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最新更新 2023年6月26日
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GIOACHINO ROSSINI
LA CENERENTOLA
La Cenerentola ossia La bontà in trionfo
ラ・チェネレントラ もしくは 勝利を収めた善良
2幕の滑稽劇
Dramma giocoso in due atti
初演 1817年1月25日 ローマ ヴァッレ劇場
First performance Rome, Teatro Valle, 25 January 1817
台本 ヤコポ・フェレッティ
Libretto Jacopo Ferretti
原作 ステーファノ・パヴェージ《アガティーナ》のためのフランチェスコ・フィオリーニの台本
Original
作曲
1815年11月から1816年2月にかけて、ロッシーニはローマに滞在しており、この時期に、ヴァッレ劇場の興行主、ピエトロ・カルトーニから、1817/18年の謝肉祭シーズンの新作が打診された。両者は2月29日(ロッシーニの24歳の誕生日)に契約を交わしている。この新作オペラは、謝肉祭シーズンの初日(12月26日)を飾るものになるはずだった。
しかし様々な事情からローマへの新作オペラの制作はずれ込んでしまった。ローマ入りする直前のナポリへの新作は《オテッロ》だったが、その台本が検閲から許可されたのが9月13日、当初の初演予定は10月10日だった。ロッシーニは早い段階で予定通りにローマ入りすることが無理だと判断、劇場に新作をシーズン2番目の演目とするよう要請し、自身は12月3日にローマ入りすることにした。
ところが《オテッロ》が実際に初演されたのは12月4日(フォンド劇場)。ロッシーニのローマ入りが再三延びたことで、興行主カルトーニは、ロッシーニが契約を履行するようナポリの警察当局に請願を出すまでにいたった。ロッシーニがローマに到着したのは12月20日頃のことである。
ところで、秋にロッシーニがカルトーニに宛てた手紙によると、ロッシーニが作曲のため用意していた台本はガエターノ・ロッシ作の《宮廷のラウリーナ》だったという。つまり、ロッシーニが遅れに遅れてローマに入ってから、オペラの題材までもが変更になっている。
これについては《ラ・チェネレントラ》の台本作家であるヤコポ・フェレッティの回想に詳しい。
12月23日に、カルトーニ、ロッシーニ、フェレッティの三人が(おそらく《宮廷のラウリーナ》の)台本をローマの検閲局に提出した。しかし大幅な改編を施さないと許可が下りないと判明。三人が協議した結果、フェレッティが急ぎ新たに台本を書き上げることになった。1817年の謝肉祭シーズンは2月18日までなので、十分な上演回数を稼ぐには初演まで一月もない。
フェレッティは、その日のうちに題材を《ラ・チェネレントラ》に決定し、まずあらすじを書き上げた。フェレッティが元にしたのは、ステーファノ・パヴェージの《アガティーナ》のための、フランチェスコ・フィオリーニの台本だった【注1】。
フェレッティはまず12月25日に第1幕導入をロッシーニに手渡し、26日に第1幕のドン・マニーフィコのカヴァティーナを、27日に第1幕のアンジェリーナとドン・ラミーロの二重唱を、と台本を書き上げていった。台本ができたところからロッシーニが音楽を書く。結果的に、台本には22日間、作曲には24日間がかけられたという。最後に書き上げられたのは第2幕のドン・マニーフィコとダンディーニの二重唱で、初演前日に書き上げられたそうだ。
初演の時には時間不足から、3曲がルカ・アゴリーニという地元の作曲家によって代筆された。第1幕のアリドーロのアリア、第2幕冒頭の合唱、そして第2幕のクロリンダのアリアである。またレチタティーヴォ・セッコは、イタリアオペラの慣習通り、第三者(これもアゴリーニによるだろう)が書いている。序曲は《新聞》の序曲をそのまま更生している。アンジェリーナが歌うアリア・フィナーレも《セヴィリアの理髪師》のアルマヴィーヴァ伯爵の大アリアを手直ししたものである。
完成が初演前日だったので、初演当日の午前中にリハーサルが行われただけでなく、さらに第1幕と第2幕の間にもリハーサルが行われた【注2】。
注1 ロッシーニがパヴェージの《アガティーナ》を見ていた可能性は高い。1813年暮れから1814年の夏まで、ロッシーニはミラノを拠点として活動しており、《アガティーナ》が初演された4月上旬も、ミラノのレ劇場 Teatro Reで《アルジェのイタリア女》を上演、その監修をしていた。
註2 当時のイタリアでのオペラ上演は、幕間にバレエや演劇を上演することが一般的だったので、第1幕と第2幕の間はかなり時間が開いていた。
初演
初演は、1817年1月25日、ローマのヴァッレ劇場で行われた。
ドン・ラミーロジャコモ・グリエルミテノール
Don RamiroGiacomo Guglielmitenore
ダンディーニジュゼッペ・デ・ベニスバリトン
DandiniGiuseppe de Begnisbaritone
ドン・マニーフィコアンドレア・ヴェルニバス
Don MagnificoAndrea Vernibasso
クロリンダカテリーナ・ロッシソプラノ
ClorindaCaterina Rossisoprano
ティスベテレーザ・マリアーニソプラノ
TisbeTeresa Marianisoprano
チェネレントラジェルトルーデ・リゲッティ・ジョルジコントラルト
CenerentolaGeltrude Righetti (Giorgi)contralto
アリドーロゼノービオ・ヴィタレッリバス
AlidoroZenobio Vitarellibasso
コンサートマスターが実質的な指揮者で、ジョヴァンニ・ランドーニ Giovanni Landoni。ロッシーニはマエストロ・アル・チェンバロ(歌唱指導)を務めた。
チェネレントラを歌ったジェルトルーデ・リゲッティ・ジョルジ(1793―1862 ジョルジは1814年に結婚した夫ルイージ・ジョルジ Luigi Giorgiの姓)は、1810年代後半に活躍したコントラルト。彼女は何といっても1816年2月20日にローマで初演された《セヴィリアの理髪師》でロジーナを歌ったことで名高い。その11か月後に同じローマで《ラ・チェネレントラ》初演のチェネレントラを歌った。彼女がコロラトゥーラの技術に長けていたことはロジーナとチェネレントラの音楽から十分理解しうる。大変優れた歌手だったが、1822年に(つまり30歳を前に)引退。
ジャコモ・グリエルミ(1782―?)は、トスカーナの地中海岸の町マッサ出身のテノール。父は18世紀後半に活躍した作曲家ピエトロ・アレッサンドロ・グリエルミ(1728―1804)。兄も作曲家として知られる音楽一家の出だった。ただジャコモに関しては、《ラ・チェネレントラ》初演でドン・ラミーロを歌ったことの他にはあまり目立った活躍は見られない。それでも彼のために書かれたラミーロのアリア1曲でも、グリエルミの高い力量は窺える。
ジュゼッペ・デ・ベニス(1793―1849)は、エミーリア=ロマーニャのルーゴ生まれのバス。1813年にデビュー、1840年代まで活躍したが、1819年以降はパリ、ロンドンなど国際的活動に転じ、最終的にニューヨークに渡ってここで亡くなっている。ロッシーニのオペラの初演で歌ったのは《ラ・チェネレントラ》だけだが、 それでもダンディーニだけでも彼の名は後世まで伝わるべきものだ。ロッシーニからの信頼は厚く、1818年6月10日、ロッシーニの故郷ペーザロに新しい劇場、ヌォーヴォ劇場(現在のロッシーニ劇場)が建てられた時、こけら落とし公演の《泥棒かささぎ》にはデ・ベニスは当時の妻のジュゼッピーナ・ロンツィ・デ・ベニス 1800―1853 と共に公演を切り盛りした。ちなみにロッシーニの父ジュゼッペがルーゴの生まれで、ロッシーニ一家は1802年5月から1804年初頭までルーゴで暮らしていたのだが、1歳違いのデ・ベニスもルーゴ生まれで、二人は子どもの頃に良く知っていた可能性がある。
アンドレア・ヴェルニ(1770頃-1820)は、当時のベテランのバス。ミラノ、ナポリ、ローマと幅広く活躍した。《セヴィリアの理髪師》のボローニャ初演(1816年8月10日、コンタヴァッリ劇場)でフィガロを歌い、成功に導いたことで知られている。また彼は《ラ・チェネレントラ》の台本の原作であるステーファノ・パヴェージのアガティーナ(1814年春 ミラノ スカラ座)でもモンテフィアスコーネ男爵を歌っていた。
ゼノービオ・ヴィタレッリ(1780―?)はローマを拠点に活動したバス。1816年2月20日の《セヴィリアの理髪師》初演でのバジーリオとして知られており、1年足らずでロッシーニのオペラブッファの傑作2作の初演に加わった。
やっとのことで漕ぎ着けた初演だったが、初日はかろうじて失敗にならなかったという程度だった。作品の完成が初日の前日という状況では、練習不足はいかんともし難かったろう。しかし、すぐに好評に転じ、新聞評も観客の熱狂を伝えている。その後、イタリア各地で数多くの上演があったことは言うまでもない。イタリアの外でも広く上演され、1820年代のうちに新大陸にも到達した。《ラ・チェネレントラ》は、《セヴィリアの理髪師》にも負けぬ人気作になったのだ。
アリドーロのアリアの差替え
初演から4年近く経った1820/1821年のカーニヴァルシーズン、ローマのアポッロ劇場で《ラ・チェネレントラ》が上演されることになった。初日は1820年12月26日。
ロッシーニは、同じ劇場で初演される新作オペラ(これは《マティルデ・ディ・シャブラン》になる。2月24日初演)のために1820年12月15日頃にローマ入りする。
この時《ラ・チェネレントラ》のアリドーロ役、ジョアキーノ・モンカーダ のために、ロッシーニは初演時にアゴリーニが代筆したアリドーロのアリア(N. 6)を外し、新たに自分で書いた曲に差し替えた(N. 6a)。新しいアリアの歌詞はフェレッティ本人が書いた。
この新たなシェーナとアリア Sì. Tutto cangierà. / Là del ciel nell'arcano profondo はたいへんに充実した音楽で、脇役だったアリドーロの存在感を一気に高めている。しかし難易度が非常に高いこともあり、19世紀や20世紀半ばまでの上演では採用されていない(アリドーロのアリアそのものがカットされることも含めて)ことが多かった。今日の上演では、ほぼ例外なくこの新たなシェーナとアリアが採用されている。
なおジョアキーノ・モンカーダについては、この至難のアリアを歌いこなせるだけの力量があったのは間違いないだろうが、他にオペラ史にはあまり登場せず、詳しいことは分からない。また前述の2月24日に同劇場で初演された《マティルデ・ディ・シャブラン》でライモンド・ロペツを歌った カルロ・モンカーダ Carlo Moncada との関係も分からない。
各都市への広まり
《ラ・チェネレントラ》は初演後、イタリアの諸都市はもちろん、欧州から新大陸の各都市へと急速に広まった。すべてを挙げると膨大な量になるので、ごく一部のみ記す。
1818年4月18日 バルセロナ サンタ・クルス劇場 Teatro de la Santa Cruz。イタリアの外における初の上演。
1818年8月30日 ミュンヘン 王立劇場。
1819年 リスボン サン・カルロス王立劇場。
1820年8月29日 ウィーン アン・デア・ウィーン劇場。
1821年10月 ボローニャ市立劇場。
1820年1月8日 ロンドン 国王劇場。英国初演。
1820年9月13日 ブラジル サン・ジョアン王立劇場 Real Teatro de São João。おそらく新大陸初演。
1822年1月8日 パリ イタリア劇場。フランス初演と思われる。
1822年4月23日 マドリッド 王子劇場 Teatro del Principe。
1822年11月27日 ドレスデン モレッティ劇場。
1822年 ウィーン ケルントナートール劇場。4月から7月にかけてケルントナートール劇場で催された一連のロッシーニのオペラの公演に含まれているはずだが、日付が分かっていない。
1823年 シュトゥットガルト。
1825年7月14日 ヴェネツィア フェニーチェ劇場。
1825年10月20日 ベルリン。
復活
《ラ・チェネレントラ》はオペラブッファとしては異例の長命で、初演から半世紀が経ってもまだ細々と上演があったようである。しかし19世紀後半にメッゾソプラノがドラマティックな歌い方に変わり、装飾歌唱を捌けるメッゾソプラノが払底して上演が途絶えたと推測される。
20世紀における《ラ・チェネレントラ》の蘇演は、不明な点があるものの、1920年に生誕128年を祝って(つまり2月29日にということだろう)行われたペーザロでの上演のようである。チェネレントラはメキシコ生まれのコントラルト、ファンニ・アニトゥーア Fanny Anitua 1887―1968。ラミーロはドメニコ・ランザート Domenico Ranzato。ダンディーニはエミーリオ・ギラルディーニ Emilio Ghirardini 1885 - 1965。マニーフィコはガエターノ・アッゾリーニ Gaetano Azzolini 1876 - 1928。指揮は当時ペーザロのロッシーニ音楽院の学長だった作曲家アミリカーレ・ザネッラ Amilcare Zanella1873 - 1949。
彼らはそのまま一座となって諸都市を巡って公演を行ったようで、3月9日にローマのアルジェンティーナ劇場で、さらに3月30日にレッジョ・エミーリアで《ラ・チェネレントラ》が上演されたという情報がある。後者では全役の歌手が分かっている。クロリンダはルイーザ・フルロッティ Luisa Furlotti。ティスベはノルマ・マッゾレーニ Norma Mazzoleni。アリドーロはジュゼッペ・マッティオーリ Giuseppe Mattioli。
これに続いて、翌1921年から、バルセロナ出身の高名なメッゾソプラノ、コンチータ・スペルヴィア Conchita Supervia 1895―1936 がチェネレントラを歌った公演が始まった。1921年11月11日、ボローニャ市立劇場での上演が記録から確認できる。スペルヴィアは、既に《セヴィリアの理髪師》のロジーナ(当時はコロラトゥーラ・ソプラノによって歌われるのが普通だった)で評判を取っていた。ラミーロはフェルディナンド・チニセッリ Ferdinando Ciniselli 1893―1954。ダンディーニはエルネスト・バディーニ Ernesto Badini 1876―1937。アリドーロはルイージ・ボルパーニ Luigi Bolpagni。
この4人は1921/1922年シーズンのトリノ・レージョ劇場での上演にも参加している。開幕公演のヴェルディ《アイーダ》に続くシーズン2番目の演目だったので、1922年1月あるいは2月と思われる。
さらに彼らは他の都市にも《ラ・チェネレントラ》の上演で周っていたと思われる。未確認だが1921年9月にラヴェンナのアリギエーリ劇場で《ラ・チェネレントラ》の上演があり、ラミーロがチニセッリだったとする情報がある。あるいはこれもスぺルヴィアたちによる上演だったかもしれない。
ペローの『サンドリヨン』からフェレッティの《ラ・チェネレントラ》へ
《ラ・チェネレントラ》の原作を遡ると、有名なシャルル・ペロー 1628―1703 の『サンドリヨン』に辿り着く。ただしこれは直接の原作ではない。前述のように、フェレッティは《ラ・チェネレントラ》の台本製作にあたり、パヴェージの《アガティーナ》の台本を下敷きにしている。フェレッティはここから多くのアイデアを流用、借用しているのは事実で、そのため剽窃者呼ばわりされることすらあるが、しかし両者を比べると実際にはフェレッティの台本には多くのオリジナリティがあることが分かる。
『サンドリヨン』からロッシーニの《ラ・チェネレントラ》へ至るまでの作品の流れは、概ね次のようなものだ。
a. シャルル・ペロー:『サンドリヨン』(1697年出版)
b. ニコロ・イズアール 1775―1818 《サンドリヨン》:オペラ=フェリ(夢幻オペラ)、3幕。台本はシャルル・ギヨーム・エティエンヌ。1810年2月22日、パリ、オペラコミーク劇場で初演。これは爆発的にヒットした作品で、パリを中心にかなりの上演があった。
c.ステーファノ・パヴェージ(1779-1850 )《アガティーナ》:オペラ・セミセリア、2幕。台本はフランチェスコ・フィオリーニ。1814年4月10日、ミラノ、スカラ座で初演。
d. ロッシーニ《ラ・チェネレントラ》、2幕、ドランマ・ジョコーソ。1817年1月25日、ローマ、ヴァッレ劇場で初演。
《サンドリヨン》、《アガティーナ》、《ラ・チェネレントラ》の3つのオペラには共通している要素が多い。いずれの作品でも、ペローの童話での仙女と意地悪な継母は存在せず、カボチャの馬車や夜中の12時になると元の姿に戻るといった魔法の要素も後退している。登場人物名も多く共通している。イズアールの《サンドリヨン》で残っていたガラスの靴は、イタリアに入った段階で消え去った【注】。
こうした共通性にもかかわらず、フェレッティの《ラ・チェネレントラ》の台本は、《サンドリヨン》や《アガティーナ》とは性格がかなり異なっている。つまり、フェレッティは《ラ・チェネレントラ》で感傷的な要素を減らし、ブッファの面を強化している。
例えば、《サンドリヨン》と《アガティーナ》の第1幕フィナーレは、ヒロインが舞踏会に連れて行ってもらえず涙する場面である。フェレッティは、この場面を第1幕の中央に早め、第1幕フィナーレをチェネレントラが謎の婦人として宮廷に登場する場面にしている。こうすることによってこれは「事件が発展し混乱に至る」というオペラブッファの第1幕の構成を生かしている。
魔法がお伽噺の代名詞的存在だとすれば、フェレッティがブッファ化を進めるに当たり、魔法の要素を一掃したのは当然だろう。フェレッティは、アリドーロから魔法の力を全て取り去った。さらに、王子に寄り添って導く師としての存在も後退させた。これによってアリドーロは、あくまで背後で成り行きを操る人物になった糸を引く策謀の人物にしている。その代わりに前面に引っ張り出されたのが、偽王子ダンディーニだ。これによって、王子との二枚目・三枚目の対比をハッキリ打ち出すことに成功している。
《アガティーナ》から直接アイデアを借用した部分についても、ほとんどの場合、フェレッティはずっと豪快に笑いを取りにいっている。ダンディーニが男爵に正体を明かす場面、男爵の第1幕のカヴァティーナ〈私の娘たちよ〉の夢解釈、第1幕フィナーレの中にある酒蔵番就任の歌、いずれもフェレッティの手によってずっと豊かなものにされた。
一方でフェレッティは笑いばかり
ところで、王子ドン・ラミーロの性格付けも、フェレッティの台本の特色である。彼は、お伽噺に出てくるような優美で心優しい王子様というよりは、もっと気位の高い貴公子のイメージになっている。ダンディーニとのやり取りでは時に居丈高ですらある。おそらくフェレッティは、ドン・ラミーロもやはりチェネレントラの「善良」によって心を解放される存在として見ているのだろう。第2幕の幕切れで合唱がチェネレントラを「神のよう」、「玉座ですら小さい」と讃えていることからも分かるように、フェレッティは、チェネレントラを為政者をも越えた存在に据えようとしており、それによって、《ラ・チェネレントラ》の副題である「善良の勝利 La bonta in trionfo」を明確にさせているのだ。
註 靴が脱げるエピソードがイタリアオペラで用いられないのは、イタリアでは、舞台で靴を脱ぐのは、はしたない行為と考えられていたからだ。ヨーロッパではかつて靴下は下着とみなされていた。リゲッティ・ジョルジもこの件について、品位の問題という証言を残している。
音楽
《ラ・チェネレントラ》の音楽は、代筆曲を除けば、すべてが素晴らしく、どれもがロッシーニのオペラブッファの最高峰と言ってよいものばかりだ。フェレッティの素晴らしく上質な台本(滑稽なだけでなく、知的であり、かつ背景に思想が広がっている)にロッシーニが刺激を受けて、天才が頭脳をフル回転させて書き上げた興奮に満ちている。ロッシーニのオペラでもこれほど勢いを感じさせる作品は他にない。
序曲は、前述の通り《新聞》の序曲をそのまま転用している。提示部のコデッタ(小結尾)の音楽(いわゆるロッシーニクレッシェンドを成す箇所)は、第1幕フィナーレのストレッタに利用され、序曲と本体の関連性を作っている。
第1番 導入は、短い場面を次々に切り替えるフェレッティの台本に、ロッシーニが
君主をも超越した 神のごとき善良 の勝利
ロッシーニの《ラ・チェネレントラ》はしばしば『童話シンデレラのオペラ』と説明される。この傑作をとっつきやすくするためには仕方がないことではあるのだが、しかしそうすることによってせっせと誤解の種を蒔いていることも間違いない。
実際ロッシーニの《ラ・チェネレントラ》はここ半世紀ほどで人気が著しく上昇し頻繁に上演される人気作になってはいるものの、しかし作品の本来の姿よりもずっと童話寄りに理解され続けている。1950年、ペローのサンドリヨンをさらに大衆化させたディズニー映画シンデレラが公開され、絶大な人気を得たことから、世界的にシンデレラ観が固定された影響も大きいだろう。
だがロッシーニの《ラ・チェネレントラ》の性格は、ペローの童話やそれを基にしたディズニーの映画とは、真逆に近いほど大きく異なる。それは、義父か義母か、家庭教師か魔法使いのおばあさんか、あるいはかぼちゃの馬車やガラスの靴が用いられない、といった表面上の違いに留まらない。作品の根本の性格が違っている。
17世紀のフランスの作家シャルル・ペロー 1628―1703 がサンドリヨンを発表したのは1697年発刊の『過去の物語や短編物語』の中でのこと。ペローはルイ14世時代のフランス人で、1671年にはアカデミー・フランセーズの会員になっている。絶対君主制絶頂期の文化人ペローが、心優しい君主が哀れな娘を救ってあげる、という物語を書くのは当然のことだった。
ロッシーニの《ラ・チェネレントラ》はそれから120年後の作品。しかもただの120年ではなく、フランス革命と続くナポレオン旋風のあった120年だった。ナポレオンがセントヘレナ島で幽閉の身になったのは1815年10月、《ラ・チェネレントラ》初演の僅か1年3か月前のこと。
《ラ・チェネレントラ》の台本作家ヤコポ・フェレッティとロッシーニには、全能とすら言える立派な君主が虐げられた善良な娘を救う、というペローの作り上げた価値観に共感が持てなかったことは明らかだ。実際、フェレッティとロッシーニが描く王子ラミーロは、童話や映画での王子と比べて、正義感の強い青年だが、しかし若い未熟さゆえあちこちで君主的な尊大の芽を見せてもいる。
王子ラミーロの未熟さは、たとえば第2幕最後のアリア・フィナーレのシェーナに見られる。彼はクロリンダとティスベの姉妹を見つけると、苦々しそうにこう言う。
Quelle orgogliose...
あの 高慢な女たちは…
皆まで言わずとも、彼は彼女たちに何らかの罰を下したかったのだろう。しかしそれに対してチェネレントラは、王子を制し、昔のことは忘れる、と前置きしてこう言う。
Sul Trono io salgo; e voglio
starvi maggior del Trono,
玉座の上に 私は上る; そして 私は望んでいる
そこで 玉座よりも 偉大になることを、
この発言は、この作品の副題である 勝利を収めた善良 La bonta in trionfo を明確にするものだ。善良 la bonta がチェネレントラを指すことは疑いない。ではチェネレントラは何に勝利したのだろうか。
卑劣な男爵と意地悪な姉妹に、とばかり受け止められがちだが、それだけではない。
アリア・フィナーレ Nacqui all'affanno, e al pianto. で、チェネレントラが自身に起きた奇跡を物語る。テンポ・ディ・メッゾ(中間部)に入ると、彼女はすぐに男爵と姉妹に声を掛け、涙を拭いなさいと言いながら彼らを抱擁する。
Figlia, Sorella, Amica,
tutto trovate in me.
娘を、妹を、友を
すべて 君たちは 私に 見付けている。
娘や妹というだけでなく、友 Amica と呼びかけているところにフェレッティの意図が見える。
男爵と姉妹に合唱が加わって、チェネレントラをこう讃える。
è un Nume agli occhi miei.
彼女は 私の両目には 神だ。
Degna del Tron tu sei,
ma e poco un Trono a te.
君は 玉座に相応しい、
それどころか 君には 玉座は 不十分だ。
チェネレントラは君主をも超えた神である と言っている。しかもロッシーニはこのうちの è un Nume だけを抜き出して印象的に繰り返して強調している。
どうやら真の勝利は、チェネレントラが王子に、人を許すという寛容さを教えることなのだろう。言い換えれば《ラ・チェネレントラ》において、チェネレントラは君主をも解き放つ存在なのだ。
考えてみれば《ラ・チェネレントラ》はローマで初演されたローマ向けの作品である。ローマには世俗の王はいない。そしてローマはたびたび世俗の君主に脅かされてきた。1817年当時の教皇ピウス7世は、ナポレオンという強大な世俗の君主と、時に対立し、時に融和し、対処に苦労した人である。
ヴァッレ劇場のような軽めの演目を主とした劇場で喜劇に政治性を色濃く盛り込むことあまり考えられないが、それでも 君主をも超越した神のごとき善良の勝利 という思想は、世俗の君主のいないローマらしいものではないだろうか。そしてこれがあるからこそ、《ラ・チェネレントラ》は単に良くできた面白い喜劇という以上の深みを持っている。
にもかかわらず、先述の通り、《ラ・チェネレントラ》の上演では多くの場合、童話や映画のシンデレラ観に引っ張られれる傾向ある。それは結局、観客からすれば馴染みのある童話や映画に近い方が気軽に楽しめるからなのかもしれない。だがフェレッティとロッシーニの意図がしっかり組まれた上演が果たされた時には、シンデレラのオペラという予想を遥かに超えた手応えのある感動と充実感を味わえるはずだ。
対訳付き音楽設計図
注意
このページでは、曲の配置はクリティカルエディション総譜に従っている。つまり、第1幕のアリドーロのアリア(とそれに先立つレチタティーヴォは)、初演時の代筆されたもの(N. 6)である。後にロッシーニ自身が書いた差し替えアリア(N. 6a)は補遺として扱われている。
近年の上演ではこのアリドーロのアリアは、ほぼ例外なくロッシーニ自身が書いたアリア(N. 6a)に差し替えられている。上演の実態に即した状態の音楽設計図はこちらを用いるように。
登場人物
ドン・ラミーロサレルノの王子テノール
ダンディーニ彼の従者バリトン
ドン・マニーフィコモンテ・フィアスコーネ男爵、姉妹の父バス
ソプラノ
クロリンダソプラノ
ティスベメッゾソプラノ
アンジェリーナ、
チェネレントラと呼ばれるドン・マニーフィコの継娘メッゾソプラノ
アリドーロ哲学者、ドン・ラミーロの師バス
日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
台本の詩句はクリティカルエディション総譜に記載されている状態に合わせてある。湖の女では、ロッシーニは台本をかなり変えており、したがって初演時やその後の印刷台本、それを基にしたインターネット上の台本とはかなりの相違がある。
Sinfonia | Maestoso 4/4 E-flat major |
序奏付きの展開部を欠いたソナタ形式。 4か月前にナポリで初演された《新聞》の序曲をそのまま更生している。 提示部のコデッタ(小結尾)の音楽は第1幕フィナーレのストレッタ Vivace でも用いられている。 |
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Allegro vivace 2/4 E-flat major |
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(Allegro vivadce) 2/4 B major |
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(Allegro vivace) 2/4 E-flat major |
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ATTO PRIMO | |||
N. 1 Introduzione Clorinda Tisbe Cenerentola Alidoro Coro |
Allegro con brio 4/4 G major |
SCENA PRIMA第1場 (Antica Sala terrena nel Castello del Barone, con cinque porte, a destra camino, tavolino con specchio, cestella con fiori, e sedie)男爵の館の 地面と同じ高さの【≒ 1階にある】古臭い広間、5つの扉を伴っている、右に暖炉、鏡のある小テーブル【≒ 鏡台】、花のある小かご、そして椅子) (Clorinda provando uno sciassé; Tisbe acconciando un fiore ora alla fronte ora al petto; Cenerentola soffiando con un manticetto al camino per far bollire una cuccuma di caffè; indi Alidoro da povero; poi seguaci di Ramiro)(クロリンダ シャッセを練習しながら; ティスベ 一輪の花を飾りながら 時には額に 時には胸に; チェネレントラ ふいごで暖炉に空気を送りながら コーヒーのコーヒー沸かしを沸かさせるために; その後に アリドーロ 物乞いのような【≒ 物乞いに変装した】; それからラミーロの従者たち) CLORINDAクロリンダ No no no no: non v'è, non v'èいいえ いいえ いいえ いいえ: いない、いない chi trinciar sappia cosìその者は 刻むことができる これほどに leggerissimo sciassé.この上なく軽やかなシャッセを。 TISBEティスベ Sì sì sì sì: va bene lì.そうだ そうだ そうだ そうだ; ここで良い。 Meglio lì; no meglio qui.ここの方が良い;いいや こっちの方が良い。 Risaltar di più mi fa.それは 私を もっと目立たさせる。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ A quest'arte, a tal beltàこの術 すべ に、こうした美しさに sdrucciolare ognun dovrà.誰もが 陥る【≒ 嵌る】に違いない。 |
leggerissimo sciassé. sciassé 正しいフランス語では chassez。バレエの基本のステップの一つ。詳しくは動画検索を。 |
Andantino 6/8 d minor |
CENERENTOLAチェネレントラ (con tuono flemmatico)(冷淡な口調で) Una volta c'era un Re,その昔 一人の王がいた、 che a star solo s'annoiò:その者は 独り身でいることに うんざりしていた: cerca, cerca, ritrovò;彼は 探し求めて、探し求めて、見つけた; ma il volean sposare in tre.だが 3人の彼女たちが 彼と結婚することを望んだ。 Cosa fa?彼は どうするのだろうか? Sprezza il fasto, e la beltà,彼は 豪奢を撥ね付けて、そして美しさを【撥ね付けて】、 e alla fin scelse per séそして 最後には 彼は 自分のために 選んだ l'innocenza, e la bontà,純真を、そして善良を【≒ 純真で善良な娘を】。 la la la làララララ li li li lìリリリリ la la la là.ララララ |
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Primo Tempo 4/4 d minor |
TISBE E CLORINDAティスベとクロリンダ Cenerentola finiscilaチェネレントラ 止めなさい con la solita canzone.いつもの歌について。 CENERENTOLAチェネレントラ Presso al fuoco in un cantone部屋の隅の 火【≒ 竈 かまど】の傍で【ならば】 via lasciatemi cantar.さあ 私を歌わせておきなさい。 |
♭1つのニ短調で書かれているが、臨時記号が多用されて形式的なものになっている。 Cenerentola finiscila finire の命令形 + la で 止めろ,いいかげんにしろ という決まり文句。 |
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Come Prima [Andantino] 6/8 d minor |
Una volta c'era un Re,その昔 一人の王がいた、 una volta....その昔… CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ E due, e tre.そして 二つ【≒ 二昔も】、そして三つ【≒ 三昔も】。 CLORINDAクロリンダ La finisci? sì o no?君は 止めるのか? はい か いいえ か? CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Se non taci, ti darò.もし 君が黙らないのならば、私は 君に与えよう【≒ 君を殴ってやる】。 CENERENTOLAチェネレントラ Una volta...その昔… (s'ode picchiare)(【扉を】叩くのが聞こえる) CLORINDA, TISBE E CENERENTOLAクロリンダ、ティスベとチェネレントラ Chi sarà?それは 誰だろうか? (Cenerentola apre, ed entra Alidoro da povero)(チェネレントラは【扉を】開ける、すると物乞いに扮したアリドーロが入る) |
E due, e tre. その昔 Una volta が 一度 という意味なので、それに引っかけて 二度、三度 と馬鹿にして言っている。 |
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Moderato 4/4 F major |
ALIDOROアリドーロ Un tantin di carità.少しの施しを。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Accattoni! Via di qua.物乞いめ! ここから出て行け。 CENERENTOLAチェネレントラ Zitto, zitto: su prendete黙って、黙って: さあ 取りなさい (versa una tazza di caffè, e lo dà con un pane ad Alidoro coprendolo dalle sorelle)(カップ1杯のコーヒーを注ぐ、そしてそれ【= コーヒー】を パン一切れと共に アリドーロに与える 彼を姉妹たちから覆いながら【≒ 匿いながら】) questo po' di colazione.これは 少しの朝食だ。 ALIDOROアリドーロ Forse il cielo il guiderdoneおそらく 天が 謝礼を pria di notte vi darà.夜の前に あなたに与えるだろう。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (pavoneggiandosi)(自惚れながら) Risvegliar dolce passione甘い情熱を掻き立てることを più di me nessuna sa.誰もできない 私よりも もっとたくさん。 CENERENTOLAチェネレントラ Zitto, zitto: su prendete黙って、黙って: さあ 取りなさい questo po' di colazione.これは 少しの朝食だ。 Fate presto per pietà.早くしなさい 【≒ 急ぎなさい】 後生だから。 Ah non reggo alla passione,ああ 私は 強い感情に持ちこたえない【≒ あなたに同情せずにはいられない】、 che crudel fatalità!なんという残酷な運命なことか! CLORINDAクロリンダ (volgendosi ad osservare Alidoro)(アリドーロを監視しようと身を向ける) Ma che vedo! Ancora lì!しかし 私は何を見ているのだ! まだ そこに! TISBEティスベ Anche un pane? Anche il caffè?パンも? コーヒーも? CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (scagliandosi contro Cenerentola)(チェネレントラに対して 飛び掛かりながら) Prendi, prendi, questo a te.取りなさい、取りなさい、これは君に【≒ 喰らえ、喰らえ、これでもか】。 CENERENTOLAチェネレントラ Ah! soccorso chi mi dà!ああ! 誰が 私に 助けを与えるのだ! ALIDOROアリドーロ Vi fermate per pietà!止めなさい 後生だから! (frapponendosi inutilmente)(無益に介入しながら【≒ チェネレントラと姉妹たちの間に入ろうとするが無駄に終わる】) |
Ah non reggo alla passione, passione は、良い場合であれ(情熱 など)悪い場合であれ(苦悩 など)、心が何らかの強い感情にある状態を指す言葉である。ここでは compassione 同情,哀れみ の意味で用いられている。 |
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Allegro con brio 3/4 G major |
(si picchia fortemente, Cenerentola corre ad aprire, ed entrano i Cavalieri)(【扉を】強くノックする、チェネレントラは開けに駆けつける、そして騎士たちが入る) CORO合唱 O figlie amabili di Don magnifico,ああ ドン・マニーフィコの かわいらしい娘たちよ、 Ramiro il Principe or or verrà.王子ラミーロが すぐに来るだろう。 Al suo palagio vi condurrà.彼は 彼の館に あなた方を連れていくだろう。 Si canterà, si danzerà:歌うだろう、踊るだろう: poi la bellissima fra l'altre femmineそれから 他の女性たちの中で 最も美しい女が sposa carissima per lui sarà.彼にとっての 最愛の妻になるだろう。 CLORINDAクロリンダ Ma dunque il Principe?さて それで 王子は? CORO合唱 Or or verrà.彼は すぐに 来るだろう CLORINDA, TISBE E CENERENTOLAクロリンダ、ティスベとチェネレントラ E la bellissima?それで 最も美しい女が? CORO合唱 Si sceglierà.選ばれるだろう。 |
CORO クリティカルエディション総譜では単に CORO 合唱 となっているだけだが、ト書きにあるようにここに来ているのはi Cavalieri 騎士たち で、つまり王子の従者でも高位の者たちである。 |
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Stretta dell'Introduzione Allegro 2/2 G major |
TISBE E CLORINDAティスベとクロリンダ Cenerentola vien qua.チェネレントラよ ここに来なさい。 Le mie scarpe, il mio bonné.私の靴を、私のボネ【= ボンネット】を Cenerentola vien qua.チェネレントラよ ここに来なさい。 Le mie penne, il mio collié.私の羽根【飾り】を、私の首飾りを。 CENERENTOLAチェネレントラ Cenerentola vien qua.チェネレントラよ ここに来なさい。 Cenerentola va là.チェネレントラよ そこに行きなさい。 Cenerentola va su.チェネレントラよ 上に行きなさい。 Cenerentola vien giù.チェネレントラよ 下に行きなさい。 Questo è proprio uno strapazzo!これは まさに 酷使だ! mi volete far crepar?彼女たちは 私を 裂けさせるつもりなのか【≒ 二つに引き裂くつもりなのか】? Chi alla festa, chi al sollazzo,祝宴に【行く】者、遊行に【行く】者、 ed io resto qui a soffiar.そして 私は 【ふいごで暖炉に】空気を送るために ここに留まる。 ALIDOROアリドーロ Nel cervello una fucina脳の中の鍛冶場が sta le pazze a martellar.頭のおかしい女たちを鎚で打っている【≒ 姉妹たちの頭の中にある鍛冶場では 頭のおかしい姉妹たちを鉄槌が打ち鍛えている ≒ 姉妹たちは 頭の中で 狂気を増大させている 】。 Ma già pronta è la rovina.しかし 既に破滅は準備できている。 Voglio ridere a schiattar.私は 爆発するように笑いたい。 TISBE E CLORINDAティスベとクロリンダ Nel cervello ho una fucina;私は 頭の中に 鍛冶場を持っている【≒ 私の頭の中には 鍛冶場がある】; son più bella, e vo' trionfar.私が一番美しく、そして私は勝利したい。 A un sorriso, a un'occhiatina微笑みに、軽い一瞥に Don Ramiro ha da cascar.ドン・ラミーロは落ちるはずだ【≒ 虜になるに違いない】。 CORO合唱 Già nel capo una fucina既に 頭の中の鍛冶場が sta le donne a martellar;婦人たちを 鎚で打っている。 il cimento si avvicina,試練が近づいている、 il gran punto di trionfar.勝利の素晴らしい瞬間が【近づいている】。 |
il mio bonné. bonné は、正しいフランス語では bonnet ボネ(帽子の一種)。下記も参考に。 il mio collié. collié は、正しいフランス語では collier 首飾り。フェレッティはわざと間違ったフランス語を姉妹に使わせていると思われる。 |
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[Recitativo] Dopo l'Introduzione |
CLORINDAクロリンダ (dando una moneta a Cenerentola, onde la dia ai seguaci del Principe)(チェネレントラに1枚の貨幣を与えながら、それを 彼女が 王子の従者たちに与えるであろうために) Date lor mezzo scudo. Grazie. Ai cenni彼らに 半スクードを与えなさい。ありがとう。 del Principe noi siamo.私たちは 王子の 【↑】指示を 待っている。 (osservando il Povero, e raggricciando il naso)(物乞い【= アリドーロ】を監視しながら、そして 鼻を縮ませながら【≒ 鼻に皺をよせながら ≒ 顔をしかめながら】) Ancor qui siete?あなたは まだ ここにいたのか? Qual tanfo! Andate, o ve ne pentirete.何という臭気だ! 行きなさい、さもないと そのことについて あなたは後悔するだろう。 CENERENTOLAチェネレントラ (accompagnando Alidoro)(アリドーロに同伴しながら) (Io poi quel mezzo scudo(ところで 私は あの半スクードを a voi l'avrei donato;あなたに与えたかったのだが; ma non ho mezzo soldo. Il core in mezzoしかし 私は 半ソルドを持っていない【≒ 小銭すら持っていない】。【↓】私の心を 半分に mi spaccherei per darlo a un infelice.)割りたいものだ それを 不幸な人に与えるために。) A ALIDOROアリドーロ (marcato assai, e Alidoro parte)(大いに強調して、そしてアリドーロは退場する) (Forse al novello dì sarai felice.)(おそらく 新しい日に【≒ 明日】 君は幸福になるだろう。) TISBEティスベ Cenerentola, prestoチェネレントラよ、急いで prepara i nastri, i manti.リボンを用意しなさい、マントを【用意しなさい】 CLORINDAクロリンダ Gli unguenti, le pomate.化粧クリームを、整髪料を。 TISBEティスベ I miei diamanti.私のダイアモンドを。 CENERENTOLAチェネレントラ Uditemi sorelle...私【の話】を聞きなさい、姉たちよ… CLORINDAクロリンダ (altera)(尊大に) Che sorelle!姉たちだなんて! Non profanarci con sì fatto nome.私たちを汚すな そのような呼び名で。 TISBEティスベ (minacciandola)(彼女を威嚇しながら) E guai per te se t'uscirà di bocca.そして 君にとって ただではすまないぞ もし 君の口から出たら【≒ 思わず口にしたら ≒ つい 姉たちなどと言ったら】 CENERENTOLAチェネレントラ (Sempre nuove pazzie soffrir mi tocca.)(いつでも 新しい狂気の沙汰に苦しむことが 私に降りかかる) (entra a sinistra)(左【= 下手】に入る) TISBEティスベ Non v'è tempo da perdere.失う時間はない。 CLORINDAクロリンダ (questionando fra loro, ed opponendosi a vicenda d'entrare a destra)(彼女たちの間で議論しながら、そして 右【= 上手】に入るのに 交替に 対立し合いながら) Nostro padre avvisarne conviene.私たちの父に そのことを知らせなくてはならない。 TISBEティスベ Esser la prima私は 最初の女になることを voglio a darne la nuova.欲している そのことについて 情報を与えるための。 CLORINDAクロリンダ Oh! mi perdoni.ああ! 私を容赦しなさい。 Io sono la maggiore.私は 年長者【≒ 姉】だ。 TISBEティスベ (crescendo nella rabbia fra loro)(彼女たちの間で 怒りにおいて大きくなりながら【≒ 姉妹で怒りが増しながら】) No, no, gliel vo' dir io.いいえ、いいえ、私が それを 彼に 言いたい。 CLORINDAクロリンダ È questo il dover mio.これは 私の義務だ。 Io svegliare lo vuo'. Venite appresso.私が 彼を 目覚めさせたい。【私の】後に 来なさい。 TISBEティスベ Oh! Non la vincerai.ああ! 君は 勝利を得ないだろう。 CLORINDAクロリンダ (osservando fra le scene)(舞台の間を観察しながら) Ecco egli stesso.ほら 彼自身が。 |
e raggricciando il naso 辞書には raggricciare naso の用法は見当たらないが、いくつかの古い文章での用いられ方からするに、日本語の 鼻に皺を寄せる に当たる表現と思われる。つまり、アリドーロの臭い臭いを嗅いで顔をしかめている。 なお辞書では raggricciare は自動詞 縮む であるが、ここでは他動詞 縮める と理解した。 |
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N. 2 Cavatina Magnifico Don Magnifico |
Allegro 4/4 C major |
SCENA Ⅱ第2場 (Don Magnifico bieco in volto esce in berretta da notte, e veste da camera, e detti, indi Cenerentola)(ドン・マニーフィコが 顔に嫌な目つきをして 出て来る ナイトキャップを被り、そしてガウンを着て、そして前の場の人たち、その後にチェネレントラ) MAGNIFICOマニーフィコ Miei rampolli femminini,私の女性の芽【≒ 子】たち【≒ 娘たち】よ、 (ricusando di dar loro a baciar la mano)(彼女たちに【手を】与えることを拒みながら 【彼女たちが】【彼の】手にキスするために) vi ripudio; mi vergogno!私は 君たちと縁を切る【≒ 君たちを勘当する】; 私は 恥ずかしいと思っている! un magnifico mio sogno私の 素晴らしい夢を mi veniste a sconcertar.君たちは 私に対して 台無しにしに来た。 (da sé osservandole. Clorinda e Tisbe ridono quando non le guarda)(自分に; 彼女たちをじっと見ながら。 クロリンダとティスベは笑っている 彼が 彼女たちを見ていない時には) Come son mortificate!何と 彼女たちは 屈辱を与えられたことか【≒ 恥ずかしいことか】! degne figlie d'un Barone!男爵の娘たちに相応しい! Via: silenzio, ed attenzione.さて: 静かに、そして注目を。 State il sogno a meditar.夢を じっくり考えてみなさい。 |
このドン・マニーフィコのカヴァティーナ(登場のアリア)は、譜面上は速度も調性も変化がないが、大雑把に3部分に分かれ、それぞれシェーナ、カンタービレ(緩)、カバレッタ(急)に当たる。 シェーナ。 |
(Allegro) 4/4 C major |
Mi sognai tra il fosco, e il chiaro私は夢を見た 暗さの中で、そして明るさの中で【≒ 夜と朝の間に ≒ 夜明けに】 un bellissimo somaro.この上なく美しい驢馬 ロバ の。 Un somaro, ma solenne.驢馬だ、だが堂々としている。 Quando a un tratto, oh che portento!突然、ああ 何という奇跡だ! sulle spalle a cento a cento【驢馬の】両肩の上に 100ずつ gli spuntarono le penne羽根が生えた ed in aria psct volò!そして それは 宙に ヒューっと 飛んだ! Ed in cima a un campanileそして 鐘楼の天辺で come in trono si fermò.玉座にいるかのように それ【= 驢馬】は居座った。 Si sentiano per di sotto下の方では 聞こえた le campane sdindonar,鐘々が鳴るのが、 din, don, din, don.ディ、ドン、ディン、ドン と。 Col cì cì, ciù ciù, di botto【そこに】いきなり チチで、チュチュ【で】【≒ ペチャクチャ喋って】 mi faceste risvegliar.君たちは 私を 再び目覚めさせた。 Ma d'un sogno sì intralciatoだが そのように邪魔された夢の ecco il simbolo è spiegato.象徴が そら 解釈される。 La campana suona a festa?鐘は 祝宴を知らせている? Allegrezza in casa è questa.これは 家での歓喜だ。 Quelle penne? Siete voi.あの羽根は? それらは 君たちだ。 Quel gran volo? Plebe addio.あの見事な飛翔は? さらば庶民【≒ 零落貴族】よ だ。 Resta l'asino di poi?あとは 驢馬が残っているか? Ma quell'asino son io,だが あの驢馬は 私だ、 chi vi guarda vede chiaro君たちを見る者は はっきりと見る【≒ 君たちを見れば はっきりと分かる】 che il somaro è il genitor.驢馬は 【君たちの】父親だと。 |
ドン・マニーフィコのカヴァティーナの夢解釈の歌。 カンタービレ(緩)に当たるが、通常のカンタービレにくらべてかなり自由に書かれている。 Mi sognai tra il fosco, e il chiaro クリティカルエディション総譜ではこのようにカンマが打ってあるが、意味を捉えるとするとカンマなしの 闇と明るさの間 すなわち 夜明けに と採るべきだろう。 Si sentiano per di sotto sentiano = sentivano Plebe addio. マニーフィコ一家は男爵家で庶民ではないが、貧窮して貴族並みの生活にないことが伺える。 |
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(Allegro) 4/4 C major |
Fertilissima Reginaこの上なく幸福な王妃に l'una e l'altra diverrà;一人の女と 別の女が【≒ 娘が二人とも】が 達するだろう; ed il nonno una dozzinaそして 祖父は di nepoti abbraccierà.孫を12人 抱き締めるだろう。【↑】 Un Re piccolo di qua...小さな王が ここに… servo, servo,私は 仕える、仕える、 Un Re bambolo di là...子どもの王が あそこに… servo, servo,私は 仕える、仕える、 e la gloria mia sarà.そして 栄光は 私のものになるだろう。 |
カバレッタ(急)に当たる部分。 servo, servo, これは台本にはない。 |
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[Recitativo] Dopo la Cavatina Magnifico |
CLORINDAクロリンダ Sappiate che fra poco...知りなさい 間もなく… TISBEティスベ Il Principe Ramiro...王子 ラミーロが… CLORINDAクロリンダ (interrompendosi, e strappandosi Don Magnifico)(【姉妹で】互いに相手の話を遮りながら、そしてドン・マニーフィコを【お互いに相手から】引き剥がしながら) Che son tre dì, che nella deliziosa...3日である、うっとりさせるような【家】に… TISBEティスベ Vicina mezzo miglio venuto è ad abitar...半マイル 近くの【家に】住むために やって来た… CLORINDAクロリンダ Sceglie una sposa...彼は 妻を選ぶ… TISBEティスベ Ci mandò ad invitar...彼は 私たちに 使いを遣った 招待するために… CLORINDAクロリンダ E fra momenti...そして 瞬間の間に【≒ すぐに】… TISBEティスベ Arriverà per prenderci...彼は 到着するだろう 私たちを連れて行くために… CLORINDAクロリンダ E la scelta la più bella sarà...そして 最も美しい女は 選ばれた女になるだろう… MAGNIFICOマニーフィコ (in aria di stupore, ed importanza)(驚きの様子で、そしてもったいをつけて) Figlie che dite!娘たちよ 君たちは何を言っているのだ! Quel Principon! Quantunque io nol conosco...あの大王子が! もっとも 私は 彼を 知らないのだが… sceglierà!... v'invitò... Sposa... più bella!彼が選ぶであろう!… 君たちを 招待した… 妻に… 最も美しい女が! Io cado in svenimento. Alla favella私は 気を失って倒れる【≒ 卒倒しそうだ】。話す能力に è venuto il sequestro. Il Principato差し押さえが来た【≒ 話すこともできなくなっていた】。王子の地位が per la spinal midolla【↓】私の脊髄を抜けて già mi serpeggia, ed in una parola既に 蛇行している【≒ 君主の威信が 既に私の体の中を走り抜けている】。つまり 一言で言えば il sogno è storia, ed il somaro vola.夢は歴史【≒ 史実 ≒ 本当にあったこと】であり、そして驢馬は飛ぶ。 (Cenerentola entra, vuota il caffè, e lo reca nella camera di Don Magnifico)(チェネレントラが入り、彼女はコーヒーを空け【≒ コーヒーをカップに注ぎ】、そしてそれをドン・マニーフィコの部屋の中に持って行く) Cenerentola, presto.チェネレントラ、すぐに Portami il mio caffè.私に 私のコーヒーを持って来なさい。 Viscere mie,私の内臓たち【≒ 子たち】よ、 metà del mio palazzo è già crollata,私の館の半分は 既に 崩壊している、 e l'altra è in agonia. Fatevi onore.そして別の【≒ もう半分】は 死にかけている【ダメになりかけている】。君たちの名誉を遂行しなさい【≒ 期待に応えなさい】。 Mettiamoci un puntello.私たちに 支柱を取り付けよう。 (andando, e tornando, e riprendendo le figlie, che stanno per entrare)(行きながら、そして戻りながら、そして娘たちを引き留めながら、その者たちは まさに入ろうとしている) Figlie state in cervello.娘たちよ 脳の中に留まりなさい【≒ よく考えなさい】。 Parlate in punto, e virgola.話しなさい 点において、そしてカンマ【において】【≒ 細かいところまで正確に話しなさい】 Per carità: pensate ad abbigliarvi:後生だから: 盛装することを考えなさい: si tratta niente men che imprinciparvi.君たちが王女になることより少なく大切であることはない【≒ なによりも 君たちが王女になることが大切である】。 (entra nelle sue stanze, Clorinda e Tisbe nella loro)(彼の部屋に入る、クロリンダとティスベは 彼女たちの【部屋に】) |
Alla favella から ed il somaro vola まで、省略可記号 Vi- -de が付けられている。 il sogno è storia, storia には 歴史,史実 と 物語,作り話 と、正反対の意味があるが、この場合は 本当にあったこと の意味。 (Cenerentola entra, vuota il caffè, e lo reca nella camera di Don Magnifico) おそらくチェネレントラは、マニーフィコがそろそろ起きる時間だと思い(逆に言うと今朝はもう起きて広間にいるとは思わず)、毎朝の日課として彼の部屋にコーヒーを持って行ったのだと考えられる。したがってこの場合の vuota < vuotare 空にする は、コーヒーポットを空にしてコーヒーをカップに注ぐ の意味だろう。 Viscere mie, viscere は 内臓,腸 はらわた の意味で、特に 子宮 を指すことがある。ここから il frutto delle viscere で 子宮の産物 という意味になり、特に詩においては複数形 (le) viscere で (自分の)子ども の意味で用いられる。なおここではこの言葉によって、クロリンダとティスベがマニーフィコの実子であって、チェネレントラがそうではないことが改めて示されていることになる。 Parlate in punto, e virgola. 辞書には a punto e virgola で 一点一画をゆるがせにせず ≒ 細かいところまで正確に とあり、in punto e virgola も同様の意味になるだろう。 |
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N. 3 Duetto [Cenerentola - Ramiro] Cenerentola Ramiro |
Maestoso 4/4 E major |
SCENA Ⅲ第3場 (Don Ramiro e Cenerentola)(ドン・ラミーロとチェネレントラ) (Don Ramiro vestito da Scudiero, guarda intorno, e si avanza a poco a poco)(ドン・ラミーロ 従者の服を着ている、周囲を見まわしている、そして少しずつ近づく) |
レチタティーヴォを伴ったカンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の二部形式の二重唱。 ただし、カンタービレが Andantino grazioso、カバレッタが Moderato なので、指示上の速度の差は小さい。またテンポ・ディ・メッゾ(中間部)に当たる部分が長い。 |
Recitativo 4/4 E major |
RAMIROラミーロ Tutto è deserto. Amici?すべてが無人だ【≒ 誰もいない】。友たちよ? Nessun risponde.誰も返事をしない。 |
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[Primo Tempo] 4/4 E major |
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Recitativo 4/4 E major |
In questaこの simulata sembianza偽りの外見 【↑】で le belle osserverò. Non viene alcuno?美しい女たちを 私は観察しよう。誰か来ないのか? eppur mi diè speranzaだが 私に 希望を与えた il sapiente Alidoro,学識豊かなアリドーロは、 che qui saggia, e vezzosaここに 分別のある、そして 愛らしい degna di me trovar saprò la sposa.妻を 私に相応しい 私が見つけることができるだろう 【↑】という【希望を与えた】。 Sposarsi... e non amar! Legge tiranna,結婚する… だが 愛していない【≒ 愛することを 知らないまま】! 暴虐な法だ、 che nel fior de' miei giorniそれは 私の日々【≒ 人生】の花の中で alla difficil scelta mi condanna!私を 難しい選択へと 強いている【≒ 若い盛りにある私に 困難な選択を突き付けている】 Cerchiam, vediamo.探そう、見よう。 SCENA Ⅳ第4場 (Cenerentola cantando fra' denti con sottocoppa, e tazza da caffè, entra spensierata nella stanza, e si trova a faccia a faccia con Ramiro)(チェネレントラが 歯の間で歌いながら【≒ ボソボソと歌いながら】受け皿を持って、そしてコーヒーのカップ【を持って】、無頓着に【≒ 何も気にせず】部屋に入る、そして ラミーロと差し向かいで出会う) CENERENTOLAチェネレントラ Una volta c'era...その昔 いた… (le cade tutto di mano, e si ritira in un angolo))(彼女の手の物すべてを落とす、そして【部屋の】隅に引っ込む) ah! è fatta.ああ! やってしまった。 RAMIROラミーロ Che cos'è?それは何なのか【≒ どうしたのか】? CENERENTOLAチェネレントラ Che batticore!何という動悸が【≒ 何と心臓が激しく鼓動していることか ≒ 驚いて 心臓がドキドキしている】! RAMIROラミーロ Forse un mostro son'io!たぶん 私は 怪物なのだ! CENERENTOLAチェネレントラ (prima astratta poi correggendosi con naturalezza)(はじめは関心が逸れて【≒ 上の空で】 それから 自然さで改めながら【≒ 素に戻って ≒ 我に返って】) Sì... no Signore.そう… いいえ 貴君よ。 |
eppur mi diè speranza diè = diede < dare の3人称単数遠過去形の詩形。 Cenerentola cantando fra' denti con sottocoppa, fra' denti 直訳すると 歯の間で。dire fra denti で ぼそぼそ言う。したがってここでの cantando fra' denti は、口をあまり開けずに小声で歌うことを意味している。 prima astratta astratto は辞書では 抽象的な,観念的 とあるが、動詞 astrarre には古い用法で (注意、関心を)そらす という意味があり、そこからここでの astratta は 関心が逸れている ≒ 上の空で という意味になる。 |
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Andantino grazioso 6/8 A major |
RAMIROラミーロ Un soave non so che快いものが それを 私は知らない in quegli occhi scintillò!あの両目の中で まぶしく光った! CENERENTOLAチェネレントラ Io vorrei saper perché私は知りたい なぜ il mio cor mi palpitò?私の心臓は どきどきしたのか? RAMIROラミーロ Le direi... ma non ardisco.私は 彼女に 言いたいのだが… しかし 思い切ってしない【≒ 話す勇気がない】。 CENERENTOLAチェネレントラ Parlar voglio e taccio intanto.私は話したい けれどもそれでいて 私は黙っている。 RAMIRO E CENERENTOLAラミーロとチェネレントラ Una grazia, un certo incanto品の良さが、何かの魅力が par che brilli su quel viso!あの顔の上で輝いているように思われる! Quanto caro è quel sorriso!あの微笑みが 何といとしいことか! scende all'alma, e fa sperar.それ【≒ 微笑み】は 魂に下りて【≒ 心に触れて】、そして期待させる【≒ 希望を抱かさせる】。 |
カンタービレ。(緩) |
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Allegro 4/4 A major |
RAMIROラミーロ Del Baron le figlie io cerco.男爵の娘たちを 私は探している。 Dove sono? qui non le vedo.彼女たちは どこにいるのか? ここでは 私は 彼女たちを見ていない。 CENERENTOLAチェネレントラ Son di là nell'altre stanze.彼女たちは 向こうにいる; 別の部屋に。 Or verranno. (Addio speranze.)今 彼女たちは来るだろう。(希望よ さらば。) RAMIROラミーロ (con interesse)(関心を持って) Ma di grazia, voi chi siete?ところで どうか、あなたは 誰なのか? CENERENTOLAチェネレントラ Io chi sono? Eh! non lo so.私が 誰であるのか? うーん! 私は それを知らない【≒ 私にも それは分からない】。 RAMIROラミーロ Nol sapete?あなたが それを知らないだって? CENERENTOLAチェネレントラ Quasi no.ほぼ そうだ【≒ 分からないも同然だ】。 (accostandosi a Lui sottovoce, e rapidissima e correggendosi, ed imbrogliandosi)(彼に近づきながら 小声で、そしてこの上なく速く【≒ 猛烈な早口で】 そして 過ちに気付きながら、そして 混乱しながら) Quel ch'è padre, non è padre...父である人は、【実の】父親ではなく… onde poi le due sorelle...だから 結局 二人の姉は【≒ したがって 同様に 二人の姉も実の姉妹ではなく】 … era vedova mia madre...私の母は 未亡人だった… ma fu madre ancor di quelle...ところが 彼女は あの女たち【= 姉妹】の【義】母でもあった… Questo padre pien d'orgoglio...この【義】父は 傲慢に満ちており… sta a vedere che m'imbroglio...きっと 私は 混乱しているのだろう… Deh! scusate, perdonateああ! 許しなさい、容赦しなさい alla mia semplicità.私の単純さを【≒ 愚かな私を】。 RAMIROラミーロ Mi seduce, m'innamora私を魅惑する、私に恋心を抱かせる。 quella sua semplicità.あの彼女の純真さは。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (dalle loro stanze a vicenda, ed insieme)(彼女たちの部屋から 交互に、それから 一緒に) Cenerentola, da me.チェネレントラ、私のところに。 RAMIROラミーロ Questa voce! che cos'è?あの声は! それは 何なのか? CENERENTOLAチェネレントラ (ora verso una, ora verso l'altra delle porte)(今は【扉の】一つの方に、今は扉の別の方に) A ponente ed a levante,西に そして 東に、 a scirocco e a tramontana,東南【≒ 南】に そして北に、 non ho calma un solo istante,私は ただ一瞬だけも 平静を持っていない【≒ 一瞬たりとて 気が休まる時がない】、 tutto tutto tocca a me.すべてが すべてが 私に回って来る【≒ 何もかも 私がやらなければならない】。 RAMIROラミーロ (Quell'accento, quel sembiante(あの話し方は、あの顔は è una cosa sovrumana.超人的な【≒ 人間離れした ≒ 途轍もなく素晴らしい】ものだ。 Io mi perdo in questo istante,私は この瞬間に 私を失っている【≒ 私は 今この時に夢中になっている】、 già più me non trovo in me.)私は もはや 私の中に 私を見出していない。) CENERENTOLAチェネレントラ Addio, Signore.さようなら、貴君よ。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Cenerentola.チェネレントラ! CENERENTOLAチェネレントラ Vengo, vengo.私は行く、私は行く。 |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。 sta a vedere che m'imbroglio... sta a vedere che きっと―だろう |
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Moderato 3/8 G major |
CENERENTOLAチェネレントラ (con passione)(情熱を込めて) (Ah! ci lascio proprio il core!(ああ! 私は ここに 自分自身の心を残していく! questo cor più mio non è.)この心は もはや 私のものではない。) (parte)(退場する) RAMIROラミーロ (da sé astratto, osservandola sempre)(自分に 抽象的に【≒ 気が逸れて ≒ 我を忘れて】、彼女を常にじっと見ながら) (Che innocenza! Che candore!(何という純真だ! 何という純粋さだ! ah! m'invola proprio il core!ああ! 彼女は 私の自分自身の心を 持ち去っている! questo cor più mio non è.)この心は もはや 私のものではない。) |
カバレッタ(急) |
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[Recitativo] Dopo il Duetto [Cenerentola - Ramiro] |
SCENA Ⅴ第5場 Ramiro solo, indi D. Magnifico (in abito di gala senza cappello)ラミーロ一人、その後にドン・マニーフィコ(盛装で 帽子なしで) RAMIROラミーロ Non so che dir. Come in sì rozze spoglie私は知らない 何を言うのか【≒ 何と言ったらよいのか分からない】;あれほどの粗野な【≒ 【生地が】ゴワゴワの】服の中に sì bel volto e gentil! Ma Don Magnifico【↑】なんと あれほどの美しくそして優美な顔が! だが ドン・マニーフィコは non apparisce ancor? Nunziar vorreiまだ現れないのか? 私は 通知したいのだが del mascherato Principe l'arrivo.仮面を被った【≒ 偽装された】王子の到着を。 Fortunato consiglio!幸運な助言だ! Da semplice scudiero単純な【≒ 平 ひら の ≒ 階級の低い】従者の身で【あれば】 il core delle femmine女性の心を meglio svelar saprò. Dandini intanto私は より良く 明らかにすることができるだろう。その間に ダンディーニが recitando da Principe...王子として演じて【≒ 王子に扮して】… MAGNIFICOマニーフィコ Domando私は 請う un milion di perdoni.百万の詫びを。 Dica: e Sua Altezza il Prence?言いなさい: それで 王子殿下は? RAMIROラミーロ Arriva.彼は 到着する。 MAGNIFICOマニーフィコ E quando?それで いつ? RAMIROラミーロ Fra tre minuti.3分後に。 MAGNIFICOマニーフィコ (in agitazione)(動揺して) Tre minuti! ah figlie!3分! ああ 娘たちよ! sbrigatevi: che serve?急ぎなさい: 何が 役に立つのか【≒ 何が必要なのか】? le vado ad affrettar. Scusi; per queste私は 彼女たちを 急かしに行く。許しなさい; これらの ragazze benedette,めでたい娘たちは un secolo è un momento alla toelette.化粧にあっては 1世紀が 一瞬だ。 (entra dalle figlie)(娘たちのところに入る) RAMIROラミーロ Che buffone! E Alidoro mio maestro何という道化だ! そして 私の師 アリドーロは sostien che in queste mura断言している この壁々【≒ 館】には sta la bontà più pura!最も純粋な善良がいる 【↑】と! Basta, basta vedrem. Alle sue figlieもういい、もういい 見てみよう。彼の娘たちに convien che m'avvicini.接近しなくてはならない。 Qual fragor!.. non m'inganno. Ecco Dandini.何という大音響だ!… 私は間違えていない。ほら ダンディーニだ。 |
e Sua Altezza il Prence? 正しくは 王太子殿下 もしくは 皇太子殿下 だが、ここではあえて 王子殿下 にしておく。 |
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N. 4 Cavatina Dandini Dandini Clorinda Tisbe Ramiro Coro |
Allegro moderato 12/8 F major |
SCENA Ⅵ第6場 (Cavalieri, Dandini, e detti indi Clorinda, e Tisbe)(騎士たち、ダンディーニ、そして前の場の人たち、その後にクロリンダ、そしてティスベ) CORO合唱 Scegli la sposa, affrettati,妻を選びなさい、急ぎなさい、 s'invola via l'età.年齢は 消え去る【≒ 若い時期は あっという間に過ぎ去ってしまう】。 La Principesca linea,王家の家系は、 se no si estinguerà.そうでないと 絶えてしまうだろう。 |
合唱の導入を伴ったカンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の2部形式のアリア。 合唱の導入。 |
(Allegro moderato) 12/8 F major |
DANDINIダンディーニ Come un'ape ne' giorni d'aprile4月の日々のミツバチが va volando leggiera, e scherzosa;軽やかに飛び行く 【↑】ように、そしておどけて【≒ 楽し気に】【飛び行くように】; corre al giglio, poi salta alla rosaユリに駆けつける 【↑↑】ように、それからバラに跳び上がる【ように】 dolce un fiore a cercare per sé;自分で甘い花を探しに; fra le belle m'aggiro e rimiro;私は 美女たちの間で 歩き回る そして見つめる【≒ 美女たちを見て回っている】; ne ho vedute già tante, e poi tante;それを 私は たくさん【≒ 大勢】見た; たくさん、それから さらに たくさん: ma non trovo un giudizio, un sembiante,だが 私は 見出していない、良識を、顔を、 un boccone squisito per me.一口【≒ 美味しいもの ≒ 美女】を 私にとって素晴らしく美味しい【≒ 私の好みに叶う良識、顔、美貌を備えた女性を見つけられずにいる】。 (Clorinda e Tisbe escono, e sono presentate a Dandini da Don Magnifico in gala)(クロリンダとティスベが出て来る、そして彼女たちは 盛装したドン・マニーフィコによって ダンディーニに紹介される) CLORINDAクロリンダ Prence!王子よ! TISBEティスベ Sire...殿下よ… CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Ma quanti favori!まったく 何という引き立てを! MAGNIFICOマニーフィコ Che diluvio! Che abisso di onori!何という大量の【栄誉を】! 何というたくさんの栄誉を! DANDINIダンディーニ Nulla nulla.何も 何も。 (con espressione or all'una ora all'altra)(感情を込めて 今は 一人の女に 今は 別の女に) Vezzosa! graziosa!愛らしい! かわいらしい! (accostandosi a Ramiro)(ラミーロに近づきながら) (Dico bene?) Son tutte papà.(私は うまく 言っている【≒ 話をしている】だろう? ) 彼女たちは 父親そっくりだ! RAMIROラミーロ (Bestia! attento! ti scosta di qua.)(獣【≒ 馬鹿者】め! 気をつけろ! ここから遠ざかれ【≒ 私に 近付くな】。) DANDINIダンディーニ (alle due sorelle che lo guardano con passione)(二人の姉妹に その者たちは 彼を 情熱を込めて 見つめている) Per pietà quelle ciglia abbassate.後生だから それらの眼 まなこ を下げなさい。 Galoppando sen va la ragione,理性が 疾走しながら 行ってしまう、 e fra i colpi d'un doppio cannoneそして 二重の大砲の砲撃の間で spalancata la breccia è di già.突破口は 早くも 空け開かれた。 Vezzosa! graziosa!愛らしい! かわいらしい! Son tutte papà!彼女たちは 父親そっくりだ! |
カンタービレ(緩)。 ma non trovo un giudizio, un sembiante, / un boccone squisito per me. un giudizio, un sembiante, un boccone の3語は並列されており、いずれも妃候補に求められるもの。したがってここでの giudizio は 判断 ではなく 良識。boccone は 一口分 の意味だが、美味しいもの という意味もあり、転じて 美女 として用いられる。 なお boccone は歌の中では boccon の形で用いられることの方が多い。 |
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Vivace 2/2 F major |
DANDINIダンディーニ (da sé)(自分に) (Ma al finir della nostra Commedia(だが 私たちの喜劇が終わる後には che Tragedia qui nascer dovrà!)何という悲劇が ここで きっと生じることだろう!) CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (da sé)(自分に) (Ei mi guarda. Sospira, delira,(彼は 私を見つめている。彼は 溜め息を吐き、錯乱している【≒ 夢中になっている】、 non v'è dubbio: è mio schiavo di già.)疑いはない:彼は 早くも 私の僕だ。) RAMIROラミーロ [da sè] (sempre osservando con interesse se torna Cenerentola)[自分に] (常に 関心を持って じっと見ながら チェネレントラが戻るかどうか) (Ah! perché qui non riede colei(ああ! なぜ あの女は ここに戻らないのか con quell'aria di grazia, e bontà?)あの優美な様子で、そして善良?) MAGNIFICOマニーフィコ (da sé osservando con compiacenza Dandini, che sembra innamorato)(自分に 喜びをもって ダンディーニを見つめながら、その者は 恋をしたように思われる)) (È già cotto, stracotto, spolpato:(彼は 既に 料理されて【≒ 恋焦がれて】、調理され過ぎて【≒ ぞっこんになって】、肉の付いていない【≒ 身がとろけてしまった】: l'Eccellenza si cangia in Maestà.)殿下が 陛下に変化している。) CORO合唱 Scegli la sposa, affrettati,妻を選びなさい、急ぎなさい、 s'invola via l'età.年齢は 消え去る【≒ 若い時期は あっという間に過ぎ去ってしまう】 La Principesca linea,王家の家系は、 se no si estinguerà.そうでないと 絶えてしまうだろう。 DANDINIダンディーニ Per pietà quelle ciglia abbassate.後生だから それらの眼 まなこ を下げなさい。 Galoppando sen va la ragione,理性が 疾走しながら 行ってしまう、 e fra i colpi d'un doppio cannoneそして 二重の大砲の砲撃の間に spalancata la breccia è di già.突破口は 早くも 空け開かれた。 (Ma al finir della nostra Commedia(だが 私たちの喜劇が終わる後には che Tragedia qui nascer dovrà!)何という悲劇が ここで きっと生じることだろう!) DANDINIダンディーニ (Dico bene?)(私は うまく 言っている【≒ 話をしている】だろう? ) RAMIROラミーロ (Bestia!)(獣【≒ 馬鹿者】め!) DANDINIダンディーニ (Grazie.)(ありがとう。) |
カバレッタ(急)。 (È già cotto, stracotto, spolpato: ダンディーニの恋心を料理(おそらく煮込み料理)に例えて、惚れた、夢中になった、メロメロになった、というような意味合い。 (Ma al finir della nostra Commedia / che Tragedia qui nascer dovrà!) この台詞は、第2幕の六重唱出のダンディーニの台詞と対をなしている他、初演時の第1幕のアリドーロのアリア(N. 6 代筆アリア)とも呼応している。 |
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[Recitativo] Dopo la Cavatina Dandini |
DANDINIダンディーニ (osservando Clorinda, Tisbe, e Don Magnifico)(クロリンダ、ティスベとドン・マニーフィコを見つめながら) Allegrissimamente! che bei quadri!この上なく快活に【≒ 実に素晴らしい】! 何と美しい絵【≒ 姿】だ! che bocchino! che ciglia!何という小さな口だ! 何という眼だ! Siete l'ottava e nona meraviglia.あなた方は 第8の そして 第9の驚異だ。 Già talis Patris talem Figlia.まったく このような父がこのような娘を だ。 CLORINDAクロリンダ (con inchino)(お辞儀をして) Grazie!ありがとう! MAGNIFICOマニーフィコ (curvandosi)(身を屈めながら) Altezza delle Altezze!閣下たちの中の閣下! che dice? mi confonde. Debolezze.あなたは 何を言っているのか? あなたは 私を当惑させている【≒ あなたの過分な言葉に 私は恥じ入っている】。衰弱【≒ 恐縮】だ。 DANDINIダンディーニ Vere figure Etrusche!真のエトルリアの姿だ! (piano a Ramiro)(ラミーロに小声で) (Dico bene?)(私は うまく 言っている【≒ 話をしている】だろう? ) RAMIROラミーロ (piano a Dandini)(ダンディーニに小声で) (Cominci a dirle grosse.)(君は 大きなことを言い始めている【≒ 大げさなことを言い出している】。) DANDINIダンディーニ (piano a Ramiro)(ラミーロに小声で) (Io recito da grande, e grande essendo私は 偉大な人の役に扮しており、そして 偉大であるならば grandi le ho da sparar.)私は 大きなことを 思い切り放たなけれならない【≒ 大げさなことを言い放つ必要がある】。 MAGNIFICOマニーフィコ (piano alle figlie con compiacenza)(娘たちに小声で 喜びをもって) (Bel Principotto!(立派な王子だ! che non vi scappi: attente.)彼が 君たちから 逃げないように: 注意を。) DANDINIダンディーニ Or dunque seguitando quel discorsoところで あの話を続けると che non ho cominciato;それを 私は始めなかった; dai miei lunghi viaggi ritornato私の長い旅行から戻ると e il mio papà trovato,すると 私の父を見出した、 che fra i quondam è capitombolato,その者は 故人たちの中に落ちていることを【≒ 父王が危篤になっていた】 e spirando ha ordinato;そして 息を引き取りながら 彼は命令した; che a vista qual cambiale io sia sposato,一覧払手形で【≒ すぐに】 私が結婚するように と、 o son diseredato;さもないと 私は 相続権を奪われる; fatto ho un invito a tutto il vicinato.私は 近所【≒ 近しい人たち】の全員に 【妃を探すよう】要請をした。 E trovando un boccone delicato,そして 繊細な一口【≒ 優雅な美女】を見つけるために、 per me l'ho destinato.私は 私に対して それを運命づけた【≒ そのことを 自分の責務と定めた】。 Ho detto, e adesso prendo fiato.私は 【言うことを すべて】言った、そして今 息を吐く。 MAGNIFICOマニーフィコ (sorpreso)(驚いて) (Che eloquenza Norcina!)(何というノルチャの雄弁【≒ 何と流暢に話すことか】!) CENERENTOLAチェネレントラ (entrando osserva l'abito del Principe, e Ramiro che la guarda)(入りながら 王子の服【= ダンディーニ】を見つめて、そしてラミーロを【見詰めて】 その者は 彼女を見つめている) (Ah! che bell'abito!(ああ! 何と美しい服だ! E quell'altro mi guarda.)そして あの別の男【≒ ラミーロ】は 私を見つめている。 RAMIROラミーロ (Ecco colei!(そら あの女だ! Mi ripalpita il cor.)私の心臓が 再び動悸を激しく打っている。 DANDINIダンディーニ Belle ragazze,美しい娘たちよ、 se vi degnate inciambellare il braccioもし あなた方が あなた方の腕を 輪に入れる価値があると思うのならば ai nostri Cavalieri, il legno è pronto.私たちの騎士たちに【≒ もしあなた方が 私たちの騎士たちと腕を組んでもよいと思うならば】、木材【≒ 馬車】が用意されている。 CLORINDAクロリンダ (servita dai Cavalieri)(騎士たちから仕えられて) Andiamo.行こう。 TISBEティスベ Papà, Eccellenza,父よ、閣下よ、 non tardate a venir.来るのに遅れないように。 ([Clorinda e Tisbe] escono)([クロリンダとティスベは]去る) MAGNIFICOマニーフィコ (a Cenerentola voltandosi)(チェネレントラに 振り向きながら) Che fai tu qui?君は ここで 何をしている? Il cappello, e il bastone.帽子を、そして杖を。 CENERENTOLAチェネレントラ (scuotendosi dal guardar Ramiro, e parte)(ラミーロを見つめることから びくっとしながら、そして退場する) Eh... sì Signor.ええと… はい 貴君よ。 DANDINIダンディーニ Perseguitate presto急いで 追いかけなさい con i piè baronali男爵の足で i magnifici miei quarti reali.私の見事な 王のクオータリング【≒ 王家の紋章】を (parte)(退場する) MAGNIFICOマニーフィコ Monti in carrozza, e vengo.君は 馬車に乗り込み、そして私は【歩いて】行く。 (andando nella camera dove è entrata Cenerentola)(部屋の中に行きながら そこにチェネレントラが入った) RAMIROラミーロ (E pur colei(そして また あの女に vo' riveder.)私は 再会したい。) MAGNIFICOマニーフィコ (di dentro in collera)(内部【≒ 舞台裏】から 立腹して) Ma lasciami.そら 私を放しなさい。 RAMIROラミーロ (La sgrida?)(彼は 彼女を 大声で叱っているのか? ) ([Magnifico] esce con cappello e bastone trattenuto con ingenuità da Cenerentola)([マニーフィコは]出て来る 帽子と杖を携えて チェネレントラに 純真さをもって【≒ ひたむきに】引き留められて) CENERENTOLAチェネレントラ Sentite.聞きなさい。 MAGNIFICOマニーフィコ Il tempo vola.時は飛んでいる【≒ 時間がない】。 RAMIROラミーロ (Che vorrà?)(彼女は 何を望んでいるのだろうか?) MAGNIFICOマニーフィコ [a Cenerentola][チェネレントラに] Vuoi lasciarmi?君は 私を放したいか【≒ 私を放そうとは思わないのか】? CENERENTOLAチェネレントラ Una parola.一言【だけ】 |
che bocchino! che ciglia! ciglia は ciglio が 睫毛,眉毛 の意味の場合の複数形だが、ここでは 眼 まなこ で理解した。 Siete l'ottava e nona meraviglia. いわゆる 世界の七不思議(イタリア語では Meraviglie del mondo 世界の驚異)に続くもの、と世辞を言っている。 Già talis Patris talem Figlia. talis Patris talem Figlia は(不正確な)ラテン語が用いられている。 (Cominci a dirle grosse.) dirle grosse 途方もないことを言う。 e grande essendo / grandi le ho da sparar.) spararle grosse 誇大に言う,口から出まかせを言う。この場合の sparare は 思い切り放つ の意味。 (Bel Principotto! Principotto は Principe に拡大語尾の -otto が付いたもの。親愛を加える言い方になるが、訳には反映させなかった。 Or dunque seguitando quel discorso / che non ho cominciato; 始めていないあの話を続ける という矛盾した表現から察せられるように、ダンディーニは王子の妃探しの事情を覚え込まされたにもかかわらず、それを話すことを忘れており、ここで一気に捲し立てている。 (Che eloquenza Norcina!) Norcino は ノルチャの という形容詞。ノルチャはウンブリアの小都市で、ここは養豚や豚肉の加工で有名な町だった。辞書では小文字始まり norcino に 豚の畜殺人,豚肉屋 の意味があり、また豚を主に取り扱う肉屋を norcineria と言ったりする。豚の畜殺や去勢を手際よく素早く行ったことから、ここでの Norcina は 流暢な の意味で用いられている。 se vi degnate inciambellare il braccio inciambellare は辞書にも載っておらず、ほとんどこの台本でしか使われていない動詞。in + ciambella 輪状の物 + are で動詞にしたもので、輪の中に入れる の意味。 il legno è pronto. わざと 木材 と直訳しているが、昔はほとんどの乗り物が木製だったので、詩では legno で馬車や船を意味することがある。 i magnifici miei quarti reali. quarti < quarto は文字通りには 四分の一。ここでの quarti とは、盾を十字型に四分割して紋章を統合したもの。日本では英語の クオータリング quartering で呼ばれる。ともかく quarti reali が意味するものは 王家の紋章 であり、マニーフィコに対して 馬車の後ろに据えられた王家の紋章を追いかけなさい と言っている。 trattenuto con ingenuità da Cenerentola) con ingenuità 純粋さをもって は 無邪気に や 悪気なく という意味。ここでは ひたむきに で訳した。 |
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N. 5 Quintetto Cenerentola Ramiro Dandini Magnifico Alidoro |
Allegro 4/4 C Major |
CENERENTOLAチェネレントラ Signor, una parola:貴君よ、一言【だけ】: Signor, in casa di quel Principe貴君よ、あの王子の屋敷に un'ora sola portatemi a ballar.1時間だけ 私を 踊りに連れて行きなさい。 MAGNIFICOマニーフィコ ridendo笑いながら Ih! Ih! Ih! Ih!ヒ! ヒ! ヒ! ヒ! DANDINIダンディーニ (tornando indietro, ed osservando Ramiro immobile)(引き返して戻りながら、そして 動かないラミーロを見つめながら) Cos'è?彼【= ラミーロ】は どうしたのか? MAGNIFICOマニーフィコ La bella Venere!美しいヴェーネレ【= ウェヌス = ヴィーナス ≒ 美の女神】が! DANDINIダンディーニ Qui fa la statua?彼【= ラミーロ】は ここで 像になっているのか? MAGNIFICOマニーフィコ Vezzosa! Pomposetta!愛らしい女だ! 華やかな女だ! Sguajata! Covacenere!みっともない女め! 灰に巣食う女【≒ 灰まみれの女】め! RAMIROラミーロ (sottovoce fra loro in tempo del solo di Magnifico)(彼ら【= ラミーロとダンディーニ】の間で小声で マニーフィコの独唱の時に) Silenzio, ed osserviamo.静かに、そして観察しよう。 MAGNIFICOマニーフィコ Lasciami, lasciami, deggio andar.私を放せ、私を放せ、私は 行かなくてはならない。 DANDINIダンディーニ Ma andiamo o non andiamo!さて 行こうか それとも 行かないでいようか! RAMIROラミーロ Mi sento lacerar.私は 引き裂かれるのを感じている。 CENERENTOLAチェネレントラ Ma una mezz'ora...しかし 半時間【だけ】… un quarto.四半時間【だけ】… MAGNIFICOマニーフィコ (alzando minaccioso il bastone)(杖を 威嚇的に 持ち上げながら) O lasciami, o ti stritolo.ああ 私を放しなさい、さもないと 私は 君を 砕く【≒ 打ち据える】ぞ。 RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ (accorrendo a trattenerlo)(彼【= マニーフィコ】を押さえに駆け付けながら) Fermate.止めなさい。 MAGNIFICOマニーフィコ Serenissima!この上なく晴朗な人【= 殿下】よ! (Ma vattene.)【(チェネレントラに)】(さあ 行ってしまえ。) (sorpreso curvandosi rispettoso a Dandini)(驚いて ダンディーニに 恭しく 身を屈めながら) Altezzissima!この上なく高い人【= 殿下】よ! Servaccia ignorantissima!この上なく無知な【≒ 愚鈍極まりない】下女め! DANDINIダンディーニ (a Cenerentola)(チェネレントラに) Serva?女中なのか? RAMIROラミーロ (a Dandini)(ダンディーニに) Serva?女中なのか? CENERENTOLAチェネレントラ Cioè…つまり… MAGNIFICOマニーフィコ (mettendole una mano sulla bocca, e interrompendola)(彼女の口の上に 手を置きながら【≒ チェネレントラの口を手で塞いで】、そして彼女の話を遮りながら) Vilissima.この上なく卑しい女だ。 D'un'estrazione bassissima.生まれの極めて低い女だ。 Vuol far la sufficiente,彼女は 自惚屋 うぬぼれや のふりをしたいのだ【≒ 気取りたいのだ】、 la cara, l'avvenente,可愛い女の【ふりをしたい】、愛くるしい女の【ふりをしたい】のだ、 e non è buona a niente.ところが 彼女は 何の役にも立たない女だ。 (minacciando e trascinando)(威嚇しながら そして 連れて行きながら) Va in camera, la polvere a spazzar.部屋に行け、埃を掃きに。 RAMIROラミーロ (fra sé con sdegno represso)(自分に 抑えられた怒りで) (Or ora la mia collera(ちょうど今 私の激怒を non posso più frenar,私は もはや 抑えることができない、 non mi so frenar.)私は 自制できない。) DANDINIダンディーニ (opponendosi con autorità)(威信をもって) Ma caro Don magnificoだが 親愛なるドン・マニーフィコよ via non la strapazzar.だめだ 彼女を 厳しく叱るな。 CENERENTOLAチェネレントラ (con tono d'ingenuità)(純真さの口調で【≒ ひたむきな話し方で】) Ah! Sempre fra la cenere,ああ! これからもずっと 灰の中に sempre dovrò restar?ずっと 留まらなくてはならないのだろうか? Signori, persuadetelo,貴君たちよ、彼を説得しなさい portatemi a ballar.私を 踊りに連れて行きなさい。 |
急/緩/急の三部形式の五重唱。 急。 e non è buona a niente. un buono a niente 何の役にも立たない人。台本では否定形になっているが同じ意味。 |
Moderato 4/4 E-flat major |
(nel momento che Don Magnifico staccasi da Cenerentola ed è tratto via da Dandini, entra Alidoro con taccuino aperto)(瞬間に そこで ドン・マニーフィコがチェネレントラから離れる そして 彼女は ダンディーニによって引っ張り出される、アリドーロが入る 開いた手帳を持って) ALIDOROアリドーロ Qui nel mio codice delle zitelle,ここには 私の 独身女性たちの写本【≒ 未婚女性の台帳】の con Don magnifico stan tre sorelle.ドン・マニーフィコと一緒に 3人の姉妹が居住している。 (a Don Magnifico con autorità)(ドン・マニーフィコに 威信をもって) Or che va il Principe王子が la sposa a scegliere,妻を選びに 【↑】来ている 【↑】今とあっては la terza figlia3番目の娘を io vi domando.私は あなたに 尋ねる。 MAGNIFICOマニーフィコ (confuso, ed alterato)(混乱して、そして 苛立って) Che terza figliaどんな 3番目の娘が mi va figliando?私に 生まれつつあるのか? che terza...どんな 3番目の… ALIDOROアリドーロ Terza sorella...3番目の妹だ… MAGNIFICOマニーフィコ (atterrito)(苛立って) Ella?... morì...彼女か?... 彼女は 死んだ… ALIDOROアリドーロ Eppur nel codiceだが 写本【≒ 台帳】には non v'è così.そのようにはない。 CENERENTOLAチェネレントラ (Ah! di me parlano.)(ああ! 彼らは 私について 話している。) (ponendosi in mezzo con ingenuità)(中央に身を置きながら 純真さをもって【≒ ひたむきに】) No, no, non morì.いいえ、いいえ、彼女は死ななかった。 MAGNIFICOマニーフィコ Sta zitta lì.そこで 黙っていろ。 ALIDOROアリドーロ Guardate qui!ここを よく見なさい。 MAGNIFICOマニーフィコ (balzandola in un cantone)(彼女【= チェネレントラ】を 部屋の隅に 跳ね飛ばしながら【≒ 突き飛ばしながら】) Se tu respiri,もし 君が 息をするならば、 ti scanno qui.私は 君を ここで 喉を切って殺す。 RAMIROラミーロ Ella morì?彼女は死んだのか? DANDINIダンディーニ Ella morì?彼女は死んだのか? MAGNIFICOマニーフィコ (sempre tremante)(常に 震えて) Altezza... morì.閣下… 彼女は死んだ。 (momento di silenzio)(沈黙の瞬間) |
ここは中間部に当たる。 con Don magnifico stan tre sorelle. stan = stanno アリドーロは直接法現在で(接続法現在で表現を和らげることなく)言い切っている。 Che terza figlia / mi va figliando? figliare は他動詞 生む だが、ここでは自動詞 生まれる で用いられているようだ。 |
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Andante 4/4 A-flat major |
DANDINI, CENERENTOLA, MAGNIFICO E RAMIROダンディーニ、チェネレントラ、マニーフィコとラミーロ ([tutti] guardandosi scambievolmente)([全員が]互いに 顔を見合わせながら) Nel volto estatico唖然とした顔に di questo, e quelloこの者の【顔に】、そして あの者の【顔に】 si legge il vortice渦巻き【≒ 混乱】が読める del lor cervello,彼らの脳の、 che ondeggia, e dubitaそれ【= 脳】は 波打っている【≒ 動揺している】、そして 疑いを抱いて e incerto sta.そして 不確かにいる。 ALIDOROアリドーロ Si legge il vortice渦巻き【≒ 混乱】が読める del lor cervello,彼らの脳の、 che ondeggia, e dubitaそれ【= 脳】は 波打っている【≒ 動揺している】、そして 疑いを抱いて e incerto sta.そして 不確かである。 |
緩。 | |
Allegro vivace 3/4 C major |
CENERENTOLA, RAMIRO, DANDINI, MAGNIFICO E ALIDOROチェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニ、マニーフィコとアリドーロ incerto sta.不確かで【ある】。 MAGNIFICOマニーフィコ (fra' denti, trascinando Cenerentola)(歯の間で【≒ ボソボソと】、チェネレントラを連れて行きながら) Se tu più mormoriもし 君が さらに 小声で言うのなら solo una sillaba,ただの1音節を【≒ ただの一言でも呟こうものなら】、 un cimiterio墓場に qui si farà.ここは なるだろう。 CENERENTOLAチェネレントラ (con passione)(情熱を込めて) Deh soccorretemi,ああ 私を救いなさい、 deh non lasciatemi,ああ 私を置いて行くな ah! Di me miseraああ 哀れな女である私に che mai sarà?いったい 何があるのだろうか【≒ 哀れな私は いったい どうなるのだろうか】? ALIDOROアリドーロ (frapponendosi)(【ドン・マニーフィコとチェネレントラの】間に入りながら) 【(ドン・マニーフィコに)】 Via meno strepito:そら より少ない騒音を【≒ 大騒ぎせずに】: fate silenzio,静かにしなさい、 o qualche scandaloさもないと 何らかの不祥事が qui nascerà.ここで 生じるだろう。 RAMIROラミーロ (strappandola da Don Magnifico)(彼女【= チェネレントラ】を ドン・マニーフィコから引き離しながら) Via, consolatevi.【(チェネレントラに)】さあ、安心しなさい。 Signor lasciatela.【(ドン・マニーフィコに)】貴君よ 彼女を放しなさい。 (Già la mia furia(既に 私の怒りは crescendo va.)どんどん増して行っている。) DANDINIダンディーニ Io sono un Principe,【(ドン・マニーフィコに)】私は 王子だ、 o sono un cavolo?それとも 私は キャベツ【のような者】【≒ 】なのか【≒ 私を 馬鹿だと思っているのか】? Vi mando al diavolo:私は あなたを 悪魔に送る: venite qua.【(チェネレントラに)】ここに来なさい。 CENERENTOLAE, RAMIRO, DANDINI E MAGNIFICOチェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニとマニーフィコ Nel volto estatico唖然とした顔に di questo, e quelloこの者の【顔に】、そして あの者の【顔に】 si legge il vortice渦巻き【≒ 混乱】が読める del lor cervello,彼らの脳の、 che ondeggia, e dubitaそれ【= 脳】は 波打っている【≒ 動揺している】、そして 疑いを抱いて e incerto sta.そして 不確かにいる。 ALIDOROアリドーロ si legge il vortice渦巻き【≒ 混乱】が読める del lor cervello,彼らの脳の、 che ondeggia, e dubitaそれ【= 脳】は 波打っている【≒ 動揺している】、そして 疑いを抱いて e incerto sta.そして 不確かである。 ([Dandini] strappa [Cenerentola] da Don Magnifico e la conduce via)([ダンディーニは][チェネレントラを]ドン・マニーフィコから引き離し そして彼女を連れ去る) (Tutti seguono Dandini. Cenerentola corre in camera. Si chiude la porta di mezzo: un momento dopo rientra Alidoro con mantello da povero)(全員が ダンディーニの後を追う。チェネレントラは 部屋の中に駆け込む。) |
急。 Via meno strepito: 楽譜ではこのアリドーロの一節は、マニーフィコが歌い終わりチェネレントラが歌い始めたところで歌われているので、マニーフィコに対して言っている。 なお qualche scandalo は、当然、マニーフィコがチェネレントラはいないものとして、彼女の相続財産を着服していることを指しているだろう。 Via, consolatevi. 楽譜ではこの行はチェネレントラの歌が終わった直後に歌い始めており、チェネレントラに向けて言っていることが分かる。 Io sono un Principe, / o sono un cavolo? このダンディーニの一節は、マニーフィコに対してのものだろう。cavolo キャベツ には 馬鹿 の意味がある。 venite qua. この一言は、楽譜ではラミーロが独白になったところから歌い始めている。 |
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[Recitativo] Dopo il Quartetto Alidoro Cenerentola |
SCENA Ⅶ第7場 Alidoro indi Cenerentolaアリドーロ それからチェネレントラ (Dopo qualche momento di silenzio entra Alidoro in abito da Pellegrino con gli abiti da Filosofo sotto)(いくらかの沈黙の瞬間の後 アリドーロが巡礼者の服を着て入る 下に哲学者の服を身に着けて) ALIDOROアリドーロ Grazie, vezzi, beltà potrai scontrare品の良さ、愛らしさ、美しさと 君は 出くわすことができるだろう ad ogni passo; ma bontà, innocenza,たびたび【≒ 上品な人、愛らしい人、美しい人には しばしば出会うことがあるだろう】; だが 善良、純真は【≒ 善良な人、純真な人は】、 se non si cerca, non si trova mai.探し求めなければ、決して 見付からない。 Gran ruota è il mondo...世界は 大きな車輪だ… (chiama verso la camera di Cenerentola)(チェネレントラの部屋に向かって呼ぶ) Figlia!娘よ! CENERENTOLAチェネレントラ (esce e rimane sorpresa)(出て来て 驚いたままでいる) Figlia voi mi chiamate?あなたは 私を 娘と呼ぶのか? O questa è bella!ああ これは 素敵だ! Il padrigno Barone継父の男爵は non vuol essermi padre, e voi...私の父であることを望んでいない、けれど あなたは… ALIDOROアリドーロ Tacete:黙りなさい: venite meco.私と一緒に 来なさい。 CENERENTOLAチェネレントラ E dove?それで どこへ? ALIDOROアリドーロ Or ora un cocchioまさに今 馬車が s'appresserà. Del Principe近付いて来るだろう。王子の andremo al festino.舞踏会に行こう。 CENERENTOLAチェネレントラ (guardando lui, e le accenna gli abiti)(彼を見つめながら、そして 彼女の服を示して) Con questi stracci?これらのぼろ服で? Come Paris e Vienna? oh che bell'ambo!パリとウィーンのようだと【≒ パリとウィーンのように 似ていると】? ああ 何と素敵な両人だ【≒ 二人とも 何て素敵なことか】! ALIDOROアリドーロ Osservate. Silenzio.よく見なさい。静かに。 (nel momento che si volge, Alidoro gitta il manto)(瞬間に【≒ その時】 彼が身を向ける、アリドーロはマントを投げる) Abiti, gioie,服、歓喜、 tutto avrete da me. Fasto, ricchezzaすべてを あなたは 私から手に入れるだろう。きらびやかさ、豪華さは non v'abbaglino il cor. Dama sarete;あなたの心を惑わせない。あなたは 上流婦人になるだろう; scoprirvi non dovrete. Amor soltantoあなたは 自分の正体を示す必要はない。ただ愛だけが tutto v'insegnerà.すべてを あなたに教えるだろう。 CENERENTOLAチェネレントラ Ma quest'è Storia;けれども これは物語なのか; oppure una Commedia?それとも 喜劇なのか? ALIDOROアリドーロ Figlia mia,私の娘よ、 l'allegrezza, e la pena歓喜は、そして苦悩は son Commedia, e Tragedia, e il mondo è scena.喜劇だ、そして悲劇だ、そして 世界【≒ この世】は 舞台だ。 |
※注意※ このレチタティーヴォは初演時のもの。このレチタティーヴォと続くアリドーロのアリアは、今日ではほぼ例外なく1820年にロッシーニ自身が新たに書いた 第6番a シェーナと アリドーロのアリア N. 6a Scena ed Aria Alidoro に差し替えられて上演される。これらは巻末に掲載してある。差替後の音楽を聞く場合は、ここから巻末に下り、アリドーロのアリアの後に第1幕フィナーレにもどること。 Grazie, vezzi, beltà potrai scontrare / ad ogni passo; potrai と直接法単純未来2人称単数形を用いているが、ここでは観客、読者への呼び掛けと採るべきだろう。 Come Paris e Vienna? oh che bell'ambo! 後に差し替えられたアリドーロのアリア N. 6 のシェーナでは、チェネレントラが guardando i stracci vostri, e i stracci miei, / degna d'un Padre tal figlia sarei. あなたのボロ服と私のボロ服を見ると、私は 父に似合ったほどの娘であるかもしれない。 といっており、ここでの ウィーンとパリのように は、意味を裏返して 似たもの同士 と言っていると思われる。 |
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N. 6 [Aria Alidoro] Alidoro |
Allegro maestoso 4/4 F major |
ALIDOROアリドーロ Vasto teatro è il mondo,世界【≒ この世】は 広い劇場だ、 siam tutti Commedianti;私たちは 皆 喜劇役者だ; si può fra brevi istanti短い瞬間の間に carattere cangiar.性格【≒ 役どころ】は 変えられ 【↑】得る。 Quel ch'oggi è un Arlecchino今日は アルレッキーノである者が battuto dal padrone,主人に叩かれた、 domani è un signorone,明日は 富豪になり、 un uomo d'alto affar.高い身分の人に【なる】。 Fra misteriose nuvole,神秘的な雲の中で、 che l'occhio uman non penetraそれを 人間の目は見抜かない【≒ 人間には その奥を見通せない】 sta scritto quel carattereその性格【≒ 役どころ】は書かれている che devi recitar.それを 君は 演じなくてはならない。 |
※注意※ このアリドーロのアリアは初演時のもの。先立つレチタティーヴォとこのアリドーロのアリアは、今日ではほぼ例外なく1820年にロッシーニ自身が新たに書いた 第6番a シェーナと アリドーロのアリア N. 6a Scena ed Aria Alidoro に差し替えられて上演される。これらは巻末に掲載してある。差替後の音楽を聞く場合は、ここから巻末に下り、アリドーロのアリアの後に第1幕フィナーレに戻ること。 緩―急の二部形式のアリア。 緩 |
Più mosso 4/4 F major |
(s'ode avvicinare una Carrozza)(馬車が近付くのが聞こえる) Odo del Cocchio crescere il prossimo rumore.私は聞いている 馬車の とても近い物音が大きくなるのを。 Vieni, t'insegni il core colui che devi amar.来なさい、君の心が 教えるように 君が愛すべき男を。 (aprono la porta, vedesi una Carrozza. Cenerentola vi monta, Alidoro chiude la porta, e sentesi la partenza della Carrozza)(彼らが扉を開ける【と】、馬車が見える。チェネレントラは そこに乗り、アリドーロは扉を閉める、そして馬車の出発が聞こえる) |
急 |
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[Recitativo Dopo l'Aria Alidoro] Clorinda Tisbe Ramiro Dandini Magnifico |
SCENA Ⅷ第8場 (Gabinetto nel Casino di Don Ramiro)(ドン・ラミーロの狩猟小屋【≒ 別荘】の応接室) (Dandini entrando con Clorinda, e Tisbe sotto il braccio, Don Magnifico, e Don Ramiro)(ダンディーニが入りながら クロリンダと、そしてティスべ【と】 【二人と】腕を組んで、ドン・マニーフィコ、そしてドン・ラミーロ) DANDINIダンディーニ Ma bravo, bravo, bravo!それにしても 素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい! caro il mio Don magnifico. Di vigne,親愛なる私のドン・マニーフィコよ。ブドウ畑について、 di vendemmie, di viniブドウの収穫について、ワインについて mi avete fatto una dissertazione.あなたは 私に 論述をした。 Lodo il vostro talento.私は あなたの才能を褒め称える。 (a D. Ramiro)(ドン・ラミーロに) Si vede che ha studiato.彼が勉強したのは 明らかだ。 Si porti sul momento今すぐ 彼が 赴くがいい dove sta il nostro vino conservato.私たちのワインが貯蔵されているところに。 E se sta saldo, e intrepidoそして もし 堅固にいる【≒ しっかり立っている】ならば、そして物ともしないで【いるならば】 al trigesimo assaggio30回目の試飲に lo promovo all'onor di Cantiniero.私は 彼を 昇任させる 名誉あるワイン貯蔵庫の管理係に。 Io distinguo i talenti, e premio il saggio.私は 才能を見分け、そして賢明さに報いる。 MAGNIFICOマニーフィコ Prence! L'altezza vostra王子よ! あなたの気高さは è un pozzo di bontà. Più se ne cava善意の井戸だ【≒ とてもたくさんの善意を与える】。掘るほどに più ne resta a cavar.さらに そこに 掘りにに残る。 (piano alle figlie)(娘たちに 小声で) (Figlie! vedete?(娘たちよ! 君たちは 見たか? Non regge al vostro merto;彼は 君たちの長所に 持ちこたえていない【≒ 君たちの魅力に 耐えられなくなっている】; n'è la mia promozione indizio certo.)私の昇任は そのことについての 確かな兆候だ。) (forte)(強く) Clorinduccia, Tisbina,クロリンダよ、ティスベよ、 tenete allegro il Re. Vado in cantina.王を 陽気に保ちなさい。私は ワイン貯蔵庫に行く。 (parte)(退場する) RAMIROラミーロ (piano a Dandini)(ダンディーニに 小声で) (Esamina, disvela, e fedelmente(調べなさい、覆いを取りなさい【≒ 明らかにしなさい】、そして忠実に【≒ 正確に】) tutto mi narrerai. Anch'io fra poco君は すべてを 私に話すだろう。私も 間もなく il cor ne tenterò. Del volto i vezziそのことについて 心を試してみよう。顔の愛らしさは svaniscon con l'età. Ma il core...)年齢と共に 消え失せる。だが 心は… DANDINIダンディーニ (Il core(心は credo che sia un Melon tagliato a fette:私は 信じている 薄く切られたメロンであろうかと【≒ 心は 薄っぺらであろうかと】: un Timballo l'ingegno,才能は タンバル【= 料理の一種】【≒ 知性は グチャグチャであろうかと】 e il cervello una casa spigionata.)そして 脳は 空き家【≒ 頭は 空っぽであろうかと】 (forte come seguendo il discorso fatto sottovoce)(強く 【あたかも】小声でなされた話を続けているかのように) Il mio volere ha forza d'un editto.私の意志は 法令の効力を持っている。 Eseguite trottando il cenno mio.私の指示を 速く歩きながら【≒ 大急ぎで】 遂行しなさい。 Udisti?君は 聞いたのか? RAMIROラミーロ Udii.私は 聞いた。 DANDINIダンディーニ Fido vassallo addio.忠実な臣下よ さらば。 (parte Don Ramiro)(ドン・ラミーロは退場する) SCENA Ⅸ第9場 (Dandini, Clorinda, e Tisbe)(ダンディーニ、クロリンダ、そしてティスベ) DANDINIダンディーニ (alle donne)(婦人たちに) Ora sono da voi. Scommetterei今は 私は あなた方のところにいる。私は断言するのだが che siete fatte al torno,あなた方は 轆轤 ろくろ で作られた と、 e che il guercetto amoreそして 斜視の愛の神が è stato il tornitore.轆轤 ろくろ 職人だった と。 CLORINDAクロリンダ (tirando a sé Dandini)(ダンディーニを自分の方に引っ張りながら) Con permesso.許可をもって【≒ よろしければ】。 (La maggiore son'io; onde la prego(私は 年長者【≒ 姉】だ; だから あなたに懇願する darmi la preferenza.)私に 優先を与えるように。) TISBEティスベ (come sopra)(上と同様に) Con sua licenza.あなたの許可をもって【≒ 恐縮だが】。 (La minore son'io.私は 年少者【≒ 妹】だ。 Invecchierò più tardi.)より遅く 年を取る。) CLORINDAクロリンダ Scusi. (Quella è fanciulla.失礼。(あの女は 娘だ。 Proprio non sa di nulla.)彼女は まったく何も知らない。) TISBEティスベ Permetta. (Quella è un'acqua senza sale,許しなさい。(あの女は 塩の入っていない水【≒ ぼんやりした女】、 non fa né ben né male.)【あなたの体に】良くもなければ 悪くもない【≒ 毒にも薬にもならない】。) CLORINDAクロリンダ Di grazia. (I dritti mieiすまないが。(私の権利を la prego bilanciar.)釣り合いを取る【≒ 比較検討する ≒ 十分に考慮する】よう あなたに懇願する。) TISBEティスベ Perdoni. (Veda,許しを。(見なさい、 io non tengo rossetto.)私は 口紅をつけたままでいない。) CLORINDAクロリンダ Ascolti. (Quel suo bianco è di bianchetto.)聞きなさい。(あの彼女の白さは おしろいのためだ。) TISBEティスベ Senta..聞きなさい… CLORINDAクロリンダ Mi favorisca..私を支援しなさい… DANDINIダンディーニ (sbarazzandosi con un poco di collera)(解放されながら 少しばかりの怒りをもって) Anime belle!美しい魂たちよ! mi volete spaccar? Non dubitate.あなた方は 私を二つに割りたいのか? 疑うでない。 Ho due occhi reali私は 王の【≒ 君主にふさわしい】二つの目を持っており e non adopro occhiali.そして 眼鏡を使っていない。 (a Clorinda)(クロリンダに) (Fidati pur di me.)(どうか 私を信頼しなさい) (piano a Tisbe)(ティスベに小声で) (Sta allegra, o cara.)(上機嫌でいなさい、ああ いとしい女よ) (da sé)(自分に) (Arrivederci presto alla Longara.)(近いうちに ロンガラ【= ルンガラ通りの精神病院】で また会おう。) (parte)(退場する) TISBEティスベ (ironicamente fra loro)(皮肉を込めて 彼女たちの間で) M'inchino a Vostr'Altezza.私は 身を屈める【≒ 敬意を表する】 妃殿下に。 CLORINDAクロリンダ Anzi all'Altezza Vostra.いや むしろ 妃殿下に。 TISBEティスベ Verrò a portarle qualche memoriale.私は 何か備忘録を あなたに運びに行くだろう。 CLORINDAクロリンダ Lectum.読むために。 TISBEティスベ Ce la vedremo.私たちは そこで それを読むだろう。 CLORINDAクロリンダ Forse sì, forse no.もしかしたら はい、もしかしたら いいえ。 TISBEティスベ Poter del mondo!世の力! CLORINDAクロリンダ Le faccio riverenza!あなたに 私はお辞儀をする。 TISBEティスベ Oh! mi sprofondo!ああ! 私は 倒れ込む【≒ 五体投地する】! (partono da parti opposte)(【それぞれ】反対の側から退場する) |
(Gabinetto nel Casino di Don Ramiro) しばしば誤解されがちだが、舞踏会が行われる建物は王宮ではなく、ドン・ラミーロの 狩猟小屋 Casino である。英訳では hunting lodge など。広い意味で 別荘 と理解してよいだろう。王宮であればその近所に住んでいるドン・マニーフィコが王子の顔を知らないはずがない。逆に言えば、マニーフィコがラミーロを知らない設定にするため、狩りなどがある時だけ利用する別荘としたのだろう。 Si vede che ha studiato. si vede che ... 明らかに―,―なのは明らかだ Clorinduccia, Tisbina, それぞれ名前に 親愛の語尾 -uccia、縮小語尾 -noが付けられたもの。訳では反映させていない。 un Timballo l'ingegno, Timballo は、フランス語の タンバル timbale で知られる、円筒形の焼き型、あるいはそれを用いたパイなどの料理。またフランス語の timbale は楽器のティンパニでもある。ここでの Timballo は 焼き型のように中が空っぽ でも採れるのだが、そうすると次の e il cervello una casa spigionata. そして 脳は 空き家 と同じ内容になってしまう。ここでは料理の方と採り、中身がグチャグチャ という意味だと理解した。timballo で画像検索するとそれがよく分かることだろう。 e che il guercetto amore guercetto は、guercio 斜視の に縮小接尾語 -etto が付いた語で やや斜視の といった意味。目隠しされて矢を放つアモール Amor = クーピド Cupido をもじっている。 (Quella è un'acqua senza sale, インターネット上の19世紀末のカラブリア語/イタリア語辞書によると、acqua senza sale は fig[ura] di persona melensa, antipatica となっている。melenso は 愚かな,のろまな、ぼんやりした、antipatico は (性質などの)いやな,不愉快な。 (Arrivederci presto alla Longara.) Longara ロンガラ は現在のローマのルンガラ通り Via della Lungara(ファルネーゼ宮の川向う、テヴェレ川沿いを南北に走る)のことで、ここではその通り沿いにあったサンタ・マリア・デッラ・ピエタ精神病院を指している。 |
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N. 7 Finale Primo Clorinda Tisbe Cenerentola Ramiro Dandini Magnifico Alidoro Coro |
Allegro 6/8 D major |
SCENA Ⅹ第10場 (Deliziosa nel Casino del Principe Don Ramiro)(ドン・ラミーロの狩猟小屋【≒ 別荘】の とても気持ちの良い【部屋】) (Don Magnifico a cui i Cavalieri pongono un mantello color ponsò con ricami in argento di grappoli d'uva, e gli saltano intorno battendo i piedi in tempo di musica. Tavolini con recapito da scrivere)(ドン・マニーフィコは その者に 騎士たちは 緋色のマントを着ける 葡萄の房の銀【糸】の刺繍のある、そして 彼らは 彼【= ドン・マニーフィコ】の周りを飛び跳ねる 足を打ちながら【≒ 踏み鳴らしながら】 音楽に合わせて。小テーブル 【ものを】書くための場所のある) CAVALIERI騎士たち Conciosiacosaché trenta botti già gustò!彼は 既に 30樽を試飲した【≒ 味ききした】 【↑】にもかかわらず! e bevuto ha già per treそして 彼は 飲んだ 既に 3人分 e finor non barcollò!そして これまで ふらつかなかった! È piaciuto a Sua Maestà陛下に 気に入られた nominarlo Cantinier.彼を ワイン貯蔵庫の管理係に任命することは【≒ 陛下は 喜んで 彼を ワイン貯蔵庫の管理係に任命した】。 Intendente dei bicchierグラスの管理者だ con estesa autorità.大きな権利を持った。 Presidente al vendemmiar.葡萄を収穫するための会長【≒ 葡萄を収穫するにあたっての責任者】だ。 Direttor dell'evoè;ディオニュソスを称える歓声の監督だ; onde tutti intorno a teだから 君の周りに ci affolliamo qui a ballar.私たちは 【↑】皆 ここに 踊りに詰めかけている。 ci affolliamo qui a saltar.私たちは 【↑】皆 ここに 飛び跳ねに 詰めかけている。 MAGNIFICOマニーフィコ Intendente! Direttor!管理者! 監督! Presidente! Cantinier!会長! ワイン貯蔵庫の管理係 Grazie, grazie, che piacer!ありがとう、ありがとう、何という喜びだ! Che girandola ho nel cor.なんと 私は 心の中に 回転花火を持っていることか【≒ 私の心臓は 熱くなってバクバクいっている】。 Si venga a scrivere書きに来るように quel che dettiamo.私たちが口述することを。 (pongonsi intorno ai Tavolini, e scrivono)(彼らは 小テーブルの周りに身を置き、そして書く) Seimila copie【↓】それの 6千枚の写しを poi ne vogliamo.その後に 私は求める。 CORO合唱 Già pronti a scrivere既に 書く用意はできている tutti siam qui.私たちは 皆 ここで MAGNIFICOマニーフィコ (osservando come scrivono)(彼らが どのように書くか よく見ながら) Noi Don magnifico...私 ドン・マニーフィコは… Questo in maiuscole.これは 大文字で。 Bestie! maiuscole.獣たち【≒ 愚か者たち】め! 大文字だ。 Bravi! così.素晴らしい! そうだ。 Noi Don magnifico,私 ドン・マニーフィコは、 Duca, e Barone公爵、そして男爵【である】 dell'antichissimoこの上なく古い【≒ たいへんに由緒正しい】 Montefiascone;モンテフィアスコーネ 【↑】の; grande intendente;偉大な管理者; gran presidente,偉大な会長、 con gli altri titoli他の【多くの】肩書をもった con venti etcetera,20のあれやこれやをもった、 in splenitudine完全な d'autorità,権限のある、 riceva l'ordine命令を受け入れるように chi leggerà.【命令を】読むであろう者は。 Di più non mescereさらに【≒ そこに加えて】 入れるでない per anni quindici15年間 nel vino amabile愛すべきワインの中に d'acqua una gocciola一滴の水を alias capietur...さもなくば 捕らえられるだろう… et stranguletur,そして 窒息させられるだろう【≒ 絞首刑に処されるだろう】。 capietur... stranguletur...捕らえられるだろう… 窒息させられるだろう【≒ 絞首刑に処されるだろう】 perchè ita etcetera,なぜなら そうだから 等々、 laonde etcetera,それゆえに 等々、 nell'anno etcetera,【この】年に 等々、 Barone etcetera.男爵 等々。 (sottoscrivendosi)(署名しながら) CORO合唱 Barone etcetera男爵 等々は è fatto già.既に 為した。 MAGNIFICOマニーフィコ Ora affiggetelo今 それを掲示しなさい per la Città.町中に。 CORO合唱 Il pranzo in ordine昼食を 整然とした配置に andiamo a mettere:【↑】置きに行こう【≒ 昼食の食卓の用意をしに行こう】: vino a diluvioワインが 洪水のように【≒ 大量に】 si beverà.飲まれるだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Premio bellissimoこの上なく素敵な褒賞を di piastre sediciピアストラ銀貨16枚の a chi più Malagaマラガ産ワインを より多く【≒ 最も多く】 si beverà.飲むであろう 【↑】者には si succhierà.すするであろう 【↑↑】者には。 CORO合唱 Andiam.行こう。 (partono saltando intorno a Don Magnifico)(退場する ドン・マニーフィコの周りを飛び跳ねながら) |
(Deliziosa nel Casino del Principe Don Ramiro) deliziosa は dilizioso うっとりさせるような の名詞形の女性形で、何か特定の場所を指すわけではなく、気持ちのよい場所を状況から理解しないといけない。たとえば casa deliziosa もしくは casetta deliziosa と採れるなら 庭園などの四阿 を指す。 e bevuto ha già per tre per tre や per quattro は 3人分 4人分 を意味するが、文字通りの意味ばかりでなく たくさん の意味でも用いられる。 È piaciuto a Sua Maestà 王子(ここではダンディーニの偽王子)が臣下たちから 陛下 Sua Maestà と呼ばれるのはここだけ。 Direttor dell'evoè; evoè とは、ギリシャ神話のディオニュソス(ローマ神話におけるバックス、いずれも酒神)を称えるために上げる歓喜の声。つまりギリシャ語に由来する言葉。 Che girandola ho nel cor. girandola は今日では縁日で売っているような子供向けの 風車 かざぐるま という意味が主だが、ここでは車輪に複数の花火を付けてグルグル回す 回転花火 の意味だと思われる。 Noi Don magnifico... 固い表現だが、1人称複数形を用いて1人称単数形を表すことがある。 これより前の quel che dettiamo. や quel che dettiamo. も実際には1人称単数形なのかもしれない。 in splentudine / d'autorità, 完全な権限で。splenitudine は plenitudine と同じ 完璧,完全さ の意味だが、この成句では一般に splenitudine が用いられる。 alias capietur... / et stranguletur, ラテン語。ただし stranguletur は仮定法現在の受動態(3人称単数)なので合っていない。 perchè ita etcetera, ita はラテン語。この場合はイタリア語の così と同じ。 |
Vivace 2/2 G major |
SCENA ⅩⅠ第11場 (Dandini, e D.Ramiro correndo sul d'avanti del palco osservando per ogni parte)(ダンディーニ、そしてドン・ラミーロ 舞台前面を走りながら いたるところを監視しながら) RAMIROラミーロ (sottovoce)(小声で) Zitto zitto: piano piano:黙って 黙って: 静かに 静かに: senza strepito, e rumore:騒音なしに、そして物音【なしに】: delle due qual è l'umore?二人の気性は どのようだ? Esattezza, e verità!正確【なことを】を、そして真実を【言いなさい】! DANDINIダンディーニ Sottovoce a mezzo tuono:小声で 半分の声の大きさで: in estrema confidenza:甚だしい信用で: sono un misto d'insolenza,彼女たちは 混合物だ 尊大の、 di capriccio, e vanità.気紛れの、そして自惚れの。 RAMIROラミーロ E Alidoro mi diceaだが アリドーロは 私に言った che una figlia del Barone...男爵の娘が… DANDINIダンディーニ Ah! il maestro ha un gran testone;ああ! 先生は 大きな頭を持っている【≒ 間抜けだ】。 oca eguale non si dà.同じような鵞鳥 がちょうは 与えられない【≒ あんな馬鹿な人は 見たことない】。 RAMIROラミーロ (Se le sposi pur chi vuole...(もし 望む者は【≒ もし 彼女たちと結婚したい者がいれば】 どうか 彼女たちと結婚するがいい… seguitiamo a recitar.)演じ続けよう。) DANDINIダンディーニ (Son due vere banderuole...(彼女たちは 二つの 本当の 風見鶏だ… ma convien dissimular.)だが 偽る必要がある【≒ 知らないふりをしなければならない】。) SCENA ⅩⅡ第12場 (Clorinda accorrendo da una parte, e Tisbe, dall'altra)(クロリンダ 一つの側から駆け付けながら、そしてティスベ、別の側から) CLORINDAクロリンダ (di dentro)(内部から【≒ 舞台裏で】) Principino dove siete?王子よ あなたはどこにいるのか? TISBEティスベ Principino dove state?王子よ あなたはどこにいるのか? CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Ah! perché m'abbandonate?ああ! なぜ あなたは 私を置き去りにするのか? Mi farete disperar.あなたは 私を絶望させている。 TISBEティスベ Io vi voglio...私は あなたに 望んでいる… CLORINDAクロリンダ Vi vogl'io.あなたに 私は 望んでいる… DANDINIダンディーニ Ma non diamo in bagatelle!だが 取るに足らないものに 躓かないようにしよう【≒ つまらないことで 揉めるのは止めよう】! Maritarsi a due sorelle二人の姉妹と結婚することは tutte insieme non si può!二人とも一緒に できない! Una sposo.私は 一人の女と結婚する。 CLORINDAクロリンダ (con interesse di smania)(不安の関心をもって【≒ 不安で気になって】) E l'altra?それで 別の女【≒ もう一人の女】は? TISBEティスベ (con interesse di smania)(不安の関心をもって【≒ 不安で気になって】) E l'altra?それで 別の女【≒ もう一人の女】は? DANDINIダンディーニ E l'altra, e l'altra...それで 別の女【≒ もう一人の女】は、それで 別の女は… (accennando Ramiro)(ラミーロを示しながら) all'Amico la darò.私は 友に 彼女を与えよう。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (risolute)(決然と【≒ きっぱりと】) No no no no no no nò.いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ いいえ だめ、 Un Scudiero! oibò oibò!従者と! ああ ああ! RAMIROラミーロ (ponendosi loro in mezzo con dolcezza)(彼女たちの真ん中に身を置いて 優しさをもって) Sarò docile, amoroso,私は 従順になろう、情愛深く【なろう】、 CLORINDAクロリンダ (guardandolo con disprezzo)(侮蔑をもって 彼を見つめながら) Un Scudiero! No signore!従者と! いいえ 貴君【= ダンディーニ】よ! Un Scudiero! Questo no.従者と! この男は 嫌だ。 RAMIROラミーロ tenerissimo di cuore.心から この上なく優しく【なろう】 TISBEティスベ (guardandolo con disprezzo)(侮蔑をもって 彼を見つめながら) Un Scudiero! No signore!従者と! いいえ 貴君【= ダンディーニ】よ! Un Scudiero! Questo no.従者と! この男は 嫌だ。 CLORINDAクロリンダ Con un'anima plebea!平民の魂と! RAMIROラミーロ Sarò buono...心優しくなろう… TISBEティスベ Con un'aria dozzinale!ありふれた顔付き【の男】と! RAMIROラミーロ ... amoroso.…情愛深く【なろう】。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (con affettazione)(気取って) Mi fa male私【の体】を悪くする solamente a immaginar.ただ 想像するだけで【≒ 考えただけでも ゾッとする】。 RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ (fra loro ridono)(彼らの間で【≒ 互いに ≒ 二人とも】 笑いながら) La scenetta è originale,笑いを誘う場面は 独創的だ【≒ こんな愉快な光景は またとない】、 veramente da contar.本当に 話して聞かせたくなるほどに。 |
Ma non diamo in bagatelle! dare in ql.co. ―に躓く |
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Moderato 4/4 C major |
SCENA ⅩⅢ第13場 (Coro di Cavalieri dentro le Scene, indi Alidoro)(騎士たちの合唱 舞台の中で【≒ 舞台裏で】、その後にアリドーロ) CORO DI CAVALIERI騎士たちの合唱 di dentro内部で【≒ 舞台裏で】 Venga, inoltri, avanzi il piè.来るがいい、進みなさい、足を進めなさい。 Anticamera non v'è,控えの間は ない。 no, no, no, no.いいえ、いいえ、いいえ、いいえ。 RAMIROラミーロ Sapientissimo Alidoro...この上なく学識豊かな アリドーロよ… RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ Questo strepito cos'è?この大騒ぎは 何だ? ALIDOROアリドーロ Dama incognita qui vien.未知の婦人が ここに来ている。 Sopra il volto un velo tien.顔の上に ヴェールを着けて。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Una Dama!婦人が! ALIDOROアリドーロ Signor sì.貴女たちよ はい。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Ma chi è?だが 彼女は 誰なのか? ALIDOROアリドーロ Nol palesò.彼女は それを 明かしていない。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Sarà bella?彼女は 美女なのだろうか? ALIDOROアリドーロ Sì, e no.はい、そして いいえ。 RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ (sottovoce)(小声で) Chi sarà?彼女は 誰なのだろうか? ALIDOROアリドーロ Ma non si sa.しかし 【誰も】知らない。 CLORINDAクロリンダ Non parlò?彼女は 話さなかったのか? ALIDOROアリドーロ Signora no.貴女よ はい【話していない】。 TISBEティスベ E qui vien?それで 彼女は ここに来ているのか? ALIDOROアリドーロ Chi sa perché?どうしてなのか 誰が知っているのか?【≒ 彼女が なぜ ここに来たのかは 誰も知らない。】 DANDINI E ALIDOROダンディーニとアリドーロ Chi sarà?彼女は 誰なのだろうか? RAMIRO, DANDINI E ALIDOROラミーロ、ダンディーニとアリドーロ Chi è?彼女は 誰なのか? CLORINDA, TISBE, RAMIRO, DANDINI E ALIDOROクロリンダ、ティスベ、ラミーロ、ダンディーニとアリドーロ perché?どうしてなのか? Non si sa.【誰も】知らない。 Si vedrà.彼女は 姿を見せるだろう。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (Gelosia già già mi lacera,(嫉妬が もう既に 私を引き裂いている、 già il cervel più in me non è.)既に 脳は もはや 私の中にない。) RAMIROラミーロ (Un ignoto arcano palpito(知られていない【≒ 今まで感じたことのない】 未知の 激情が) ora m'agita, perché?)今 私を 興奮させている、なぜなのか?) DANDINIダンディーニ (Diventato sono uno zucchero:私は 砂糖になった: quante mosche intorno a me.)私の周りに 何と多くの蠅 ハエ が。) ALIDOROアリドーロ (Gelosia già già le rosica,(嫉妬が もう既に 彼女たちを引き裂いている、 più il cervello in lor non è.)もはや 脳は 彼女たちの中にない。) (Dandini fa cenno ad Alidoro d'introdurre la Dama)(ダンディーニはアリドーロに合図をする 婦人を案内するように) |
(Un ignoto arcano palpito palpito が単数形なので、心臓の鼓動ではなく、激しい感情を指している。 |
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Vivace 4/4 E-flat major |
SCENA ⅩⅣ第14場 (Cavalieri che precedono, e schieransi in doppia fila per ricevere Cenerentola, che in abito ricco ed elegante avanzasi velata)(騎士たち その者たちは 先行している、そして2列に整列している チェネレントラを待ち受けるため、その者は 豪華で優美な服を着て ヴェールをして 進み出る) CORO合唱 Ah! Se velata ancorああ! まだ ヴェールで覆われながら dal seno il cor ci hai tolto,君は 私たちの胸から 心を奪ったのであれば、 se svelerai quel volto, che sarà?もし 君が その顔の 覆いを取り去ったならば、何が起きるのだろうか【≒ どうなるのだろうか】? |
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Maestoso 4/4 E-flat major |
CENERENTOLAチェネレントラ Sprezzo quei don che versa私は 軽蔑する あの贈り物たちを それらを 注ぐ【≒ ばら撒く】 fortuna capricciosa.気紛れな運命が。 M'offra chi mi vuol sposa,私に 提供するように 私を妻に望むものは、 rispetto, amor, bontà.敬意、愛、善良を。 RAMIROラミーロ (Di quella voce il suono(あの声の響きは ignoto al cor non scende;未知で 私の心に下りていない【≒ あの聞き覚えのある声が 私の心に下りて来る】; perché la speme accende?なぜ それ【= あの声】は 希望に火を点けるのか? di me maggior mi fa.)それ【= あの声】は 私を 私よりも より大きくさせる。) DANDINIダンディーニ Begli occhi che dal velo美しい両目よ その者たち【= お前たち = 両目 2人称複数 】は ヴェールから vibrate un raggio acuto,鋭い光線を 投げている、 svelatevi un minutoヴェールを外しなさい 1分間【≒ 少しの間だけ】 almeno per civiltà.ともかくも 礼儀正しさのために。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (Vedremo il gran miracolo(大きな奇跡を見よう di questa rarità.)この稀なことの。) DANDINIダンディーニ Svelatevi.ヴェールを外しなさい。 |
Begli occhi che dal velo / vibrate un raggio acuto, vibrate が2人称複数形なので、その主語である Begli occhi は2人称複数への呼びかけでなくてはならない。 |
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Andante maestoso 2/4 G major |
(Cenerentola svelasi. Momento di sorpresa, di riconoscimento, d'incertezza)(チェネレントラはヴェールを外す。驚嘆の瞬間、見覚えの【瞬間】、不確かさの【瞬間】) CLORINDA, TISBE, CENERENTOLA, RAMIRO, DANDINI E ALIDOROクロリンダ、ティスベ、チェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニとアリドーロ Ah!ああ! (ciascuno da sé guardando Cenerentola, e Cenerentola sogguardando Ramiro)(銘々が 独白 チェネレントラを見つめながら、そして チェネレントラは ラミーロを 横目で見ながら) CLORINDAクロリンダ (Parlar, pensar vorrei,(話すことを、考えることを 私は 欲しているのだが、 parlar, pensar non so.【けれども】話すことを、考えることを 私は できない。 Quest'è un inganno oh dèi!これは 欺瞞 ぎまん だ ああ 神々よ! quel volto m'atterrò.)あの顔は 私を打ちのめした。) RAMIROラミーロ (Parlar, pensar vorrei,(話すことを、考えることを 私は 欲しているのだが、 parlar, pensar non so.【けれども】話すことを、考えることを 私は できない。 Quest'è un incanto oh dèi!これは 魔法だ ああ 神々よ! Quel volto m'atterrò.)あの顔は 私を打ちのめした。) |
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(Andante maestoso) 6/8 G major |
CENERENTOLAチェネレントラ (Parlar, pensar vorrei,(話すことを、考えることを 私は 欲しているのだが、 parlar, pensar non so.【けれども】話すことを、考えることを 私は できない。 Quest'è un incanto oh dèi!これは 魔法だ ああ 神々よ! Quel volto m'atterrò.)あの顔は 私を打ちのめした。) CLORINDA, TISBE E DANDINIクロリンダ、ティスベとダンディーニ (Parlar, pensar vorrei,(話すことを、考えることを 私は 欲しているのだが、 parlar, pensar non so.【けれども】話すことを、考えることを 私は できない。 Quest'è un inganno oh dèi!これは 欺瞞 ぎまん だ ああ 神々よ! quel volto m'atterrò.)あの顔は 私を打ちのめした。) CENERENTOLA E RAMIROチェネレントラとラミーロ (Parlar, pensar vorrei,(話すことを、考えることを 私は 欲しているのだが、 parlar, pensar non so.【けれども】話すことを、考えることを 私は できない。 Quest'è un incanto oh dèi!これは 魔法だ ああ 神々よ! Quel volto m'atterrò.)あの顔は 私を打ちのめした。) ALIDOROアリドーロ (Parlar, pensar vorrebbe,(話すことを、考えることを 彼【= ラミーロ】は 欲しているのだが、 parlar, pensar non può.【けれども】話すことを、考えることを 彼は できない。 Amar già la dovrebbe:彼は もう 彼女を愛しているはずなのだが: il colpo non sbagliò.)打撃は 間違えなかった【≒ 私の狙いに 狂いはなかった】。) |
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Allegro 4/4 B-flat major |
SCENA ULTIMA最終場 (Don Magnifico accorrendo, e detti)(ドン・マニーフィコ 駆け付けながら、そして 前の場の人たち) MAGNIFICOマニーフィコ Signora Altezza è in tavola...閣下が 食卓に着いている… che... co... chi... sì, che... che bestia!何… これは… 誰… そうだ、何と… 何という獣【≒ そんな馬鹿な】! Quando si dice, i simili!言うならば、似た者たち【≒ 瓜二つ】! Non sembra Cenerentola?チェネレントラに そっくりじゃないか? TISBEティスベ Pareva ancora a noi.私たちにも 【そう】思われた。 CLORINDAクロリンダ Ma a riguardarla poi…でも とはいえ 彼女を見直すと… TISBEティスベ la nostra è goffa, e attratta,私たちの者【= チェネレントラ】は 不格好な、そして硬直した【≒ 不器用な】【女】、 CLORINDAクロリンダ questa è un pò più ben fatta;この女は 少し 出来が良い; CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ ma poi non è una Venereでも とはいえ 彼女は ヴェーネレ【= ウェヌス = ヴィーナス ≒ 美の女神】dehanai da farci spaventar.私たちを 仰天させるほどの。 MAGNIFICOマニーフィコ Quella sta nella cenere;あの女【= チェネレントラ】は 灰の中にいる; ha stracci sol per abiti.彼女は 服には ボロ服しか 持っていない。 CENERENTOLAチェネレントラ (Il Vecchio guarda, e dubita.)(年寄がじっと見ている、そして疑っている。) RAMIROラミーロ (Mi guarda, e par che palpiti.)(彼女は 私を見ている、そして ドキドキしているように見える。) DANDINIダンディーニ Ma non facciam le statue.さて 像を立てないようにしよう【≒ 立像のように突っ立っているのは止めよう】。 Patisce l'individuo:個人【≒ 銘々】が 苦しむ: andiamo, andiamo a tavola.行こう、食卓に行こう。 poi balleremo il Taiceその後に タイチェ【≒ ドイツ舞曲】を踊ろう e quindi la bellissima...そして 続いて 最も美しい女が… con me s'ha da sposar.私と 結婚するはずだ。 CLORINDA, TISBE, CENERENTOLA, RAMIRO, ALIDORO E COROクロリンダ、ティスベ、チェネレントラ、ラミーロ、アリドーロと合唱 Andiamo, andiamo a tavola,行こう、食卓に行こう、 si voli a giubilar.大喜びしに 飛んで行くがいい【≒ 大いに楽しむために 急いで行こう】。 DANDINIダンディーニ (Oggi che fo da Principe(今日は 王子の役をしているのだから per quattro io vo' mangiar.)4人前 私は食べたい。) |
Signora Altezza è in tavola... 英訳で Her Royal Highness、仏訳で Madame son Altesse と、どちらも 妃殿下 と訳しているものがあるのだが、このオペラには妃殿下に相当する女性役はない。イタリア語の Altezza は女性形で男女どちらも表すので、ここでの Signora Altezza はやはり王子(この場合はダンディーニの偽王子)を指していると考えるべきだろう。その上で、マニーフィコは先のワイン貯蔵庫の管理係の告知で昼食会に遅れ、もう王子が食卓に着いていると思い込んで慌てて駆け付けたと考えるべきだろう。 poi balleremo il Taice Taice タイチェ はドイツ語の Teitsch タイチュ がイタリア語化したもの。そして Teitsch は Deutsch ドイツ と同源の語で ドイツ風の。つまり Taice タイチェ は ドイツ舞曲 のこと。 モーツァルトのドン・ジョヴァンニの第1幕フィナーレでレポレッロがマゼットを無理やり踊らせる音楽が La Teitsch で、Bärenreiterの総譜には la Teitsch = Danza "alla Tedesca" ("Deutscher") と脚注が付けられている。 つまりダンディーニは 昼食の後はドイツ舞曲を踊ろう と誘っており、王子なのに優雅な宮廷舞曲でなくドイツの田舎風の踊りをしようと言い出して、偽王子の尻尾を出しているということだろう。 |
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Stretta del Finale [Primo] Vivace 4/4 D major |
CLORINDA, TISBE, CENERENTOLA, RAMIRO, DANDINI, ALIDORO E COROクロリンダ、ティスベ、チェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニ、アリドーロと合唱 Mi par d'essere sognando私には思われる 夢を見ていると fra giardini, e fra boschetti.庭園の中で、茂みの中で。 I ruscelli sussurrando,せせらぎが さらさらと音を立てながら、 gorgheggiando gli augelletti:小鳥たちが声を震わせて囀りながら: in un mare di delizie悦楽の海で fanno l'anima nuotar.彼らは 魂を 泳がせる。 Ma ho timor che sotto terraしかし 私は 不安を抱いている 大地の下で piano piano a poco a poco,静かに静かに 少しずつ少しずつ si sviluppi un certo foco.何か炎が 成長しているのではないか 【↑↑】と。 E improvviso a tutti ignotoそして 突然 皆に知られず【≒ 誰も気付かないうちに】 balzi fuori un terremoto,地震が 外で 跳ね上がり、 che crollando, strepitando,それは 崩壊しながら、大音響を立てながら、 fracassando, sconquassando打ち砕きながら、めちゃくちゃにしながら poi mi venga a risvegliar;それで 私を 再び目覚めさせに来るであろう; e ho paura che il mio sognoそれで 私は 恐れている 私の夢が vada in fumo a dileguar.煙と消えに行こうとしているのであろう 【↑】と。 |
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ATTO SECONDO | |||
N. 8 Introduzione [Coro di Cavalieri] Coro |
Allegro spiritoso 4/4 A major |
[SCENA Ⅰ][第1場] (Gabinetto nel Palazzo di Don Ramiro)(ドン・ラミーロの館の応接室) (Cavalieri, Don Magnifico, entrando con Clorinda, e Tisbe sotto il braccio, ed osservando i Cavalieri che partono)(騎士たち、ドン・マニーフィコ、入りながら クロリンダと、そしてティスベ【と】 腕を組んで、そして 騎士たちをじっと見ながら その者たちは退場する) CORO DI CAVALIERI騎士たちの合唱 Ah! della bella incognitaああ! 美しい 見知らぬ女の l'arrivo inaspettato予期せぬ到着は peggiore assai del fulmine雷よりも さらに いっそう悪 per certe belle è stato.かった ある女性たちにとって。 La guardano, e taroccano,彼女たち【= 姉妹】は 彼女【= チェネレントラ】を見つめて、ぶうぶう言って、 sorridono, ma fremono.微笑んで、しかし震えている。 Hanno una lima in core彼女たちは 心の中に やすり【≒ 苦悩】 を持っている che a consumar le sta.それは 彼女たちを すり減らし続けている。 Guardate! Già regnavano!よく見てみなさい! 彼女たちは 既に 支配した【気になっている】! Ci ho gusto. Ah! ah! ah!たいへん 結構だ。ハ! ハ! ハ! (partono deridendole)(退場する 彼女たちを嘲笑しながら) |
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[Recitativo Dopo il Coro di Cavalieri] |
MAGNIFICOマニーフィコ (in collera caricata)(大げさに 立腹して) Mi par che quei birbanti私には 思われる あの ならず者たちは ridessero di noi sottocappotto.私たちのことを コートの下で 笑っていた【≒ 意地悪そうに忍び笑いしていた】のではないか 【↑】と。 Corpo del mosto cotto!濃縮葡萄果汁の体め【≒ なんたることだ】! Fo un Cavaliericidio.私は 騎士殺しをする。 TISBEティスベ Papà, non v'inquietate.父よ、苛立つでない。 MAGNIFICOマニーフィコ Ho nella testa私は 頭の中に 持っている quattromila pensieri.4千の考えを。 (passeggiando)(行ったり来たりしながら) Ci mancavaそれについて 欠けていた quella madama anonima.あの 名の分からない婦人が【≒ だが 4千の考えの中に あの正体不明の婦人が抜けていた】。 CLORINDAクロリンダ E credeteそれで あなたは 信じているのか che del Principe il core ci contrasti?彼女が 私たちに 王子の心を対抗しているであろう【≒ 王子の心を巡って 私たちと敵対しているであろう】 と? Somiglia a Cenerentola e vi basti.彼女は チェネレントラに似ている それで あなたには こと足りるであろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Somiglia tanto, tanto彼女は たいへんに似ている、 che son due goccie d'acqua, e quando a pranzo彼女たち【= 名の分からない婦人とチェネレントラ】は 水の2滴である【≒ 瓜二つである】 【↑】ほどに【似ている】、そして 昼食で faceva un certo verso con la bocca,彼女が 口で何か声をした【≒ 何か話をした】 【↑】時に、 brontolavo fra me, per bacco è Lei.私は 私の中で【≒ 自分に】呟いた、なんとまあ 彼女【= 名の分からない婦人】は 彼女【= チェネレントラ】だ と。 Ma come dagli Ebreiいったい どうやって ヘブライ人たちから prender l'abito a nolo! Aver coraggio服を 料金を払って借りるのだ【≒ 高額な貸し服を借りられるというのだ】! 【その上で】 勇気を持っているのだろうか di venir fra noi?私たちの中に来る? E poi parlar coi linci, e squinci? e poiそして それから 話すのか そこで、そして ここで【≒ 気取って話すのか】? そして それから starsene con sì gran disinvoltura,あれほどの 素晴らしい態度の自然さで いるのか【≒ あんな風に 立派な態度で自然に振舞えるものか】、 e non temere una schiaffeggiatura?そして 【正体がばれた時の】平手打ちを 恐れないのか? TISBEティスベ Già già questa figliastraもうすでに この継子娘【= チェネレントラ】は fino in chi la somiglia è a noi funesta.彼女に似ている者においてさえ 私たちには 不吉だ【≒ あの継子娘は 自らのみならず彼女に似た者ですら 私たちに不幸をもたらす】。 MAGNIFICOマニーフィコ Ma sai tu che tempestaしかし 君も知っている 嵐が mi piomberebbe addosso,今 私に 突然襲い掛かるかもしれない 【↑】ことを、 se scopre alcuno come ho dilapidatoもし 誰かが 暴くならば どのように 私が 着服したか il Patrimonio suo! Per abbigliarvi,彼女の財産を! 君たちを盛装させるために、 al verde l'ho ridotta. È diventata私は 彼女を 一文無しにならせた。彼女は un vero sacco d'ossa. Ah se si scopre,真の骨の袋に 【↑】なった【≒ 骨と皮だけになった ≒ やせ細った】。ああ もし 暴かれたら、 avrei trovato il resto del Carlino.私は カルリーノ銀貨の残り【≒ 釣り銭】を見付けただろうに。 CLORINDAクロリンダ (con aria di mistero)(神秘の様子で【≒ もったいぶって】) E paventar potete a noi vicino?それで あなたは 恐れることができるのか 私たちの近くで【≒ 私たちが傍にいても あなたは心配なのか】? MAGNIFICOマニーフィコ Vi son buone speranze?良い希望があるのか? TISBEティスベ Eh! niente niente:まあ! 何と: posso dir ch'è certezza.私は 言うことができる それ【= 次にティスベが言う内容】が 確証である と。 CLORINDAクロリンダ Io quasi quasi私は ほとんど ほとんど potrei dar delle cariche.【マニーフィコに】気力を与える【≒ やる気を持たせる】ことができる 【↑】と思うくらいなのだが。 TISBEティスベ In segreto m'ha detto: Anima mia.彼【= 王子 = 偽王子ダンディーニ】は こっそり 私に言った: 私の魂よ。 Ha fatto un gran sospiro, è andato via.私は 大きな溜め息を吐いた と、そして彼は去って行った。 CLORINDAクロリンダ Un sospiro cos'è? quando mi vede溜め息が何なのか? 彼【= 王子 = 偽王子ダンディーニ】は 私を見ると subito ride.すぐに 笑う。 MAGNIFICOマニーフィコ (riflettendo, e guardando ora l'una, ora l'altra)(熟考しながら、そして 見つめながら 今は一人の女を、今は別の女を【≒ 姉妹を 一人ずつ じろじろ見ながら】) Ah! dunqueああ! したがって qui sospira, e qui ride.ここでは 溜め息し、そしてここでは 笑う。 CLORINDAクロリンダ Dite Papà Barone言いなさい 男爵である父よ voi che avete un testone.あなたは その者は 大頭を持っているのだから。 Qual è il vostro pensier? ditelo schietto.どれが あなたの考えなのか? それを言いなさい 率直に。 MAGNIFICOマニーフィコ Giocato ho un ambo, e vincerò un eletto.私は アンボ【= イタリアの賭け事。数字を2つ選んで当てる】を賭けて、そして 私は 選ばれた者を獲得するだろう【≒ 私は アンボで数字を2つ賭けた、そして当選者になるだろう】。 Da voi due non si scappa; oh come oh come君たち二人から 誰も 逃げない【≒ 逃げられない】; ああ いかに ああ いかに figlie mie benedette,神の祝福を受けた 私の娘たちよ、 si parlerà di me nelle gazzette!私について 新聞で 語られるであろうか【≒ どれほど 新聞が 私のことを 書き立てることだろうか】! Quest'è il tempo opportunoこれは 適切な時だ per rimettermi in piedi. Lo sapete私を 立っている状態に戻すために【≒ 私を 立ち直らせる 好機だ】。君たちは そのことを知っている io sono indebitato.私は 借金を追っている。 Fino i stivali a tromba ho ipotecato.ラッパ型の長靴に至るまで 私は 抵当に入れた。 Ma che flusso, e riflussoだが 【↓】嘆願書の 何という満ち潮を、そして【何という】引き潮を avrò di Memoriali! ah questo solo私は持つことになるのだろうか【≒ 大量の嘆願書が 潮の満ち引きのように 寄せては引くことになるだろう】! ああ これだけが è il paterno desio,父の願いだ、 che facciate il rescritto a modo mio.それを 君たちは 私の流儀で【≒ 私の意に従って】 回答をする。 C'intenderem fra noi,私たちの間で 合意しよう【≒ 皆で 分かり合おう】、 viscere mie mi raccomando a voi.私の内臓【≒ 子たち】よ、私は 君たちに 頼り切っている。 |
ridessero di noi sottocappotto. インターネット上の1830年代の独伊辞典では rider sotto cappotto は kichern となっている。kichernは くすくす笑う という意味で、特に嘲笑する場合は 意地悪そうに忍び笑いをする といった意味になる。 Corpo del mosto cotto! 慣用句の Corpo di Bacco! 何たることだ! のもじり。mosto cotto は葡萄の搾り汁を釜で長時間煮詰めて濃縮させたもの。これ自体が調味料であり、またこれを原料にバルサミコ酢が作られる。 E poi parlar coi linci, e squinci? linci = di lì そこから。squinci = quinci ここから。parlare coi linci e squinci は parlare in quinci e quindi と同じく 気取って話す の意味。 al verde l'ho ridotta. ridursi al verde 極貧になる,一文無しになる È diventata un vero sacco d'ossa. esser un sacco d'ossa 骨と皮だけに痩せている。 avrei trovato il resto del Carlino. この場合のカルリーノは、当時の両シチリア王国で発行されたカルリーノ銀貨のこと。resto は釣り銭。したがって il resto del Carlino. は、カルリーノ銀貨を使った後のお釣り、すなわち小銭を意味する。 ちなみに、1880年代に創刊されたボローニャ拠点のイタリアの老舗新聞 il Resto del Carlino もやはり カルリーノ銀貨の釣り銭(で買える新聞) の意味。 Eh! niente niente: niente niente は驚きを表す成句。Eh! niente niente で おやまあ! という感じ。 なおクリティカルエディション総譜では niente niente の後にコロンが打ってある。 Io quasi quasi / potrei dar delle cariche. quasi quasi ほとんど―だと思うくらいだ。条件法の緩和表現を強めている。 dare la carica a qu.cu. ―にやる気を持たせる。 voi che avete un testone. testone 大頭 は、一般的に 間抜け,頑固者 の意味だが(そして第1幕でダンディーニはアリドーロをそのように評している)、ここでは 頭が良い の意味で用いられている。 Giocato ho un ambo, e vincerò un eletto. ここでの ambo は(両方 ではなく)、イタリアの賭け事 Lotto ロット において、数字を2つ選んで当てること。姉妹を王妃にすることに賭け事に例えて 数字を2つ選んだ、そして当選するだろう という意味。 Fino i stivali a tromba ho ipotecato. i stivali a tromba 膝に向けて徐々に広くなっているブーツ。 |
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N. 9 [Aria Magnifico] Don Magnifico |
Allegro 4/4 D major |
MAGNIFICOマニーフィコ Sia qualunque delle figlie【二人の】娘たちの誰でも【≒ どちらかが】 che fra poco andrà sul trono,間もなく 玉座に行くだろうから、 ah! non lasci in abbandonoああ! 放置に捨てないでくれ【≒ 見捨てないでくれ】 un magnifico papà.立派な父を。 Già mi par che questo, e quello私には 既に 感じられる この男が、あの男が conficcandomi a un cantone私に 深く食い込みながら 部屋の角に【≒ 部屋の隅に 私を押しやって】 e cavandosi il cappelloそして 帽子を取りながら incominci: sor Barone:始めるであろう 【↑↑↑】ことが。男爵殿: alla figlia sua Realeあなたの 王族の娘に porterebbe un memoriale?あなたは 嘆願書を できるかもしれないのか【≒ 持っていってくれるのか】? Prenda poi la cioccolataそれから 彼は チョコレートを取り出すであろう e una doppia ben coniataそして 美しく鋳造されたドブローネ金貨1枚を faccia intanto scivolar.そうしている間に 滑らせるであろう。 Io rispondo: eh sì, vedremo.私は 答える: ふむ そうだな、見てみよう【≒ 検討しよう】。 Già è di peso? Parleremo.それは 既に 重要であるのか? 話すだろう。 Da Palazzo può passar.それは 宮廷へと通過することができる。 Mi rivolto: e vezzosetta振り向くと: 愛らしい女が tutta odori, e tutta unguenti,香水いっぱいに、そして 軟膏【≒ 香油】いっぱいに、 mi s'inchina una scuffietta彼女は 頭巾【を被った頭 】を 私に 下げる fra sospiri, e complimenti:溜め息の中で【≒ 溜め息を吐き吐き】、そして世辞【の中で】【≒ 世辞を言いながら】: in Falsettoファルセットで Baroncino! Si ricordi quell'affare.男爵よ! あなたが あの用件を覚えているように。 [voce naturale][普通の声] E già m'intende;そして 彼女は 既に 私を理解している; senza argento parla ai sordi.【マニーフィコに】 銀貨なしでは 彼女は 耳の聞こえない人に話している【ようなものだ と】。 La manina alquanto stende,彼女は 小さな手を いくらか 伸ばして、 fa una piastra sdrucciolar.ピアストラ銀貨1枚を滑らせる。 Io galante: occhietti bei!私は 愛想良く【言う】: 美しい 小さな両目よ! Ah! per voi che non farei!ああ! お前たち【= 両目】のために 何を 私は しないかもしれないというのだ【≒ 私は お前たちのためなら 何でもしよう】! Io vi voglio contentar!私は お前たち【= 両目】を 満足させたい! Mi risveglio a mezzogiorno:私は 正午に 再び目覚める: suona appena il campanello,鐘が鳴るやすぐに、 che mi vedo al letto intornoその時 私は 寝床の周りに 見る supplichevole drappello:嘆願する一行を【≒ 嘆願しに来た人々を】。 questo cerca protezione:この男は 保護【≒ 後援 ≒ 後ろ盾】を探している: quello ha torto, e vuol ragione:あの男は 間違いを持ち【≒ 過ちを犯して】、理由を望んでいる【≒ 釈明を欲しがっている ≒ 言い訳を探している】: chi vorrebbe un impieguccio:低報酬の職を望む者: chi una cattedra ed è un ciuccio:正教授の職位を【望む者】 だが 彼は 驢馬【≒ 馬鹿】だ: chi l'appalto delle spille,ブローチの落札を【望む者】、 chi la pesca delle anguille,鰻 うなぎ の漁を【望む者】、 ed intanto in ogni latoそして その間に どの側でも sarò zeppo, e contornato私は ぎっしり詰まるだろう【≒ 物でいっぱいになるだろう】、そして 包囲される【だろう】 di memorie, e petizioni,備忘録で、そして嘆願書【で】 di galline, di sturioni,雌鶏 めんどり で、チョウザメ【で】、 di bottiglie, di broccati,【酒の入った】瓶で、ブロケード【= 高級な絹織物の一種】で、 di candele, e marinati,ろうそくで、マリネで、 di ciambelle, e pasticcetti,チャンベッラ【= 輪状の焼き菓子もしくは揚げ菓子、ドーナッツも含む】で、小パイで di canditi, e di confetti,砂糖漬けの果物で、そして コンフェット【= アーモンドの糖衣菓子】で、 di piastroni, di dobloni,ピアストラ銀貨で、ドブローネ金貨で、 di vaniglia, e di caffè.バニラで、そして コーヒーで、 D'ogni lato sarò zeppo.どの側でも 私は ぎっしり詰まるだろう【≒ 私のまわりは いっぱいになるだろう】。 Basta basta: non portate:もうだくさんだ もうたくさんだ:持って来るな: terminate: ve n'andate?終わりにしろ: 行ってしまうか? Basta basta in carità.もうだくさんだ もうたくさんだ 後生だから Serro l'uscio a catenaccio:私は 出入口を 掛け金で 閉める: importuni, seccatoriしつこい人たちよ、うるさい人たちよ fuori fuori, via da me.外に出ろ 外に出ろ、私の元から去れ。 Presto presto, via di qua!急いで 急いで ここから去れ! (parte)(退場する) |
Basta basta in carità. in carità = per carità |
[Recitativo] Dopo l'Aria Magnifico |
TISBEティスベ (accostandosi in confidenza)(近付いて 内密に) Dì: sogni ancor che il Principe言いなさい 君は まだ 夢見ているのか 王子が vada pensando a te?君のことを思いつつあると? CLORINDAクロリンダ Me lo domandi?君は それを 私に尋ねるのか? TISBEティスベ Serva di Vostr'Altezza.【私は あなた】妃殿下の侍女だ。 CLORINDAクロリンダ A' suoi comandi.あなたの命令に【≒ 何なりと命令を】。 (partono scostandosi, e complimentandosi ironicamente)(離れながら退場する、そして 皮肉っぽく褒め合いながら) SCENA Ⅲ第3場 (Ramiro, indi Cenerentola fuggendo da Dandini poi Alidoro in disparte)(ラミーロ、その後にチェネレントラ ダンディーニから逃れながら その次にアリドーロ 離れて) RAMIROラミーロ Ah! Questa bella incognitaああ! あの 未知の美女は con quella somiglianza all'infelice,あの不幸な女と類似点を持っている、 che mi colpì stamane,その者【= 不幸な女 = チェネレントラ】は 今朝 私を打った【≒ 私の心を射抜いた】、 mi va destando in petto【あの未知の美女は】私の胸の中に 呼び覚ましつつある certa ignota premura... Anche Dandiniなにか未知の配慮【≒ 関心】を… ダンディーニもまた ne sembra innamorato.彼女に 夢中になったように思われる。 Eccoli: udirli or qui potrò celato.そら 彼らだ: 私は 今 ここで 隠れて 彼ら【の言うこと】を聞くことができるだろう。 (si nasconde)(身を隠す) DANDINIダンディーニ Ma non fuggir per bacco! quattro volteさて 逃げるでない 何とまあ【≒ どうか】! 4回 m'hai fatto misurar la galleria.君は 私に 回廊を測量させた【≒ 回廊を歩き回らせた】 CENERENTOLAチェネレントラ O mutate linguaggio o vado via.言葉を変更するか【≒ 言葉遣いを改めるか】 さもなければ 私は行ってしまう。 DANDINIダンディーニ Ma che? Il parlare d'amoreだが どうして? 愛の言葉が è forse una stoccata!おそらく 剣の一突き【≒ 衝撃】なのだ!【≒ 愛を語られるのは 嫌なのか?】 CENERENTOLAチェネレントラ Ma s'io d'un altro sono innamorata!しかし もし 私が 他の男に夢中であるとしたら! DANDINIダンディーニ E me lo dici in faccia?それで 君は そのことを 私の前で 言うのか? CENERENTOLAチェネレントラ Ah! mio signore,ああ! 私の貴君よ、 deh! non andate in colleraああ! 怒りに行くでない【≒ 腹を立てるでない】 col mio labbro sincero.私の 正直な口【≒ 発言】に対して。 DANDINIダンディーニ Ed ami?それで 君は 愛しているのか? CENERENTOLAチェネレントラ Scusi...許しなさい… DANDINIダンディーニ Ed ami?それで 君は 愛しているのか? CENERENTOLAチェネレントラ Il suo Scudiero.あなたの従者を。 RAMIROラミーロ (palesandosi)(姿を現しながら) Oh gioia! anima mia!ああ 歓喜だ! 私の魂よ! ALIDOROアリドーロ (mostrando il suo contento)(彼の満足【≒ 喜び】を 指し示しながら) (Va a meraviglia!)(【すべて】完璧に進んでいる) RAMIROラミーロ Ma il grado, e la ricchezzaけれども 地位は、そして 財産は non seduce il tuo core?君の心を 魅惑しないのか? CENERENTOLAチェネレントラ Mio fasto è la virtù, ricchezza è amore.私の豪奢 ごうしゃ は 徳だ、財産は 愛だ。 RAMIROラミーロ Dunque saresti mia?それでは 君は 私の女になるのだろうかか? CENERENTOLAチェネレントラ Piano, tu devi pria静かに、君は まず ricercarmi, conoscermi, vedermi,私を 再び探さ 【↑】なければならない、私を認識し 【↑】なければならない、私に 会わ 【↑】なければならない、 esaminar la mia fortuna.私の運命を 調べ 【↑↑】なければならない。 RAMIROラミーロ Io teco cara私は 君と共に いとしい女よ verrò volando.飛びながら【≒ 飛ぶように速く】行くだろう。 CENERENTOLAチェネレントラ Fermati: non seguirmi. Io tel comando.止まりなさい: 私を追うでない。私は 君に それを 命じる。 RAMIROラミーロ E come dunque?それで いったい どうやって? CENERENTOLAチェネレントラ (gli dà uno smaniglio)(彼に 腕輪を与えながら ) Tieni,持ちなさい、、 cercami; e alla mia destra私を捜しなさい; そして 私の右手に il Compagno vedrai.君は 【もう】片方を 見るだろう。 E allor... Se non ti spiaccio... allor m'avrai.そして その時に… もし 君に 私が 気に入らなくないならば【≒ 君が 私を好きでいるならば】… その時は 君は 私を 持つだろう【≒ 私は 君のものになるだろう】。 (parte; momento di silenzio)(退場する; 沈黙の瞬間) RAMIROラミーロ Dandini che ne dici?ダンディーニよ そのことについて 君は 何を言う? DANDINIダンディーニ Eh! dico che da Principeええと! 私は言う 王子から sono passato a far da testimonio.立会人役をしに 私は 移った 【↑】と【≒ 私は 王子から 【結婚の】立会人へと 役目が変わったというわけだ】。 |
冒頭のクロリンダとティスベのレチタティーヴォには省略可の記号 Vi- -de が付けられている。 esaminar la mia fortuna. fortuna には 財産 の意味もあり、つまり彼女が極貧にあることを知っても愛に変わりがないかどうか、ということを言っている。 |
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N. 10 Recitativo ed Aria Ramiro Ramiro Coro |
Recitativo 4/4 C major |
RAMIROラミーロ "E allor... se non ti spiaccio... allora m'avrai!"“その時は 君は 私を 持つだろう【≒ 私は 君のものになるだろう】” Quali accenti son questi?これらは どのような口調なのか【≒ これは どういう意味なのか】? (scopre Alidoro)(アリドーロに 気付く) Ah! mio sapienteああ! 私の 学識豊かな venerato Maestro. Il cor m'ingombra尊敬する師よ。私の心を 占めている misterioso amor.謎に包まれた愛が【≒ 私の心は 謎に包まれた愛でいっぱいになっている】。 Che far degg'io?私は 何をするべきなのか【≒ どうすればよいのか】? ALIDOROアリドーロ Quel che consiglia il core.心が進言することを【≒ 心の思うがままに】。 |
レチタティーヴォを伴った急―緩―急の三部形式のアリア。 レチタティーヴォ |
Allegro 4/4 C Major |
RAMIROラミーロ (a Dandini)(ダンディーニに) Principe più non sei. Di tante sciocche君は もはや 王子ではない。愚かな女たちについて si vuoti il mio palazzo.私の宮殿が 空 から になるように【≒ 愚かな女どもを 宮殿から追い払え】。 (chiamando i Seguaci che entrano)(従者たちを呼びながら その者たちは 入る) Olà miei fidi,おい 私の忠実な者たちよ、 sia pronto il nostro Cocchio, e fra momenti...私たちの馬車の用意が整えられるように、そして 瞬間の間に【≒ すぐに】 così potessi aver l'ali dei venti.風の翼を持てるものならば。 |
レチタティーヴォ。 | |
Aria Ramiro Allegro 4/4 C major |
RAMIROラミーロ Sì, ritrovarla io giuro.そうだ、私は 彼女に 再び会うことを誓う。 Amor, amor mi muove:愛の神が、愛の神が 私【の心】を動かしている: se fosse in grembo a Gioveもし 彼女が ジョーヴェ【= ユピテル = ローマ神話の主神】の膝【≒ 懐】の中にいたとしても【≒ もし 彼女が ユピテルの胸に抱かれ隠されていたとしても】 io la ritroverò.私は 彼女を 再び見付ける。 |
Amor, amor mi muove: Allegro vivace での amore を 愛の神 で訳したので、ここでも統一しておく。 |
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Andantino 6/8 C Major |
(contempla lo smaniglio)(腕輪に見とれて) Pegno adorato, e caro崇められた証よ、そしていとしい【証よ】 che mi lusinghi almeno.それは かろうじて 私に 希望を抱かせているであろう。 Oh come al labbro, al senoああ 何と 唇に、胸に come ti stringerò!何と お前【= 証 = 腕輪】を 私は 締め付ける【≒ 押し付ける】だろうか! CORO合唱 Oh! Qual tumulto [ha] in seno!ああ! 彼は 胸に 何という動揺を持っているのだ【≒ 彼の心が 何と 掻き乱されているることか】! Comprenderlo non so.私は それ【= 動揺】を 理解できない。 |
緩。 Oh! Qual tumulto [ha] in seno! クリティカルエディション総譜ではこのように ha が [ ]で囲まれている。 Comprenderlo non so. -lo はラミーロそのものではなく、彼の掻き乱された心を指す。従者たちは、これほどまでに心が掻き乱された王子ラミーロを見たことがないので当惑している。 |
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Allegro vivace 3/4 C major |
RAMIRO E COROラミーロと合唱 Noi voleremo, domanderemo,私たちは 飛んで行こう、尋ねよう、 ricercheremo, ritroveremo.再び探そう、再び見付けよう。 |
テンポ・ディ・メッツォ(中間部) |
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(Allegro vivace) 3/4 C major |
RAMIROラミーロ Dolce speranza, freddo timore甘い希望が、冷たい不安が dentro al mio core stanno a pugnar.私の心の中で 戦い続けている。 Noi voleremo, domanderemo.私たちは 飛んで行こう、尋ねよう。 Amore, amore, m'hai da guidar.愛の神よ、愛の神よ、お前が私を案内しなくてはならない。 (parte con i Seguaci)(従者たちと共に退場する) CORO合唱 Dolce speranza, freddo timore甘い希望が、冷たい不安が dentro al suo core stanno a pugnar.彼の心の中で 戦い続けている。 Noi voleremo, domanderemo,私たちは 飛んで行こう、尋ねよう、 ricercheremo, ritroveremo.再び探そう、再び見付けよう。 Amore, amore, l'ha da guidar.愛の神だ、愛の神だ、彼【= 愛の神】が 彼【= ドン・ラミーロ】を案内しなくてはならない。 |
急。 | |
[Recitativo Dopo l'Aria Ramiro] |
SCENA Ⅲ第3場 (Dandini, Alidoro, indi Don Magnifico)(ダンディーニ、アリドーロ、その後にドン・マニーフィコ) ALIDOROアリドーロ (La notte è ormai vicina.(ついに 夜が 近い。 Col favor delle tenebre暗闇の好意をもって【≒ 夜の闇の助けを借りて ≒ 夜陰に乗じて】 rovesciandosi ad arte la carrozza馬車が 故意に【≒ 仕向けた通りに】 転覆すれば presso la casa del Baron, potrei...男爵の家の近くで、私はできるだろう… Son vicini alla meta i desir miei.)私の願いは 目的地に近い。) (parte frettoloso)(素早く 退場する) DANDINIダンディーニ Ma dunque io sono un ex? dal tutto al nienteさて ところで 私は 元 もと なのか? 全て から 何もない に (passeggiando)(行ったり来たりしながら) precipito in un tratto?私は いきなり 落ちるのか? Veramente ci ho fatto実際のところ 私は そのために した una bella figura!美しい姿を【≒ 素晴らしく格好良かった】! MAGNIFICOマニーフィコ (entra premuroso)(せわしく入る) Scusi la mia premura...私の緊急な用事を許しなさい… Ma quelle due ragazzeところで あの二人の娘が stan con la febbre a freddo. Si potrebbe冷たい発熱を持っている。できるならば sollecitar la scelta.選択が 催促されることが。【≒ 選択を急いでもらえないか】 DANDINIダンディーニ È fatta, amico.それ【= 選択】は なされた、友よ。 MAGNIFICOマニーフィコ È fatta! ah! per pietà! dite, parlate: è fatta!それ【= 選択】は なされた! ああ! 後生だから! 言いなさい、話しなさい: それ【= 選択】は なされた! (con sorpresa in ginocchio)(驚きをもって 跪いて) e i miei germogli...それで 私の芽【≒ 子】たちは… in queste stanze a vegetar verranno?この部屋で 成長する【≒ 暮らす】ようになるだろうか? DANDINIダンディーニ (alzandolo)(立ち上がりながら) Tutti poi lo sapranno:後で 皆が そのことを知るだろう【≒ 後ほど 公表されるだろう】: per ora è un gran segreto.今は それは 大きな秘密だ。 MAGNIFICOマニーフィコ E quale, e quale?それで どちらが、それで どちらが? Clorindina, o Tisbetta?クロリンダか、それとも ティスベか? DANDINIダンディーニ Non giudicate in fretta.慌てて 判断するでない。 MAGNIFICOマニーフィコ Lo dica ad un papà.そのことを 父親に言うように。 DANDINIダンディーニ Ma silenzio.だが 沈黙を。 MAGNIFICOマニーフィコ Si sa; via dica presto.当然だ; さあ 早く 言うように。 DANDINIダンディーニ (andando ad osservare)(観察しに行きながら【≒ 様子を見ながら】) Non ci ode alcuno.誰も 私たち【の話】を聞いていない。 MAGNIFICOマニーフィコ In aria宙には non si vede una mosca.蠅は見られない【≒ ハエ一匹も飛んでいない】。 DANDINIダンディーニ È un certo arcanoそれは ある種の秘密だ che farà sbalordir.それは びっくり仰天させる。 MAGNIFICOマニーフィコ (smaniando)(苛立ちながら) Sto sulle spine.私は 棘々【≒ イバラ】の上にいる【≒ やきもきしている】。 DANDINIダンディーニ (annoiato portando una sedia)(退屈して 椅子を持って来ながら) Poniamoci a sedere.椅子に 身を置こう【≒ 座ろう】 MAGNIFICOマニーフィコ Presto per carità.早く 後生だから。 DANDINIダンディーニ Voi sentireteあなたは 聞くだろう un caso assai bizzarro.大いに風変わりなことを。 MAGNIFICOマニーフィコ (Che volesse(彼が 望んでいたであろうとは) maritarsi con me!)私と結婚することを!) DANDINIダンディーニ Mi raccomando.私は 【あなたに】 頼み込む【≒ 頼むぞ】。 MAGNIFICOマニーフィコ (con smania che cresce)(苛立ちをもって それは増大している) Ma si lasci servir.それどころか 仕えられるがままになるように【≒ 何なりと用件を申し付けなさい〕】。 DANDINIダンディーニ Sia sigillato封印されるように quanto ora udrete dalla bocca mia.今 あなたが 私の口から 聞くであろうことを。 MAGNIFICOマニーフィコ Io tengo in corpo una segreteria.私は 体の中に 秘密を 置いておく。 |
rovesciandosi ad arte la carrozza / presso la casa del Baron, potrei... 条件節をジェルンディオが導いている仮定文。帰結節は potrei だけで終わっているが、当然、計画が完遂できるのだが、といった意味。 stan con la febbre a freddo. いくつかの意味に採れる。寒さで熱が出た では普通過ぎてむしろ意味をなさない。freddo を不安の表れと理解するならば 不安で発熱した となる。一方、a freddo には 熱が冷めた,常温の の意味もあり、これで採ると 平熱で発熱している という矛盾した表現になる。表面上は落ち着いているがまだ興奮している というような意味合いになるだろう。 Sto sulle spine. spine < spina 棘 とげ の複数形で イバラ の意味になる。 |
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N. 11 Duetto [Dandini - Magnifico] Dandini Magnifico |
Allegro 4/4 G major |
DANDINIダンディーニ Un segreto d'importanza,重大な秘密を、 un arcano interessante興味深い謎を io vi devo palesar.私は あなたに 明かさなくてはならない。 È una cosa stravagante,それは 風変わりなことだ、 vi farà strasecolar.それは あなたを 唖然とさせるだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Senza battere le ciglia,睫毛を 打つことなしに【≒ 瞬きせずに】 senza manco trarre il fiato,息を引くことすらなしに【≒ 呼吸すらせずに】 io mi pongo ad ascoltar.私は 聞きに 身を置く【≒ 聞いている】。 Starò qui petrificato私は ここに 石になって居るだろう ogni sillaba a contar.どの音節も 数える【≒ あらゆる言葉を 捉える】ために。 DANDINIダンディーニ Uomo saggio, e stagionato思慮深い男は、そして熟成された【男は】 sempre meglio ci consiglia.常に より良く 私たちに助言する。 Se sposassi una sua figlia,もし あなたの娘の一人が 結婚するならば、 come mai l'ho da trattar?いったい どうやって 私は 彼女を 扱わなくてはならないのか? MAGNIFICOマニーフィコ (Consiglier son già stampato.)(私は 既に 助言者を押印された【≒ 王子の相談役に任命されたも同然 】) Ma che eccesso di clemenza!それにしても 何と言う過分な慈悲! mi stia dunque sua Eccellenza...それでは 私【の言うこと】を 閣下… bestia!... Altezza ad ascoltar.【(自分に対して)】獣【≒ 馬鹿者】め! 殿下よ 聞いて 【↑】いるように。 Abbia sempre pronti in sala常に 持つように 広間に 支度のできた trenta Servi in piena gala,30人の召使たちが 最盛装して、 centosedici Cavalli,116頭の馬、 Duchi, Conti, Marescialli公爵たち、伯爵たち、元帥たち a dozzine i convitati,【彼らは】数ダースの【≒ 大勢の】招待客だ pranzi sempre coi gelati,昼食は 常に ジェラート付き、 poi Carrozze, poi Bombè.それから 馬車、それから ボンベ【≒ 丸形馬車】 DANDINIダンディーニ Vi rispondo senza arcani私は あなたに答える 隠しごとなしに che noi siamo assai lontani.私たちは 大いに かけ離れている と。 Io non uso far de' pranzi;私は 昼食をする習慣はない; mangio sempre degli avanzi,私は いつも 残り物を食べている、 non m'accosto a gran signori,私は 偉い紳士たちに 近付かない、 tratto sempre servitori,私は 常に 召使たちと関わっている、 me ne vado sempre a piè.私は いつでも 歩いていく。 MAGNIFICOマニーフィコ Mi corbella?あなたは 私を からかっているのか? DANDINIダンディーニ Gliel prometto.私は あなたに そのこと【= 直前にマニーフィコに言った内容】を 保証する。 MAGNIFICOマニーフィコ Questo dunque?それでは これは【どういうことなのか】? DANDINIダンディーニ È un romanzetto.それは 夢物語。 È una burla il Principato,王子の地位は 冗談だ、 sono un uomo mascherato.私は 仮面を被った男。 Ma venuto è il vero Principe,だが 本当の王子が 来て、 m'ha strappata alfin la maschera,ついに 彼【= 王子 】が 私の仮面を はぎ取った、 io ritorno al mio mestiere:私は 私の仕事に戻る: son Dandini il Cameriere:私は 従者 ダンディーニだ: rifar letti, spazzar abiti,寝床を整え、服を【ブラシで】掃き、 far la barba, e pettinar.ひげ【剃り】をして、そして髪をとかす。 MAGNIFICOマニーフィコ Far la barba, e pettinar.ひげ【剃り】をして、そして髪をとかす。 |
mi stia dunque sua Eccellenza... / bestia!... Altezza ad ascoltar. ダンディーニ(マニーフィコはまだ彼を王子だと思っている)に対して 閣下 と呼びかけた直後に間違いに気付き、自分を罵ってから 殿下 と言い直している。 poi Carrozze, poi Bombè. Bombè(フランス語の bombè に由来)は、昔の爆弾のように丸く膨らんだ形をした屋根付き、4席の四輪馬車。短期間流行した後、廃れたという。そのため Bombè という言葉は初演からしばらくすると意味が分からなくなり、おそらくそのために19世紀末から20世紀前半の台本、楽譜ではこの1行は poi carrozze e sei lacchè. 馬車に6人の従者(lacchè は、主人の乗った馬車の後を追うもしくは先導する従者) に置き換えられている。 |
Vivace 6/8 G Major |
Di quest'ingiuria,この無礼について、 di questo affrontoこの侮辱について il vero Principe本物の王子が mi renda conto.私に 釈明するがいい。 DANDINIダンディーニ Oh non s'incomodi,ああ 気を遣わないように、 non farà niente.彼【= 王子】は 何もしないだろう。 Ma parta subito,それはそうと すぐに 去りなさい、 immantinente.即刻。 MAGNIFICOマニーフィコ Non partirò.私は 去らない。 DANDINIダンディーニ Lei partirà.あなたは 去るだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Sono un Barone.私は 男爵だ。 DANDINIダンディーニ Pronto è il bastone.杖は 用意できている。 MAGNIFICOマニーフィコ Ci rivedremo,再び会おう、 ci parleremo.話し合おう。 DANDINIダンディーニ Ci rivedremo,再び会うだろう、 ci parleremo.話し合うだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Tengo nel cerebro私は 頭脳の中に 持っている un contrabbasso,コントラバスを、 che basso bassoそれは 低く 低く frullando va.しだいに羽音を立てて行く【≒ だんだん 唸るような音を立てていく】 Da cima a fondo頂 いただき から 底へと poter del mondo!世界の力よ【≒ 神よ】! che scivolata!何という滑落だ! che gran cascata!なんという 大落下だ! Eccolo eccoloほら 彼だ ほら 彼だ と tutti diranno,皆が 言うだろう、 mi burleranno彼らは 私を 冷やかすだろう per la città.町中で。 DANDINIダンディーニ Povero diavolo!哀れな悪魔め! è un gran sconquasso!大きな 激しい衝撃だ! che d'alto in basso高いところから 低いところへ piombar lo fa.彼を 急に落ちさせる 【↑】ことは。 Vostra Eccellenza閣下【= ドン・マニーフィコ】は abbia prudenza:慎重さを持つがいい【≒ 用心深くならねば】: se vuol rasoio,もし あなたが望むなら 剃刀を、 sapone, e pettine石鹸を、そして櫛 くし を saprò arricciarla,私が あなたを 巻き毛にすることができるだろう、 sbarbificarla...あなたの 髭を剃ることが【できるだろう】… ah ah! guardatelo,ハ ハ! 彼を見なさい、 l'allocco è là.モリフクロウ【≒ 間抜け】が あそこにいる。 (partono)(【二人とも】退場する) |
l'allocco è là. allocco は伊和辞典では トラフズク(トラフは虎斑のこと)になっているが、実際にはモリフクロウを指す。 |
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[Recitativo] Dopo il Duetto di Dandini - Magnifico |
SCENA Ⅳ第4場 (Alidoro solo)(アリドーロ一人) ALIDOROアリドーロ Mi seconda il destino. Amor pietoso運命が 私を手助けしている。哀れみ深い愛の神は favorisce il disegno. Anche la notte図案【≒ 計画】を支援している。夜も また procellosa, ed oscura嵐の、そして暗い【≒ 暗い嵐の夜も また】 rende più natural quest'avventura.この冒険を より自然にする【≒ これから起こることを 当然なことにさせるだろう】。 La carrozza già è in pronto, ov'è Dandini?馬車は 既に 用意ができている、ダンディーニはどこにいる? Seco lo vuol nel suo viaggio. Oh come彼【= ダンディーニ】と共に 彼【= ラミーロ】は 彼【= ダンディーニ】を求めている 彼【= ラミーロ】の旅において【≒ 王子は 旅に ダンディーニが同行するよう求めている】。ああ 何と indocile s'è fatto ed impaziente!彼【= ラミーロ】は 従順でなくなったことか そして 辛抱できなくなったことか【≒ 自分の意志で積極的に行動するようになったことか】! che lo pizzica amor segno evidente.愛の神が 彼を 【矢で刺して】チクチクさせている という 明らかな印 しるし だ (entra)(入る) |
Seco lo vuol nel suo viaggio. 物語の舞台が 狩猟小屋 Casino ≒ 別荘 なので、サレルノの王宮に帰る旅ということになる。 |
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N. 12 Canzone [Cenerentola] Cenerentola |
Andantino 6/8 d minor |
SCENA Ⅴ第5場 (Sala terrena con Camino in Casa di Magnifico)(地面と同じ高さの【≒ 1階の】広間 暖炉のある マニーフィコの屋敷の) (Cenerentola nel solito abito accanto al fuoco)(チェネレントラは 普段着を着て竈 かまど の脇に) CENERENTOLAチェネレントラ Una volta c'era un Re,その昔 一人の王がいた、 che a star solo s'annoiò:その者は 独り身でいることに うんざりしていた: cerca, cerca, ritrovò;彼は 探し求めて、探し求めて、見つけた; ma il volean sposare in tre.だが 3人の彼女たちが 彼と結婚することを望んだ。 Cosa fa?彼は どうするのだろうか? Sprezza il fasto, e la beltà,彼は 豪奢を撥ね付けて、そして美しさを【撥ね付けて】、 e alla fin scelse per séそして 最後には 彼は 自分のために 選んだ l'innocenza, e la bontà,純真を、そして善良を【≒ 純真で善良な娘を】。 la la la làララララ li li li lìリリリリ la la la là.ララララ |
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[Recitativo] Dopo la Canzone |
CENERENTOLAチェネレントラ Quanto sei caro!お前【= 腕輪】は なんと いとしいことか! (guarda lo smaniglio)(腕輪を見て) E quelloそして あの男は cui dato ho il tuo compagno,その者に 私は お前の相方を与えた、 è più caro di te. Quel signor Principeお前より もっとたくさん いとしい。あの王子殿は che pretendea con quelle smorfie? Oh bellaあの引きつった顔で 何を 強く求めていたのか? io non bado a ricami, ed amo solo私は 刺繍を考慮しない【≒ 格式には こだわらない】、そして 私は 愛している ただ bel volto, e cor sincero,美しい顔 【↑】だけを、そして 誠実な心【だけ】を、 e do la preferenza al suo Scudiero.そして 私は 彼の従者の方を好んでいる。 Le mie Sorelle intanto... ma che occhiate!私の姉妹たちは その間… まったく 何を 見つめていたことか! Parean stralunate!彼女たちは 動転したように見えた。 qual rumore!あの物音は! (Uh? chi vedo! che ceffi! di ritorno!(うう? 私は 誰を 見ているのだ! 何という鼻【≒ 人相の悪い顔】! 帰宅に!) (s'ode bussare fortemente, ed apre)(強く扉を叩く音が聞こえる、そして開く) Non credea che tornaste avanti giorno.)私は 信じていなかった 昼間の前に 彼らが帰ったとは【≒ 彼らが 夜明け前に帰って来るとは思わなかった】。) SCENA Ⅵ第6場 (Don Magnifico, Clorinda, Tisbe, e detta)(ドン・マニーフィコ、ティスベ、そして 前の場の人たち) CLORINDAクロリンダ (entrando accennando Cenerentola)(入りながら チェネレントラを指し示しながら) (Ma! ve l'avevo detto...)(ほら! 私は そのことを あなたに言った…) MAGNIFICOマニーフィコ Ma cospetto! cospetto!それにしても 顔が! 顔が! Similissime sono affatto affatto.まったく まったく 【二つの顔は】 この上なく似ている。 Quella è l'original, questa è il ritratto.あの女が 本物、この女が 瓜二つ。 Hai fatto tutto?君は すべてを やったのか? CENERENTOLAチェネレントラ Tutto.すべてを。 Perché quel ceffo bruttoなぜ その酷い鼻【≒ 人相の悪い顔】を voi mi fate così?するのか あなたは 私に そのように? MAGNIFICOマニーフィコ Perché perché...なぜならば なぜならば… Per una certa stregaとある魔女によって che rassomiglia a te...その者は 君に似ている… CLORINDAクロリンダ Su le tue spalle君の両肩【≒ 背中】の上に quasi mi sfogherei.私は ほとんど 当たり散らしたいところだが。 CENERENTOLAチェネレントラ Povere spalle mie!哀れな私の両肩【≒ 背中】よ! Cosa ci hanno che far?それら【= 私の両肩 ≒ 私の背中】が あなた方と 何の関係があるのか? |
Le mie Sorelle intanto... ma che occhiate! 姉妹たちは、もちろん、偽王子のダンディーニに色目を使っていた。 Ma cospetto! cospetto! cospettoは 顔 の意味と、驚きの間投詞の働きと、両方意味があり、ここではそれを掛けている。 Su le tue spalle spalla 肩 は複数形 spalle で 背中 を指すこともある。 Cosa ci hanno che far? avere (a) che fare con ... ―と関係がある。この文は Le spalle mie hanno che fare con voi. 私の両肩は あなた方と関係がある。が cosa を用いて疑問形になったもの。この場合の ci は con voi。 |
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([Recitativo] Dopo la Canzone) |
Allegro 3/4 a minorr |
(cominciano lampi e tuoni, indi si sente il rovesciarsi di una Carrozza)(稲妻と雷鳴が始まる、その後に 馬車の転覆が聞こえる。) |
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([Recitativo] Dopo la Canzone) |
TISBEティスベ Oh! fa mal tempo!ああ! 天気が悪い! Minaccia un temporale.嵐の気配だ。 MAGNIFICOマニーフィコ Altro che temporale!嵐よりも別のもの【≒ 嵐なんて 真っ平御免だ】! un fulmine vorrei私は 雷が欲しいのだが che incenerisse il Camerier...それは 従者【= ダンディーニ】を 灰にしたであろう… CENERENTOLAチェネレントラ Ma dite...ところで 言いなさい… Cosa è accaduto? Avete何が 起きたのか? あなた方は 持っているのか qualche segreta pena?何らかの 秘密の苦悩を? MAGNIFICOマニーフィコ (con impeto)(激情をもって) Sciocca! va' là, va a preparar la cena.馬鹿な女め! 向こうへ行け、夕食を用意しに行け。 CENERENTOLAチェネレントラ Vado, sì, vado. (Ah! Che cattivo umore.私は行く、はい、私は行く。(ああ! 何と 意地悪な気性だ。 Ah! lo Scudiere mio mi sta nel core.)ああ! 私の従者が 私の心の中にいる。) (parte)(退場する) |
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N. 13 Temporale |
Allegro 3/4 d minorr |
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(Allegro) 3/4 D major |
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管楽器に dolce 甘く ≒ 穏やかに の指示が付いているので、ややテンポが落ちることがある。 |
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[Recitativo] Dopo il Temporale Clorinda Tisbe Don Ramiro Dandini Don Magnifico |
SCENA Ⅶ第7場 (Don Magnifico, Tisbe, Clorinda, indi Ramiro da Principe, e Dandini)(ドン・マニーフィコ、ティスベ、クロリンダ、その後に王子姿のラミーロ、そしてダンディーニ) DANDINIダンディーニ Scusate Amici.許しなさい 友たちよ。 La Carrozza del Principe王子の馬車が ribaltò...ひっくり返った… (riconoscendo Don Magnifico)(ドン・マニーフィコを認識して) ma chi vedo?それはそうと 私は 誰を 見ているのか? MAGNIFICOマニーフィコ Uh! Siete voi!うーむ! あなたなのか? Ma il Principe dov'è?ところで 王子はどこにいるのか? DANDINIダンディーニ (accennando a Ramiro)(ラミーロを示しながら) Lo conoscete!あなたは 彼を 知っている【だろうが】! MAGNIFICOマニーフィコ Lo Scudiero!従者が! (rimanendo sorpreso)(驚いたままでありながら) Ih! guardate.ヒー! 見なさい【≒ (娘たちに対して)彼を 見てみなさい】。 RAMIROラミーロ Signore perdonate貴君よ 容赦しなさい se una combinazione...もし 偶然の一致が【≒ たまたま ここに立ち寄って】… MAGNIFICOマニーフィコ Che dice? Si figuri! mio padrone.あなたは 何を言っているのか? とんでもない! 私の主人よ。 (alle figlie)(娘たちに) (Eh! non senza perché venuto è qua.(うーむ! 彼は 目的なしで ここに 来なかった【≒ 目的もなく ここに来るはずがない】) La sposa, figlie mie, fra voi sarà.)花嫁は、私の娘たちよ、君たちの間だろう【≒ 君たちの どちらかだろう】。) Ehi, presto, Cenerentola,おい、早く、チェネレントラよ、 porta la sedia nobile.高貴な椅子【貴人用の椅子】を 持って来なさい。 RAMIROラミーロ No: no: pochi minuti. Altra Carrozzaいいや: いいや: 数分間だ。 別の馬車が pronta ritornerà.すぐに 再び現れるだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Ma che! Gli pare?とんでもない! あなたは 彼女たちに 姿を見せないのか? CLORINDAクロリンダ (con premura verso le quinte)(急いで 舞台袖の方に) Ti sbriga Cenerentola.急ぎなさい チェネレントラ。 SCENA Ⅷ第8場 (Cenerentola recando una sedia nobile a Dandini, che crede il Principe)(チェネレントラは 気品のある椅子を ダンディーニ【のところ】に持って行く、その者を彼女は 王子と信じている) CENERENTOLAチェネレントラ Son qui.私は ここに いる。 MAGNIFICOマニーフィコ Dalla al Principe bestia, eccolo lì.それ【= 椅子】を 王子に 与えなさい 獣【≒ 馬鹿者】め、ほら 彼だ あそこに。 CENERENTOLAチェネレントラ (sorpresa riconoscendo per Principe Don Ramiro; si pone le mani sul volto, e vuol fuggire)(ドン・ラミーロを王子として認識しながら驚いて; 両手を顔の上に置いて、そして 逃げようとする) Questo! Ah! Che vedo! Principe!この男が! ああ! 私は 何を見ているのだ! 王子だ! RAMIROラミーロ T'arresta.待ちなさい。 Che! Lo Smaniglio!... è lei… che gioia è questa.何と! 腕輪だ!… 彼女だ… これは 何という喜びだ。 |
se una combinazione... combinazione は 組み合わせ という意味(英 combination)で、たまたま組み合わせが合ったということで 偶然の一致 という意味にもなる。この場合は、王子の馬車が転覆して助けを求めに行った先がたまたまドン・マニーフィコの館だった ということを指す。 Si figuri! figurare は 表す などの意味があるが、si figuri! は とんでもない という成句。 Ma che! ma che = macché とんでもない。 Gli pare? この場合の pare < parere は、出現する,姿を現す で採った。ドン・マニーフィコは何としてでも娘の一人を王子と結婚させたいので、偶然王子がやって来たのなら何としてでも娘に会ってもらわねばと思っているだろう。 |
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N. 14 Sestetto Clorinda Tisbe Don Ramiro Dandini Don Magnifico |
Maestoso 4/4 E-flat major |
RAMIROラミーロ Siete voi?あなたなのか? CENERENTOLAチェネレントラ (osservando il vestito del Prence)(王子の服装をじっと見ながら) Voi Prence siete?あなたが 王子なのか? CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ (fra loro attonite)(彼女たちの間で【≒ 二人で】 唖然として) Qual sorpresa!何という驚き! DANDINIダンディーニ Il caso è bello!【この】状況は 素晴らしい! MAGNIFICOマニーフィコ (volendo interrompere Ramiro)(ラミーロを遮ろうとしながら) Ma...しかし… RAMIROラミーロ Tacete.黙りなさい。 MAGNIFICOマニーフィコ Addio cervello.さらば 脳よ。 (prende a sé Ramiro, e Dandini)(自分の方へラミーロを連れて行き、そしてダンディーニを【連れて行き】) Se...もし… RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ Silenzio.静かに! CLORINDA, TISBE, CENERENTOLA, RAMIRO, DANDINI E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベ、チェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニとマニーフィコ Che sarà!何が起こるのだ【≒ どうなるのだ】! |
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(Maestoso) 4/4 E-flat major |
CLORINDA, TISBE, CENERENTOLA, RAMIRO, DANDINI E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベ、チェネレントラ、ラミーロ、ダンディーニとマニーフィコ Questo è un nodo avviluppato,これは もつれた結び目だ、 questo è un gruppo rintrecciato,これは再び三つ編みにされた集団【≒ 編み込まれた絡み合い】 chi sviluppa più inviluppa,ほぐす者は もっと多く こんがらがらせる chi più sgruppa più raggruppa;より多く 結び目を解く者は より多く 一団【≒ 絡まった塊】にする ed intanto la mia testaそして その間に 私の頭は vola vola, e poi s'arresta,飛び 飛び、そして それから 止まる、 vo tenton per l'aria oscura,私は 暗い空を 手探りで【飛んで】行き e comincio a delirar.そして 私は 錯乱し始める。 |
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Allegro 4/4 E-flat major |
CLORINDAクロリンダ (strappando Cenerentola con violenza dal suo sbalordimento)(チェネレントラを 彼女の驚愕から 激しさをもって 引き離しながら) Donna sciocca! Alma di fango愚かな女め! 泥【だらけ】の魂め cosa cerchi? che pretendi?君は 何を 探しているのか? 君は 何を 強く求めているのか? Fra noi gente d'alto rango私たち 地位の高い人々の中に l'arrestarsi è inciviltà.立ち止まることは 無作法だ。 MAGNIFICOマニーフィコ (come sopra da un'altra parte)(上記と同様に 別の側【≒ 反対側】から) Serva audace! e chi t'insegna厚かましい下女め! それで 誰が 君に 教え込んでいるのか di star qui fra tanti Eroi?ここに 多くの英雄たちの中に 留まることを? Va in cucina serva indegna,台所に行け 恥ずべき下女め、 non tornar mai più di qua.決して 二度とここに 戻るでない。 RAMIROラミーロ (frapponendosi con impeto)(間に入りながら 激情をもって) Alme vili! invan tentate卑しい魂たちめ! 君たちは 無益に 試みている insultar colei, che adoro:この女を 侮辱することを【≒ 彼女を 侮辱しようとしても 無駄だ】: alme vili! paventate,卑しい魂たちめ! 恐れなさい、 il mio fulmine cadrà.【さもないと】私の雷が 落ちるだろう。 DANDINIダンディーニ Già sapea che la commedia既に 私は 知った【≒ もう 私には 分かっていた】 喜劇は si cangiava al Second'Atto:第2幕に 変わった 【↑】ことを: ecco aperta la Tragedia,そら 悲劇【の幕】が 開かれた。 me la godo in verità.私は それ【= 悲劇】を 本当に 楽しんでいる。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Son di gelo.私は 氷になっているる【≒ 凍り付いている】。 MAGNIFICOマニーフィコ Son di stucco.私は 化粧漆喰になっている【≒ 化粧漆喰の装飾像のように動けない ≒ 呆然としている】。 DANDINIダンディーニ (Diventato è un mamalucco.)(彼は 木偶の坊になった。) CLORINDA, TISBE E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベとマニーフィコ Ma una serva…しかし 下女が… RAMIROラミーロ Olà, tacete.こら、黙りなさい。 (facendo una mossa terribile)(恐るべき動作をしながら) L'ira mia più fren non ha!私の怒りは もはや 抑制を持っていない【≒ 私は もはや 怒りを堪え切れない】! |
Già sapea che la commedia / si cangiava al Second'Atto: ダンディーニのこの台詞は、第1幕のダンディーニのカヴァティーナ(N. 4)のカバレッタと対をなしており、さらに今日ではほとんど歌われない初演時のアリドーロのアリア(N. 6 代筆アリア)の歌詞と呼応している。 (Diventato è un mamalucco.) mamalucco、mammalucco、mammelucco は、イスラム圏におけるマムルーク 奴隷から英才教育を受けて育てられた軍人 を指す言葉だが、辞書には同時に 馬鹿 persona sciocca の意味も載っている。二つの意味に関係があるのか、あるいはないのか、分からなかった。 |
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Andantino 3/4 G major |
CENERENTOLAチェネレントラ (in ginocchio a Don Ramiro, che la rialza)(ドン・ラミーロに跪いて、その者は 彼女を 再び立ち上がらせる) Ah! Signor, se è ver che in pettoああ! 貴君よ、もし 本当ならば 胸の中に qualche amor per me serbate,あなたが 何らかの愛を 私に対して 持ち続けている 【↑】ことが compatite, perdonate,同情しなさい、容赦しなさい、 e trionfi la bontà.そうして 善良が勝利するように。 DANDINI E RAMIROダンディーニとラミーロ (a Magnifico e le figlie)(マニーフィコと娘たちに) Quelle lacrime mirate:あの涙を よく見なさい。 qual candore! qual bontà!何という純真! 何という善良! MAGNIFICO, CLORINDA E TISBEマニーフィコ、クロリンダとティスベ (con disprezzo)(侮蔑をもって) Ah! l'ipocrita guardate,ああ! 偽善者を見なさい、 oh che bile che mi fa!ああ 何という怒りに 彼女は 私を させることか【≒ 彼女は 何と 私を 怒らせることか】! oh che rabbia che mi fa!ああ 彼女は 何という立腹に 私を させることか【≒ 彼女は 何と 私を 立腹させることか】! quanta bile che mi fa.何と多くの怒りに 私をさせることか。 |
先立つ Allegro の最後で君主的な怒りを落としたラミーロに、この Andantino でチェネレントラが、許すことによる善良の勝利を促す。ここは第2幕フィナーレでの、君主をも超えた存在となるチェネレントラの布石である。 |
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Allegro 4/4 G major |
MAGNIFICOマニーフィコ Ma in somma delle sommeそれで 要約の要約で【≒ 結局のところ】 Altezza cosa vuole?閣下は 何を 望んでいるのか? RAMIROラミーロ Piano, piano: non più parole:小声で、小声で: もう話すでない: (prende per mano Cenerentola)(チェネレントラの手を取る) questa sarà mia sposa.この女が 私の花嫁になるだろう。 CLORINDA E TISBEクロリンダとティスベ Ah! ah! dirà per ridere.ハ! ハ! 彼は 笑うために【≒ 嘲笑するために】言っているのだろう。 CLORINDA, TISBE E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベとマニーフィコ (a Cenerentola)(チェネレントラに) Non vedi che ti burlano?君は 見ない【≒ 分からない】のか 彼らが 君を からかっている ことを? RAMIROラミーロ Lo giuro: mia sarà.私は そのことを誓う: 彼女は 私の女に なるだろう。 MAGNIFICOマニーフィコ Ma fra i rampolli mieiしかし 私の芽たち【≒ 子たち】の中で mi pare a creder mio…私には 思われた 私の考えでは… RAMIROラミーロ Per loro non son io.彼女たちについては 私は 私ではない。 (con aria di disprezzo, contraffacendolo)(軽蔑した様子で、真似しながら) Ho l'anima plebea,私は 平民の魂を持っている、 ho l'aria dozzinale.私は ありふれた顔付きを 持っている。 DANDINIダンディーニ Alfine sul braccialeついに 腕輪の上に ecco il pallon tornò;ほら ボールが戻った; e il giocator maestroすると 名人選手は in aria il ribalzò.それ【= ボール】を 宙【高く】へと 跳ね飛ばし返した【≒ 名人選手は ボールを 打ち返して 宙に高々と舞い上がらせた 】。 |
Alfine sul bracciale / ecco il pallon tornò; / e il giocator maestro / in aria il ribalzò. これは パッローネ・コル・ブラッチャレ Pallone col bracciale というイタリアではよく知られたスポーツに喩えた表現。テニスのようにボールを打ち合うのだが、ラケットでなく腕にはめた腕輪でボールを跳ね返す。また片側にそそり立つ壁にボールを打って跳ね返すことができるのも特徴。専用競技場を Sferisterio という。野外オペラ公演で有名なマチェラータのスフェリステーリオも元はパッローネの競技場で、横長の敷地に垂直の壁があるのだが、これがボールを跳ね返らせる壁である。 このダンディーニの台詞では、名人ラミーロが、相手側から戻って来たボールを腕輪で捉えて打ち返し、見事に宙に跳ね返した、という比喩になっている。 |
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Allegro 4/4 E-flat major |
in aria il ribalzò.それ【= ボール】を 宙【高く】へと 跳ね飛ばし返した【≒ 名人選手は ボールを 打ち返して 宙に高々と舞い上がらせた 】。 |
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Vivace 4/4 E-flat major |
RAMIROラミーロ (tenendo con dolce violenza Cenerentola)(チェネレントラを 優しい激しさで 掴みながら) Vieni a regnar, vieni: l'impongo.君臨しに来なさい、来なさい: 私は あなたに 命じる。 CENERENTOLAチェネレントラ Su questa mano almeno;せめて この手の上に; (volendo baciar la mano a Don Magnifico, ed abbracciare le sorelle, è rigettata con impeto)(ドン・マニーフィコの手にキスをしようとしながら、そして 姉妹たちを 抱き締め【ようとしながら】、激情をもって撥ね付けられて) e prima a questo seno…そして まず第一に この胸に… MAGNIFICOマニーフィコ Ti scosta, ti allontana.遠ざかれ、離れろ。 CLORINDA, TISBE E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベとマニーフィコ Ti allontana.離れろ。 RAMIROラミーロ Perfida gente insana!悪意のある 正気でない人々だ! io vi farò tremar.私は 君たちを 震えさせよう。 |
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(Vivace) 4/4 E-flat major |
CLORINDA, TISBE, RAMIRO, DANDINI E MAGNIFICOクロリンダ、ティスベ、ラミーロ、ダンディーニとマニーフィコ Quello brontola, e barbotta,あの人は 不平不満を呟き、そして愚痴る、 questo strepita e s'adira,この人は わめき散らして そして 憤慨している、 quello freme, questo fiotta,あの人は身震いしている、この人は 不平を言っている、 chi minaccia, chi sospira;脅す者、溜め息する者; va a finir che ai Pazzarelli,【それぞれは】行き着く 精神病院に、 ci dovranno trascinar.彼らが 私たちを 無理やり連れて行くに違いないだろう 【↑】ことに【≒ ついには 私たちは 精神病院に 無理やり連れて行かれることになるだろう】。 CENERENTOLAチェネレントラ (passeggiando incerta, e riflettendo, ed abbandonandosi a vari sentimenti)(ためらって行ったり来たりしながら、それから 熟考しながら、それから様々な感情に身を委ねながら) Dove son? che incanto è questo?私は どこにいるのか? これは 何の魔法なのか? io felice! oh qual evento!私は 幸福だ! ああ 何という出来事! è un inganno! ah! se mi desto!それは 間違いだ! ああ! もし 私が 目を覚ましているのならば! che improvviso cangiamento!何という 突然の変化だ! sta in tempesta il mio cervello,私の脳は 嵐の中にいる、 posso appena respirar.私は かろうじて 息をしている。 RAMIRO E DANIDINIラミーロとダンディーニ Vieni. Amor ti guida来なさい。愛の神が 君を 案内している a regnar, a trionfar.統治しに、勝利を収めに。 (Ramiro trae seco Cenerentola, ed è seguito da Dandini, e da Don Magnifico)(ラミーロは 彼と共に チェネレントラを引っ張る、そして 彼は ダンディーニによって後を追われる【≒ ダンディーニがラミーロの後に従う】、そしてドン・マニーフィコによって【後を追われる】) |
va a finir che ai Pazzarelli, andare a finire 行き着く pazzarelli < pazzarello = pazzerello これは伊伊辞典でも ちょっと頭のおかしい人 くらいの意味しか載っていないが、しかし古い伊独辞典では Narrenhaus や Irrenhaus 精神病院 とあり、ここではこちらの意味である。 |
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[Recitativo] Dopo il Sestetto Clorinda Tisbe Alidoro |
SCENA Ⅸ第9場 (Tisbe, Clorinda, indi Alidoro)(ティスベ、クロリンダ、その後にアリドーロ) TISBEティスベ Dunque noi siam burlate?それでは 私たちは 騙されていたのか? CLORINDAクロリンダ Dalla rabbia怒りで io non vedo più lume.私は もはや 光を見ていない【≒ 訳が分からなくなっている】。 TISBEティスベ Mi pare di sognar, la Cenerentola...私には 夢を見てるように思われる、チェネレントラが… ALIDOROアリドーロ (entrando)(入りながら) Principessa sarà.王妃になるだろう。 CLORINDAクロリンダ Chi siete?あなたは 誰なのか? ALIDOROアリドーロ (con alterigia)(尊大をもって) Io vi cercai la carità.私は あなた方に 施しを求めた。 Voi mi scacciaste. E l'Angiolina quella,あなた方は 私を 追い出した。 そして あのアンジョリーナは che non fu sorda ai miseri,その者は 貧しい者たちを 聞く気がないのでなく【≒ 貧しい者に耳を傾けて】 che voi teneste come vile ancella,その者を あなた方は 卑しい女奴隷のように 【召し】抱えていた、 fra la cenere, e i cenci,灰の中に、そしてボロ着の中に、 or salirà sul trono. Il padre vostro【アンジョリーナは】今や 彼女の玉座に上るだろう。あなた方の父親は le è debitor d'immense somme. Tutta彼女の 莫大な金額の債務者だ【チェネレントラに 多額の借金をしている】。すべての si mangiò la sua dote. E forse forse彼女の持参金【≒ 遺産】を 浪費した。そして おそらく おそらく questa reliquia di Palazzo, questiこの 館の残骸は、 これらの non troppo ricchi mobili sarannoそれほど高額でない家具は posti al pubblico incanto.公共の競売に置かれる 【↑】だろう。 TISBEティスベ Che fia di noi frattanto?そうしている間に 私たちにおいては どうなるのだろうか。 ALIDOROアリドーロ Il bivio è questo.これは 分岐点だ。 O terminar fra la miseria i giorni,あるいは 貧窮の中で 日々【≒ 人生】を終えるか、 o curve al piè del Tronoあるいは 玉座の足元で 【身を】屈めて implorar grazia, ed impetrar perdono.厚情を哀願するか、そして許しを嘆願するか。 Nel vicin atrio io stesso,近くのロビーで 私自身が、 presago dell'evento,結果を予見して、 la festa nuziale ho preparata.婚礼の祝宴を用意した。 Questo, questo è il momento.これが、これが瞬間だ【≒ 今こそが その時だ】。 CLORINDAクロリンダ Abbassarmi con lei! Son disperata!彼女に 身を低くする【≒ 頭を下げる】だなんて! 私は 絶望している! |
o curve al piè del Trono ここでの curve は、形容詞 curvo 曲がった,屈めた の女性複数形(の副詞的用法) |
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N. 15 Aria Clorinda Clorinda |
Larghetto 4/4 B-flat major |
CLORINDAクロリンダ Sventurata! mi credea不幸な女だ! 私は 自分で思い込んでいた comandar seduta in Trono.玉座に座って 支配すると。 Son lasciata in abbandono私は 放置に捨てられた【≒ 打ち捨てられた】 senza un'ombra di pietà.僅かな哀れみもなく。 |
カンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の2部形式によるアリア。 カンタービレ(緩)。 senza un'ombra di pietà. senza ombra di... ほんの少しの―もない |
Allegretto 4/4 B-flat major |
Ma che serve! tanto fa:けれども それが 何に役立つのだ【≒ それが何だという】! 【どちらでも】同じことだ: sono alfine giovinetta,私は 結局 とても若い女で、 capitar potrà il merlotto.【若い女は】馬鹿な男【≒ お人好しの男】に出会うことができるだろう。 Vo' pelarlo in fretta in fretta私は 彼を 急いで 急いで 皮を剥きたい【≒ すぐさま 彼を熱くしたい ≒ 彼を夢中にさせたい】 e scappar non mi potrà.そして 彼が 私から逃げない【ようにする】ことができるだろう。 |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部) Vo' pelarlo in fretta in fretta pelare は 毛を抜く,羽根をむしる,皮を剥く の意味だが、転じて 皮膚が剥けるような激しい熱さ/冷たさを感じる という意味もある。 |
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(Allegretto) 4/4 B-flat major |
Un marito crederei私は 信じているのだが 夫が alla fin non mancherà.いないであろうことは ない と 最終的に【≒ 最後には 夫を得られるだろうと信じている】。 (parte)(退場する) |
カバレッタ(急) このカバレッタには異稿がある。 |
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[Recitativo] Dopo l'Aria Clorinda Tisbe Alidoro |
ALIDOROアリドーロ La Pillola è un po' dura:丸薬 がんやく は 少々 固い【≒ 飲むのがつらい】: ma inghiottirla dovrà; non c'è rimedio.だが 彼女は それを 飲み下さなければならない; 【他に】治療法はない。 E voi cosa pensate?それで あなたは 何を 考えているのか? TISBEティスベ Cosa penso?私が 何を 考えているか? Mi accomodo alla sorte:私は 運命に 順応する : se m'umilio alla fin, non vado a morte.もし 最後に 惨めな思いをしたからといって、私は 死へは向かわない。 (parte)(退場する) ALIDOROアリドーロ Giusto ciel! ti ringrazio! I voti miei公正な天よ! 私の念願は non han più che sperar. L'orgoglio è oppresso.希望することの他は もはや 持っていない【≒ 私に残った願いは 希望することだけだ】。高慢は抑圧された。 Sarà felice il caro Alunno. In Trono愛する教え子は 幸福になるだろう。玉座で trionfa la bontà. Contento io sono.善良が勝利を収める。私は 満足している。 (esce)(出る) |
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N. 16 Finale secondo Coro, e Scena Cenerentola Clorinda Tisbe Cenerentola Don Ramiro Dandini Don Magnifico Alidoro Coro |
Allegro 4/4 A major |
SCENA ULTIMA最終場 (All'alzarsi della Tenda scorgesi un Atrio con festoni di fiori illuminato, e nel cui fondo su piccola base siedono in due ricche sedie Ramiro, e Cenerentola in abito ricco; a destra in piedi Dandini, Dame, e Cavalieri intorno. In un angolo Don Magnifico confuso con gli occhi fitti in terra. Indi Alidoro, Clorinda, e Tisbe mortificate coprendosi il volto)(カーテンが上がると 花々でできた花綱で輝かされた【≒ 飾られた】ロビーが認められる、そして その奥に 小さな台座の上の 2つの豪華な椅子に ラミーロが、そして豪華な服を来たチェネレントラが座っている; 右【≒ 上手】には ダンディーニ、婦人たち、そして騎士たちが 辺りに立っている。【部屋の】角 すみ に 混乱したドンマニーフィコ 地面に打ち込まれた両目で【≒ 床を見つめて】。その後にアリドーロ、クロリンダ、そしてティスベ 【彼女たちは】自尊心を傷つけられて 彼女の顔を覆いながら) CORO合唱 Della fortuna istabile気紛れな運命の la revolubil ruota回転できる車輪が mentre ne giungi al vertice君が それの【= 気紛れな運命の】 頂点に 達する時に per te s'arresta immota:君のために 不動に止まっている【≒ 動きを 止めた】。 cadde l'orgoglio in polvere,高慢さは 埃の中に落ちた、 trionfa la bontà.善良が 勝利を収めている。 |
合唱とレチタティーヴォを伴ったカンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の二部形式のアリア。 合唱。 Della fortuna istabile istabile = instabile 不安定な,変わりやすい,気紛れな trionfa la bontà. この合唱はチェネレントラに対するものであり、善良 la bontà はチェネレントラについて指している。つまり la bontà をラミーロと捉えるのは間違いである。 |
Recitativo 4/4 A major |
RAMIROラミーロ (scuotendo Cenerentola)(チェネレントラを揺り動かしながら) Sposa…花嫁よ… CENERENTOLAチェネレントラ (stupida per la gioia)(喜びで驚いて) Signor perdona貴君よ 容赦しなさい la tenera incertezza柔らかい不確かさ【≒ 甘い不安】が che mi confonde ancor. Poc'anzi il saiまだ 私を 混乱させていることを。 fra la cenere immonda...灰の中で汚れた女が… ed or sul Trono un serto mi circonda.それが 今 玉座の上で 冠が 私を 取り巻いている【≒ 私は 王冠を戴いている】。 MAGNIFICOマニーフィコ (corre in ginocchio)(駆け付け 跪く) Altezza... a voi mi prostro...妃殿下よ… あなたの前に 私は 平服する… CENERENTOLAチェネレントラ Né m'udrò mai chiamar la figlia vostra?私は 決して 聞くことがないのだろうか 私を あなたの娘と呼ぶことを【≒ あなたが 私を 娘と呼ぶのを 私は聞くことがないのだろうか】? RAMIROラミーロ (accennando le sorelle)(姉妹を 示しながら) Quelle orgogliose...あの 高慢な女たちは… CENERENTOLAチェネレントラ Ah Prenceああ 王子よ io cado a' vostri piè. Le antiche ingiurie私は あなたの足元に 倒れる。昔の無礼は mi svanir dalla mente.私の記憶から 消え失せる。 Sul Trono io salgo; e voglio玉座の上に 私は上る; そして 私は望んでいる starvi maggior del Trono,そこで 玉座よりも 偉大になることを、 e sarà mia vendetta il lor perdono.そして 彼らの赦免【≒ 彼らを許すことが】が 私の復讐になるだろう。 |
レチタティーヴォ。 Quelle orgogliose... orgogliose が女性複数形なので、姉妹だけを指して言っている。 なおこれがラミーロの最後の台詞。彼が、正義からとはいえ、君主然とした居丈高な態度を示した後に、それを受けてチェネレントラのアリア・フィナーレが導かれる。 |
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Andante 6/8 E major |
Nacqui all'affanno, e al pianto.私は 苦悩に生まれた、そして 涙に【生まれた】。 Soffrì tacendo il core;心は 黙りながら 苦しんだ; ma per soave incantoしかし 甘美な魔法によって dell'età mia nel fiore,私の年齢の花の中で【≒ 私が 若い盛りの時に】 come un baleno rapido瞬時の稲光のように la sorte mia cangiò.私の運命は 変わった。 |
カンタービレ(緩)。 |
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Allegro 4/4 E major |
(a Magnifico, e Sorelle)(マニーフィコに、姉妹に) No no no no, tergete il ciglio.いいえ いいえ いいえ いいえ、眼を 拭きなさい【≒ 涙を 拭いなさい】。 Perché tremar, perché?なぜ 震えるのか、なぜ? A questo sen volate,この胸に 飛んで来なさい、 Figlia, Sorella, Amica,娘を、妹を、友を (abbracciandole)(彼女たちを 抱擁しながら) tutto trovate in me.すべて 君たちは 私に 見付けている。 CLORINDA, TISBE, DANDINI, MAGNIFICO E COROクロリンダ、ティスベ、ダンディーニ、マニーフィコと合唱 M'intenerisce, e m'agita:彼女は 私を 柔らかくする【≒ 優しくする ≒ 感動させる】、そして 私を 揺さぶる【≒ 興奮させる】 è un Nume agli occhi miei.彼女は 私の両目には 神だ。 CENERENTOLAチェネレントラ Padre... Sposo... Amico... oh istante!父よ… 花婿よ… 友よ… ああ 【何という】瞬間だ! CLORINDA, TISBE, DANDINI, MAGNIFICO E COROクロリンダ、ティスベ、ダンディーニ、マニーフィコと合唱 Degna del Tron tu sei,君は 玉座に相応しい、 ma è poco un Trono a te.それどころか 君には 玉座は 不十分だ。 È un Nume.彼女は 神だ。 |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部) |
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(Allegro) 4/4 E major |
CENERENTOLAチェネレントラ Non più mesta accanto al focoもう 火【≒ 竈 かまど】の傍で 寂しげに starò sola a gorgheggiar, no.一人で 声を震わせて囀って【≒ 歌って】はいないだろう。 Ah fu un lampo, un sogno, un giocoああ 稲光だった、夢【だった】、戯れ【だった】 il mio lungo palpitar.私の長い 激しく打つ心臓の動悸は【≒ 苦しい思いは】。 CLORINDA, TISBE, DANDINI, MAGNIFICO E COROクロリンダ、ティスベ、ダンディーニ、マニーフィコと合唱 Tutto cangia a poco a poco,全ては 少しずつ 変わっている、 cessa alfin di sospirar.彼女は ついに 溜め息を吐く【≒ 嘆き悲しむ】のを止める。 |
カバレッタ(急)。 il mio lungo palpitar. palpitare 心臓がどきどきする は良い場合でも悪い場合でも使われる。この場合は 苦しみ、恐怖で胸がどきどきする(こと) の意味。 |
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Aria Sostitutiva di Alidoro, 1820, Roma | |||
N. 6a Scena ed Aria Alidoro Alidoro Cenerentola |
Andante mosso 4/4 C major |
SCENA Ⅶ第7場 Alidoro, indi Cenerentolaアリドーロ、その後にチェネレントラ (Dopo qualche momento di silenzio entra Alidoro in abito di Pellegrino con gli abiti da Filosofo sotto)(いくらかの沈黙の瞬間の後 アリドーロが入る 巡礼者の服を着て 下に 哲学者の服を身に着けて) |
6小節。 |
Allegro 4/4 C major |
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2小節 | |
Recitativo 4/4 C major |
ALIDOROアリドーロ Sì. Tutto cangierà.そうだ。すべてが 変わるだろう。 Quel folle orgoglio poca polve sarà,あの無謀な傲慢さは 僅かな埃になるだろう、 gioco del vento.風の戯れに【なるだろう】。 E al tenero lamentoそして 柔らかい嘆きの後に succederà il sorriso.微笑みが 続くだろう (chiama verso la camera di Cenerentola)(チェネレントラの部屋に向かって呼ぶ) Figlia... figlia...娘よ… 娘よ… CENERENTOLAチェネレントラ (esce e rimane sorpresa)(出て そして 驚いたままでいる) Figlia voi mi chiamate? Oh questa è bella!あなたは 私を 娘と呼ぶのか? ああ これは 素敵だ! Il Padrigno Barone non vuol essermi padre...継父の男爵は 私の父であることを望んでいない… e voi... per altroけれども あなたは… だがしかし guardando i stracci vostri, e i stracci miei,あなたのボロ服を見ると、そして 私のボロ服を【見ると】 degna d'un Padre tal figlia sarei.私は 父【= アリドーロ】に似合ったほどの娘であるかもしれない。 ALIDOROアリドーロ Taci figlia e vieni meco.黙りなさい 娘よ そして 私と一緒に来なさい。 CENERENTOLAチェネレントラ Teco, e dove?君と一緒に、それで どこへ? ALIDOROアリドーロ Del Principe al festino.王子の舞踏会に。 CENERENTOLAチェネレントラ Ma dimmi Pellegrinoしかし 私に言いなさい 巡礼者よ perché t'ho data poca colazione私が 君に 少しの朝食を与えたから【≒ ほんの少ししか朝食を与えなかったからといって】 tu mi vieni a burlar?君は 私の からかいに来るのか? Va via, va' via! Voglio serrar la porta...立ち去りなさい、立ち去りなさい! 私は 扉を閉めたい… possono entrar de' ladri,泥棒たちが入ることができる、 e allora, allora starei fresca davvero.そして その時、その時、 私は 本当に 酷い目に遭うかもしれない。 ALIDOROアリドーロ No! Sublima il pensiero!いいや! 考え方を高めなさい! Tutto cangiò per te!すべてが 君のために 変わるだろう! Calpesterai men che fango i tesori,君は 踏みにじるだろう 宝物を 泥よりも少なく、 rapirai tutti i cuori.君は 【多くの人の】心を奪うだろう。 Vien meco e non temer:私と一緒に 来なさい そして 恐れるでない: per te dall'alto m'ispira un Nume君のために 高いところから 神が 私に 着想を与えている。 a cui non crolla il Trono.その者【= 神】の玉座は 揺らがない。 E se dubiti ancor mira chi sono!それでも もし 君が まだ 疑っているならば よく見なさい 私が誰であるか! (nel momento che si volge, Alidoro gitta il manto)(瞬間に 彼が振り向く【≒ アリドーロが振り向いた時に】、アリドーロはマントを投げる ) |
e allora, allora starei fresca davvero. stare fresco 酷い目に遭う |
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[Aria Aridoro] Maestoso 4/4 E-flat major |
Là del ciel nell'arcano profondo向こうの 天の 神秘的な深みの中で del poter sull'altissimo Trono権力の この上なく高い玉座の上に veglia un Nume, Signore del mondo,神が この世の主が 見守っている、 al cui piè basso mormora il tuono.その者の足元で 雷が 低く 呟いている【≒ ゴロゴロ鳴っている】 Tutto sa, tutto vede e non lascia彼は すべてを 知っている、すべてを 彼は 見ている そして nell'ambascia perir la bontà.善良が 苦悩の中で 滅びるが 【↑】ままにさせない。 Fra la cenere, il pianto, l'affanno灰の中にいる、涙【の中にいる】、苦悩【の中にいる】 ei ti vede, o fanciulla innocente,君を 彼は見ている、ああ 純真な娘よ、 e cangiando il tuo stato tirannoそして 君の暴虐な状況を変える時 fra l'orror vibra un lampo fulgente.彼は 光り輝く稲妻を 恐怖【≒ 暗黒】の中に投げる。 No, no, no, non temer.いいや、いいや、いいや、恐れるでない。 Si è cambiata la scena:場面は変わった: la tua pena cangiando già va.君の苦悩は 既に 変わりつつある。 |
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Allegro 12/8 E-flat major |
(s'ode avvicinare una Carrozza)(馬車が近付くのが聞こえる) Un crescente mormorio増して行くざわめきが non ti sembra d'ascoltar…君には 聞こえるように思われないだろうか… Ah sta lieta: [è] il cocchio mioああ 嬉しくいなさい【≒ 喜びなさい】: 私の馬車だ。 su cui voli a trionfar!それの上で 勝利を収めに飛んで行きなさい! Tu mi guardi… ti confondi…君は 私を見つめている… 君は 当惑している… Ehi ragazza non rispondi?おい 娘よ 君は 返事をしないのか? Sconcertata è la tua testa君の頭は 混乱している e rimbalza qua e là,そして それ【= 君の頭】は ここであそこで 跳ね返っている【≒ あっちへこっちへ 揺れ動いている】、 come nave in gran tempesta大きな嵐の中の 船のように che di sotto in su sen va.それ【= 嵐の中の船 】は 下から上に 行ってしまう。 |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。 |
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(Allegro) 12/8 E-flat major |
Ma già il nembo è terminato,だが 黒雲は 既に 終わった【≒ 消え去った】。 scintillò serenità.晴朗【≒ 晴天】が まぶしく光った。 Il destino s'è cangiato:運命は 変わった。 l'innocenza brillerà.純真が 輝くだろう。 Tu mi guardi… ti confondi…君は 私を見つめている… 君は 当惑している… Ehi ragazza non rispondi?おい 娘よ 君は 返事をしないのか? Sconcertata è la tua testa君の頭は 混乱している e rimbalza qua e là,そして それ【= 君の頭】は ここであそこで 跳ね返っている【≒ あっちへこっちへ 揺れ動いている】、 come nave in gran tempesta大きな嵐の中の 船のように che di sotto in su sen va.それ【= 嵐の中の船 】は 下から上に 行ってしまう。 (aprono la porta, vedesi una Carrozza. Cenerentola vi monta, Alidoro chiude la porta, e sentesi la partenza della Carrozza)(彼らが扉を開ける【と】、馬車が見える。チェネレントラは そこに乗り、アリドーロは扉を閉める、そして馬車の出発が聞こえる) |
カバレッタ(急)。 |
参考資料
La Cenerentola / Gioachino Rossini / Edizione Critica a cura di Alberto Zedda / Fondazione Rossini Pesaro 1998
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Vocal score, published by Schott, Meinz, Germany, about 1821 / IMSLP #107713
Ricciardo e Zoraide / Gioachino Rossini / Full score, Garland Publishing, New York and London, 1980, reprint from full score published by Ratti, Cencetti, Roma, Italy, ca 1828
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1990
Ricciardo e Zoraide / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy, 1996
Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /
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