ROSSINI ELISABETTA REGINA D'INGHILTERRA

ロッシーニ御殿 ホームページ
オペラ御殿 旧御殿のメインメヌー

最新更新 2022年11月14日

無断転載 厳禁

GIOACHINO ROSSINI

ELISABETTA REGINA D'INGHILTERRA






初演 1815年10月4日 ナポリ サン・カルロ劇場
First performance 4 October 1815 Teatro San Carlo, Napoli

台本 ジョヴァンニ・シュミット
Libretto Giovanni Schmidt

原作
Original

作曲

普請中
1815年、ロッシーニはナポリの劇場群を運営していた興業主、ドメニコ・バルバイヤの招きでナポリに移り、ここを拠点として活動することになる。しかし契約の経緯についてはよく分かっていない。
ともかく、ロッシーニは1815年6月27日にナポリに到着している。
ロッシーニとバルバイヤが交わした契約書は残されていない。

初演

普請中

tenore
basso
tenore
soprano
contralto

蘇演

普請中

Nolfolk、Nolfolc、Nolfele

《エリザベッタ》のノルフォルクは、第4代のノーフォーク公爵トマス・ハワードをモデルにしている。彼の ノーフォーク は Norfolk と綴る。
一方、イタリアではKが用いられることは例外的で、オペラでの役名は Norfolc である。にもかかわらず、世に出回っている台本では Norfolk となっているものが非常に多い。《エリザベッタ》が人気を博して欧州各地で広く上演されるうちに、実在する人物の綴りに合わせて Norfolk になったのかもしれない。そうであっても、《エリザベッタ》においては Norfolk は間違いで、Norfolc が正しい。
さて《エリザベッタ》のクリティカルエディション総譜台本では、歌詞の部分に Norfolc ではなく Norfole が用いられている。もちろんこれは誤植ではない。2音節の Norfolc をロッシーニが3音節で扱うためにわざと Norfole にしたのだという。文法的には、Norfolc を Norfol と短縮した上で語尾音を添加している。ヴェルディの《マクベス》において、歌詞だけ Macbeth が Macbetto になっているのと同様の例である。またあくまで歌詞だけのことで、役名やト書きなどでは Norfolc が用いられている。
ちなみに Leicester を英語発音のレスターではなくレイチェステルと読ませるのも、5音節の Elisabetta がしばしば3音節の Elisa になっているのも、同様の理由のようである。

自らの楽曲の再利用

普請中
《エリザベッタ》はロッシーニがナポリのために書いた初めてのオペラであるが、それまでロッシーニが書いて来た作品、主としてヴェネツィアなど北イタリアなどで発表された作品からの再利用が非常に多くみられる。部分的に音楽素材を再利用している場合もあれば、第1幕のマティルデのアリアのカバレッタのようにほぼそのまま再利用している場合もある。
源泉となっている作品は、主に《バビロニアのチーロ》(1812年3月14日、フェラーラ)、《パルミラのアウレリアーノ》(1813年12月26日、ミラノ)、《シジスモンド》(1814年12月26日、ヴェネツィア)。いずれも人気作にはならず上演が限られていたので、ロッシーニはそこから素材を再利用している。

序曲 《パルミラのアウレリアーノ》、《エリザベッタ》、《セヴィリアの理髪師》

普請中

対訳付き音楽設計図

登場人物

エリザベッタ,イングランドの女王ソプラノ
レイチェステル軍の将軍テノール
マティルデレイチェステルの秘密の妻 マリア・ストゥアルドの娘ソプラノ
エンリーコマティルデの兄 マリア・ストゥアルドの息子テノール
ノルフォルク王国の貴族テノール
グリエルモ近衛兵の隊長テノール

日本語訳は極力文学的色づけをしない直訳にしてある。
台本の詩句はクリティカルエディション総譜に記載されている状態に合わせてある。湖の女では、ロッシーニは台本をかなり変えており、したがって初演時やその後の印刷台本、それを基にしたインターネット上の台本とはかなりの相違がある。

Sinfonia Andante maestoso
4/4
E major
序奏付きの展開部を欠いたソナタ形式。
《パルミラのアウレリアーノ》の序曲を多少手直ししたもの。
Allegro vivace
4/4
e minor / G major
[Allegro vivace]
4/4
E major
Più mosso
4/4
E major
ATTO PRIMO
N.1
Introduzione

Norfolc
Coro
Moderato
4/4
C major
(Scena prima)(第1場)
(Sala regia. Trono)(王宮の広間。玉座)
(Norfolc, Guglielmo e cavalieri, situati in ordine, attendendo l'arrivo della regina. Guardie)(ノルフォルク、グリエルモと騎士たち、整然と位置されて【≒ 整列して】、女王の到着を待ちながら。衛兵たち。)

CORO合唱
Più lieta, più bellaもっとも喜ばしい、もっとも美しい
apparve l'aurora;夜明けの光が 姿を現した;
malefica stellaそれ【= 夜明けの光】は 悪意のある星を
dal cielo sgombrò!空から追い払った!
Del raggio di pace平和の光線で
il sole s'indora;太陽は 金色に染まっている;
di Marte la face火星の松明 たいまつ 【≒ 光】
estinta restò.消えた。
この 導入 は、合唱を伴ったノルフォルクのカンタービレ(緩)―カバレッタ(急)の二部形式のアリア。
この Moderato の合唱は、オペラの開幕の合唱であり、かつ合唱によるアリアの前奏でもある。

この合唱は、《シジスモンド》第1幕 第3番 アルディミーラのシェーナとカヴァティーナ O tranquillo soggiorno! / Un solo oggetto, のカヴァレッタ Diletta immagine から素材が採られている。

malefica stella / dal cielo sgombrò!
悪意のある星 は、エリザベッタ(エリザベス1世)においてはマリア・ストゥアルダ(メアリー・スチュワート)を指していると思われる(この台本ではエンリーコとマティルデはマリア・ストゥアルダの子どもと設定されている)。と同時に、初演の1815年10月のナポリにおいては、当然、ナポレオンの最終的な駆逐を重ねていると思われる。

di Marte la face / estinta restò.
Marteは軍神マルテに由来しており、戦いの火種が消えた という意味になる。前述の 悪意ある星 と同様、一方でマリア・ストゥアルダを、一方ではナポレオンを指している。

Largo
2/4
E-flat major
NORFOLCノルフォルク
(Oh voci funeste(ああ 不幸をもたらす声よ
che abborre quest'alma!それを この魂は憎悪している!
La rabbia m'investe:怒りが 私を襲っている:
più calma non ho.)私は もはや 平静を持っていない。)
カンタービレ(緩)

Allegro vivace
4/4
C major
(Il suono de' militari strumenti in distanza, che si avvicina di grado in grado, annunzia l'ingresso in città delle armi vittoriose condotte da Leicester)(遠くで軍隊の楽器【≒ 軍楽隊の音】が、それは徐々に近づいて来る、レイチェステルによって導かれた勝利を得た部隊の町への入場を知らせている)

CORO合唱
Udite... s'avanza聞け… 近づいて来る
l'invitto campione,不敗の英雄が、
de' cori speranza,心の希望が、
delizia d'Albione,アルビオン【= イングランド】の歓喜が、
d'Elisa sostegno,エリーザ【= エリザベッタ】の支えが、
del regno splendor.王国の輝きが。

NORFOLCノルフォルク
(Che smania! che affanno!(何という苛立ちだ! 何という苦悩だ!
Destino tiranno!暴虐な運命め!
Avvampo di sdegno,私は 怒りで燃え上がり、
m'uccide il dolor.)苦悩が私を殺す。)
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。
台本作家の意図は、テンポ・ディ・メッゾは合唱だけ、カバレッタでノルフォルクが歌う、という設計だったと思われるが、ロッシーニはテンポ・ディ・メッゾでノルフォルクの歌詞をすべて使ってしまっている。

l'invitto campione,
campione は、今日ではスポーツにおける優勝者(チャンピオン)を指すが、中世においては守護する者に代わってに戦争あるいは決闘で戦う人物を指す言葉だった。《エリザベッタ》の台本では、レイチェステルはスコットランドの反乱を制圧したことになっている(史実ではない)。ここでは 英雄 で訳した。

(Allegro vivace)
4/4
C major
NORFOLCノルフォルク
(Che smania! che affanno!(何という苛立ちだ! 何という苦悩だ!
Destino tiranno!暴虐な運命め!
Avvampo di sdegno,私は 怒りで燃え上がり、
m'uccide il dolor.)苦悩が私を殺す。)

CORO合唱
Udite... s'avanza聞け… 近づいて来る
l'invitto campione,不敗の英雄が、
d'Elisa sostegno,エリーザ【= エリザベッタ】の支えが、
del regno splendor.王国の輝きが。
カバレッタ(急)

[Recitativo] Dopo l'Introduzione


4/4
(C major)
GUGLIELMOグリエルモ
(tirando Norfolc in disparte)(ノルフォルクを傍らに引っ張っていきながら)
Nel giubilo comun, signor, tu solo共通の歓喜の中で【≒ 皆が喜んでいる中で】、貴君よ、君だけが
parte non prendi in sì felice giorno?これほどに幸福な日に 参加していないのか??
Perché? Rimira intorno:どうしてなのか? 周囲を凝視しなさい【≒ 周りを よく見てみろ】
Vedi qual gioia a ognun siede sul ciglio.【そうすれば】君は見る 各々の眼 まなこの上に そうした喜びを。

NORFOLCノルフォルク
(Importuno!) Guglielmo,(うるさい奴め!) グリエルモよ、
s'io godo al comun ben共通の【≒ 皆の】幸福において 私が心から喜んでいるかどうか
lo sa il ciel, tu lo sai, che appien conosciそのことを 天は分かっている、【そして同様に】君は そのことを分かっている、その者【= 君 = グリエルモ】は 十分に理解している
il sensibil mio cor.私の繊細な心を【≒ 皆が幸せに浸っている中で 私が喜んでいるかどうか、天はそれを知っているし、私の繊細な心をよく理解している君もそれを知っている】

GUGLIELMOグリエルモ
(Così potessi ignorar che tu sei!)(まるで 私が知らないかもしれないかのようだ 君が何であるか【≒ まるで 私が 君の本性を知らないかのようだ】!)

NORFOLCノルフォルク
Ma in veder che a' trofeiしかし 見ると
dell'anglico valore parte non ho,イングランドの勇者の 【↑】戦利品に 私が関わっていないことを、
mi reca affanno al core.それ【= 前の che節】は 私の心に 苦悩をもたらす。
Nelle anime ben nate高貴な生まれの魂において【すら】
di generosa invidia豊富な【≒ 大きな】嫉妬の
nasce talor l'affetto.感情が 時々 生まれる【ものだ】
Oh! qual contentoああ! なんと満足な【≒ 嬉しい】
per Norfole or sariaことだろうに 今 ノルフォーレにとって
se di Leicester al temuto brandoもし レイチェステルの 恐れられた剣に
questo brando si fosse accompagnato!この剣が 同伴していたならば!
Ma prive di tal ben mi vuole il fato.だが 運命は 私に そのような恵みを欠いていることを望んでいる【≒ そのような恩恵を与えようとはしない】
(Dissimular convienne.)(偽らなければならない。)

GUGLIELMOグリエルモ
Osserva; a noi sen vieneじっと見なさい【≒ よく見てみなさい】; 私たち【のところ】に来る
ilare la regina. A lei ti mostra陽気な【≒ 上機嫌の】女王が。彼女に 【↓】嬉しそうな君の姿を見せなさい、
lieto, se il puoi. Vinci te stesso, e spera.もし君がそれをできるなら。君自身に勝ちなさい、そして期待しなさい。
Forse un dì della gloriaもしかしたら ある日 栄光の
aperto a te il sentier, potrai del regno...道が 君に開かれ、君は できるだろう 王権の…

NORFOLCノルフォルク
Non più, Guglielmo.さらに多くは止めろ【≒ それ以上言うな】、グリエルモよ。

GUGLIELMOグリエルモ
(Io ti conosco, indegno!)(私は 君を心得ている、恥ずべき奴め!)
Così potessi ignorar che tu sei!
così +接続法半過去 は come se +接続法半過去 と同じ まるで―であるかのように。
potessi < potere はここでは推量。

per Norfole or saria
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

dell'anglico valore parte non ho,
anglico は アングル族の の意だが、Anglia や Anglio などすべて、ここでは イングランド/イングランドの/イングランド人 のように訳す。

Forse un dì della gloria / aperto a te il sentier, potrai del regno...
regno は 王国 と 王権 の意味があるが、この場合は王権。

N. 2
Coro e Cavatina [Elisabetta]

Elisabetta
Coro
Marziale
4/4
D major
(Scena Ⅱ)(第2場)
(Elisabetta, con seguito di Dame, Cavalieri, Paggi, e Guardie. I precedenti)(エリザベッタ、貴婦人たち、騎士たち、小姓たち、そして衛兵たちの一行 いっこう を伴って。前の場の人たち)
(Tutti s'inchinano)(全員が跪く)

CORO合唱
Esulta, Elisa, omai歓喜しなさい、エリーザ【= エリザベッタ】よ、やっと
in giorno sì beato.これほどに幸福な日に。
Cangiò sembianza il fato;運命は 顔つきを変えた;
tutto cangiò per te.すべてが 君のために 変わった。
L'invitto eroe vedrai君は見るだろう 不敗の英雄が
deporti i lauri al piè.君の足元に ゲッケイジュを置くのを。
合唱の導入付きのエリザベッタのカンタービレ(緩)/カバレッタ(急)の二部形式のカヴァティーナ(入場のアリア)。
合唱の導入。
[Andante]
6/8
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Quant'è grato all'alma mia私の魂に なんとありがたいことか
il comun dolce contento!共通の甘い満足が【≒ 皆の快い喜びが】
Giunse alfine il bel momentoついに 素晴らしい瞬間が やって来た
che c'invita a respirar.それは 私たちに 息をするように促している。
カンタービレ(緩)
Allegro
4/4
F major
CORO合唱
Dopo tante rie vicende,たくさんの悪質な変遷【≒ 出来事】の後に、
real donna, a pace in seno国王である婦人【≒ 女王】よ、平安の胸の中で【≒ 平安の懐の中で ≒ 平安に包まれて】
tu ritorni a riposar.君は 休息しに戻っている【≒ 安らぎを取り戻している】

ELISABETTAエリザベッタ
Qual contento!何という満足【≒ 喜び】だ!
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)

この合唱の歌詞も、ナポレオンによるナポリ王国の動乱がようやく終わったことを思い起こさせる。

[Allegro]
4/4
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Questo cor ben lo comprende,この心は そのこと【= 前の合唱の内容】を よく理解している、
palpitante dal diletto.【この心は】喜びでどきどきしている。
(Rivedrò quel caro oggetto(私は 再会するだろう あの いとしい対象に
che d'amor mi fa brillar.)その者は 愛で 私を輝かせる。)

CORO合唱
Dopo tante rie vicende,たくさんの悪質な変遷【≒ 出来事】の後に、
real donna, a pace in seno国王である婦人【≒ 女王】よ、平安の胸の中で【≒ 平安の懐の中で ≒ 平安に包まれて】
tu ritorni a respirar.君は 息をしに戻っている【≒ 安心を取り戻している】
Possa ognor, felice appieno,これからもずっと、すっかり幸福に、
teco l'Anglia giubilar.イングランドが 君と共に歓喜する 【↑】ことができるように。
カバレッタ(急)

tu ritorni a respirar.
テンポ・ディ・メッゾでは tu ritorni a riposar. だったが、ここでは respirar に変わっている。

teco l'Anglia giubilar.
Anglia = Inghilterra イングランド。エリザベス1世の時代は1707年のイングランドとスコットランドの合併より前であり、Inghilterra ないしは Anglia は イングランド と訳す。

Recitativo [Dopo la Cavatina Elisabetta]

Elisabetta
Guglielmo

4/4
(C major)
ELISABETTAエリザベッタ
Grandi del regno, è questo王国の貴族たちよ、これは
il più bel giorno di mia vita. Alfine私の人生で 最も素晴らしい日 【↑】である。ついに
coronò la vittoria agli Angli il crine!イングランド人たちの頭髪に 勝利が 冠を被せた!
Del forte duce, a cui力強い司令官の、その者に
deve la patria ogni suo ben, risuona祖国は その【= 祖国の】どんな幸福も 負っている【≒ 祖国のあらゆる幸せは 有能な司令官のおかげである】、響き渡っている
ovunque il nome, e tanta fama ei gode,どこにおいても 【力強い司令官の】名前が、そしてあまりにたくさんの名声を 彼は享受しているので、
che al suo merto è minor qualsiasi lode.どのような称賛も 彼の功績よりも小さい。
Pur da noi non si lasci d'onorar la presenzaそれにもかかわらず 私たちによって 放棄するであろうことはない 存在に栄誉を与えることを
di sì nobil campion. Qui lo scortate.これほどに類まれな英雄の【≒ それでも 私たちは これほど類まれな英雄に対して称賛を惜しみはしない】。ここへと 彼を護衛しなさい【≒ ここに彼を連れて来なさい】

GUGLIELMOグリエルモ
Ei s'affretta al tuo piè.彼は 君の足元へと急いでる。

ELISABETTAエリザベッタ
(Qual gioia!) Andate.(何という喜び!)【彼を出迎えに】行きなさい!

(i Grandi vanno all'ingresso a ricevere il vincitore; Norfolc a stento li segue; Elisabetta, assistita da Guglielmo, va sul trono)(貴族たちは 勝利者を待ち受けに入口に行く; ノルフォルクは かろうじて 彼らに続く; エリザベッタは、グリエルモによって付き添われて、玉座の上へと行く)
N.3
Coro

Coro
Moderato
2/4
G major
(SCENA Ⅲ)(第3場)
I precedenti, Leicester accompagnato da' primari uffiziali, e seguito da più nobili scozzesi, tra i quali sono Matilde, sotto spoglie virili, ed Enrico.前の場の人たち、レイチェステル 主要な将校たちに同伴された、そしてより高貴なスコットランド人たち【≒ スコットランドの高位の貴族たち】に従われて、それらの中にマティルデが、男の衣服の下に【≒ 男装して】、そしてエンリーコが【いる】。

CORO合唱
Vieni, o prode, qui tergi i sudori;来なさい、ああ 勇者よ、ここで汗を拭きなさい;
con gli olivi di pace, gli allori,平和のオリーブで、ゲッケイジュ【で】
vieni il crine onorato a fregiar.光栄ある頭髪を飾りに来なさい。
Tutto cede al tuo braccio possente;皆 君の力強い腕に屈する;
per te riede ogni volto ridente;君によって どの嬉しそうな顔は笑う;
per te cessa ogni lungo penar.君によって どんな長い苦しみも止まる。
A-B-A'の三部形式の合唱。

Recitativo dopo il Coro
4/4
(C major)
LEICESTERレイチェステル
Alta Regina, invano至高の女王よ、無駄に
lo Scoto altero al nostro ardir s'oppose.尊大なスコット人は 私たちの向こう見ず【≒ 勇気】に立ち向かった【≒ スコットランド人は 厚かましくも 勇敢な私たちに歯向かったが 無益に終わった】
Col nome tuo sul labbro唇の上に乗せた君の名前と共に【≒ 女王の名を口にしながら】
gli Angli pugnaro, e, al rimbombar dell'armi,イングランド人たちは戦った、そして、戦闘の轟きに、
dal vincitor l'udia勝者から それを聞いた
il nemico guerrier mentre peria.敵の兵士は 彼が死ぬ時に【≒ 戦いの轟音の中で、死に行く敵兵は、勝利したイングランド兵が口にする女王の名を何度も耳にした】
Di rea discordia omai spenta é la face,邪な不和の松明 たいまつ は もはや 消えた、
al tuo poter soggiace君の力【= 女王の支配力】に服従している
chi sprezzarlo tentò. D'uopo non haiそれ【= 君の力 = 女王の支配力】を侮蔑しようと試みた者は。君は必要を持っていない
più del nostro valore; onde al tuo piedeもう 私たちの勇気の【≒ もう我々の勇敢さを必要とはしていない】; そこで 君の足元に
dell comando dell'armi,戦闘の命令の、
Che degnasti affidarmi, eccoti il segno.それを 君は 私に任す価値があると思った、さあ君に 印を【= 君が私に託した 戦闘命令の象徴を 君の足元に返す】
(depone su i gradini del trono il bastone del comando)(玉座の階段の上に 命令の杖を置く)
Esulti Elisa, e seco esulti il regno.エリーザが喜ぶように、そして 彼女と共に 王国が喜ぶように。

ELISABETTAエリザベッタ
Giovane eroe, quanto per me facesti,若い英雄よ、君が私のためにしたことは、
quanto a pro della patria usò finora【そして】祖国の利益のために これまで 行ってきたことは
del tuo gran cor la fede君の偉大な心の忠誠が【≒ 君の素晴らしく忠実な心が これまで 祖国のためにやってくれたことは】
d'ogni dono è maggior, d'ogni mercede.どのような進物よりもさらに重要だ、どのような報酬よりも。
Obbliarlo non so. T'appressa. Intantoそのことを 私は忘れることはできない。 近づきなさい。今のところは
abbiti questo pegno della grata alma mia.この印を持ちなさい 私の ありがたく思っている魂の【≒ さしあたって 私の感謝の気持ちの印を受け取りなさい】
(Leicester si prostra; Elisabetta togliendosi dal petto un ordine cavalleresco, ne fregia di sua mano il duce)(レイチェステルは跪く; エリザベッタは彼女の胸から騎士団勲章を外しながら、それで 彼女の手から 司令官を飾る)

LEICESTERレイチェステル
Oh generosa!ああ 心の広い!

NORFOLCノルフォルク
(Oh rabbia!)(ああ 怒りが!)

MATILDEマティルデ
(Oh gelosia!)(ああ 嫉妬が!)

(Al cenno di Leicester si avanzano gli Scozzesi, e si prostrano alla regina, presentandole i preziosi tributi che recano sopra de' bacili coperti da un bianco velo)(レイチェステルの指示に スコットランド人たちが近づく、そして女王の前で跪き、彼女に貢物を差し出しながら それを 彼らは盆に乗せて持って来る 白いヴェールで覆われた)

LEICESTERレイチェステル
Questi, sovrana eccelsa,これらの、至高の君主よ、
germi di chiara stirpe illustri ostaggi,令名高い人質たちを 【その者たちは】明るい【≒ 名門の】家系の息子たち【である】
proni al tuo soglio vedi.【その者たちは】君の玉座に服従している 見なさい【≒ 見なさい、女王よ、スコットランドの名門一族の息子たちから成る令名高い人質たちが 君の玉座に服従しているのを】
Quei preziosi arrediあれらの高価な装飾品【≒ 宝物 ほうもつ】
ch'oggi t'invia la sottomessa Scozia...それらを 今日 支配下にあるスコットランドが君に送る…
(sospende il discorso nel riconoscere tra gli ostaggi la consorte ed il cognato)(彼は話を中断する 人質たちの中に 妻と義兄を認識して)
(Oh ciel!... che mai vegg'io!...(ああ 天よ! 私は いったい何を見ているのだ!…
Stelle... Matilde... Enrico... È un sogno il mio?)星々よ… マティルデが… エンリーコが… これは 私の夢なのか?

ELISABETTAエリザベッタ
(agli ostaggi)(人質たちに)
Sorgete. Entro la reggia立ち上がりなさい。王宮の中に
avrete asilo. All'onorevol grado君たちは 避難所【≒ 滞在場所】を持つだろう。【さらに】尊敬に値する
de' paggi miei v'eleggo.私の小姓の 【↑】身分に 私は君たちを任命する。
(scende dal trono)(玉座から降りる)
Londra festeggi in così lieto giornoロンドンが祝うように これほどに喜ばしい日に
delle nostre armi il fortunato evento;私たちの軍隊の幸運な結果を;
sia partecipe ognun del mio contento.誰もが 私の満足【≒ 喜び】を共有するように。
(Elisabetta nel ritirarsi guarda benignamente Leicester, dandolgli la mano da baciare. Norfolc freme; Matilde fa lo stesso; Enrico, che se ne accorge, fa cenno alla sorella d'esser cauta. Ognuno ritirasi fuorchè Leicester, il quale va sull'ingresso ed ivi trattiene Matilde, ch'è l'ultima ad entrare, e fa ch'ella retroceda)(退場するエリザベッタはレイチェステルを優しく見つめて、彼に接吻のための手を差し出す。ノルフォルクは震える。マティルデは同じことをする【= マティルデもまた震える】;エンリーコは、その者はそのこと【= マティルデが震えたこと】に気付く、妹に慎重になるよう合図をする。各々が退場する レイチェステルを除いて、その者【= レイチェステル】は【王宮の】入口の傍に行き そしてそこでマティルデを引き留めて、その者【= マティルデ】は【王宮の中に】入る最後の者である、そして彼は 彼女が退くようにする【≒ レイチェステルは マティルデが王宮の中に入らないようにする】)
gli Angli pugnaro, e, al rimbombar dell'armi,
pugnaro = pugnarono < pugnare の3人称複数遠過去形。-are動詞の遠過去の3人称複数の語尾は古い形では -aro になる。

dal vincitor l'udia
udia = udiva < udire の3人称単数半過去形。次も参照に。

il nemico guerrier mentre peria.
peria = periva < perire の3人称単数半過去形。
udia、peria と半過去を用いているので、死に行く間に何度も(イングランド兵が口にする女王の名前を)聞いた という継続の意味になる。

(depone su i gradini del trono il bastone del comando)
il bastone del comando は、軍司令官が君主からの指揮権の委任を象徴する杖。片手で高く掲げるために一般的に短い。これには 官杖 かんじょう という訳語があるが、一般的に用いられる語ではないので採用しなかった。

ne fregia di sua mano il duce
ne = di questo。fregiare A di B で AをBで飾る になり、したがって 司令官をそれ(騎士団勲章)で飾る。di sua mano は 女王が自らの手で の意。

N. 4
Duetto [Matilde-Leicester]

Matilde

Leicester
Allegro agitato
4/4
f minor
(SCENA Ⅳ)(第4場)
(Leicester, Matilde)(レイチェステル、マティルデ)

LEICESTERレイチェステル
Incauta, che festi!軽率な女め、君は何をしたのだ!
Seguirmi perchè?なぜ 私の後を追って来る?
Gli affetti son questiこれらが 情愛なのか
d'amore e di fé?愛の そして信頼の?

MATILDEマティルデ
La fede, l'amore信頼が、【そして】愛が
guidaro il mio piè;私の足を導いた;
di sposa al timore妻の不安には
ritegno non v'è.自制はない。

LEICESTERレイチェステル
Ma in tanto periglio...だが これほどたくさんの危険の中に…

MATILDEマティルデ
Non basta consiglio.助言が足りない【≒ そのような忠告は役に立たない】

LEICESTERレイチェステル
Ah! Trema per te!ああ! 君に怯えなさい【≒ 自分自身のことを心配しなさい】

MATILDEマティルデ
Sol tremo per te.私は 君だけに怯える【≒ ただ君だけのことを心配している】
この二重唱は、基本的に同じテンポ Allegro agitato の二つの部分に分かれ、さらに後半は同じ歌詞を用いつつテンポを上げた Più mosso コーダを持っている。

guidaro il mio piè;
guidaro = guidarono < guidare の3人称複数遠過去形。


4/4
F major
MATILDEマティルデ
Che palpito sento!何という心臓の拍動を私は感じていることか!
Che crudo tormento!何という過酷な苦悩だ!
Perplessa, me stessa途方に暮れて、私自身を
non trovo più in me.私は もはや 私の中に見出していない。

LEICESTERレイチェステル
Che palpito sento!何という心臓の拍動を私は感じていることか!
Che crudo tormento!何という過酷な苦悩だ!
Perplesso, me stesso途方に暮れて、私自身を
non trovo più in me.私は もはや 私の中に見出していない。
Più mosso
4/4
F major
MATILDEマティルデ
Perplessa, me stessa途方に暮れて、私自身を
non trovo più in me.私は もはや 私の中に見出していない。

LEICESTERレイチェステル
Perplesso, me stesso途方に暮れて、私自身を
non trovo più in me.私は もはや 私の中に見出していない。
Recitativo dopo il Duetto [Matilde-Leicester]

Matilde
Enrico
Leicester
Moderato
6/8
F major
LEICESTERレイチェステル
Sconsigliata! e non sai che del tuo sangue無思慮な女め! それでは 君は知らないのか 君の血統の
la nemica maggior qui si ritrova?最大の敵が ここに居合わせている 【↑】ことを?
Chi mai ti trasse a questoいったい 誰が 君を引き連れて来たのだ この
passo orribil, funesto?恐ろしい歩み 【↑】に、不幸をもたらす 【歩みに】

MATILDEマティルデ
Ahi! sposo... appenaああ! 夫よ…
fosti da me diviso,君が 私から引き離されて 【↑】すぐに、
fama suonò che amore,評判が鳴り響いた【≒ 噂が広まった】 愛を、
e l'amor più tenace, Elisabettaそれも 最も強靭な愛【≒ 極めて強い気持ちの愛】を、エリザベッタが
per Leicester nutria. Qual fosse, oh dio,レイチェステルに対して 心に抱いていた 【↑↑】という。ああ 神よ、
allor l'affanno mioその時の私の苦悩が どんなもので 【↑】あったであろうか
chi spiegar mai potrebbe?... Ah... vieni, Enrico...いったい 誰が説明できるかもしれないというのか?… ああ… 来なさい、エンリーコよ…


(SCENA Ⅴ)(第5場)
(Enrico. I precedenti)(エンリーコ。前の場の人たち)

LEICESTERレイチェステル
Tu, mio congiunto e amico,君が、私の親族 そして友、
di cotanta imprudenzaこれほどたくさんの軽率な行動を
potesti mai complice farti?いったい 共謀者をすることをできたのか【≒ 君が これほど無謀な行為に加担したのか】

ENRICOエンリーコ
Ah! taci.ああ! 黙りなさい。
Usai ogni opra, ogni consiglio私は あらゆる行為を用いた、あらゆる助言を【用いた】
per distorla, ma invan. Vedendo troppo彼女を思い止まらせるために、しかし無駄だった。見たので あまりにも
ostinato quel cor, volli seguirla,あの心が強情であることを、私は 彼女の後を追うことを望んだ、
sperando in queste mura,期待して この壁々【≒ 王宮の広間】の中で、
colla presenza mia, farla sicura.私の存在によって、彼女を安全にすることを【≒ 彼女があまりにも頑迷な様子だったので、私が王宮の広間にいることで彼女に危険が及ばないようにするために、私は彼女に付いて行くことにした】

LEICESTERレイチェステル
Vana speranza! E non pensaste, incauti,無駄な希望だ! それで 君たちは考えなかったのか、無分別な者たちめ、
che di Maria Stuardaマリア・ストゥアルダの
qui proscritta è la prole?子孫は ここでは 追放に処されている 【↑】ことを?
ch'Elisabetta vuoleエリザベッタが望んでいることを
del vostro sangue il germe appien distrutto?君たちの血統の子孫が 完全に絶滅させられる【ことを】

Matildeマティルデ
Mancai, nol niego. Eppur di qualche scusa私は過失を犯した、そのことを私は否定しない。それでもなお 何らかの弁明に
non è indegno il mio cor. Gelosa smania,私の心は 値しなくない。嫉妬深い動揺が、
timido amor di moglie,妻の内気な愛が、
sotto mentite spoglie偽の衣服の下で【≒ 変装して】
m'indussero a seguirti... Ma, perdona,君を追いかけるよう 私を仕向けた… けれども、【これから言うことを】容赦しなさい、
che mai deggio pensar...私が どうしても 考えざるを得ないことは…

Leicesterレイチェステル
Taci; comprendo黙りなさい; 私は理解している
quanto vuoi dirmi, ed a ragion m'offendo.君が 私に言いたいことを、そして 当然 私は気分を害している。
Svelò la fama il ver; chiaro dimostra評判は 真実を暴露した; はっきり示している
qualche affetto per me la mia regina;何らかの情愛を 私に対して 私の女王が;
ma Leicester son io. Fedele al trono,しかし 私はレイチェステルだ。玉座に忠実であり
non men fedele io sono私は より少なく忠実ではない【≒ それ以上に忠実だ】
al nodo marital che a te m'avvince.夫婦の絆に それは 君に 私を縛り付けている。
Va... di te, del german, di me, se vuoi,行きなさい… 君に、【君の】兄に、私に、もし君が望むならば、
pensier ti prenda... E che! tu piangi?考えを取る【≒ 気を遣う ≒ 配慮する】ように… いったい何が! 君は泣いているのか?

MATILDEマティルデ
Oh dio!ああ 神よ!

ENRICOエンリーコ
Fa cor, diletta suora;元気を出しなさい、愛する妹よ;
l'avvenir men funesto io spero ancora.より少なく不幸に襲われた【≒ 不幸のもっと少ない ≒ 平穏な】未来を 私は まだ 期待している。

LEICESTERレイチェステル
Separarci convien. Destar sospetto私たちには 期待することが有益である【≒ 私たちは期待しなければならない】。疑いを引き起こす
il favellar qui a lungo or potria.かもしれない ここで長々と話をすることは。
Sieguila, Enrico; ad ambo彼女の後に従いなさい、エンリーコよ; 両方に【≒ 君たち二人にとって】
la prudenza or sia guida,今は 用心深さが導きであるように、
e poi di nostra sorte il ciel decida.そして その後に 天が 私たちの運命について 決定するように【≒ 今は 君たち二人には 慎重に振舞ってほしい、そうした後に 天が私たちの運命に決断を下すことになるだろう】
(Vadasi in traccia di Norfole, del caro,(ノルフォーレの跡を進もう【≒ ノルフォルクを捜そう】、親しい者の【跡を進もう】、)
verace amico in cui pongo ogni speme;【彼は】誠実な友だ その者に 私は あらゆる希望を置いている;
ei sol può invigorire un cor che geme.)彼だけが 心を元気づけることができる それ【= 心】は呻いている【≒ 苦しんでいる】
(parte)(退場する)


(SCENA Ⅶ)(第5場)
(Enrico, Matilde)(エンリーコ、マティルデ)

ENRICOエンリーコ
Andiam. Vuole il destino,行こう。運命が望んでいる、
che teco io resti al fianco di colei,君と一緒に 私が あの女【= エリザベッタ】の横に留まるであろうことを、
che degli affanni nostriその者【= エリザベッタ】が 私たちの苦悩の
è primiera cagion.第一の原因である。

MATILDEマティルデ
Questo, o germano,このこと【= エリザベッタの前に出ること】は、ああ 兄よ、
è il dolor che m'uccide.苦悩だ それは 私を殺す。

ENRICOエンリーコ
D'uopo abbiam di coraggio.私たちは 勇気の必要を持っている【≒ 私たちには 勇気が必要だ】
Forse di speme un raggio il ciel pietosoおそらく 慈悲深い天 【↓】だろう
fia che vibri per noi.【↑】希望の光線を 私たちに向けて投げるであろうものは。

MATILDEマティルデ
Sperar non oso.私は 期待しようとしない【≒ 私には 期待できそうにない】
マティルデの Mancai, nol niego. からレイチェステルの E che! tu piangi? までは、自筆譜には存在するが修正紙が貼り付けられており、またもっとも古い筆写譜には載っておらず、ごく早い段階でカットされたと考えられている。今日でもほとんどの場合で採用されていない。ここでは該当箇所の文字色を変えて分かるようにしておく。


che mai deggio pensar...
これは間接疑問文ではなく、che節の主語と採った。先の場面を目撃したマティルデにとって 私が考えざるを得ないこと とは、噂通りエリザベッタがレイチェステルを愛しているということで、そう考えざるをえない、と言おうとしてレイチェステルに Taci! と遮られている。ここでの mai は強調。どうしても と訳した。

il favellar qui a lungo or potria.
potria = potrei < potereの3人称単数条件法現在

e poi di nostra sorte il ciel decida.
ここでの decida < decidere は自動詞 決まる,決定する。

Vadasi in traccia di Norfole, del caro,
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

N. 5
Aria di Matilde

Matilde
Andante
4/4
E-flat major
MATILDEマティルデ
Sento un'interna voce,私は 内側の声を聞いている、
che in lagrimevol suonoそれは 痛ましい響きで
dice che nata io sono言っている 私は生まれた
a piangere, a penar.泣くために、苦しむために 【↑】と。
緩(カンタービレ)/急(カバレッタ)の二部形式のアリア。
カンタービレ(緩)。

Allegro
4/4
E-flat major
Ah, se tolto un sol momentoああ、もし ほんの一瞬だけ【でも】
tanto orror da me sarà,これほど多くの恐怖が 私から 【↑】取り除かれるであろうならば、
palpitar di bel contento素晴らしい満足【≒ 喜び】で どきどきする
questo core allor potrà.ことができるだろう その時に この心は。
(parte)(退場する)
カバレッタ(急)。

《シジスモンド》 第2幕 第14番 ラディスラオのアリア Misero me! / Giusto ciel che i mali miei のカバレッタ Ah se tolto un sol momento をほぼそのまま再利用。
初演時の印刷台本ではこのカバレッタの歌詞は全く別のもので、その歌詞にロッシーニが音楽を付けた形跡はなく、ロッシーニは歌詞ごとカバレッタを再利用したと思われる。

Recitativo [Dopo l'Aria do Matilde]

Enrico
Norfolc
Leicester

4/4
(C major)
(SCENA Ⅶ)(第7場)
(Enrico solo)(エンリーコ一人)

ENRICOエンリーコ
Infelice! Pur troppo不幸な人だ! 残念ながら
Ha ragion di temer. Funesto nodo彼女は 恐れるのに道理を持っている【≒ 彼女には 恐れる理由がある ≒ 彼女が恐れるのは もっともだ】。不幸をもたらす絆だった
fu quel che strinse, e più funesto il rende彼女が結んだものは、そして それ【=絆 男性名詞】に もっと多くの不幸をもたらすようにしている
l'amor d’Elisabetta,エリザベッタの愛が【≒ エリザベッタのレイチェステルへの愛が レイチェステルとマティルデの結婚にさらなる不幸を与えている】
e l'imprudente passoそして 軽率な歩みが
che la germana ed io妹と私が
commesso abbiam qui raggiungendo il duce... ここに 司令官に追いつくことによって犯した 【↑】という【≒ 私と妹が レイチェステルを追い求めて王宮まで来るという無分別な行動も さらなる不幸を与えている】
Ah! pur troppo atra stella a noi riluce.ああ! 残念ながら 暗鬱な星が 私たちに光っている。
(parte)(退場する)


(SCENA Ⅷ)(第8場)
(Appartamenti reali)(王宮の居室)
(Norfolc, Leicester)(ノルフォルク、レイチェステル)

NORFOLCノルフォルク
(Che intesi!) In queste stanze, inosservato(私は 何を聞いたのだ!) この部屋で、気付かれず
puoi, dolce amico, favellar. (Che gioia!)君は、優しい友よ、話すことができる。(何という喜びだ!)
Prosegui.【話を】続けなさい。

LEICESTERレイチェステル
Un dì, dopo ostinata pugna,ある日 長く続いた戦いの後に、
terribil oragan sorge improvviso.恐ろしい暴風雨が 突然 発生する。
Da' miei prodi diviso,私の勇者たちから引き離されて、
in umile capanna慎ましい【≒ 質素な】小屋に
m'è d'uopo ricovrar; quivi m'accoglie避難する必要があった; そこで 私を迎えてくれた
vecchio pastor; Matilde,年老いた羊飼いの男が; マティルデが、
che sua figlia credei,その者を 私は 彼の娘だと信じた、
s'offerse agl'occhi miei; vederla e amarla私の目【の前】に現れた; 彼女を見ることは そして 彼女を愛することは
è l'opra d'un istante. Al nuovo giorno一瞬の行為だ。 新しい日【≒ 翌日】
in campo fei ritorno.私は 戦場に戻る。
Tutto in breve a me cede;【敵の】すべては ほどなく 私に降参する;
ma, oh dio! del vincitoreだが、ああ 神よ! 勝者の
in dolce schiavitù rimane il core.心は 甘美な奴隷の境遇になっている。

NORFOLCノルフォルク
E come di Matildeそれで どうやって マティルデの
sposo ti festi?夫に 君はなったのか?

LEICESTERレイチェステル
Grato all'amistade友情に感謝して
di quel pastor, m'offersiあの羊飼いの男の、私は 申し出た
contro all'ostil furor d'essergli schermo.敵の激情に対して 彼にとっての防御になることを【≒ 彼を 敵の襲撃から守ることを買って出た】
Sento che illustre Scoto私は聞く 令名高いスコット人が
in lui si nascondeva; allor gli chiedo彼に隠れている 【↑】ことを【≒ 彼が 素性を隠した由緒正しいスコットランド貴族であることを聞き知った】; その時 私は彼に頼む
la figlia in moglie, il vedo娘を妻にと、私は 彼を見る
al mio discorso impallidir; comprendo私の話に 青ざめているのを; 私は理解する
che grave arcano ci cela; prego, insisto;そのことについて 彼が 重大な秘密を隠していることを; 私は懇願し、言い張る;
di Matilde e d'Enrico allor mi svelaその時 彼は私に明らかにする マティルデの そして エンリーコの
l'origine real... Puoi figurarti王の生まれを【≒ マティルデとエンリーコが スコットランド女王マリア・ストゥアルダの子であることを】… 君は想像できる【≒ 君には分かってもらえるだろう】
qual fu la mia sorpresa. All'amor mio,私の驚きが どのようなものだったかを。私の愛に、
tanto tenace amor quanto funesto,不幸をもたらすのであるのと同じだけ粘り強い愛だ【≒ 私の愛は 災いをもたらしかねないが それだけに強固な愛だ】
pietà s'aggiunse... io già ti dissi il resto.哀れみが付け加わった… 私は 既に 君に残りを言った。

NORFOLCノルフォルク
A grave rischio, amico,重大な危険に、友よ、
i giorni tuoi, la gloria tua ponesti;君の日々【≒ 人生】を、君の栄光を 君は置いた;
ma fu colpa d'amore,しかし それは愛の罪だ、
e amor fa la tua scusa. (Esulta o core.)そして 愛は 君の弁解をする【≒ 愛が 君の言い訳になる】。(歓喜しろ ああ 心よ。)

LEICESTERレイチェステル
Se l'amico più caroもし 最も親しい友が
compatisce il mio fallo,私の過ちを 大目に見るのならば、
non son tanto infelice, e sperar posso私は それほど不幸ではない、そして 私は期待できる
consiglio, aita.助言を、援助を。

NORFOLCノルフォルク
E l'uno, e l'altra io voglio一つのものを、そしてもう一つのものを【≒ 両方とも】私は 望んでいる
porre in opra per te. Della regina君のために 行為に置く【≒ 実行に移す】ことを。女王の
la vigil mente a far che sia delusa用心深い注意が かわされるようにする【≒ 女王の疑い深い目の裏をかく】ためには
però molt'arte è d'uopo.けれども たいへんな手管が必要だ。
Alla sposa, al german t'affretta intanto;【君の】妻に、義兄に とりあえず 急ぎなさい;
cauti li rendi. Alquanto彼らを用心深くさせなさい。【そして】いくらか
dammi loco a pensar.私に 考える場【≒ 時間】を与えなさい。

LEICESTERレイチェステル
Sant'amistade聖なる友情が
tra gli affanni ch'io provo,苦悩の中で それ【= 苦悩】を私は感じている、
almen qualche conforto in te ritrovo.せめて いくらかの慰めを 君に見出している。
parte退場する


(SCENA Ⅸ)(第9場)

NORFOLCノルフォルク
Stolto! t'inganni. Ah! meglio愚かな奴だ! 君は間違っている。ああ! もっとよか
saria stato per te chiedere aitaったろうに 君にとって 助けを求めることが
al mar possente, alle voraci belve,力強い海に、飢えた野獣に、
alle furie d'averno,地獄のフーリエ【= フリアエ,復讐の三女神】に、
che non ad un nemico敵に【助けを求める】よりも
qual ti fui, qual ti son...君にとっての【かつての】私だったような【敵よりも】、君にとっての【今の】私のような【敵よりも】
(vedendo giungere Elisabetta)(エリザベッタが来るのを見ながら)
M'offre vendetta復讐は 私に提供する
la total tua rovina.君の 完全な破滅を。
terribil oragan sorge improvviso.
organ = uragano 暴風雨。台本によっては urgan となっている。

in campo fei ritorno.
fei = feci < fare の1人称単数遠過去形。この前後のレイチェステルの回想では史的現在(過去の出来事を現在形で記述している)と遠過去形が入り乱れている。

al mar possente, alle voraci belve,
初演時の印刷台本において possente ではなく fremente 震える ≒ うねる になっていることから、多くの台本において al mar fremente になっている。クリティカルエディション総譜では al mar possente を採用している。

N. 6
Recitativo e Duetto [Elisabetta-Nolforc]

Elisabetta
Nolforc
Moderato
4/4
D major
(SCENA Ⅹ)(第10場)

(Elisabetta, Norfolc)(エリザベッタ、ノルフォルク)

NORFOLCノルフォルク
Colmo di duol, regina,苦悩に満ちて、女王よ、
d'un così lieto dì son io costrettoこのような喜ばしい日に 私は
la gioia a funestarti.君の喜びを 悲しませ 【↑】ざるを得ない。

ELISABETTAエリザベッタ
Come?...どういうことか?…

NORFOLCノルフォルク
Oh dio!ああ 神よ!
Favellar non poss'io?... No: forza tanta私は 話すことができないのだろうか?… いいや: それほど大きな力は
in me non è.私には ない。

ELISABETTAエリザベッタ
Spiegati.説明しなさい。

NORFOLCノルフォルク
Orrendo arcano,恐ろしい秘密を、
misera, udrai... Deh! lascia...哀れな女よ、君は聞くだろう… ああ! させなさい…
sì, lasciami tacer.そうだ、私を黙るがままにさせなさい。

ELISABETTAエリザベッタ
Parla, l'impongo.話しなさい、

NORFOLCノルフォルク
T'ubbidirò. Leicester...私は 君に従おう。レイチェステルが…

ELISABETTAエリザベッタ
Che! Leicester...何だって! レイチェステルが…

NORFOLCノルフォルク
Avvinto in nodo coniugal...夫婦の絆に縛り付けられ…

ELISABETTAエリザベッタ
Che parli!君は 何を言うのだ!

NORFOLCノルフォルク
Il ver.真実を。

ELISABETTAエリザベッタ
Possibil mai!...決して ありえない!…
Ah! t'ingannasti.ああ! 君は 間違っていたのだ!

NORFOLCノルフォルク
Ah no, non m'ingannai.ああ いいえ、私は 間違っていなかった。
D'un degli ostaggi sotto finte spoglie人質たちの一人に 偽の衣服の下で【≒ 変装して】
la sua sposa si asconde;彼の妻は 隠れている;
l'accompagna il germano... Ambo son figli...兄が 彼女に同行している… 二人とも 子たちだ…

ELISABETTAエリザベッタ
Prosegui... Ohimè!..続けなさい… ああ!…

NORFOLCノルフォルク
Mi manca al dir la voce.私には 言うための言葉が欠けている。

ELISABETTAエリザベッタ
Figli di chi?誰の子たちなのか?

NORFOLCノルフォルク
Ti nuoce il mio parlar.私の話は 君を傷つける。

ELISABETTAエリザベッタ
Tutto saper io voglio.私は すべてを知りたい。

NORFOLCノルフォルク
Figli a colei, che sì t'offese il soglio.あの女の 子たちだ、その者は あのように 君の玉座を侮辱した。

(Elisabetta a queste ultime parole cade sopra una sedia, ed ivi rimane immobile, e come fuori di sé. Norfolc, con volto ipocrito, si avvicina)(エリザベッタは この最後の話に 椅子の上に倒れ込む、そしてそこに動かずにいる、そして自分の外にいる【≒ 呆然としている】ようだ。ノルフォルクは、偽善的な顔で、近づく)
Duetto

Moderato
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
Perchè mai, destin crudele,いったい なぜ、残酷な運命よ、
costringesti il labbro mio!...私の唇【≒ 口】【話すように】強いたのだ!…
Ma fedele a te son ioだが 私は お前【= 残酷な運命】に忠実である
mentre accuso un traditor.私が 裏切者【= レイチェステル】を非難する時には。

ELISABETTAエリザベッタ
Con qual fulmine improvviso何という 突然の雷で
mi percosse irato il cielo!怒る天は 私を打ったことか!
Qual s'addensa orrendo velo,何と 恐ろしいヴェールが濃くなっていることか、
che mi colma di terror!それは 私を 恐怖で満たす!

NORFOLCノルフォルク
Deh! rammenta...ああ! 思い出しなさい…

ELISABETTAエリザベッタ
Taci... oh dio!黙りなさい… ああ 神よ!

NORFOLCノルフォルク
Pensa al regno!王国のことを考えなさい!

ELISABETTAエリザベッタ
Oh dio... mi lascia.ああ 神よ… 私を放っておきなさい。

NORFOLCノルフォルク
Sventurata!不幸な女だ!

ELISABETTAエリザベッタ
Fiera ambascia!激しい息苦しさ!

NORFOLCノルフォルク
Per te geme questo cor.君のために この心は呻いている。

ELISABETTAエリザベッタ
Lacerar mi sento il cor.私は 心が引き裂かれるのを感じている。
Largo
2/4
E-flat major
ELISABETTAエリザベッタ
(Misera! a quale stato(哀れな女だ! 何という状態に
mi riserbò la sorte!)運命は 私を取っておいた!)

NORFOLCノルフォルク
(Reggimi, in tale stato,(私を支えなさい、こうした状態にあって、
deh! non tradirmi, o sorte!)ああ! 私を裏切るな、ああ 運命よ!)

ELISABETTAエリザベッタ
(Stato peggior di morte:(死よりもひどい状態だ:
più fiero non si dà.)さらに残酷な【状態】は起きない。)

NORFOLCノルフォルク
(Vada il rivale a morte:【運命よ】 私の敵を 死に進めなさい:
e pago il mio cor sarà.)そうすれば 私の心は満足するだろう。)

Allegro
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
Regina, omai decidi.女王よ、今こそ決心しなさい。

ELISABETTAエリザベッタ
Sì, perirà l'indegno.そうだ、恥ずべき男は死ぬだろう。

NORFOLCノルフォルク
(Sorte, a' miei voti arridi.)(運命よ、私の願いに微笑みなさい。)

ELISABETTAエリザベッタ
Sgombri da me pietà.私から 哀れみを一掃するように。

(Allegro)
4/4
B-flat major
ELISABETTA E NORFOLCエリザベッタとノルフォルク
Quell'alma perfidaあの 裏切りの魂が
non vada altera;尊大に行かない【≒ ならない】ように;
del fallo orribile恐ろしい罪の
la pena avrà.処罰を 彼は持つ【≒ 受ける】だろう。
Fra cento spasimi百の苦痛の中で
l'iniquio pera,邪悪な男は死ぬ、
a eterno esempio永遠の例として
d'infedeltà.不忠の。

(partono da opposti lati)(【それぞれ】反対の側から退場する)
Recitativo [Dopo il Duetto Elisabetta-Nolforc]

Elisabetta
Guglielmo

4/4
(C major)
(SCENA ⅩⅠ)(第11場)
(Guglielmo)(グリエルモ)

GUGLIELMOグリエルモ
Che fia? Smarrita in volto何だろうか? 顔に狼狽した
la regina incontrai... Ma non è quegli女王に 私は出くわした… だが あの男は
il superbo Norfole? Veloce il passo高慢なノルフォーレでは 【↑】なかったか? 早い歩みを
ei di qua move... Forse彼は ここから 動かしている【≒ 彼は 大急ぎで ここから出て行った】
qualche affanno crudel recò costuiこの男は 何らかの残酷な苦悩をもたらした
d'Elisabetta al cor. Chi sa per provaエリザベッタの心に。誰が知っているという 経験に基づいて
quanta doppiezza covaどれだけの二枚舌を心に秘めているか
il perfido nel seno... Ma, dolente,裏切者が 心に… だが、悲痛に、
la regina ritorna a questa volta...今度は 女王が戻って来る…
Oh ciel! che mai sarà?ああ 天よ! いったい どうなるのだろうか?


(SCENA ⅩⅡ)(第12場)
(Elisabetta, Guglielmo)(エリザベッタ、グリエルモ)

ELISABETTAエリザベッタ
Guglielmo, ascolta.グリエルモ、聞きなさい。
Pronte ad ogni mio cenno, sull'ingressoあらゆる私の指示に準備ができて、入口の傍に
sien le reali guardie. Ma pria近衛兵たちがいるように【≒ 私の指示にすぐ従えうことのできる近衛兵たちを 入口の前に配置しなさい】。だが その前に
qui Leicester invia... Trattienti... (Oh affanno!ここに レイチェステルを遣わしなさい… 留まりなさい【≒ 待ちなさい】… (ああ 苦悩が!
Dov'io mi sia non so.) Di Scozia i paggiどこに私がいるであろうか 私は分からない。) スコットランドの小姓たちを
tutti raduna in questo loco.全員 この場所に集めなさい。

GUGLIELMOグリエルモ
Il cenno vado a compir.指示を遂行しに 私は行く。
(parte)(退場する)
il superbo Norfole?
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

[N. 7]
Scena e Finale Primo

Elisabetta
Matilde
Enrico
Leicester

Allegro
4/4
E-flat major
(SCENA ⅩⅢ)(第13場)
(Elisabetta, seduta)(エリザベッタ、座っている)

ELISABETTAエリザベッタ
Che penso, desolata regina?...私 は何を考えているのか、悲嘆に暮れる女王よ?…
A che mi serve aver doma la Scozia私に 何の役に立つというのか スコットランドを服従させることが
e salvo il trono se un'infelice io sono?...そして 玉座を安全に【させることが】 もし 私が 不幸な者であるのならば?…
Sconoscente! ei pur vide恩知らずな者め! 彼は おそらく 見た
l'amor d'Elisabetta,エリザベッタの愛を、
e in laccio coniugal stringer pur volleだが それにもかかわらず 彼は 夫婦の絆に 結ぶことを望んだ
della maggior nemica sua la figlia!彼女【= エリザベッタ】の最大の敵の娘を!
Oh delitto!...ああ 罪だ!…


[Allegro]
4/4
D major
ELISABETTAエリザベッタ
Ma tremiだが 震えるがいい
l'iniqua coppia. Son regina e amante.邪悪な二人組は。私は女王だ そして恋人だ。
Doppia vendetta... Ecco l'indegno... Oh istante!二重の復讐を… ここに恥ずべき男が… ああ 一瞬よ【≒ 時が来た】


(SCENA ⅩⅣ)(第14場)
(Leicester da un lato; Matilde e Enrico co' giovani scozzesi dall'altro. Elisabetta)(レイチェステル 一つの側から; マティルデとエンリーコ 若いスコットランド人たちを伴って 別の【側】から。エリザベッタ)
(Leicester, che si sarà presentato con premura, nel veder la moglie, si ferma ad un tratto; Matilde e Enrico vedendo Leicester fanno lo stesso; Elisabetta riconosce da' moti e dalla confusione del volto la sua rivale ed il fratello)(レイチェステルは、その者は慎重に現れる、妻を見ると、突然 立ち止まる; マティルデとエンリーコは レイチェステルを見て 同じことをする【= 突然 立ち止まる】; エリザベッタは 体の動きと顔の困惑から 彼女の恋敵と【その】兄を認識する)

LEICESTERレイチェステル
(Matilde!)(マティルデ!)

MATILDEマティルデ
(Oh cielo!)(ああ 天よ!)

ENRICOエンリーコ
(Oh incontro!)(ああ 出会い【≒ 出くわしてしまった】!)

ELISABETTAエリザベッタ
(È dessa... Oh rabbia!)(彼女が あの女だ… ああ 激怒が!)
T'avanza, o duce... A che t'arresti?進み出なさい、ああ 司令官よ… 何のために 君は立ち止まっているのか?
Io voglio men sommesso vederti.私は 君が より少なく従順であるのを見たい【≒ そんなに へりくだらなくてもよい】
T'è noto che il primo君について 周知されている
de' miei fidi tu sei, che tal ti estimo.君が私の忠臣たちの中で 【↑】筆頭であることは、私が 君を そのように評価していることは。

LEICESTERレイチェステル
Regina... (che dirò?) Regina... (oh dio...)女王よ… (私は 何を言おうか?) 女王よ… (ああ 神よ…)
l'umil tuo servo... a tanta君の慎ましい使用人が… それほど多くの
magnanima bontà... (Mi perdo...)寛大な善意 【↑】に… (私は頭が混乱している…)

MATILDEマティルデ
(facendo vedere la proprio agitazione)(彼女自身の動揺を見させながら)
(Oh pena!)(ああ 苦悩が!)

ENRICOエンリーコ
(all'orecchio di Matilde)(マティルデの耳に)
Germana, ah! ti raffrena.妹よ、ああ! 自制しなさい。

ELISABETTAエリザベッタ
Non prosegui?君は 続けないのか?
(dopo aver guardato a un tempo Leicester, Matilde e Enrico)(レイチェステルを、マティルデを そしてエンリーコを同時に【≒ 立て続けに】凝視した後に)
Eh! lascia omai quell'importun ritegno...えい! 今は その場違いな自制を止めなさい…
(Geme, trema l'indegno.(呻いている、震えている 恥ずべき男は。
Oh piacer di vendetta!...) Ma coraggioああ 復讐の喜びだ!…) だが 勇気を
or ti darà la stessa tua regina.今 君の女王その人が 与えるだろう。
Vieni, giovane eroe.来なさい、若い英雄よ。

MATILDEマティルデ
(Ah!..)(ああ!…)

(Elisabetta al sospiro di Matilde, benchè sommesso, si volta a guardarla; poi dice a Leicester:)(エリザベッタは マティルデのため息に、【それは】抑えた【音だった】にもかかわず、彼女を見るために身を向ける: それからレイチェステルに言う:)

ELISABETTAエリザベッタ
T'avvicina.近づきなさい。


Finale

Allegro
3/4
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Se mi serbasti il soglio君が 私の玉座を守った以上
al campo dell'onor,名誉の戦場で、
darti mercede io voglio私は 君に 褒美を与えたい
degna del tuo valor.君の功績に相応しい。

(Al cenno d'Elisabetta si avanza una guardia; la regina le parla in segreto)(エリザベッタの指示に 衛兵が近づく; 女王は 彼【= 衛兵 女性名詞】に密かに話す)

LEICESTERレイチェステル
Donna real, deh! frena国王の女よ、ああ! 抑えなさい
sì generosi accenti...それほどに寛大な口調【≒ 言葉】【≒ それほどの過分な言葉は控えなさい】

Leicester, Matilde ed Enricoレイチェステル、マティルデとエンリーコ
(Oh dio! resisto appena(ああ 神よ! 私は ほとんど 耐えていない
a' palpiti frequenti頻繁な心臓の拍動に
del mio dubbioso cor.)私の疑いを抱いている心の。)

ELISABETTAエリザベッタ
(Benchè fra i suoi tormenti,彼の苦悩の中にあるけれども【≒ たとえ 彼が苦悩の中にあろうとも】
avrà vendetta amor.)愛は復讐を持つだろう【≒ 愛は復讐するだろう】。)

Leicester, Matilde ed Enricoレイチェステル、マティルデとエンリーコ
(La mia perversa stella(私の邪悪な星は
sempre divien peggior.)ずっと より悪くなっている。)

(Ritorna la guardia, recando un bacile coperto un drappo)(衛兵が【エリザベッタの元に】戻る、織物に包まれた盆を運びながら)
(Oh dio! resisto appena / a' palpiti frequenti / del mio dubbioso cor.)
エンリーコは Del mio dubbioso cor. のみ。

Maestoso
4/4
D major
(Elisabetta, che avrà furtivamente osservato i moti di Leicester, di Matilde e d'Enrico, ed i loro sguardi d'intelligenza, freme in segreto, si alza, poi, forzando se stessa, dice:)(エリザベッタは、その者は 密かに 観察していた、 レイチェステルの動きを、マティルデの【動きを】 そしてエンリーコの【動きを】、そして彼らの了解の視線を、密かに震え、立ち上がり、それから、彼女自身に無理強いしながら、言う:)

ELISABETTAエリザベッタ
Eccoti, eroe magnanimo,さあ 君に、高潔な英雄よ、
d'un grato core il pegno:感謝する心の証を:
te riconosca il regno王国が 君を 公認するように
per mio consorte e re.私の配偶者 そして 王として。
(Scopre il bacile indicato, che contiene lo scettro e la corona. Leiscester ed i suoi congiunti rimangono a tal vista oltremodo confusi ed abbattuti. Elisabetta gode del loro turbamento)(指し示された【≒ 差し出された】盆の覆いを取る、それ【= 盆】は 王笏と王冠を収容している。レイチェステルと彼の親族たち【= マティルデとエンリーコ】は そのような光景に 極度に混乱しそして打ちのめされたままでいる。エリザベッタは 彼らの動揺を心から喜ぶ)
ed i loro sguardi d'intelligenza,
この場合の intelligenza は 了解 の意味。i loro sguardi d'intelligenza で、3人が互いに目配せしている様子を示している。

[Largo]
2/4
E-flat major
ELISABETTAエリザベッタ
(Al colpo inaspettato【↓】なんという 予期しない打撃に
che lor serbava il fato!運命は 彼らを 取っておいたことか!
il gelo della morte死の凍りつくような寒さが
impallidir li fe'.)彼らを 青ざめさせた。)

Matilde, Leicester ed Enricoマティルデ、レイチェステルとエンリーコ
(Qual colpo inaspettato(なんという 予期しない打撃を
a noi serbava il fato...)運命は 私たちに 取っておいたことか…
Il gelo della morte死の凍りつくような寒さが
tutto s'aduna in me.)すっかり 私の中に集まっている。)
(Al colpo inaspettato / che lor serbava il fato!
クリティカルエディション総譜ではこのように前2行が感嘆符で止められており、したがって前2行は che -!を用いた感嘆文になっている。しかし初演時の印刷台本では感嘆符が無く、前2行は次の2行に続いている。この場合は2行目の che は関係代名詞で colpo に掛かる。その場合の訳は
運命が彼らに残しておいた予期しない打撃で 死の凍りつくような寒さが 彼らを 青ざめさせた。
となる。ここでは楽譜の歌詞の通りに扱っている。

Primo Tempo
4/4
D major
ELISABETTAエリザベッタ
(dopo qualche pausa)(いくらかの休止の後)
Duce, in tal guisa accogli司令官よ、そのような流儀で 受け入れるのか
d'una regina il dono?女王の贈り物を?

LEICESTERレイチェステル
(tremante)(震えて)
(Oh ciel!) Deh... scusa... al trono(ああ 天よ!) ああ… 許しなさい… 玉座に
vassallo umil non osa...慎ましい家臣は あえてしない【≒ 一介の家臣が玉座を望んだりはしない】

ELISABETTAエリザベッタ
(Empio!)(邪悪な男め!)

ENRICOエンリーコ
(Ti frena.)(自制しなさい。)

MATILDEマティルデ
(Che affanno!)(何という苦悩だ!)

ELISABETTAエリザベッタ
(Anima rea!)(邪な魂め!)

Elisabetta, Matilde, Enrico e Leicesterエリザベッタ、マティルデ、エンリーコとレイチェステル
(Spiegar il duol ch'io sento(苦悩を説明することは それ【= 苦悩】を 私は感じている
possibile non è.)可能ではない。)

(Dopo breve scena muta, in cui andrà crescendo l'agitazione de' due congiunti e d'Enrico, Elisabetta, non potendo più raffrenarsi, proromperà come segue)(短い無言の場面の後、そこにおいて二人の親族【= マティルデとレイチェステルの】の そしてエンリーコの動揺がしだいに強くなっていく、エリザベッタは、もはや自分を抑えることができなくなったので、次のように吹き出す【≒ 感情を吐き出す】)
Più mosso
4/4
D major
ELISABETTAエリザベッタ
Ah! che più tollerar non poss'ioああ! 私は もはや 我慢することができない
un vassallo fellon, menzognero.邪悪な家臣に、嘘つきの【家臣に】
Or la benda dileguisi al vero:今こそ 真実のために 目隠しが消え去るように:
ecco l'empia che infido ti fa.ここに邪悪な女が その者は 君を 不実にさせている。
(nel dire questo ultime parole, corre a Matilde, la prende per un braccio, strascinandola nel mezzo della scena)(この最後の言葉を言いながら、マティルデ【の元】に駆けつけ、彼女を腕によって掴み【≒ 彼女の腕を掴んで】、舞台の中央に彼女を引きずって行きながら)

LEICESTERレイチェステル
(Che mai vedo!)(私は いったい 何を見ているのだ!)

MATILDEマティルデ
(Deliro!)(私は 正気を失っている!)

ENRICOエンリーコ
(Son desto!)(私は 目を覚ましている!)

Matilde, Enrico e Leicesterマティルデ、エンリーコとレイチェステル
(Disvelato è l'arcano funesto...)致命的な秘密が 明らかにされた…
(cadono in ginocchioni a' piedi di Elisabetta)(エリザベッタの足元に跪き落ちる)
Ah! regina, perdono, pietà.ああ! 女王よ、許しを、哀れみを。

ELISABETTAエリザベッタ
Guardie, olà!衛兵たちよ、そら!
Vivace
4/4
D major
(SCENA ⅩⅤ)(第15場)
(Guglielmo, Guardie, Cavalieri e Dame. I precedenti)(グリエルモ、衛兵たち、騎士たち そして婦人たち。前の場の人たち)

ELISABETTAエリザベッタ
Quegl'indegni sien serbatiあの邪悪な者たちが 取っておかれるように
al mio giusto furore.私の公正な怒りに。
(Sol di rabbia si pasce il mio core:(私の心は ただ 怒りだけを糧にしている:
sol vendetta conforto gli dà.)ただ 復讐だけが それ【= 心】に慰めを与える【ことができる】。)

Matilde, Enrico e Leicesterマティルデ、エンリーコとレイチェステル
Scherno siam d'un perverso destino...私たちは 悪い運命の 物笑いの種だ…
Ah, regina, perdono, pietà.ああ、女王よ、許しを、哀れみを。

CORO合唱
Come?... il duce! l'eroe vincitore!...何だって?… 司令官が! 勝利を収めた英雄が!…
Oh stupor!... Giusto ciel! che mai sarà?ああ 驚きだ!… 正義の天よ! いったい どうなるのだろうか?

GUGLIELMOグリエルモ
Come?... il duce! l'eroe, il duce!何だって?… 司令官が! 英雄が、司令官が!
Giusto ciel! che sarà?正義の天よ! どうなるのだろうか?

ELISABETTAエリザベッタ
Traditori! sien divelti l'un l'altro dal seno.裏切者たちめ! 彼らが引き抜かれるように【≒ 彼らを引き離すように】 一人を 別の者を 胸から【≒ 二人とも 抱擁から】

MATILDE, ENRICO E LEICESTERマティルデ、エンリーコとレイチェステル
Ah, regina, perdono, pietà.ああ、女王よ、許しを、哀れみを。

GUGLIELMOグリエルモ
Giusto ciel! che sarà?正義の天よ! どうなるのだろうか?

[Matilde, Enrico e Leicester] si abbracciano[マティルデ、エンリーコとレイチェステルは]抱き合う
(Vivace)
4/4
D major
MATILDEマティルデ
(vengono a forza separati)(彼らは 力づくで 分けられて行く【≒ 引き離される】)
Sposo...夫よ…

LEICESTERレイチェステル
Sposa...妻よ…

GUGLIELMO E COROグリエルモと合唱
Sposi!夫婦だと!

ENRICOエンリーコ
Germana...妹よ…


MATHILDE, ENRICO E LEICESTERマティルデ、エンリーコとレイチェステル
(Disvelato è l'arcano funesto...)(致命的な秘密が 明らかにされた…)
Scherno siam d'un perverso destino.私たちは 悪い運命の 物笑いの種だ…
Ah, regina, perdono, pietà.ああ、女王よ、許しを、哀れみを。

GUGLIELMO E COROグリエルモと合唱
Fatal giorno! impensata ruina!致命的な【≒ 不幸な】日だ! 予期しない破滅だ!
Surse il sole sereno, ridente,太陽は昇った 晴朗に、心地よく、、
or declina turbato, languente,今は 沈んでいる 混乱して、やつれて、
e di lutto coprendo si va.そして 喪服に身を包んで行く。

ELISABETTAエリザベッタ
(Sol si pasce il mio cor di veleno:(私の心は ただ毒だけを糧にしている:
sol vendetta conforto gli dà.)ただ復讐だけが それ【= 心 男性名詞】に 慰めを与えている。
sol vendetta conforto mi dà.)ただ復讐だけが 私に 慰めを与えている。
Surse il sole sereno, ridente,
surse < surgere (= sorgere)の3人称単数遠過去形

Più mosso
4/4
D major
ELISABETTAエリザベッタ
(Sol vendetta conforto mi dà.)ただ復讐だけが 私に 慰めを与えている。

MATILDE, ENRICO E LEICESTERマティルデ、エンリーコとレイチェステル
Ah, regina, perdono, pietà.ああ、女王よ、許しを、哀れみを。

GUGLIELMOグリエルモ
Fatal giorno!致命的な【≒ 不幸な】日だ!
il giorno di lutto coprendo si va.そして 喪服に身を包んで行く。

CORO合唱
di lutto coprendo si va.喪服に身を包んで行く。

(Le Guardie conducono a forza i congiunti da parti opposte, ed ognuno confusamente ritirasi)(衛兵たちは 親族たち【≒ マティルデ、エンリーコとレイチェステル】を 力づくで 【それぞれ】反対の側に連れて行く、そして銘々は 混乱して退場する)
ATTO SECONDO
[Recitativo]

Norfolc
Guglielmo
Allegro
4/4
E-flat major
(SCENA Ⅰ)(第1場)

(Appartamenti)(居室)
(Norfolc)(ノルフォルク)

NORFOLCノルフォルク
Perché tremi, o mio cor? Forse presagoなぜ震えているのか、ああ 私の心よ? もしかして 予見して
sei di qualche sventura; o di rimorsiいるのか お前【= 私の心】は 何か不幸を; それとも 後悔を
saresti mai capace?お前【= 私の心】は いったい できるかもしれないのか【≒ 後悔することもあるかもしれないというのか】
A te finor la pace今までは お前【= 私の心】から 平和を
invidia tolse; or che soccombe a un tratto嫉妬が奪っていた; 突然 負けている今
l'idolo del Tamigi;テムズ川の偶像が【≒ ロンドンで人気を誇った者【= レイチェステル】が 突然 失脚した今だというのに】
or che di corte puoiお前が 【↓】切望することができるかもしれない今 宮廷の
ambire a' primi onori, ed or che aperto第一の名誉を【≒ お前が 宮廷の最高の栄誉を求められようかという今だというのに】、そして 今 開 ひら けて
ti è l'adito a quel soglio,いる今 お前に あの玉座への通路【≒ 道】が、
che forse un dì calcar potresti, e in cuiそれ【= 通路】を もしかしたら ある日 お前は踏むことができるかもしれない、そして それ【= 通路】
da ben lunga stagion nutri speranza,十分に長い季節から【≒ とても長い間】 お前は 希望を育んでいる【≒ お前が 長い間 期待を寄せて、そして もしかしたら いつか お前が歩むことになるかもしれない あの玉座へと至る道が お前に開かれている今だというのに】
mancherari di coraggio e di costanza?お前【= 私の心】は 欠けているかもしれないというのか 勇気を そして 意思の強固を【≒ まさか 勇気と決意を失っているというのか】


(SCENA Ⅱ)(第2場)
(Guglielmo, Norfolc)(グリエルモ、ノルフォルク)


GUGLIELMOグリエルモ
La regina, signor, la tua richiesta女王は、貴君よ、君の要望を
ricusa d'appagar.叶えるのを拒否している。

NORFOLCノルフォルク
Come?..どうして?…

GUGLIELMOグリエルモ
Agitata取り乱して【≒ 気持ちが落ちつかず】
da molti pensieri,多くの考えに、
sdegna ascoltarti.彼女は 君【のこと】を聞くのを嫌っている。

NORFOLCノルフォルク
Sdegna!嫌っているだって!

GUGLIELMOグリエルモ
Troppo Norfole intesi,ノルフォーレ【の言うこと】を あまりにも多く 聞いた、と
disse. Da ciò compresi彼女は言った。そのことから 私は理解した
che grati a lei non sono i detti tuoi.君の言葉は 彼女にとって 心地よくない 【≒ 不愉快である】 ことを。

NORFOLCノルフォルク
(Oimè!)(ああ!)

GUGLIELMOグリエルモ
Dunque tu puoiしたがって 君は
lungi da queste soglieこの敷居【≒ 建物】から 遠く
volger per ora il piè.さしあたって 足を向けることが 【↑↑】できる【≒ 当面 この王宮から遠く離れるべきである】

NORFOLCノルフォルク
Ma tal divieto...だが そのような禁止は…

GUGLIELMOグリエルモ
Udisti il suo voler.君は 彼女の意思を聞いた。

NORFOLCノルフォルク
Ma il mio consiglioだが 私の助言は
nello stato affanoso in cui si trova...息せき切った【≒ 困難な】状況における その中にある…

GUGLIELMOグリエルモ
Il consiglio talor nuoce, non giova.助言は 時々 害になる、役に立たない。
parte退場する


(SCENA Ⅲ)(第3場)
(Norfolc)(ノルフォルク)

NORFOLCノルフォルク
Temerario! Si vada. Il tempo e l'arte厚かましい奴め! 行こう。時と 術 すべ が
compir potran l'impresa,計画を遂行することができるだろう、
e sull'altrui ruine,そして【時と 術 すべ が】他の人たちの破滅の上で
fammi afferrar della fortuna il crine.私に 運命の頭髪を 捉えさせる【ことができるだろう】
parte退場する
第1場のノルフォルクの独白は、Or che - 今―だというのに で導かれる節が3つ続いてから、mancherari di coraggio e di costanza? の主節に至る。

invidia tolse; or che soccombe a un tratto
a un tratto 突然,いきなり

e in cui / da ben lunga stagion nutri speranza,
nutrire speranza in qlcu. ―に期待を寄せる。

Troppo Norfole intesi,
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

Si vada.
非人称の si を用いた文章で動詞の活用が接続法現在の場合、人は―するように ≒ ―しよう という意味になる。

[N. 8]
Scena e Terzetto

Elisabetta
Matilde

Guglielmo
Moderato
4/4
C major
(SCENA Ⅳ)(第4場)
(Elisabetta, Guglielmo)(エリザベッタ、グリエルモ)

ELISABETTAエリザベッタ
Dov'è Matilde?マティルデは どこにいるのか?

GUGLIELMOグリエルモ
(accennando uno degl'ingressi)(入り口の一つを示しながら)
Attende colà i cenni tuoi.向こうで 君の指示を待っている。

ELISABETTAエリザベッタ
A me si guidi, e poi venga Leicester.彼女【= マティルデ】が 私に 自らを導くように【≒ マティルデが 私のところに来るように】、それから レイチェステルが来るように。

GUGLIELMOグリエルモ
Di pietà potresti...? Ah! sì, pietade è in te...哀れみについて 君はできるかもしれないのか…? ああ! そうだ、哀れみが 君の中に…

ELISABETTAエリザベッタ
Vanne: intendesti?ここから行きなさい: 君は理解したのか?

(Guglielmo entra dov'è Matilde)(グリエルモは マティルデのいる場所に入る)


(SCENA Ⅴ)(第5場)
(Elisabetta, Matilde, Guardie)(エリザベッタ、マティルデ、衛兵たち)

ELISABETTAエリザベッタ
(al cenno d'Elisabetta la Guardie si ritirano)(エリザベッタの指示に 衛兵たちは退場する)
T'inoltra. In me tu vedi進みなさい。私に 君は見ている
il tuo giudice, o donna.君の裁判官を、ああ 婦人よ。

MATILDEマティルデ
Ho un cor bastante私は 十分な心を持っている
per ascoltare, intrepida, il mio fato.聞くために、大胆不敵な女よ、、私の運命を【≒ 私の心は、自分の運命を聞くことを耐えることができる。】

ELISABETTAエリザベッタ
Vuole ragion di stato,国の理 ことわり【≒ 国家理性】は 望んでいる
che tu, nemica mia, che il tuo germano,君が、【その者は】私の敵【である】、君の兄が、
che un vassallo sleale不誠実な家臣【≒ レイチェステル】
sovra palco ferale死の床【≒ 死刑台】の上で
d'un'odiosa trama憎らしい陰謀の
la pena abbiate. Ma pietà favella処罰を持つ 【↑↑↑,↑↑】ことを。だが 【↓】エリザベッタの哀れみが話している
d'Elisabetta in sen. Scrivi. Rinunzia胸の中で。 書きなさい。放棄しなさい
ad ogni dritto tuo君の どの権利も
di Leicester sul cor. Così da morteレイチェステルの心についての; そのようにして 死から
vi potrete sottrar...君たちは 逃れることができるだろう…

(Matilde freme)(マティルデは震える)

Cedi alla sorte.運命に屈服しなさい。

MATILDEマティルデ
Ah! più d'ogni supplizioああ! どんな責め苦より もっと大きい
è questa tua pietade.この 君の哀れみは。

ELISABETTAエリザベッタ
Non cimentar la tolleranza mia.私の忍耐を試練にさらすでない。
Siedi, scrivi, rinunzia.座りなさい、書きなさい、放棄しなさい。

MATILDEマティルデ
Invan...無駄だ…

ELISABETTAエリザベッタ
Custodi...守衛たちよ…

MATILDEマティルデ
Ah! senti...ああ! 聞きなさい…

ELISABETTAエリザベッタ
Scrivi.書きなさい。

MATILDEマティルデ
Sfoga sol contro me tutti gli sdegni tuoi;ただ私に対してだけ 君の怒りを漏らしなさい【≒ ぶちまけなさい】
ma il consorte, il german...しかし 夫は、兄は…

ELISABETTAエリザベッタ
Scriver non vuoi?君は 書くつもりではないのか?
Vuole ragion di stato,
ragion di stato(日本ではフランス語の raison d'Etat で知られる)は、日本語では一般的に 国家理性 と訳される。簡単にまとめると、国家の利益(国益)がすべてに優先され、他はそれに従属するだけ、という考え方。

Allegro
4/4
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Pensa che sol per poco考えなさい ただ少しの間だけしか
sospendo l'ira mia;私は 私の怒りを延期しない【≒ 私が怒りを抑えられるのは 短い間だ】
quanto più tarda fia,それ【= 怒り】が 遅くなればなるほど、
più fiera scoppierà.ますます荒々しく それは爆発するだろう。

MATILDEマティルデ
Salva il german, lo sposo,兄を救いなさい、夫を【救いなさい】
s'è ver che giusta sei;もし 君が公正であることが 本当ならば;
poi tronca i giorni miei,それから 私の日々【≒ 人生】を打ち切りなさい、
tel' chiedo per pietà.私は 君に それを求める お願いだから。

ELISABETTAエリザベッタ
Resisti ancor?君は まだ 抵抗するのか?

MATILDEマティルデ
Oh Dio!ああ 神よ!

ELISABETTAエリザベッタ
Rinunzia!放棄しなさい!

MATILDEマティルデ
Invan...無駄だ…

ELISABETTAエリザベッタ
Custodi...衛兵たちよ…

MATILDEマティルデ
Ferma...止めなさい…

ELISABETTAエリザベッタ
Scrivi!書きなさい!

MATILDEマティルデ
Oh dio!ああ 神よ!
Ti mova il pianto mio.私の涙が 君を動かすように。

ELISABETTAエリザベッタ
Cedi!屈服しなさい!
Andantino
4/4
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Non bastan quelle lagrimeそれらの涙は 十分ではない
a impietosirmi il cor.私の心に哀れを催させるには。

MATILDEマティルデ
Vorrei stemprarti in lagrime,私は お前【= 次行 私の悲嘆に暮れた心】を 涙に溶かしたい、
mio desolato cor.私の悲嘆に暮れた心よ【≒ 私は 悲嘆に暮れた心を 涙で鎮めたい】
Marziale
4/4
C major
(SCENA Ⅵ)(第6場)
(Leicester, Guardie. Le precedenti)(レイチェステル、衛兵たち。前の場の人たち)
(Elisabetta con gesto imperioso accenna a Matilde di sedere al tavolino e di scrivere. Matilde tremante si accosta, siede, pensa e si alza per retrocedere; Elisabetta è in atto di chiamare le Guardie; Matilde la trattiene, e si pone a scrivere; in questo comparisce sull'ingresso Leicester non veduto dalle due donne)(エリザベッタは 尊大な身振りでマティルデに示す 小テーブルに着いて そして書くように。マティルデは 震えて 【小テーブルに】近付き、座り、考え そして【小テーブルから】退くために立ち上がる; エリザベッタは 衛兵たちを呼ぶそぶりをする; マティルデは 彼女を引き留めて、そして書くために【小テーブルに】着く; その間に 入口の傍に レイチェステルが現れる 二人の女性から見られずに)
(le Guardie si allontanano)(衛兵たちは遠ざかる)


LEICESTERレイチェステル
(Misero me!... la sposa!...(哀れな私!… 妻だ!…
dolente ed affannosa!...悲痛に そして 苦悩して!…
Oimè... Che mai sarà quel foglio?...ああ… いったい あの紙は 何だろう?…
S'accresce il mio penar.)私の苦しみが増す。)

MATILDEマティルデ
(Qual è il dolor che uccide,(何が苦悩なのか それは殺す
s'io reggo al mio dolor?)もし 私が 私の苦悩に耐えるなら【≒ もし私が この苦悩を持ちこたえるのであれば、私を死に至らせる苦悩は 何だというのか】?)

ELISABETTAエリザベッタ
(Elisabetta vede Leiscester)(エリザベッタはレイチェステルを見る)
Debitor le sei di vita;君は 彼女にとって 命の債務者だ【≒ 君の命は 彼女に負っている】
leggi, o duce, e poi l'imita.読みなさい、ああ 司令官よ、そして それから 彼女を真似なさい【≒ 彼女と同じく 署名しなさい】
Dell'error, del tradimento過ちの、裏切りの
pentimento io voglio in te.後悔を 私は君に望む。

LEICESTERレイチェステル
Oh ciel!ああ 天よ!
Largo
2/4
A-flat major
Elisabetta, Matilde e Leicesterエリザベッタ、マティルデとレイチェステル
(L'avverso mio destino(私の 敵対する運命が
sì fiero io non credei.これほど荒々しいとは 私は思わなかった。
Quanto crudel tu sei!何と お前【= 次行の 愛】は残酷なのか!
Quanto mi costi amor!)何と 愛は 私に【代償を】要するのか!
Allegro
4/4
F major
LEICESTERレイチェステル
(a Matilde)(マティルデに)
Sconsigliata, che facesti!無分別な女め、君は 何をしたのだ!
(ad Elisabetta)(エリザベッタに)
Ah! comprendo: in lei sapestiああ! 私は理解している: 彼女【= マティルデ】において 君は
violentar l'amor, la fè.愛を虐げる 【↑】ことができた、忠誠を【≒ 君は マティルデの心と誠意に 無理強いをしようとした】
Ma t'inganni...だが 君は間違っている…

MATILDEマティルデ
Odi...聞きなさい…

LEICESTERレイチェステル
No,いいや、

ELISABETTAエリザベッタ
Rifletti...熟考しなさい【≒ よく考えなさい】

LEICESTERレイチェステル
no.いいや。
A tal prezzo non vogl'ioそのような代価で 私は
conservare il viver mio;私の命を保ち 【↑】たくない【≒ マティルデの犠牲で 自分の命を救いたくない】
serbo un cor che vil non è.私は 心を取っておいている それは卑怯ではない【≒ 私の心は 卑怯ではない】
(lacera il foglio)(書類を引き裂く)
(Allegro)
2/2
F major
ELISABETTAエリザベッタ
Ah! fra poco, in faccia a morteああ! 間もなく、死を目前にして
cesserà cotanto orgoglio,それほどに大きな高慢さは止むだろう。
ed allor quell'alma forteそして その時 あの強い魂は
fia costretta a vacillar.よろめかざるを得ないだろう。

MATILDEマティルデ
Ah! s'affretti pur la morte,ああ! どうか 死が急ぐように、
affrontarla deggio e voglio;私は それ【= 死 女性名詞】を目前にしなければならない そして 【目前に】したい;
non sarà quest'alma forte【そうすれば】この強い魂は
più ridotta a vacillar.もはや よろめくように なら 【↑】ないだろう。

LEICESTERレイチェステル
Quell'ardir che in faccia a morteあの大胆【≒ 勇気】を それは 死を目前にして
ti difese e vita e soglio,【= エリザベッタ】の命と玉座を守った、
serberà quest'alma forte,この強い魂は 【あの大胆を】取っておくだろう、
non avvezza a vicillar.よろめくのに慣れていない【私の揺らぐことない強い魂は 死と向かいながら女王の命と玉座を守った あの勇気を持ち続けるだろう】

(Leicester e Matilde partono, scortati dalle Guardie)(レイチェステルとマティルデは退場する、衛兵たちに護衛されて)



Recitativo dopo il Terzetto

Elisabetta
Guglielmo

4/4
(C major)
(SCENA Ⅶ)(第7場)
(Elisabetta)(エリザベッタ)

ELISABETTAエリザベッタ
Pago sarai cor mio? Brami vendetta?お前【= 私の心】は満足しているのだろうか 私の心よ? お前は 復讐を熱望しているのか?
Vendetta in breve avrai;お前【= 私の心】は 復讐を 間もなく 持つだろう【≒ 程なく 復讐を果たすだろう】
ma forse men dolente allor sarai?だが その時 お前【= 私の心】は まさか より少なく 悲痛だろうか【≒ 私の心の悲しみが 少し晴れるとでもいうのか】
Ah! Leicester, amarti Elisabetta,ああ! レイチェステルよ、君を エリザベッタは
quell'altera reginaあの高慢な女王は
sprezzatrice finor di regie destre,これまで 王の右手たちの軽視する女【≒ 国王たちの求婚を拒んできた女】は、
giammai dovea? Rossore決して 【 ↑↑↑】愛してはいけなかったのか? 赤面【≒ 羞恥心】
ma tardo, io provo d'un malnato amore.遅いけれども、私は感じている 悪い星の元に生まれた愛に【≒ 遅まきながら 私は 生まれによって不幸になった愛を 恥ずかしいと感じている】


(SCENA Ⅷ)
(Guglielmo, Elisabetta)(グリエルモ、エリザベッタ)

GUGLIELMOグリエルモ
Chiede Norfole a te l'ingresso.ノルフオーレが君に 入場を求めている。

ELISABETTAエリザベッタ
Oh indegno!...ああ 恥ずべき男め!…
Va': digli che al suo labbro行きなさい: 彼に言いなさい 私は 彼の唇【≒ 口】
debbo gli affanni miei; digli che in premio私の苦悩を負っている 【↑】ことを【≒ 私の苦悩は 彼の言葉が原因だと】;彼に言いなさい 褒美に
di sua finta amistade彼の 偽りの友情の
verso d'un infelice, ancorché infido,不幸な者に対する、たとえ信用が置けなくとも、
disgombri al nuovo sol da questo lido.彼が 新しい太陽に【≒ 明朝】この岸【≒ 国】から消え去るように 【↑↑↑↑】ことを【≒ 不誠実ではあっても不幸なレイチェステルに対して ノルフォルクが偽りの友情を結んだ報いとして、明朝 彼が国外へ去るように、と彼に伝えなさい】
parte退場する


(SCENA Ⅸ)(第9場)
(Guglielmo)(グリエルモ)

GUGLIELMOグリエルモ
Oh giusto cielo! alfineああ 公正な天よ! ついに
il ver non trova inciampo真実は 邪魔者に出くわしていない
onde giungere al trono; è alfin palese玉座に到達するために【≒ 真実は とうとう 邪魔されることなく 玉座に伝わった】; ついに 明らかに【なる】
quel dubbio cor, d'iniquità ricetto...あの不審な【≒ 信用ならぬ】心が、不正の逃げ場【≒ 巣窟】が。
II regio cenno ad eseguir m'affretto.私は 急いで王の指示を実行する。
parte退場する
Pago sarai cor mio? から io provo d'un malnato amore. までは 楽譜に省略可の指示 VI- -DE が付けられている。

giammai dovea? Rossore

dovea は dovere の1人称単数半過去形および3人称単数半過去形(その点で doveva と異なる)。この場合は Elisabetta giammai dovea amarti? なので、3人称単数。
Chiede Norfole a te l'ingresso.
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

disgombri al nuovo sol da questo lido.
disgombri < disgombrare = sgombrare 片付ける。disgombrare は基本的に他動詞だが、ここでは自動詞 消え去って無くなる として用いられている。

quel dubbio cor, d'iniquità ricetto...
多くの台本で dubbio でなく doppio が用いられている。

[N. 9]
Coro e Scena di Norfolc
Moderato
3/4
D major
(SCENA Ⅹ)(第10場)
(Atrio contiguo alle carceri)(牢獄に隣接した控室)
(Coro di popolo e di Soldati)(人々の合唱 そして兵士たちの【合唱】)

CORO DI POPOLI人々の合唱
Qui soffermiamo il piè...ここで 足を止めよう…
il tetro asil quest'èこれは暗い収容所
dove un barbaro fato condannòそこでは 残酷な運命が非難した
chi la patria salvò da fiera sorte.祖国を 残酷な運命から救った者を。

CORO DI SOLDATI兵士たちの合唱
Miseri noi! chi sa哀れな私たち! 誰が知っているだろうか
se involarsi potrà彼自身を持ち去る【≒ 抜け出す】ことができるであろうかどうか
il nostro duce amato a tanto orror?私たちの愛する司令官が これほど多くの恐怖から?
Forse colpa d'amor lo spinge a morte.おそらく 愛の罪が 彼を 死に押し動かしたのだ。

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Qui soffermiamo il piè...ここで 足を止めよう…
Il tetro asil quest'èこれは暗い収容所
dove un barbaro fato condannòそこでは 残酷な運命が非難した
chi la patria salvò da fiera sorte.祖国を 残酷な運命から救った者を。
(Il Popolo ed i Soldati si avvicinano all'ingresso delle carceri)(人々と兵士たちは 牢獄の入り口に近づく)
A-B-A'の三部形式の合唱。

Allegro
4/4
g minor
(SCENA ⅩⅠ)(第11場)
(Norfolc. I precedenti)(ノルフォルク。前の場の人たち)

NORFOLCノルフォルク
(Che intesi!.. Oh annunzio!.. Questa(私は何を聞いたのだ!… ああ 【何という】告知だ!… これが
è la mercè ch'io merto?.. Anche fra' lacci褒美なのか それに 私は相応しい?… 罠の間でも【≒ 縄で縛られていても】 なお
mi nuocerà costui!... Norfole, che pensi?この男は 私を傷つけるだろう!… ノルフォーレ、君は何を考えている?
L'ingiusto esilio sopportar potrai?君は 不当な追放を我慢できるだろうか?
Come a tanto rossor resisterai?)どうやって 君は それほど多くの赤面【≒ 恥】に耐えるだろうか?
シェーナとカヴァティーナ(緩)/カバレッタ(急)の二部形式のノルフォルクのアリア。
シェーナ。

Norfole, che pensi?
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

Primo Tempo
3/4
g minor
Coro di Soldati兵士たちの合唱
Oh nostro duce amato!ああ 私たちの愛する司令官よ!
2小節。

ここでの Primo Tempo は、冒頭の合唱の Moderato を指す。


4/4
g minor
NORFOLCノルフォルク
(Duce!... Ah! comprendo appien...)(司令官!… ああ! 私は 完全に 理解している…)
Adagio
4/4
g minor
CORO DI POPOLI人々の合唱
Barbaro fato!残酷な運命よ!

NORFOLCノルフォルク
(Qui si compiange il mio nemico...)(ここで 私の敵が 同情されている…)
Primo Tempo
4/4
g minor
NORFOLCノルフォルク
(Tutto congiura a' danni miei...(すべてが 私の損害に 力を合わせている【≒ 何もかもが 私に打撃を加えようとしている】
Che risolvo?... 私は 何を解決するのだろうか【≒ どうしたらよいのだろうか】?…
Moderato
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
Oh vendetta!ああ 復讐よ!
Col manto di pietà ti copri. All'arte!)お前が 哀れみの覆いで身を包むように! 狡猾に!)
Amici, io vengo a parte友たちよ、私は 参加しに来ている
d'un così giusto affanno.このように正当な苦悩に。
E sarà vero che il prodeそれで 本当なのだろうか 勇敢な
salvator della patria祖国の救済者が
perir debba così? Lo soffrirem?このように死ななくてはならないであろう 【↑】ことは? そのことに 私たちは苦しむのか?

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Non mai.いいや 決して。

NORFOLCノルフォルク
Ebben, m'udite. Assaiそれでは 私【の言うこと】を聞きなさい。とても
può giovarvi Norfole. Già cade il sole:ノルフォーレは 君たちの役に立つことができる。 既に陽が落ちている:
Al prigionier men vo. Se non poss'io私は 囚人のところに行って来る。もし 私ができなければ
sottrarlo a' ceppi suoi fra brev'istanti,短い瞬間の間に【≒ 短時間で】彼を 拘束から解放することを、
del carcere l'accesso牢獄の接近【≒ 牢獄に向かう道】
vi schiuderete, amici,君たちが開けるだろう、友たちよ、
colla forza e il valor.力と勇気で。
può giovarvi Norfole.
Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

Maestoso
4/4
B-flat major
CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Signor, che dici!貴君よ、君は何を言うのだ!
Mancar di fede al trono玉座への忠誠を欠くことに
saria cotanto ardir.なるかもしれない それほど多くの向こう見ずは。

NORFOLCノルフォルク
Ah! troppo ignoraああ! あまりにも知らない
del duce sventurato不幸な司令官の
Elisabetta il cor; lo crede reo心を エリザベッタは;彼女は それ【≒ 心】を 有罪だと信じている
di lesa maestà, mentre quel core大逆の、ところが あの心は
colpevole non è: lo scusa amore.罪を犯してはいない: 愛が 彼を正当化している【≒ 愛が 彼に罪がないことを証明している】
Andantino
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
Deh! troncate i ceppi suoi;ああ! 彼の拘束を切断しなさい;
deh! serbate a Elisa, al regnoああ! 取っておきなさい エリーザ【= エリザベッタ】に、王国に
il più grande fra gli eroi,英雄たちの中で 最も偉大な者を
il più degno di pietà.哀れみに最も値する男を。

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Or ci guida. Ogni alma fida今こそ 私たちを導きなさい。 どの忠実な魂も
pronta aita a lui darà.すぐに 彼に救助を与えるだろう。

NORFOLCノルフォルク
All'amor che in voi s'annida愛に それは 君たちの中に宿っている
fausto arrida il ciel clemente.慈悲深い天が 好意的に 微笑んでいる。

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Or ci guida.今こそ 私たちを導きなさい。

NORFOLCノルフォルク
Sì, non ha core chi non senteそうだ、心を持っていない 感じない者は
la possanza d'amistà.友情の活力を。

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Or ci guida. Ogni alma fida今こそ 私たちを導きなさい。 どの忠実な魂も
pronta aita a lui darà.すぐに 彼に救助を与えるだろう。
カヴァティーナ(緩)
途中15小節の Vi- -de(省略可記号)がある。

Allegro
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
(Vendicar saprò l'offesa;(私は 損害に報復できる;
di furor questa alma accesa怒りに燃えた この魂は
quell'ingrata punirà.)あの不愉快な女を罰するだろう。)

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Or ci guida. Ogni alma fida今こそ 私たちを導きなさい。 どの忠実な魂も
pronta aita a lui darà.すぐに 彼に救助を与えるだろう。

NORFOLCノルフォルク
Deh! troncate i ceppi suoi.ああ! 彼の拘束を切断しなさい;
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。

Un poco meno mosso
4/4
B-flat major
Non ha core chi non sente心を持っていない 感じない者は
la possanza d'amistà.友情の活力を。
(Vendicar saprò l'offesa;(私は 損害に報復できる;
di furor questa alma accesa怒りに燃えた この魂は
quell'ingrata punirà.)あの不愉快な女を罰するだろう。)

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Non ha core chi non sente心を持っていない 感じない者は
la possanza d'amistà.友情の活力を。
Or ci guida,今こそ 私たちを導きなさい。
pronta aita si darà.すぐに 彼に救助を与えるだろう。
カバレッタ(急)。
Più mosso
4/4
B-flat major
NORFOLCノルフォルク
Si vada, andiamo, correte.行こう、行こう、駆け付けろ。
(Quest'alma quell'ingrata punirà.)(この魂は あの不愉快な女を罰するだろう。)

CORO DI POPOLI E SOLDATI人々の合唱 そして 兵士たちの合唱
Ci guida, si vada, andiamo.私たちを導きなさい、行くように、行こう。

(il Popolo ed i Soldati partono seguendo Norfolc)(人々と兵士たちは ノルフォルクに従って退場する)
カバレッタのストレッタ

Si vada, andiamo, correte.
非人称の si を用いた文章で動詞の活用が接続法現在の場合、人は―するように ≒ 私は/皆―しよう という意味になる。

[N. 10]
Scena ed Aria Leicester

Leicester
Andante maestoso
4/4
(C major)
(SCENA ⅩⅡ)(第12場)
(Leicester)(レイチェステル)
(Interno d'un ampio carcere a volte, rischiarato in parte da un lampione; scala a sinistra dello spettatore, che conduce ad una chiusa porta nell'alto; altra piccola porta murata in fondo, che a suo tempo vien diroccata; ingresso comune da un lato)(半円筒天井の広い牢獄の内側、一部は照明装置【≒ ランプ】によって照らされている;観客の左手【= 下手 しもて】に階段、それは高い場所の閉まった扉に通じている; 奥に 壁の中に塗り込まれた小さな扉、それは 然るべき時に 破壊される; 片側に普通の扉)

LEICESTERレイチェステル
Della cieca fortuna un triste esempio,盲目の運命の 悲しい一例を、
lasso! in me trovo. In questo giorno il sole,哀れな! 私は 私に見出している。この日 太陽は
testimonio di gloria,【それは】栄光の証人である、
sorgeva a rischiarar la mia vittoria.私の勝利を照らしに昇った
Tramonta appena il sole, e in lutto太陽が沈むとすぐに、そして 服喪に
per me si cangia il tutto.すべては 私には 変わっている。
(siede)(座る)
Ma d'uopo han di conforto,だが 慰めの必要を持っている【≒ 休息を必要としている】
dopo lungo vegliar, le stanche membra,長く眠らずにいる後で、疲れ切った四肢【≒ 身体】は、
e, mio malgrado, al sonnoそして、私の意に反して、眠気に
sento che gli occhi miei regger non ponno.私は感じている 私の両目は 耐えることができない と。
si addormenta眠る
カヴァティーナ(緩)/カバレッタ’(急)の二部形式のレイチェステルのアリア。ただしアリアの前に置かれたシェーナに当たる部分が拡大されており、その中に眠りの場面が含まれている。

[Andantino]
6/8
G major
(parla in sogno)(夢の中で話す)
Sposa amata... respira...愛する妻よ… 息をしなさい【≒ 安心しなさい】
Cessan gli affanni nostri... È il ciel placato...私たちの苦悩は 終わる… 天は鎮められた【≒ 天の怒りは収まった】
Tergi quel pianto...その涙をふきなさい…
Recitativo


4/4
G major
Matilde, ascolta... non fuggir... t'arresta...マティルデ、聞きなさい… 逃げるでない… 待ちなさい…
Allegro
4/4
G major
torna in sé (e si alza ad un tratto)我に返る(そして 突然 立ち上がる)
Ohimè!...dove son io?... Larva fu questa.ああ!… 私は どこにいるのだろうか?… これは まがい物【≒ 幻 ≒ 夢】だった。
Andantino
4/4
E major
Fallace fu il contento,満足【≒ 喜び】は偽りだった、
certa è la mia sciagura.私の不幸は 確実だ。
Immerso, oh dio! mi sento浸っている、ああ 神よ! 私は感じている 私の
nel primo affanno il cor.心が 以前の苦悩の中に【≒ 私は 私の心が 前と変わらぬ苦悩に沈んでいるのを感じている】
カンタービレ(緩)。
Allegro
4/4
E major
Saziati, o sorte ingrata:満足しろ、ああ 恩知らずの運命よ:
Apriti o terra, e invola裂けろ ああ大地よ、そして 掠め取れ
quest'alma desolataこの痛ましい魂を
a tanto suo dolor.彼の たくさんの苦悩に【≒ 甚だしい苦悩に悲嘆に暮れたこの魂を 奪い去ってしまえ】
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。
(Allegro)
4/4
E major
Immerso, oh dio! mi sento浸っている、ああ 神よ! 私は感じている 私の
nel primo affanno il cor.心が 以前の苦悩の中に【≒ 私は 私の心が 前と変わらぬ苦悩に沈んでいるのを感じている】
Apriti o terra, e invola裂けろ ああ大地よ、そして 掠め取れ
quest'alma desolataこの痛ましい魂を
a tanto suo dolor.彼の たくさんの苦悩に【≒ 甚だしい苦悩に悲嘆に暮れたこの魂を 奪い去ってしまえ】
カバレッタ(急)。

ロッシーニは、前の部分で既に用いられた歌詞を組み合わせてカバレッタの歌詞にしている。
Recitativo [Dopo l'Aria di Leicester

Leicester
Nolfolc

4/4
(C major)
LEICESTERレイチェステル
E l'adorata sposa,そして 熱愛する妻が、
e l'innocente Enricoそして 無実のエンリーコが
perir dovranno!... Oh dio!死ななくてはならないのだろう!… ああ 神よ!
per sopportar sì fiera耐えるためには これほどに残酷な
immagine d'orrore恐怖の心象を
converria di macigno avere il core.石の心を持たなくてなならない。


(SCENA ⅩⅢ)(第13場)
(Norfolc, due Guastatori. Leicester)(ノルフォルク、二人の工兵。レイチェステル)

NORFOLCノルフォルク
Amico...友よ…

LEICESTERレイチェステル
Ciel!... ti scosta.天よ!… 遠ざかれ。

NORFOLCノルフォルク
Così m'accogli!...そのように 君は 私を迎えるのだ!…

LEICESTERレイチェステル
Pria di venire al mio sen,私の胸に来る前に、
Dimmi, non debbo私に言いなさい、私は 由来していないのか
il presente mio stato今の私の状態を
al tradimento tuo?君の裏切りに【≒ 私の今の境遇は 君の裏切りのせいではないのか】

NORFOLCノルフォルク
Che parli? Ingrato!君は 何を言っているのか? 恩知らずの男め!
Mi conosci sì poco? Eccoti il ferro:君は 私を それほど少ししか知らないのか? ここに 君の剣が:
Vibralo in me, se vuoi; ma l'onor mioそれ【= 剣】を 私に振り下ろせ; だが 私の名誉を
cosi non oltraggiar.そのように 侮辱するな。

LEICESTERレイチェステル
Ma Elisabetta...だが エリザベッタは…

NORFOLCノルフォルク
Scoperse il ver, né so dir come. A lei彼女は 真実を見出した、それでも どうやってなのか 私は言えない【≒ どうして彼女がレイチェステルとマティルデの結婚に気付いたのか 私には分からないが】。彼女に
diressi i preghi miei.私の願いを向けた【≒ 私は エリザベッタに懇願した】
Che non feci e non dissi onde quel core私はなにもしなかったのか そして 何も言わなかったのか あの【= エリザベッタの】心に
impietosir per te? Vana speranza!君への哀れみを催させるために? 虚しい希望だ!
Tuo complice mi crede... e la tiranna彼女は 私を 君の共謀者と信じている… そしてあの暴君は
a vergognoso esilio or mi condanna.今や 私に 恥ずべき追放の刑を申し渡している。

LEICESTER.
Che sento! (E sarà ver?) Tu solo a parte私は何を聞いているのだ! (それで それは本当だろうか?)君だけが
fosti del mio segreto...私の秘密を知っていた…

NORFOLCノルフォルク
Illustre nodo令名高い絆が
potea restarsi ognor celato? Ah! troppo,常に自らを隠されたままにできただろうか【≒ ずっと知られぬままでいられただろうか】? ああ! あまりにも多く、
per giovanil talento, ti rendesti若い意欲によって、君は 自分からなった
imprudente in amar...Ma si tralasci愛に無分別に【≒ 若さの欲求が 君を あまりにも無謀な愛に駆り立てた】… だが 途中で止めるように
L'inutil favellar. Voglio salvarti,無益な話は【≒ 役に立たない話は もうやめよう】。私を 君を救出したい、
felice io voglio farti,私は 君を 幸福にしたい、
e ad ogni costo.そして なんとしても。

LEICESTERレイチェステル
E come?それで どうやって?

NORFOLCノルフォルク
Odi... Ma pria mira colà.聞きなさい… だが それより前に 向こうを見なさい。
Matilde e il suo german divideマティルデと彼女の兄を 分け隔てている
da te quel chiuso varco.君から あの閉じた通路が。

LEICESTERレイチェステル
Oh ciel!ああ 天よ!

NORFOLCノルフォルク
(A' Guastatori che si accingono ad atterrare il muro della piccola porta nel fondo)(工兵たちに その者は 奥の小さな扉の壁を取り壊す準備をする)
Quanto vi dissi si eseguisca.私が君たちに言ったことが 遂行されるように。
(a Leicester)(レイチェステルに)
Fra poco間もなく
stringerli al sen potrai.君は 彼らを 胸の中に抱きしめることができるだろう。

LEICESTERレイチェステル
Oh generoso! oh degno!...ああ 寛容な! ああ 称賛に値する!…

NORFOLCノルフォルク
Del tradimento mio sia questo un segno.これが 私の裏切りの印【≒ 証拠】であるように。
E l'adorata sposa, から converria di macigno avere il core. まで、省略可 Vi- -deの指示がある。

converria di macigno avere il core.
converria = converrei の古形、詩形、convenire の1人称単数条件法現在形。

(E sarà ver?)
多くの台本ではこのレイチェステルの独白は感嘆符で終わっているが、クリティカルエディション総譜では疑問符である。つまり彼は既にノルフォルクをあまり信用していないことになる。

[No. 11]
Duetto [Norfolc-Leicester]

Norfolc
Leicester
Allegro
4/4
C major
LEICESTERレイチェステル
Deh! scusa i trasportiああ! 【感情の】爆発を許しなさい
d'un misero, oppresso;哀れな男の、抑圧された男【の】
errai, lo confesso:私は 考え違いしていた、そのことを私は打ち明ける:
pentito son già.私は 既に 後悔している。

NORFOLCノルフォルク
(Costui di vendetta(この男が 復讐の
mi schiuda la via;道を 私に開く;
poi vittima sia:それから 犠牲になるように:
estinto cadrà.)彼は 滅び死ぬだろう。)

LEICESTERレイチェステル
Non parli...君は 話さない…

NORFOLCノルフォルク
L'offesa a te condonai.私は 君による侮辱を赦した。
quest'anima è accesaこの魂は 火を付けられえた【≒ 熱く燃え上がっている】
di pura amistà.純粋な友情で

NORFOLCノルフォルク
Ritorna al mio seno,私の胸の中に戻りなさい、
confortati appieno;すっかり 元気を出しなさい;

LEICESTERレイチェステル
Ritorna al mio seno,私の胸の中に戻りなさい、
confortami appieno;私を すっかり 元気づけなさい。

NORFOLCノルフォルク
felice ti renda君を幸福にする
la mia fedeltà.私の誠実さは。

LEICESTERレイチェステル
felice mi renda私を幸福にする
la tua fedeltà.君の誠実さは。

NORFOLCノルフォルク
Unita alle schiere,隊列【≒ 軍隊】と一体になって
la plebe dolente,苦しんでいる大衆が
attorno fremente,【牢獄の】周りで【怒りに】震えながら
scorrendo sen va.流れながら行っている【≒ 行進している】

LEICESTERレイチェステル
Che narri?... E pretende?君は 何を語っているのか?… そして 彼ら【= 大衆 女性名詞】【何を】強く求めているのか?

NORFOLCノルフォルク
Troncar tue ritorte.君の縄を断ち切ることを。
Suo duce t'attende...彼ら【= 大衆 女性名詞】の司令官を 君に期待している…

LEICESTERレイチェステル
Che ascolto!私は 何を聞いているのだ!

NORFOLCノルフォルク
La sorte per te cangierà.君にとっての運命は 変わるだろう。

LEICESTERレイチェステル
Non sia! Va'...そうでないように【≒ そんなことをしてはいけない】! 行け…

NORFOLCノルフォルク
Ma senti...だが 聞きなさい…

LEICESTERレイチェステル
Ribelle del soglio!...玉座の反逆者め!…

NORFOLCノルフォルク
Soccorso a momenti...直ちに 救援が…

LEICESTERレイチェステル
Non curo, non voglio:私は【そんなことを】気にしない【し】、望んでいない:
orrore mi fa!それ【= ノルフォルクの計画していること】は 私を戦慄させる【≒ それに 私は激しい嫌悪を感じる】

NORFOLCノルフォルク
Al fato crudele残酷な運命に
soccombi, infelice,君は負ける【≒ 死ぬ】、不幸な人よ、
se troppo fedeleもし あまりにも 忠実で 【↓】あるならば
quell'alma sarà.その魂が。

LEICESTERレイチェステル
Il fato crudele残酷な運命は
può farmi infelice,私を不幸にすることができるだろう、
ma sempre fedeleしかし 常に 忠実で 【↓】あろう
quest'alma sarà.この魂は。
orrore mi fa!
辞書によると、こうした場合の orrore は単なる 恐怖 ではなく、強い嫌悪,憎悪 を意味しているという。

[Recitativo] Dopo il Duetto [Norfolc-Leicester]

Elisabetta
Matilde
Enrico
Nolfolc
Leicester
Guglielmo
Allegro
4/4
A major
(SCENA ⅩⅣ)
(Elisabetta, Matilde, Enrico. I precedenti)(エリザベッタ、マティルデ、エンリーコ。前の場の人たち)
(i due guastatori, avvendo diroccato il muro della porta, s'inoltrano nella medesima, indi escono e si ritirano in dove son venuti. Nell'atto che Norfolc vuol far nuove premure a Leiscester, si sentono stridere i cardini dell'altra porta nella sommità della scala, da cui discende Elisabetta in succinte vesti, preceduta da una Guardia che reca una face. Norfolc, scorgendo la regina, timoroso a tal vista, è in atto di partire, ma cangiando pensiero, si cela dietro ad un pilastro in corta distanza dell'ingresso aperto poco prima, sul cui limitare si mostrano Enrico e Matilde. L'oscurità del luogo nel fondo non fa distinguerli da Norfolc né dagli altri. Leiscester, maravigliato in vedere la sovrana, rimane confuso mentre ella scende. La Guardia, dopo aver posato la face, si ritira al cenno d'Elisabetta)(二人の工兵は、扉の壁を破壊してから、それと同じ【扉】に入り込み、それから出てきて そして退く 彼らが来たところに。素振りの間に ノルフォルクが 新たな配慮【≒ 働きかけ】をレイチェステルにしたいという、階段の頂点【≒ 最上段】の別の扉の蝶番 ちょうつがい がきしむのが聞こえる、それ【= 扉】から 簡素な衣服のエリザベッタが降りる、二人の衛兵たちに先行されて その者は松明 たいまつ を持って来ている。ノルフォルクは、女王に気付くと、そのような光景に恐れて、去る素振りをする、しかし考えを変えると、少し前に開けられた入口から短い距離の柱の後ろに隠れて、その【= 入口の】敷居の傍にエンリーコとマティルデが姿を見せる。奥の場所の暗闇が 彼ら【= エリザベッタたち】を識別させない ノルフォルクからも 他の人たちからも。レイチェステルは、君主を見て驚き、混乱したままでいる 彼女が降りる間。衛兵たちは、松明を置いてから、エリザベッタの指示に退場する)

LEICESTERレイチェステル
Tu, regina... deh! come...君が、女王よ… ああ! どうして…
(prostrandosi)(跪きながら)

ELISABETTAエリザベッタ
Taci.黙りなさい。

NORFOLCノルフォルク
(Io tremo... Che mai sarà?)(私は震えている… いったい どうなるのだろうか?)

MATILDEマティルデ
(sottovoce ad Enrico)(エンリーコに 小声で)
Cielo! ella stessa!天よ! まさしく彼女だ!

ENRICOエンリーコ
(come sopra a Matilde)(上と同様に【= 小声で】 マティルデに)
Il piede non inoltrar.足を差し向ける出ない【≒ 進み入るでない】

MATILDEマティルデ
(come sopra, vedendo Norfolc)(上と同様に【= 小声で】 ノルフォルクを見ながら)
Costui perchè celato?なぜ あの男は 隠れているのだろうか?

ENRICOエンリーコ
Udiam; t'accheta omai.聞こう; 今は落ち着きなさい。

ELISABETTAエリザベッタ
(giunta al basso)(低いところまで達して)
Misero, ascolta. Ecco l'ultima volta哀れな男よ、聞きなさい。これが 最後の好機だ
che ti è dato il vedermi. A' danni tuoi私に会うことが君に与えられる。君の損害に
favellaron le leggi, e i Grandi a morte法は言った、そして裁判官たちは 死を
ti condannaron già. La tua regina君に有罪の判決を下した。君の女王は
approva la sentenza:判決を承認している。
Elisabetta far non lo potria.エリザベッタは そのことをすることができないかもしれない。
Per quella ignota viaあの 知られていない道を抜けて
(accennando la scala)(階段を示しながら)
ella t'offre uno scampo; va, t'affretta;彼女は 君に 逃げ道を提供する; 行きなさい、急ぎなさい;
la regina non v'è, ma Elisabetta.【ここには】女王はいない、エリザベッタが【いる】

LEICESTERレイチェステル
Oh eccelsa donna!... Amoreああ 至高の婦人よ!… 愛が
mi fece reo, ma non ribelle al trono.私を犯行者にさせた、しかし 玉座への反逆者には【させ】なかった。
S'io m'involassi alla mia pena, il mondoもし 私が 私の刑罰から姿を消したなら、世間は
tale mi crederia. Lascia ch'io pera.私を そのような者【≒ 反逆者】と信じるかもしれない。 させておきなさい 私が死ぬことを。
Mostrati generosa寛大な態度を示しなさい
a Enrico, alla mia sposa;エンリーコに、私の妻に;
li salva; altro non bramo.彼らの命を助けなさい; 他を私は切望していない。

ELISABETTAエリザベッタ
Un impossibil chiedi.君は 不可能なことを求めている。
L'empio Norfole che ti accusò...邪悪なノルフォーレが その者は 君を告発した…

LEICESTERレイチェステル
Che dici! Norfole!君は 何を言っているのだ! ノルフォーレが!

NORFOLCノルフォルク
(Oh ciel!)(ああ 天よ!)

ELISABETTAエリザベッタ
Matilde e suo germano,マティルデと 彼女の兄を
al cospetto de' grandi,裁判官たちの前で
nomò complici tuoi contro lo stato.国家に対する君の共謀者たちだと 名を呼んだ。

LEICESTERレイチェステル
Norfole!ノルフォーレが!

ELISABETTAエリザベッタ
Scellerato邪悪だと
tardi il conobbi; ognun tacea. Punirlo彼を 私は 遅れて 知った; 誰もが【ノルフォルクが邪悪であることを】黙っていた【≒ 口を閉ざしていた】。彼を罰することを
volli di sua finta amistade, e ognun私は欲した 彼の偽りの友情で、そして 各々に
di qual tempra è quel cor mi fe' palese.あの心が どのような気性にあるのか 私に 明らかにさせた。

NORFOLK
(Ohimè!)(ああ!)

LEICESTER
Chi mai simil perfidia intese?いったい 誰が そのような不誠実を聞いた【ことがあった】だろうか?
Ah! regina, al riparo. Il traditoreああ! 女王よ、防御を【≒ 隠れなさい】。裏切者は
qui poc'anzi sen venne; a me fingeaつい今しがた ここに来た; 私に 彼は 装った
fida amistà; volea信頼できる友情を; 彼は欲していた
farmi capo della plebe. Ah! pensa...私を 大衆の頭 かしら にすることを。ああ! 考えなさい…

ELISABETTAエリザベッタ
Oh dio!ああ 神よ!

NORFOLCノルフォルク
(Ah! perduto son io!)(ああ! 私は破滅した!)

LEICESTERレイチェステル
Deh! corri!ああ! 急いでしなさい!

MATILDEマティルデ
(ad Enrico, accennando Norfolc)(エンリーコに、ノルフォルクを指し示しながら)
Mira...見詰めなさい【≒ よく見なさい】

ENRICOエンリーコ
(vedendolo posar la mano sull'elsa della spada)(彼が 思い切って 手を 剣の柄 つか の上にするのを見て)
Ei stringe il brando.彼は剣を握り締めている。

ELISABETTAエリザベッタ
(dopo aver pensato)(考えた後に)
L'empio, sì, preverrò.邪悪な男に、そうだ、私は 先手を打つ。
(in atto di ascendere la scala)(階段を昇る素振りをして)

NORFOLCノルフォルク
(avventandosi colla spada ad Elisabetta)(剣を持って エリザベッタに襲い掛かりながら)
Ma pria la morte avrai.だが それより前に 君は 死を 持つだろう。

ELISABETTAエリザベッタ
Cielo!...天よ!…

Matilde ed Enricoマティルデとエンリーコ
Fermati!...止めなさい!…

NORFOLCノルフォルク
Ohimè!...ああ!…

LEICESTERレイチェステル
Mostro! che fai!怪物め! 君は 何をしているのだ

(Enrico e Matilde disarmano Norfolc; Enrico gli pone al petto la punta della spada, afferrandogli il braccio destro; Matilde gli afferra il braccio sinistro; Leicester si para d'innanzi ad Elisabetta)(エンリーコとマティルデは ノルフォルクの武器を取り上げる; エンリーコは 彼の胸に 剣の先端を置き、彼の右腕を掴みながら; マティルデは彼の左腕を掴む。レイチェステルは エリザベッタの前で 身を守る)

ELISABETTAエリザベッタ
Olà, Guglielmo!...おい、グリエルモよ!…

LEICESTERレイチェステル
Guardie!...衛兵たちよ!…


(SCENA ⅩⅤ)(第15場)
(Guglielmo e Guardie con faci dalla scala. I precedenti)(階段から松明を伴ったグリエルモと衛兵たち。前の場の人たち)

GUGLIELMOグリエルモ
Mia sovrana...私の君主よ…

Matilde ed Enricoマティルデとエンリーコ
Vivi, o regina!万歳、ああ 女王よ!

LEICESTERレイチェステル
Vivi, e vivi al regno.万歳、そして王国に万歳。

NORFOLCノルフォルク
Oh destin!ああ 運命め!

Matilde ed Enricoマティルデとエンリーコ
Traditor!裏切者め!

LEICESTERレイチェステル
Barbaro!残酷な男め!

ELISABETTAエリザベッタ
Indegno!恥ずべき男め!
Nell'atto che Norfolc vuol far nuove premure a Leiscester,
far premula a qlcu. ―を急がせる

L'empio Norfole che ti accusò...
Che dici! Norfole!
Norfole!
いずれも Norfolc を Norfole にしていることについては、楽曲解説を参考に。

favellaron le leggi, e i Grandi a morte
al cospetto de' grandi,
Grandi は第1幕では 貴族たち と訳しているが、ここでは司法なので 裁判官たち で訳している。

di qual tempra è quel cor mi fe' palese.
tempra は temperamento 気性 で採った。

[N. 12]
Finale Secondo

Elisabetta
Matilde
Enrico
Nolfolc
Leicester
Guglielmo
Coro
Maestoso
4/4
E Major
ELISABETTAエリザベッタ
Fellon, la pena avrai裏切者よ、君は 刑罰を持つ【≒ 受ける】だろう
dovuta a tanto eccesso.それほど多くの行き過ぎ【≒ 犯行】のせいで。
Dove si vide maiいったい どこで見る【ことができる】というのだ
più scellerato cor!もっと大きい極悪の【≒ さらに悪辣な】心を!
Si aggravi di ritorte;【彼を】縄で圧迫する【≒ 縛り付ける】ように;
vada l'iniquo a morte;邪悪な男が 死へと進むように;
terribil fia l'esempio恐ろしいだろう 手本【≒ 見せしめ】
d'un empio traditor.邪悪な裏切者の

NORFOLCノルフォルク
Saziati, iniqua sorte,満足しろ、非道な運命よ、
appaga il tuo furor.お前の怒りを満たせ。

(Norfolc è condotto dalle Guardie nel fondo del carcere)(ノルフォルクは 衛兵たちによって 牢獄の奥に連れて行かれる)

MATILDE ED ENRICOマティルデとエンリーコ
Deh! calmati.ああ! 落ち着きなさい!

GUGLIELMO E LEICESTERグリエルモとレイチェステル
Respira.息をしなさい【≒ 安心しなさい】

Matilde, Enrico, Guglielmo e Leicesterマティルデ、エンリーコ、グリエルモとレイチェステル
E il ciel pietoso ammiraそうすれば 慈悲深い天は 感嘆する【だろう】
de' regi difensor.王の擁護者である【天は】
急。

Andantino
3/4
G major
ELISABETTAエリザベッタ
Bell'alme generose,心の広い 美しい魂たちよ、
a questo sen venite.この胸に来なさい。
Vivete, omai gioite;生きなさい、今こそ 大いに喜びなさい;
siate felici ognor.君たちは ずっと 幸福だ。
(Dopo aver abbracciato Matilde ed Enrico, li fa avvicinar a Leicester)(マティルデとエンリーコに抱擁した後、彼らを レイチェステルに近づけさせる)

Matilde, Enrico, Guglielmo e Leicesterマティルデ、エンリーコ、グリエルモとレイチェステル
(Leicester, Matilde ed Enrico si prostrano)(レイチェステル、マティルデとエンリーコは平伏する)
Oh grande!ああ 偉大な人よ!

ELISABETTAエリザベッタ
Sorgete.立ちなさい。
緩。

[Allegro]
4/4
G major
CORO合唱
di dentro内部【≒ 舞台裏】から
Leicester!...レイチェステルよ!…

Elisabetta, Matilde, Enrico, Guglielmo e Leicesterエリザベッタ、マティルデ、エンリーコ、グリエルモとレイチェステル
Quai grida?何が叫んでいるのが?

CORO合唱
Vederlo vogliamo:私たちは 彼に会うことを欲している:
morire al suo piè.彼の足元で死ぬことを【欲している】
(Vedonsi spalancare le porte del carcere)(牢獄の扉が大きく開かれるのを見る)
経過区。

(Allegro)
4/4
E major
(SCENA ULTIMA)(最終場)
(Coro di Soldati e Popolo. I precedenti)(兵士たちの合唱と人々の合唱。前の場の人たち)

Guglielmo e Leicesterグリエルモとレイチェステル
Audaci! Rispetto... Fermate...向こう見ずな者たちめ! 敬意を… 止めなさい…

ELISABETTAエリザベッタ
(alle Guardie che vogliono opporsi alla moltitudine)(衛兵たちに その者は 群衆に立ち向かうことを欲している)
Fermate... Sì tenero affetto止めなさい… これほどに優しい情愛は
punibil non è.罰すべきでない

CORO合唱
(prostrandosi)(平伏しながら)
La regina!... Perdono女王だ!… 容赦しなさい
imploriam. pietà...私たちは 切に願う、哀れみを…

ELISABETTAエリザベッタ
Ecco il duce: il rendo a voi,ここに 司令官が:私は 彼を 君たちに返す、
rendo al trono il difensore.私は 玉座に 【その】防衛者を返す。

CORO合唱
Viva Elisa! l'eroina,万歳 エリーザ【≒ エリザベッタ】よ! 英雄の女よ、!
lo splendor di nostra età.私たちの時代の輝きよ。
(Allegro)
4/4
G major
ELISABETTAエリザベッタ
(Fuggi amor da questo seno,(愛よ この胸から立ち去りなさい、
non turbar più il viver mio.【そして 愛は】もう 私の人生を かき乱すでない。
Altri affetti non vogl'io別の情愛を 私は望んでいない
che la gloria e la pietà.)栄光と 哀れみの他には)

Matilde, Enrico, Guglielmo, Leicester e Coroマティルデ、エンリーコ、グリエルモ、レイチェステルと合唱
Viva Elisa! l'eroinaエリーザ【≒ エリザベッタ】万歳! 英雄の女
lo splendor di nostra età.私たちの時代の輝き。
(Fuggi amor da questo seno, / non turbar più il viver mio.
fuggi は fuggire の2人称単数現在か、2人称単数命令形どちらか。non turbar が否定命令文なので fuggi も命令形だと思われる。その場合、二つとも amor に対する命令の呼びかけになる。

参考資料


Elisabetta Regina d'Inghilterra / Gioachino Rossini / Edizione Critica, a cura di Vincenzo Borghetti, Partitura / Fondazione Rossini Pesaro / 2016

Elisabetta Regina d'Inghilterra / Programma di Sala / Rossini Opera Festival, Pesaro, Italy / 2004

Dizionario Rossiniano / Eduardo Rescigno /


















ロッシーニ御殿 ホームページ
オペラ御殿 旧御殿のメインメヌー