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最新更新 2024年05月17日
無断転載 厳禁
GEORGE FRIDERICK HANDEL
DEIDAMIA
HWV 42
初演 1741年1月10日 ロンドン、リンカーンズ・イン・フィールズ劇場
first performance 10 January 1741, Lincoln's Inn Fields Theatre, London
台本作家 パオロ・ロッリ
Librettist Paolo Rolli
原作
Original
《デイダミーア》は、ヘンデルが制作した最後のイタリアオペラである。同じシーズンに先行して上演された《イメネーオ》と共に、ヘンデルのイタリアオペラの末尾に位置する作品である。
作曲
ヘンデルは、1739/40年シーズンに続き、1740/41年シーズンのためにリンカーンズ・イン・フィールズ劇場を借り受けた。前シーズンでは新作イタリアオペラはなかったが、このシーズンでは2つの新作イタリアオペラが上演されることになった。その2作目が《デイダミーア》である。
台本作家はパオロ・ロッリ Paolo Rolli 1687―1765。1716年にロンドンに移り、ジョージ2世の王妃キャロラインのイタリア語教師を務めた。ちょうどロンドンでのイタリアオペラがブームになる頃だったので、彼は多くのイタリアオペラの台本を手掛けた。
1719年に立ち上げられた音楽王立アカデミー Royal Academy of Music では、ヘンデルに、《ムツィオ・シェヴォラ Muzio Scevola》 1721(ヘンデルが受け持ったのは第3幕のみ),《イル・フロリダンテ Il Floridante》 1721、《シピオーネ Scipione》 1726、《アレッサンドロ Alessandro》 1726、《リッカルド1世、イングランドの王 Riccardo primo, Re d'Inghilterra》 1727 の台本を提供した。
しかし1728年にアカデミーが破綻すると、二人は疎遠になる。さらにロッリは、1733年に貴族オペラ Opera of the Nobility(第2次アカデミーの対抗団体)が立ち上がると、ロッリはこちらに加わった。この時期ロッリとヘンデルは険悪な仲だったとも伝えられる。《デイダミーア》は十数年ぶりの協力となった。
1740/41年シーズンは11月8日の《祝祭のパルナッソ》で開幕した。11月22日には、シーズン1つ目、最後から2番目の新作イタリアオペラ《イメネーオ》の初演が行われた。
ヘンデルは、いつも通り、《デイダミーア》の楽譜に作曲の日付けを入れている。それによると、1740年10月27日に第1幕に着手、11月1日に第1幕を書き終え、第2幕を11月7日に書き終えている。11月8日にシーズンが開幕したのでしばらくそれにかかずらわり、11月14日に第3幕に着手、11月20日(《イメネーオ》初演の2日前)に書き終えた。
作曲期間を除くと、《デイダミーア》の制作、準備、初演の情報は乏しい。
その中にあって、新たにイタリアから招いたソプラノ、ネレーアを創唱したマリア・モンツァについては少しばかり情報が伝わっている。
モンツァは、本来《イメネーオ》に出演してティリント役を歌う予定だったが、しかしロンドン到着が大幅に遅れ、《イメネーオ》には間に合わずティリントには代役が立てられた。彼女はおそらく年末(つまり《デイダミーア》が書き上げられた後になって)ようやく到着したと思われる。
まったくの素人愛好家の書いたものはあるが、彼女のロンドン登場を伝える手紙がある。1740年12月21日付でペンダーヴズ夫人 Mrs. Pendarves がデューズ夫人 Mrs. Dewes に宛てた手紙である。
ハンデル氏は新しい歌手を獲得した。彼女の声はクッツォーニの声とストラーダの声の間にある― 力強いが、トゲトゲしくはない、彼女の容姿はひどく悪い。身長はとても低く、そして極めて曲がっている。ドネラン【ペンダーヴズ夫人の友人】は彼女を認めた: 彼女はクリスマスの後まで舞台に乗る予定になっていないので、私は彼女の最初の公演を逃さないつもりだ。
Mr. Handel has got a new singer from Italy. Her voice is between Cuzzoni's and Strada's - strong, but not harsh, her person miserably bad, being very low, and extremely crooked. Donellan approves of her: she is not to sing on the stage till after Xmas, so I shall not lose her first performance.
ヘンデルはモンツァが《デイダミーア》にも間に合わなかった場合を想定して、ネレーアのアリアを技術的にあまり難しく書かなかった。しかしモンツァがロンドンに到着しその歌を聞いた後に、ヘンデルは第6、10、34番のネレーアのアリアを彼女のために書き直し、まだ第28番のネレーアのアリアは単一構成だったものをダ・カーポ・アリアに拡大した。
初演
初演は1741年1月10日、ロンドン、リンカーンズ・イン・フィールズ劇場で行われた。
デイダミーア
Deidamiaエリザベート・デュパルク
Elisabeth Duparcソプラノ
soprano
ネレーア
Nereaマリア・モンツァ
Maria Monzaソプラノ
soprano
アキッレ
Achilleエドワーズ嬢
Miss Edwardソプラノ
soprano
ウリッセ
Ulisseジョヴァンニ・バッティスタ・アンドレオーニ
Giovanni Battista Andreoniアルト・カストラート
alto castrato
フェニーチェ
Feniceウィリアム・サヴェイジ
William Savageバス
basso
リコメーデ
Licomedeヘンリー・シオドア・レインホウルド
Henry Theodor Reinholdバス
basso
タイトルロールのエリザベート・デュパルク ?―1778 は、ラ・フランチェジーナの愛称で知られた、フランス生まれでイタリアで学んだソプラノ。彼女は1737/38年のシーズンから、アンナ・ストラーダと入れ替わるようにヘンデルのオペラに参加した。ヘンデルの作品の初演では、《ファラモンド》 1738年1月3日初演 のクロティルデ、《セルセ》 1738年4月15日初演 のロミルダ、《エジプトのイスラエル人》 1739年4月4日初演、《イメネーオ》 1740年11月22日初演 のロズメーネ、《セメレ》 1744年2月10日初演 のタイトルロール、《ジョウジフとその兄弟》 1744年3月2日初演 のアセナス、《ハーキュリーズ》 1745年1月5日初演 のアイオル、《ベルシャザー》 1745年3月27日初演 のニトクリス、《機会オラトリオ》 1746年2月14日初演 と多数の作品に出演している。
ジョヴァンニ・バッティスタ・アンドレオーニ 1720―1797 は、ルッカ生まれのカストラート歌手。1738―39年にヴェネツィアで活動した後、ロンドンの1740―41年を加わった。彼はここで、《イメネーオ》 1740 初演のティリントとこの《デイダミーア》初演のウリッセを歌った他、《陽気な人、思い耽る人そして穏健な人》の再演、《エイシスとガラティー》の再演、《ソール》の再演にも出演した(いずれも彼はイタリア語で歌ったと思われる)。
マリア・モンツァについては、前述の通り。《デイダミーア》の他には、同じシーズンの3月18日の《ソール》再演でメラブを歌ったことが分かっている(おそらくイタリア語で歌ったのだろう)。この9年前、1732年、ポーランド、ヴロツワフのバルハウス(舞踏会館)で初演された、アントニオ・ビオーニ Antonio Bioni の《デメートリオ Demetrio》初演で、バルセーネ Barsene というソプラノ役を Maria Monza が歌っていることが残された出版台本から分かり、同一人物かもしれない。
アキッレのエドワーズ嬢は、おそらくメアリー・エドワーズ Mary Edwards のことだと推測されている。彼女は当時まだ20歳にもなっておらず、イタリアオペラの歌手ではなく、それどころか専門の歌手ですらなかく、歌の上手い軽演劇女優といったところだった。彼女の庇護者である喜劇女優とヘンデルは接点があったようで、エドワーズが1741年にリンカーンズ・イン・フィールズ劇場に所属した折に、ヘンデルは彼女を少年アキッレ役に抜擢したようだ(詳しい事情は分からない)。1746年に結婚して Mozeen姓 になり、長く活躍した。1773年に亡くなったと推測されている。
チャールズ・ジェネンズは彼女を知っていたようで、1740年12月29日付で友人のジェイムズ・ハリスに宛てた手紙で
《デイダミーア》は、おそらくまあまあの成功を収めるかもしれないが、しかしアキッレを演じる少女エドワーズ嬢によって笑劇に変えられるだろう。
Deidamia, which might perhaps have tolerable success, but that it will be turn'd into farce by Miss. Edwards a little girl representing Achilles.
と、彼女がオペラセリアには相応しくないであろうという懸念を打ち明けている。ジェネンズが《デイダミーア》を観劇した感想は伝えられていない。
ウィリアム・サヴェイジ 1720―1789 は、少年時代からトレーブル(ボーイソプラノ)として活躍。ヘンデルの声楽大作の初演では、《アルチーナ》 1735 のオベルト、《ジュスティーノ》 1737 の運命の女神、《ファラモンド》 1737 のキルデリーコを歌った。また《アタライア》の1735年の再演ではジョアスを歌っている。《エジプトのイスラエル人》 1739 初演ではカウンターテナーとして歌っており、この間に声変わりをしたのだろう。後にバスに転向、《イメネーオ》 1740 初演のタイトルロール、《デイダミーア》 1741 初演のフェニーチェ、そして《サムソン》 1743 初演のマノア を歌っている。
ヘンリー・シオドア・レインホウルド ?―1751 はドレスデン生まれのバス。長きに渡って、イタリアオペラでも英語の声楽大作でも、主役、脇役の両方で、ヘンデルの声楽大作の初演、再演に多数出演した。初演に限ると、《アタランタ》 1736 のメルクーリオ、《アルミーニオ》 1737 のセジェステ、《ジュスティーノ》 1737 のポリダルテ、《ベレニーチェ》 1737 のアリストボロ、《エジプトのイスラエル人》 1739、《陽気な人、思い耽る人そして穏健な人》 1740、《イメネーオ》 1740 のアルジェニオ、《デイダミーア》 1741 のリコメーデ、《サムソン》 1743 のハラファ、《セメレ》 1743 のカドミュス,高僧,ソムナス、《ジョゼフと彼の兄弟たち》 1744 のファラオ,ルーベン、《ハーキュリーズ》 1745 のタイトルロール、《ベルシャーザー》 1745 のサイラス(ただし彼は本来ゴブライアスを歌う予定だった)、《機会オラトリオ》 1746、《ジューダス・マカビーアス》 1747 のサイモン,ユーポルマス、《ジョシュア》 1748 のカレブ、《アレグザンダー・ベイラス》 1748 のプトロミー、《スサナ》 1749 の第2の長老,チェルサイアス、《ソロモン》 1749 のレヴィ人、《シアドーラ》 1750 のヴァレンス、を歌った。この他にも再演で数多く歌っており、例えば《ソール》の再演ではしばしばタイトルロールを歌った。
《デイダミーア》の初演に関する評は、新聞など公的な文章も私的なものも、まったく残されていない。
1月10日の初日に続いて、一週間後の1月17日に2回目の公演があり、そして間を置いて2月10日に、今度はヘンデルの古巣ともいうべきヘイマーケットの国王劇場で3回目の公演があった。これがヘンデル生前のロンドンでの彼のイタリアオペラの最後の上演であり、そしてヘンデル自らが指揮を執った最後の演技付き舞台上演となった。
3回目の公演では、音楽好きで知られるエグモント伯爵ジョン・パーシヴァル 1683―1748(既に政治家から引退していた)が観劇していることが彼の日記から分かっているが、感想は残されていない。彼やジェネンズに限らず、《デイダミーア》を観劇したであろう長年のヘンデルの支持者たちの誰一人として感想を書き残していない。
ロンドンでは既にイタリアオペラの流行はすっかり下火になっており、またイタリアから歌手を招いたとはいえ大スター歌手ではなかったことを考えると、《デイダミーア》がほとんど話題にならなかったとしても不思議ではないのだろう。
蘇演
《デイダミーア》の近代蘇演は、1953年5月31日、東ドイツ、ハレのヘンデル祭でのこと。会場はランデステアター。指揮はホルスト=タヌ・マルグラフ Horst-Tanu Margraf。ドイツ語上演。
あらすじ
物語の前提
トロイア戦争が勃発した頃。ペレーオの妻テーティは、息子アキッレがトロイア戦争に加われば命を落とすことを知った。そこでペレーオは、アキッレを女装させてピッラと名乗らせ、孤島スキュロスの王リコメーデに預けた。アキッレはリコメーデの娘デイダミーアと共に暮らし、愛し合うようになる。
一方ギリシャの総大将アガメンノーネは、易者カルカンテから、トロイアを陥落するにはアキッレの参加が不可欠であると神託の予言を受ける。そのためアガメンノーネは、アキッレが潜むと噂されるスキュロスのリコメーデの元に使者を送る。
第1幕
3人の使者、イタケ島の王ウリッセ、アルゴスのフェニーチェ、ネストレがスキュロス島に到着する。ウリッセだけは正体を隠し、ネストレの息子アンティーロコを装っている。アンティーロコ(= ウリッセ)はリコメーデ王に、トロイア王プリアーモの息子、パーリデが、メネラーオの美しい妻エーレナを誘拐した、その侮辱に復讐するため、全ギリシャがトロイアへの戦いを準備しているので、リコメーデも協力するよう求める。リコメーデは60隻の兵船を提供することを約束する。さらにアンティーロコ(= ウリッセ)は、スキュロスに匿われているはずのアキッレを引き渡すよう求める。しかしリコメーデは、アキッレはもうここにはいないと答える。アンティーロコ(= ウリッセ)は、アキッレを匿い救うことは、ギリシャに危害を与え、トロイアを助けることになる、アキッレを救おうとする者は、運命の打撃を受けるだろう、と牽制する。リコメーネは、アンティーロコ(= ウリッセ)たちが島を捜索することを認める。フェニーチェは、寛大な対処に感謝し、トロイア人たちの非礼に憤り、滞りなく復讐を果たすことを主張する。
リコメーデは一人になると、アキッレがトロイアと戦えば死ぬという神託を思い返し、友であるペーレオのためにもアキッレを王国に匿おうと決意する。
回廊。デイダミーアがネレーアにピッラ(= アキッレ)は何をしているのかと尋ねると、ネレーアは彼女は鹿を追っていたと答える。デイダミーアはピッラをすぐに呼ぶよう侍女に命じ、獲物を巡って狩りの女神に連れ浚われないか心配する。デイダミーアはピッラが戻るのが遅いと心配すると、ネレーアが今ちょうどピッラが丘から駆け下りて来るのが見えると知らせる。ネレーアは娘たちに、仕事はピッラが嫌っているので止めるように言う。
狩りを楽しんだピッラ(= アキッレ)が陽気に戻って来る。彼は無為に過ごすデイダミーアに、一緒に朝から外に出よう、新鮮な空気は心地よい、と誘う。デイダミーアは他の娘たちを退かせる。二人になるとデイダミーアは、狩のせいで愛を忘れてしまっている、とアキッレに不満をぶつける。だがアキッレには娘を装っての生活に退屈しきっていた。アキッレが愛を請け合っても、デイダミーアには希望よりも不安の方が強く感じられる。彼女は、アキッレが武勇に夢中になれば自分のことを忘れてしまうだろうが、自分はずっと誠実だ、と語りかける。しかしアキッレは、愛よりも名誉を望んでいた。
アンティーロコ(= ウリッセ)がデイダミーアを訪れるので、彼女はネレーアに隠れて話を聞くよう願う。アンティーロコ(= ウリッセ)は、アキッレは見つからなかったが、リコメーデ王の援助と美しいデイダミーアに知り合えたことが埋め合わせになる、とデイダミーアを口説きにかかる(もちろん本心ではない)。デイダミーアはそれをかわしつつ、二人は間近に迫ったトロイアへの戦争について議論し、デイダミーアは、エレナは大きな戦争の原因になるだけの価値はないと言い、アンティーロコは、名誉の秤にかければ侮辱初美よりも大きい、喜びの源である美女を失うよりも大きな喪失はない、と答える。彼が去ると、デイダミーアは、あの抜け目ないギリシャ人からアキッレを遠ざけなくてはならないと思う。
第2幕
庭園。アキッレは、デイダミーアが見知らぬ、しかし格好良い兵士と一緒なのに気付き、隠れて二人の話を聞くことにする。
アンティーロコ(= ウリッセ)は今度は本格的にデイダミーアを口説く。デイダミーアは彼の誉め言葉を喜ぶそぶりを見せつつ、貴人の世辞だと跳ね返す(デイダミーアはアンティーロコ = ウリッセに気を持たせることでピッラへの目を逸らせるつもりなので、きっぱりと断りはしない)。アンティーロコ(= ウリッセ)はさらに情熱的にデイダミーアを口説く。
デイダミーアはアンティーロコ(= ウリッセ)のしつこい求愛にうんざりしているが、事情を知らないアキッレは彼女の対応を不誠実だと非難する。そして彼女の言い訳も聞こうとせず、心の中で怒りが震えるのを感じると憤る。デイダミーアが和解を求めても、アキッレの気持ちは収まらない。
ネレーアが、リコメーデ王がギリシャ人たちを狩りに招き、娘たちが狩のニンフに扮するよう求めたと伝える。ピッラは狩りでアキッレの正体が明らかになることを心配する。ネレーアは、自分たちの甘言とピッラの高慢な態度がギリシャ人たちを遠ざけられると提案する。それでもデイダミーアは、アキッレが怒りに軽蔑を上塗りするのではないかと不安に思う。
狩りを前に、リコメーデは自らの老いと平穏な日々の幸せを語る。大きなシカが現れ、アンティーロコ(= ウリッセ)が追う。残ったフェニーチェはネレーアに愛を語るが、ネレーアはそれを真の愛情による言葉ではないと撥ね付ける。
ウリッセが戻って来て、一人の娘がシカを仕留め、さらに別のシカを追い求めて森に入った、と告げる。二人はデイダミーアが誰かを愛していることで意見が一致し、ウリッセは、あの娘こそ女装したアキッレで、彼女は彼と恋に落ちていると推測する。フェニーチェはウリッセの鋭い勘に感心する。
アンティーロコ(= ウリッセ)はピッラ(= アキッレ)を呼び止め、彼女を口説き始める(もちろん作戦)。そこにデイダミーアがやって来るが、アンティーロコ(= ウリッセ)は彼女は自分を拒んだと非難し、ピッラだけを愛していると告げる。デイダミーアは迂闊にギリシャ人に近づかないという約束を破ったアキッレを咎めるが、英雄に憧れるアキッレは仕方ないと答える。デイダミーアは彼を強く非難する。
今度はフェニーチェがピッラを口説く(これも作戦)。フェニーチェが、心と玉座を与えるというと、ピッラはつい、自分も高貴な身分だ、と言ってしまう。フェニーチェはピッラこそアキッレだと確信し、それを暴く作戦を考えることにする。
第3幕
フェニーチェはネレーアに、狩りでは求愛を拒まれ、食事では嘲られた、と文句を言う。彼女は、間もなく出征しなければならないフェニーチェには自分の愛を得る時間がないと返す。フェニーチェは、トロイア戦争で武勲を上げて戻ろうと決意を示す。ネレーアは彼の英雄らしい勇気に心を動かされる。
アンティーロコ(= ウリッセ)とフェニーチェは、娘たちを集めて宝物をプレゼントする。美しい装飾品に喜ぶデイダミーアたちだったが、その中には立派な武具が紛れており、それを見たピッラは興奮を隠せない。するとウリッセの手配で(偽の)攻撃を知らせるラッパの音が響く。王宮を守ろうと奮い立つピッラに、アンティーロコ(= ウリッセ)は、トロイアでギリシャ軍がエットレ(= ヘクトル)の前に苦戦していることを伝えると、ピッラはついに自分がアキッレだと正体を明かす。デイダミーアは嘆き悲しみ、アンティーロコ(= ウリッセ)に怒りをぶちまける。ウリッセは、任務を完遂した今、トロイア攻略に向かう決意をする。
デイダミーアから事情を伝えられたリコメーデは、二人が愛し合っていたことを知っていたことを明かし、デイダミーアとアキッレに、二人の愛はアキッレが島を発つまでしか続かない、なぜならアキッレはトロイア戦争で命を落とすと予言されているからだ、と伝える。アキッレはデイダミーアと仲直りして結婚しようとするが、デイダミーアはわざと彼を愛していなかった、本当に愛しているのはアンティーロコだ、と気持ちを偽る。だがウリッセは自らの正体を明かし、自分も故郷に妻ペネーロペを残してトロイア戦争に向かうのだ、と告げる。デイダミーアの悲嘆を余所に、アキッレは予言など当てにならないと意に介さない。
一方ネレーアはフェニーチェの求愛を受け入れる。
リコメーデはウリッセにアキッレとデイダミーアを結ばせる。デイダミーアとウリッセはそれぞれアキッレに、戦闘においても英雄を、愛においても恋人を、愛することで示すよう求める。一同が恋人たちよ、喜びの時をおろそかにしては行けない、過ぎ去ったら二度と戻らないのだから、と歌い幕となる。
音楽
《デイダミーア》は、第一次アカデミー、第二次アカデミー、さらにコヴェントガーデン時代のイタリアオペラと比べると、だいぶおとなしい音楽である。また前後の英語の声楽大作である《ソール》 1739年初演 と《メサイア》 1742年初演 と比べても華やかさに欠ける。
歌に関しては、イタリア人のスター歌手を招くことができなかったことと、アキッレ役が十代の若い娘だったことから、どうしても限界があった。加えてカストラート役のウリッセは、策士と言う役柄ゆえ、カストラートらしい魅力を封じられてしまったところがある。
オーケストラに関しては、編成はオーボエ2、ファゴット、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦楽器群、バッシ と概ね標準的なものであるが、総じて控えめに用いられている。金管楽器の出番はごく限られている。
ヘンデルらしいしみじみと美しいアリアはあるのだが、それと対比されるべき華やかなアリアが少ないことで、《デイダミーア》の印象は地味になりがちである。
もう一つの問題は、モンツァのためにネレーアのアリアを拡大した結果、脇筋の比重が高くなってオペラ全体のバランスが悪くなってしまったこと。そのため近年の上演ではネレーアのアリアのいくつかを初期稿に戻す場合もある。
音楽的な扱いの難しさに、台本の扱いの難しさが加わる。トロイア戦争で死んで二度と帰ることがないと分かっているアキッレと彼を愛するデイダミーアの幕切れは、単純なハッピーエンドからほど遠い。さらに幕切れの直前の二重唱が、デイダミーアとアキッレの愛の二重唱ではなく、デイダミーアとウリッセの二重唱であることを加えると、形の上での大団円と実際の苦い幕切れにどう折り合いをつけるのか、演出のみならず、音楽的にも難しい課題がある。
一方で、《デイダミーア》には当時のオペラセリアの型通りとは異なった魅力もある。
最も顕著な特徴はコーロ Coro だろう。通常ヘンデルのイタリアオペラでは、譜面上で合唱であっても合唱団は起用されず、実質的には独唱たちの重唱である。《デイダミーア》でもそれは同様と思われるが、しかし第2幕 第19番の狩りの合唱と幕切れ第25番の合唱は、可能であれば独立した合唱を起用すべき音楽で、ヘンデルが既に英語のオラトリオで充実した合唱曲を体験した成果を感じさせる。
《デイダミーア》は今後の再評価が期待でき得る作品なのだろう。
序曲 Ouverture。いつも通りのフランス式。重厚な4/4 ニ短調 に、Allegro 3/8 ニ短調 が続く。
第1幕
第1番 行進曲。Lentament 4/4 ニ長調。ヘンデルのオペラに多く見られる開幕の行進曲。船の中(実際には舞台裏)の楽隊とオーケストラが交互に演奏した後、合同する。
第2番 ウリッセのアリア Grecia tu offendi。Pomposo 4/4 変ホ長調。A / B / A’の三部形式のアリア、ただしダ・カーポなどを用いず通作で、A’では歌詞がかなり増えている。カストラートのためのアリアで、Pomposo 華やかな という指示もあり装飾歌唱も盛り込まれているが、オーケストラがヴァイオリン群とバス群だけということもあり、全体に地味な音楽。そこに策士ウリッセのしたたかな性格が滲む。
第3番 フェニーチェのアリア Al tardar della vendetta。Allegro 4/4 ヘ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。高中弦がヴァイオリン1、2、ヴィオラと分かれ、華やかで爽やかな音楽で、フェニーチェの明るい性格が反映されている。上のヘ音が多用されており、サヴェイジが今日でいうバリトンのような声だったことが推測される。
第4番 リコメーデのアリア Nelle nubi intorno al fato。Andante e staccato 3/4 ト短調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。死を予言されたアキッレの運命を案じる老王の重厚なバスのアリア。スタッカートの指示をどの程度反映させるかで印象がかなり変わるだろう。また後の展開を考えると、このアリアは観客にリコメーデ像に予断を与える働きもある。
第5番 デイダミーアのアリオーソ Due bell'alme innamorate, は、Larghetto 3/4 変ロ長調。バス群の伴奏だけの上にプリマドンナの瑞々しく美しい歌が広がり、デイダミーアの愛の幸福を描く。レチタティーヴォを挟んで、larghetto、andante、adagio、andanteと短い部分が4つ連なり、再びレチタティーヴォ、そしてネレーアのアリアとレチタティーヴォの後にアリオーソの繰り返し 第5a番 が置かれている。
第6番 ネレーアのアリア Diè lusinghe, diè dolcezza, は Larghetto 4/4 ト長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。ネレーアはデイダミーアより女性の魅力を武器にするしたたかさを持っており、それを強く印象付ける。前述の通りこのアリアはモンツァのために初演直前に新たに作曲されたもので、初期稿とは大きく異なる。モンツァが得意としたであろう高いイ音、変ロ音の美しい響きを生かすよう書かれている。
第7番 アキッレのアリア Seguir di selva in selva は、Andante 4/4 ヘ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。アキッレの登場のアリアであり、狩りの楽しさを歌う内容で、軽快で陽気な音楽。とはいえ狩りの象徴であるホルンが使われることもなく、短くあっさりしている。まだ十代のエドワーズ嬢のために登場のアリアで負担を掛けないようにしてあげたのかもしれない。
第8番 デイダミーアのアリア Quando accenderan quel petto は、Affettuoso 3/8 ハ短調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。いつかはアキッレに忘れられてしまうかもしれないデイダミーアの不安と悲しみが切々と歌われる。繰り返し現れるヴァイオリンの上昇音型は、血気盛んなアキッレを表しているのだろう、両者はしばしばぶつかり、二人の運命を予感させる。
第9番 アキッレのアリア Se pensi, Amor, tu solo, は、Allegro 12/8 ト長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。屈託のないアキッレの性格がよく表されている。技術的に難しくないなりに歌が映えるよう工夫がなされている。
第10番 ネレーアのアリア Si che desio。2/2 ロ短調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。初演直前に差し替え/手直しされたネレーアのアリアのうち、初期稿と初演稿で最も性格の異なる曲。初期稿の軽快で陽気な曲想(Bが短調にしても)は一掃され、思い詰めたかのような切迫感で一貫する。しかも長い(5分以上かかる)。ヘンデルがモンツァの力量を引き出すアリアを書いたことは疑いないにせよ、セコンダドンナのアリアとしては少々立派過ぎてオペラの中でバランスが悪くなっているのは否めない。
第11番 ウリッセのアリア Perdere il bene amato。Andante larghetto 4/4 ヘ長調、ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。AとBで速度、拍子、調性(並行調)すべて変えて対比を強める典型的な作り。洗練された英雄ウリッセと戦士ウリッセの両面を描いている。特にAでの繊細な美しさに溢れた音楽が素晴らしい。このアリアはボノンチーニ《セルセ Xerse》の Sento che l'alma mia の音楽を借用しているという。
第12番 デイダミーアのアリア Nasconde l'usignol。Allegro 4/4 イ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。歌詞がサヨナキドリ(夜鳴き鶯,ナイチンゲール)を扱っていることから、ヘンデルは歌にもオーケストラにも装飾歌唱をたっぷり盛り込んでいる。デイダミーアの7つのアリアのうち技巧的で華やかなものはこの1曲だけである。もっともロッリの歌詞はデイダミーアの苦渋の決断を述べたものなのだが。
第2幕
第13番 序曲 Sinfonia。A tempo giusto 4/4 ニ短調。
第14番 ウリッセのアリア。Andante larghetto 3/8 ホ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。ウリッセの愛の囁きはアキッレ捜索のための策略で、つまり偽りの求愛なのだが、音楽はとても優美に仕立てられている。歌にしばしばヴァイオリンが応答するが、これは口説かれたデイダミーアの反応を表しているのかもしれない。彼女は続くレチタティーヴォの冒頭で「ああ、なんと 迷惑な情愛だ!」とぼやいてはいるものの、初めて洗練された優美な言葉で口説かれた彼女がそれに魅了されたとしても不思議ではない。
第15番 アキッレのカヴァティーナ。4/4 変ロ長調。単一形式のカヴァティーナ。少年アキッレの苛立ちのアリア。これもエドワーズ嬢に負担を掛けぬよう短めにしたのかもしれないが、活気のある音楽が簡潔にまとまっている。そして周囲の思惑を知らぬ未熟なアキッレの姿が印象付けられる。終わり直前に1回だけ高い変ロ音が用いられている。
第16番 ネレーアのアリア D'amor ne'primi istanti。Andante 4/4 イ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。このアリアは書き直されることがなかったので、ネレーア本来の明るく魅惑的な、しかし高慢さも窺われる性格が歌に残されている。オーケストラはほぼ一貫してヴァイオリン1(とオーボエ)、ヴァイオリン2、ヴィオラが用いられており、前奏から華やさを振り撒いている。
第17番 デイダミーアのアリア Se il timore il ver mi dice,。Largo assai 3/4 嬰ヘ短調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。いかにもヘンデルらしい美しくも悲痛なアリア。Aではデイダミーアの切々とした嘆きに、穏やかなバッシと控えめなヴァイオリンが寄り添う。
第18番 リコメーデのアリア Nel riposo e nel contento。Larghetto 3/4 変ロ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。バス譜表中のハ音より下が頻出し、Bでは下のト音が4回与えられている。
第19番 コーロ Della guerra la caccia ha sembianza,。2/2 ヘ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式の合唱。。Aがウリッセと混成44部、Bがデイダミーアと女声合唱。ようやくホルン×2が加わりほぼフル編成になる。
第20番 ネレーアのアリア Non ti credo, non mi fido,。Andante 4/4 ト長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。比較的簡素なアリア。ヴァイオリンのリトルネッロは嘲笑を表しているのだろうが、ネレーアの小悪魔的魅力も醸している。
第21番 フェニーチェのアリア Presso ad occhi esperti già。2/2 ハ短調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。バスによる愛の教訓の歌。ヘンデルは速度を指定していないが、2/2拍子ということでかなり速く歌えば fiamme 炎 に当てられた装飾歌唱を煌めかせることができるsだろう。
第22番 ウリッセのアリア No, quella belta non amo,。4/4 ト短調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。カストラートのためのアリアらしく激しめの装飾歌唱が盛り込まれているわりにどこか素っ気ない印象なのは、デイダミーアに対する蔑み、ピッラに対する愛の歌、どちらも偽りのものだからかもしれない。
第23番 デイダミーアのアリア Va', perfido!。Allegro 3/4 変ロ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。デイダミーアの心配を他所にアキッレがウリッセに近づいたことで、ついにデイダミーアが感情を露にするアリア。三連符を多用した装飾歌唱が彼女の憤りを表す一方で、2回の adagio の指示、頻出するフェルマータ付きの休符(フェルマータ付き全休符が2回)によってデイダミーアの動揺と悲しみが混ぜられ、立体的な感情を描いている。
第24番 アキッレのアリア。Andante ma non Allegro 3/8 イ長調。単一形式のアリア。この快活なアリアでは、アキッレはもはや自分が活発な少年であることを隠すつもりはないようだ。頻出するヴァイオリンの急速な上昇音型は放たれた矢を表しているのだろう。
第35番 コーロ。2/2 ヘ長調。音楽は第19番のAと同じ。
第3幕
第26番 序曲 Sinfonia。Allegro 3/4 ハ長調。
第27番 フェニーチェのアリエッタ Degno più di tua beltà。Larghetto 3/8 ト長調。A / B の二部形式のアリエッタ。ト長調の3拍子の上にさらに付点リズムや三連符が多用されて、陽気でご機嫌な歌になっている。
第28番 ネレーアのアリア Quanto ingannata è quella。Andante 6/8 変ロ長調。このアリアは初期稿の39小節の短いアリアをダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリアに拡大したもの。速度、拍子、調性いずれも変わりはないが、長さが倍以上になったことから Andante の指示通りだとだいぶ長くなる。ともかくも足取り軽い音楽でネレーアがフェニーチェの求愛に応じる意欲を聞かせる。
第29番 アキッレのアリア Ai Greci questa spada。Allegro 4/4 イ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。アキッレのアリアで三部形式をとるものは第9番とこの第29番の2つだけ、そしてこちらの方が充実している。正体を明かしたアキッレによる勇しいアリア。これだけの歌を十代で歌えたならばエドワーズ嬢は(スタミナはともかく)かなり立派な技術を持っていたと思われる。ただ金管楽器が用いられていないのは彼女の声量を考慮したからかもしれない。
第30番 デイダミーアのアリア M'hai resa infelice;。Largo 3/4 ト短調 と allegro 4/4 ト短調 が交互に置かれた、A / B / A’ / B’の二部形式のアリア。この作品の頂点を成す極めて悲痛なアリア。Largo での悲嘆と allegro での怒りと恨み(とても激しい装飾歌唱)が極めて強く対比されている。さらに三部形式にせず二部形式を繰り返して怒り恨みを強調している。
第31番 ウリッセのアリア Come all'urto aggressor d'un torrente。Andante 3/8 ヘ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。アキッレの正体を暴くという企てに成功したウリッセだが、このアリアによって真の目標はトロイアを倒すことであることを今一度示している。ヴァイオリン×2とヴィオラが絡み合って動いて、すべてを飲み込み破壊する奔流を表している。
第32番 ウリッセのアリア Or pensate, amanti cori,。Allegro moderato 3/4 イ長調。同じ役のアリアが2つ連続することは当時のイタリアオペラでは珍しい。ウリッセのアリアでは唯一、真の優しい情感の広がるもの。Aはイ長調の軽快な音楽だが、Bの冒頭で唐突にニ短調に触れて一瞬ドキッとさせられる。
第33番 デイダミーアのアリア Consolami。Allegro moderato 3/4 イ長調。ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。明るく美しい音楽だが、むしろそれゆえにアキッレが出征すれば死ぬ運命を知ったデイダミーアの心情を思うと涙なしには聞けない。
第34番 ネレーアのアリア Non vuò perdere l'istante:。Andante allegro 4/4 イ長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。ネレーアとフェニーチェの恋の脇筋を締めくくる愛の喜びのアリア。技巧的で華やかな歌に、トリルを多用したオーケストラと、単独であればヘンデルがモンツァの力量を最大限に引き出した素敵な音楽なのだが、デイダミーアの最後のアリアと最終景の間に置かれるとなると、脇筋なのに立派過ぎる印象は免れないだろう。
第35番 二重唱 Ama: nell'armi, e nell'amar。Allegro 12/8 変ロ長調 ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式の二重唱。幕切れ直前の二重唱が、デイダミーアとアキッレの二重唱ではなく、デイダミーアとウリッセの二重唱であるのは、実際には意外なことではなく、長大なオペラの締め括りはプリマドンナとプリモウォーモのカストラートが歌うという原則に則っているだけのことである。締め括りを未熟な十代の若い娘に負わせることは危険を孕んだろうし、また聴衆がそれを許さなかったろう。とはいえこれによって《デイダミーア》がますます扱いの難しい作品になったことは否定できない。
第36番 コーロ。Allegro 4/4 ト長調。ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のコーロ。型通りの音楽だが、Bで folle が何度も繰り返される強調されるのが面白い。
スキュロス島でのアキレウス
ギリシャ神話において、トロイア戦争で大活躍するアキレウスは人気の高い人物だ。アキレウスについてはホメロスの『イリアス』などで描かれているが、その人気の高さから後年、派生的な物語がいくつも生まれた。
スキュロス島での少年アキレウスの物語もその一つである。これは1世紀のナポリ生まれのローマ帝国の詩人、スタティウスによる『アキレウス(アキレイド)』で扱われ有名になった。
基本的な物語は以下のようなものである。
アキレスの母親、海の女神テティスは、幼い息子がいずれ戦争で死ぬ運命にあることに気付き、孤島スキュロスの王リュコメデスの宮廷に潜ませることにする。リュコメデスには娘ばかり7人がいた。テティスは息子を女装させ、アキレスの妹ピュラ(赤毛 の意)としてリュコメデスの元に送り込む。
この後、アキレウスはリュコメデスの娘の一人デイダメイア(彼女はピュラが女子だと信じている)に恋し、バッカスを讃える女性だけの夜の祝祭で彼女を強引に愛し、息子(一人はネオプトレモスことピュロス)を儲けることになる。デイダメイアはこれらのことを父親に隠し、また女装にうんざりしているアキレウスが正体を明かそうとするのを止める。
一方、トロイアへ出陣せんとするギリシャの連合軍は、占い師カルカスから、スキュロス島に女装して匿われているアキレウスが参戦しないとトロイア戦争に勝利できないという神託の予言を受ける。そこでオデュッセウス他数人が、真の目的を隠したままスキュロス島に渡る。
リュコメデス王に歓待されたオデュッセウスたちは、王と娘たちに贈り物を捧げるのだが、そこには綺麗な装飾品などと一緒に武器や武具が混ざっていた。するとピュラだけは武器や武具に夢中になる。その時、オデュッセウスの手配で、(偽の)戦いを告げるラッパの音が鳴り響く。それを聞いて一同が混乱に陥る中、ピュラだけは武器を手に取って敵に立ち向かおうとする。これによってピュラの正体がアキレウスだと明らかになる。
アキレウスはリュコメデスにデイダメイアとの結婚を申し出て、 結婚式の翌日にオデュッセウスらと共に島を離れて戦争に向かう。
少年時代の英雄アキレウスが女装して女子として振舞い、しかし策略によって正体が暴かれる、という展開は極めて舞台向きだろう。
そしてこの筋書きはバロックオペラで非常に好まれることになる。
なおロッリは他のヘンデルのオペラでは既存のオペラの台本を種本に用いており、《デイダミーア》でもその可能性は高いと思われるが、今のところ種本と思われる台本は見つかっていない。
ともかくも、ロッリは、アキッレをスキュロス島に送り込んだのはアキッレの父ペレーオであること、リコメーデはデイダミーアとアキッレが恋仲になっていることに実は気が付いていたこと、など、いくつかの独自性を盛り込んでいる。
《デイダミーア》の政治性 ジェンキンスの耳戦争とオーストリア継承戦争
《デイダミーア》の政治性について語るのは難しい。様々な解釈が挙げられているが、確実なものはない。
以下の考察も、あくまでオペラ御殿での独自の解釈でしかないことを予め断っておく。
《デイダミーア》の政治性について論じる前に、この作品がお決まりのハッピーエンドになっていないことを確認する必要がある。
幕切れ前にアキッレとデイダミーアは正式に結ばれるのだが、アキッレはすぐにウリッセたちと共に島を離れてトロイア戦争に向かうことになっており、そしてアキッレはそこで戦死する運命であることも分かっている。つまり彼は島を出たら二度とデイダミーアに会うことはない。形の上では当時のオペラセリアの大団円を踏襲していても、実際にはほとんど悲劇的な、なんとも苦い幕切れである。
作者たちはなぜこのような苦い幕切れのオペラを作ったのだろうか。当時のイタリアオペラであれば、機械仕掛けの神 deus ex machina を用いて、アキッレの出征を止めるかデイダミーアを同行させるか、強引でも真に大団円を迎えるようにする方法はあっただろうに。
《デイダミーア》という作品を掘り下げるには、この疑問を念頭に置いて考える必要があるだろう。
前述の通り《デイダミーア》の作曲は1740年10月27日から11月20日まで。当然台本はこれに先立つ。
この頃の英国はどういう状況だったかというと、前年にジェンキンズの耳戦争という対スペイン戦争が勃発したばかりだった。
ジェンキンズの耳戦争は、商船(黙認された密輸船)船長でウェールズ出身のロバート・ジェンキンスが率いる船団が、フロリダの沿岸でスペインの沿岸警備船に捕らえられ、ジェンキンスが耳を切り落とされた事件(これは1731年こととされる)に端を発している。この事件は1738年になって英国議会で明らかにされ、スペインから受けた侮辱に英国世論は怒り、対スペイン開戦に沸き立たった。
1953年にドイツのハレのヘンデル祭で《デイダミーア》が(ドイツ語で)蘇演された頃には、このオペラは対スペイン開戦を称賛するという解釈がなされたという。たしかにあまり深いことを考えなければ、《デイダミーア》は、若き日の英雄アキッレが不本意に女装させられて孤島に封じ込められていたところを、英雄たちが彼を引き出し、晴れて戦いに向かうことになる、という物語に見えたろう。しかしこの解釈は今日では概ね否定されている。
ところが台本を詳しく検討すると、《デイダミーア》にはやはりジェンキンズの耳戦争が反映されていると認めざるを得ない。ただしそれは上記のような表面的な解釈ではなく、かなり本音を隠した分かりづらいものである。
1740年秋の英国の状況と《デイダミーア》には一つの共通点がある。それは戦争の原因が敵国による『侮辱』であることだ。
ジェンキンスの耳戦争では、スペイン側がジェンキンスの耳を切り落としたことが英国に対する侮辱である。一方トロイア戦争では、ご存知の通り、イリオス(= トロイア)の王子パーリデがエレナを誘拐したことがギリシャに対する侮辱である。
《デイダミーア》の台本では、開戦理由が敵国の侮辱であることが強調されている。第1幕冒頭でウリッセは開口一番「メネラーオの受けた侮辱に 復讐するために」と、戦争が 侮辱 offesa に対する復讐であることを明言している。そしてこれを含めて彼は 侮辱 offesa を3回も口にしている。さらにトロイア人を 不誠実 perfidia、パーリデを 不実 perfido と罵っている。
一方オペラの中では侮辱に対する復讐への批判もある。第1幕第5場でデイダミーアはウリッセに、エレナの誘拐は大戦争の原因になる価値はない と厳しい意見をぶつけている。彼女からすればエレナの誘拐は国と国の大戦争の引き金になるようなことではないと思われたのだろう。これに対してウリッセは、名誉の秤にかければ 侮辱は罪よりも重い と答える。
これは、『侮辱』は戦争の原因足り得るか、という議論であり、そしてこのことはジェンキンスの耳戦争開戦の争点であろう。ロッリがこの議論を台本に据えたことに意味がないとは思えない。
この『侮辱に対する復讐の戦争』が、《デイダミーア》の政治性を読み解く鍵だろう。この鍵を用いると、《デイダミーア》と初演の頃の英国を繋ぐ扉が開くのではないか。
ところでオペラでのリコメーデ王は、実はこの物語の軸となる役である。
彼は、良く言えば善良な、悪く言えば愚鈍な王である。既に老境にあり、ギリシャ側のアキッレ引き渡し要求に強気の対応ができず、ギリシャとアキッレの父ペレーオとの義理に挟まれ身動きが取れない。お人好しで気の弱い王がさらに老い衰えたようにも見える。
ところが物語が進むにつれて、彼は事態をすべて把握した上で成り行きを巧妙に操っていることが明らかになる。結局彼は、ペレーオにもギリシャにも義理を欠くことなくアキッレを戦争へと向かうことを許している(第2幕の狩りで分かるように、ギリシャ側にアキッレの正体を暴くことを促しているとすら言える)。イリオスでアキッレを死が待ち受けていると分かっていても。
リコメーデは極めて老獪な王である。彼は作劇的には、平凡で愚鈍だと思われた人物が、実際には抜け目のない切れ者だった、という役の典型例だろう。
ここで先の鍵を用いてみよう。すると、老リコメーデ王は、英国の老いた権力者、首相ロバート・ウォルポール 1676―1745 に見えて来やしないだろうか。
1721年から20年近く英国の首相を務めていたウォルポールだったが、ジェンキンスの耳戦争の頃には60代半ばに達し、政治的影響力が低下していた。彼は開戦には消極的だったのだが、世論に逆らっては自らの地位が危うくなる。結局彼は世論に押し切られる形で開戦を認めてしまった。彼は、やっとこさではあるものの、1742年まで首相の地位にあった。
この点でリコメーデとウォルポールは、酷似していると言ってもよいくらいだ。
実はロッリは反ウォルポールとして良く知られた人物である。であれば、彼は老リコメーデ王を、保身のためにアキッレをギリシャに引き渡し戦争に巻き込ませた卑劣な王と描き、それを老ウォルポールに重ねて、保身のために英国の対スペイン開戦を認めてしまった、と批判しているのではないか。
この見地に立って《デイダミーア》の台本を読むと、様々な政治的発信が浮かび上がって来ることに気付くだろう。長くなるので個別の解釈はここでは割愛するが、一例挙げるとするならば、第3幕 第31番のウリッセのアリアのB。ここでウリッセは、理性のない勇敢さは自身を傷つけかねないと警告しているのだが、これは《デイダミーア》が開戦直後に初演されたことを考えると、やはり批判的な見解ではないかと思われる。
改めて幕切れを考えみると、これは結局、どんなに血気盛んな若き英雄であっても一たび戦争に向かえば生きて帰って来られる保証はない、という厳しい現実を、開戦に高揚する世間に突き付けて冷や水を浴びせているようなものだろう。なんと現実的な幕切れなことか!
ジェンキンスの耳戦争そのものは、主として中南米の大西洋岸の都市が戦地の小戦争だった。しかし小戦争はしばしば大戦争に拡大する。英国王ジョージ2世がハノーファー選帝侯を兼ねている以上、一度大陸で全欧的戦争が始まると英国が巻き込まれてしまうのは避けがたいことで、だからこそハノーヴァー朝の英国は自発的な戦争は極力避ける必要があった【注】。
実際、1740年12月にオーストリア継承戦争が勃発、ジェンキンスの耳戦争はその一部に組み込まれることになる。ただオーストリア継承戦争はプロイセンがオーストリアのシュレージエンに侵攻したことが発端で、ジェンキンスの耳戦争が拡大したわけではない。それでももし英国がスペインと開戦していなければ、英国はオーストリア継承戦争からもう少し距離を置けたかもしれない。
オペラが政権や政策を批判する例は少なからずある。《デイダミーア》も、誰なのかは分からないが、ジェンキンスの耳戦争に反対する政治的に重要な人物がプロパガンダのオペラを計画し、そのために長年反目していたロッリとヘンデルを和解させ協力してオペラを作らせた、と見立てることもできるだろう。
もしロッリが《デイダミーア》の台本でジェンキンスの耳戦争への批判を繰り広げたにしても、そこは経験豊富な台本作家、容易に分からぬよう巧妙に台本に埋め込んで、世論の反発を喰らわぬようにしていると思われる。前述の通り、《デイダミーア》は、深入りしなければ、若き英雄アキレウスが成長を遂げて勇ましく出征する物語で済んでしまうのだ。たとえその場合には、デイダミーアとアキッレが結ばれてハッピーエンドということになってしまうにしても。
ところで、ダラム大学教授のピーター・ヘスリン Peter Heslin は、『女装したアキレウス The Transvestite Achilles』(本ではP. J. Heslinの名義)において、《デイダミーア》にはオーストリア継承戦争 1740―1748 が反映されていると主張している。細かいことは省略するが、へスリンは、リコメーデ王は愚鈍を装った狡猾な王で、それは前神聖ローマ皇帝カール6世を描いている(つまりカール6世は賢帝であると)、その上で《デイダミーア》は英国とオーストリアの同盟の重要性を説いている、と主張している。
この主張は、当時ヨーロッパで孤立しがちだったオーストリアに対して英国が同盟を結んでいた(1731―1756)ことを考えると説得力はある。オーストリア継承戦争の開戦当初極めて劣勢だったオーストリアが挽回できたのはこの同盟のおかげでもある。
だがこの主張には決定的な弱点がある。カール6世の死から《デイダミーア》の制作まであまりにも時間がないのだ。カール6世が亡くなったのが1740年10月20日、ヘンデルの作曲開始が10月27日、完成日が11月20日。しかも11月8日にはシーズンが始まっている。
もしロッリが大急ぎで台本を執筆し、書き上がった箇所から即座にヘンデルが作曲すれば、一本オペラを作ることは不可能ではない。しかしカール6世没後の政治状況は極めて流動的で、無理をして上述のような設定のオペラを作るのは危険を伴う。
へスリンも時間不足の弱点は認めており、そこで彼はヘンデルが作曲を開始した10月27日は旧暦つまりユリウス暦の日付だという仮説を立てている。ユリウス暦の1740年10月27日はグレゴリオ暦の同年11月7日で、11日の余裕が生まれる。しかし、上記の通り、11月8日はシーズン開幕の《祝祭のパルナッソ》初演の日で、そのリハーサルで多忙なはずの前日にヘンデルが《デイダミーア》の作曲に着手するという仮説には無理がある。
他にもいくつかの理由から、へスリンの見解には同意しがたい。
注 実際、ウォルポールが首相になって6年後の1727年にはスペインと英西戦争 1727―1729 が勃発、一時は全欧的大戦争に拡大しそうになったところを、寸前でかろうじて回避できた。ジェンキンスの耳戦争は、英西戦争の残り火が再燃したようなもので、ウォルポールは今回も全欧的戦争へと拡大しかねないことは分かっていたはずだ。
人名対照表 アルファベット順
イタリア語台本での役名イタリア語に基づくカナ表記一般的な日本語表記補足
Achilleアキッレアキレウスプティーア王ペレーオと海の女神テーティの息子。
Agamennoneアガメンノーネアガメムノンミュケナイの王。トロイア戦争におけるギリシャ連合軍の司令官。
Antilocoアンティーロコアンティロコスネストレの息子。
Calcanteカルカンテカルカスギリシャの占い師。
Deidamiaデイダミーアデイダメイアリコメーデの娘。
Elenaエレナヘレネメネラーオの妻。パーリデによって誘拐される。
Feniceフェニーチェポイニクスオルメニオの王アミントーレの息子。
Licomedeリコメーデリュコメデススキュロスの王。
Menelaoメネラーオメネラオスエレナの夫、スパルタ王。
Nestoreネストレネストルピュロスの王。※Ne- にアクセント。
Parideパーリデパリスイリオス = トロイアの王子、プリアーモの息子。エレナを誘拐する。
Pelideペリーデペリデスアキレウスの別名。
Peleoペレーオペレウスアキレウスの父親
Priamoプリアーモプリアモスイリオス = トロイアの王。
Tetiテーティテティス海の女神。ペレーオの妻。アキッレの母。
Ulisseウリッセオデュッセウスイタカの王。
対訳付き音楽設計図
登場人物
デイダミーア Deidamia, | リコメーデの娘 figlia di Licomede | ソプラノ soprano | |
ネレーア Nerea, | 王女 Principessa 【注】 | ソプラノ soprano | |
アキッレ Achille, | 女性の服を着てピッラを名乗る in abito donnesco e col nome di Pirra | ソプラノ soprano | |
リコメーデへの全ギリシャの使者たち: Ambaschatori di tutta Grecia a Licomede: | ウリッセ Ulisse, | その者は ネストレの息子、アンティーロコを装っている che si finge Antiloco, figlio di Nestore | メッゾソプラノ mezzosoprano |
ネストレ Nestre | non parla 黙役 | ||
フェニーチェ Fenice | バス basso | ||
リコメーデ Licomede, | スキュロスの王 Re di Sciro | バス basso |
注 Nerea については Bärenreiter の楽譜にはこれ以上の説明はない。Ausgabe der Händelsgesellschaft の楽譜では amica di Deidamia デイダミーアの友 と説明がある。おそらくは王家の親族である貴族の娘で、デイダミーアの相手に選ばれた人物、といったところだろう。
日本語訳は極力文学的な色づけをせず、分析的な直訳にしてある。
音楽部分と歌詞は、基本的に Bärenreiter の楽譜に従っている。
Ouverture | 4/4 d minor |
全リピート。 | |
Allegro 3/8 d minor |
全リピート。 |
||
ATTO PRIMO | |||
1. Marche |
Lentament 4/4 D major |
SCENA Ⅰ第1場 Vestibolo della Reggia presso al lido, con trono di marmo ed ara accesa da un lato sotto la statua d'Ercole.王宮の玄関の間 海岸の近くの、大理石の玉座 と 火を点けられた祭壇 一つの側に エルコレの像の下に。 Licomede sul trono. Ulisse, Fenice e Nestore che sbarcano.リコメーデ 玉座の上に。ウリッセ、フェニーチェ と ネストレ その者たちは 下船する。 |
|
Recitativo |
4/4 (C major) |
ULISSEウリッセ Per vendicar di Menelao l'offesa,メネラーオの【受けた】侮辱に 復讐するために、 cui Paride Troian, di Priamo un figlio,その者【= メネラーオ】を プリアーモの息子 トロイアのパーリデが、 tradì l'ospizio santo, ed in Micene【スパルタでの】神聖な歓待【= 尊重されるべきもてなし】を 裏切り、そして ミュケナイにおいて già rapì la consorte Elena bella;【メネラーオの】配偶者である 美しいエレナを もう 誘拐した; tutta la Grecia è in armi全ギリシャが 武器を取っている per l'eccidio di Troia. A te n'inviaトロイアの大虐殺のために。君に 私たちを 派遣している il re de'regi, Agamennone: ei brama君主たちの王である、アガメンノーネが: 彼は 切望している che Licomede re di Sciro, siaスキュロスの王 リコメーデ 【↓】もまた、 a parte ancor della comun vendetta;共同の復讐の 一部に なる【≒ 全ギリシャによる復讐に参加する】ことを; e le tue navi all'alta impresa aspetta.そして 君の 船々を 高い【≒ 大きな】戦争へと 待っている。 LICOMEDEリコメーデ Sessanta delle mie navi guerriere私の 戦闘的な船【≒ 兵船】の 60隻が portino a nostra antica emula gente運ぶように 私たちの 昔からの 敵の国民へと l'alta vendetta del comune oltraggio.共通の冒涜に対する 高潔な復讐を。 FENICEフェニーチェ Degna virtù de'regi,王たちに 相応しい 徳だ、 oh generosità rara nel mondo!ああ 世界に 稀な 寛大さだ! ULISSEウリッセ Ma non è questo sol ciò che ti chiedeしかし これは 君に 求める 唯一のことではない la Grecia tutta. Il celebre Calcante,全ギリシャが。著名なカルカンテは、 cui l'avvenir fanno palese i Numi,その者は 神々に 未来を 明らかに させた、 disse che senza Achille,言った アキッレ無しでは、 Troia espugnar non lice. A molti è notoトロイアを 陥落させることは 許されない 【↑】と。多くの人々に 知られている che, timoroso il genitor Peleo【アキッレの】父親 ペレーオは della morte del figlio, a te il mandasse息子の死を 【↑】恐れて 君に 彼を 送った per occultarlo.彼を 隠匿するために。 LICOMEDEリコメーデ Invan da me il bramate:君たちは 虚しく 私から そのことを 切望している: verso la patria sua la stessa nave彼の【= アキッレの】祖国に向けて 同じ船が che il portò qui lo ricondusse.それは 彼を ここに 運んだ 彼を 連れ戻した【≒ アキッレは ここに来た時と 同じ船で 祖国に帰った】。 FENICEフェニーチェ E invanoそれは 虚しく nascosto fia: Grecia lo vuol.隠されているだろう【≒ 隠そうとしても 無駄だ】。 ULISSEウリッセ S'ei viveもし 彼が 生きているならば in tuo poter. pensa che Greco sei,君の支配力の中で、考えなさい 君が ギリシャ人であることを、 e che il destin troiano,そして トロイアの運命が、 per voler degli Dei, giace in tua mano.神々の意志によって、君の手の中に 置かれている 【↑】ことを。 |
ウリッセは冒頭から第3幕第4場で自らの正体を明かすまでずっと ピロス王ネストレの息子アンティーロコを装っている。 tradì l'ospizio santo, ed in Micene ここでの ospizio は ospitalità 歓待,手厚いもてなし の意味。 e le tue navi all'alta impresa aspetta. impresa は基本的に 企て,計画 の意味だが、戦争 の意味で用いられることもある。 |
2. Aria Ulisse |
Pomposo 4/4 E-flat major |
ULISSEウリッセ Grecia tu offendi,君は ギリシャを 侮辱する【ことになるだろう】、 Troia difendi,君は トロイアを 守る【ことになるだろう】、 se Achille vuoi salvar.もし 君が アキッレを 保護する つもりならば。 Quel che di Gioveジョーヴェの dal ciglio move眼 まなこ に 由来する 【↑】ことは sai che non può mancar.君は 知っている 失敗する はずがない ことを【≒ 君も 承知の通り ジョーヴェが眼差しを向けて 引き起こされることは 失敗する はずがない】。 Grecia tu offendi,君は ギリシャを 侮辱する【ことになるだろう】、 Troia difendi,君は トロイアを 守る【ことになるだろう】、 se Achille vuoi salvar,もし 君が アキッレを 保護する つもりならば、 colpo di fato,宿命の打撃に、 quand'altri ha spene誰かが 希望を 抱く時には che sia scampato,彼【= アキッレ】が 救われる というspan class="comment">【希望を】、 allor lo viene ad incontrar.その時 彼【= 誰か】は それ【= 打撃 男性名詞単数】に 出くわす ことになる。 (parte)(去る) |
通作の A / B / A’の三部形式のアリア。A’はAの歌詞にさらに別の歌詞が加わる。 Quel che di Giove / dal ciglio move ここでの muovere は 由来する。delivare と同義。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
LICOMEDEリコメーデ Falsa è la voce che in mia Reggia avesse噂は 間違っている 私の王宮で lungo soggiorno il giovane Pelide:若いペリーデ【= アキッレ】が 長い滞在を 【↑】有している 【↑】という【噂は】: e s'ei tornasse, or troveria negatoそして 彼が 立ち去った 以上、今や 妨げられて 見付けるだろう l'asilo in tutto il regno:王国は 避難所を 全部で【≒ アキッレは 帰国したのだから、この王国のどこにも 彼が 身が潜める場所は 見付からないだろう】: Cerchisi 'n ogni lato; io ve'l permetto.捜しなさい あらゆる側で 【≒ くまなく 捜しなさい】; 私は 君たちに そのことを 許可する。 Che vuolsi più?何が さらに 望まれるのか? FENICEフェニーチェ Pensar chi ardisce maiいったい 誰が 厚かましくも 思うだろうか da magnanimo cor negato il vero?度量の大きな心から 真実が 否定されると。 Ma per servizio del comune onoreだが共通の名誉の義務のために 【≒ お互いに 名誉が 果たされるために】 accettisi l'offerta.申し出が 受け入れられるように。 LICOMEDEリコメーデ Il regno mio私の王国は vostro sarà, finche il restar v'aggrada.君たちのものになるだろう 【≒ 君たちの王国でもあろう】、留まることが 君たちに 気に入る 間は【≒ 君たちが 喜んで 滞在している限りは】。 FENICEフェニーチェ La generosa ospital gloria è quella,それは 心の広い もてなしの良い 誉だ、 che le Greche distingueそれは ギリシャの 【同胞たち】を 区別する dalle barbare genti: e violato野蛮な人々たちから: そして 汚された fu l'ospizio dal reo Paride ingrato. 【ギリシャ人の】歓待は 不愉快な 邪悪な パーリデによって。 |
lungo soggiorno il giovane Pelide: Pelide ペリーデ は アキッレの父称(父系の先祖の名を受けた名)。この場合は Achille の父 Peleo ペレーオ に因む。 e s'ei tornasse, or troveria negato / l'asilo in tutto il regno: troveria = troverà。主語は il regno。 ここでの negato は impedito と同義。妨げられた。 |
3. Aria Fenice |
Allegro 4/4 F major |
FENICEフェニーチェ Al tardar della vendetta復讐において 遅れた後で o la scorda, o non l'aspetta,【人が】 それを 忘れるにしても、それを 待たない【≒ 諦める】にしても、 e sen ride l'offensor.すると 攻撃者は そのことについて 嘲笑する。 Al fin l'empio scorger suole,ついには 不届き者は 気付くのが 常である、 che in esempio il Ciel lo vuole天が 命じることを 見せしめに 彼が gastigato dall'error.過ちが原因で 懲らしめられるのを。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
LICOMEDEリコメーデ O d'amicizia sante leggi, voiああ 聖なる友情の掟 おきて よ、おまえたち【= 掟】は dell'amico Peleo sentir mi fate私に 感じさせる 友情で結ばれたペレーオの più al vivo le paterne tenerezze.父親らしい優しさを より 強く。 Gli oracoli predetto han certa morte神託は 予言した 確実な 死を ad Achille, se a Troia ei volge l'armi.アキッレに、もし 彼が トロイアに 武器を 向ければ。 Son padre, amico son; romper tai nodi,私は 父親だ、私は 友だ; このような絆を、 di natura nemico敵対した本性において può chi padre non è, chi non è amico.【↑↑】破る ことができる 父親でない者が、そして 友でない者が【≒ こうした絆を、人間の本性に反して 破ることができるのは 父親でも 友でも ない者だ】。 Sì, viva occulto il giovinetto Achilleそうだ、とても若いアキッレは 密かに 生きている nella mia reggia: il voglion salvo i Numi se gli minaccian morte私の王宮の中で: 神々は 彼が 無事であることを 望んでいる たとえ 彼らが 彼に 死を 脅かしていても quand'ei tenti espugnar d'Ilio le porte.彼が イリオス【= トロイア】の城門を 陥落させる ことを試みる時には。 |
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4. Aria Licomede |
Andante e staccato 3/4 g minor |
LICOMEDEリコメーデ Nelle nubi intorno al fato宿命の周囲の雲に a' mortali non è dato人間には 与えられていない con lo sguardo penetrar.まなざしで 入り込むことは【≒ 宿命を包む雲の中を 見通すことは 人間には 許されていない】。 Dello scampo e della morte救いについて そして 死について chi predir sentì la sorte神託が 予言するのを 聞いた 人は allo scampo ha da pensar.救いについて 考えなければならない【≒ 死ぬか 死ぬのを免れるか 神託で 予言を 受けた者は 死を免れることを 考えなくてはならない】。 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 Dello scampo e della morte / chi predir sentì la sorte sorte は一般的に 運命 の意味で、そのままで採っても意味は通じるが、ここでは予言を与えるものである 神託(oracolo と同義)で採った。そうするとリコメーデのこの発言がアキッレについて述べていることがはっきりする。 |
5. Arioso e Recitativo Deidamia |
Larghetto 3/4 B-flat major |
SCENA Ⅱ第2場 Galleria terrena con veduta di campagna地面と同じ高さの回廊 田園の景色のある Deidamia con altre nobili fanciulle a' vari lavori, e Nereaデイアミーア 他の高貴な娘たちと一緒に いろいろな仕事中の、そして ネレーア DEIDAMIAデイダミーア Due bell'alme innamorate,恋をした 二つの 素晴らしい魂は、 care, fide, amanti amate,親しい、誠実な、愛し 愛された【二つの魂は】、 sono sole l'idea del diletto.喜びのの 唯一の 理想だ。 |
Due bell'alme innamorate, / care, fide, amanti amate, innamorate, care, fide, amanti amate, |
4/4 (C major) |
Dov'è Pirra? Che fa?ピッラは どこに いるのか? 彼は 何を しているのか? NEREAネレーア Dianzi la vidiほんの少し前 私は 見た 彼女が veloce damma seguitar correndo.素早いシカを 走って 追うのを。 DEIDAMIAデイダミーア Violenti diporti荒々しい娯楽が lunge da noi l'allettan sempre. Eurilla,いつでも 彼女を 私たちから遠くに 誘っている。エウリッラよ、 vanne in traccia e ver noi l'affretta. Oh quanto跡に向かって【≒ 彼女の後を 追って】 行きなさい そして 私たちの方に 彼女を 急がせなさい。ああ なんと temo che delle selve私は 恐れていることか 森の la cacciatrice dea non ce la involi,狩りの女神が 私から 彼女を かすめ取る 【↑】ことを、 per aver gara ad inseguir le belve.野生動物たちを 追って 競争を 持つ ために【≒ 獣の追跡を 競って】。 |
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larghetto 3/4 (C major) |
(Ma chi sa se mi riama(しかし 誰が 知っているのか 私の 愛にこたえていると il mio bene.私の最愛の人が。 |
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andante 3/4 (C major) |
Ahi! non vieneああ! 来ない con la brama熱望をもって ch'io l'aspetto.私が 待っている人は。 |
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adagio 3/4 (C major) |
Chi sa se mi riamaしかし 誰が 知っているのか 私の 愛にこたえていると il mio bene.私の最愛の人が。 |
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andante 3/4 (C major) |
Ahi! non vieneああ! 来ない con la brama熱望をもって ch'io l'aspetto.)私が 待っている人は。) |
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4/4 (C major) |
Nerea, ma tardar tanto ella non suole.ネレーアよ、ところで 彼女は これほど 遅れる のが常ではない。 Temo sinistro evento.私は 不吉な出来事を 恐れている。 NEREAネレーア Scender dal colle rimirar la puoi.君は 凝視する ことができる 彼女が 丘から 下りるのを。 DEIDAMIAデイダミーア (Brillar nuovo piacer nell'alma io sento.)(私は 感じている 魂の中で 新たな喜びが 輝くのを。) NEREAネレーア Cessar convien da' nostri遠ざからなければならない 私たちの 【↓】仕事から lavori a lei tanto odiosi; alfine【それは】 彼女に 大いに ひどく嫌われている; ついに sazia di selve e fere森に 飽き飽きして そして 野獣に 【飽き飽きして】 se ne andrà fra le amazzoni guerriere.彼女は 【いずれ】 戦争好きのアマッゾーネ【≒ アマゾネス】たちの中に 行ってしまうだろう。 |
sazia di selve e fere fere < fera = fiera 野獣 se ne andrà fra le amazzoni guerriere. amazzone は、ギリシャ神話に登場する、黒海沿岸にいたとされる女性部族。アマゾネス。武術に長けた女性兵の軍で勇猛に戦ったとされる。 |
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6. Aria Nerea |
Larghetto 4/4 G major |
NEREAネレーア Diè lusinghe, diè dolcezza,甘言を 与えた、優しさを 与えた non fatica, non asprezza,苦労ではなく、荒々しさ【≒ とげとげしい性格】ではなく、 sorte amica alla beltà.親切な運命は 美女に。 Nasce questa a molli affettiこれ【= 美女】は 柔らかな情愛に 生まれる e a temprar ne' fieri pettiそして 和らげるために 【生まれる】 残忍な胸の中の la crudel ferocità.非情な残酷さを。。 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 このアリアには初期稿がある ⇒ Appendici。 sorte amica alla beltà. beltà は ここでは bella と同様に 美女 で採った。美女は、優しさを天から授かって、男の荒々しい心を和らげるために生まれている、といった内容。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Ecco il mio ben. Tutt'i momenti, ahi lassa!ほら ここに 私の最愛の人が。全ての瞬間、ああ 哀れな! che quel vivace e vigoroso spirtoあの 生き生きとした そして 活気ある 心が da me lontano il trae, pena e timore私から遠くへ 彼を 引っ張る【すべての瞬間】、心配と 不安が combattono quest'alma;この魂と 戦っている; ma le porta al ritorno e gioia, e calma.しかし 帰りに【≒ 帰って来ると】 それ【= 魂】は それら【= 不安と心配 女性複数】に 持って来る 喜びを、そして 落ち着きを。 |
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5a. Arioso Deidamia |
Largo 3/4 B-flat major |
Due bell'alme innamorate,恋をした 二つの 素晴らしい魂は、 care, fide, amanti amate,親しい、誠実な、愛し 愛された【二つの魂は】、 sono sole l'idea del diletto.喜びの 唯一の 理想だ。 |
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7. Aria Achille |
Andante 4/4 F major |
ACHIILLEアキッレ Seguir di selva in selva森から 森へと 追跡することは la fuggitiva belva逃亡する 野獣を diletto egual non ha.同等の楽しみを 持たない。 L'appressi e lanci 'l dardo私が それ【= 野獣 女性名詞】に 近付き そして 私が 矢を 放つと rapido come il guardo,視線のように 素早く、 che morte alfin le dà.それ【= 矢】が ついに それ【= 野獣】に 死を 与えるだろう。 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
ACHIILLEアキッレ E sempre fisse vi ritrovo a questeそして 私は 認めている いつでも 君たちが 固定されているのを これらの opre d'ozio: sorgete. Al bel mattino無為の仕事に【≒ 私は 君たちが いつも こうした つまらない仕事にばかり 打ち込んでいるのを 目にしている】: 美しい朝に siegue lucido il giorno, e fresca auretta輝く昼間が 続く、そして 新鮮な微風が a ben più dilettose opre ne alletta.私たちを 誘う もっと 楽しい 仕事へと。 DEIDAMIAデイダミーア 【(他の娘たちに)】 Nell'ameno giardino心地よい庭園に itene a farvi adornoここから 行きなさい 飾らせに 君たちの il crine e il sen di fiori.髪を そして 胸元を 花々で。 ACHIILLEアキッレ Altre al berzaglio他の女たちは 的に o vibri il dardo, o le saette scocchi:あるいは 矢を 投げるがいい、 あるいは 矢を 放つがいい: altre in corsa gareggino.別の女たちは 走ることに 競うがいい【≒ 競走するがいい】。 DEIDAMIAデイダミーア 【(他の娘たちに)】 Partite,去りなさい、 vi sieguo.私は 君たちの 後を追う。 (Nerea e le altre partono)(ネレーアと 他の女たちは 去る) E tu mio ben...それで 君は 私の最愛の人よ… ACHIILLEアキッレ Pochi momenti,少しの瞬間【≒ 束の間だけでも】、 deh! lasciami bear ne'tuoi begli occhi.お願いだから!私を 君の美しい視線の中で 幸福に浸らせなさい。 DEIDAMIAデイダミーア Queste tue troppo ruvide faticheこれらの 君の あまりにも 荒っぽい骨折り【≒ 激しい運動】は ti faranno scordar le tenerezze君に 忘れさせるだろう 優しさを de'nostri occulti amori.私たちの 隠された愛の。 ACHIILLEアキッレ Anima mia,私の魂の人よ、 l'ozio fa l'alme vili:無為は 魂を 卑劣に する【≒ 何もしないと 気が 滅入る】 le generose solo寛容なものたち【≒ 寛容な魂】 は ただ nascono al dolce ardor d'un amor vero.真の愛の 甘い熱情に 【↑】だけ 生まれる。 DEIDAMIAデイダミーア E m'amerai, cor mio?それで 君は 私を 愛しているのであろうか、私の心の人よ? ACHIILLEアキッレ Sì, fino a morte.そうだ、死【に至る】まで。 DEIDAMIAデイダミーア Ahi! temo più che spero.ああ! 私は もっと 恐れている 私が 期待する よりも【≒ 私には 希望より 心配が 勝っている】。 |
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8. Aria Deidamia |
Affettuoso 3/8 c minor |
DEIDAMIAデイダミーア Quando accenderan quel pettoその胸に 火を点けるだろう時 i trasporti del valor,勇敢さの爆発が【≒ 武勇に夢中になって 心が 燃え上る時】、 a me pensa, o caro, allor,その時には、私のことを 思い起こしなさい、ああ いとしい人よ、 e a quel cor che tuo non è.そして その【私の】心に 君のもの【≒ 君の心】が ないことを【≒ 君の心が 私の心から 離れてしまっている ことを】 【思い起こしなさい】。 Le promesse dell'affetto,情愛の 誓いの言葉を、 idol mio, deh, non scordar;私の偶像よ、お願いだから、忘れるでない; alma avvezza a bene amareよく 愛することに 慣れている魂は è costante nella fè.誠実において 揺るぎない。 (parte) (去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。
e a quel cor che tuo non è. ここでは pensa che tuo (cor) non è a quel (mio) cor. と理解した。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
ACHIILLEアキッレ Alla delizia del cor mio, diletta,私の心の歓喜に、愛する女よ、 sempre fido sarò, sempre amoroso.私は これからもずっと 誠実でいるだろう、これからもずっと 情愛の深い【≒ 深い情愛を 与えるだろう】。 ma questi dolci affettiしかし これらの甘い情愛は aman troppo il riposo:あまりにも 静穏を 好んでいる: no, non arrestin corsoいいや、それら【= 甘い情熱】が 流れを 遮らないように ad altri bei diletti, e poscia a quelle他の 素晴らしい楽しみへの【流れを 遮らないように】、そして それから それらの da me aspettate opre d'onor più belle.私に 期待されている もっと素晴らしい名誉の行為 【↑】への【流れを 遮らないように】 。 |
e poscia a quelle / da me aspettate opre d'onor più belle. quelle は女性複数形なので opre に掛かる。aspettate は aspettare の過去分詞の女性複数形で、やはり opre に掛かる。= e poscia a quelle opre d'onor più belle [che sono] aspettate da me. |
9. Aria Achille |
Allegro 12/8 G major |
ACHIILLEアキッレ Se pensi, Amor, tu solo,愛の神よ、もし おまえが、ただ per vezzo e per beltà,愛撫によって そして 美しさによって、 regnare in questo sen,この胸の中に 君臨する 【↑↑】つもりである 【↑↑】ならば、 Amor, t'inganni.愛の神よ、おまえは 間違っている。 Non perde mai del volo決して 失わうことはない 飛ぶことの augel la libertà,自由を 鳥は、 che spesso al caro benそれ【= 鳥】は たびたび 愛する恋人へと rivolge i vanni.翼を 向ける【≒ 飛んで行く】。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅳ第4場 Camera部屋 Nerea, Deidamiaネレーア、デイダミーア NEREAネレーア L'uno è Fenice d'Argo,一人の男は アルゴスのフェニーチェだ、 l'altro è Nestore Pilio,もう一人の男は ピロスのネストレだ、 e Antiloco suo figlio è il terzo.そして 三人目は 彼の息子 アンティーロコだ。 DEIDAMIAデイダミーア E questiそれで この人【= アンティーロコ】が inchiesta a Licomedeリコメーデに 【↓】アキッレの調査を far d'Achille intendesti?することを 君は 理解していたのか? NEREAネレーア Tutta la Grecia occulto seco il crede,全ギリシャは 信じている 彼が 隠されていると 彼女らと共に【≒ 全ギリシャは アキッレが 娘たちに混じって 隠されていると 信じている】、 e minacciosa il chiede.そして それ【= ギリシャ】は 威嚇的に 彼を 求めている。 DEIDAMIAデイダミーア (Oh, qual periglio(ああ、なんという危険を correte, affetti miei!) Vana richiesta!おまえたちは 通過しているのか【≒ おまえたちは なんという 危険を 冒しているのだ】、私の情愛よ! NEREAネレーア Viene Antiloco: io parto.アンティーロコが来る: 私は 去る。 DEIDAMIAデイダミーア Deh, tutto a parte ad ascoltar t'arresta.お願いだから、立ち止まりなさい 離れて すべてを 聞くために。 Principessa, mi sei fedel? Di': m'ami?王女よ、君は 私に 忠実であるか? 言いなさい: 君は 私を 愛しているか? NEREAネレーア Quanto me stessa.私自身と 同じくらい。 DEIDAMIAデイダミーア Prova証 あかし を vedrò.私は 見よう。 NEREAネレーア Vedrai che bramo quel che brami.君は 分かるだろう 君が 切望していることを 私が 切望している ことを。 |
l'altro è Nestore Pilio, Pilio ピロス もしくは ピュロス は、ギリシャ、ペロポネソス半島の南西に位置する都市。ネストレ / ネストル はピロスの王。 e Antiloco suo figlio è il terzo. ウリッセは第3幕第4場で自らの正体を明かすまではずっとアンティーロコを装っていて、スキュロス島側もそう扱っている。 |
10. Aria Nerea |
2/2 b minor |
NEREAネレーア Sì che desioそうだ 私が 望むことだ quel che tu brami:君が 切望することが: maggior legamiさらに優れた つながりを amor non fa.愛は 作らない【≒ もっと強い 結びつきは 愛には 生み出せない】。 Quel del cor mio私の心のそれ【= 尊敬】は è onor perfetto:完璧な尊敬である: non ha dilettoそれ【= 私の心】は 喜びを 抱かない se il tuo non l'ha.もし 君のもの【= 君の心】が それ【= 喜び】を 抱かないならば。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 このアリアには初期稿がある ⇒ Appendici。 è onor perfetto: 初演時の印刷台本では è amor perfetto: 完全な愛である: になっている。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅴ第5場 Ulisse e dettaウリッセと 前の場の女【= デイダミーア】 ULISSEウリッセ Invano, o Principessa,虚しく、ああ 王女よ、 qui di Peleo venni a cercare il figlio;私は ここに ペーレオの息子を 探しに来た【≒ 私は ペーレオの息子アキッレを ここに 探しに来たが 無駄だった】; ma di speme delusaしかし 失望した希望の alto compenso fia大きな埋め合わせになるだろう del tuo padre real l'aiuto offerto,君の 国王の父の 申し出られた 助力は、 e i gran pregi ammirar di Deidamia.そして デイダミーアの 素晴らしい美点を 賛美することは。 DEIDAMIAデイダミーア Grato d'illustri principi l'arrivo令名高い君主たちの 到来は ありがたい è sempre a queste soglie.いつでも これらの 敷居【≒ この居所 ≒ この王宮】には。 D'Elena dunque il rattoそれでは エレナの誘拐に vuol Grecia vendicar?ギリシャは 復讐する つもりであるのか? ULISSEウリッセ Vuole il suo sdegnoその【= ギリシャの】怒りは 望んでいる che al Troiano ostinato強情なトロイア人に costino la perfidia ed il rifiuto不誠実と 拒絶は 要する【↑】ことを la rovina del regno.王国の崩壊を【= 強情なトロイア人たちが 【ギリシャの申し出を】不誠実に 拒否すれば トロイア王国が崩壊することになることを ギリシャの怒りは 望んでいる】。 DEIDAMIAデイダミーア Resti rea donna al suo rimorso in preda.邪悪な婦人は 彼女の後悔の餌食になるがいい。 Vil parmi la cagion di tanta guerra.それほどたくさんの戦争の原因は 私には 無価値だと 思われる【≒ 【エレナの誘拐は】 大戦争の原因になるほどの 価値はない と 私には 思われる】。 ULISSEウリッセ Ma in la bilancia dell'onor si pesaだが 名誉の秤 はかり において 重さがある più che il fallo, l'offesa.侮辱は 罪よりも【≒ 名誉の点で量れば 罪よりも 侮辱の方が 重い】。 Perdita poi maggiore要するに さらに重大な喪失は non v'è d'alta bellezza,ない 優れた美女の【喪失よりも】、 fonte del sol piacer, ch'è quel d'amore.喜びの唯一の源である、というのは それ【= 美女】は 愛のそれ【= 源】であるからだ【≒ 喜びの唯一の源泉である素晴らしい美女を 失うことよりも さらに重大な喪失は ない、というのは 美女は 愛の源泉である からだ】。 |
Perdita poi maggiore / non v'è d'alta bellezza, fonte del sol piacer, ch'è quel d'amore. = poi non v'è perdita maggiore [di quella] d'alta bellezza, fonte del sol piacer, ch'è quel d'amore. ここでは fonte del sol piacer は bellezza と並立で、che節 は 原因 を表していると理解した。 一方 che を bellezza に係る関係代名詞と理解し、 ch'è fonte del sol piacer, quel d'amore. それは 喜びの唯一の源泉であり、愛の源泉である と理解することもできる。 |
11. Aria Ulisse |
Andante larghetto 4/4 F major |
ULISSEウリッセ Perdere il bene amato愛する最愛の人を失うことは che il fato e amor ti dièそれを 宿命が そして 愛の神が 君に 与えた l'estremo è del dolor;【失うことは】 苦悩の限界だ【≒ この上ない苦悩だ】; ma del vederla ancorしかし また再び 見るよりは 彼女が ad un rivale in braccio,恋敵の腕の中にいるのを morte peggior non è.死は より悪くはない【≒ 恋敵の腕に抱かれた 彼女に 再会するよりは 死ぬ方が ましだ】。 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
furioso 3/4 d minor |
Furore disperato絶望した激情は t'agita l'alma allor;その時 君の魂を かき乱す; ognun dovrebbe armato誰もが 武装して teco punir l'error,君と共に 過ちを 罰する 【↑】に違いない、 perché; l'istesso affannoなぜなら 同じ苦しみを deve temer per sé.彼は 自分に対して 恐れる べきである 【↑】からだ。 (parte)(去る) |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Da questi scaltri ospiti greci è d'uopoこれらの ギリシャの 抜け目ない 客たち から lunge tener, quanto possibil fia,遠くに しておくことが 【↑】必要である、可能であろう限り、 il travestito Achille,女装した アキッレを、 l'amata anima mia.最愛の 私の魂の人を。 In dolce corrisposto affetto ascoso隠された 甘い 報いられた情愛【≒ 相愛】において chi è di me più felice?誰が 私よりも さらに幸福であるのか? Soccorri i tuoi seguaci Amor pietoso.慈悲深い愛の神が おまえ【= 愛の神】の信奉者たちを 援助するように。 |
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12. Aria Deidamia |
Allegro 4/4 A major |
DEIDAMIAデイダミーア Nasconde l'usignolサヨナキドリは 隠す in alti rami il nido巣を 高い枝々の中に al serpe e al cacciator,ヘビから そして 猟師から、 ma il volo spesso e fidoしかし 度重なる そして いつもの 飛行が dove lo porta amor,愛が それ【= サヨナキドリ 男性名詞】を 連れて行く 場所を che il può tradir non sa.暴く かもしれない ことを それは 分かっていない。 Lontana, sì, ma in pene,離れた、そうだ、しかし 苦しんで、 quest'alma dal suo bene,この魂は その最愛の人から、 più l'arte ingannerà.狡猾を 欺くだろう【= 私の心が 苦しみつつも 最愛の人から 離れることで 狡猾な追跡の目を 欺くことができるだろう】。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
ATTO SECONDO | |||
13. Sinfonia |
A tempo giusto 4/4 d minor |
前半4小節、後半8小節、それぞれリピート。 | |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅰ第1場 Giardino庭園 ACHIILLEアキッレ Deidamia qui veggo私は 見ている ここに デイダミーアが appressarsi, e un guerrier seco: chi mai近付いているのを、そして 彼女と一緒に 兵士が 【近付いているのを】: いったい 誰なの qui non veduto ancor, fia questi? Oh quantoだろうか その人は ここでは まだ 見たことがない? ああ なんと vago è quel bianco e tremulo cimiero美しいことか あの 白く そして 震える【≒ 揺れる】兜の飾りが su quel dorato elmetto!あの 金色に輝く 兜の上の! Ben se gli assetta il fino usbergo! E pende上質の鎧が 見事に 彼に 整えられている ことか【≒ 彼は なんと 素敵に 立派な鎧を 身に着けていることか】! そして 掛かっている【ことか】 leggiadro in ver dal poderoso fianco本当に 優美に 勇者の特徴を持つ 脇腹に il brando decisor d'impegni! In quella交戦の決定者である剣が【≒ 彼の 勇者らしい腰に 戦いに決着をつける剣が なんと実に優美に 下がっていることか】! あの siepe ascondomi a udir quel ch'ei favella.生垣に 私は 隠れる 彼が 話すことを 聞くために。 Scena Ⅱ第2場 Ulisse e Deidamiaウリッセと デイダミーア ULISSEウリッセ Esser non può mortale人間である はずがない chi sia di te più bella.君よりも さらに美しい人は。 Se il perfido Troian, pria che a Micene,もし 不実なトロイア人【= パーリデ】が、ミュケナイに よりも 前に approdato qui fosseここに 上陸していたならば d'Elena la bellezza or non porrebbe今 エレナの美しさが la Grecia e l'Asia in guerra.ギリシャと アジアを 戦争に 【向かわせる】 ことはあり得ないだろうに。 DEIDAMIAデイダミーア Dolce è l'ascoltar la meritata lode;相応しい称賛を 聞くことは 快い: ma questa tal non è: venne al tuo labbroしかし これ【= その称賛】は そのようで【= 相応しく】はない: それ【≒ 称賛】は 君の口へと 来た dal cor gentile, e dal cortese sguardo.洗練された心から、そして 洗練されたまなざしから。 ULISSEウリッセ Venne dal core, è vero;それは 心から来た、それは 真実だ; dal cor che i primi tuoi sguardi vezzosi心から それを 君の 最初の 愛らしいまなざしが ferito han sì, che risanarlo soliこのように 傷つけた、それを 癒す altri sguardi potran dolci amorosi.ことができるだろう 別の 愛情のこもった 優しい 眼差し 【↑】だけが Non mi rispondi? E di vermiglia rosa君は 私に 応えないのか? ところが 鮮紅色のバラを spargi le guance dilicate? Un fido君は 繊細な両頬に まき散らしているのか【≒ それなのに 君は 頬を 赤く 染めているのか】? 誠実な amor dettò quel ch'ora il labbro dice.愛が 言ったのだ たった今 【私の】口が 言ったことを。 DEIDAMIAデイダミーア Risposta dar, qual brami, a me non lice.返事を与えることは、君が切望しているような、私には 都合がよくない。 ULISSEウリッセ Ma pria la speme da te sol dipende.だが なによりも 希望は ただ 君 次第である。 Sdegnoso forse è il vago tuo rossore?君の かわいらしい赤面は 憤慨しているのか? Rispondimi.私に 返事しなさい。 DEIDAMIAデイダミーア Non deggio.私は するつもりはない。 ULISSEウリッセ T'offende l'amor mio?私の愛が 君を 怒らせているのか? DEIDAMIAデイダミーア Lo penso onore.私は それは 光栄だと 思っている。 ULISSEウリッセ Ahi! che sebben sincero,ああ!誠実なのに、 Antiloco ti spiace!アンティーロコが 君に 嫌われる 【↑】とは! DEIDAMIAデイダミーア Piace chi s'ama, è vero,愛する人が 気に入られる、それは 真実だ、 ma non s'ama per questo, ognun che piace.しかし だから【といって】 愛さない、気に入られる めいめいを 【≒ だからといって 愛する人を 誰でも 気に入る わけではない】。 ULISSEウリッセ Deh, un guardo alletti almen la mia speranza;お願いだから、せめて 一瞥が 私の希望を そそのかすように; costanza e amor vogliono pur, ch'io speri.意志の強固と 愛もまた 望んでいる、私が 希望を抱くことを。 DEIDAMIAデイダミーア Molto possono uniti amor, costanza.結合された 愛と、意志の強固は 多くのことを できる【≒ 愛と誠意が 結びつけば 何でもできる】。 |
vago è quel bianco e tremulo cimiero cimiero は、兜の上に据える飾り。羽飾りのことが多い。 il brando decisor d'impegni! In quella 動詞 impegnare には 交戦するの意味があり、ここでの impegnio も 交戦,戦い を意味すると思われる。decisor は 決着を付ける者。 dal cor gentile, e dal cortese sguardo. gentile も cortese も 親切な,礼儀正しい,洗練された と同じような意味で、ここではそれらが否定的な意味合い(手馴れた のように)で用いられている。スキュロス島は離島で、ギリシャ本土から来たウリッセの話しっぷりが良くも悪くも上品で洗練されていることにデイダミーアは不快感を示している。 Antiloco ti spiace! ウリッセはアンティーロコの名を騙り、なりすまして行動している。 |
14. Aria Ulisse |
Andante larghetto 3/8 E major |
ULISSEウリッセ Un guardo solo,たった一つの 眼差しを pupille amate,愛する 両目よ、 conforto al duolo,苦悩への慰めである【眼差しを】、 non mi negate:私に 拒むでない: ma un guardo, o care,だが 眼差しを、ああ 愛するものたち【= 愛する両目】よ、【拒むでない】 in cui sfavilleその【= 両目の】中では 光り輝いている d'amor la face.愛の松明 たいまつ が Ogn'altro sguardo他のいかなる眼差しも che a me volgeteそれを おまえたち【= 両目】が 私に 向ける è freddo, è tardo:冷たく、鈍い【≒ 不承不承だ】: deh, mi rendeteお願いだから、与えなさい pietose, vezzose,哀れみ深く、愛らしく、 al cor la pace.【↑↑】私の 心に 平安を。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 è freddo, è tardo: ここでの tardo は (動作が)遅い,鈍い ⇒ 気が重い,気乗りしない,渋々な と理解した。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Oh, che importuni affetti!ああ、なんと 迷惑な情愛だ! Ma dov'è il caro Achille?ところで 愛するアキッレは どこに いるのか? Son pur soletta, e com'ei suol, non viene?私は まさに 独りだ、そして 彼が するのが常であるように、彼は来ないのか【≒ いつもなら ここに来る彼だが、来てないのか】? perché; tal lontananza?なぜ このような 離れていることが? ACHIILLEアキッレ 《Molto possono uniti amor, costanza.》『結合された 愛と、意志の強固は 多くのことを できる【≒ 愛と誠意が 結びつけば 何でもできる】。』 DEIDAMIAデイダミーア Quivi nascosto...そこに 隠れていた… ACHIILLEアキッレ Il tutto intesi. Oh quanto私は すべてを 聞いた。ああ なんと ti dilettaron di beltà le lodi!美しさの称賛が 君を 喜ばせている 【↑】ことか! Ti piacquero gli affetti ed i sospiri!情愛と 溜め息は 君の 気に入った! Avresti fin al tramontar del giorno,君は 陽が 沈むまで、 s'ei non partiva, udito il nuovo amante.もし 彼が 去らなかったならば、新しい 愛する者【≒ 求愛者】【の話】を 聞いていたことだろう。 DEIDAMIAデイダミーア Ma non doveva io già...しかし 私は まったく するつもりでなかった【≒ そんなつもりは まったく なかった】… ACHIILLEアキッレ Taci, incostante!黙りなさい、気紛れな者【≒ 浮気者】め! Fremer lo sdegno io mi sentia nel core.私は 心の中に 感じている 怒りが 震えているのを。 DEIDAMIAデイダミーア Ma non t'offesi o caro.しかし 私は 君を 侮辱していない ああ いとしい人よ。 ACHIILLEアキッレ 《Non m'offende il tu'amor; lo penso onore.》『君の愛は 私を 怒らせていない; 私は 光栄に 思っている。』 Quando ti cominciò parlar d'affetto,彼が 君に 情愛を 話し始めた 時、 compor di serietà dovevi il volto,君は 顔に 真面目さを 作るべきだった【≒ 君は 真剣な表情を 浮かべるべきだった】。 e dir《Parlami d'altro, o non t'ascolto.》そして 言う【べきだった】 『私に 他のことについて 話なさい、さもないと 私は 君【の言うこと】を 聞かない。』 DEIDAMIAデイダミーア Rimproveri crudeli a un'innocente.君は 無実の者に 残酷に 叱っている。 ACHIILLEアキッレ No che non è fedele a un solo oggettoただ一人の対象【= 相手】に 誠実なのではない chi gli affetti e i sospir d'un altro sente.他の人の 情愛と 溜め息を 聞く 者は。 DEIDAMIAデイダミーア Pace, bell'idol mio, sai che costante仲直りを、私の美しい偶像よ、君は 分かっている 【私が】 忠実であることを solo a te...ただ 君だけに… ACHIILLEアキッレ Va, infedele, al nuovo amante.行きなさい、不実な者め、新しい愛する者【≒ 求愛者】のところに。 |
Ma non doveva io già... この場合の già は強調。 No che non è fedele a un solo oggetto no che 否定文 は、否定文の強調と理解した。これは第23番のデイダミーアのアリアでも用いられている。 |
15. Cavatina Achille |
4/4 B-flat major |
ACHIILLEアキッレ Lasciami.私を 放っておきなさい。 Tu sei fedele?君は 誠実なのか? Vattene.行ってしまいなさい。 Tu sei costante?君は 忠実なのか? Ah, lasciami, infedele!ああ、私を放っておきなさい、不実な者め! Non posso amarti più.私は もう 君を 愛することはできない。 Scegliere私は 選び vuò un altr'oggetto,たい 別の対象【= 相手】を、 ardere燃え 【たい】 d'un altro affetto.別の情愛で。 Che potrai dir, crudele?君が 何を 言えるだろうか、残酷な人よ? Farò quel che fai tu.私は しよう 君がしていることを。 (parte)(去る) |
単一形式のカヴァティーナ。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Se l'ira del mio bene, io non pensassiもし 私の最愛の人の怒りが、私が 思わなければ più dispetto d'amor che vero sdegno,真の怒りである よりも 愛の絶望である と【≒ 私の最愛の人が 本当に怒っているのではなく 愛の絶望で怒っている と思わないと】、 m'opprimerebbe l'alma aspro dolore.厳しい苦悩が 私の魂を 重苦しくすることだろう。 Ma... pur ascolto, ahi lassa!しかし… 相変わらず 私は 聞いている、ああ 哀れな女だ! le voci del timore.不安の声を。 Scena Ⅲ第3場 Nerea e dettaネレーアと 前の場の女【= デイダミーア】 NEREAネレーア Il real Licomede,王のリコメーデが、 de'prencipi a diporto,君主たちの娯楽のために、 di caccia dilettosa ordin già diede;楽しい狩りの 指示を与えた; e vuol, qual è nostr'uso,そして 彼は 求めている、私たちの習わしであるように、 che con l'altre donzelle他の若い娘たちと共に ne siam le ninfe cacciatrici.私たちが それについて 猟師のニンフであることを【≒ 私たちが 狩りにおいて 狩りのニンフたちに 扮する ことを】。 DEIDAMIAデイダミーア Ahi lassa!ああ 哀れな女だ! NEREAネレーア Perché; sospiri?なぜ 君は 溜め息を吐いているのか? DEIDAMIAデイダミーア Ah, che il secreto mio,ああ、私の秘密が、 fidato al tuo bel cor, viepiù s'espone.【その秘密は】 君の 立派な心に 打ち明けられた、ますます 人目に晒される 【↑↑】からだ。 Quello spirto, quel brioあの精神が、あの快活が sveleran quel ch'è Pirra: e chi può mai明らかにするだろう ピッラである人【≒ ピッラの正体】を: そうしたら いったい 誰が distorla dal venir?彼女を 【戦争に】 行くことから 思いとどまらせる 【↑】ことができるだろうか? NEREAネレーア Dianzi Fenice先刻【≒ 少し前に】 フェニーチェが di beltà mi diè lode,私の美の 称賛を 与えた、 e d'affetti parlò.そして 情愛について 語った。 DEIDAMIAデイダミーア Lo stesso fece同じことを した Antiloco ver me.アンティーロコが 私に対して。 NEREAネレーア Nostre lusinghe,私たちの 甘言が、 e quel di Pirra disprezzante orgoglio,そして ピッラの あの 軽蔑的な自尊心が、 faran sì, che terrem gl'illustri amantiそのように するだろう私たちが 令名名高い 愛する者たち【≒ 求愛者たち】を 保つことを lunge da lei. Sappi aiutar la frode彼女から 離れて【≒ 私たちが 彼らを 甘言で釣ることで、そして ピッラの あの 人を寄せ付けない誇り高さによって、私たちは あの名高い(ギリシャの君主たちである)求愛者たちを ピッラから 遠ざけることができるだろう】。君は 欺瞞を 手伝う ことができる con finti sguardi, e docili maniere.偽のまなざしで、そして 従順な物腰【で】。 DEIDAMIAデイダミーア L'avviso sieguirò.私は 見解に 従おう。 NEREAネレーア Lungo se 'l gode長い間 それ【≒ 喜び】を 自分に 楽しむ chi maneggia con arte il suo piacere.彼の喜びを 手管を用いて 操る者は【≒ 手管を用いて 相手の喜びを 操れる者は 長いこと 相手の喜びを 我が物に享受することができる】。 |
Il real Licomede, / de'prencipi a diporto, / di caccia dilettosa ordin già diede; ここから、リコメーデ王が直々に狩りの手配をしていることが分かる。『ピッラ』が狩りに夢中になれば正体が暴かれかねないにもかかわらず、ウリッセたちを招いて狩りを催すということは、リコメーデ王はむしろその機会を提供しているということになる。 fidato al tuo bel cor, viepiù s'espone. ここでの fidato < fidare は affidare (秘密を)打ち明ける の意味。 |
16. Aria Nerea |
Andante 4/4 A major |
NEREAネレーア D'amor ne'primi istanti愛の最初の瞬間において facili son gli amanti愛する者たち【≒ 求愛者たち】は 簡単に a farsi lusingar,ご機嫌を取らさられられる、 solo per vanità.ただ 虚栄心によって【≒ 愛が始まったばかりの頃は 求愛者の虚栄心をくすぐるのは 簡単だ】。 Del merto lor l'effetto彼らの功績の結果 であると credono quell'affetto,彼らは 信じている その情愛は【≒ 彼らは 愛は 彼らの求愛によって得られた成果だと 思っている】、 e il vanto voglion darそして 彼らは 誇りを 与える ことを欲している più a sé che alla beltà.美しさに よりも 自分自身に【≒ 彼らは 美女を 誇りたいのではなく 自分の手柄を 自慢したいのだ】。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 Del merto lor l'effetto / credono quell'affetto, = [loro] credono che quell'affetto sia l'effettodel loro merto. e il vanto voglion dar / più a sé che alla beltà. darsi vanto で 自らに 誇りを 与える ≒ 自慢する。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Lusinghe allettatrici魅惑的だ son queste, sì, ma son lusinghe sole.これらの 【↑】ご機嫌取りは、そうだ、しかし それらは 単に ご機嫌取りでしかない。 Raro ben si rannodaとても 稀に 再び結ばれる laccio d'amor che dallo sdegno è sciolto.絆が 愛によって それが 怒りによって 解けるよりも【≒ 怒りによって 絆が 解けることに比べたら 愛によって 絆が 再び結ばれるのは 極めて稀なことだ】。 Speme allettar mi vuole,希望は 私を 誘う ことを望んでいる、 e pur sol del timor le voci ascolto.けれども 私は 不安の声だけを 聞いている。 Forse Achille ricopreことによると アキッレは 塗る di sdegnoso color nuovo pensiero憤激した色を 新たな考えに d'abbandonarmi. Oh Dei!私を 棄てるという【≒ もしかしたら アキッレは 私を 置き去りにするという さっき生じたばかりの考えに 怒り狂った感情を 上塗りするかもしれない】。ああ 神々よ! Come viver potrò, se questo è vero.どうやって 私は 生きていけるのだろうか、もし それが 本当ならば。 |
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17. Aria Deidamia |
Largo assai 3/4 f-shap minor |
DEIDAMIAデイダミーア Se il timore il ver mi dice,もし 不安が 私に 真実を 語るならば、 infelice, abbandonata,不幸に、棄てられて、 sorte ingrata, io morirò.恩知らずな運命よ、私は 死ぬだろう。 Ma diletta a mia costanza,しかし 私の意志の強固に いとしく【≒ 私の誠実さを 好ましく思って】、 la speranza a dir mi viene希望が 私に 語りに 来ている che 'l mio bene io placherò.私の最愛の人を 私は 宥めるだろう という。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅳ第4場 Licomede, Ulysseリコメーデ、ウリッセ LICOMEDEリコメーデ Della caccia i diporti狩りという 【↓】とても楽しい 娯楽を deliziosi ha il regno mio. La reggia私の王国は 持っている。王宮は siede a specchio dell'onde,波々の岸辺に【≒ 海辺に】 位置している、 e quegli ameni campi e ombrosi colliそして あれらの 心地よい野原と 陰の多い軽く【≒ 鬱蒼とした】丘が le fanno verde anfiteatro intorno.それら【= 波々 女性複数名詞 ≒ 海】の周囲に 緑の円形劇場を 作っている。 ULISSEウリッセ Degno regal riposo相応しい 王の静穏だ d'inclito eroe, che pien di gloria e d'anni光栄ある英雄に、その者は 栄誉に 満ちて そして 年々に【満ちて】【≒ 年老いて】 godesi un meritato almo soggiorno.【栄誉と年々に】値する 至高の 滞在地【≒ 安息の地】を 楽しんでいる。 LICOMEDEリコメーデ In quelle piagge, o in quelle annose selveあれらの海岸で、あるいは あれらの 年数を経た【≒ 古い】森で sian oggi vostra dilettevol preda今日 君たちの 楽しい獲物に なるように le fuggitive belve.逃亡する野獣が。 M'appagherò del sol racconto. Un tempo,私は ただ一つの話で 満足しよう。ずっと以前に、 la corsa e il dardo erano i miei diletti,走ることと 矢は 私の喜びだった、 le fatiche più grate. Il piè non puote最も楽しい 骨折り【だった】。足は più il comando eseguir dei desir miei,もう 私の欲求の命じることを 行為に移す ことができ 【↑】ない【≒ もう 足は 思い通りに 動かない】。 ma in tranquilla vecchiezzaだが 穏やかな老年を ozio felice anche mi dan gli Dei.さらに 幸せな無為を 神々は 私に 与えているのだ。 |
siede a specchio dell'onde, a specchio 岸辺に。specchio 鏡 が 水面 を意味している。 d'inclito eroe, che pien di gloria e d'anni pieno d'anni = annoso 年数を経た,年老いた。 la corsa e il dardo erano i miei diletti, corosa は 獲物を追って森の中を駆け巡ること、すなわち 狩り を意味すると思われる。 |
18. Aria Licomede |
Larghetto 3/4 B-flat major |
LICOMEDEリコメーデ Nel riposo e nel contento静穏の中で そして 満足【≒ 喜び】の中で godo e sento私は 喜ぶ そして 私は 感じる lieve il peso dell'età.軽く【≒ ほんの少しばかり】 年齢の重さを。 E la vita mia contenta,そして 私の 満ち足りた人生は lieta e lenta喜ばしく そして ゆっくりと alla meta se ne va.到達点へと 進んでいる。 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
19. Coro Deidamia Ulisse Coro |
2/2 F major |
Scena Ⅴ.第5場 I cacciatori e le cacciatrici appariscono.猟師たちと 猟師の女たちが 現れる。 ULISSE E COROウリッセ と 合唱 Della guerra la caccia ha sembianza,狩りは 戦争と 類似を持っている【≒ 狩りは 戦争に 似ている】、 sono scuola di Marte le selve,森は マルテ【= マルス,軍神】の学校である、 v'è coraggio, fatica e costanza,勇気が、苦労が そして 意志の強固が ある in seguir e in combatter le belve.追跡する時 そして 戦う時 野獣たちを/と。 DEIDAMIA E COROデイダミーア と 合唱 E poi dopo l'affanno e il diporto,そして それから 息切れと 楽しみの後には、 son amor e riposo il conforto.愛と 憩いが 慰めである。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式の合唱。 合唱は、混成4部で書かれており、初演時には独唱者たちによって歌われたと思われる(日本ではこれを コーロ と呼んで区別することが多い)。 |
Sinfonia |
2/2 F major |
Scena Ⅵ第6場 Foresta. Siegue al Coro una breve Sinfonia di caccia.森林。合唱の後に 短い 狩りのシンフォニアが 続く。 |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
Fenice e Ulisse, e poi Nereaフェニーチェと ウリッセ、そして それから ネレーア FENICEフェニーチェ (ad Ulisse)(ウリッセに) Inseguito da' veltri俊敏な猟犬たちに 追跡されて rapido cervo di ramose corna枝分かれした角を持った 俊敏なシカが venir da lunge mira.遠くから来るのを 見なさい。 Vanne a quel varco: io resto,あの抜け道に ここから 行きなさい: 私は 留まる、 se il tratto manchi, ad aspettarlo in questo.もし 君が 【弓を】引くことに 失敗した時に、ここで それ【= シカ 男性名詞単数】を 待つために。 (Ulisse parte)(ウリッセは 去る) NEREAネレーア Teco sarò, ma il primo colpo io bramo.私は 君と一緒に いよう、しかし 【シカへの】 最初の一撃を 私は 切望している。 FENICEフェニーチェ Tuo, ninfa bella, siane pur l'onore:美しいニンフよ、それについて それ【= 一撃】も また 君の名誉で あるように: s'è di tua mano il dardoもし 君の手の 矢が come quei del tuo sguardo all'alma mia,私の魂に対して 君の眼差しの それら【≒ 矢 複数】のように、 lanciato il colpo, inevitabil fia.一撃を 投げつけた 【↑↑】ならば、それ【= 君の手の矢】は 避けられないだろう。 NEREAネレーア Di gentil cortesia vago concetto!洗練された礼儀正しさの 優雅な発想だ! ma non di vero affetto.しかし 真の情愛ではない。 Forse, qual d'Argo alle beltà, mi faiおそらく、アルゴスの美女に対して のように、君は 私に している amorose parole e dolci vezzi;愛の言葉を そして 甘い わざとらしい仕草【≒ 世辞】を; poi nel cor te ne ridi, e mi disprezzi.その上 君は 心の中で そのことを 嘲笑している、そして 私を 嘲っている。 FENICEフェニーチェ Dalle fiamme d'amore愛の炎から libero finché qui giunsi ebbi 'l seno,解き放たれた 胸【≒ 心】を 私は 持っていた 私が ここに 来るまでは、 perché in Argo non vidiなぜなら アルゴスでは 私は 見なかったからだ bellezza a quella ugual cui parlo e vedo.私が 話している そして 見ている 人と 同じくらいの 美女を。 NEREAネレーア Men l'eroe veggo in te che il cacciatore.私は 君により少なく 英雄を 見ている 猟師よりも【≒ 君は 私には 英雄よりは 狩人に 見える】 Giunger la preda vuoi君は 獲物に 追いつくことを 望んでいる per non curarne poi. No, non ti credo.とはいえ それに【= 獲物に】 関心を持ってるためではなく。いいや、私は 君を 信じていない。 |
poi nel cor te ne ridi, e mi disprezzi. ne = di ciò。ridersi di - ―を 嘲笑する なので、te ne ridi 君は そのことを 嘲笑する。 per non curarne poi. No, non ti credo. ne = di quella = della preda。 |
20. Aria Nerea |
Andante 4/4 G major |
NEREAネレーア Non ti credo, non mi fido,私は 君を 信じていない、私は 【君を】 信頼していない、 maggior prova al ver si vuole;もっと大きな証 あかし が 真実のために 求められている; non sospiri, non parole,溜め息は、言葉は、 bastan l'alma a incatenar.魂を 捕らえるには 十分で 【↑】ない。 Lo concedo, ch'un infido私は そのこと【= che節】を 認めている、信用の置けない男は disinvolto è nel momento,一瞬で 気兼ねしなくなる【≒ 親しげになる】 【↑】ことを、 ma disciolto, suol qual ventoしかし 解ける【≒ 気が変わる】 【↑】ことを 、風が col momento poi cangiar.その後に 一瞬で 変わるのが 【↑】常である 【↑】ように。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅶ.第7場 Ulisse e Feniceウリッセと フェニーチェ ULISSEウリッセ Ninfa, da noi non vista ancor, veloceニンフが、私たちから ずっと 見られない【≒ 私たちに 姿を見せずに】、素早く seguia quel cervo, lo raggiunse, e il dardo例のシカを 追った、それに 追いついた、そして 矢を ben d'appresso vibrò, colpì, l'estinse,十分に 近くから 彼女は 投げた、彼女は それを 死なせた、 poi rinselvossi, altro a inseguir. Fenice,それから 彼女は 森の中に入り込んだ、別のもの【≒ 別のシカ】を 追うために。フェニーチェよ、 credi tu sciolta d'amoroso laccio君は 信じているか 愛の絆から 縛られていないと Deidamia?デイダミーアは【≒ 君は デイダミーアが 恋に落ちていないと 思うか】? FENICEフェニーチェ Quell'innocente aspettoあの 純真な様子が tal idea ne comparte:それについて そのような見解を 許す【≒ 彼女の純真な様子から それについては こうした見解が 認められる】: un'arte è forse.おそらく それは 術 すべ だ【≒ 彼女は 純真な様子を 装っている】。 ULISSEウリッセ È certamente un'arte.確実に それは 術 すべ だ。 Presa è d'amor.彼女は 愛に 捕らえられている。 FENICEフェニーチェ Chi è dunqueそれでは 誰なのか l'amato? Un di noi forse è quello.恋人は? ことによると その男は 私たちの中の 一人だ。 ULISSEウリッセ No,いいや、 ma il giovinetto Achilleそうではなくて とても若い アキッレだ in vesta femminil. Quel colpo, al certo,女性の服を着た。あの一撃は、確実に lanciata fu da destra右手から 放たれた di viril forza, e nel ferir maestra.男の力の【右手から】、そして 傷を負わせることに 熟達した【右手から】。 Va sull'avviso, osserva注意を払うようにしなさい、観察しなさい i moti e i guardi.動き【≒ 行動】を そして 視線を。 FENICEフェニーチェ Oh quantoああ なんと scaltro sei! Nella caccia,君は 抜け目のないことか! 狩りで、 più che di fere, andrò d'Achille in traccia.私は 野獣たちの【跡】よりも アキッレの跡を 行こう。 |
poi rinselvossi, altro a inseguir. Fenice, rinselvossi = si rinselvò tal idea ne comparte: この場合の compartire は concedere 譲る,許す,認める と同義。 di viril forza, e nel ferir maestra. この maestro は形容詞 熟達した。女性単数形で destra 右手 に係る。 |
21. Aria Fenicio |
2/2 c minor |
FENICEフェニーチェ Presso ad occhi esperti giàまったく 熟達した 両目の 傍では ne'misteri dell'amor,愛の秘密に、 sia guardingo amante cor愛する心は 用心深くなるように che sue fiamme vuol celar.それ【= 愛する心】は その【心の】炎を 隠したい【≒ 愛の秘密に 精通した目が 傍にある時には、愛の炎を 隠そうとする 愛する心は 気を付けなくてはならない】。 Quando sola è la beltà,美女が 【熟達した 両目から 離れて】 独りでいる 時には、 l'accarezzi e ammiri allor;その時は 彼女は 彼を じっと見つめるがいい そして ほれぼれと見るがいい; un sol guardo, ed un rossor,【そうでないと】 たった一つの凝視が、そして 赤面が、 un sospir le può svelar.溜め息が それら【= 炎 女性名詞複数形】を 暴く かもしれない。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅷ.第8場 Achille e Ulisseアキッレと ウリッセ ULISSEウリッセ Pochi momenti a me, ninfa vezzosa.私に 少しの瞬間を 私に、愛らしいニンフよ。 ACHIILLEアキッレ La caccia forse non t'aggrada?狩りは ことによると 君に 気に入らなかったのか? ULISSEウリッセ Allettami私を 魅了している la cacciatrice più.もっと 猟師の女が ACHIILLEアキッレ Dimmi, potrei私に 言いなさい、君は saper chi più fra noi分かる 【↑】ことができるのだろうか 私たちの中で 誰が par bella a gli occhi tuoi?君の目に 最も美しいと 思われるか? ULISSEウリッセ Quella tu sei.君が その女だ。 ACHIILLEアキッレ Parve a tutte però che Deidamiaけれども 皆には 思われていた デイダミーアは pria t'accendesse il sen.前に 君の胸に 火を点けた 【↑】ように。 ULISSEウリッセ Te vista ancoraまだ 君を 見 io non avea. D'amor nemica è quella:てなかった 私は; あの女は 愛の敵だ: tu no 'l sei forse; e forse ancor più bella.おそらく 君は そのような者では ない; そして おそらく さらに もっと 美しい。 ACHIILLEアキッレ Valoroso e sagace, apposto in parte有能な そして 抜け目ない、部分的に 笑い物にされ tu sei. Non son nemica io degli amanti,ている 君は【≒ 君は 勇敢で 抜け目ないが、笑い物にされているところもある】。私は 愛する人たち【≒ 求愛者たち】の 敵ではない、 ma nemica d'amor: n'amo il corteggio,そうではなく 愛の敵だ: 私は 求愛【されること】は 好きでない、 ma impero sul mio cor mai non avranno:しかし 私の心の支配権を 彼ら【= 愛する人たち ≒ 求愛者たち】は 決して 手に入れないだろう: Spergiuri et infedeli,偽証者たち【≒ 偽りの誓いを立てる者たち】は そして 不実な者たちは、 vantan fede ed affetto信頼と 情愛を 誇る sol per conquista del presente oggetto.ただ 目下の対象の征服のためだけに。 Ma perdo il mio piacer.それはそうと 私は 私の喜びを 失っている【≒ 私は つまらない】。 ULISSEウリッセ Deh, più dimora.お願いだから、さらに 留まりなさい。 Spirto maggior del femminil costume女性らしい衣装よりも より大きな精神を scorgo in te.私は 君に 識別している【≒ 女の服に不釣り合いの 素晴らしい精神を 私は 君に 見出している】。 ACHIILLEアキッレ Scaltro sei: ben conoscesti君は 抜け目がない: 君は よく 心得ていた ch'amo la lode; e lusingar mi sai.私が 称賛を 好き なことを; そして 君は 私に お世辞を言うことが できる。 Scena Ⅸ.第9場 Deidamia in disparte, e dettiデイダミーア 離れて、そして 前の場の人たち ULISSEウリッセ Ma più amar ben poss'io.しかし 私は もっと うまく 愛することができる。 Deh, vezzoso idol mio,お願いだから、私の 愛らしい偶像よ、 mia fé, mia destra, accogli. Amor disciolta私の誠意を、私の右手を、受け入れなさい。愛は 解け lasciar non può tanta beltà. Tu ridi?させる ことができない これほどの 美女を。君は 笑っているのか? ACHIILLEアキッレ Rido di te; Deidamia t'ascolta.私は 君を 嘲り笑っている。デイダミーアが 君を 聞いている。 |
ma nemica d'amor: n'amo il corteggio, ここでの corteggio は corteggiamento 求愛 と同義。 |
22. Aria Ulisse |
4/4 g minor |
ULISSEウリッセ (verso Deidamia)(デイダミーアに向かって) No, quella beltà non amo,いいや、私は あの美女を 愛していない、 che l'amor mio sprezzò.その者は 私の愛を 見下した【≒ 撥ね付けた】。 (ad Achille)(アキッレに) Sì, bella, te sola io bramo:そうだ、美女よ、私は 君だけを 熱望している: quel guardo mi piagò,その眼差しは 私を 傷つけた、 e quel mi sanerà.そして それが 私を 癒すだろう。 A questa orgogliosetta,この 高慢な娘っ子に、 mio ben, non sii fedele:私のいとしい人よ、誠実でいるでない: esser ognor crudele常に残酷であること solo t'insegnerà.だけを 彼女は 君に教えるだろう【≒ 君は 彼女が いつでも 冷酷であることを 思い知らされるだろう】。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Questa è la caccia ch'ami tanto? Questoこれが 狩りなのか それを 君は 大いに 好きである? これが è seguirmi? Crudel, meco placato,私の 後を追うこと【≒ 私の約束に 従うこと】 なのか? 残酷な者よ、私と一緒に 静められて【≒ 冷静になって】、 mi promettesti, ingrato,君は 私に 約束した、恩知らずの男よ、 d'evitar questi Greciこれらのギリシャ人たちを 避けることを che a tua ruina sol vennero.その者たちは 君の破滅のためだけに 【この島に】 来た。 ACHIILLEアキッレ Cara,いとしい女よ、 tralasciar non potei sì bel diletto私は それほどに 素敵な楽しみを 放棄する ことはできなかった d'udir un saggio eroe聞くという 賢明な英雄が serio amante m'offrir fede ed affetto.真剣に 愛する 私に 誠実と 情愛を 申し出る【≒ 私には 知性豊かな英雄が 真剣に 愛を打ち明けて 私に 誠意と 情愛を 申し出るという とても素敵な喜びを 放棄する ことはできなかった】。 DEIDAMIAデイダミーア Ti scopriranno alfine. Ah, che non m'ami,彼らは しまいには 君に 見出すだろう。ああ、君が 私を 愛していない ことを、 quel ch'io bramo, non brami!私が 切望していることを 君は 切望していない 【ことを】! Povera Deidamia,哀れなデイダミーアよ、 dove fondò gli affetti e le speranze!彼女【= デイダミーア】は どこに 情愛と 希望の 根拠を置いたのだ【≒ 何を拠り所に 愛と希望を 抱いたというのだ】! Misera e abbandonata alfin sarà.彼女は しまいには 惨めに そして 捨てられてしまう だろう。 ACHIILLEアキッレ Anima mia, vano è il timore.私の魂の人よ、不安は 無駄だ。 DEIDAMIAデイダミーア Va'!行きなさい! |
Crudel, meco placato, / mi promettesti, ingrato, / d'evitar questi Greci / che a tua ruina sol vennero. 若いアキッレにはギリシャ本土からやって来る名高い君主たちは憧れの英雄たちであり、彼らの来島に興奮を抑えられなかった、しかしデイダミーアは、彼らはアキッレを戦争に連れ出しに来るのだ、と気持ちを静め meco placato、彼らに近付かないよう約束させた、といった内容。 |
23. Aria Deidamia |
Allegro 3/4 B-flat major |
DEIDAMIAデイダミーア Va', perfido!行きなさい、恩知らずの男め! Quel cor mi tradirà.その心は 私を 背いた。 Ah, barbaro!ああ、残酷な男め! No che non sei fedel, no che non m'ami.君は 誠実ではない、君は 私を 愛していない。 Ah, miseraああ、惨めに quest'alma resterà,なるだろう この魂は、 ma libera la morte mi farà.しかし 死が 私を 自由にするだろう。 Crudel, lo brami.残酷な者よ、君は そのことを 切望している。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 Crudel, lo brami. 楽譜では Crudel, lo brami, tu brami. 残酷な者よ、君は そのことを 切望している、君は 切望している。 となっている。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
ACHIILLEアキッレ Placar tosto saprò la mia diletta.私は すぐさま 私のいとしい女を 宥める ことができるだろう。 Cerva corrente vien: voglio a quel varco雌ジカが 走って 来る: 私は あの抜け道で lanciarle il dardo.それに 矢を 放ち 【↑】たい。 Scena Ⅹ.第10場 Fenice e dettoフェニーチェと 前の場の男【= アキッレ】 FENICEフェニーチェ Aspetta.待ちなさい。 ACHIILLEアキッレ Deh, mi lascia.お願いだから、私を 放っておきなさい。 FENICEフェニーチェ Deh, bella,お願いだから 【待ちなさい】、美女よ、 t'è più caro di belve君に より 好まれているのか 野獣を far preda che d'amanti?獲物にすることが 愛する者たち【≒ 求愛者たち】を 【獲物にすること】 よりも【≒ 君は 求愛者を 得る よりも 獣を 得る方が 好きなのか】? ACHIILLEアキッレ Sempre avvezza ai diporti delle selve,いつでも 森の娯楽に 慣れて【≒ ずっと 森の娯楽に 浸っているので】 con amor libertà cangiar non bramo.私は 自由を 愛と 交換することを 切望しない。 FENICEフェニーチェ T'offro un'alma costante, e d'Argo il soglio.私は 君に 忠実な魂を 提供する、そして アルゴスの玉座を。 ACHIILLEアキッレ Non mi mancan grandezze, e amor non voglio.高貴【な血筋】は 私には 不足していない【≒ 私も 十分 高貴な身分である】、そして 愛を 私は 欲していない。 |
t'è più caro di belve / far preda che d'amanti? fare preda di - は、一般的に ―を略奪する,強奪する(prre in preda di - や depredare di -,razziare - と同義)だが、ここでは狩りと恋に準えていることから、―を獲物にする と採った。 Non mi mancan grandezze, e amor non voglio. 『ピッラ』が思わず自分が高貴な身分であることを明かし、フェニーチェはピッラがアキッレであることを確信する。 |
24. Aria Achille |
Andante ma non Allegro 3/8 A major |
ACHIILLEアキッレ Sì, m'appaga,そうだ、私を 【↓↓↓↓】もっと 満足させる、 sì, m'allettaそうだ、私を 【↓↓↓】もっと 魅了する quella vagaあの 美しい collinetta小さな丘は più che tantiたくさんの folli amanti,熱狂的な 愛する者たち【≒ 求愛者たち】 【↑】よりも o d'un sol la fedeltà;あるいは たった一人の【求愛】者の 誠意よりも; Sprezzo amore:私は 愛を 軽蔑している: più mi piaceより 私に 気に入っている di cervetta雌ジカの timidetta小心な seguir l'orma足跡を 追うことが sì fugaceそうだ 逃げて行く【≒ 私は 臆病な雌ジカが 逃げて行く跡を追うことの方が 好きだ】 che le gioie喜びよりも più dilette最も いとしい ch'ei promette,それ【= 喜び】を それ【= 愛 男性名詞単数形】が 約束する、 e poi non dà.そして それから それ【= 愛】は 与えないだろう【≒ 愛が 約束はしても、その後に 与えることはない とても いとしい 喜びよりも】。 (parte)(去る) |
単一形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
FENICEフェニーチェ No, che ninfa non è. Ma già finitoいいや、その者は ニンフではない。それどころか 終わった è il diporto.娯楽は。 |
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Sinfonia |
2/2 F major |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
FENICEフェニーチェ Al ritorno帰路へと chiama già l'oricalco i cacciatori.もう ラッパが 猟師たちを 呼んでいる。 Miglior consiglio, in corteより良い 熟慮が、間もなく condurrà nostro senno a lieto fine.私たちの思慮【≒ 思惑】を 喜ばしい結末に 導くだろう Malgrado a sorte infida,不誠実な運命における にもかかわらず、 molto s'ottien, quando prudenza è guida.多くのものが 得られる、思慮深さが案内人である時は【≒ 思慮深く 行動すれば、大きな成果 を 得られる。】。 |
Miglior consiglio, in corte 『ピッラ』がアキッレであることが確実になり、決着を付けるべく新たな策を練ろう、といった意味合い。これが第3幕で娘たちへの贈り物のなかに武器を紛れ込ませる作戦に繋がる。 in corte は in vrebe 間もなく と同じと理解した。 |
25. Coro Coro |
2/2 F major |
CORO合唱 L'alto Giove al travaglio penoso至高のジョーヴェは つらい労苦に per seguace il riposo formò,続くものとして 休息を 生み出した、 come appresso di Marte alla face,松明 たいまつ を掲げたマルテ【= マルス,軍神】の後に、 e la gloria e la pace mandò.喜びも 平安も 彼が 差し伸べた 【↑】ように。 |
音楽は第19番のコーロと同じ。 第19番同様、初演では独唱者たちによって歌われた コーロ だと思われる。 come appresso di Marte alla face, この場合の appresso は dopo と同義。appresso di - ―の後に。 |
ATTO TERZO | |||
26. Sinfonia |
Allegro 3/4 C major |
Scena Ⅰ第1場 Pianterreno1階 Fenice e Nereaフェニーチェと ネレーア |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
FENICEフェニーチェ Assai gioco di me, Nerea, prendesti,君が 大いに 私を からかったので、ネレーアよ、 alla caccia e alla mensa,狩りで そして 食卓で、 pria nel rifiuto di sinceri affetti,まず 【私の】 真心こもった情愛の拒否で、 e in motteggiarmi poi, ch'altrui gli offersi.そして その後に 私を 嘲って、私は 【私の代わりに】他の人に それら【= 狩りと 食卓】を 献上した。 NEREAネレーア Sol ti diss'io che vai mutando oggetti?私は ただ 君に 言っただけだ 君は よく 【恋愛】対象を 変えるのか? と FENICEフェニーチェ Ma preferita mi sprezzasti.だが 【私に】好まれて【≒ 私に 求愛されて】 君は 私を 蔑んだ。 NEREAネレーア È in Argoアルゴスでは l'amoroso costume愛の 習慣なのか una sol volta offrir dunque il suo core?たった一度だけ 彼の心を 申し出ることは【≒ アルゴスでは 恋の相手に 愛を打ち明けるのは 一度切り という しきたりでもあるのか】? Ignota quivi è certoその時 未知だ もちろん la costanza in amore.愛における 意志の強固は【≒ 最初に愛を打ち明けられた時には もちろん 愛の意志の強さは 分からない】。 Pirra, non men di me, fra le compagneピッラは、私より 少なくなく【≒ 私 以上に】、仲間の女たちの中で riso avrà forse della sua conquista.おそらく 彼女の征服【≒ 彼女を 征服しようとすること ≒ 彼女が口説かれたこと】を 嘲り笑っただろう。 Guerre di lungo assedio長期の包囲の戦いだ son l'amorose, e tempo tu non hai,愛の【戦い】は、そして 君は 時間を 持っていない、 se all'imprese dell'Asia in breve andrai.もし 君が アジアの戦争に 間もなく 行くだろう ならば。 FENICEフェニーチェ Quanto più da un amato愛された sen partirei contento,胸【≒ 心】から 喜んで 離れることであろう 【↑】ほどに、 e dopo il gran cimentoそして 大きな試練の後に se tornassi con lauri al crin di gloria;頭髪に 栄光のゲッケイジュ【≒ 月桂冠】を戴いて 戻って来る 【↑↑↑】ほどに、 più i riposi godrei della vittoria.ますます 勝利の憩いを 楽しむことだろう。 Pensa, se Greca sei,考えなさい、もし君が ギリシャの女であるならば、 ch'ozioso amator prezzar non dei.君は 何もしない恋人を 評価しない に違いない ことを。 |
Assai gioco di me, Nerea, prendesti, / [...] / ch'altrui gli offersi. assai... che ... で tanto... che ... と同様 非常に… なので …。 prendersi gioco di - ―をからかう。ここでは si が用いられていないが。 |
27. Arietta Fenice |
Larghetto 3/8 G major |
FENICEフェニーチェ Degno più di tua beltàもっと 君の美しさに 相応しくなって questo cor ritorneràこの心は 戻るだろう dalle prove del valor.勇気の試練から。 Lo sprezzante tuo pensier君の 蔑んだ気持ちは perch'ho l'animo guerrier,というのも 私が 戦闘的な魂を 持っている から【≒ 私が 戦士の魂を持っていたからといって 君が 蔑む心を持ったならば】、 è a te d'onta, a me d'onor.君にとっては 不名誉だ、私にとっては 名誉だ。 (parte)(去る) |
A / B の二部形式のアリエッタ。 6―11小節リピート。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
NEREAネレーア Molto dagli altri amanti他の恋する男たち【≒ 求愛者たち】からは とても differiscon gli eroi.異なっている 英雄たちは。 Con impeto e valore,激情と 勇気で、 non con lusinga ed arte,世辞と 術 すべ ではなく、 fan le geste d'amore彼らは 愛の功績を 挙げる come quelle di Marte;マルテ【= マルス,軍神】の それ【= 功績 女性名詞複数】【≒ 武勲】と 同様に、 e se lor non succedeそして もし それら【= 愛の功績】の 後任とならない ならば quella per cui movesi l'alma accesa,その女が その者に向かって 燃えた魂が 身を動かす【≒ 燃え上がる心が 向かっていく女性が 新たな愛の功績になろうとしないならば】、 non perdon tempo, e vanno ad altra impresa.彼ら【= 英雄たち】は 時間を 失わず、そして 他の企てに 行く。 |
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28. Aria Nerea |
Andante 6/8 B-flat major |
NEREAネレーア Quanto ingannata è quellaなんと 誤せられている【≒ 間違っている】ことか その mal consigliata bella拙く 慎重な 美女は che offerto dall'amanteその者は 愛する者【≒ 求愛者】から 提供された l'istante perderà.瞬間を 無駄にするだろう【≒ 求愛者が 捧げる 時間を 無駄にするだろう】。 Se piace il primo sguardo,もし 最初の眼差しが 気に入ったのならば stringasi il nodo allora.その時に 絆が 結ばれるように。 Allontanato dardo遠ざけられて【≒ 離れてしまったら】 矢は il colpo mai non fa.的を 決して 一撃しない。 (parte)(去る) |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 このアリアには初期稿がある ⇒ Appendici。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅱ第2場 Galleria回廊 Fenice, Ulisse, poi Deidamia e le sue compagne, e poi Achilleフェニーチェ、ウリッセ、それから デイダミーアと 彼女の仲間の女たち、そして それから アキッレ FENICEフェニーチェ Tutto è già pronto.すべては 既に 用意ができた。 ULISSEウリッセ Licomede or giace,リコメーデは 今 横たわっている、 dopo il cibo, nel solito sopore.食事の後、いつもの まどろみに。 Pirra verrà?ピッラは 来るのだろうか? FENICEフェニーチェ De' nostri doni avviso私たちの贈り物の 知らせを giunger le feci, e ne mostrò vaghezza.私は 彼女たちに 届け させた、そして 彼女は それらについて【≒ 贈り物について】 楽しみを 提示した。 Vengono.彼女たちが 来る。 ULISSEウリッセ Ma fra lor Pirra non veggio.しかし 彼女たちの中に ピッラを 私は 見ていない。 Delusa è questa trama.この陰謀は 頓挫した。 FENICEフェニーチェ Illustri belle,令名高い 美女たちよ、 s'alle cortesi e nobili accoglienzeたとえ 温かい そして 気高い もてなしに対して questi doni non fian compenso uguale,これらの贈り物が 同等の【≒ 見合った】報酬にならない 【↑】にしても、 saranlo in parte degno,一部は【≒ 少なくとも】 それら【= 贈り物】は それ【= 報酬 男性名詞単数】に 値するだろう、 come di nostra gratitudin segno.私たちの 感謝の気持ちの印として。 ULISSEウリッセ Varie bell'opre d'artificio industre様々な 精勤な技巧の 美しい作品【≒ 精密な技が用いられた 美しい品々】が vi piaceran.君たちの 気に入るだろう。 ACHIILLEアキッレ (entra)(入る) Vengone a parte anch'io.私も 彼女たちの 一部に なる【≒ 私も 参加する】。 ULISSEウリッセ Apri, Fenice, quella開けなさい、フェニーチェよ、あの arca aurata, e tributi abbia ogni bella.黄金色の箱を、そして どの美女も 贈り物を 受け取るように。 DEIDAMIAデイダミーア Troppo, in ver, generosa cortesia!あまりにも、本当に、気前の良い親切だ! ULISSEウリッセ Deidamia, tu prima scegli.デイダミーアよ、君が まず 選び取りなさい。 DEIDAMIAデイダミーア Pirraピッラが bramo che scelga pria.まず 選び取ることを 私は 切望する。 ACHIILLEアキッレ Bissi, broccati,粗い亜麻布、浮織リの錦, e nastri, e tanti altri ornamenti vaghiそして リボン、そして たくさんの 他の優雅な装飾品は a te grati son più: scegli.君に より ありがたい【≒ ―は 君の方が もっと 喜ぶ】: 選び取りなさい。 DEIDAMIAデイダミーア E che maiそれでは いったい 何を bramato avresti?君は 切望した【はずな】のだろうか? ACHIILLEアキッレ Una faretra, un arco,箙 えびら【= 矢を入れる武具】 を、弓を、 e ben librati dardiそして 良い 空中滑空の矢【≒ よく飛ぶ矢】 da lanciarsi alle belve.野獣に 放たれる ための。 ULISSEウリッセ Anche alla caccia狩りにも pensato abbiam. Mira faretre e strali,私たちは 配慮した。見なさい 箙 えびら を そして 矢を、 scudo, elmo, brando...盾を、兜を、剣を… DEIDAMIAデイダミーア Strani doni! Pirra,奇妙な 贈り物だ! ピッラよ、 che fai?君は 何を しているのか? ACHIILLEアキッレ Ben calza al crin l'elmo guerriero,戦闘的な兜は 【私の】頭髪に 見事に ぴたりと合っている、 (si mette l'elmo)(兜が 据えられる) specchio lo scudo fia: vago ornamento盾は 鏡【のようにピカピカ】だろう: 優雅な装飾を fa col suo tremolar, bianco il cimiero.白い兜の飾りは 作っている その震えで【≒ 兜の白い飾りが 揺れて 優雅な飾りになっている。】 DEIDAMIAデイダミーア (Soccorso, o Numi! ei si discopre.) Lascia,(救援を、ああ 神々よ! 彼は 自分の本当の姿を現す。) 捨てなさい、 Pirra, i guerrieri arnesi: ecco un bel nastro.ピッラよ、戦闘的な用具たちを: ほらここに 綺麗なリボンが。 ACHIILLEアキッレ Lucido, forte, lieve e acuto è il brando,剣は ピカピカで、強力で、軽く そして 鋭く、 e d'ambo i lati è ben trinciante il taglio.そして 刃は 両方の側が よく切れる。 |
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Sinfonia |
4/4 D major |
(Suono di trombe per assalto)(攻撃のためのラッパの音) |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
ACHIILLEアキッレ Che fia ciò?このことは 何だろうか? ULISSEウリッセ Di masnada【↓】敵の 武装兵の部隊の nemica ardir stupendo!唖然とさせる厚かましさだ! Assaltano la reggia.彼らは 王宮を 襲撃している。 ACHIILLEアキッレ Io la difendo.私は それ【= 王宮 女性名詞単数】を 防衛する。 ULISSEウリッセ Non è più tempo di scherzar. Tu seiもはや 冗談を言う時ではない。君は d'un timoroso padre il figlio ardito.臆病な父親の 勇敢な息子だ。 Tutta la Grecia si prepara all'armi全ギリシャが 戦いの 準備をしている。 per vendicarsi della grande offesa,重大な侮辱に 復讐するために、 e all'onorata impresaそして 名誉ある戦争に i veterani e i giovinetti eroi老兵が そして とても若い英雄が ardono del desio di nobil gloria.気高い名誉の欲求に 燃えている。 Vuole un vero valor, morte o vittoria.真の勇敢さは 望んでいる、死か 勝利を。 Le navi approdan già d'Ilio all'arene;船々は 既に イリオス【= トロイア】の砂浜に 着岸している; sbarca il Greco animoso, e Troia assale;勇敢なギリシャ人が 上陸し、そして トロイアを 攻める; ecco di Priamo il più feroce figlio,そらここに プリアーモの 最も勇敢な息子が、 Ettore, e innanzi all'asta sua fatale...エットレが、そして 死をもたらす槍の前に… (a difesa, ahi, chi vien del Greco onore!)...(ああ、誰が ギリシャの名誉の防衛に 来るのだ!)… fuggono mille nostre squadre e mille.たくさんの そして 幾千の 私たちの部隊が 逃げる そして幾千の ACHIILLEアキッレ Che fuggir? Fugga Ettorre. Ecco, ecco Achille.逃げるだなんて! エットレが 逃げるように。ほらここに、ここに アキッレが。 |
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29. Aria Achille |
Allegro 4/4 A major |
ACHIILLEアキッレ Ai Greci questa spadaギリシャ人たちに この剣が sovra i nemici estinti死んだ敵たちの上に apra d'onor la strada,名誉の道を 開く、 e Troia perirà.そして トロイアは 滅びるだろう。 Il fato di quel regnoその王国【= トロイア】の運命は dipende dal mio sdegno,私の怒り 次第である、 per me,《qui fu già Troia》,私の代わりに、『ここに かつて トロイアが あった』 と、 il pellegrin dirà.旅人が 言うだろう。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 il pellegrin dirà. pellegrino は一般的には 巡礼者 の意味だが、元々は 異国の人 の意味である(遠い異国の地から遥々聖地に赴くことが巡礼)。同様に 旅人,放浪者 の意味にもなった。ここでの pellegrino はどれでも採り得るが、ここでは 旅人 で採った。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
DEIDAMIAデイダミーア Che più giova celarlo, estremo è il male.彼を さらに 隠すのに 何が 役に立つのか【≒ これ以上 彼を 隠す理由は もうない】、不幸は 甚だしい。 Portate lunge dal mio guardo queste持って行きなさい 私の視線から 遠くに これらの ministre di furor, spoglie funeste!激情の使者たち【≒ 武器】を、不幸をもたらす武具を! Oh giorno a me fatale!ああ 私にとって 不吉な日だ! Perduta pace mia!私の 失われた平安よ! ULISSEウリッセ Deh, ti conforta.お願いだから、君を 慰めなさい【≒ 元気を出しなさい】。 DEIDAMIAデイダミーア Che conforto? Ah, spietato!どんな 慰めを? ああ、無情な男め! Tu la mortale mia sciagura porti;君は 私の 致命的な災難を 持って来ている; e tu poi mi conforti?それで その上 君は 私を 慰めるというのか? |
Portate lunge dal mio guardo queste / ministre di furor, spoglie funeste! ministro が 使者,使徒 などの意味で述語に用いられる場合、しばしば女性形の ministra になる。例えば ―の使者/使徒である と言う場合は essere ministro di - でも essere ministra di - でも用いられる。また成句 farsi ministro di - ―の使徒になる ≒ ―に貢献する も farsi ministra di - で用いられることもある。 ここでの ministre di furor は、spoglie funeste 不幸をもたらす武具 と対になっていることからも、激情の使者たち ≒ (剣などの)武器 と理解した。 |
30. Aria Deidamia |
Largo 3/4 g minor |
DEIDAMIAデイダミーア M'hai resa infelice;君は 私を 不幸に させた; che vanto n'avrai?君は それについて どんな 誇りを 持つであろうか【≒ どのように 自慢するのだろうか】? 《Oppressi》, dirai,『私は 圧迫した【≒ 苦しめた】』と、君は 言うだろう、 《un'alma fedel.》『誠実な魂を。』 |
A / B / A’ / B’の拡大された二部形式のアリア。 |
allegro 4/4 g minor |
Le vele se darai君が 帆を 与えるだろう【≒ 出帆するだろう】 ならば de'flutti al seno infido,波々の 当てにならない 懐に、 sconvolga orribil vento凄まじい風が ひっくり返すように【≒ 大荒れにするように】 l'istabil elemento,変わりやすい海を、 e innanzi al patrio lidoそして 祖国の海岸を 前にして sommergati, crudel.沈むがいい、残酷な者よ!。 |
変ホ音に臨時記号のナチュラルが付いて、実質ニ短調。 l'istabil elemento, この elemento は (自然における)要素、領域 と言った意味で、ここでは 海 を指す。il liquido elemento で 海 の意味になる。 |
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largo 3/4 g minor |
M'hai resa infelice;君は 私を 不幸に させた; che vanto n'avrai?君は それについて どんな 誇りを 持つであろうか【≒ どのように 自慢するのだろうか】? 《Oppressi》, dirai,『私は 圧迫した【≒ 苦しめた】』と、君は 言うだろう、 《un'alma fedel.》『誠実な魂を。』 |
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allegro 4/4 g minor |
Le vele se darai君が 帆を 与えるだろう【≒ 出帆するだろう】 ならば de'flutti al seno infido,波々の 当てにならない 懐に、 sconvolga orribil vento凄まじい風が ひっくり返すように【≒ 大荒れにするように】 l'istabil elemento,変わりやすい海を、 e innanzi al patrio lidoそして 祖国の海岸を 前にして sommergati, crudel.沈むがいい、残酷な者よ。 (parte)(退場する) |
実質ニ短調。 |
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Recitativo |
4/4 (C major) |
ULISSEウリッセ Verso il gran fine dell'eroiche geste英雄的な功績の 偉大な目的に向かって rompansi le dimore.滞在が 解消されるように【≒ (トロイア陥落という) 英雄的偉業である 大きな目的に向かって、滞在を 切り上げよう】。 Invan dato l'onore虚しく 名誉が 委ねられ ad Ulisse non fu di scoprir l'arteなかった ウリッセに 術 すべ を 見出すという del vecchio Licomede e di Peleo,老リコメーデの そして ペレーオの、 e di condurre Achille all'alta impresa.そして アキッレを 高い【≒ 大きな】 戦争に 連れて行くという【≒ 老リコメーデとペレーオの策略を暴き、アキッレを トロイア戦争に 参加させる という名誉ある任務が ウリッセに 委ねられたのは 無駄ではなかった】。 Fisso ho in pensier, che quasi tutta mia私は 思いに 固定されている【≒ 思いに 取りつかれている】、ほぼ すっかり 私のもの である という【思いに】 la gloria sia di questa gran contesa.この大きな紛争の 栄誉は。 |
Verso il gran fine dell'eroiche geste この fine は男性名詞なので 目的。 |
31. Aria Ulisse |
Andante 3/8 F major |
ULISSEウリッセ Come all'urto aggressor d'un torrente奔流の 攻撃的な 突撃に rovinosa alta mole cadente;高い 大建造物が 壊滅的に 倒れて行く 【↑】ように: sotto al braccio del greco guerriero<- nobilギリシャの戦士の腕の下で tutto d'Asia l'impero cadrà.アジアの王国は すっかり 倒れるだろう。 Ma il valor, come belva feroce,しかし 勇敢さは、凶暴な野獣のように、 senza il senno a se stesso pur nuoce.理性がなければ それ自体も 傷つける。 Sarò guida degli altri al furore,私は 他の人の 激情の 指導者に なろう【≒ 私は 他の人を 激情へと 導く者に なろう】、 e il mio vanto maggiore sarà.そして 私の 誇りは より大きく なるだろう。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 ヘンデルは初演直前か初演の最中にこのアリアにカットで短縮の指示を入れている。30―77小節、133―138小節、174―188小節。 sotto al braccio del greco guerriero 1回だけ sotto al braccio del nobil guerriero 高貴な戦士の腕の下で になっている。 Sarò guida degli altri al furore, この場合の guida には、適切に正しく導く者 という意味合いがある。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅲ第3場 appartamento居所 Licomede e poi Deidamiaリコメーデ そして それから デイダミーア LICOMEDEリコメーデ Dal destino dipendono gli eventi.出来事は 運命 次第である。 Per dover d'amistà, sì. l'occultai,友情の義務によって、そうだ、私は 彼を 隠匿した、 ma per dover che al greco onor mi lega,しかし 義務によって それは 私を ギリシャの名誉に 結ぶ、 la scoperta all'altrui senno lasciai.私は 他の人の判断力で 発見を 勝手にさせておいた【≒ 私を ギリシャの名誉に 繋いでいる 義務によって 私は ギリシャの君主たちが 彼らの判断で アキッレの正体を 暴くことを 黙認した】。 DEIDAMIAデイダミーア Padre, al tuo piè m'accogli.父よ、君の足元に 私を 受け入れなさい。 LICOMEDEリコメーデ Ergiti, o figlia,直立しなさい、ああ 娘よ、 che t'affanna?君は 何を 心配しているのか? DEIDAMIAデイダミーア Il timore懸念を del tuo sdegno.君の怒りの。 LICOMEDEリコメーデ In che maiいったい 何において errar puoi dolce figlia?君が 過ちを犯す ことができるというのか 愛する娘よ? DEIDAMIAデイダミーア Ah! forse errai.ああ! おそらく 私は 過ちを犯した。 LICOMEDEリコメーデ Io ti perdono già: parla.私は もう 君を 許している: 話なさい。 DEIDAMIAデイダミーア D'amore...愛の【過ちを】… LICOMEDEリコメーデ Non temer... ti convien... lieve è l'errore.恐れるでない… それ【= 愛の過ち】は 君に 相応しい… 過ちは 取るに足らない。 DEIDAMIAデイダミーア Pria che il callido Greco狡猾なギリシャ人が Achille discoprisse...アキッレの 覆いを取った【↑】よりも前に… LICOMEDEリコメーデ Amor l'avea scoperto agli occhi tuoi.愛の神が 君の目から 彼の 覆いを取った【≒ 狡猾なギリシャ人が アキッレの正体を 暴くよりも前に 愛の神が 君に アキッレの正体を 明かしたというわけだな】 。 S'io non credea degne al tuo nobil pettoもし 私が 信じなかったならば 君の 高貴な胸に 相応しいと di tale amor le splendide faville,そのような愛の 輝かしいきらめきが、 lunge da te sarebbe stato Achille.アキッレは 君から 遠く離れて いたことだろう。 DEIDAMIAデイダミーア E tu consentirai che m'abbandoni?それなのに 君は 認めるであろうか 彼が 私を 置き去りにすることを? LICOMEDEリコメーデ All'amor tuo vorresti君は 望みたいのか 君の愛の ch'ei l'onor posponesse?後に置くことを 彼が 名誉を【≒ 君は 君の愛のために 彼の名誉が 後回しになることを 望みたいのか】? L'onor dell'armi? Corrisposto affetto戦闘の名誉を? 応えられた情愛【≒ 相思相愛】が sia pur tra voi, ma siaたとえ 君たちの間に あるとしても、しかし pria ch'egli parta sol.ただ 彼が 出発する前 だけだ。 DEIDAMIAデイダミーア Perché; sol pria?なぜ 【出発する】 前だけ なのか? LICOMEDEリコメーデ Questo ti basti.それが 君に 十分であるように【≒ これだけ言えば 十分だろう】。 DEIDAMIAデイダミーア Ah, non tacermi, o caroああ、私に 返事をしないでない、ああ 愛する男よ dolce mio genitor...いとしい 私の父よ… LICOMEDEリコメーデ Le grandi e forti偉大なな そして 力強い alme al di sopra stan d'avverse sorti.魂々は 敵意のある運命の 上に ある。 Nell'assedio troiano il Ciel prediceトロイの攻略において 天は 予言している che dee perir Achille.アキッレは 死ななくてはならない と【≒ 偉大で強力な魂は 逆運を 乗り越えるものだが、しかしアキッレは トロイ攻略の際に死ぬことを 天から 予言されている】。 (parte)(去る) DEIDAMIAデイダミーア Ah, me infelice!ああ、不幸な私! Scena Ⅳ第4場 Achille in abito eroico, e detta.アキッレ 英雄の服を着て、そして 前の場の女【= デイダミーア】 ACHIILLEアキッレ Tacita, mesta, sospirosa...無言で、悲し気に、悩んで… DEIDAMIAデイダミーア Ah, ingrato,ああ、恩知らずの男よ、 va', già pronta è la nave.行きなさい、船は 既に 用意ができている。 Lasciami preda al mio mortal tormento;私を 私の 致命的な苦悩の犠牲に させておきなさい; udrai la morte mia: sarai contento.君は 私の死を 聞き及ぶだろう: 君は 満足するだろう。 ACHIILLEアキッレ No, cara anima mia: tempo v'è ancoraいいや、私の いとしい 魂の人よ:時間は まだ ある ch'io parta dove onore私が 出発する 名誉が mi forza, e dar lo vuò tutto ad amore.私に 強いる 場所へと【出発する時間は】、そして 私は すべてを 愛に 捧げたい。 Al regal Licomede王の リコメーデに richiesta, mia dolce metà sarai.強く求められて【≒ 勧められて】、君は 私の 愛する配偶者に なるだろう。 DEIDAMIAデイダミーア Poi fra perigli bellicosi andrai.その後に 君は 好戦的な危険の中に 行くのだろう。 ACHIILLEアキッレ Non è degno di te cuor timoroso.臆病な心【の男】は 君に 相応しくない。 DEIDAMIAデイダミーア Vorrai dunque partir?それでは 君は 出発したくなるのだろうか? ACHIILLEアキッレ Sì, ma tuo sposo.そうだ、だが 【その時は】 君の夫だ。 DEIDAMIAデイダミーア S'inganna il tuo pensiero.君の考えは 間違っている Non è degno di me cuor così fiero.それほどに 勇敢な心は 私には 相応しくない; Non mi mancan guerrieri: e te non amo.戦士たちは 私には 事欠かない: そして 君には 愛が 【事欠かない】。 Finsi amar per tradirti: ecco chi bramo.私は 君を 欺くために 愛する ふりをした: ほらここに 私が 熱望する人が。 Scena Ⅴ第5場 Ulisse e dettiウリッセと 前の場の人たち ACHIILLEアキッレ Antiloco, opportuno or qui giungesti.アンティーロコよ、今 ちょうどいい時に 君は ここに 来た。 Deidamia ti brama:デイダミーアが 君を 熱望している: Pensò all'offerta del tuo core, e t'ama.彼女は 君の心の申し出【≒ 求愛】のことを 考えていた、そして 彼女は 君を 愛している。 Ma se intendi acquistar gloria fra l'armi,しかし もし 君が 武器の間で 栄誉を 手に入れる つもりであるならば、 celane il gran pensiero,そのことについての 重大な考えを 隠しなさい【≒ 戦争で 栄誉を 得るつもりだと 彼女に 明かしてはいけない】、 o tradito sarai; t'ho detto il vero.さもないと 君は 【彼女に】 裏切られるだろう; 私は 君に 真実を 言った。 (vuol partire)(去ろうとする) ULISSEウリッセ Figlio di Teti, arresta il piè. Già notoテーティの息子よ、歩みを 止めなさい。既に 知られた m'è il vostro affetto degno:私に 君たちの 称賛に値する情愛は【≒ 君たちの 素晴らしい愛を 私は もう 知っている】: momentanea in amor vita ha lo sdegno.怒りは 愛の中で 一瞬の命を 持つ【≒ 愛し合っていれば 怒りは すぐに 収まる】。 Antiloco io non son: l'itaco Ulisse私は アンティーロコ ではない: イタカの ウリッセを in me tu vedi. Io per il greco onore,君は 私に 見ている。私は ギリシャの名誉のために、 di Penelope bella美しいペネーロペの lascio il tenero amore.甘い愛を 【故郷に】 残している。 La timid'arte di Peleo per trartiペレーオの 気弱な術 すべ を 君を 救い出すための da sognato periglio夢に見た危険から facilmente ingannai,私は 容易に 欺いた【≒ ペレーオが 予言された危険から 君を 救おうと 仕掛けた策略を 私は 簡単に 打ち砕いた】、 perché in te ritrovaiなぜなら 私は 君に 認めた からだ men di Peleo che della grecia un figlio.ギリシャの よりも ペレーオの でない 息子を【≒ ペレーオの息子 という以上に ギリシャの息子を】。 Deh! fortunati amanti,お願いだから! 幸運な恋人たちよ、 uguale al nostro il vostro amor pur sia.君たちの愛も 私たち【= ウリッセと ペネーロペ】の【愛】と 同等であるように。 Dirà la greca istoria:ギリシャの歴史は 語るだろう: 《Achille e deidamia『アキッレと デイダミーアは del par che i dolci affetti amar la gloria.》甘い情愛と 同じだけ 栄光を 愛した』と。 |
la scoperta all'altrui senno lasciai. lasciai と遠過去を使っていることから、リコメーデがウリッセたちによるアキッレの正体を明かす策略を察知しながら、これを黙認していたことが分かる。 S'io non credea degne al tuo nobil petto / di tale amor le splendide faville, / lunge da te sarebbe stato Achille. ここまでリコメーデがデイダミーアとアキッレの恋仲に気付いていたかどうか台本では言及されていなかったが、この台詞から気付いていたことが分かる。 richiesta, mia dolce metà sarai. metà 半分 が転じて 配偶者,連れあい の意味で用いられる。 リコメーデはアキッレとデイダミーアが喧嘩していることを知り、アキッレの出立(して二度と戻ることがない)前に、二人を仲直りさせて結婚させようとしている。 Figlio di Teti, arresta il piè. Già noto Teti テーティ = テティウスは、ギリシャ神話の海の女神。ペレーオ = ペレウスの妻で、つまりアキッレ = アキレウスの母。 Antiloco io non son: l'itaco Ulisse この島は現在では イタキ島 と呼ばれるが、ここでは日本でのギリシャ神話の慣習に則り イタカ(島) とする。 |
32. Aria Ulisse |
Allegro moderato 3/4 A major |
ULISSEウリッセ Or pensate, amanti cori,今こそ 考えなさい、愛する心たちよ、 che le gioie più soavi最も甘美な喜びは quelle son de'primi amori初期の愛のそれらである 【↑】ことを sul bel fiore dell'età.年齢の 美しい花の上の【≒ 若い盛りの頃の 初々しい愛の喜びであることを】。 Ai momenti dilettosi楽しい瞬間に sieguon poi le cure gravi,それから 深刻な心配事が 後に続く、 e i contenti de'riposiだから 安らぎの満足【≒ 喜び】になる sono gioie d'amistà.友情の喜びが。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
ACHIILLEアキッレ Sprone ad affetti, e al mio partir conforto,情愛への拍車、そして 私の出発への慰め、 tanto esempio non fia?にならないだろうか あれほどの手本は Achille e Deidamiaアキッレと デイダミーアは nelle glorie e in amore栄光において そして 愛において saran men che Penelope ed Ulisse?ペネーロペと ウリッセ ほどには ならないのだろうか? DEIDAMIAデイダミーア Darmi conforto non può quel ch'ei disse.彼が 言ったことは 私に 慰めを 与える ことはできない。 ACHIILLEアキッレ Perché vuoi dubitar di mia costanza?なぜ 君は 私の誠実を 疑いたいのか? DEIDAMIAデイダミーア Perché se parti, o caro,なぜなら 君が 出発したら、ああ いとしい人よ、 perdo del rivederti ogni speranza,君と 再会する あらゆる希望を 私は 失う 【↑】からだ、 me infelice! Di morte不幸な私! (immancabil oracolo il predisse)(確実な神託が そのことを 予言した) la falce incontrerai d'Ilio alle porte.【↑↑】死神の鎌に 君は 出くわすだろう イリオス【= トロイア】の城門で。 All'ombra tua dunque sarò costante.だから 私は 君の幽霊に 忠実でいよう。 ACHIILLEアキッレ L'oracol parla quel che vuol Calcante.神託は カルカンテが 望んだことを 語っている。 Ignoto è l'avvenir. Godersi importa将来は 未知だ。楽しむことが 重要だ quel ben che la presente ora ti porta.その幸福を それを 現在が 今 君に 持って来ている【≒ 今まさに 君に 与えられた 幸福を 楽しむことが 重要だ】。 Fian l'amor e la gloria愛と 栄光が le gioie mie: da te dipende l'una,私の栄光に 【↑】なるだろう。一つは 君によって 決まる、 l'altra da me. Son nomiもう一つは 私によって 【決まる】。【↓】ただ 【↓】想像された 名前な immaginati sol, Fato e Fortuna.だけだ、宿命と 運命は【≒ 宿命も 運命も こうではないかと思い浮かべられたものに過ぎない】。 |
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33. Aria Deidamia |
Allegro 4/4 E major |
DEIDAMIAデイダミーア Consolami私を 慰めなさい se bramiもし 君が 切望するならば ch'io viva a te, mio ben.私が 君のために 生きることを、私の いとしい人よ。 confortami私を 慰めなさい se m'ami,もし 私を 愛しているならば、 pensa che nel tuo sen考えなさい 君の胸の中に quest'anima verrà.この魂が 達する 【↑】ことを。 Conservami私に 保ちなさい l'affetto,情愛を【≒ 私への愛を 持ち続けなさい】、 ricordati覚えておきなさい ch'aspetto私が 待っていることを chi renderla dovrà.それ【= 情愛】を 【私に】 返さなくてはならない 人を【待っていることを】。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena Ⅵ第6場 Sala regia王【宮】の広間 Nerea e Feniceネレーアと フェニーチェ NEREAネレーア Scoperte son le mire目的は 暴かれた de' politici amori.政治的な愛の。 Per involar un cor da un'alma fida,誠実な魂から 心を 掠め取るために、 veniste a offrirne i vostri falsi cori.君たちは 私たちに 君たちの 嘘の心を 捧げに 来た。 All'eroismo ogni viltà disdice.あらゆる卑劣な行為は 英雄的行為に 不相応である。 FENICEフェニーチェ Per l'onor, per la patria il tutto lice.名誉のために、祖国のために、すべては 許される。 ma l'accusa m'offende;だが 非難は 私の 感情を害している; è in me l'amor costante忠実な愛が 私には ある delle più fine tempre;最も 上質な 流儀の【≒ 極めて よく 調和した】【愛が】; t'amai dal primo istante,私は 最初の瞬間から 君を愛した、 e t'amerò per sempre.そして 私は 君を 永遠に 愛そう。 T'offro il legame del verace affetto:私は 君に 真の情愛の 絆を 捧げる: in Argo, e in me, regna se vuoi.アルゴスに、そして 私に 君臨しなさい もし 君が 望むならば。 NEREAネレーア L'accetto.私は それを 受け入れる。 |
All'eroismo ogni viltà disdice. 自動詞の disdire は 不相応である,そぐわない。 |
34. Aria Nerea |
Andante allegro 4/4 A major |
NEREAネレーア Non vuò perdere l'istante:私は 【この】瞬間を 失いたくない: senza creder all'amante愛する者を 信じる ことがなければ non si prova fedeltà.誠実さを 感じることはない。 Se t'accendon il desioもし 君の願いに 火を点けるならば la tua gloria, l'amor mio,君の栄誉が、私の愛が、 gloria e amor m'accenderà.【君の】栄誉が 私の愛に 火を点けるだろう【≒ もし君が トロイアとの戦争で栄誉を得たいという願いを、そして 私の愛を 得たいという願いを 燃え上がらせるならば、君の栄誉が 私の愛を 燃え上らせるだろう】。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 このアリアには初期稿がある ⇒ Appendici。 |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Scena ultima最終場 Tutti全員 LICOMEDEリコメーデ Itaco Prence, testimon saraiイタカの君主よ、君は 証人だろう che all'amistà col genitor d'Achille,アキッレの父親との友情に【も】、 e al dover verso Grecia io non mancai.ギリシャに対する義務に【も】 私が 不足はなかった 【↑】という。 La grave età forzami all'ozio. Questo,重々しい年齢【≒ 高齢】が 私に 無為を 強いている。これが、 credi, è il primier momento信じなさい、最初の瞬間だ che spron d'invidia io sento.羨望の拍車を感じる【最初の瞬間だ】。 ULISSEウリッセ Invidia generosa, e di te degna!寛大な羨望だ、そして 君に相応しい【羨望だ】! LICOMEDEリコメーデ La destra tua di Deidamia, d'Achille君【= ウリッセ】の右手が デイダミーアの、アキッレの stringa il nodo amoroso.愛の絆を 結ぶように。 Arrida poi l'arbitra Dea del mondoそれから この世の支配者である女神が 微笑むように a gli auguri di lor gloria e riposo.彼らの栄誉と 安らぎの 祝賀に【≒ 二人の 繁栄と 安泰を 祝って】。 |
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35. Duetto Deidamia Ulisse |
Allegro 12/8 B-flat major |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式の二重唱。 デイダミーアもウリッセも、アキッレに向かって歌っている。 |
adagio 4/4 B-flat major |
DEIDAMIAデイダミーア (ad Achille)(アキッレに) Ama:愛しなさい: ULISSEウリッセ (ad Achille)(アキッレに) Ama:愛しなさい: |
Allegro 12/8 B-flat major |
DEIDAMIAデイダミーア nell'armi, e nell'amar戦闘において、そして 愛において puoi degno in te mostrar君は 君に 見せる ことができる l'eroe, l'amante.英雄を、恋人を。 ULISSEウリッセ nell'armi, e nell'amar戦闘において、そして 愛において puoi degno in te mostrar君は 君に 見せる ことができる l'eroe, l'amante.英雄を、愛する者を。 DEIDAMIAデイダミーア Premio del tuo valor,君の勇敢さの 褒美に sarà di questo corなるだろう この心の l'amor costante.忠実な愛は。 ULISSEウリッセ Premio del tuo valor,君の勇敢さの 褒美に、 sarà di sì bel corなるだろう 美しい心の l'amor costante.忠実な愛は。 |
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36. Coro |
Allegro 4/4 G major |
Tutti全員 Non trascurate, amanti,おろそかにするでない、愛する者たちよ、 gl'istanti del piacer;喜びの瞬間を; volan per non tornar.それら【= 瞬間】は 飛ぶ【≒ 早く過ぎ去る】 戻らないにしても【≒ 喜びの時は あっという間に過ぎ去り 戻ることはない】。 Se son le belle ingrate,もし 美女たちが 恩知らずであるなら、 cangiate di pensier.考えを 変えなさい。 folle chi vuol penar.苦しむことを 望む 者は 狂気である。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のコーロ。 楽譜には役名は載っておらず、Soprano、Alto、Tenore、Basso のパートがあるだけであるが、慣例通りソリストたちが一同で歌ったと思われる。 |
APPENDICI | |||
6. Aria Nerea, prima versione | |||
6. Aria Nerea |
Andante 4/4 g minor |
NEREAネレーア Diè lusinghe, diè dolcezza,甘言を 与えた、優しさを 与えた non fatica, non asprezza,苦労ではなく、荒々しさ【≒ とげとげしい性格】ではなく、 sorte amica alla beltà.親切な運命は 美女に。 Nasce questa a molli affettiこれ【= 美女】は 柔らかな情愛のために 生まれる e a temprar ne' fieri pettiそして 和らげるために 【生まれる】 残忍な胸の中の la crudel ferocità.非情な残酷さを。 (parte)(去る) |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 第6番の初期稿。歌詞は初演稿と同じ。 |
10. Aria Nerea e Recitativo seguente, prima versione | |||
10. Aria Nerea |
Andante 6/8 D major |
NEREAネレーア Sì che desioそうだ 私が 望むことだ quel che tu brami:君が 切望することが: maggior legamiさらに優れた つながりを amor non fa.愛は 作らない【≒ もっと強い 結びつきは 愛には 生み出せない】 |
ダ・カーポを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 第10番のアリアの初期稿。歌詞は初演稿と同じ。 |
Allegro 6/8 d minor |
Quel del cor mio私の心のそれ【= 尊敬】は è onor perfetto:完璧な尊敬である: non ha dilettoそれ【= 私の心】は 喜びを 抱かない se il tuo non l'ha.もし 君のもの【= 君の心】が それ【= 喜び】を 抱かないならば。 (parte)(去る) |
Recitativo |
4/4 (C major) |
Ulisse e dettaウリッセと 前の場の女【= デイダミーア】 ULISSEウリッセ Invano, o Principessa,虚しく、ああ 王女よ、 qui di Peleo venni a cercare il figlio;私は ここに ペーレオの息子を 探しに来た【≒ 私は ペーレオの息子アキッレを ここに 探しに来たが 無駄だった】; ma di speme delusaしかし 失望した希望の alto compenso fia大きな埋め合わせになるだろう del tuo padre real l'aiuto offerto,君の 国王の父の 申し出られた 助力は、 e i gran pregi ammirar di Deidamia.そして デイダミーアの 素晴らしい美点を 賛美することは。 DEIDAMIAデイダミーア Grato d'illustri principi l'arrivo令名高い君主たちの 到来は ありがたい è sempre a queste soglie.いつでも これらの 敷居【≒ この居所 ≒ この王宮】には。 D'Elena dunque il rattoそれでは エレナの誘拐に vuol Grecia vendicar?ギリシャは 復讐する つもりであるのか? ULISSEウリッセ Vuole il suo sdegnoその【= ギリシャの】怒りは 望んでいる che al Troiano ostinato強情なトロイア人に costino la perfidia ed il rifiuto不誠実と 拒絶は 要する la rovina del regno.王国の崩壊を【= 強情なトロイア人たちが 【ギリシャの申し出を】不誠実に 拒否すれば トロイア王国が崩壊することになることを ギリシャの怒りは 望んでいる】。 DEIDAMIAデイダミーア Resti rea donna al suo rimorso in preda.邪悪な婦人は 彼女の後悔の餌食になるがいい。 Vil parmi la cagion di tanta guerra.それほどたくさんの戦争の原因は 私には つまらないと 思われる【≒ 【エレナの誘拐が】 大戦争の原因になるとは 私には くだらないと 思われる】。 ULISSEウリッセ Ma in la bilancia dell'onor si pesaだが 名誉の秤 はかり において 重さがある più che il fallo, l'offesa.侮辱は 罪よりも【≒ 名誉の点で量れば 罪よりも 侮辱の方が 重い】。 Perdita poi maggiore要するに さらに重大な喪失は non v'è d'alta bellezza,ない 優れた美女の【喪失よりも】、 fonte del sol piacer, ch'è quel d'amore.喜びの唯一の源である、というのは それ【= 美女】は 愛のそれ【= 源】であるからだ【≒ 喜びの唯一の源泉である素晴らしい美女を 失うことよりも さらに重大な喪失は ない、というのは 美女は 愛の源泉である からだ】。 |
第10番のアリアの後のレチタティーヴォの初期稿。台詞は初演稿と同じ。 |
28. Aria Nerea, prima versione | |||
28. Aria Nerea |
Andante 6/8 B-flat major |
NEREAネレーア Quanto ingannata è quellaなんと 誤せられている【≒ 間違っている】ことか その mal consigliata bella拙く 慎重な 美女は che offerto dall'amanteその者は 愛する者【≒ 求愛者】から 提供された l'istante perderà;瞬間を 無駄にするだろう【≒ 求愛者が 捧げる 時間を 無駄にするだろう】。 se piace il primo sguardoもし 最初の眼差しが 気に入ったのならば stringasi il nodo allora.その時に 絆が 結ばれるように。 Allontanato dardo遠ざけられて【≒ 離れてしまったら】 矢は il colpo mai non fa.的を 決して 一撃しない。 (parte)(去る) |
単一形式のアリア。 第28番のアリアの初期稿。歌詞は初演稿とほぼ同じ。 |
34. Aria Nerea, prima versione | |||
34. Aria Nerea |
Andante allegro 4/4 A major |
NEREAネレーア Non vuò perdere l'istante:私は 【この】瞬間を 失いたくない: senza creder all'amante愛する者を 信じる ことがなければ non si prova fedeltà.誠実さを 感じることはない。 Se t'accendon il desioもし 君の願いに 火を点けるならば la tua gloria, l'amor mio,君の栄誉が、私の愛が、 gloria e amor m'accenderà.【君の】栄誉が 私の愛に 火を点けるだろう【≒ もし君が トロイアとの戦争で栄誉を得たいという願いを、そして 私の愛を 得たいという願いを 燃え上がらせるならば、君の栄誉が 私の愛を 燃え上らせるだろう】。 |
ダル・セーニョを用いたA / B / Aの三部形式のアリア。 第34番のアリアの初期稿。歌詞は初演稿と同じ。 |
参考資料
HANDEL'S OPERAS 1726 - 1741 / Winton Dean / The Boydell Press / 2006 / ISBN 1-84383-268-2
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DeidamiaSally Matthewssoprano NereaVeronica Cangemisoprano AchilleOlga Pasichnyksoprano UlisseSilvia Tro Santafemezzosoprano FeniceAndrew Foster-Williamsbasso baritone NestoreJan-Willem Schaafsma LicomedeUmberto Chiummobasso Concerto Köln conductorIvor Bolton directorDavid Alden Set designPaul Steinberg Costume designConstance Hoffman LightingAdam Silverman ChoreographyJonathan Lunn March 2012 Het Muziektheater, Amsterdam, Nederland |
2012年3月のネーデルラント・オペラでの上演の映像。記録によると公演は2012年3月15,19,21,23,25,27,29日と4月1日。
veritas 5 45669 2 |
DeidamiaSimone Kermessoprano NereaDominique Labellesoprano AchilleAnna Maria Panzarellasoprano UlisseAnna Bonitatibusmezzosoprano FeniceFurio Zanasibasso LicomedeAntonio Abetebasso Il Complesso Barocco Coro del Complesso Barocco Alan Curtisdirection July 2002 Teatro dei Rozzi Siena, Italia |
バロックオペラの有名な歌手たちを起用しており、その点では安心して聞ける。
アラン・カーティスの指揮は、いつもながら、良く言えばおっとりゆったりした、悪く言えば緩めの演奏。《デイダミーア》は派手さの少ないオペラなのであまり気にならないとはいえ、もう少しピリリとしてほしいところもある。それでも十分な出来。
ネレーアのアリアのうち、第28番と第34番は初期稿を採用。
付属冊子に掲載の英訳は、初演時の出版台本から採られたもので、これはだいぶ意訳したものでイタリア語歌詞を忠実に訳したものではない。
なお上記CDは再発番。初出盤 品番 545502、バーコード 724354555022 は COPY CONTROLLED で音質が落ちる。装丁はほとんど同じだが裏面に COPY CONTROLLED の注意書きがある。
Albany Records TROY 460 |
DeidamiaJulianne Bairdsoprano NereaMáire O'Briensoprano AchilleD'Anna Fortunatomezzosoprano UlisseBrenda Harrissoprano FenicePeter Castaldibaritone LicomedeJohn Cheekbassobaritone Palmer Singers Brewer Chamber Orchestra Rudolph Palmerconductor |
世界初録音。CDには録音データの記載がないが、2001年8月に発売されており、その前年辺りと思われる(gfhandel,comでは2000年9月録音と紹介してる)。
ルドルフ・パルマーは20世紀の末に、ピリオド楽器オーケストラを用いてヘンデルの声楽大作をイタリアオペラ、英語のオラトリオどちらもいくつも全曲録音し、世界初録音となったものも少なくない。ただ演奏内容は総じて今一つで、その後競合録音が発売されると顧みられなくなった。《デイダミーア》も演奏はあまり上出来とは言い難いが、《デイダミーア》は未だCD2種映像1種しかないので、まだ存在価値は残っているだろう。歌手ではリコメーデのジョン・チークが豊かな低音を響かせて良い。一方ネレーアのマイル・オブライエンはだいぶ危なっかしい。
第1幕第2場は、ネレーアのアリアの後のデイダミーアのレチタティーヴォ → 第5a番のアリオーソ → 第6番 ネレーアのアリアの初期稿 と演奏され、第3場に繋がる(したがって第5番のデイダミーアのアリアの本体はカットされている)。ネレーアのアリアはこの第6番の他、第10番、第34番も初期稿を採用している(第28番は初演稿を用いている)。
付属冊子の英訳はかなり誤訳が多い。