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最新更新 2025年2月23日

無断転載 厳禁

GEORGE FRIDERIC HANDEL

LA BELLEZZA RAVVEDUTA NEL TRIONFO DEL TEMPO E DEL DISINGANNO

HWV 46a

2部のオラトリオ
Oratorio in due parti

初演 おそらく1707年春 ローマ
First performance Probably Spring 1707, Roma

台本作家 ベネデット・パンフィーリ
Libretto Benedetto Pamphilij

《時と悟りの勝利》は、ヘンデルが書いた最初のオラトリオである。ローマ遊学中の1707年にベネデット・パンフィーリ枢機卿の台本に作曲した。

題名とその日本語訳

この作品は今日一般的に Il trionfo del Tempo e del Disinganno として知られている。しかしこの作品の正式な題名はもっと長いものである。
後述する初演時の筆写譜を作った際の請求書には La Bellezza Ravveduta nel trionfo nel Tempo e del Disinganno と記されている。
またBärenreiter社のクリティカルエディションで序文を書いているアンネッテ・ランドグラーフ Annette Landgraf によると、クリティカルエディションの基となった主要素材には La Bellezza Ravveduta nel trionfo nell' Tempo e del Disinganno と題名が記されているという。
この主要素材とは、今日ドイツ、ミュンスターのミュンスター教区図書館に伝わるいわゆる サンティーニ収集品 Die Santini-Sammlung に含まれる上演用筆写総譜のことである。ローマの聖職者フォルトゥナート・サンティーニ Fortunato Santini 1777―1861 はローマに伝わる膨大な楽譜を筆写し収集した。これらは彼の生前にミュンスターへの移譲が約束され、亡くなった翌年に実行された。しかしこれらはやがて埋もれ、網羅的な調査ができるようになったのは20世紀後半になってからのことである。ちなみにこのミュンスターの筆写譜には間違いが散見され、ランドグラーフによるとヘンデルが直接使用したものではないと思われるという。

クリティカルエディションは前者、つまり La Bellezza Ravveduta nel trionfo nel Tempo e del Disinganno を採用している。

さて、 Il trionfo del Tempo e del Disinganno は日本語では 時と悟りの勝利 と訳されている。disinganno は伊和辞典では 迷いを覚ますこと,真実を悟らせること とある。つまりこの作品における擬人化された Disinganno は、美 Bellezza に誤りを気付かせ真実に目覚めさせる者 の意味である。一方で日本語の 悟り は専ら本人が真理などに気付くことを意味し、正直なところ訳としてあまり合っていない。
題名の英訳では多くの場合 Disillusion が用いられており、これも illusion 思い違い,迷い から覚めることを意味している。 一方、ヘンデル研究の第一人者、アンソニー・ヒックス Anthony Hicks は Disinganno の英訳に Enlightenment 啓蒙 を当てている。たしかに作品の内容からすると、Disinganno は日本語でも 悟り より 啓蒙 の方がずっと適切に思われる。

La Bellezza Ravveduta nel trionfo nel Tempo e del Disinganno は日本語の定訳はない。ravveduta は 改心した という意味である。
そのまま訳すと 時の そして 真実を悟らせる者の 勝利における 改心した美 といったようになる。さすがにこれでは長ったらしいので、ここでは とりあえず 一般的に広まってしまっている題名訳《時と悟りの勝利》のままにするが、本来の題名では 改心した美 La Bellezza Ravveduta が主であること、Disinganno が日本語における 悟り とは異なることに注意が必要である。

作曲、初演

1706年、正確な月日は分からないがおそらく春から夏にかけて、ヘンデルは1703年から拠点としていたハンブルクを発ち、イタリアへと向かう。
彼はハンブルク時代に、最初のオペラ《アルミーラ》 1705年1月8日 初演 台本は伊独混合、《ネロ》2月25日 初演 ドイツ語 を発表していた。初演時期は不明だが《フロリンド》および《ダフネ》 独伊混合 元々1つのオペラだった もヘンデルがイタリア周遊に出る前に初演されたかもしれない。

ヘンデルのイタリア周遊の初期は情報がほとんどなく、ここではそれが本題ではないので、細かいことは割愛する。
おそらく1706年秋にヘンデルはまずフィレンツェに滞在したと考えられている。これはメディチ家のトスカーナ大公ジャン・ガストーネ 1671―1737 の招きである。彼は1703年10月から1704年2月頃までハンブルクに滞在しており、この時にヘンデルと知り合っていた。二人の目的がこの地でオペラを上演することだったのは間違いないだろう。

しかしヘンデルは1706年末か1707年初にローマに移る。フランチェスコ・ヴァレージオという人の1707年1月14日(グレゴリオ暦)の日記には、明らかにヘンデルと思われる音楽家が言及されている。

この都市にあるザクセン人がやって来た、卓越したチェンバロ奏者であり作曲家である、彼は今日サン・ジョヴァンニ教会【注】で オルガンを弾いて彼の力量を誇示し、皆を驚嘆させた。
È giunto in questa città un Sassone, eccellente suonatore di cembalo e compositore di musica, il quale oggi ha fatto gran pompa della sua virtu nel suonare l'organo nella Chiesa di San Giovanni con stupore di tutti.


注 サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂 Basilica di San Giovanni in Laterano。ローマで最も重要な教会の中の一つ。ここには16世紀末から17世紀初頭にかけてイタリアで最も卓越したオルガン製作者、ルカ・ビアージ Luca Biagi 1545頃―1608 が1600年の聖年に制作した大オルガンが据えられている。

ローマでヘンデルは、カルロ・コロンナ Carlo Colonna 枢機卿 1665―1739 やベネデット・パンフィーリ Benedetto Pamphilij 枢機卿 1653―1730、ピエトロ・オットボーニ Pietro Ottoboni 枢機卿 1667―1740 といった有力者の客人として歓待された。

ローマ滞在で、ヘンデルは膨大な数のソロ・カンタータや二重唱曲などを作曲している。


さてローマでは教皇インノケンティウス11世 1611―1689 ローマ教皇1676―1689 の時代にオペラの上演が禁止され、劇場は閉鎖されてしまっていた。


《時と悟りの勝利》の制作と初演に関する情報は極めて乏しく、ほとんど何も分かっていないに等しい。自筆譜も初演時の出版台本も伝わっていない。さらには上演日、出演歌手名、オーケストラの規模、観客の人数(出版台本の部数から推測できる)も分からない。公演を聞いた人の感想も見付かっていない。

唯一確実な資料は、1707年5月14日付で写譜師アントーニオ・ジュゼッペ・アンジェリーニ Antonio Giuseppe Angelini から上がった請求書である。彼はヘンデルの自筆総譜から指揮者(高名なアルカンジェロ・コレッリ)が用いる総譜やパート譜などの上演用の楽譜を用意した。
こうした請求は催しが執り行われた後のことになるはずなので、初演は1707年の春頃、遅くとも5月上旬くらいだったと思われる。

《時と悟りの勝利》には、信憑性はともかく、有名な逸話が残されている。最初のヘンデルの伝記である ジョン・マナリング John Mainwaring 1724―1807 の Memoirs of the Life of the Late George Frederic Handel 1760年刊 によると、《時と悟りの勝利》の序曲に、オーケストラのソロ・ヴァイオリニスト(つまり指揮者でもある)のアルカンジェロ・コレッリが不満を述べたという。長くなるが引用する。

高名なコレッリが第1ヴァイオリンを弾き、枢機卿の宮殿に居室を持ってた。彼の卓越【した腕前】でもって 時折 調達することのできたオペラ、オラトリオ、そしてさらに他の大規模作品上演があるのがいつものことだった。ヘンデルは 彼の割り当てを提供するよう 望まれていた;[…] 彼の流儀には イタリア人【音楽家】たちが慣れていた流儀とは あまりに大きく異なるものがあったので、他の音楽を演奏するのに稀にもしくはまったく途方に暮れることがなかった人たちは、彼の音楽をどうやって演奏すればよいのか しばしば戸惑させられた。コレッリ自身も、ヘンデルの序曲を演奏する際に見出した難しさについて 不平をこぼしていた。実際、これらの作品の全体に、とりわけその冒頭には、まったく似ていない天才の 優美さとは、そして穏やかな優雅とは 調和し得ないほどの ひらめきと力が あった。ある日 ヘンデルが これらの活気に満ちた楽句のどう演奏すべきか指導しようと コレッリに 実りのない試みをした。しかしコレッリが なおも そうした楽句を不甲斐なく演奏していことにヘンデルは腹を立てて、彼はコレッリの手からヴァイオリンを奪い取ると、コレッリがいかにそれらの楽句をほとんど理解していないのか分からせるために、ヘンデル自身がその楽句を演奏して見せた。しかしコレッリは、たいへんに控えめで温和な人物で、こういったやり方の説得を  望んでいなかった; というのも 彼は 素直に 彼には こうした楽句は 理解できないと はっきりと伝えた; 言い換えれば、彼には それらの楽句をどう正しく演奏したらよいのか、またそれらの楽句が求める力強さと表現を音楽にどう与えるべきか 分からないと。ヘンデルがイライラしているように見えた時、彼は言った「けれど、親愛なるザクセンの方よ、この音楽はフランス風の様式で、それについては 私は 分からないのです。」
The illustrious CORELLI played the first violin, and had apartments in the Cardinal's palace. It was a customary thing with his eminence to have performances of Operas, Oratorios, and such other grand compositions, as could from time to time be procured. HANDEL was desired to furnish his quota; [...] There was also something in his manner so very different from what the Italians had been used to, that those who were seldom or never at loss in performing any other Music, were frequently puzzled how to execute his. CORELLI himself complained of the difficulty he found in playing his Overtures. Indeed there was in the whole cast of these compositions, but especially in the opening of them, such a degree of fire and force, as never could consort with the mild graces, and placid elegancies of a genius so totally dissimilar. Several fruitless attempts HANDEL had one day made to instruct him in the manner of executing these spirited passages. Piqued at the tameness with which he still played them, he snatches the instrument out of his hand; and, to convince him how little he understood them, played the passages himself. But CORELLI, who was a person of great modesty and meekness, wanted no conviction of this sort; for he ingenuously declared that he did not understand them; i. e. knew not how to execute them properly, and give them the strength and expression they required. When HANDEL appeared impatient, Ma, caro Sassone (said he) questa Musica è nel stylo Francese di ch'io non m'intendo.

前述書 pp 56―57

マナリングは脚注で、コレッリが手こずった音楽が《時と悟りの勝利》の(本来の)序曲であること、そしてヘンデルがそれをよりイタリア流儀のシンフォニアで置き換えたことを付け加えている。マナリングの伝える内容がどこまで真実なのかは分かりようがないが(彼はこうした話をヘンデル自身から聞いたと推測されてはいるとはいえ)、ともかくも《時と悟りの勝利》は、ヘンデルのいつものフランス流儀の音楽ではない。

音楽

日本には『処女作にはその作家の全てが詰まっている』という名言がある【注】。《時と悟りの勝利》はヘンデルの処女作ではないせよ、イタリア語での初の声楽大作として、まさにその言葉通りの作品である。ここには後のヘンデルの源泉が豊富に見て取れる。個々の曲もしくは箇所は、そのほとんどが後の作品に更生されていると思われる。《アグリッピーナ》 1709年12月26日 ヴェネツィア サン・ジョヴァンニ・グリソストモ劇場 には、第4番 Una schiera di piaceri、第13番 Crede l'uom ch'egli riposi が更生された。


※普請中※


注 作家 土屋隆夫 の書いたもの。実際に土屋が書いた文章は少し異なるが、作家はその処女作の呪縛から逃れられない、という内容。

改作

ヘンデルは《時と悟りの勝利》を生涯で2度改作している。

一度目は、初演から30年経った1737年こと。
ヘンデルは1736/1737年のコヴェントガーデン劇場でのシーズンを、11月20日の《アタランタ》再演 2公演 で開幕した後、12月8日に《ポーロ》を再演 4公演。年が明けてから1月12日に新作オペラ《アルミーニオ》を初演 6回。1月29日に《パルテーノペ》再演 4公演。2月16日に新作オペラ《ジュスティーノ》を初演 6公演、初夏に3公演。こうしてヘンデルは新旧作を上演し、さらに年初に書き上げていた《ベレニーチェ》を続けて初演する用意をしていた。
ところが突然、四旬節でのオペラ上演が禁止されてしまったのだ。1737年の四旬節は3月6日から4月20日。このためヘンデルは急遽、宗教的題材のオラトリオなどを上演して凌がなくてはならなくなった。
3月9、11日に《祝祭のパルナッソス山》、3月6、18、30日、4月5日に《アレグザンンダーの饗宴》の再演を催しつつ、ヘンデルは3月23日に《時と悟りの勝利》を手直しした《時と真実の勝利 Il trionfo del Tempo e della Verità》を新作として初演した。公演は3月25日、4月1、4日の4回行われた。オリジナルがロンドンでは(だけではないが)まったく知られていなかったことから、新作として上演が可能だった。
この1737年の《時と真実の勝利》は、1739年3月3日(やはり四旬節である)にヘイマーケットの国王劇場でもう一度だけ公演があった。

二度目は、ヘンデルの晩年、1757年、つまり初演から50年後、3月11日にコヴェントガーデン劇場で上演された英語のオラトリオ《時と真実の勝利 The Triumph of Time and Truth》である。
ヘンデルはこの頃には視力の衰えがかなり進んでおり、新たな楽譜を作る作業は友人や弟子たちによると思われる。この1757年の《時と真実の勝利》は、おそらくトマス・モレルが伊語台本を英訳しさらに調整し、彼は 偽り,欺瞞 Deceit という訳を付け加えた。音楽はジョン・クリストファー・スミス・ジュニア 1712―1795が作業したと推測されている。彼は1737年の《時と真実の勝利》を中心に、1707年の《時と悟りの勝利》からも復活させ、さらに別のヘンデルの音楽を付け加えた。
初演は1757年3月11日、コヴェント・ガーデン劇場、4公演。歌手は、美 Beauty が ジューリア・フラージ Giulia Frasi ソプラノ、偽り Deceit がベラルタ夫人 Signora Beralta,ソプラノ、助言者もしくは真実 Counsel, or Truth が イザベラ・ヤング Isabella Young メッゾソプラノ、喜び Pleasure がジョン・ビアード John Beard テノール、時 Time がサミュエル・チャンプネス Samuel Champness,バス。
この1757年の《時と真実の勝利》は1758年2月10、15日、コヴェントガーデン劇場で再演があった。

《時と悟りの勝利》における政治的仄めかし 1 ヘンデルのイタリア周遊とスペイン継承戦争

最初に結論を書いておくと、《時と悟りの勝利》における政治的仄めかしは確実にあると思われるものの、それが徹底されておらず、あくまで一部の曲において政治的仄めかしが見られるという程度にとどまっている。したがってこの作品は本来の教戒的な内容で理解すべきものではあるが、とはいえ、教戒的内容でははほとんど理解しがたい詞が、政治的背景を据えると理解できる箇所があるのも事実である。

まず《時と悟りの勝利》初演当時のイタリアを巡る政治状況を見よう。
《時と悟りの勝利》が初演された1707年は、イタリアの歴史において重大な年だった。ミラノを中心とした北イタリアとナポリを中心とした南イタリアが、どちらもハプスブルク家のオーストリアの支配下に収まったのである。
これはスペイン継承戦争によるものである。スペイン継承戦争は期間が長く規模の大きな汎ヨーロッパ的大戦争で、全体像を理解するには膨大な記述を擁する。ただ検索すれば様々な情報が手に入るので、ここでは深入りしない。
要点のみ説明すると、1700年にスペインでアブスブルグ家の王家が断絶し、フランスの差し金でルイ14世の孫が後継王に収まった(スペイン・ボルボン家の創始)。これはフランスとスペインという2大国の関係が強くなることを意味し、欧州におけるフランスの影響力が著しく増大することに繋がる。
これに対して、神聖ローマ帝国≒ハプスブルク家のオーストリア、フランスの宿敵である英国、さらには当時スペイン支配下にあったネーデルランド(オランダ近辺)が猛反発、同盟を結び(1701年のハーグ条約)、フランスと敵対した。

神聖ローマ帝国は伝統的にイタリアを重視したびたび南進政策を取っていた。ハプスブルク家のオーストリアもスペイン継承戦争で真っ先にイタリア(既に長く分割被支配状態で防衛力が低かった)に進軍した。
北イタリアでは、フランスとオーストリアが激しい争奪戦を繰り広げた末、1706年に逆転的にオーストリアが勝利を収めた。さらに南イタリアも同様の結果となった。
結果、教皇領は南北からオーストリアに挟まれた格好になり、ローマ・カトリックはオーストリアからの強い圧力を受けることになった。
時の教皇クレメンス11世はスペイン継承戦争において中立の立場を取っていたが、オーストリアがボローニャの支配をも狙う中、積極的な政治的対応を迫られていた。また当時ローマ・カトリックの中枢は親フランス勢力と親オーストリア勢力に分かれていた。
なおこの4年前の1703年、教皇領ではラクイラ、モンテレアーレ、ノルチャ(近接している)で29日間に3回も大地震があって甚大な被害を被っていた。教皇領にとっては泣きっ面に蜂の状況だった。
こうして1707年春のローマ・カトリック、教皇領は、大きな不安の真っ只中にあった。

ヘンデルは、前述の通り、1706年の春から夏にかけてハンブルクを発ち秋頃にフィレンツェに到着したと推測されている。
戦火のイタリアに旅するのは無謀にも思える。実際、ヘンデルにとって恵まれた旅行条件からは程遠かった。
それでも運は彼に味方した。4月にはロンバルディアのカルナチートという町でフランス軍がオーストリア軍を蹴散らしていたのだが、その後5月にフランス軍はずっと西のトリノへと移動し街を包囲し陥落を狙った。しかし粘り強く持ち堪えたトリノに、9月、オーストリア軍の援軍が到着し、フランスの包囲軍は敗走した。
ヘンデルのイタリアへの経路は今日でもわかっていないが、主戦場が大きく西にずれたことでロンバルディアを通過するのが可能になったことは間違いない。その後彼がローマを主な滞在先にしたのも、教皇のお膝下が大きな戦場になる危険が少なかったからだろう。

《時と悟りの勝利》における政治的仄めかし 2 台本から読めるもの、読めないもの

こうした政治的に困難な状況にある歴史の転換点に上演された声楽大作に、政治的な主張がまったくないとはむしろ考えづらい。台本の執筆者が枢機卿であれば、その状況下で世相を何も反映していない詞を書くとは思えない。

こうした状況を作品の背景を据えて、《時と悟りの勝利》における政治的仄めかしを見てみよう。

まず 美 は、混迷するローマ・カトリックで間違いないだろう。拡大的に イタリア と読むこともできる。
とすると、それを惑わす悪役の 喜び がオーストリアになるだろう。
台本を書いたパンフィーリは親フランスとして知られており、ということは誤った道から 美 を引き戻そうとする 悟り はフランスということになる。
時 は、第2番の後のレチタティーヴォで 時と悟りが一致して unito と述べられていることからすると、スペインを指していると考えられる。ただし、後述するように、これはイタリアとスペインの歴史を巡って一筋縄ではいかない。

台本で政治的仄めかしが読み取れる箇所を列挙しよう。
第3番の後のレチタティーヴォ: 武器を 手に取ろう si prendan l'armi。この詞は オーストリア、イタリア、スペイン、フランスのどれが勝つか、という意味に採れる。
第4番 美 のアリア: 部隊 schieara つまり 軍隊 という戦争に関する言葉が用いられている。Aの歌詞は、ローマを守るためにオーストリア軍と共闘しよう と採れ、ローマ・カトリック中枢における親オーストリア勢力の主張が反映されているように思われる。
第7番 美 のアリア: この詞は極めて難解で、教戒的な内容として理解しようとしてもよく分からず、Bに至ってはほとんど理解不能なほどである。しかし 時=スペイン の見立てをするならば、この詞は16、17世紀に北および南イタリアがアブスブルグ家のスペインの支配下に置かれていたことを反映していと思われる【注】。美 が 時 を激しく非難するのは、この時のスペインによる抑圧の経験によると思われる。Bは、un altro leggiadro pensiero が 喜び=ハプスブルク家のオーストリア を指しているならば、カルロス1世=カール1世の退位後、彼の領土が分割相続された(スペインをフェリペ2世が、神聖ローマ帝国≒オーストリアをフェルディナント1世 1503―1564 在位 1556―1564 が継承した)ことを意味しているのかもしれない。
第14番 時 のアリア: Bの詞は当時のスペイン軍の強力さを描いているように思われる。
第18番の 喜び アリアは、オーストリアからイタリア・カトリックへの圧力と読める。
第20番の後のレチタティーヴォと第21番の 時 のアリアは、ローマ・カトリック中枢における親墺親仏の対立を窺わせる。
第22番の後のレチタティーヴォ: これもかなり難解な詞である。喜び がオーストリアという前提で読むと、宮殿はウィーンのホフブルク宮殿、ゆっくり流れる川はドナウ川、そして 愚かな恋人たち folli amanti は神聖ローマ皇帝ヨーゼフ1世とその妃アマーリア・ヴィルヘルミーネのことだろうか。川が海に届かないというのは、ドナウ川が遥か東のルーマニアで黒海に注ぐことにたとえて、オーストリア軍はウィーンから真っ直ぐ南下できない と言いたいのかもしれない。

《時と悟りの勝利》の台本では、第7番 美 のアリアが教戒的な内容ではほとんど意味が理解できないことが重要である。逆に言うと、ここを理解するためには《時と悟りの勝利》の台本には政治的仄めかしがあると考えざるを得ない。

一方、台本のすべてにおいて政治的仄めかしが読み取れる訳ではない。特に第2部は、普通に教戒的な詞として理解できるものが多い。それどころか、あえて政治的背景を据えて読もうとするとかえって分からなくなる箇所も少なくない。
たとえば全曲中最も有名な第23番 喜び のアリア Lascia la spina, 、ここには薔薇 rosa が用いられている。薔薇は英国の象徴として有名だ。しかしこの詞を 薔薇=英国 で読んでも説得力のある理解が得られない。薔薇を 悦楽 と理解すれば普通に読むことができる。
第25番 悟り のアリア にはさらに百合 gigli も用いられている。しかしここも薔薇=英国、百合=フランス で置き換えて理解しようとしても難しい。
また《時と悟りの勝利》の台本には 太陽 sole が4回用いられている。ルイ14世の時代であるから、太陽はルイ14世を象徴していると考えることもでき、たしかに第18番の後のレチタティーヴォや幕切れ直前の第30番の 美 のアッコンパニャートではそうした理解ができそうな気配はあるのだが、明確ではない。

現状では、《時と悟りの勝利》の台本における政治的仄めかしは徹底されていない と言わざるを得ない。つまり、基本的にはそのまま教戒的な話で理解してよいのではないだろか。ただその中に政治的仄めかしがかなり盛り込まれているのは否定できないだろう。
なぜ政治的仄めかしが徹底されていないのかは、次項で検討する。

注 神聖ローマ皇帝カール5世 1500―1558 在位 1519―1556 はスペイン国王カルロス1世 在位 1516―1556 でもある。カルロス1世時代のスペインは領土拡大に邁進しており、フランス国王フランソワ1世とイタリアを巡って奪い合いをし勝利した。1535年からミラノを支配し、退位時に息子で後のスペイン国王フェリペ2世 1527―1598 に受け継がせた。ミラノは1706年までアブスブルゴ家のスペインの支配下にあり、兵士や軍資金を搾取されるなどスペインの圧政を受けた。一方ナポリを中心とした南イタリアは1503年以来アブスブルゴ家のスペイン支配下にあった。
第7番の 美 のアリアのAの歌詞に現れる 翼 は迅速に移動するためのもので、大鎌は殺戮の道具を意味し、カルロス1世によってイタリアが荒廃したことを仄めかしていると思われる。

《時と悟りの勝利》における政治的仄めかし 3 プロパガンダ作品なのか

《時と悟りの勝利》に政治的仄めかしが見て取れるということは、この作品に政治的プロパガンダの性格があるということである。
ところが、前述の通り、《時と悟りの勝利》の初演に関する情報は極めて乏しい。これはこの作品が極めて閉じられた環境で上演されたことを示唆している。私的に、ごく少数の限られた招待客を前に、1回だけ上演された可能性も十分ある。
これはプロパガンダの目的に反する。大勢の人々に見聞きしてもらうことで世論を自分たちの主張(この場合は反墺親仏)に導かなくてはならないのだが、《時と悟りの勝利》がその役目を果たしたようにはまったく見えない。

改めて歴史を辿ろう。
1706年9月7日、トリノを包囲していたフランス軍をオーストリア軍とサヴォイア軍が撃破。これを受けて親仏国マントヴァ公国のフェルディナンド・カルロ(最後のマントヴァ公爵)が1707年1月21日にヴェネツィアに逃亡する(6月30日のレーゲンスブルク議会でマントヴァ公国は正式にミラノ公国に吸収されて消滅)。3月13日にミラノ条約が締結されてイタリアでのオーストリア支配が確定した。オーストリア軍とサヴォイア軍はさらに南仏に進軍する気配を見せていた(ただし実際に行動に出るのは夏になってからで、かつトゥーロンの包囲戦は失敗に終わった)。
《時と悟りの勝利》の制作がミラノ条約の前後とすると、もはやイタリア半島におけるオーストリアの優位は揺るぎなく、フランスの形勢逆転は望めなかった。
この状況で親仏勢力がプロパガンダを行ったところで無益だろう。したがって《時と悟りの勝利》は、もはや本来の教戒的な作品として、ごく控えめに世に出て、そして埋もれるしかなかった。翌年の《復活》がローマ・カトリックが総力を挙げて、教皇のそして教会の権威の復活を復活祭当日に華々しく誇示したのとのは真逆である。

想像を逞しくして推測するならば、パンフィーリが作品の構想を立て台本を書き始めたのは、カルナチートで仏墺軍が戦っていた1706年4月の頃だったのではないか。フランス軍の優勢を受けてパンフィーリはプロパガンダ的作品を書き進める。しかし9月にオーストリアがトリノを包囲していたフランス軍を敗走させ、彼の目論見は外れた。
やがてドイツから才能豊かな青年がローマを訪れ、彼に音楽を書いてもらうことを決意するが、その時にはもうオーストリアの勝利が確定してしまっていた。

《時と悟りの勝利》プロパガンダ作品になり損ねた作品という見方はできないだろうか。
そしてそれは、この作品に政治的仄めかしが見て取れながらもそれが不徹底であるという性格の理由でもあるのかもしれない。

音楽

※普請中※

あらすじ

第1部

第2部

対訳付き音楽設計図

登場人物

Bellezza
ソプラノ
soprano

喜び
Piacere
ソプラノ
soprano

悟り
Disinganno
コントラルト
contralto


Tempo
テノール
tenore

日本語訳は極力文学的な色づけをせず、分析的な直訳にしてある。

台本は、クリストファー・ソコロフスキ Christopher Sokolowski 校訂のクリティカルエディションに掲載されている歌詞と一致させている。

Sonata dell'overtura

4/4
D major
72小節から90小節(この箇所の末尾)まで adagio の指示が付いており、ここが事実上 緩 の役目をしている。


3/8
D majoar
前半 91―109小節 リピート
後半 110―129小節 リピート

PRIMA PARTE
1.
Aria

Bellezza

3/8
a minor
BELLEZZA

Fido specchio, in te vagheggio忠実な鏡よ、私は おまえの中に うっとりと眺めている
lo splendor degli anni miei,私の 年齢の輝きを、
pur un dì mi cangerò.けれども 私は いつか 変わるのだろう。

Tu sarai sempre qual sei,おまえは これからもずっと おまえが あるままに あるだろう【≒ おまえは これからもずっと 忠実な鏡で あるのだろう】
io qual sono in te mi veggio,私は おまえの中に 私を 見る 私が あるがままに【≒ 私は おまえに映る ありのままの自分を 見る】
sempre bella non sarò.【そして】 私は いつまでも 美しくは ないだろう。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
(C major)
PIACERE喜び
Io che sono il Piacere私は その者は 喜び である
giuro, che sempre sarai bella.誓約する、君は これからもずっと 美しいであろう と。

BELLEZZA
Ed io, ioそして 私は、
che sono la Bellezza,美である 【↑】私は、
giuro di non lasciarti.誓約する 君を 捨てることはない と。
E se manco di fede,そして 私が 誠意を 欠く 時には、
importuno dolor sia mia mercede.しつこい苦痛が 私の報いに なるように。
2.
Aria



3/4
e minor
PIACERE喜び

Fosco genio e nero duolo曇った精神は そして 暗い悲しみは
mai non vien per esser solo,単独であるとしては まったく 来ない、
perché un sol mille ne fa.なぜならば 唯一つが それらの千を 作る からだ【≒ 暗い気持ちや ひどい悲しみが それ単独で 襲うことは ない、なぜなら それらは たった一つでも 千に 増幅する からだ】

Chi l'impero lor non toglieそれらの支配権を 取り除かない者は
dal pensiero,思いから、
giorno lieto non avrà.喜びの日を 持たないだろう【≒ それらの絶対的な支配を 思いから 追い払えない者は、喜びの日を 得ることは できないだろう】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
Ed io che il Tempo sono.そして 私は その者は 時である。

DISINGANNO悟り
unito al Disinganno,悟りと 一致して

TEMPO
discoprirò, che la Bellezza è un fiore明らかにするだろう、美は 一輪の花であることを

DISINGANNO悟り
che in un sol giorno è vago e bello, e muore.それは たった一日だけ 優雅で美しく、そして 死ぬ。
3.
Aria

Disinganno

3/4
c minor
DISINGANNO悟り

Se la bellezzaもし 美が
perde vaghezza,優美さを 失っ 【↑】たら、
se cade o more,もし それが【≒ 美が】 倒れたら あるいは 死んだら、
non torna più.それは もう 【元には】 戻らない。

E un sol momentoそして 一瞬だけ
ride contento満ち足りて笑う
il vago fiore優雅な花は
di gioventù.青春の【≒ 若さという 美しい花が 喜びに溢れて 笑うことができるのは ほんの一瞬でしかない 】
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
(C major)
PIACERE喜び
Dunque si prendan l'armi,だから 武器が 手に取られるように【≒ 武器を 手に取ろう】

BELLEZZA
e si vedrà quali più forza avranno:そして 見られるだろう どれらが もっとも大きな 力を 持つであろうか:

PIACERE喜び
il Piacer,喜びが、

BELLEZZA
la Bellezza,美が、

TEMPO
Il Tempo,時が、

DISINGANNO悟り
Il Disinganno.悟りが。
4.
Aria

Bellezza

4/4
A major
BELLEZZA

Una schiera di piaceri喜びたちの 部隊を
posi in guardia ai miei pensieri,私は 私の思いの 警備に 据えた【≒ 私は 私の思いを 警護するよう 喜びの軍隊を 配置した】
l'altra meco pugnerà.別ものは【= 別の部隊は】 私と共に 戦うだろう。

Si vedrà見るだろう
se del Tempo i morsi alteri時の 尊大な 噛むことが
san rapir la mia beltà.私の美しさを 奪うことが できる 【↑】かどうか を。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

se del Tempo i morsi alteri
morso は 噛むこと という意味。転じて 攻撃 などの意味に用いられ、ここでもそうした意味合いはあるのだが、第5番のアリアで分かるようにここは 噛むこと のままにしておく。

Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
I colossi del sole太陽【神】の 巨像たちは
per me caddero a terra,私によって 地に 倒れた、
e una frale beltà meco fa guerra?それでも 壊れやすい美が 私に対して 戦いをするのか?
I colossi del sole
ここでの sole は、太陽神 すなわちローマ神話におけるアポロン(ギリシャ神話におけるヘリオス)を意味する。colosso del sole は太陽神を象った巨大な像のこと。ギリシャ南部、ロドス島にあったヘリオスを象った巨像が有名。ただしここでは複数形なのでロドス島の巨像そのものを指しているわけではない。

5.
Aria

Tempo

4/4
f minor
TEMPO

Urne voi, che racchiudeteおまえたち 【骨】壺たちよ、おまえたちは 収めている
tante belle,たくさんの美たち【の 遺骨】を、
apritevi, 開きなさい
mostratemi私に 見せなさい
se di quelleそれらの
qualche luce in voi restò.いくらかの光が おまえたちの中に 残った かどうか【≒ 骨壺の中に 美たちの かつての輝きが 多少でも 残った のかどうか 私に 見せなさい】

Ma chiudetevi!だが 閉まりなさい!
Sono larve di dolore,それらは【= 美たちは】 【今や】 悲しみの亡霊だ【≒ 悲痛な亡霊だ】
sono scheletri d'orrore,恐怖の骸骨だ【≒ 恐ろしい 骸骨だ】
ch'il mio dente abbandonò.それらを 私の歯が 捨てた。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

ch'il mio dente abbandonò.
これは、第4番のアリアで美が言う
del Tempo i morsi alteri / san rapir la mia beltà.
時の 尊大な 噛むことが / 私の美しさを 奪うことが できる
と対応している。骨壺の中に収まっているのは、時が美に齧りついて貪り食った残り。

Recitativo

4/4
(C major)
PIACERE喜び
Sono troppo crudeli i tuoi consigli:君の忠告は あまりにも 残酷だ:
di gioventù solo i piaceri son figli.喜びは ただ 青春の子たちである だけだ。
6.
Duetto

Bellezza
Piacere

4/4
G major
BELLEZZA E PIACERE美 と 喜び

Il voler nel fior degl'anni年齢の花にあって
fra gli affanni苦悩の中で
passar l'ore è vanità.時を過ごす 【↑↑】意志は 無益だ【≒ 若い盛りに 苦しんで 時を過ごそうと思うなんて 無意味なことだ】

I pensieri più severi最も厳しい考えは
son del verno dell'età.年齢の冬のものだ【≒ そんな 極めて厳しい考えは 老齢になってからすることだ】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
(C major)
DISINGANNO悟り
Della vita mortale人間の人生の
scorre un guardo il confine.境界を 視線が 滑る【≒ 人生の果ては 一目で 見ることができる】
Pur di tempo sì breveけれども これほどに 短い時の
voi l'aurora vedete e non il fine.夜明けの光を 君たちは 見ている そして 終わり ではない【≒ にもかかわらず 君たちは これほどに短い人生の 若い頃にしか 目を向けておらず 老いた頃を 見ようとしていない】

BELLEZZA
Il tempo non si vede,時は 見られない【≒ 時を 見ることは できない】
nacque per gioco sol di folle arcieroそれは 狂気の射手の 戯れで 生まれた【≒ 時は 頭のおかしい射手が 【時の矢を】 戯れに 射ることで 生まれた】
et è solo crudel per chi gli crede.そして それは それを 信じる者に対してのみ 残酷である。
scorre un guardo il confine.
この scorrere は 自動詞 流れる,滑る を他動詞として用いている(scorrere は他動詞でも用いられるが意味が合わない)。一瞥が 人生の境界を 滑る ≒ 人生の果てを 一瞥する。

7.
Aria

Bellezza

4/4
g minor
BELLEZZA

Un pensiero nemico di pace平和に 敵対する 考えが
fece il Tempo volubile edace貪欲で 気の変わりやすい 時を 生み出した
e con l'ali la falce gli diè.そして それは【= 平和に 敵対する 考えは】 翼と共に 彼に【= 時に】 大鎌を 与えた。

Nacque un altro leggiadro pensiero別の 優美な考えが 生まれた
per negare sì rigido impero,それほどに 過酷な 絶対な権力を 否定するために【≒ それほどの 残忍な支配力を 打ち消すために】
onde il Tempo più tempo non è.それによって 時は もう 時では なくなる。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

このアリアは、第5番の時のアリアに対する美の反論である。常に変わり続け volubile 貪欲にあらゆるものを飲み込む edace 時は、変わることなく永遠に美しくありたい美にとって宿敵である。

e con l'ali la falce gli diè.
大鎌 falce は、死神が命を刈り取る道具。

Nacque un altro leggiadro pensiero
altro leggiadro pensiero は 喜び を指すのではないだろうか。

Recitativo

4/4
(C major)
DISINGANNO悟り
Folle, tu nieghi il Tempo, et in quest'ora狂気だ【≒ 愚か者め】、君は 時を 否定している、けれども 【今】この時に【も】
egli di tua beltà parte divora.彼は【= 時は】 君の美の一部を 貪り食っている。
Dimmi! degli avi tuoi ora che resta?私に 言いなさい! 君の祖先たちにおいて 今 何が 残っているのか?
Restano l'ossa algenti,冷たい骨が 残っている、
che cela un'urna breve, un freddo sasso.それらを 短い【≒ 小さな】 【骨】壺が 隠している、冷たい【墓】石が 【隠している】
Degli anni tuoi già spenti,既に 消えた 君の年々において、
dimmi, che ti rimane?私に 言いなさい、何が 君に 留まっているのか?
Oh folli inganni:ああ 狂気の思い違いだ【≒ 愚かな勘違いだ】
La beltà non ritorna, e tornan gli anni!美は 戻ることはない; そして 年々は 戻る【≒ 歳月は 再び巡って来るが、美は 戻ることはない】

PIACERE喜び
Il tempo sempre all'uomo è ingrato oggetto.時は 人間にとって 常に 不愉快な対象だ。

BELLEZZA
Con ingegnosa frode,巧妙な欺瞞で、
quando a lui non si pensa, allor si gode.彼について【= 時について】 考えなければ、その場合は 楽しむ【≒ うまいことごまかして、時を 気にしなければ、享楽することができる】
8.
Aria

Tempo

3/8
G major
TEMPO

Nasce l'uomo ma nasce bambino,人間は 生まれる しかし 赤子が 生まれる【≒ 人は 赤ん坊で 生まれる】
nasce l'anno ma nasce canuto.年は 生まれる しかし 白髪で 生まれる【≒ 年は 老人で 生まれる】

Uno è sempre al cader più vicino,一方は 常に 落ちることに より近い【≒ 人は 常に 死の間際に 生きている】
l'altro sorge dal tempo caduto.他方は 落ちた時から 昇る【≒ 年は 過ぎ去った時から 生まれ出る】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

9.
Aria

Disinganno

3/8
D major
DISINGANNO悟り

L'uomo sempre se stesso distrugge,人間は 常に 自分自身を 破壊する、
l'anno sempre se stesso rinova.年は 常に 自分自身を 新しくする。

Uno parte, ma torna se fugge,一方は 去る、しかし 急いで立ち去っても 【また】 戻って来る、
l'altro parte, ma più non si trova.他方は 去る、しかし もう 見当たらない【≒ 他方は 去ると もう 見付けられない】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
e minor
PIACERE喜び
Questa è la reggia mia:これが 私の王宮だ:
vagheggiami diviso in varie forme!私を うっとりと眺めなさい 分けられて 様々な形で【≒ 一つ一つに 様々な形で 私を 称賛しなさい】
Coronato di rose,薔薇の冠を戴いて、
mira, scolpito in bianco marmo eletto,見なさい、えり抜きの白い大理石に 彫られた、
leggiadro stuol di giovanetti erranti!さすらう 若者たちの優美な一団を!
Mira quello che dorme!あの男を 見なさい その者は 眠っている!
Ai papaveri unite,ケシと 結び付かれて、
l'edere fresche a lui fanno corona,新鮮なキヅタが 彼に 冠を 作っている【≒ 芥子の混じった 瑞々しい木蔦が 彼の冠になっている】
molle 'l crine e disciolto,柔らかな そして ほどけている 頭髪は、
che non si cangia o per pensier s'imbianca.それは 変化しない あるいは 思いによって 白くならない【≒ 柔らい 垂れ髪は 変わることなく また 心配で 白髪になることも ない】
Poi dalla parte mancaそれから 左の方に
ここで述べられている装飾にも何らかの意味があるはずだが、よく分からなかった。

vagheggiami diviso in varie forme!
vagheggiare は詩ではしばしば ammirare 賛美する,称賛する の意味で用いられる。
この diviso は形容詞の副詞的用法で、divisamente = separatamente 個々に,別々に、つまり 一つ一つ,それぞれに の意味で採った。喜びが披露する王宮の装飾品一つ一つに対して様々な形で称賛しなさい、という意味。


4/4
a minor
vedi il dolore in nera pietra espresso:見なさい 黒い石に 表現された 悲しみを:
col riso al labbro un bel garzon l'uccide!美しい少年が 唇に 笑みを浮かべ 彼を【≒ 悲しみを】 殺す!
L'altro ch'è presso a lui col fiero ciglio別の男が その者は 彼のそばで 厳しい目をして
guarda le soglie della reggia e dice:王宮の入り口を 見て そして 言う:
《ite, pallide cure, ite in esiglio!》「行きなさい、蒼白な悩みよ、追放へと 行きなさい【≒ 追放されなさい】!」
10.
Sonata e Recitativo



4/4
(D major)
[Recitativo]


4/4
D major
BELLEZZA
Taci! Qual sòno ascolto?静かにしなさい! 何の音を 私は 聞いているのか?
11.
Aria

Piacere

3/8
G major
PIACERE喜び

Un leggiadro giovinetto愛らしい若者が
bel diletto素晴らしい喜びを
desta in suono lusinghier.引き起こす 喜ばしい音で。

E vuol far con nuovo invitoそして 彼は 新たな魅力で させようと 欲している
che l'udito聴覚が
abbia ancor il suo piacer.また再び その喜びを 持つ 【↑】ように【≒ 彼は 新たな魅力で 耳が また 心地よくなるように させようとしている】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Un leggiadro giovinetto
この un leggiadro giovinetto は22歳のヘンデルを指していると考えられている。次項も参照に。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Ha nella destra l'ali,彼は【= 愛らしい若者は】 右手の中に 翼を 持っている、
anzi fa con la manoそれどころか 彼は 手で
opre più che mortali.人間を超えた行為を 【↑】成す【≒ 超人的な技を 披露する】
Ha nella destra l'ali,
第10番のソナタでのヘンデルの演奏の様子を表していると思われる。

12.
Aria

Bellezza
Allegro ma non troppo
4/4
B-flat major
BELLEZZA

Venga il Tempo e con l'ali funeste時は 来るがいい そして 死をもたらす翼で
tolga queste取り去るがいい これらの
care gioie in sì placide rive!大切な喜びを これほどに 平穏な 岸から。

Egli dorme o non ha più gli artigli,彼は【= 時は】 眠っている あるいは 彼は もはや かぎ爪を 持ってはいない、
no, non giovan tanti consigli,いいや、【時の】 たくさんの忠告は 役に立たない、
se per vivere mai non si vive.生きるために 生きていない ならば【≒ 人が ただ 生きる だけのために 生きている わけではない 場合には】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

tolga queste / care gioie in sì placide rive!
queste care gioie もヘンデルが披露した音楽を指すのだろう。
rive < riva 岸。ローマはテヴェレ川岸の都市なので、この rive はローマを意味する。

no, non giovan tanti consigli,
この consigli は、第6番の前のレチタティーヴォで喜びが言及する i tuoi consigli を受けており、つまり第5番の時のアリアの内容を指していると考えられる。

se per vivere mai non si vive.
mai は se の強調。

13.
Aria

Disinganno

3/4
F major
DISINGANNO悟り

Crede l'uom ch'egli riposi人間は 信じている彼が【= 時が】 休息している と
quando spiega i vanni occulti.彼が 秘めた翼を 広げている 時には。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。


4/4
d minor
Ma se i colpi sono ascosi,しかし 【時の】打撃が 隠されていても、
chiari poi sono gl'insulti.とはいえ 襲撃は 明らかである。
Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
Tu credi che sia lungi, e il Tempo è teco.君は 私が 遠く離れていると 思っている、しかし 時は 君と 共ににいる。

BELLEZZA
Piacere, io non t'intendo;喜びよ、私は 君を 理解していない;
meco sempre tu sei, misto d'affanno,君は 常に 私と 共にいる、苦悩と 混ざって、
e meco è sempro il Tempo e il Disinganno.そして 時と 悟りは 常に 私と 共にいる。

TEMPO
Quanto chiude la terra è il regno mio.この世が 収容している すべてのものは【≒ この世が 抱いている すべてのものは】 私の王国である。
Se me veder non vuoi,もし 君が 私に 会いたくないならば、
pensa di farti in cielo un'altra sede,天の 別の席に 向かうことを 考えなさい、
in cielo, ov'io non giungo,天の、そこに 私は 到達しない、
e dove bella eternità risiede.そして そこには 美と 永遠が 在住している。
Fa' di me miglior uso,私について より良い 利用を しなさい、
che, se il Piacer t'inganna,というのは、もし喜びが 君を 欺くならば、
con tardo pentimento遅過ぎる後悔で
mi chiamerai, et io dirò 《Non sento!》君は 私を 呼ぶだろう、そして 私は 「私は 聞かない!」 と 言うだろう 【↑】からだ【≒ というのは、喜びが 君を 欺いた時に 君が 遅まきながらも 後悔に暮れて 私のことを 呼んでも、私は 「私は もう 聞くことはできない」 と答えるだろう からだ】
14.
Aria

Tempo

3/4
g minor
TEMPO

Folle, dunque tu sola presumi狂人め【≒ 愚か者め】、それでは 君だけは 推測しているのか
che non voli più il Tempo per te?君ために 時は もう 飛ばない と【≒ では 君は 自分だけは 時が 飛ぶように過ぎていくことは ないと 思っているのか】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。


4/4
g minor
Vo per mari, per monti, per fiumi;私は 進む 海を抜けて、山を抜けて、川を抜けて;
chiuse rocche fra bellici orrori,戦争に関する恐怖の中に 閉ざされた 城塞を、
lieti alberghi di rozzi pastori粗野な【≒ 未開の】羊飼いたちの 喜ばしい家を
solo ardito trascorro col piè.私だけが 大胆に 足で 通過する。
Recitativo

4/4
(C major)
DISINGANNO悟り
La reggia del Piacer vedesti, or vieni!喜びの王宮を 君は 見た、今こそ 来なさい!

TEMPO
Chiedi piacer sincero,本物の喜びを 求めなさい、
vieni alla reggia ove risiede il vero!王宮に 来なさい そこに 真実が 存する!
15.
Quartetto

Bellezza
Disinganno
Piacere
Tempo

4/4
d minor
BELLEZZA
Se non sei più ministro di pene,もし 君が もう 苦悩の使者【≒ 苦悩を もたらす者】で ないならば、
per vedere ove è il vero piacere見るために 真の喜びが どこに あるのか
la tua scorta fedel seguirò.私は 君の付添いを 倣おう【≒ 私は 君に 従って ついて行こう】


PIACERE喜び
Non lasciare la strada fiorita,花で飾られた道を 去るでない、
tu non sai qual sentiero t'addita.君は 分かっていない どちらの道が 君に 【進むように】 示しているのか。

DISINGANNO E TEMPO悟り と 時
Se ti vanti piacere sincero,もし 君が 本物の喜びを 誇るならば、
perché fuggi lo specchio del vero?どうして 君は 真実の鏡を 避けるのか?

PIACERE喜び
Io preparo presenti contenti,私は 現在の満足を【≒ 今この瞬間の喜びを】 用意している、
e non offro un'immagin di beneそして 私は 幸福の像を 提供しない
ch'agli eroi per idea s'inventò.それは 英雄たちによって 作り出された【≒ 私は 立派な人たちが でっち上げた 仮想の幸福を 差し出しは しない】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式の四重唱。

SECONDA PARTE
Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
Se del falso Piacere誤った喜びの【≒ 人を騙す 喜びの】
vedesti già la favolosa scena,おとぎ話のような【≒ 幻想の】光景を 君が 既に 見たからには、
del teatro del vero真実の劇場の
ecco, il velo io descopro! Osserva, e mira,ほらここに、ヴェールを 私は 取る。じっと見なさい、そして 見詰めなさい、
mira colei che Verità s'appella:見詰めなさい 真実という名前である ところの女を:
vedrai che non s'adorna e sempre è bella!君は 見るだろう その女が 身を飾らず そして いつでも 美しい ことを!
Con bianca veste cinta,白い服で 纏われて、
mira come si volge al sole eterno,見詰めなさい どのように 彼女が 永遠の太陽に 向くのか を、
E quello specchio mira,そして あの鏡を 見詰めなさい、
che a frale sguardo ed all'uman pensieroそれは 壊れやすい視線に【≒ 不確かな目に】 そして 人間の思いに
il falso rende al falso, il vero al vero!偽物には 偽物を 返し、真実には 真実を【返す】
mira colei che Verità s'appella:
Verità が女性形なので colei ―するところの女性 を用いている。

16.
Aria

Piacere

3/8
D major
PIACERE喜び

Chiudi, chiudi i vaghi rai閉じなさい、美しい目を 閉じなさい
volgi lungi il tuo pensier!君の思いを 遠くへ 向けなさい!

O per sempre perderai,さもないと 君は 永久に 失うだろう
infelice, il tuo Piacer.不幸な者よ、君の喜びを。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

volgi lungi il tuo pensier!
この lungi は、このアリアの前のレチタティーヴォで 時 が述べる 真実 Verità から遠く離れて という意味だろう。つまり時の言うところの la favolosa scena 幻想の光景 を思い浮かべるよう誘っていると思われる。

Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
In tre parti divise3つの部分に 分けられた
l'ore del viver tuo misura e vedi,君の人生の時間を 評価しなさい【≒ 【過去、現在、未来と】 君の人生の時間を 3つに分けて よく見定めなさい】 そして 見なさい、
vedi il tempo caduto,落ちた時を【≒ 過ぎ去った時を ≒ 過去を】 見なさい、
vedi, ingrata, il rifiuto見なさい、恩知らずの女よ、
dei lumi eterni e vedi il proprio errore!永遠の光の【↑】拒絶を そして 見なさい 自分自身の 過ちを!
Vedi il presente che nascendo muore!見なさい 現在を それは 生まれながら 死ぬ【≒ 生まれると すぐに 死んでしまう 現在を 見なさい】
Di là dal denso velo濃いヴェールの向こうに
ove giace il futuro,そこに 未来が 横たわっている、
se il tuo guardo non scopre,たとえ 君の眼差しが 【ヴェールの】覆いを取らなくても、
il varco è aperto alla speranza, all'opre.抜け道は 希望に 開いている、行為に【≒ たとえ 君が 厚い幕を開いて その向こうに広がっている未来を 見ることができなくても、希望を持つことで、行動することで 未来への道は 開かれる】
l'ore del viver tuo misura e vedi,
この misurare は 評価する。評価するためにはよく見なくてはならない。

dei lumi eterni e vedi il proprio errore!
この lumi eterni 永遠の光 は複数形なので、天国へと導く光 を意味するのだろう。

17.
Aria

Bellezza
Adagio
4/4
b minor
BELLEZZA

Io sperai trovar nel vero私は 見つけることを 期待していた 真実の中に
il piacer, né il veggio ancora.喜びを、【けれども】 それを【= 喜びを】 私は まだ 見ていない。

Anzi il mio fato severoいやむしろ 私の 厳しい宿命は
si contrista alla sua vista悲しむ その【= 喜びの】姿に
e si perde o si scolora.すると それは 【= 喜びは】 消える あるいは 血の気を失う。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

e si perde o si scolora.
この si scolorare 色が褪せる は 顔色が蒼白になる,血の気を失う の意味。si predere 消える 共々 死ぬ の婉曲表現。

Recitativo

4/4
(C major)
PIACERE喜び
Tu vivi invan dolente:君は 虚しく 苦しんで 生きている:
se mi cerchi e mi chiami, io son presente.もし 君が 私を 探すならば そして 私を 呼ぶならば、私は 居る。
18.
Aria

Piacere

4/4
g minor
PIACERE喜び

Tu giurasti di mai non lasciarmi,君は 誓った 決して 私を 捨てることは ないと、
o il dolore che sia tua mercede.さもなければ 悲しみが それが 君の報い である。

Se risolvi di più non amarmi,もし 君が 決心するならば もう 私を 愛さないと、
sai la pena a chi manca di fede.君は 信頼を欠いた者の 処罰を 知る【≒ 君は 不誠実な者に対しての 罰を 受けるだろう】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Tu giurasti di mai non lasciarmi,
第1番の後のレチタティーヴォでの 美 の台詞を受けている。

Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
Sguardo che infermo ai rai del sol si volge眼差しは それは 弱々しく 太陽の光線に 向ける
non sostiene il gran lume,大きい【≒ 強い】輝きに もちこたえ【られ】ない、
incolpa il sole: ed è l'error dei sensi.それは【= 眼差しは】 【そのことを】 太陽のせいにする: だが それは 判断力の誤りだ。
Che risolvi? che pensi?君は 何を 決心するのか【≒ 君は どのような 決断を下すのか】? 君は 何を 考えるのか?
incolpa il sole: ed è l'error dei sensi.
この senso は 判断力 で採った。

19.
Aria e Recitativo

Bellezza
Adagio
3/8
c minor
BELLEZZA
Io vorrei due cori in seno,私は 胸の中に 二つの心を 欲しい、
un per darlo al pentimento,一つは それを 後悔に 与えるために、
al piacer l'altro darei.もう一つを 私は 喜びに 与えたい。
通作の A / B / Aの三部形式のアリア。A と B の間にレチタティーヴォが挟まれる。

pone in vista il mio contento
in vista 見えるように,見せるように。

[Recitativo]


4/4
(C major)
DISINGANNO悟り
Ma dimmi, a qual piacere?では 私に 言いなさい、どのような喜びに?
[Aria]

(Adagio)
3/8
c minor
BELLEZZA
Al piacer che più sereno喜びに それは より 晴れ晴れと
pone in vista il mio contento私の満足を 視界に 据える【≒ 私の喜びを よりはっきりと 私に 見えるようにしてくれる 喜びに】
di cui poi mi pentirei.その後に 私は それを【≒ 満足を ≒ 喜びを】 後悔するだろうが。

Io vorrei due cori in seno,私は 胸の中に 二つの心を 欲しい、
un per darlo al pentimento,一つは それを 後悔に 与えるために
al piacer l'altro darei.もう一つを 私は 喜びに 与えたい。
Recitativo

4/4
(C major)
DISINGANNO悟り
Io giurerei che tu chiudesti i lumi私は 断言したいのだが 君が 目を 閉じていた と
nello specchio del vero.真実の鏡の前で。

BELLEZZA
I lumi io chiusi,私は 目を 閉じた、
perché timor mi preseなぜならば 不安が 私を 捉えた からだ
di perder la bellezza e il mio piacere.美と 私の喜びを 失うという【不安が】

DISINGANNO悟り
Quanto l'alma è più bella魂が より美しい ように
della spoglia mortale,人の抜け殻よりも【≒ 人間の 肉体よりも 魂の方が 美しいように】
tanto a piacer terreno地上の喜びに
vero piacer prevale.真の喜びは 勝っている。
Io giurerei che tu chiudesti i lumi
この giurare は 断言する,証言する。

20.
Aria

Disinganno

4/4
B-flat major
DISINGANNO悟り

Più non curaもう 気を配らない【≒ 気にかけることはない】
valle oscura暗い谷を
chi dal monte saggio vede山から 賢明に 見る 者は
ch'ella siede in basso orror.というのは それは 低い暗黒に 位置している からだ【≒ 山の高みから 思慮深く 見る者は 暗い谷を 気に掛けはしない 谷は ずっと低い闇の中にあるからだ】

E d'averla un giorno amataそして かつて それを【= 谷を 女性単数名詞】 好きだったことで
è così l'alma sdegnata魂は 非常に 憤慨するので
che detesta il proprio error.自分自身の誤りを 憎悪する【≒ そして かつて 自分が 暗い谷を 好きだったことを思い出して 心は 自分の過ちを 憎むほどまでに 腹を立てる】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

ch'ella siede in basso orror.
この orrore は 暗闇。

Recitativo

4/4
(C major)
TEMPO
È un ostinato errore強情な 誤りだ
lasciar sicuro duce,信用できる指導者を 捨てることは、
che il piede errante a buon cammino ha scorto.その者は 横道に逸れた足を 良い道へと 付き添う。
Teco è Tempo e Consiglio, e presso è il porto.時と 悟りは 君と 共にいる、そして 港は【≒ 目的の地は】 近い。
21.
Aria

Tempo

4/4
B-flat major
TEMPO

È ben folle quel nocchierあの舵取りは とても無謀だ
che non vuoi cangiar sentierその者は 進路を 変えようとしない
e conosce il vento infido.そして 当てにならない風を 知っている【≒ 風が信用ならぬと分かっていながら 進路を変えようとしない舵取りは とても愚かだ】

Navicella, benché adorna,小舟よ、飾り立てられているけれど、
torna, torna,戻りなさい、戻りなさい、
fin ché hai tempo, torna al lido.おまえが 時間を 持っている 間は【≒ おまえに 時間が ある うちに】、岸に 戻りなさい。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Dicesti il vero, e (benché tardi) intesi.君は 真実を 言った、そして (遅れたけれども) 私は 分かった。
Ma pur nel mio cordoglio,しかし それでも 私の嘆きの中で、
con riflesso di duol voglio e non voglio.苦悩の反映をもって 私は 望む そして 私は 望まない【≒ しかし それでも 私は悩んで、苦悩に影響され、望みたくもあり 望みたくもない】
con riflesso di duol voglio e non voglio.
ここでの volere は、おそらく第21番のアリアで時が言う che non vuoi cangiar sentier を受けていると思われる。進む道を変えたいと思いつつ変えたくないとも思っている といった意味。

22.
Quartetto

Bellezza
Disinganno
Piacere
Tempo

3/8
d minor
BELLEZZA
Voglio Tempo per risolvere.私は 決心のための 時間が 欲しい。

TEMPO
Teco è il Tempo.時は 君と 共にある 

DISINGANNO悟り
... ed il Consiglio,… そして 忠告は、

PIACERE喜び
Ma il consiglio è il suo dolor.しかし 忠告は 彼女の苦悩だ。


TEMPO
Pria ch'io te converta in polvere,私が 君を 【遺】灰に 変化させる よりも 前に、
segui il ben!善に 従いなさい!

DISINGANNO悟り
Fuggi il periglio!危険を 避けなさい!

PIACERE喜び
Tempo avrà per cangiar cor.心を 変えるためには 時間が かかるだろう。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式の四重唱。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Presso la reggia ove il Piacer risiede,王宮の傍に そこに 喜びが いる、
giace vago giardino.美しい庭園が ある。
Ivi torbido rio si muove appenaそこに 濁った小川が 僅かに【≒ とてもゆっくりと】 動いている
per aura densa a grave.重苦しく濃い 大気を抜けて。
Dimmi! quel rio donde deriva?私に 言いなさい! その小川は どこに 源を持っているのか?

DISINGANNO悟り
Ascolta! deriva da quei pianti聞きなさい! それは あれらの涙に 源を持っている
che sparge il mondo insano.それらを 正気でない この世が 零している。
E formano quell'auraそして あの大気を 生み出している
gravi e densi sospir' di folli amanti.狂気の【≒ 愚かな】恋人たちの 重苦しい そして 濃い 溜息が。

BELLEZZA
Giunge quel rio nel mar?あの小川は 海に 達するのか?

DISINGANNO悟り
Manca per via,それは 途中で 失敗する、
perché il suo fine e il buon sentiero oblia.なぜなら それは その目的を そして 正しい道を 忘れるからだ。

BELLEZZA
Ed il pianto de' giusti?それで 正義の涙は?

DISINGANNO悟り
Ha stille che in vederleそれは 雫を 持っている それらは それらを 見る時
sembrano vili, e pure in ciel son perle.つまらない ように 見える、けれども 天では それらは 真珠だ。
23.
Aria

Piacere

3/2
F major
PIACERE喜び

Lascia la spina,棘を 放っておきなさい、
cogli la rosa,薔薇を 摘みなさい【≒ 棘には 触れずに 薔薇の花を 摘み取りなさい】
tu vai cercando君は 求めようとしつつある
il tuo dolor!君の苦痛を!

Canuta brina白い霜は
per mano ascosa隠された手によって
giungerà, quando届くだろう、
nol crede il cor.心が そのことを 信じていない 【↑】時に【≒ 髪の毛は 知らぬ間に 白髪で 覆われるようになるだろう 】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Lascia la spina, / cogli la rosa,
この2行はイタリアの諺 Cogli la rosa e lascia star la spina. に基づいている(歌詞のように star を欠く場合もある)。lasciare stare は (物に)触れないでおく という意味で、
棘には 触れないようにして 薔薇を 摘み取りなさい。
つまり、ある物の好ましいところだけを取って嫌なところには手をつけるでない という意味。したがってここでの歌詞は 人生の嫌なこと苦しいことには手を出さず悦楽だけを得よ といった意味になる。

tu vai cercando / il tuo dolor.
この場合の andare + ジェルンディオ の進行形は、動作や状態の経過を強調している ―しつつある。美が時と悟りの説得を受け入れつつあることを、喜びが 君は 苦痛を求めつつある と非難している。
dolore には、棘に触れる痛み と 宗教的な悔い改めの痛み(カトリックには 痛悔の祈り atto di dolore という言葉がある)の両方が掛けられていると思われる。

Canuta brina per mano ascosa
brina は 霜 の意味だが、転じて 髪に白髪が目立ち出した様子 も表す。canuto は一般的に髪の毛に対して 白い として用いられる(canuto は第8番の時のアリアでも 白髪 の意味で用いられている)。したがって canuta brina は 白髪 と訳す方が正解なのだが、この詞では薔薇が霜で覆われる姿を老いる様子に喩えている趣旨から 白い霜 で訳した。知らぬ前に白髪の初老になっているぞ、若く楽しい頃は長くはないぞ という警告。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Con troppo chiare note非常に はっきりした口調で
la verità mi chiama.真実が 私を 呼んでいる。
Disinganno cortese,親切な 悟りよ、
dello specchio del vero真実の鏡の
deh, fa' ch'io veggia un'altra volta il lume!光を もう一度 私が 見る ように お願いだから、させなさい!

DISINGANNO悟り
Eccolo, è pronto!ほら それが ここに、用意はできている!

BELLEZZA
Addio, Piacere, addio.さようなら、喜びよ、さようなら。
24.
Aria

Bellezza
Andante larghetto
4/4
A major
BELLEZZA

Voglio cangiar desio私は 願いを 変えたい
e voglio dir 《mi pento》,そして 「私は 後悔している」 と 言いたい
non dir 《mi pentirò》.「私は 後悔するだろう」とは 言いたくない。

Quando mancar mi sento私が 死ぬと 感じる時に【≒ 私が 死を 目前にした時に】
non voglio dar a Dio私は 神に 与えたくない
quello che più non ho.もう 私が 持っていない ものを。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

A の前奏と後奏で presto / adagio / tempo Ⅰ と速度が動く。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Or che tiene la destra今や 右手が 掴んでいる からには
vero specchio immortale,真実の 永遠の鏡を、
tu cadrai, vetro frale,おまえは 落ちるだろう、脆いガラス製品よ、
ecco, ti getto, infido specchio, a terra.ほら、私は おまえを 放り投げる、不誠実な鏡よ、地面に。

PIACERE喜び
Ferma!止めなさい!

DISINGANNO悟り
Che tenti, ardito?君は 何を 試みているのか、向こう見ずな男よ?
tu cadrai, vetro frale, / ecco, ti getto, infido specchio, a terra.
vetro frale と infido specchio は、どちらも 偽りの 永遠の鏡 を指している。これを左手に持っているということだろう。

Che tenti, ardito?
aridito が男性単数形なので、これは 喜び Piacere に対して言っている。

25.
Aria

Disinganno

3/8
g minor
DISINGANNO悟り

Chi già fu del biondo crineかつて 金髪の頭髪の【≒ 美の】
consigliero al suol cadrà.助言者 【↑】だった者は 地に 落ちるだろう。

Soffra pur le sue ruine,どうか 彼が 彼の破滅を 苦しむように、
se sovente egli compose彼が しばしば
con i gigli e con le rose百合と共に そして 薔薇と共に
tanti inganni alla beltà.たくさんの欺瞞を 美に 【↑↑】作った以上は。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Chi già fu del biondo crine
このアリアに続くレチタティーヴォで、美は自分の髪を 金髪 chiome bionde と言っている。

Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Ma che veggio? che miro?ところで 私は 何を 見ているのか? 私は 何を 見詰めているのか?
Io credea d'esser bella, e son deforme.私は 美しくあったと 思っていた、しかし 私は 醜い。
Nelle mie chiome bionde私の金髪の頭髪に
con catene di rigidi serpenti硬いヘビの鎖のある 【頭髪に】
la vergogna, il dolore;【私は 見ている】 恥を、悔恨を【≒ 硬いスネークチェーンを戴いた 私の金髪に 私は 恥を、悔恨を 見ている】
moran nei miei pensieri i miei contenti.私の満足は【≒ 私の喜びは】 私の思いの中で 消えるだろう。
Sì, sì, cadete a terra,そうだ、そうだ、地に 落ちなさい、
ricche pompe del crine!髪の毛の 豪華な虚飾よ!
Sia questo giorno ai miei deliri il fine.この日が【≒ 今日が】 私の狂乱の 終わりで あるように。
moran nei miei pensieri i miei contenti.
moran = morranno = moriranno。

con catene di rigidi serpenti
catene di serpenti 英語で snake chain、目の詰まった、蛇の胴体のようにしなやかな鎖(で作られたネックレスなどの装飾品)。キリスト教では蛇は邪悪の象徴とみなされる。

26.
Aria

Bellezza
Poco adagio
3/8
G major
BELLEZZA

Ricco pino豪華な 松は【≒ 船は】
nel cammino航路にある
getta al mare e gemme ed ori,海に 投げる 宝石も 金も、
se a lui sono inciampo al piè.それらが それの足に 邪魔である時には【≒ 航行中の豪華な船は 宝石や黄金が 航行の支障になる時には それらを 海に 投げ捨てる】

I tesori宝を
trova allor ch'egli disperde:それは【≒ 船は】 見付ける それが【≒ 船が】 【宝を】 追い払うや否や:
ad un legno che si perde【≒ 船】にとって それは 迷っている
trovar porto è gran mercè.港を 見付けることは 大きな報酬だ【≒ 船は 宝を 捨てても すぐに 別の宝を 見付ける: つまり 難破しかけている船にとって 港を見付けることは 大きな報酬なのだ】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Ricco pino
この pino 松 は 船 を意味する。松の木で船が作られたことから。

I tesori / trova allor ch'egli disperde:
宝物を捨て去る代わりに港に到着するという宝を得る という意味。美が 豪華な虚飾 ricche pompe を捨てて天国へと向かうことを示している。

ad un legno che si perde
この legno 木 も 船 を意味する。

27.
Accompagnato



4/4
(C major)
BELLEZZA
Si, bella penitenza,そうだ、美しい改悛よ、
mentre io spargo pentita amaro pianto,私が 後悔して 苦い涙を 溢す 時に、
porgimi irsuto ammanto!私に 粗野なマントを 提供しなさい!
E mentre io getto i fior, dammi le spine!そして 私が 花々を 投げ【捨て】る 時に、私に 棘を 与えなさい!
In romito confine孤独の境界で【≒ 人里離れた辺境で】
vivrò ma sempre sola,私は 生きよう そして ずっと 一人で、
che deve solo in solitari chiostri,というのは ただ 孤立した囲い地で のみ
mostro di vanità viver fra i mostri.虚栄心という怪物は 怪物たちの間で 生きる 【↑】なくてはならない 【↑】からだ【≒ 虚栄心という魔物は、同じような魔物たちと一緒に、孤立した閉ざされた場所でしか 生きられないからだ】
che deve solo in solitari chiostri, / mostro di vanità viver fra i mostri.
chiostro は修道院における 回廊に囲まれた中庭 を意味する語だが、転じて 柵や塀、壁などで囲われた場所 も意味するようになった。
虚栄心は、同じように虚栄心を持った人たちが閉鎖的に集まることでのみ生じるので、美は 人里離れた辺境でずっと一人で生きよう と言っている。

28.
Duetto

Disinganno
Tempo

4/4
a minor
DISINGANNO E TEMPO悟り と 時

Il bel pianto dell'aurora,夜明けの 美しい涙は
che s'indora,それは 金色に染まる、
è una perla in ogni fior.あらゆる花の真珠である【≒ 金色に輝く 美しい朝露は あらゆる花にとって 真珠である】

Pur men grato è quell'umoreけれども その水分は より少なく 心地よい
di quel pianto che in un coreその涙よりも それは 【↓】既に 悔いている 心の中で
già pentito apre il dolor.悲しみが 開けている【≒ けれども 朝露の雫よりも 既に 後悔に暮れている心の中で 悲しみが 呼び起す 涙の方が 尊い】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式の二重唱。ダ・カーポした後、リトルネッロに続く。

Ritornello


4/4
a minor
Recitativo

4/4
(C major)
BELLEZZA
Piacer, che meco già vivesti, il vero喜びよ、その者は 私と共に かつて 生きた、真実を
tu mira ancora in questo specchio o vola君は もう一度 この鏡で 見詰めなさい さもなければ 飛んで行きなさい
sì lontano da me,私から とても 遠くに、
che del tuo vil natale君の卑しい生まれの
io mai più non rammenti il quando, il come時間を、手段を 私が もう 決して 思い出さない 【↑】ほどに 【遠くに】
e di te perda e la memoria e il nome.そして 私が 君の 記憶も 名前も 失う 【↑↑】ほどに 【遠くに】
29.
Aria



3/4
G major
PIACERE喜び

Come nembo che fugge col vento黒雲のように それは 風と共に 急いで立ち去る
da te fuggo sdegnato e severo.私は 君から 急いで立ち去る 憤慨して そして 激烈に。
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

da te fuggo sdegnato e severo.
この severo は furioso に近く用いられているのだろう。sdegnato e severo で 激怒して の意味になっている。


4/4
G major
Se l'inganno è il mio solo alimento,欺瞞が 私の 唯一の 糧 であるからには、
come viver io posso nel vero?真実の中で 私は どうやって 生きることが できるというのだろうか?
30.
Accompagnato



4/4
E major
BELLEZZA
Pure del cielo intelligenze eterne,清い 天の 永遠の 賢明な人たちよ、
che vera scuola a ben amare aprite,その者たちは 良く愛するための 真の学校を 開いている、
udite, angeli, udite il pianto mio!聞きなさい、天使たちよ、私の涙を【≒ 私の嘆きを】
E se la verità dal sole eternoそして 真実が 永遠の太陽から
tragge luce immortale e a me lo scopre,不滅の光を 引き出し そして 私に それを 見えるようにする 【↑】ならば、
fate che al gran desio rispondan l'opre.行為が 大きな願いに 合致するように させなさい【≒ 私の行いが 私の大きな願いに 相応しくなるように しなさい】
31.
Aria

Bellezza
Adagio
4/4
E major
BELLEZZA

Tu del ciel ministro eletto天の 選り抜きの使徒である 君は
non vedrai più nel mio pettoもう 私の胸の中に 見【ることは】ないだろう
voglia infida o vano ardor.信用の置けない欲求【≒ 不誠実な欲望】や 虚しい熱情を。

E se vissi ingrata a Dio,そして たとえ 私が 【今まで】 神に 忘恩に 生きたとしても、
tu custode del cor mio私の心の守衛である 君は【≒ 私の心を 守っている 君は】
a lui porta il nuovo cor.彼に 新しい心を 持って行く【≒ 神の元に 更生した 私の心を 運ぶのだ】
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。

Appendice
Recitativo

4/4
(C major)
PIACERE喜び
Questa è la reggia mia:これが 私の王宮だ:
vagheggiami diviso in varie forme!私を うっとりと眺めなさい 様々な形に 分かれて【≒ 一つ一つに 様々な形で 私を 称賛しなさい】
Coronato di rose,薔薇の冠を戴いて、
mira, scolpito in bianco marmo eletto,見なさい、えり抜きの白い大理石に 彫られた、
molle 'l crine e disciolto,柔らかな ほどけた頭髪を、
leggiadro stuol di giovanetti erranti!さすらう 若者たちの優美な一団を!
Poi dalla parte mancaそれから 左の方に
vedi il dolore in nera pietra espresso:見なさい 黒い石に 表現された 悲しみを:
col riso al labbro un bel garzon l'uccide!美しい少年が 唇に 笑みを浮かべ 彼を【≒ 悲しみを】 殺す!
L'altro ch'è presso a lui col fiero ciglio別の男が その者は 彼のそばで 厳しい目をして
guarda le soglie della reggia e dice:王宮の入り口を 見て そして 言う:
《Ite, pallide cure, ite in esiglio!》「行きなさい、蒼白な悩みよ、追放へと 行きなさい【≒ 追放されなさい】!」

参考資料

HÄNDEL La Bellezza Ravveduta nel trionfo nel Tempo e del Disinganno Oratorio in due parti HMV 46a Klavierauszug nach dem Urtext der Hallischen Händel-Ausgabe von Christopher Sokolowski / BA 10721-90 / ISMN 979-0-006-56868-0 / 9790006 568868




Blu-ray Disc
ERATO
0190295819293

DVD
ERATO
0190295819361

BellezzaSabine Devieilhesoprano
PiacereFranco Fagiolisoprano
DisingannoSara Mingardocontralto
TempoMichael Spyrestenore

Le Concert d'Astree direction musicaleEmmanuelle Haïm

Mise en scèneKrzysztof Warlikowski
Décors et costumesMałgorzata Szczęśniak
DramaturgeChristian Longchamp
LumièreFelice Ross
Video
Denis Gueguin

July 2016
Théâtre de l'Archevêché, Aix-En-Provence, Bouches-du-Rhône, France

今のところ唯一の舞台上演の映像。


BellezzaLucy Crowesoprano
PiacereAnna Stephanymezzosoprano
DisingannoHilary Summerscontralto
TempoAndrew Staplestenore

Early Opera Company
directed byChristian Curnyn

29 January 2010
Wigmore Hall, London, UK

ルーシー・クロウを始め歌手もよく、クリスティアン・カーニンの指揮も上々だが、ライヴ録音で音が遠めなのが惜しい。

CD
hyperion
CDA67681/2

BellezzaRoberta Invernizzisoprano
PiacereKate Aldrichmezzosoprano
DisingannoMartin Orocountertenor
TempoJörg Dürmüllertenore

Academia Montis Regalis
Alessandro De Marchiconductor

June 2007
Oratorio Santa Croce, Mondovi, Italy

アレッサンドロ・デ・マルキの指揮は全体にゆったりとした懐の大きなもの(ただし第16番はびっくりするほど速いが)。伴奏がなかなか凝っており、第3番の少しずらした合いの手など絶大な効果を上げている。
歌手は、古楽専門のロベルタ・インヴェルニッツィも古楽兼業のケイト・オールドリチも上々。テノールのイェルク・デュルミュラーがやや弱い。

CD
Virgin CLASSICS
0946 3 63428 2 5

BellezzaNatalie Dessaysoprano
PiacereAnn Hallenbergmezzosoprano
DisingannoSonia Prinaalto
TempoPavol Bresliktenore

Le Concert d’Astrée
Emmanuelle Haïmharpsichord, organ; direction

9-14 March 2004, 12-19 January 2006
Ircam, Paris, France

録音が2つの時期に分かれているが、この間の2005年3月5日にエマニュエル・アイムとル・コンセール・ダストレは美にヴェロニカ・カンヘミ / カンジェミ Veronica Cangemiを起用した(他3役は共通)演奏会をロンドンのバービカン・ホール Barbican Hall で行っていた。
アイムの指揮は速いところは速くゆっくりなところはかなり遅くとメリハリの利いたもの。またダ・カーポ後の装飾が豊かで楽しませる。
歌手ではアン・ハレンベリが圧倒的に素晴らしい。ヘンデルを得意とするハレンベリにしてもこれは特筆すべきものだろう。ナタリー・デュセを投入したのは間違いなく豪華だが、バロック専門の歌手たちとバロックも歌う歌手たちの間で微妙な色合いの差が出来てしまったようにも思う。

CD
naïve
OP 30321

BellezzaDeborah Yorksoprano
PiacereGemma Bertagnollisoprano
DisingannoSara Mingardocontralto
TempoNicholas Searstenore

Concerto Italiano
Rinaldo Alessandrini

September 2000
Villa Mondragone, Monteporzio Catone, Italy

リナルド・アレッサンドリーニの指揮は全体に柔らかく上品なもの。歌手では特にデボラ・ヨークの透明な美しさが映えている。他の3人も高水準。
ダ・カーポの後の装飾は控えめ。

CD
ERATO
2292-45351-2
BellezzaIsabelle Poulenardsoprano
PiacereJennifer Smithsoprano
DisingannoNathalie Stutzmanncontralto
TempoJohn Elwestenore

Les Musiciens du Louvre
Marc Minkowski

March 1988
Auditrium du Centre des Congrès d'Aix-les-Bains, France

確認していないがこれが《時と悟りの勝利》の世界初録音ではないだろうか。
マルク・ミンコフスキ25歳の時の最初期の録音。さすがにミンコフスキに後の強い個性はまだ薄いが、しかし 栴檀は双葉より芳し と言うに値する立派な出来栄えである。この録音は評判となり、ミンコフスキと創立6年のル・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの中を高めた。
歌手はジェニファー・スミスがやや劣るが、イザベル・プルニャール、ジョン・エルウィスと当時の実力ある古楽歌手が揃い、そしてまだ22歳だったナタリー・シュトゥッツマンの瑞々しくも深々とした低音が素晴らしい。
ダ・カーポ後の装飾などはごく控えめ。
なおミンコフスキはこの16年後の2004年2月にチェチーリア・バルトリと喜びの2曲のアリア、Un pensiero nemico di pace と Come nembo che fugge col vento をアリア集用に録音しており、遥かに充実した音楽を聞かせてくれる。