素晴らしい! Che ve ne pare?それについて あなた方には どう思われるか【≒ あなた方は それをどう思うか】? LUCIAルチーア (contando le posate)(食卓用具を数えて) E nove, e dieci, ed undici.そして 9本、そして 10本、そして 11本。 (alla Ninetta)(ニネッタに) Stordita! ecco qui manca粗忽者の女め! そら ここに 欠けている ora un cucchiaio.今や 1本のスプーンが。 NINETTAニネッタ Come?何と? LUCIAルチーア Sì, un cucchiaio.そうだ、スプーンが1本。 Conta pure tu stessa.どうぞ 君自身が 数えなさい。 (la Ninetta si pone a contare le posate)(ニネッタは 食卓用具を 数えるために 身を置く【≒ 座る】) LUCIAルチーア (rivolgendosi agli altri)(他の人たちに 向き直って) Eh! che ne dite?やれやれ! これについて あなたたちは 何を 言うのか【≒ これを あなたたちは どう思うかね】? Oggi manca un cucchiaio; l'altro giorno今日は 1本のスプーンが 欠けている; 別の日には si perse una forchetta. Ah questo è troppo!1本のフォークが 無くなった。ああ これは あまりに多い! PODESTÀ代官 È giusto il vostro sdegno:あなたの怒りは 正当だ: qui ci sono de' ladri.ここに 泥棒がいる。 Esaminiamo, processiamo.尋問しよう、起訴しよう。 Gregorio...グレゴーリオよ… FABRIZIOファブリーツィオ Eh, ch'io non voglio何だって、私は望んでいない processi in casa mia. Ninetta?私の家の中で 裁判【≒ 取り調べ】を。ニネッタを? NINETTAニネッタ È vero; uno adesso ne manca:それは本当だ; 今 それの 一つが 欠けている e pur, credete, poc'anziだが けれども、信じなさい、少し前には (piange)(泣く) c'eran tutti.全部あった。 FABRIZIOファブリーツィオ Eh via, non piangere!さあさあ、泣くでない! Lo troveremo.私たちは それ【≒ スプーン】を 見付けるだろう。 GIANNETTOジャンネット (chiamando verso le quinte)(舞台袖の方を 呼んで) Pippo?..ピッポは?… (Pippo accorre subito)(ピッポは 駆け付ける すぐに) corri a veder se mai急いで 見に行きなさい もし ひょっとして là sotto al pergolatoあそこに 蔓棚の下に sia caduto un cucchiaio.スプーンが 落ちているかどうか。 (Pippo esce)(ピッポは 出て行く) LUCIAルチーア Io ci scommetto私は それについて 断言する che non si troverà.それは 見つからないだろう と。 PODESTÀ代官 Non dubitate; lo troveremo noi.疑うでない; 私たちが それ【≒ スプーン】を 見付けるだろう。 (Voglio che almeno tremi l'indegna.)(私は 望んでいる 少なくとも 恥ずべき女が 震えるであろうことを【≒ とにかくも つれない娘を 震え上がらせてやろう】。) (alla Lucia)(ルチーアに) Carta e calamaio.紙と インク壷を。 LUCIAルチーア Vi servo sul momento.私は あなたに仕える すぐさま【≒ すぐに用意する】。 FABRIZIOファブリーツィオ (al Podestà)(代官に) Vi ripeto ch'io non voglio processi.私は あなたに 繰り返す 私は 裁判【≒ 取り調べ】を 望んでいないことを。 LUCIAルチーア Eh taci, sciocco!やれやれ、黙りなさい、馬鹿な男め! L'innocente è sicuro; e se v'è il reo,潔白な者は 安全だ【≒ 無実なら 恐れることはない】; もし 犯行者が いるのならば、 giova scoprirlo e castigarlo.彼を 見付けるのが 適切である そして 彼を 罰することが【適切である】。 GIANNETTOジャンネット Oh cielo!ああ 天よ! Per sì piccola cosa...このような 小さな【≒ 些細な】ことで… PODESTÀ代官 E pur la legge in questoだが そうは言っても そのことにおいて 法律は è assai severa, ed i ladri domesticiとても厳しい、そして 家庭の泥棒に condanna alla morte.それ【= 法律】は 死刑の宣告を 下す。 Tutti全員 Alla morte!死刑に! SCENA ⅠⅣ第14場 (Pippo e detti)(ピッポと 前の場の人たち) PIPPOピッポ E sopra e sottoそして上に そして下に【≒ 上から下まで ≒ あらゆるところを】 ho cercato e frugato,私は 捜した そして 捜しまわった、 ma nulla ho ritrovato.しかし 私は 何も 見付けなかった。 NINETTAニネッタ (Oh me infelice!)(ああ 不幸な私!) PODESTÀ代官 Dunque c'è furto.それでは 窃盗がある。 PIPPOピッポ Io non so niente.私は 何も 知らない。 NINETTAニネッタ Anch'io sono innocente.私も また 潔白だ。 PODESTÀ代官 Or si vedrà.今 見るだろう【≒ 今に 分かる】。 (il Podestà e il Cancelliere siedono ad un tavolino)(代官と 書記官は 食卓に 着く) FABRIZIOファブリーツィオ Ma quale esser potrebbe maiだが いったい どの人が la persona sospetta?疑わしい人物【↑】で あり得るかもしれないのか? GIANNETTOジャンネット Un ladro in casa! e chi sarà?泥棒が 家の中に! では それは 誰だろうか? LA GAZZAカササギ Ninetta!ニネッタ! NINETTAニネッタ (volgendosi alla gazza)(カササギに身を向けて) Crudel! tu pur m'accusi?酷 むご い【鳥め】! お前さえも 私を 告発するのか? GIANNETTOジャンネット (alla Ninetta)(ニネッタに) Oh Dio, tu piangi!ああ 神よ、君は泣いている! NINETTAニネッタ (additando la gazza)(カササギを 指し示して) Ma non l'avete udita?けれど あなたは 彼女【= カササギ】【の言うこと】を聞かなかったか? GIANNETTOジャンネット Ah non temere!ああ 心配するな! Nessun vi bada.誰も それについて 気にしていない。 (la gazza vola via)(カササギは 飛び去る) FABRIZIOファブリーツィオ (al Podestà)(代官に) Insomma, vi scongiuro,もういい、私は あなたに 懇願する、 lasciate, desistete.やめなさい、中止しなさい。 PODESTÀ代官 Non posso.私は できない。 GIANNETTOジャンネット (con risentimento al Podestà)(ムッとして 代官に) Ma...けれども… PODESTÀ代官 Silenzio!静粛に! (al cancelliere)(書記官に) E voi scrivete.そして あなたは 書きなさい。 |
Eh sì, per forza! per forza には 無理やり,しかたなく という意味と 当然,もちろん という逆の意味があるのだが、この場合は明らかに前者だろう。eh にも様々な意味があるが、この場合は不満で言葉に詰まっている様子を表している。 Se ti colgo ancora... se qlcu. colgo もし ―を ひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)。 che si fe' tanto onor. farsi ql.co. ―を手に入れる |
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N. 9 Finale Ⅰ Ninetta Lucia Pippo Giannetto Isacco Fabrizio Podestà Coro |
Allegro 4/4 C major |
PODESTÀ代官 In casa di Messere家において Fabrizio Vingraditoファブリーツィオ・ヴィングラディート【↑】氏の è stato oggi rapito...今日 強奪された… GIANNETTOジャンネット Rapito, no; smarrito.強奪された、ではない; 紛失した だ。 PODESTÀ代官 Zitto! vuol dir lo stesso.黙りなさい! それは 同じことを 言おうとしている【≒ どちらでも 同じ意味だ】。 Rapito.強奪された。 (al Cancelliere)(書記官に) Avete messo?あなたは 置いた【≒ 書き加えた】か? Un cucchiaio d'argento銀のスプーンが per uso di mangiar.食べるために 用いられる。 NINETTAニネッタ (additando il Podestà)(代官を 指し示して) (Che bestia! Che giumento!(何という獣【≒ 非情な男】だ! 何という驢馬 ろば【≒ 頑固者】だ!) mi sento a rosicar.)私は 悶々としているのを 感じている。) GIANNETTOジャンネット (additando il Podestà)(代官を指し示して) (Che bestia! Che giumento!(何という獣【≒ 非情な男】だ! 何という驢馬 ろば【≒ 頑固者】だ!) mi sento a rosicar.)私は 悶々としているのを 感じている。) LUCIAルチーア (Pentita già mi sento;)(私は 既に 後悔しているのを感じている; (additando il Podestà)(代官を指し示して) (colui mi fa tremar.)(この男は 私を震えさせている。) PIPPOピッポ (additando il Podestà)(代官を指し示して) (Che testa! che talento!(何という頭だ! 何という才能だ! Mi fa trasecolar.)彼【= 代官】は 私を 唖然とさせている。) FABRIZIOファブリーツィオ (additando il Podestà)(代官を指し示して) (Che bestia! Che giumento!(何という獣【≒ 非情な男】だ! 何という驢馬 ろば【≒ 頑固者】だ!) mi sento a rosicar.)私は 悶々としているのを 感じている。) PODESTÀ代官 (La rabbia ancor mi sento;(私は まだ 怒りを 感じている; mi voglio vendicar.)私は 仕返しをしたい。) PODESTÀ代官 (alla Ninetta)(ニネッタに) Di tuo padre qual è il nome?君の父の名前は 何か? Su.さあ。 NINETTAニネッタ Ferdinando Villabella.フェルディナンド・ヴィッラベッラ だ。 PODESTÀ代官 Villabella! Come, come?ヴィッラベッラだと! 何だと、何だと? Ora intendo, furfantella:今や 私は理解している、悪党娘め: quel briccone era tuo padre.あの小悪党【≒ 無礼な男】が 君の父だった。 Ma paventa! le mie squadreだが 恐れろ! 私の分隊が lo sapranno accalappiar.彼を 罠にかける【≒ 捕獲する ≒ 逮捕する】ことができるだろう。 LUCIA, PIPPO, GIANNETTO E FABRIZIOルチーア,ピッポ,ジャンネット と ファブリーツィオ Quale enigma!何と不可解なことだ! PODESTÀ代官 Eh! nulla, nulla.ええ! 何でもない、何でもない。 Questa semplice fanciullaこの純朴な娘が ne vuol tutti corbellar.私たち全員を からかうつもりだ。 NINETTAニネッタ Più non resisto, oh Dio!さらに多く 私は 耐えない【≒ もうこれ以上 耐えられない】。 (si leva dal grembiale il fazzoletto per asciugarsi le lagrime, e rovescia in terra il denaro ricevuto da Isacco)(前掛けから 彼女のハンカチを 取り出す 涙を 拭うために、そして 地面に 金 かね をこぼす イザッコから 受け取った) LUCIAルチーア (con meraviglia)(驚きをもって) Ma che denaro è questo?ところで これは 何の金 かね か? NINETTAニネッタ (raccogliendo affannosamente il denaro)(息せき切って 金 かね を拾い集めて) È mio, signora; è mio.それは 私のものだ、女主人よ、それは 私のものだ。 LUCIAルチーア Eh! Tu mentisci.ええ! 君は 嘘をついている。 PODESTÀ代官 (al Cancelliere)(書記官に) Presto, scrivete.すぐに、書け。 NINETTAニネッタ È mio, signora; è mio.それは 私のものだ、女主人よ、それは私のものだ。 PIPPOピッポ È suo, ve l'assicuro:それは彼女のものだ、そのことを 私は あなたに 保証する: Isacco a lei lo diè.イザッコが 彼女にそれを 与えた。 PODESTÀ代官 (con istupore)(驚きをもって) Isacco!イザッコが! (a Pippo)(ピッポに) Ed a qual titolo?それで どのような 理由で? PIPPOピッポ Per certe cianciafruscole何か 取るに足らない物によって che a lui pur or vendè.それを 彼女は まさに今しがた 彼に売った。 PODESTÀ代官 Per certe cianciafruscole!...何か 取るに足らない物によって!… (ironicamente alla Ninetta)(皮肉を込めて ニネッタに) Cioè?つまり? NINETTAニネッタ Parlar non posso.私は 話すことができない。 PODESTÀ代官 Caduta sei nel fosso.君は 穴の中に 落ちた【≒ 罠に嵌った】 GIANNETTOジャンネット (con ira al Podestà)(立腹をもって 代官に) Tacete.黙りなさい。 (con passione alla Ninetta)(熱情をもって ニネッタに) Scopri il vero.真実を 公表しなさい【≒ 本当のことを話しなさい】。 NINETTAニネッタ Non posso!私は できない! GIANNETTOジャンネット (insistendo con viva passione)(強く求めて 心からの熱情をもって) Deh rispondi.ああ 答えなさい。 LUCIAルチーア Tu tremi; ti confondi.君は 震えている; 君は 混乱している。 NINETTAニネッタ Io, no, signora;... io spero...私は、いいえ、女主人よ… 私は 期待している… PODESTÀ代官 (si alza)(立ち上がり)) Inutile speranza.無駄な 期待だ。 Rimedio più non v'è.対策【≒ 助かる手段】は もはやない。 NINETTAニネッタ (Io perdo la costanza.(私は 意志の強さを失っている【≒ もう 気力も限界だ】。 Che mai sarà di me!)私について いったいどうなるであろうか【≒ 私は いったい どうなるというのだ】!) GIANNETTOジャンネット (Ah questa circostanza(ああ この状況は mi porta fuor di me!)私を 私の外へ 持って行く【≒ この状況に 私は 冷静さを 失っている】!) LUCIAルチーア (Ah questa circostanza(ああ この状況は mi porta fuor di me!)私を 私の外へ 持って行く【≒ この状況に 私は 冷静さを 失っている】!) PIPPOピッポ (Oh fiera circostanza!(ああ 過酷な状況だ! io sono fuor di me!)私は 私の外に いる【≒ 私は 冷静さを 失っている】! FABRIZIOファブリーツィオ (Ah questa circostanza(ああ この状況は mi porta fuor di me!)私を 私の外へ 持って行く【≒ この状況に 私は 冷静さを 失っている】!) PODESTÀ代官 (con visibile gioia)(目に見える歓喜をもって) (Omai più non t'avanza(今や 君には もう 残っていない che di venir con me.)私と一緒に来ることの他は【≒ 君は もう 私と 一緒に 行く他ない】。) GIANNETTOジャンネット (con impeto)(激情をもって) Si chiami Isacco.イザッコを呼ぶように【≒ イザッコを呼んで来てくれ】。 PIPPOピッポ (in atto di partire)(去る素振りで) Subito.すぐに。 FABRIZIOファブリーツィオ (a Pippo che parte immediatamente)(ピッポに その者は すぐに 去る) In piazza il troverai.広場で 君は 彼を 見付けるだろう。 LUCIA, GIANNETTO E FABRIZIOルチーア,ジャンネットとファブリーツィオ Possano tanti guaiこれほどたくさんの苦境が alfine terminar!ようやく 終わる【↑】ことができるように! (intanto il Podestà esamina il processo)(その間に 代官は 裁判を調べる【≒ 訴状を精査する】) PODESTÀ代官 (alla Ninetta)(ニネッタに) Quel denaro a me porgete.その金 かね を 渡しなさい。私に NINETTAニネッタ (Che pretende? O Numi, aiuto!)(彼は何を 強要しているのか? ああ 神々よ、助けを! (consegna il denaro al Podestà)(金を 代官に 引き渡す) PODESTÀ代官 Questo al fisco è devoluto.これは 国庫に 譲渡される【≒ 没収する】。 (si pone in tasca il denaro)(金 かね を彼のポケットにしまう) NINETTAニネッタ Oh crudel fatalità!ああ 残酷な 運命よ! PODESTÀ代官 (additando la Ninetta)(ニネッタを指し示して) (La superbia e l'ardimento(【↓】君の傲慢と 大胆を ti farò ben io passar.私は 十分に 通過させる【≒ 消え失させる ≒ 消し去ってやる】だろう Già vicino è il mio momento私の瞬間は 既に 近い di godere e trionfar.)心から喜ぶ そして 勝ち誇る【≒ 私が喜び勝ち誇るのは もうすぐだ】。) NINETTAニネッタ (Padre mio, per te mi sento(私の父よ、君のために 私は感じている questo core a lacerar;)この心が 引き裂かれているのを;) LUCIAルチーア (Quel pallor, quel turbamento(あの蒼白が、あの動揺が mi fa l'alma in sen tremar:)胸の中の 私の魂を 震わせている: FABRIZIOファブリーツィオ (additando la Ninetta)(ニネッタを指し示して) (Quel pallor, quel turbamento(あの蒼白が、あの動揺が mi fa l'alma in sen tremar:胸の中の 私の魂を 震わせている: NINETTAニネッタ (e, per mio maggior tormento,(そして、私の より大きな苦悩なことに、 non ti posso, oh Dio, giovar!)私は、ああ 神よ、君に役立つことができない!) Lucia e Fabrizioルチーアとファブリーツィオ (ora spero, ed or pavento;(時に 私は期待し、そして 時に 私は恐れる; che mai deggio, oh Dio, pensar!)私は いったい 何を考えるべきなのか、ああ 神よ!) GIANNETTOジャンネット (additando la Ninetta)(ニネッタを 指し示して) (ora spero, ed or pavento;(時に 私は期待し、そして 時に 私は恐れる; che mai deggio, oh Dio, pensar!)私は いったい 何を考えるべきなのか、ああ 神よ!) PODESTÀ代官 (Già vicino è il mio momento(私の瞬間は 既に近い di godere e trionfar.)心から喜ぶ そして 勝ち誇る【≒ 私が 喜び勝ち誇るのは もうすぐだ】。) |
è stato oggi rapito... 盗まれた であれば rubato でよいのに、代官はあえてより意味の強い rapito 強奪された を用いたので、ジャンネットから抗議される。rapire は 誘拐する という意味でも使われるように 強引に奪い去る という意味合い。 (Che bestia! Che giumento! giumento 驢馬 ろば = asino ロバ,愚か者,頑固者。ロバは 愚か者 をも意味することが良く知られているが、ロバ自体がとても頑固な性格なので、頑固者 の意味もある。 mi sento a rosicar. rosicare は 齧る かじる,噛む の意味。その同義語でやはり かじる,噛む の意味がある rodere では、rodersi で 悶々とする,憔悴する の意味がある。rodere かじる ⇒ 蝕む これを si を用いた受動態にして rodersi 蝕まれる ≒ 憔悴する,悶々とする ということだろう。rosicarsi でも同様に 悶々とする,憔悴する で理解してよいと思われる。 なお独仏伊訳で、ここでの rosicar を rossicare = rosseggiare 赤くなる,赤らむ と採って訳しているものがあるが、この場合は不適当だと思われる。 Io perdo la costanza. クリティカルエディション総譜では costanza ではなく costaza になっているが、誤植と思われる。 per te mi sento / questo core a lacerar; この台本では sentirsi (a) + 不定詞 で ―されるのを感じるの意味になっている(つまり sentirsi + 過去分詞 と同じ)箇所が見受けられる。 |
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Allegro 3/4 F major |
SCENA ⅩⅤ第15場 (Pippo con Isacco e detti)(ピッポ イザッコを伴って そして 前の場の人たち) ISACCOイザッコ (con umiltà)(恭しく) Isacco chiamaste.あなたたちは イザッコを呼んだのか。 PODESTÀ代官 (ad Isacco additandogli la Ninetta)(イザッコに 彼にニネッタを 指し示して) Che cosa comprasteあなたは 何を買ったのか da lei poco fa?彼女から 少し前に? ISACCOイザッコ Un solo cucchiaio1本だけのスプーン (titubando)(ためらって) con una forchetta.1本のフォークと共に。 GIANNETTOジャンネット (coll'accento della disperazione)(絶望の口調で) Ninetta! Ninetta!ニネッタよ! ニネッタよ! Tu dunque sei rea?ということは 君は犯行者なのか? (Ed io la credea(そして 私は 彼女を信じていた l'istessa onestà!)まさしく誠実さだと【≒ 誠実そのものだと】!) Lucia, Fabrizio e Podestàルチーア,ファブリーツィオと代官 (Convinta è la rea,(犯罪者が 証明された、 più dubbio non v'ha.)もう疑念は ない。) PIPPOピッポ (Ah, s'io prevedea!(ああ、もし私が予見していたならば! Ma come si fà?)だが どのようになるのだろうか? NINETTAニネッタ (ad Isacco, con risolutezza)(イザッコに、果断に) Or'è la posata? Mostrate;今 食卓用具は? 提示しなさい; (agli altri)(他の人たちに) e vedrete.そして 見なさい。 ISACCOイザッコ Che mai mi chiedete?いったい 何を 私に求めるのか? Venduta l'ho già.私は 既に それを売った。 NINETTAニネッタ Destin terribile!恐ろしい運命よ! PODESTÀ代官 (al Cancelliere dopo avergli parlato all'orecchio)(書記官に 彼の耳に 話をした後に) Ma fate presto.さあ すぐにしろ。 (il Cancelliere parte subito)(書記官は すぐに去る) GIANNETTOジャンネット (con impeto ad Isacco)(激情をもって イザッコに) Quai cifre v'erano?どのような組み合わせ文字【≒ 名前の頭文字】が あったのか? NINETTAニネッタ (coll'accento della disperazione)(絶望の口調で) (Ancora questo!(これもまた! Le stesse lettere!...同じ文字だ!… misera me!)哀れな私!) PODESTÀ代官 Quai cifre v'erano?どのような組み合わせ文字【≒ 名前の頭文字】が あったのか? ISACCOイザッコ (dopo aver alquanto pensato)いくらか考えた後に Eravi un' FFが あった ed un V insieme.そして いっしょに Vが。 |
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Andantino 6/8 A-flat major |
NINETTAニネッタ Mi sento opprimere;私は 抑圧されているのを 感じている non v'è più speme;もはや 希望はない; sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! LUCIA, PIPPO E NINETTAルチーア,ピッポ と ニネッタ Sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! PODESTÀ代官 Bene, benissimo!素晴らしい、最高に素晴らしい! non v'è più speme.もはや 希望はない。 (Tu stessa chiedermi(君自身が 求め dovrai mercé!)なくては ならないだろう 【↑】 私の 情けを!) LUCIA, PIPPO E NINETTAルチーア,ピッポ と ニネッタ Sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! GIANNETTOジャンネット Mi sento opprimere;私は 抑圧されているのを 感じている non v'è più speme;もはや 希望はない; sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! LUCIA, PIPPO E NINETTAルチーア,ピッポ と ニネッタ Sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! PIPPOピッポ Mi sento opprimere;私は 抑圧されているのを 感じている non v'è più speme;もはや 希望はない; sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! LUCIA, PIPPO E NINETTAルチーア,ピッポ と ニネッタ Sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! LUCIA E FABRIZIOルチーア と ファブリーツィオ Mi sento opprimere;私は 抑圧されているのを 感じている non v'è più speme;もはや 希望はない; sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 oh Dio, non v'è!ああ 神よ、ない! PIPPO E GIANNETTOピッポ と ジャンネット Sorte più barbara,さらに残酷な運命は、 per me non v'è!私には ない! PODESTÀ代官 (Tu stessa chiedermi(君自身が 求め dovrai mercé!)なくては ならないだろう 【↑】 私の 情けを!) Bene, benissimo!素晴らしい、最高に素晴らしい! non v'è più speme.もはや 希望はない。 |
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Allegro 3/4 A-flat major |
GIANNETTOジャンネット Ma qual rumore!ところで あの物音は! NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO E FABRIZIOニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンネット と ファブリーツィオ La forza armata!武装した軍隊だ! LUCIA, PIPPO, GIANNETTO E FABRIZIOルチーア,ピッポ,ジャンネット と ファブリーツィオ (al Podestà)(代官に) Ah mio signore, soccorso, pietà!ああ 私の貴君よ、救助を、哀れみを! |
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Stretta del Finale Ⅰ Allegro vivace 4/4 C major |
SCENA ⅩⅥ第16場 (I suddetti; Gregorio alla testa della gente d'arme; molti abitatori del villaggio, e tutti i famigli di Fabrizio)(上述の人たち; グレゴーリオ 武器を携えた人々の先頭にいる; 村の多くの住人たち、そしてファブリーツィオの家の使用人たち全員) PODESTÀ代官 (alla Gente d'arme, accennando la Ninetta)(武器を携えた人々に、ニネッタを 指し示して) In prigione costei sia condotta.監獄の中へと この女が 連れて行かれるように。 GIANNETTOジャンネット Giuro al cielo!私は 天に誓う【≒ 頼むから】! (opponendosi alle Guardie) Fermate, temete...止めなさい、恐れなさい… PODESTÀ代官 (alla Gente d'arme)(武器を 携えた人々に) Obbedite.従いなさい。 NINETTAニネッタ Gran Dio!偉大な神よ! LUCIA, PIPPO E FABRIZIOルチーア,ピッポとファブリーツィオ (al Podestà supplicando)(代官に 懇願して) Sospendete.中断しなさい。 PODESTÀ代官 No, nol posso.いいや、私は それを できない。 (alla Gente d'arme)(武器を 携えた人々に) I miei cenni adempite.私の指示を 果たしなさい。 (le Guardie circondano la Ninetta)(衛兵たちは ニネッタを 取り囲む) Ninetta, Lucia, Pippo, Isacco e Fabrizioニネッタ,ルチーア,ピッポ,イザッコとファブリーツィオ Oh destin!ああ 運命よ! GIANNETTOジャンネット (al Podestà)(代官に) Questo è troppo!これは あまりのことだ! Sentite!聞きなさい! PODESTÀ代官 Son sordo. (Ora è mia; son contento.)私は 耳が聞こえない【≒ 聞く耳を持っていない ≒ 聞く気はない】。(今や 彼女は 私のものだ; 私は満足している。) |
Giuro al cielo! giuro al cielo = giuro a Dio = giuraddio 文字通りには 神に誓う で、慣用句として 必ずや,きっと の意味で用いられる。そこから強い口調の間投詞的にも用いられる。この場合はジャンネットが懇願しているので 後生だから,お願いだから の意味合い。 |
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[Allegro vivace] 4/4 C major |
NINETTAニネッタ Mille affetti nel petto mi sento;千の【≒ 多数の】感情を 私は 私の胸の中に 感じている。 lo spavento gelare mi fa.恐怖が 私を凍りつかせている。 GIANNETTOジャンネット Mille furie nel petto mi sento;千の【≒ 多数の】怒りを 私は 私の胸の中に 感じている。 lo spavento gelare mi fa.恐怖が 私を凍りつかせている。 LUCIA, PIPPO E FABRIZIOルチーア,ピッポとファブリーツィオ Mille furie nel petto mi sento;千の【≒ 多数の】怒りを 私は 私の胸の中 に感じている; lo spavento gelare mi fa. PODESTÀ代官 (Ah sei giunto, felice momento!(ああ お前は 到達した、幸福な瞬間よ! Lo spavento piegare la fa.)恐怖が 彼女を 屈服させている。) CORO合唱 Mille furie nel petto mi sento;千の【≒ 多数の】怒りを 私は 私の胸の中に 感じている; lo spavento gelare mi fa.恐怖が 私を凍りつかせている。 NINETTAニネッタ Ah, Giannetto!ああ、ジャンネット! GIANNETTOジャンネット (i due amanti si abbracciano)(二人の恋人たちは 抱き合う) Mio ben!私の愛する人よ! PODESTÀ代官 (alla gente d'arme)(武器を携えた人々に) Separateli!彼らを 引き離せ! NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット Oh crudeli!ああ 残酷な人たち! Lucia, Pippo, Fabrizio e Coro Che orrore!何と恐ろしいことか! PODESTÀ代官 (alla gente d'arme)(武器を携えた人々に) Legatela!(彼女を 拘束しろ!) Lucia, Pippo, Giannetto, Isacco e Fabrizioルチーア,ピッポ,ジャンネット,イザッコとファブリーツィオ (a Podestà supplicando)(代官に 懇願して) Ah, signore!...ああ、貴君よ!… PODESTÀ代官 Non più.さらに多くはない【≒ もうそれ以上 言うな ≒ もうよい】。 (alla gente d'arme)(武器を携えた人々に) Trascinatela.彼女を連れて行け。 NINETTAニネッタ (a Giannetto, Fabrizio e Lucia)(ジャンネット、ファブリーツィオとルチーアに) Io vi lascio!私は あなた方を 残していく【≒ 私だけ 連れて行かれる】! Lucia, Giannetto e Fabrizioルチーア,ジャンネットとファブリーツィオ Ninetta!ニネッタ! PODESTÀ代官 (con impeto)(激情をもって) Finiamola.もう止めよう。 NINETTAニネッタ (a Giannetto, Fabrizio e Lucia)ジャンネット、ファブリーツィオとルチーアに Ah di me ricordatevi almeno;ああ 私のことを せめて 覚えていなさい; compiangete il mio povero cor.私の哀れな心に 同情しなさい。 Giannetto, Isacco e Fabrizioジャンネット,イザッコとファブリーツィオ (additando il Podestà)(代官を 指し示して) Chi gli vibra un pugnale nel seno!誰が 彼の胸に 短剣を降り下ろすのだ! vorrei far tutto a brani quel cor.私は あの心臓を すっかり ちぎりたい【≒ 八つ裂きにしたい】のものだ。 Lucia e Pippoルチーアとピッポ Vorrei far tutto a brani quel cor.私は あの心臓を すっかり ちぎりたい【≒ 八つ裂きにしたい】のものだ。 PODESTÀ代官 (Ah la gioia mi brilla nel seno!(ああ、歓喜が 私の胸の中で 光り輝いている! più non perdo sì dolce tesor.)これほどに 甘い宝を 私は もう 失わない。 CORO合唱 Ah, chi gli vibra un pugnale nel seno!ああ、誰が 彼の胸に 短剣を降り下ろすのだ! vorrei far tutto a brani quel cor.私は あの心臓を すっかり ちぎりたい【≒ 八つ裂きにしたい】のものだ。 (il Podestà ed il Cancelliere escono colle genti d'arme, le quali conducono via la Ninetta, attraversando la folla de' Contadini. Lucia rimane immobile col viso nascosto nel suo grembiale. Fabrizio trattiene a forza suo figlio che vuol correr dietro alla Ninetta. Pippo e tutti gli altri famigli manifestano la loro costernazione; e su questo quadro cala il sipario)(代官と 書記官は 武器を携えた人々たちと共に 退場する、その者たち【= 武器を携えた人々】は ニネッタを 連れて去る、村人たちの群衆を横切って。ルチーアは 動かないままでいる 彼女の前掛けの中に隠した顔で【≒ エプロンに顔をうずめたまま】。ファブリーツィは 力づくで 彼の息子を 引き留めている その者は ニネッタの後ろに 駆け付けようとしている。ピッポと 他のすべての使用人たちは 彼らの打ちひしがれていることを 表明している【≒ 悲嘆に暮れている】; そして この場面の上に 緞帳が下りる) |
Finiamola. この -la は漠然とある特定のことを意味しており、finire の命令形に la を接続して(たとえば tu に対して Finiscila!)、 やめろ! という決まり文句になる。 |
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ATTO SECONDO | ||||
[Recitativo] |
SCENA Ⅰ第1場 (Vestibolo delle prigioni nella Podesteria)(代官所の牢獄の 玄関の間) (Antonio e subito Ninetta)(アントーニオ すぐにニネッタ) ANTONIOアントーニオ (additando il carcere di Ninetta)(ニネッタの牢獄を 指し示して) In quell'orrendo carcere rinchiusaこの恐ろしい牢獄の中に 閉じ込められて geme la poveretta! Ah chi potria哀れな女は 呻いている! ああ 誰が del misero suo stato彼女の悲惨な状態に non sentire pietà? Cara fanciulla,哀れみを 感じる 【↑↑】ことができないかもしれないというのか。愛する娘よ、 io vo' cercare almeno私は せめて 得ようとしたい d'alleviare i tuoi strazi.君の責め苦【≒ 苦悩】を 和らげいることを。 (Antonio dice queste ultime parole aprendo la porta del carcere di Ninetta, e chiamandola dalla soglia)(アントーニオは これらの最後の言葉を言う【と】 ニネッタの牢獄の扉を 開けて、そして 敷居【≒ (牢獄の)入口】から 彼女を呼ぶ) Ehi, mia signora...そら、私の貴女よ… SCENA Ⅱ第2場 (Ninetta, Antonio e infine Giannetto di fuori)(ニネッタ、アントーニオと 最後に ジャンネット 外から) NINETTAニネッタ (di dentro)(内側で【≒ 牢獄の中で】) Ahimè!ああ! ANTONIOアントーニオ Deh! non temete:ああ! 恐れるでない: sono Antonio; sorgete...私は アントーニオだ; 立ち上がりなさい…。 (entrando nel carcere)(監獄の中に 入って) venite qui,ここに 来なさい、 venite a respirare,息をつきに 来なさい。 (uscendo dal carcere colla Ninetta per mano)(ニネッタと共に 牢獄から出て 【彼女の】手を引いて) ed a godereそして 享受しに【来なさい】 almeno un po' di luce.せめて 少し 光を。 NINETTAニネッタ Ah quanto vi son grata!ああ 私は あなたに 何と ありがたく感じることか! Conoscete voi Pippo?あなたは ピッポを知っているか? ANTONIOアントーニオ Il servo...使用人の… NINETTAニネッタ Appunto.まさに。 Se poteste, di grazia,あなたが できるのならば、どうか、 farlo tosto avvertito彼に すぐさま 知らせることを ch'io gli vorrei parlar?私が 彼に 話したいということを? ANTONIOアントーニオ Uhm! non saprei...ううむ! 私はできないかもしれない… vedrem... procureremo...見よう【≒ 検討しよう】… 努力しよう… (s'ode battere alla porta)(扉を 叩くのが 聞こえる) Chi va là?誰が そこで 歩いているのか【≒ そこに いるのは 誰だ】? GIANNETTOジャンネット Apritemi,私に 【扉を】 開けなさい。 NINETTAニネッタ Qual voce!あの声は! ANTONIOアントーニオ (osservando per lo sportello)(【扉の】差し出し口を 通して 監視して) Che volete?あなたは 何を 望んでいるのか? voi qui, signor Giannetto?あなたが ここに、ジャンネットさんよ? NINETTAニネッタ Giannetto!ジャンネットが! GIANNETTOジャンネット Vi scongiuro, apritemi.あなたに 懇願する、私に 【扉を】開けなさい。 ANTONIOアントーニオ Impossibile.不可能だ! NINETTAニネッタ (prendendo affettuosamente per mano Antonio)(情愛を込めて アントーニオを 手で 取って【≒ アントーニオの手を握って】 Ah mio benefattore!ああ 私の恩人よ! ANTONIOアントーニオ (Eh chi potrebbe resister mai?)(いったい 誰が 抗うことができるかもしれないのか?) (alla Ninetta affettando serietà)(ニネッタに 真面目さの 振りをして【≒ 真剣な顔を作って】) Restate.留まりなさい。 (Infin che male c'è?)(結局 何か 悪いことが あるのか【≒ 何が いけないというのか】?) (apre a Giannetto)(ジャンネットに【扉を】開ける) Signore, entrate.貴君よ、入りなさい。 SCENA Ⅲ第3場 (Giannetto e detti)(ジャンネットと前の場の人たち) ANTONIOアントーニオ (riceve da Giannetto una moneta, e si ritira per la porta onde quegli è entrato)(ジャンネットから 硬貨を 受け取り、そして 扉を 通って 引っ込む そこ【= 扉】から その者【= ジャンネット】が入った【扉を 通って】) Oh troppe grazie!ああ とてもありがとう! GIANNETTOジャンネット (stringendole la mano)(彼女の片手を 握って) Cara!愛する女よ! NINETTAニネッタ Ed è pur vero?では これは まさに 本当なのか? Ah! dunque ancora tuああ! それでは 君は まだ non m'hai del tutto abbandonata!私を すっかり 見捨ててしまったのでは ないのだ! GIANNETTOジャンネット Abbandonarti? Oh cielo!君を 見捨てる? ああ 天よ! Tu sì m'abbandonavi allor... Che dico?それどころか 君こそが 私を 見捨てた… 私は 何を 言っているのか? No no, perdona... io non lo credo... Eppure...いいや、いいや、許してくれ… 私は そのことを 信じていない… それでも… ah, se caro ti sono,ああ、もし 私が 君にとって 愛する男であるならば、 se veder non mi vuoi morir d'affanno,もし 君が 見たくないのならば 私が 苦しみで 死ぬのを、 ah togli i dubbi miei!ああ 私の疑念を 取り去ってくれ! m'apri il tuo cor; dimmi se rea tu sei.君の心を 私に開けてくれ; 私に言ってくれ 君が 犯行者の女で あるかどうかを。 NINETTAニネッタ (con dignità)(気高さをもって) Sono innocente.私は 潔白だ。 GIANNETTOジャンネット E perché dunque, o cara,それでは いったい なぜ、ああ 愛する女よ、 non ti discolpi?君は 自己弁護しないのか? NINETTAニネッタ Perché nulla io possoなぜなら 私は できないからだ 何も addurre in mia difesa:提示することが 私の弁護に【≒ 何も 申し開きが できないからだ】: tacer m'è forza,私には 黙っていなければならない、 se tradir non voglioもし 私が 裏切りたくなければ chi già dall'empia sorte既に 邪悪な運命によって è percosso abbastanza.十分【≒ 大いに】打ちのめされた【↑】人を。 GIANNETTOジャンネット Ma sperar non poss'io?...しかし 私は 期待することは できないのか?… NINETTAニネッタ Vana speranza!虚しい期待だ! GIANNETTOジャンネット (Più non so che pensar!)(もはや 何を 考えるのか 私は分からない【≒ もう 私には 何が何だか 分からない】!) Ah mia Ninetta,ああ 私のニネッタよ、 tu sei perseguitata:君は 起訴された: il Podestà crudele残酷な代官が la tua sentenza affretta!君の判決を 急かしている! Tu conosci il rigor delle leggi.君は 法の厳格さを 知っている。 Ah! se non parli,ああ! もし 君が 話さないのなら、 se il tuo fatale arcanoもし 君の 死に至らせる秘密を a nasconder ti ostini... io tremo!隠すことに 君が 固執するのなら【≒ 君に 死を招く 秘密を 君が 頑なに 明かそうとしないなら】… 私は震え上がる! forse in questo giorno istesso...おそらく この同じ日に… oh giorno orrendo!ああ 恐ろしい日だ! NINETTAニネッタ Condannata sarò... Non più! t'intendo.私は 刑を 宣告されるだろう… さらに 多くは ない【≒ もうそれ以上 言うな】! 私は 君【が言おうとしていること】を理解している。 |
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N. 10 Duetto [Ninetta - Giannetto] Ninetta Giannetto Antonio |
Andante grazioso 6/8 A major |
NINETTAニネッタ Forse un dì conoscereteおそらく ある日 あなたは知るだろう la mia fede, il mio candore:私の忠実【≒ 誠実さ】を、私の潔白を。 piangerete il vostro errore;あなたは あなたの誤りを 後悔するだろう; ma quel pianto io non vedrò:しかし その涙を 私は見ることは ないだろう: là fra l'ombre allor sarò!あそこ【≒ あの世】で 亡霊たちの間に その時 私はいるだろう! GIANNETTOジャンネット Taci, taci; tu mi fai黙りなさい、黙りなさい; 君は 私の l'alma in sen gelar d'orrore.魂を 胸の中の 恐怖で凍り付【↑】かせている。 (No, la colpa in sì bel core,(いいや、これほどに 素晴らしい 心の中に 罪が no, ricetto aver non può.いいや 匿われることはできない【≒ 隠されているなんてありえない】。 Ed io perderla dovrò!)けれども 私は 彼女を 失うに 違いないのだ!) NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット No che la morte istessa死そのものが tanto non fa penar!大いに 苦しませている 【↑】わけではない! Troppo è quest'alma oppressa;この魂は あまりにも 抑圧されている; non posso più respirar!私は もはや 息をつくことができない! |
non posso più respirar 楽譜では più はしばしば省略されている |
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Allegro 4/4 A major |
SCENA Ⅳ第4場 (Antonio frettoloso, e detti)(慌てたアントーニオ、そして前の場の人たち) ANTONIOアントーニオ (a Giannetto)(ジャンネットに) O mio signor, partite:ああ 私の貴君よ、立ち去りなさい: il Podestà sen viene.代官が やって来る。 GIANNETTOジャンネット (alla Ninetta)(ニネッタに) Idolo mio!私の偶像よ! NINETTAニネッタ (a Giannetto)(ジャンネットに) Mio bene!私の最愛の人よ! ANTONIOアントーニオ (alla Ninetta)(ニネッタに) E voi tornate in carcere.そして あなたは 牢獄に戻りなさい。 NINETTAニネッタ Crudel necessità!残酷な急務だ! GIANNETTOジャンネット Parto; ma per salvarti私は去る; しかし 君を救うために tutto farò, ben mio.私は あらゆることをするつもりだ、私の最愛の人よ。 Spera frattanto.そうしている間に 希望しなさい。 NINETTAニネッタ Addio!さようなら! NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット Che barbaro dolor!何という むごい苦悩だ! Più non resisto, o Dio!私は もう 耐えられない、ああ 神よ! ANTONIOアントーニオ Partite.立ち去りなさい。 NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット sento mancarmi il cor.私は 私の心が弱るのを 感じている。 |
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(Allegro) 4/4 A major |
NINETTAニネッタ O cielo rendimi al caro ben;ああ 天よ いとしい最愛の人を 私に 返しなさい; o scaglia un fulmine che m'arda il sen.さもなければ 雷を 投げつけなさい それは 私の胸を 焼くであろう。 GIANNETTOジャンネット O cielo rendimi il caro ben;ああ 天よ いとしい最愛の人を 私に 返しなさい; o scaglia un fulmine che m'arda il sen.さもなければ 雷を 投げつけなさい それは 私の胸を 焼くであろう。 ANTONIOアントーニオ Signor, partite.貴君よ、立ち去りなさい。 Andiam!行こう! (Giannetto esce; la Ninetta ritorna nel suo carcere)(ジャンネットは出る; ニネッタは 彼女の牢獄に 戻る) |
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[Recitativo] Dopo il Duetto [Ninetta - Giannetto] | 4/4 C major |
SCENA Ⅴ第5場 (Antonio; subito il Podestà; poscia Ninetta, e infine alcune guardie)(アントーニオ、すぐに代官; それからニネッタ、そして 最後に 何人かの衛兵たち) ANTONIOアントーニオ Ah destino crudel! Ma perché maiああ 酷い むごい 運命だ! しかし いったい なぜ tanto rigore questa volta ostenta今回は あれほどたくさんの 厳しさを ひけらかすのか il Podestà?... No, mormorar non voglio:代官は?… いいや、私は 不平を言いたくはない: ma qui certo s'asconde un qualche imbroglio.だが ここには たしかに なにか陰謀が 隠れている。 PODESTÀ代官 Antonio? conducetemi la prigioniera.アントーニオ? 囚人の女を 私【のところ】に 連れて来なさい。 No, non fia mai vero che a tollerareいいや、決して 真実ではないだろう 寛大に扱 io m'abbia sprezzi e rifiuti.わなくてはならないであろう【↑】ことは 私に対する 軽蔑を そして 拒絶を【≒ 私を 軽蔑し 拒絶したことを 大目に見てやるべきだなんて、決して 正しくないだろう】。 (ad Antonio che ha condotto la Ninetta)(アントーニオに その者は ニネッタを 連れて来た) Andate.行きなさい。 (All'arte.) Orsù, mia povera Ninetta,(狡猾に【≒ 巧くやろう】。) さあ、私の かわいそうな ニネッタよ、 t'accosta. A te mi guida tenerezza e pietà.近付きなさい。 優しさと 哀れみが 私を 君に 案内している。 Più non rammento i tuoi torti con me:もう 私は 覚えていない 君の過ちを 私に対しての: vorrei salvarti; ma come mai,私は 君を 救いたいのだが; だが いったい どうするのか、 se tutto rea ti condanna?もし すべてが 君を 有罪だと 判決を下すなら? NINETTAニネッタ Io rea! E creder lo potete?私が 有罪だって! それで あなたは そのようなことを 信じられるのか? PODESTÀ代官 Ah sì, purtroppo!ああ そうだ、残念ながら! NINETTAニネッタ Tutto, è vero, congiura a danno mio;すべてが、それは 本当だ、結束して 掛かっている 私の損害に【≒ あらゆることが 私に不利に働いているのは 事実だ】; ma, lo sanno gli Dei, rea non son io.しかし、神々は それ【= この文の後半部分】を知っている、私は 犯行者ではない。 PODESTÀ代官 Ebbene, io spero ancor. Tutto tu puoi,そうだな、私も また 望んでいる。 君は すべてを【≒ 何でも】 amabile Ninetta,かわいらしいニネッタよ、 aspettarti da me. Sì, non temere;私から 期待することが【↑】できる。 そうだ、恐れるでない; voglio quest'oggi istesso私は まさに今日 toglierti di prigione.君を 牢獄から 取り去り【↑】たい。 NINETTAニネッタ O mio signore, se non mi prometteteああ 私の貴君よ、もし あなたが 私に 約束しないのなら、 che intero mi sarà reso l'onore,私の名誉が 完全に 元に戻されるであろう ことを、 e innanzi agli occhi altruiそして 他の人の目の前で sciolta ritornerò d'ogni sospetto,私が あらゆる嫌疑から 解放されて 元に戻るであろう【↑】ことを、 voglio qui rimaner.私は ここに 留まりたい。 PODESTÀ代官 Te lo prometto.私は 君に そのことを 約束する。 |
No, non fia mai vero che a tollerare / io m'abbia sprezzi e rifiuti. No, non fia mai vero che io m'abbia a tollerare sprezzi e rifiuti. (All'arte.) Orsù, mia povera Ninetta, (All'arte.) はト書きではなく台詞。 |
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N. 11 Aria Podestà |
Andantino 4/4 C major |
PODESTÀ代官 Sì, per voi, pupille amate,そうだ、あなたのために、愛する瞳よ、 tutto far desio:私は すべてを したい: ma per me, tu pur, ben mio,だが 私に対して、君もまた、私の最愛の人よ qualche cosa devi far.何か しなくてはならない。 NINETTAニネッタ Chi m'aita?誰が 私を 助けるのだろうか? PODESTÀ代官 Sta tranquilla, e t'affida a chi t'adora:落ち着いて いなさい【≒ 安心しなさい】、そして 身を任せなさい 君を熱愛している者に: io salvarti posso ancora,私は まだ 君を 救うことができる、 se t'arrendi al mio pregar.もし 君が 従うならば 私の懇願に。 NINETTAニネッタ No giammai.いいや、決して。 PODESTÀ代官 Paventa, ingrata!恐れろ、恩知らずな【≒ つれない】女め! CORO DI GUARDIE衛兵たちの合唱 (di dentro)(内【≒ 舞台裏】から) Ah Ninetta sventurata!ああ 不幸なニネッタよ! PODESTÀ代官 Quali accenti!何という口調【≒ 声】だ! (con trasporto)(激しく)> Un solo amplesso...一度だけ 抱擁を… Senti... ascolta.聞きなさい… 耳を貸しなさい、 |
tutto far desio: desio < desiare = desiderare 欲する,切望する,―したい |
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Mosso 4/4 C major |
CORO合唱 [di fuori][外から] Radunato è il gran consesso;大会議が 呼び集められた manca solo il Podestà.代官だけが 不在である。 (a queste voci, esce fuori Antonio il qual si tiene in disparte)(この声に、アントーニオは 外に出る【≒ 舞台に現れる】 その者は 傍らで 【立って】いる) (entrando)(【合唱が】入って来て) PODESTÀ代官 (Oh mia sorte maledetta!)(ああ 私の 呪わしい運命よ!) (alle guardie)(衛兵たちに) Ho capito; vengo in fretta.私は 理解した【≒ 分かった】; 私は 急いで行く【≒ すぐに 行く】。 (alla Ninetta)(ニネッタに) Hai sentito? e ancora adesso...君は 聞いたかね? そして まだ 今は… NINETTAニネッタ Sì, vi replico lo stesso.はい、私は あなたに 同じことを 繰り返す。 PODESTÀ代官 Ma la morte?だが 死刑は? NINETTAニネッタ Non la temo.私は それを 恐れない。 PODESTÀ代官 Vanne, indegna;ここから 行け、恥ずべき女め; quell'orgoglio alfin cadrà.その傲慢さは 最後には 倒れるだろう。 |
(a queste voci esce fuori Antonio il qual si tiene in disparte) アントーニオはこの後アリアのカバレッタで合唱と共に歌っているので、ここでの esce fuori は、建物の外に出るのではなく、舞台袖から舞台へと出て来ることを意味すると思われる。 |
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Vivace 4/4 C major |
Udrai la sentenza,君は 判決を 聞くだろう、 perdon chiederai;君は 許しを 乞うだろう; ma invan pregherai,だが 虚しく 懇願するだろう【≒ 懇願しても 無駄なこと】、 ma tardi sarà.だが 遅いだろう。 Va.行け。 In odio e furore憎しみに そして激情【に】 cangiato è l'amore;愛は 変わった; pietà nel mio petto私の胸の中の 哀れみは più luogo non ha.もう 場所を 持っていない【≒ 私の胸の中には もう 哀れみはない】。 (in questo punto s'ode da lontano il suono de' tamburi con cui s'annunzia al Popolo che s'apre la sessione del Tribunale)(この点【≒ 瞬間】 遠くから 太鼓の音が聞こえる それ【= 太鼓の音】で 人々に 告げている 裁判所の開廷期が 開く ことを【≒ 裁判所の開廷を】) CORO合唱 Udiste?あなたは 聞いたのか? PODESTÀ代官 Vi seguo.私は 君たちに ついて行く。 CORO合唱 È questo l'avviso.これは 報せだ。 PODESTÀ代官 Andiamo.行こう。 (alla Ninetta)(ニネッタに) Ebbene?それでは? NINETTAニネッタ Ho deciso.私は 決心した【≒ 覚悟を決めた】。 CORO合唱 Andiamo.行こう。 PODESTÀ代官 Qual sorte l'attende l'ingrata non sa.どのような運命が 彼女を 待っているのか あの恩知らずな【≒ つれない】女は 知らない。 (parte)(退場する) CORO合唱 (Antonio col Coro)(アントーニオ 合唱と共に) (Quel torbido aspetto paura mi fa.)(あの濁った様子【≒ 怪しい態度】は 私を 不安に させる。) (il Coro parte insieme col Podestà)(合唱は 立ち去る 代官と一緒に) |
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[Recitativo] Dopo l'Aria Podestà | 4/4 (C major) |
SCENA Ⅵ第6場 (Antonio, Ninetta e subito Pippo)(アントーニオ、ニネッタ それから すぐに ピッポ) ANTONIOアントーニオ Podestà, Podestà! tu me l'hai fatta.代官よ、代官よ! 君は 私を 騙したな。 Le cose questa volta今回 ことは in regola non vanno.正規の手続きに従って 進行していない。 Ah piaccia al cielo!..ああ 天に 気に入られるように【≒ 神の加護が あるように】!… PIPPOピッポ (ad Antonio)(アントーニオに) Chiamar voi mi faceste.あなたは 私を 呼ばせた【≒ (人に) 私を 呼び出させた】な。 (vedendo la Ninetta e correndo verso di lei)(ニネッタを見て そして 彼女に向かって駆け付けて) Ah cara amica!ああ 私の愛する友よ! NINETTAニネッタ (a Pippo)(ピッポに) Ho bisogno di te.私は 君が 必要だ。 ANTONIOアントーニオ (a Ninetta)(ニネッタに) Poche parole,少しの言葉を【≒ 少しだけ 話をしなさい】、 vedete: io vo frattanto見なさい【≒ いいかね】: 私は そうしている間に a far la sentinella.見張りをする 【↑】つもりだ。 (via)(去る) PIPPOピッポ In ciò che posso,私ができることにおいて、 ...quel poco ch'io possiedo,…あの僅かな物を それを 私は 所有している【≒ 私の持っている 僅かばかりの物を】、 volentieri ve l'offro.喜んで あなたに それを 提供する。 NINETTAニネッタ Ah no, mio Pippo,ああ いいや、私のピッポよ、 (togliendosi frattanto dal collo la croce)(そうしている間に 首から 十字架を 外して) abusarmi non voglio私は 悪用したくない del tuo buon cor! Solo ti chiedo in presto君の善良な心を【≒ 君の善意に 乗じたくない】! 私は ただ 君に 頼みたいだけ すぐに tre scudi, che andrai tosto3スクードを、それを 君は すぐさま a portare là doveそこに 持って 【↑】行くだろう そこを or ti dirò. Questa mia croce in pegno...私は 君に 今 言うだろう。 この 私の十字架を 担保に…。 PIPPOピッポ Adagio, adagio. Dove落ち着いて、落ち着いて。どこへ portar devo il denaro?私は 金 かね を 持って行かなくてはならないのか? NINETTAニネッタ Hai tu presente quel grande castagno君は あの大きなクリの木を 知っているか che si trova dietro al vicin colle?..それは 近くの丘の後ろに【≒ 向こうに】 ある? PIPPOピッポ E che scavato è in modoそして それは 【穴を】掘られている che un uom vi si potrebbe一人の人が そこに quasi quasi appiattar...ほぼ ほとんど 身を隠す 【↑】ことができる【↑↑】ように【≒ そして それは 人一人が入れるくらいの 洞のある】…。 NINETTAニネッタ Sì, quello appunto.そう、まさに それだ。 Là dentro ti scongiuroそこの中に 私は 君に 懇願する di riporre il denaro innanzi sera.金 かね を 隠すように 夕方の前に。 PIPPOピッポ (maravigliato)(驚かされて) Dentro il vecchio castagno!..老いたクリの木の中に!… NINETTAニネッタ Sì; ma che niun ti vegga.そう; けれども 誰も 君を 見ないように。 PIPPOピッポ (in atto di partire)(立ち去る素振りで) Siamo intesi.分かった。 NINETTAニネッタ Ma Pippo? E questa croceところで ピッポよ? さあ この十字架を che ti scordavi!それを 君は 忘れていた! PIPPOピッポ Io non mi scordo nulla:私は 何も 忘れていない: tenetela, vi prego.それ【= 十字架 女性名詞】を 持っていなさい、私は あなたに 頼む。 NINETTAニネッタ Se la ricusi, non accettoもし 君が それ【= 十字架 女性名詞】を 受け入れないのならば、受け入れない anch'io l'offerta tua.私も 君の申し出を。 PIPPOピッポ Vi sfido.私は あなたに 挑戦する【≒ 私は あなたに 反論する】。 Ora che so quello che far io debbo,私がするべきことを 知っている 今となっては、 nessun più mi trattiene.もう 誰も 私を 引き留め【られ】ない。 È pure un gran piacere il far del bene!善行を することは 本当に 大きな喜びだ! (in atto di partire)(立ち去る素振りで) |
tu me l'hai fatta. farla a qlcu. 人を騙す,からかう Hai tu presente quel grande castagno avere presente 記憶にある,知っている E che scavato è in modo / che un uom vi si potrebbe / quasi quasi appiattar... in modo che 接続法 ―するように。 おそらく、栗の巨木の幹に開いた樹洞のことだろう。 Vi sfido. sfido ≤ sfidare は 挑戦する の意味だが、勇敢に立ち向かう,敢然と―する の意味から、この場合は あえて物申す くらいの意味になる。 |
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N. 12 Rcitativo e Duetto [Ninetta - Pippo] Ninetta Pippo Antonio Coro |
Allegro 4/4 C major |
NINETTAニネッタ (trattenendolo)(彼を 引き留めて) Deh pensa che domani,ああ 考えなさい 明日、 oggi fors'anco, non sarà più mioもしかしたら あるいは 今日、もう 私のものでは なくなる かもしれない quest'ornamento!この装飾品【= 十字架】は! PIPPOピッポ Ohibò! non lo credete:ああ! そのようなことを 信じるでない: esser non può; mel dice il cor... tenete.そんなことはありえない; 私の心は そのことを【≒ そう】 言っている… 持っていなさい。 |
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Duetto Andantino Pastoso 12/16 G major |
NINETTAニネッタ E ben, per mia memoriaそれでは、私の思い出に la serberai tu stesso:君自身が それを 取っておきなさい: non hai più scuse adesso君は 今は もう 言い訳を 持っていない di rifiutarla ancor.再び それを 断る【≒ 言い訳を】。 PIPPOピッポ Pegno adorato, ah sempre敬愛の証よ、ああ いつまでも con Pippo resterai:ピッポと共に お前【= 十字架】は 留まるだろう: (baciando la croce)(十字架に キスして) compagno mio saraiお前は 私の連れに なるだろう finché mi batte il cor.私の心臓が 鼓動している限り。 NINETTAニネッタ (Mi cadono le lagrime;(私の涙が 落ちている; m'opprime il suo dolor!彼の悲しみが 私を 圧迫する【≒ 苦しめる】! Un'anima sì teneraこれほどに優しい魂は mi fia presente ognor.)これからもずっと 私【の心】に 残るだろう。) PIPPOピッポ (Mi cadono le lagrime;(私の涙が 落ちている; m'opprime il suo dolor!彼女の悲しみが 私を 圧迫する【≒ 苦しめる】! Un'anima sì teneraこれほどに優しい魂は mi fia presente ognor.)これからもずっと 私【の心】に 残るだろう。) |
mi fia presente ognor.) essere presente は いる,ある の意味だが、この場合は (心などに)残る,留まる の意味。なおここでの単純未来は、祈願 私の心に 残りますように。 に近い。 |
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Allegro 3/4 e minor |
NINETTAニネッタ A mio nome, deh, consegna私の名前において、ああ、渡しなさい questo anello al mio Giannetto.この指輪を 私のジャンネットに。 PIPPOピッポ (Tanta fede, eguale affetto,(これほどたくさんの信頼【≒ 誠意】を、同じくらいの情愛を、 ah veduto mai non ho!)ああ 私は 決して 見たことがない! NINETTAニネッタ Digli insieme che lui solo同時に 彼に 言いなさい 彼だけを fino all'ultimo respiro;...最後の息まで;… ma non dirgli che il mio duolo...彼には 言わないように 私の苦しみが… questo core... Ah ch'io deliro!この心を… ああ、私が 錯乱する【≒ うわ言を言う】なんて! Il mio ben più non vedrò.私の最愛の人に 私は もう 会わないだろう【≒ 会うことはないのだろう】。 PIPPOピッポ Per carità, cessate!お願いだから、止めなさい! Sì, sì... non dubitate...そうだ、そうだ… 疑うでない… tutto farò...私は すべてを しよう… (in atto di partire)(立ち去る身振りで) dirò.言おう。 NINETTAニネッタ Non t'obbliar...忘れるでない… PIPPOピッポ (vivamente commosso)(激しく 心を動かされて) Che dite!あなたは 何てことを 言うのだ! Sapete chi son io.あなたは 知っている 私が 誰であるかを。 NINETTAニネッタ Povero Pippo, addio.かわいそうなピッポよ、さようなら。 PIPPOピッポ Addio!... (Se ancor qui resto,さようなら!… (もし 私が さらに ここに 留まるなら、) mi scoppia in seno il cor.)心臓が 私の胸の中で 破裂する。) |
Ah, ch'io deliro! ニネッタの感情が昂って途切れ途切れに話す様子を うわ言を言う と言っている。 (in atto di partire) クリティカルエディション総譜ではこのト書きはこの位置にあるが、台本ではピッポの Sì, sì... non dubitate... の前にある。 |
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Allegro 4/4 G major |
NINETTA E PIPPOニネッタとピッポ L'ultimo istante è questoこれが 最後の瞬間だ che ci vediamo ancor.私たちが また 会う。 (Vedo in quegli occhi il pianto.(私は 見る あの両目の中に 涙を。 Dove si trova, oh Dio!どこに あるのか、ああ 神よ! un più sincero amor?)もっと誠実な 愛が?) (Ninetta entra nella sua carcere, e Pippo se ne parte)(ニネッタは 彼女の牢獄の中に 入る、そして ピッポは 立ち去って行く) |
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[Recitativo] Dopo il Duetto di Ninetta e Pippo | 4/4 (C major) |
SCENA Ⅶ第7場 (Stanza terrena in casa di Fabrizio, come nell'atto primo)ファブリーツィオの家の地上階【≒ 1階】の部屋、第1幕と同様に) (Lucia sola)(ルチーア一人) LUCIAルチーア Infelice Ninetta!... Ed è poi certo不幸な ニネッタ!… そして それで 確かなのだろうか ch'ella sia rea? Qual dubbio!...彼女が 犯行者であろう ことは? 何という 疑い!… Il tempo, il luogo, le prove, i testimoni,時間、場所、証拠、証人たち、 è ver, la colpa sua fanno evidente;それは本当だ【≒ 実際のところ,事実】、それらは 彼女の罪を 明白にさせている;、 ma pure, chi sa mai? forse è innocente.しかし それにもかかわらず いったい 誰が知っているというのか【≒ どうなのだろうか】? おそらく 彼女は 無実だ。 |
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N. 13 Scena ed Aria Fernando Fernando Lucia |
4/4 C major |
SCENA Ⅷ第8場 (Lucia e Fernando)(ルチーアとフェルナンド) LUCIAルチーア Chi è? Fernando! oh Dio!誰なのか? フェルナンド! ああ 神よ! FERNANDOフェルナンド Mia cara amica,ところで 親愛なる友よ、 che nessuno ci ascolti!誰も 私たち【の話】を 聞いていないように! Ov'è Ninetta?ニネッタは どこに いるのか? LUCIAルチーア Ninetta!...ニネッタだって!… (piange)(泣く) Deh fuggite!ああ 急いで立ち去りなさい! FERNANDOフェルナンド Ma che vuol dir quel pianto?だが その涙は 何を 言いたいのか? LUCIAルチーア Ah non m'interrogate!ああ 私を 問いただすでない! FERNANDOフェルナンド Voi mi fate gelar!... (Entro il castagnoあなたは 私を 凍り付かせる!… (栗の木の中には ancor non pose... Un neroまだ 置いてなかった… 黒い【≒ 嫌な】 presentimento... Che pensare?...)予感が… 何を 考えるのか【≒ どう 考えるべきなのか】?…) Ebbene, che fa? Deh rispondete!それで、彼女は 何をしているのか? ああ 答えなさい! LUCIAルチーア Ah se sapeste!ああ もし あなたが 知っていたなら! accusata di furto...窃盗で 訴えられて… FERNANDOフェルナンド La mia figlia?私の娘が? LUCIAルチーア Sì dessa.そうだ、彼女が。 FERNANDOフェルナンド Come?... Esser non può. Seguite.どうして?… それは ありえない。 続けなさい。 LUCIAルチーア Innanzi al tribunale法廷の前で forse in questo momentoおそらく この瞬間に è giudicata.彼女は 判決を下されている。 FERNANDOフェルナンド Eterni Dei, che sento!永遠の神々よ、私は 何を 聞いているのだ! |
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[Aria Fernando] Allegro agitato 4/4 c minor |
FERNANDOフェルナンド Accusata di furto... oh rossore!窃盗で 訴えられた… ああ 赤面だ【≒ 何て ひどい】! Condannata, punita mia figlia?...有罪の判決を下された、罰を科せられた 私の娘が?… Ah qual nube m'ingombra le ciglia!ああ 何という雲が 私の眼を 妨げていることか【≒ 目の前に 黒雲がかかったようだ】! Freddo il sangue mi piomba sul cor.冷たい血が 私の心臓に 突然襲い掛かっている。 Condannata!... Ah si vada, sì, si cerchi...有罪の判決を下された!… ああ 行こう、そうだ、捜そう… ma che fo?... Son confuso e perplesso:だが 私は 何をしているのか?… 私は 混乱している そして 決断できないでいる: se mi scopro, oh Dio! io perdo me stesso;もし 私が 自分の正体を示したら、ああ 神よ! 私は 自分自身を 破滅させる; se più tardo, ella forse... oh, spavento!...もし 私が さらに 遅れたら、彼女は ことによると… ああ、不安が!… che cimento! che fiero dolor!何という試練だ! 何という 厳しい苦悩だ! |
Ah qual nube m'ingombra le ciglia! ciglia は ciglio が 睫毛,眉毛 の意味の場合の複数形だが、ここでは 眼 まなこ で理解した。 急―急の二部形式のアリア。 急。 Allegro agitato と Allegro で作られた珍しい組み合わせのアリア。ただしAllegro agitatoの中間あたりはややテンポを落としてたっぷり歌えることから、カンタービレ/カバレッタ形式のアリアのカンタービレ的な性格がないわけではない。 Ah si vada, sì, si cerchi... si + 接続法現在三人称単数形で ―しよう という勧誘の命令(この場合は 自分に対しての)になる。 |
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Allegro 4/4 E-flat major |
(riscuotendosi)(我に返り) Ah lungi il timore!ああ 私は 恐れを 遠ざけるように【≒ 恐怖を 振り払おう】! Si tenti la sorte:運を 試そう: coraggio, mio core;勇気を【出せ】、私の心よ; si sprezzi la morte:死を 砕こう: |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)に当たる部分。 Ah lungi il timore! lungi < lungare = dilungare 遠ざける Si tenti la sorte: si sprezzi la morte: これらの si + 接続法現在三人称単数形も ―しよう という勧誘の命令(この場合は 自分に対しての)。 Si tenti la sorte: 良い運になるか悪い運なるか分からないが、とにかくやってみよう という意味。 |
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(Allegro) 4/4 E-flat major |
la figlia diletta最愛の娘を si corra a salvar.救いに 駆け付けよう。 Coraggio, mio core;勇気を【出せ】、私の心よ; vo' tutto rischiar.私は すべてを 危険に晒したい。 (esce precipitosamente)(大急ぎで 出て行く) |
急。 si corra a salvar. この si + 接続法現在三人称単数形も ―しよう という勧誘の命令(この場合は 自分に対しての)。 |
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[Recitativo] Dopo l'Aria Fernando | 4/4 (C major) |
LUCIAルチーア Sventurato Fernando!... Ed io pur sono不幸なフェルナンド!… そして おそらく 私が di tanto duolo la cagione! Ah possaこれほど多くの苦悩の原因だ! ああ a' voti miei secondo私の願いに 応じて allontanare il ciel sì ria tempesta!天が これほどに 悪質な嵐を 追い払う 【↑↑】ことができるように! l'unica grazia ch'io domando, è questa.【これが】唯一の慈悲だ 私が 【天に】 求める。 (parte)(退場する) |
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N. 14 Recitativo, Coro e Quintetto Ninetta Giannetto Fabrizio Podestà Fernando Il Pretore Coro |
Maestoso 4/4 c minor |
SCENA Ⅸ第9場 (Sala del Tribunale nella Podesteria)(裁判所の大広間 代官所の中の) (Pretore, Giudici, un Usciere; il Podestà; Giannetto; Fabrizio; Popolo; Guardie alle porte)(裁判官、判事たち、裁判所の職員; 代官; ジャンネット; ファブリーツィオ; 人々; 扉のところに衛兵たち) (I Giudici sono assisi sui loro sedili; in mezzo ad essi è il Pretore, innanzi al quale è collocato un tavolino. Il Podestà, presente alla sessione, occupa una sedia a parte. Da un lato si vede il popolo spettatore, fra cui si distinguono Giannetto e Fabrizio. All'alzarsi della tenda si vede l'Usciere che va raccogliendo i voti nell'urna. Una musica tetra annunzia questo terribile momento)(判事たちは 座っている 彼らの座席の上に; 彼らの中央に 裁判官がいる、その者の前には 小テーブルが 置かれている。代官は、開廷に 居合わせて、離れた一席を 占める【≒ 開廷と共に 姿を現して、離れた席に 腰掛ける】。一方の側から 目撃者の人々【≒ 傍聴者】が見える、その中には ジャンネットと ファブリーツィオが 識別される。カーテンの上がることで【≒ 幕が上がると】 裁判所の職員が見える その者は 壺の中の投票を 集めているところである。陰鬱な音楽が 知らせている この 恐ろしい瞬間を) (L'Usciere, raccolti i voti, consegna l'urna al Pretore, il quale, trovato che tutte le palle sono nere, esclama:)(裁判所の職員は、投票を集めて、裁判官のところの壺に預ける、その者【= 裁判官】は、見出した すべての球が黒であることを、大声で言う:) |
trovato che tutte le palle sono nere, この場合の palla は、投票に用いられる白と黒の小さな球のこと。 |
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(Recitativo) 4/4 c minor |
PRETORE裁判官 A pieni voti è condannata.全投票において 彼女は 有罪の判決を下された。 GIANNETTOジャンネット Oh cielo, e tu lo soffri?ああ 天よ、それでは 君【= 天】は それ【= 有罪の判決】を 容認するのか? PRETORE裁判官 Zitto!静かに! FABRIZIOファブリーツィオ Abbi prudenza!冷静を 持ちなさい【≒ 落ち着きなさい】! PRETORE裁判官 (all'Usciere, che parte subito)(裁判所の職員に、その者は すぐに 立ち去る) Venga la rea.犯行者の女が 来るように。 (ad uno de' Giudici)(一人の判事に) Stendete la sentenza.判決文を 広げなさい【≒ 作成しなさい】。 |
Oh cielo, e tu lo soffri? この場合の soffrire は 認める,容認する。 |
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[Coro] Maestoso 3/4 C major |
CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Tremate, o popoli,恐れなさい、ああ 人々よ、 a tale esempio!このような【判】例に! Questo è di Temideここ【= 裁判所】は テミデ【= テミス ギリシア神話の法の女神】の l'augusto tempio:聖なる神殿 diva terribile,厳しい女神は、 inesorabile,情け容赦しない、 che in lance ponderaその者は 天秤で 量る l'umano oprar.人の 行いを。 Il giusto libera,彼女【= テミデ = テミス】は 正義の人を 救い出し、 protegge e vendica;保護し そして 恨みを晴らす; ma sempre il fulmineだが いつでも 雷を sovra il colpevole罪人の上に giugne a scagliar.投げつけに来る。 (Ninetta entra, accompagnata da alcune guardie che subito si ritirano, e preceduta dall'Usciere il quale le indica il luogo ov'ella debbe fermarsi)(ニネッタが入る、何人かの衛兵たちによって 同行されて その者たちは すぐに 退く、そして 裁判所の職員によって 先行されて その者は 彼女に 指し示す 場所を そこに 彼女は 立ち止まらなくてはならない) |
che in lance pondera この場合の lance は 天秤の皿 のことで、転じて 天秤 そのものを指す、つまり bilancia の同義語。どちらもラテン語の 皿 lanx(複数形 lances)に由来し、bilancia は 二つの皿(を持つ器具)の意(英語の balance に相当する)。なお天秤は法律の女神の象徴である。ここでの lance は 槍 lancia の複数形の lance ではない。 |
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Recitativo 4/4 (C major) |
SCENA Ⅹ第10場 (Ninetta e detti)(ニネッタ と 前の場の人たち) PRETORE裁判官 Infelice donzella,不幸な娘よ、 omai più non vi lice今は もう あなたに 許されていない che sperare nel ciel.天を 頼りにする他は【≒ あなたは もう 神を頼みにすることしか できない】。 (facendosi dare la sentenza dal Giudice che l'ha stesa)(判事によって 判決文を 自らに与えさせて その者は それを 作成した【≒ 判決文を 作成した 判事から 判決文を 受け取って】) Signor, porgete.貴君よ、手渡しなさい。 (Leggendo)(読んで) Considerando che la nominata勘案すれば 名指しされた【≒ という名で呼ばれる】 Ninetta Villabella è rea convintaニネッタ・ヴィッラベッラが 有罪を宣告された 【↑】ことを di domestico furto; a pieni voti,家庭の窃盗の【≒ 家庭内窃盗の咎 とが で ニネッタ・ヴィッラベッラという名の女が 全票一致で有罪を宣告されたことを勘案すると】 ed a tenor delle vigenti leggi,そして 現行の法により、 il regio Tribunale王立裁判所は la condanna alla pena capitale.彼女に 申し渡す 生命にかかわる刑罰【≒ 死刑】を。 |
che sperare nel ciel. sperare in - ―を頼りにする,信頼する ed a tenor delle vigenti leggi, a tenore di - (法律など)によって |
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[Quintetto] Adagio 3/4 E major |
NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット Ahi qual colpo!.. Già d'intornoああ 何という打撃だ!… 既に 周りでは sibilar la morte ascolto.死が シューッと音を立てているのを 私は 聞いている。 FABRIZIOファブリーツィオ Ahi qual colpo!..ああ 何という打撃だ!… PODESTÀ代官 Ahi qual colpo!...ああ 何という打撃だ!… Sibilar la morte ascolto.死が シューッと音を立てているのを 私は 聞いている。 FABRIZIOファブリーツィオ Già dipinto nel suo volto彼女の顔に もう 描かれた【≒ 浮かんだ】 miro il duolo ed il terror!悲嘆と 恐怖を 私は 見詰めている! NINETTAニネッタ Già dipinto nel mio volto私の顔に もう 描かれた【≒ 浮かんだ】 miro il duolo ed il terror!悲嘆と 恐怖を 私は 見詰めている! GIANNETTOジャンネット Già dipinto in ogni volto各々の顔に もう 描かれた【≒ 浮かんだ】 miro il duolo ed il terror!悲嘆と 恐怖を 私は 見詰めている! PODESTÀ代官 Già dipinto in ogni volto各々の顔に もう 描かれた【≒ 浮かんだ】 miro il duolo ed il terror!悲嘆と 恐怖を 私は 見詰めている! |
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Allegro 4/4 E major |
GIANNETTOジャンネット (slanciandosi verso i Giudici)(判事たちの方に 身を投げ出して) Aspettate; sospendete:待ちなさい、中断しなさい: voi punite un'innocente;あなたたちは 無実の者を 罰している; un arcano, ah non sapete!ある秘密を、ああ あなたたちは 知らないのだ! la meschina un arcano chiude in cor.哀れな人は 秘密を 心の中に 閉じ込めている。 FABRIZIO E PODESTÀ Un arcano!秘密を! CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) (alla Ninetta)(ニネッタに) Ebben, parlate!それでは、話しなさい! NINETTAニネッタ Rispettate il mio silenzio.尊重しなさい 私の沈黙を。 GIANNETTOジャンネット Ah Ninetta!ああ ニネッタよ! PODESTÀ代官 Palesate.明かしなさい。 NINETTAニネッタ Non crescete il mio dolor!増大させるでない 私の苦悩を! PODESTÀ代官 (Maledisco il mio furor.)(私は 私の怒りを 呪う。) GIANNETTOジャンネット Mi si spezza a brani il cor!私の心が 小片に 粉々になる【≒ ちぎれる】! FABRIZIOファブリーツィオ Mi trafigge il suo dolor!彼女の苦悩が 私を 刺し貫く! PRETORE裁判官 Ella tace.彼女は 黙っている。 CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Ebben,それでは、 (alle guardie)(衛兵たちに) sia tratta彼女が 連行されるように al supplizio.死刑に。 SCENA ⅩⅠ第11場 (Fernando, e detti)(フェルナンド、そして 前の場の人たち) FERNANDOフェルナンド (entrando impetuosamente)(激しく 入って来て) Ah no! fermate!ああ いけない! 止めなさい! |
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(Allegro) 4/4 C major |
NINETTAニネッタ Voi qui, padre?あなたが ここに、父よ? GIANNETTO, FABRIZIO E PODESTÀジャンネット,ファブリーツィオと代官 Chi vegg'io?私は 誰を 見ているのか? FERNANDOフェルナンド (a' Giudici)(判事たちに) Vengo a voi col sangue mio,私は あなたたちのところに 来ている 私の血で、 la mia figlia a liberar.私の娘を 救いに。 NINETTAニネッタ (Infelice! Possa il cielo(不幸な人! 天が できるように i suoi giorni or serbar!)彼の日々【≒ 人生】を 今 取っておく【≒ 守る】ことが! GIANNETTO E FABRIZIOジャンネットとファブリーツィオ (Oh coraggio! Possa il cielo(ああ 勇気を【出しなさい】! 天が できるように tanto zelo secondar!)これほど大きな熱意に 好意を示すことが! FERNANDOフェルナンド (I miei sforzi, il mio zelo(私の努力を、私の熱意を possa il cielo coronar!)天が 成就することができるように!) PODESTÀ代官 (alzatosi)(立ち上がり) Signori, è quello, è quello貴君たちよ、あの男が、あの男が il disertor che preme:脱走兵だ その者は 重要である【≒ 重要な脱走兵だ】: ecco gl'indizi, e insiemeそら ここに 証拠【≒ 人相書き ≒ 手配書】が、そして 一緒に vi troverete l'ordineそこに あなたたちは 見出すだろう 命令を di farlo imprigionar.彼を 投獄するようにとの。 (consegna al Pretore un foglio)(裁判官に 書類を 手渡す) CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Guardie.衛兵たちよ。 NINETTA, GIANNETTO E FABRIZIOニネッタ,ジャンネットとファブリーツィオ Gran Dio!偉大な神よ! CORO合唱 Fermatelo.彼を 留めろ【≒ 拘留しろ】 (le Guardie circondando Fernando)(衛兵たちは フェルナンドを 取り囲む) NINETTA, GIANNETTO E FABRIZIOニネッタ,ジャンネットとファブリーツィオ Gran Dio!偉大な神よ! e fia pur vero?しかし けれども それは 本当なのだろうか? FERNANDOフェルナンド Son vostro prigioniero;私は あなたたちの 囚人だ; il capo mio troncate:私の頭を 切り落としなさい: |
(Maledisco il mio furor.) ニネッタが秘密を明かさず死刑を受け入れようとしていることで、代官は、怒りに任せてニネッタを裁判に訴えたことを後悔し始めている。 sia tratta / al supplizio. supplizio は (身体的苦痛を与える)刑罰,責め苦 の意味だが、大文字始まりの Suppulizio あるいは l'estremo supplizio は 死刑 を意味する。この台本では supplizio はすべて 死刑 で訳した。 Chi vegg'io? 代官だけ2回言っている。 è quello / il disertor che preme: premere には他動詞の 追跡する の意味があるのだが、che(= あの男 = フェルナンド)を主語に採ると目的語が欠けており、che を目的語に採ると主語がうまく合わない。この場合の premere は自動詞 重要である で、関係代名詞 che を用いた - che preme で先行詞に掛かり 重要である― すなわち 重要な― という意味になる。 e insieme / vi troverete l'ordine / di farlo imprigionar. ここでの vi は、人称代名詞ではなく、副詞 そこに。手配書に人相書きと一緒に逮捕命令が書かれている、という意味。 |
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(Allegro) 4/4 E major |
ma il sangue risparmiateだが 血を 使わないでおきなさい【≒ 血を 流させるでない】 d'un'innocente vittima無実の犠牲者の che non si sa scolpar.その者は 自分の無罪を 主張することが できない。 CORO合唱 La sentenza è pronunziata;判決は 言い渡された; più nessun la può cambiar.もう 誰も それを 変えられない。 FERNANDOフェルナンド Ma dunque?...だが それでは?… CORO合唱 L'uno in carcere一人の男は 牢獄に e l'altra sul patibolo.そして 別の女は 処刑台の上に。 La legge è inalterabile;法律は 不変だ; nessun la può cambiar.誰も それを 変えられない。 NINETTA, GIANNETTO, FABRIZIO, PODESTÀ E FERNANDOニネッタ,ジャンネット,ファブリーツィオ,代官とフェルナンド Ah!ああ! |
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[Adagio] 3/4 G major |
NINETTA, GIANNETTO, FABRIZIO, PODESTÀ E FERNANDOニネッタ,ジャンネット,ファブリーツィオ,代官とフェルナンド Che abisso di pene!何という 苦悩の深淵だ! mi perdo, deliro.私は 頭が混乱し、錯乱している。 Più fiero martiroさらに 残酷な 殉難を l'Averno non ha.地獄は 持っていない【≒ これを超える残酷な苦難は 地獄にすらない】。 FERNANDOフェルナンド Un padre, una figlia父が、娘が、 fra' ceppi, alla scure!...足枷の間に【≒ 監獄の中に】、斧に【≒ 打ち首に】!… A tante sciagureこれほどたくさんの災難【≒ 不幸】に chi mai reggerà!いったい 誰が耐えられるというのだ! NINETTA, GIANNETTO, FABRIZIO, PODESTÀ E FERNANDOニネッタ,ジャンネット,ファブリーツィオ,代官とフェルナンド Un padre, una figlia父が、娘が、 fra' ceppi, alla scure!..足枷の間に【≒ 監獄の中に】、斧に【≒ 打ち首に】!… A tante sciagureこれほどたくさんの災難【≒ 不幸】に chi mai reggerà!いったい 誰が耐えられるというのだ! |
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Tempo Ⅰ 4/4 G major |
CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Guardie, olà.衛兵たちよ、そら。 GIANNETTOジャンネット Più non poss'io tollerar...私は もう 我慢できない… FABRIZIOファブリーツィオ Son fuor di me!私は 私の外にいる【≒ 我を忘れている ≒ 自制心をなくしている】 NINETTAニネッタ Che faceste, padre mio!あなたは 何をするのか、私の父よ! Per voi solo io vado a morte;あなただけのために 私は 死に行くのだ; e voi stesso alle ritorteしかし あなた自身が 縄に volontario offriste il piè.自発的に 足を 提供している。 FERNANDOフェルナンド Che dicesti?君は 何を 言ったのか? FABRIZIOファブリーツィオ Parla...話しなさい… GIANNETTOジャンネット Spiegati!うまく説明しなさい! CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Via, si tronchi ogni dimora;そら、どの遅れも 打ち切られるように【≒ 両人とも ぐずぐずするな】; alla carcere, al supplizio.牢獄に、死刑に。 NINETTAニネッタ (in atto di volere da lui un amplesso)(彼【= フェルナンド】から 抱擁を 望む 身振りで) Ah mio padre, in pria che mora!..ああ 私の父よ、死ぬ前に!… FERNANDOフェルナンド Figlia!娘よ! (ai satelliti che lo trattengono)(衛兵たちに そのものたちは 彼を 押さえている) Barbari, lasciatemi.残酷な者たちめ、私を 放せ。 CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) Eseguite.遂行しなさい。 (ai satelliti, i quali fanno subito per istrascinar via Ninetta e Fernando)(衛兵たちに、その者たちは 直ちに 連れ去ろうとする ニネッタと フェルナンドを) NINETTA E FERNANDOニネッタ と フェルナンド Oh Dio, soccorso!ああ 神よ、救助を! GIANNETTO E FABRIZIOジャンネット と ファブリーツィオ Ah Ninetta!ああ ニネッタ! PODESTÀ代官 (Qual rimorso!)(何という 後悔だ!) NINETTAニネッタ Mio Giannetto! mio Fabrizio!私のジャンネットよ! 私のファブリーツィオよ! CORO合唱 (ai satelliti)(衛兵たちに) Alla carcere; al supplizio.牢獄に、死刑に。 NINETTA, GIANNETTO, FABRIZIO E FERNANDOニネッタ,ジャンネット,ファブリーツィ と フェルナンド Ah neppur l'estremo amplesso!ああ 最後の抱擁すら【認められ】ないとは! questa è troppa crudeltà.これは あまりの 酷 むご さだ。 FERNANDOフェルナンド Figlia! Barbari.娘よ! 残酷な者たちめ! |
Via, si tronchi ogni dimora; dimora は一般的に 住んでいる場所 を意味するが、遅延,中断 の意味もある。 |
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[Stretta del Quintetto] [Allegro] 2/2 E major |
NINETTA E GIANNETTOニネッタ と ジャンネット Sino il pianto è negato al mio ciglio;涙さえも 私の眼によって 拒まれている【≒ 涙も 出ない】; entro il seno s'arresta il sospir.胸の中で 溜め息が 止まっている【≒ 溜め息も 胸で つかえている】。 Dio possente, mercede, consiglio!力強い神よ、哀れみを、助言を! tu m'aita il mio fato a soffrir.君が 私を 助けなさい 私の運命が 耐える【≒ 我慢する,持ち堪える】のを。 FABRIZIO E FERNANDOファブリーツィオ と フェルナンド Sino il pianto è negato al mio ciglio;涙さえも 私の眼によって 拒まれている【≒ 涙も 出ない】; entro il seno s'arresta il sospir.胸の中で 溜め息が 止まっている【≒ 溜め息も 胸で つかえている】。 Dio possente, mercede, consiglio!力強い神よ、哀れみを、助言を! tu m'aita il mio fato a soffrir.君が 私を 助けなさい 私の運命が 耐える【≒ 我慢する,持ち堪える】のを。 PODESTÀ代官 (Ah già il pianto mi spunta sul ciglio!(ああ 既に 涙が 私の眼の上に 出ている【≒ 私の目に 涙が 浮かんでいる】! tanto strazio mi fa impietosire.)たくさんの 【良心の】呵責が 私に 【ニネッタへの】哀れみを催させている。) (Ma la legge non ode consiglio;(だが 法は 助言を 聞かない; noi dobbiamo alla legge ubbidir.)私たちは 法に 従わなければならない。) CORO合唱 (Pretore col Coro)(裁判官 合唱と共に) (Ah già il pianto mi spunta sul ciglio!(ああ 既に 涙が 私の眼の上に 出ている【≒ 私の目に 涙が 浮かんでいる】! tanto strazio mi fa impietosire.たくさんの 【良心の】呵責が 私に 【ニネッタへの】哀れみを催させている。 Ma la legge non ode consiglio;だが 法は 助言を 聞かない; noi dobbiamo alla legge ubbidire.)私たちは 法に 従わなければならない。) FERNANDOフェルナンド Figlia...娘よ… NINETTAニネッタ Padre...父よ… FERNANDOフェルナンド Barbari!残酷な者たちめ! NINETTAニネッタ Crudeli!酷い人たちだ! FERNANDOフェルナンド No...いいや… NINETTAニネッタ Ah...ああ… FERNANDOフェルナンド Ah neppur l'estremo amplesso!ああ 最後の抱擁すら【認められ】ないとは! questa &egarave; troppa crudeltàこれは あまりの 酷 むご さだ。 (le guardie dall'una parte conducono Fernando alla carcere; dall'altra la Ninetta al luogo del supplizio. Il Pretore, i Giudici ed il Podestà si ritirano. Tutti gli altri partono costernati)(衛兵たちは 一方の側から フェルナンドを 連れて行く 牢獄へ、別の側から ニネッタを 死刑の場所へ。裁判官、判事たち そして 代官は 退出する。他の全員は 打ちのめされて 退場する) |
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[Recitativo dopo il Quintetto] | 4/4 (C major) |
SCENA ⅩⅡ第12場 (Lucia)(ルチーア) (Piazza del villaggio. Alla destra dello spettatore si vede il campanile ed una parte della chiesa: verso la cima del campanile sporge in fuori un piccolo ponte ad uso di far delle riparazioni. Alla sinistra è collocata la porta maggiore della Podesteria. Al di là della Podesteria c'e una contrada, e dirimpetto un'altra che mette dietro alla chiesa. Parimente alla sinistra, si vede una piccola porta, che è quella dell'orto della casa di Fabrizio)(村の広場。観客の右側【≒ 上手 かみて】に鐘楼 と 教会の一部が 見える: 鐘楼の最上部の辺りで 外に 出ている 小さな足場が 修繕をする用の。左側【≒ 下手 しもて】)には 代官所の大扉が 置かれている。代官所の向こうには 通りがあり、そして 【代官所の】正面に 別のもの【≒ 別の通り】【がある】、それは 教会の後ろに 通じている。同様に 左側【≒ 下手 しもて】)に、小さな扉が見える、それは ファブリーツィオの家の果樹園のそれ【= 扉】である) LUCIAルチーア (uscendo dalla chiesa)(教会から出て来て) Ora mi par che il core今は 私には 心が sia meno oppresso.より少なく 圧迫された 【↑】ように思われる【≒ やっと 気持ちが 少し 軽くなった気がする】。 Ah se benigno il Cieloああ もし 慈愛に溢れた天が le preci udì dell'alma mia pentita,祈りを 聞いたならば 私の 後悔した魂の、 no, l'infelice non sarà punita.そうだ、不幸な者は 罰を科せられないだろう。 |
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N. 15 Aria Lucia |
Andantino 2/4 G major |
LUCIAルチーア A questo senoもし 【↓】私の 胸に resa mi fia;彼女が 返されるであろうならば; qual figlia mia私の娘として io l'amerò.私は 彼女を 愛そう。 |
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Allegro 4/4 G major |
Saprò corregger私は 改めることができるだろう i miei trasporti:私の爆発を【≒ 私の怒りっぽい性格を】; gli antichi torti昔からの 過ちを riparerò.私は 修理しよう【≒ 直そう】。 A questo senoもし 【↓】私の 胸に resa mi fia;彼女が 返されるであろうならば; qual figlia mia私の娘として io l'amerò.私は 彼女を 愛そう。 (entra nella propria casa per la porta dell'orto)(自分の家に入る 果樹園の扉を通って) |
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[Recitativo dopo l'Aria Lucia] | 4/4 (C major) |
SCENA ⅩⅢ第13場 (Ernesto indi Pippo)(エルネスト、それからピッポ) ERNESTOエルネスト Che razza di villaggio!どんな種類の村だ【≒ 何て 村だ】! Neppure un cane che additarmi possa一匹の犬さえもいない その者は 私に 指し示すことができるであろう la casa di codesto Podestà,その代官の家を、 e quella di Fabrizio... Ah spero beneそして ファブリーツィオのそれ【= 家】を【≒ 私に 代官の家と ファブリーツィオの家を 教えてくれそうな奴は 誰も いやしない】… ああ 私は とても 期待している di ritrovarvi ancoraそこで もう一度 再び会うことを il mio caro Fernando. Oh quanta gioia私の 親愛な フェルナンドに。ああ 何と多くの歓喜を ei proverà vedendo彼は 感じることだろう 見る時 il suo fedele Ernesto, ed ascoltando彼の誠実な友 エルネストを、そして 聞く時 la felice notizia!.. Il ciel ti arrida,幸せな 知らせを【≒ フェルナンドは 誠実な友 エルネストに会って、そして彼に幸せをもたらす知らせを聞いて どれほど喜ぶことだろうか】!… 天が 君【= フェルナンド】に 微笑むように、 o clemente mio Re, che la sua graziaああ 慈悲深い 私の王よ、何と 彼【= フェルナンド】の恩赦を col tuo nome segnasti!君【= 王】は 君の名前を用いて 書き記した 【↑】ことか! Ah finalmente ecco un uomo:ああ やっと そら 人が: (si vede arrivar Pippo dal fondo della piazza)(ピッポが 到着するのが 見える 広場の奥から) egli certo saprà dirmi...彼は 確実に 私に 言うことができるだろう… Amico, una parola:友よ、一言を: ov'è la casa del Podestà?代官の家は どこにあるのか? PIPPOピッポ La casa sua? Guardate:彼の家か? 見なさい: laggiù, dopo il palazzo,あそこに、あの屋敷の後ろに c'è una contrada: entrate:通りがある: 【そこに】入りなさい alla sinistra la prima porta.右手の 一番目の扉だ。 ERNESTOエルネスト E quella di ser Fabrizio?そして ファブリーツィオ氏のそれ【= 家 女性名詞】は? PIPPOピッポ Dopo breve tratto vien essa;短い道のりの後 それ【= 家 女性名詞】が来る; ed è la quarta appunto.だから ちょうど四番目【の家】だ。 ERNESTOエルネスト Grazie.ありがとう。 (parte)(退場する) SCENA ⅩⅣ第14場 (Pippo; quindi Giorgio; e in fine Antonio)(ピッポ; 続いて ジョルジョ; そして 最後に アントーニオ) PIPPOピッポ Ora che nel castagnoクリの木の中に ho riposto il denaro, veder bramo私は 金 かね を 隠した 【↑】からには、私は 見ることを 熱望する quanto mi avanza ancor.私に まだ いくら 残っているのか。 (siede sovra una panchina di sasso presso l'orto di Fabrizio e conta il suo denaro)(石のベンチの上に 腰を下ろす ファブリーツィオの果樹園の傍の そして 彼の金 かね を数える) Son più ricco私は より 金持ちだ di quel che mi credeva...私が 信じていたよりも… Ah questa lira, nuova di zecca,ああ この1リラ貨は、造幣所での新しい【≒ 真新しい】、 me la diè Ninetta un certo giorno;..私に それを ニネッタが 与えた ある日… dunque a parte:だから 別にして【おこう】: (mette a parte la lira e in questo momento compare la gazza sulla porta dell'orto)(1リラ貨を 別にして【≒ 脇に】 置く そして その瞬間 カササギが 急に姿を現す 果樹園の扉の上に) insieme一緒に tu starai colla croce.お前【= 1リラ貨】は 十字架と いるだろう。 Ah brutta diavola,ああ 嫌な悪魔【= カササギ】め、 che fai lì? se ti colgo...お前【= カササギ】は そこで 何をしている? もし 私が お前を 摘み取るならば【≒ もし お前を ひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)】… GIORGIOジョルジョ Con chi l'hai?誰に 怒っているのか? PIPPOピッポ (alzandosi e raccogliendo il denaro)(立ち上がり そして 金 かね を拾い集めて) Con quella gazza infame... Oh! ecco Antonio.あの悪評高いカササギに… ああ! ほら アントーニオだ。 (ad Antonio)(アントーニオに) E ben, che nuove abbiamo?それで、何か知らせを 私たちは持っているのか【≒ 何か知らせは あるのか】? E la Ninetta?...そして ニネッタは?… ANTONIOアントーニオ (piangendo)(泣いて) Aimè! tutto è finito.ああ! すべては 終わった。 PIPPOピッポ Podestà scellerato!悪辣な代官め! (qui, la gazza discende sulla panchina, rapisce la lira messa in disparte, e se ne vola sul campanile)(ここで、カササギがベンチの上に降りて、1リラ貨を強奪する 別に置かれた、そして 鐘楼の上に 飛び去る) GIORGIOジョルジョ Oh guarda,ああ 見なさい、 (additandogli la gazza)(カササギを 指差して) guarda.見なさい。 PIPPOピッポ Briccona! E giustamenteいたずら者め! そうやって 的確に rubarmi la moneta私の 金 かね を 盗むのか che tanto mi premeva.それは 私にとって 大いに 重要である【≒ 私の大事な お金を】。 Ah birba, birba!ああ 悪党め、悪党め! eccola là sul ponte.ほら あそこに 【鐘楼の】足場の上に。 Oh se potessi arrampicarmi,ああ もし 私が よじ登ることができるなら、 forse troverei la mia lira.たぶん 私の 1リラ貨を 見付けるだろうに。 Vo' provarmi.私は 試みたい。 ANTONIOアントーニオ Andiamo insieme.一緒に 行こう。 PIPPOピッポ Gazzaccia maledetta!忌々しい カササギめ! (Pippo e Antonio corrono via)(ピッポとアントーニオは 走り去る) GIORGIOジョルジョ Ah ahà, non correr tanto, che ti aspetta.アハハ、そんなに走るな、それ【= カササギ】は 君を 待っている。 |
Neppure un cane che additarmi possa この場合の cane は 野郎 くらいの意味。 Ah spero bene / di ritrovarvi ancora / il mio caro Fernando. ここでの vi は、人称代名詞ではなく、おそらく 副詞 そこに ≒ 代官所かファブリーツィオの家で という意味だと思われる。 Oh quanta gioia / ei proverà この場合の proverà < provare は (感情を)覚える,感じる。どれほどたくさんの喜びを 彼は 感じることであろうか! という感嘆文に、ジェルンディオに導かれる節が2つ状況を補足している。 Dopo breve tratto vien essa; ここでの tratto は、tattare の過去分詞ではなく、名詞の tratto。様々な意味があるが、ここでは 道のり で採った。 Ah questa lira, nuova di zecca, nuova di zecca 真新しい,ピカピカの me la diè Ninetta un certo giorno;.. diè = diède = dette < dare の直接法遠過去3人称単数形。 se ti colgo... se qlcu. colgo もし ―をひっ捕まえたら (ただではおかないぞ)。 Con chi l'hai? aver[ce]la con qlcu (人)に腹を立てる,怒る |
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N. 16 Finale Ⅱ Ninetta Lucia Pippo Giannetto Fabrizio Podestà Fernando Coro |
Moderato 4/4 c minor |
SCENA ⅩⅤ第15場 (Ninetta in mezzo alla gente d'arme; Contadini, e Giorgio che s'è ritirato in un angolo e ch'esprime il suo dolore)(ニネッタ 武器を持った人々の中央に; 農夫たち、そして ジョルジョ その者は 片隅に 下がっている そして その者は 表している 彼の悲しみを) (Alcuni satelliti fanno riparo alla calca de' Contadini nel fondo; Ninetta in mezzo ad altre genti d'arme discende dalla gradinata della Podesteria, e s'avvia lentamente verso la contrada che gira dietro alla chiesa: essa è preceduta e seguita dagli abitatori del villaggio)(何人かの衛兵たちが 奥の 農夫たちの群衆に対して 防御をしている; ニネッタは 他の武器を持った人々の中央に 代官所の階段から降りて そして 向かう ゆっくりと 通路の方へ それは 曲がる 教会の後ろに: 彼女は 先行されている そして 後を追われている 村の住人によって) CORO合唱 Infelice, sventurata,不幸な人よ、運の悪い女よ、 ti rassegna alla tua sorte:君の運命に 甘んじて従いなさい: no, crudel non è la morteいいや、死は 残酷ではない quando è termine al martir.それが 殉難【≒ 苦悩】の終わりである時には。 |
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Andantino 3/4 C major |
NINETTAニネッタ (soffermandosi davanti alla chiesa)(立ち止まる 教会の前で) Deh tu reggi in tal momentoああ 君【= 次文の 哀れみ深い神】は 支えなさい このような瞬間に il mio cor, pietoso Iddio!私の心を、哀れみ深い神よ! deh proteggi il padre mio,ああ 守りなさい 私の父を、 e ti basti il mio morir!そして 私の死が 君に 十分であるように【≒ 私が死ぬだけで こと足りるように】。 |
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Tempo Ⅰ 4/4 c minor |
(ai satelliti)(衛兵たちに) Or guidatemi alla morte.さあ 私を 死へと 案内しなさい。 Si finisca di soffrir.苦しむことを 終わらせよう。 CORO合唱 (Giorgio col Coro)(ジョルジョ 合唱と共に) Ah farebbe la sua sorteああ 彼女の運命は anche un sasso impietosir!石にも 哀れを催 【↑】させるだろうに! (la Ninetta prosegue il suo cammino, seguitata dal popolo, e ben tosto si toglie agli sguardi degli spettatori. Terminata la funebre marcia, Giorgio attraversa la scena lentamente e costernato)(ニネッタは 続ける 彼女の歩行を、人々に付き従われて、そして すぐに 彼女は 消え去る 観客の視線から。 悲しそうな行進曲が 終わると、ジョルジョが 舞台を横切る ゆっくりと そして 打ちひしがれて) |
Si finisca di soffrir. si + 接続法現在3人称単数形で ―しよう という勧誘の命令(この場合は 自分に対しての)になる。 |
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Allegro 6/8 C major |
SCENA ⅩⅥ第16場 (Giorgio; Pippo ed Antonio nel campanile; e poscia Giannetto, Fabrizio, Lucia, e diversi famigli)(ジョルジョ; ピッポとアントーニオ 鐘楼の中に; そして 続いて ジャンネット、ファブリーツィオ、ルチーア、そして 様々な使用人たち) (sul ponte del campanile, tirando a sè qualche cosa da un buco in cui egli aveva intruso il braccio. Intanto la gazza è volata via)(鐘楼の足場の上で、自分の方へと 引き出して 何かを 穴から その【= 穴の】中に 彼は 腕を 押し込んだ。) PIPPO ED ANTONIOピッポ と アントーニオ Giorgio, Giorgio! oh me felice!ジョルジョよ、ジョルジョよ! ああ 幸せな私! GIORGIOジョルジョ E così, che cosa è stato?それで、何が あったのか? PIPPO ED ANTONIOピッポ と アントーニオ Tutto, tutto ho ritrovato:すべてを、すべてを 私は 見付けた: (mostrandogli la posata)(彼に 提示して 食卓用具を) guarda, avvisa.見なさい、知らせなさい。 Non lasciatela ammazzar!彼女【= ニネッタ】を 殺させるでない! GIORGIOジョルジョ Sei tu pazzo?君は 頭がおかしくなったのか? PIPPO ED ANTONIOピッポ と アントーニオ (vedendo da lungi il convoglio, e gridando a tutta voce)(遠くからの行列を見て、そして叫んで すべての声で【≒ あらん限りの声で】) Olà, fermate:おおい、止まれ: dove andate? cosa fate?君たちは どこに行くのか? 君たちは 何をするのか? Non mi vogliono ascoltar.彼らは 私【の言うこと】に 耳を貸すつもりがない。 Inumani, andrò ben' io...冷酷な者たちめ、それでは 私が 行こう… (Pippo e Antonio rientrano nel campanile)(ピッポとアントーニオは 再び入る 鐘楼の中に) GIORGIOジョルジョ Ti compiango, amico mio:私は 君に 同情する、私の友よ: il cervello se n'è andato.脳は 去ってしまった【≒ 君の脳は 消えて無くなったんだな】。 |
E così, che cosa è stato? E così, (文頭で)それで、 |
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(Allegro) 6/8 E major |
(Pippo e Antonio suonano una campana a tutta forza)(ピッポとアントーニオは 鳴らす 鐘を 全力で) GIORGIOジョルジョ Che fracasso indiavolato!何という 度を越した 激しい音だ! oh che pazzo da legar!ああ 何という縛るべき狂人だ【≒ あんな狂人は 縛り付けねばならぬ】! GIANNETTOジャンネット (uscendo precipitosamente dall'orto)(大急ぎで 出て来て 果樹園から) Che vuol dir?彼は 何を 言いたいのか? LUCIAルチーア (idem, e dietro loro alcuni famigli)(同じように、そして彼らの後ろに 何人かの使用人) Che cosa avvenne?何が 起こったのか? FABRIZIOファブリーツィオ Che cosa avvenne?何が 起こったのか? ANTONIOアントーニオ (ricomparendo sul ponte [del campanile])(再び現れて [鐘楼の]足場の上に) Innocente è la Ninetta.ニネッタは 無実だ。 LUCIA, FABRIZIO E COROルチーア,ファブリーツィオ と 合唱 Innocente!無実だって! ANTONIOアントーニオ Innocentissima!まったくの無実だ! Un cucchiaio, la forchetta,スプーン、フォーク、 una lira, è tutto qua.1リラ貨、全部 ここにある。 Quella gazza maledettaあの 忌々しいカササギが fu la ladra.泥棒だった。 [la scena si anima di popolo][舞台は 活気づく 人々で] LUCIA, GIANNETTO, FABRIZIO E GIORGIOルチーア,ジャンネット,ファブリーツィオ と ジョルジョ Giusto cielo!公正な天よ! Caso eguale non si dà.似たような状況は 起こらなかった 【≒ 今まで こんなことは なかった】 PIPPOピッポ Padrona, spiegate雇い主の女よ、広げなさい il vostro grembiale!あなたの前掛けを! (Pippo getta giù la posata nel grembiale della Lucia)(ピッポは 投げる 下に 食卓用具を ルチーアの前掛けの中に) GIANNETTO E FABRIZIOジャンネット と ファブリーツィオ È desso;それは それ自体だ【≒ まさに これだ】; (l'uno prende subitamente la forchetta, e l'altro il cucchiaio, che mostrano alla Lucia)(一人が 受け取る 急いで フォークを、そして 別の者が スプーンを、それらを 彼らは 提示する ルチーアに) mirate!見なさい! CORO合唱 Il colpo fatale corriamo a impedir.死に至らせる一撃を 阻止しに 急いで向かおう。 PIPPO ED ANTONIOピッポ と アントーニオ Il colpo fatale correte a impedir.死に至らせる一撃を 阻止しに 急いで向かいなさい。 LUCIAルチーア Il colpo fatale correte a impedir.死に至らせる一撃を 阻止しに 急いで向かいなさい。 GIANNETTO E FABRIZIOジャンネット と ファブリーツィオ Il colpo fatale corriamo a impedir.死に至らせる一撃を 阻止しに 急いで向かおう。 (Fabrizio e Giannetto, colla posata, corrono via, e dietro ad essi i famigli. Pippo e Antonio rientrano nel campanile, e suonano di nuovo a martello)(ファブリーツィオとジャンネットは、食卓用具をもって、走り去る、そして 彼らの後ろに 使用人たちが。ピッポとアントーニオは 再び入る 鐘楼の中に、そして 彼らは 鳴らす 【鐘を】 もう一度 金槌で) [il coro esce di corsa][合唱は 走って 出て行く] SCENA ⅩⅦ第17場 (Il Podestà e suddetti, fuorché Giannetto e Fabrizio)(代官と前の場の人たち、ジョルジョとファブリーツィオを除いて) PODESTÀ代官 [accorrendo][駆け付けて] Che scampanare è questo!これは 何の 鐘の連打だ! Che cosa è mai successo?いったい 何が 起こったのか? LUCIAルチーア (correndogli incontro)(彼のところに 駆け寄って) Del mio piacer l'eccesso私の喜びの行き過ぎを non vi saprei spiegar.私は あなたに 説明することができない【≒ あまりの喜びを うまく言えない】。 PODESTÀ代官 Io non capisco niente.私は 何も 理解していない。 LUCIAルチーア La povera Ninetta哀れなニネッタが scoperta era innocente.無実だと 見出された【≒ 無実であることが 明らかになった】。 (a Giorgio ed al Podestà)(ジョルジョに そして 代官に) Andiamola a incontrar.彼女を 出迎えに行こう。 GIORGIOジョルジョ Andiamola a incontrar.彼女を 出迎えに行こう。 PODESTÀ代官 Mi sembra di sognar.私には 夢を見ているように思われる。 (mentre Lucia insieme con Giorgio fa per incamminarsi, s'ode di lontano una scarica di fucili. Pippo ed Antonio sul campanile stanno osservando attentamente verso la campagna)(ルチーアが ジョルジョと一緒に 歩き出そうとする時に、遠くからの 銃の一斉射撃が 聞こえる。ピッポとアントーニオは 鐘楼の上の 見ている 注意深く 農村の方を) s'ode una scarica di fucile銃の一斉射撃が聞こえる LUCIAルチーア Ah! qual rimbombo! Oh Dei!ああ! あの爆音は! ああ 神々よ! (s'abbandona svenuta fra le braccia di Giorgio)(卒倒して ジョルジョの腕の中に 身を委ねる【≒ 倒れて ジョルジョに抱きかかえられる】) È morta, è morta!彼女は 死んだ、彼女は 死んだ! PODESTÀ代官 Qual fremito!何という 震えだ! qual gelo mi piomba sovra il cor!何と 凍り付くような寒さが 私の心臓の上に 突然襲い掛かることか! |
(correndogli incontro) correre incontro a qlcu 人のところに駆け寄る。この場合の incontro は副詞 ―に向かって,―の方に。名詞 出会い ではない。 |
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Tempo Ⅰ 6/8 C major |
PIPPO ED ANTONIOピッポ と アントーニオ [sul campanile osservando verso la campagna][鐘楼の上で 農村の方を じっと見て] Io la vedo. Viene, viene.私は 彼女を 見ている。彼女が 来る、彼女が 来る。 CORO合唱 di dentro内部から【≒ 舞台裏から】 Viva, viva la Ninetta,万歳、ニネッタ万歳、 la sua fede, il suo candor!彼女の誠意に、彼女の潔白に! PODESTÀ代官 Oh che sento!ああ 私は 何を 聞いているのだ! GIORGIOジョルジョ (alla Lucia che s'è riscossa)(ルチーアに その者は 目覚めた【≒ 意識を取り戻した】) Avete inteso?あなたは 聞いたか? CORO合唱 (Alcuni famigli entrando, Antonio e Pippo)(何人かの使用人が入って、アントーニオとピッポ) Viene, viene, non temete.彼女が来る、彼女が来る、心配するでない LUCIAルチーア Dite il vero?君たちは 真実を 言っているのか? CORO合唱 La vedrete.あなたは 彼女を 見るだろう。 PODESTÀ代官 Ma lo sparo?けれども 銃声は? CORO合唱 Fu allegria.それは 喜びだった【≒ あれは 祝砲だった】。 Ecco! ecco!ほら! ほら! PIPPO, ANTONIO E COROピッポ,アントーニオ と 合唱 Ecco!ほら! SCENA ⅩⅧ ED ULTIMA第18場 そして最終場 (I suddetti, Ninetta, Fabrizio, Giannetto, Abitanti, Gente d'arme; e poscia Ernesto con Fernando)(前の場の人たち、ニネッタ、ファブリーツィオ、ジャンネット、住民たち、武器を持った人々; そして 続いて エルネスト フェルナンドを伴って) (La Ninetta è assisa sopra un carro, adornato all'infretta di rami e di fiori, e tratto da alcuni contadini. Giannetto, Fabrizio ed altri contadini le fanno corteggio. Diversi contadinelli si arrampicano qua e là per vedere)(ニネッタは 馬車の上に座っている、【馬車は】急いで飾られた 枝で そして 花で、そして 【馬車は】何人かの農夫たちによって 引っ張られて。ジャンネット、ファブリーツィオと他の農夫たちは 彼女のお供をしている。様々な若い農民たちが あちこちで よじ登っている 【ニネッタを】見るために) LUCIAルチーア Figlia mia!私の娘よ! (correndo incontro alla Ninetta)(ニネッタのところに 駆け寄って) GIANNETTOジャンネット (leggendo ciò che sta scritto in una carta ch'egli consegna al Podestà)(書類に 書かれていることを 読んで) Si rilasci la Ninetta.ニネッタが 釈放されるように。 Questa è mano del Pretor.これは 裁判官の 筆跡だ。 LUCIA, GIANNETTO E FABRIZIOルチーア,ジャンネット と ファブリーツィオ Quanto meno il cor l'aspetta,より少なく 心が そのことを 期待していただけに【≒ あまり期待できなかっただけに】、 sembra il giubilo maggior.歓喜が より大きく 思われる【≒ ますます 喜びが 大きく感じられる】。 PODESTÀ代官 (Quanto costa una vendetta!(何と多く 仕返しが 費用がかかったことか!【≒ 仕返しが 何と 高くついたことか】! di rimorsi ho pieno il cor.)私の心は 後悔で いっぱいだ。) CORO合唱 (Giorgio, Pippo, Antonio col Coro)(ジョルジョ、ピッポ、アントーニオ 合唱と共に) Viva, viva la Ninetta,万歳、ニネッタ万歳、 la sua fede, il suo candor!彼女の誠意に、彼女の潔白に! (Pippo e Antonio discendono dal campanile)(ピッポとアントーニオは 鐘楼から降りる) |
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Andantino 4/4 F major |
NINETTAニネッタ Queste grida di letiziaこの 歓喜の叫び声は danno tregua al mio tormento:私の苦悩に 中断を与えている【≒ 歓喜の声に 私の苦悩は 休息を得ている】: ma il mio cor non è contento;しかし 私の心は 満足していない; ma con voi, miei cari amici,しかし あなたたちと、私の愛する友たちよ、 no, gioir non posso ancor!いいや、私は まだ 喜ぶことはできない! LUCIA, GIANNETTO E FABRIZIOルチーア,ジャンネット と ファブリーツィオ Mia Ninetta, che mai dici?私のニネッタよ、君は いったい 何を 言っているのか? È svanito ogni timor.あらゆる心配は 消え失せた。 FABRIZIOファブリーツィオ Che mai dici?君は いったい 何を 言っているのか? ogni timor.あらゆる心配は。 NINETTAニネッタ No, no!.. Dov'è mio padre?..いいえ、いいえ!… 私の父は どこに いるのか? Nessun risponde: oh Dio!誰も 答えない: ああ 神よ! Vive? che fa?彼は生きているのか? 彼は 何をしているのか? |
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Allegro vivace 4/4 D major |
FERNANDOフェルナンド (comparendo improvvisamente, accompagnato da Ernesto)(突然 現れて、エルネストによって同伴されて) Ben mio, sì vive私の最愛の人よ、そうだ 彼は生きている e a te sen vola;そして 君のところに 彼は 飛んで来る; (abbracciando la figlia)(娘を抱き締めて) sempre con te starà.彼は これからもずっと 君と一緒にいるだろう。 NINETTAニネッタ Ah padre! or sì che tutto oblio:ああ 父よ! そうだ すべてを忘れる今こそ: ah che perfetta è omaiああ やっと 何と完璧なことか la mia felicità!私の幸せは! NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO, FABRIZIO E COROニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンネット,ファブリーツィオ と 合唱 (Giorgio, Antonio col Coro)(ジョルジョ、アントーニオ 合唱と共に) Ah chi provato ha maiああ 誰が 今までに 感じたことか tanta felicità!これほどたくさんの 幸せを! PODESTÀ代官 (accennando Fernando)(フェルナンドを指差して) Ma in che modo fu costuiだが どんな手段で この男は dal suo carcer liberato?牢獄から 解放されたのか? FERNANDOフェルナンド Per un ordine firmato命令によって 署名された dal monarca mio signor.私の支配者である 君主によって【≒ 王様の署名の入った命令によって】。 (Ernesto ne fa testimonianza co' suoi cenni)(エルネストは そのことについて 証言をする 彼の合図で【≒ エルネストは その通りだと 身振りで証言する】) NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO E FABRIZIOニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンネット と ファブリーツィオ Viva il Principe adorato万歳 敬愛する 君主よ che sol regna coll'amor!その者は 愛だけで 統治する。 CORO合唱 (additando il Podestà)(代官を 指し示して) È confuso, strabiliato,彼は 混乱している、驚いている、 e già cambia di color.そして もう 顔色が 変わっている。 PODESTÀ代官 (Son confuso e strabiliato;(私は 混乱している そして 驚いている; di me stesso sento orror.)私は 自分自身に 強い嫌悪を 感じている。) NINETTAニネッタ E il buon Pippo? non lo vedo.それで 善良なピッポは? 私は 彼を 見ていない。 PIPPOピッポ (accorrendo verso la Ninetta, la quale gli fa grande accoglienza; dietro ad esso viene Antonio)(ニネッタのところに 駆け付けて、その者【= ニネッタ】は 彼に 大きな歓待をする【≒ ニネッタは ピッポを 大歓迎する】; 彼の後に従って アントーニオが来る) Cara amica, sono qua.愛する友よ、私は ここにいる。 LUCIAルチーア Mia Ninetta, ecco il tuo sposo.私のニネッタよ、ほらここに 君の花婿が。 (unendo la mano di Ninetta con quella di Giannetto)(ニネッタの片手を ジャンネットのそれ【= 片手】と 結び付けて) NINETTAニネッタ Oh momento avventurato!何という 幸運な瞬間だ! LUCIAルチーア Ma perdona alla Lucia.でも ルチーアを 容赦しなさい。 (Ninetta e Giannetto l'abbracciano)(ニネッタとジャンネットは 彼女を 抱擁する) FABRIZIOファブリーツィオ Brava, brava, moglie mia!いいぞ、いいぞ、私の妻よ! NINETTA E GIANNETTOニネッタとジャンネット Ah mio ben, fra tanto giubiloああ 私の最愛の人よ、これほどたくさんの歓喜の中で sento il cor dal sen balzar.私は 感じている 心臓が 胸から 跳び上がるのを。 LUCIA, PIPPO E FABRIZIOルチーア,ピッポ と ファブリーツィオ Una scena così teneraこれほどに 愛情の篭った光景は fa di gioia lagrimar.喜びで 涙を流させる【≒ これほどに 愛情の篭った光景に 嬉し涙が 零れる】。 PODESTÀ代官 (Una scena così tenera(これほどに 愛情の篭った光景は mi costringe a lagrimar.)私に 無理に 涙を流させる【≒ これほどに 愛情の篭った光景に 私は 涙を 流さずにはいられない】) CORO合唱 (Giorgio col Coro)(ジョルジョ 合唱と共に) Una scena così teneraこれほどに 愛情の篭った光景は fa di gioia lagrimar.喜びで 涙を流させる。 NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO, ANTONIO, FABRIZIO, FERNANDO E COROニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンエット,アントーニオ,ファブリーツィオ,フェルナンド と 合唱 Sì, fa di gioia lagrimar.そうだ、喜びで 涙を流させる【≒ 嬉し涙が 零れる】。 PODESTÀ代官 (sì, mi costringe a lagrimar.)(そうだ、私に 無理に 涙を流させる【≒ 私は 涙を 流さずにはいられない】) |
di me stesso sento orror.) この場合の orrore は 恐怖 というよりは 嫌悪。代官はここに至って強い自己嫌悪に陥ってしまったのである。 |
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Andante grazioso 2/4 G major |
NINETTAニネッタ Ecco cessato il vento,さあ 風は 止んだ、 placato il mare infido:信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 静まった: salvi siam giunti al lido;私たちは 無事に 岸に 着いた; alfin respira il cor.ついに 心は 息をついている【≒ ほっとしている】。 LUCIA, ANTONIO, FABRIZIO E COROルチーア,アントーニオ,ファブリーツィオ と 合唱 In gioia ed in contento歓喜に そして 満足に cangiato è il mio timor.私の 恐れは 変わった。 PODESTÀ代官 (Sordo sussurra il vento,(風は 音を響かせず ささやき【≒ 鈍く ざわめき】、 minaccia il mare infido:信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 威嚇する: tutti son giunti al lido;皆は 岸に 着いた; io son fra l'onde ancor.)私は まだ 波の間にいる。) LUCIA, ANTONIO, FABRIZIO E COROルチーア,アントーニオ,ファブリーツィオ と 合唱 In gioia ed in contento歓喜に そして 満足に cangiato è il mio timor.私の 恐れは 変わった。 PIPPO E GIANNETTOピッポ と ジャンネット Ecco cessato il vento,さあ 風は 止んだ、 placato il mare infido:信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 静まった: salvi siam giunti al lido; sì,私たちは 無事に 岸に 着いた; そうだ、 alfin respira il cor.ついに 心は 息をついている【≒ ほっとしている】。 LUCIA, ANTONIO, FABRIZIO E COROルチーア,アントーニオ,ファブリーツィオ と 合唱 In gioia ed in contento歓喜に そして 満足に cangiato è il mio timor.私の 恐れは 変わった。 FERNANDOフェルナンド Ecco cessato il vento,さあ 風は 止んだ、 placato il mare infido:信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 静まった: salvi siam giunti al lido;私たちは 無事に 岸に 着いた; alfin respira il cor.ついに 心は 息をついている【≒ ほっとしている】。 NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO, FABRIZIO E FERNANDOニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンネット,ファブリーツィオ と フェルナンド Ecco cessato il vento,さあ 風は 止んだ、 placato il mare infido:信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 静まった: PODESTÀ代官 (Sordo sussurra il vento,(風は 音を響かせずに ささやき、 minaccia il mare infido:)信用のおけない海【≒ 突然荒れ狂った海】は 威嚇する:) CORO合唱 In gioia ed in contento歓喜に そして 満足に cangiato è il mio timor.私の 恐れは 変わった。 NINETTA, LUCIA, PIPPO, GIANNETTO, FABRIZIO E FERNANDOニネッタ,ルチーア,ピッポ,ジャンネット,ファブリーツィオ と フェルナンド salvi siam giunti al lido;私たちは 無事に 岸に 着いた; alfin respira il cor.ついに 心は 息をついている【≒ ほっとしている】。 PODESTÀ代官 (tutti son giunti al lido;(皆は 岸に 着いた; io son fra l'onde ancor.)私は まだ 波の間にいる。) |
placato il mare infido: mare infido で いつ荒れるとも分からない海 という意味。これを過去を振り返るかたちで言うと (穏やかだったのに)突然荒れ狂った海 となる。 |
参考資料
La donna del lago / Gioachino Rossini / Critical editon
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Vocal score, published by Schott, Meinz, Germany, about 1821 / IMSLP #107713
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Full score, Garland Publishing, New York and London, 1980, reprint from full score published by Ratti, Cencetti, Roma, Italy, ca 1828
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1990
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1996
Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /
FONIT CETRA CDC 44 8003627044937 |
Fabrizio VingraditoFrancesco Signorbasso LuciaNucci Condòsoprano (mezzosoprano) GiannettoPietro Bottazzotenore NinettaRosetta Pizzosoprano Fernando VillabellaAngelo Romerobasso Gottardo (Podestà)Alberto Rinaldibasso PippoHelga Müllermezzosoprano IsaccoLuigi Pontiggiatenore AntonioBruno Bulgarellitenore GiorgioTito Turturabasso ErnestoAngelo Nosotti Luciano Silvestrifortepiano Ambrosian Opera Chorus John McCarthyMaestro de coro Royal Philharmonic Orchestra Alberto Zedda London 17 - 31 July 1978 |
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