ヘンデル御殿 ホームページ 最新更新 2022年11月14日 無断転載 厳禁 GEORGE FRIDERIC HANDEL ARIODANTE
HWV 33 コヴェントガーデン劇場への移転
ヘンデルは長年、ヘイマーケットの国王劇場(1714年までは女王劇場)を拠点にオペラ活動をして来た。長く見れば彼のロンドンお披露目である《リナルド》(1711)から20年以上、短く見ても彼の王立音楽アカデミー Royal Academy of Music への最初のオペラである《ラダミスト》(1720)から十数年。 マリー・サレ
前述のロンドン・イヴニング・ポスト紙には続いてこのように報じられている。 作曲
ヘンデルはいつも通り《アリオダンテ》の各幕を書き上げた日付を入れている。それによると、第1幕は1734年8月28日に完成、第2幕は9月9日、第3幕は10月24日。初演が翌年の1月8日なので、書き上げてから2ヵ月半も空いている。ヘンデルにしては珍しいことだ。 初演
年が明けた1735年1月8日、《アリオダンテ》が初演される。 蘇演
オペラ御殿 旧御殿のメインメヌー
3幕のオペラ
Opera in tre atti
初演 1735年1月8日 ロンドン,コヴェントガーデン劇場
First performance Covent Garden Theatre, London, 08 January 1735
台本 ジャコモ・アントーニオ・ペルティ作曲《ジネーブラ スコットランドの王女》 (1708)のためのアントーニオ・サルヴィの台本を、不詳の者が手直ししたもの
Libretto Adaptation by anonymous author from the libretto Salvi Ginevra principessa di Scozia by Antonio, music by Giacomo Antonio Pert (1708, Pratolino).
原作 ルドヴィーコ・アリオスト『狂えるオルランド』
Original Orlando furioso by Ludovico Ariosto
だがこの関係は1734年7月に、ヘンデルの5年間の使用契約が満了した時にあっけなく終わってしまう。
横柄なヘンデルの態度に劇場側が長年手を焼いていたという背景はあるが、最大の理由は前年の1733年にロンドンに新しいオペラ団体、貴族オペラ Opera of the Nobility が設立されたためである。
1733年、皇太子(プリンス・オブ・ウェールズ)フレデリック(1707―1751)の後援で貴族オペラが設立された。フレデリックは父王ジョージ2世と険悪な仲で、父王が後援しているヘンデルのオペラ活動を快く思っていなかった。
貴族オペラは当時のイタリアオペラ界の重要作曲家、ニコラ・ポルポラ Nicola Porpora (1686-1768)をロンドンに招き、さらにヘンデル側の最も重要な歌手であったアルト・カストラートのセネジーノことフランチェスコ・ベルナルディ(1686―1758)を引き抜いた。ベルナルディはヘンデルとは不仲だったので寝返ってしまったのだ。さらにロイヤル・アカデミー・オヴ・ミュージックでヘンデルの主要歌手であった、ソプラノのフランチェスカ・クッツォーニ Francesca Cuzzoni (1696-1778)、コントラルトのフランチェスカ・ベルトッリ Francesca Bertolli (?-1767)、バスのアントーニョ・モンタニャーナ Antonio Montagnana も貴族オペラに移った。
貴族オペラは立ち上げの1733/1734のシーズンはリンカーンズ・イン・フィールズ劇場 Lincoln's Inn Fields Theatre で上演を行った。そして国王劇場がヘンデルを追い出した後、貴族オペラは1734/1735年のシーズンから国王劇場で興行を行うようになる。
国王劇場から追い出されたヘンデルは、1734/1735のシーズンから拠点をコヴェントガーデン劇場に移す。コヴェントガーデン劇場は1732年に会館したばかりの新しい劇場だった。
コヴェントガーデン劇場はジョン・リッチ John Rich (1692 - 1761)の所有する劇場だった。リッチと言えば1728年に風刺の効いたバラッドオペラ《乞食オペラ》を大当たりに導いた人物として有名だ。台本作家のジョン・ゲイ John Gay (1685 - 1732)は歌の入った芝居にするつもりだったところに、リッチが音楽を多く盛り込むことを主張、ベルリン生まれでロンドンに移住していたヨハン・クリストフ・ペープシュ Johann Christoph Pepusch (1667 - 1752)を起用して音楽を作らせた。結果、《乞食オペラ》はリンカーンズ・イン・フィールズ劇場で62回も上演され、大成功を収めた。
《乞食オペラ》の大成功で財を成したリッチが、自己所有の劇場とした建てたのがコヴェントガーデン劇場である。開場は1732年12月7日。
新しい劇場でかつ建設主が劇場人だったことから、コヴェントガーデン劇場は当時最先端の舞台機構を備えていた。ヘンデルがそれに強く惹かれたのは疑う余地がない。
ヘンデルのコヴェントガーデン劇場への移転に関する最初の情報は、ロンドン・イヴニング・ポスト紙の1734年7月11―13日号に見られる。
この町は次のシーズンに、ヘイマーケット【の国王劇場】で一つのオペラ団を、そしてコヴェントガーデンの新しい劇場で(週2回)ヘンデル氏の監督による別のオペラ団を楽しむことになるそうだ。
We hear that the Town will be entertain'd next Season with an Opera at the Haymarket, and with another under the Direction of Mr. Handel (twice a week) at the new Theatre in Covent-Garden.
そして前者には、前述のセネジーノらに加えファリネッリとして知られるカルロ・ブロスキ Carlo Broschi (1705-1782)がイタリアから渡英中であると報じている。貴族オペラは最初の1733/1734のシーズンの成果が芳しくなく、ポルポラが弟子のファリネッリを呼び寄せたのだ。
一方ヘンデルの団体には、ジョヴァンニ・カレスティーニ Giovanni Carestini と、そして第二次ロイヤル・アカデミー・オヴ・ミュージックの主要歌手で唯一人ヘンデルに付き従ったアンナ・マリア・ストラーダ Anna Maria Strada らが出演すると伝えている。
サレ嬢が前述のコヴェントガーデンのオペラ団で踊ることにもなっているそうだ。
We hear also that Mademoiselle Salle is to dance in the said Opera at Covent-Garden Theatre.
サレ嬢とはフランスの舞踏家マリー・サレ Marie Sallé (1707 - 1756)のこと。彼女はパリで高い評判を得ており、リッチがコヴェントガーデン劇場の1734/1735年シーズンに招いていた。
サレは1727年からパリのオペラ座の花形バレリーナとして人気を博したが、しばしば劇場当局と衝突しており、この1734年のロンドン訪問の直前にも劇場側と揉めていた。したがって彼女の今回のロンドン興行は、強い決意を持っていたに違いない。
ヘンデルとサレの出会いはかなり前のことである。1716-1717年のシーズン、つまりまだサレが10歳になるかならないかの頃、彼女は兄フランシスと共に初めてロンドンを訪問、リンカーンズ・イン・フィールド劇場で興行をしている。そしておそらく滞在末期の1717年6月5日、ヘンデルの《リナルド》の公演[注]に兄妹で特別出演して踊りを披露した。
彼女はその後1725-1727年のシーズン、1730-31年のシーズンとロンドンを再訪、やはりリンカーンズ・イン・フィールド劇場で興行を行っており、ヘンデルはサレの実力はよく知っていたと思われる。だから貴族オペラとの競合で劣勢にあったヘンデルが、サレの一座をオペラ上演に取り込むのは当然のことだった。《アリオダンテ》と《アルチーナ》はそれによって生み出された傑作である。
国王劇場から追い出されたヘンデルだったが、最先端の舞台機構を備えたコヴェントガーデン劇場を使うことができて、短い間とはいえマリー・サレと共同作業ができたことは非常に幸いだった。
注 1716/1717年シーズンの《リナルド》再演は、1717年1月5,12,19,23,26日,2月9日,3月9日,5月2,18日と上演され、そしてサレの出演した6月5日が最終公演だった。
その2ヵ月半の間に1734/1735年のシーズンは始まっている。
1734年11月9日、コヴェントガーデン劇場でヘンデルの《忠実な羊飼い Il pastor fido》の再演[注1]が始まった。ヘンデルは新たに序幕《テルプシコーレ Terpsicore》を加え、サレが題名役を務めた。《テルプシコーレ》は、サレに合わせて、ヘンデルには極めて珍しい歌の間に踊りが挟みこまれるフランス様式の作品に作られている。
次に、前のシーズンで初演され好評を博した《クレタのアリアンナ》が再演、11月27、30日、12月4,7,11日の計5回。その次に、ヘンデルの自作のパスティッチョ《オレステ》が12月18、21、28日の3回上演された。
ヘンデルが《アリオダンテ》をすぐに初演しなかった理由は、やはりファリネッリである。10月29日、ヘイマーケットの国王劇場で貴族オペラのシーズン開幕公演、ハッセ/ブロスキ[注2]の《アルタセルセ》が初日を向かえ、ファリネッリがロンドン・デビューを果たした。ヘンデルが《アリオダンテ》を書き上げた5日後のこと。ファリネッリが熱狂を巻き起こしている間に新作を発表して直接対決をしても勝ち目がないとヘンデルが考えたとしても無理はない。ほとぼりが冷めるのを待つしかなかった。
Ariodante
Giovanni Carestini
alto castrato
Ginevra
Anna Maria Strada
soprano
Polinesso
Maria Caterina Negri
contralto
Lurcanio
John Beard
tenor
Dalinda
Cecilia Young
soprano
Il Re di Scozia
Gustavus Waltz
bass
Odoardo
Stoppelaer
tenor
ジョヴァンニ・カレスティーニ(1704頃―1760頃)はイタリア中部のフィロットラーノ(マチェラータとイェージの中間辺り)に生まれたアルト・カストラート。貴族オペラに寝返ったセネジーノの代わりとなるカストラートとして1733年にロンドンにやって来る。ヘンデルのオペラ、オラトリオには、《クレタのアリアンナ》(1734年1月26日初演)で初登場、《デボラ》1734年春の再演、《忠実な羊飼い》1734年秋の再演、《アリオダンテ》、《アルチーナ》、《アタライア》1735年春の再演しか関わらず、
注1 《忠実な羊飼い》は元々は《リナルド》の次作として1712年10月24日に初演されていたが、1734年の夏に大幅に改変して再演(初日は5月18日)、その半年後にさらに手を加えて再演することになった。
注2 ヨハン・アドルフ・ハッセ Johann Adolph Hasse(1699―1783)の同名作(1730,ヴェネツィア)を元に、ファリネッリのアリアを増やすためにブロスキの音楽を混ぜ込んだパスティッチョだった。
対訳付き音楽設計図
※左右対訳が表示できず上下対訳になってしまう場合は、ブラウザの幅を広げること。
主な登場人物
スコットランド王バス
アリオダンテ,王の臣下アルト・カストラート,今日では主としてメッゾソプラノ
ジネーヴラ,王女ソプラノ
ルルカーニョ,アリオダンテの弟テノール
ポリネッソ,オールバニ公コントラルト,今日ではカウンターテノールでも
ダリンダ,ジネーヴラの女官ソプラノ
オドアルド,宮廷の寵児テノール
Ouverture | 4/4 g minor |
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allegro 3/4 g minor |
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Gavotte | Allegro 2/2 g minor |
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ATTO PRIMO | |||
Aria Ginevra |
Andante 3/4 G Major |
Scena I第1場 Gabinetto reale王宮の部屋 Ginevra allo specchio in atto di acconciarsi. Dalinda, paggi, e damigelleジネーヴラは鏡に向かって髪を結っている最中。ダリンダ、小姓たち、そして侍女たち GINEVRAジネーヴラ Vezzi, lusinghe, e brio愛らしさ、媚び、そして快活さが Rendano il volto mio私の顔を Più vago al mio tesor.私の宝の人に対してより美しくするように。 (s'alza dallo specchio, e li paggi e le damigelle partono.)(彼女は鏡【の前】から立ち上がる、すると小姓たちと侍女たちは去る。) |
単一形式のアリア vezzi、lusinghe、brio は、この場合、いずれも顔の表情を示していると考えられる |
Recitativo |
DALINDAダリンダ Ami dunque, o Signora?では君は愛しているのか、ああ王女よ? GINEVRAジネーヴラ Avvampa il core di nobil fiamma,【私の】心は高貴な炎で燃え上がっている、 Che vi accese amore.それを愛がそこに【=心に】点火した。 DALINDAダリンダ E il re tuo genitore l'approva?そして君の父である国王はそれを認めているのか? GINEVRAジネーヴラ Anzi il fomenta.むしろ彼はそれを急き立てている。 DALINDAダリンダ Segui ad amar,愛することを続けなさい、 Fa l'alma tua contenta.君の魂を満足にしなさい。 (in atto di partire)(退場しようとする) Scena II第2場 Ginevra, Polinesso e Dalinda che ritornaジネーヴラ,ポリネッソ,そして戻るダリンダ POLINESSOポリネッソ Ginevra?ジネーヴラかい? GINEVRAジネーヴラ Tanto ardire? Olà Dalinda?ずいぶんな厚かましさでは? そら、ダリンダは? POLINESSOポリネッソ Lungi da' tuoi bei rai君の美しい眼差しから遠く離れていては Viver non può il mio cor;私の心は生きられない; Quindi perdona se a te...だから許してくれ、もし君に… GINEVRAジネーヴラ Duca, se mai fosti公爵よ、もし君が Noioso oggetto a gli occhi miei,私の両目に鬱陶しい対象だったなら、 Or che amante ti scopri, or più lo sei.君が【私を】愛する人だと自らの意図を明かした今となっては、君はより一層それ【=鬱陶しい対象】だ。 |
che vi accese amore の vi は代名詞ではなく副詞 そこに。 | |
Aria Ginevra |
Allegro 4/4 F Major |
GINEVRAジネーヴラ Orrida agli occhi miei,私の目には、 Quanto, Signor, tu sei貴君よ、君がそうであるほどには Tesifone non è.テジフォーネは恐ろしくない【=君の方がテジフォーネより恐ろしい】。 Amor di noi per gioco愛の神は私たちをからかおうと il core a te di foco君の心を火に、 di gel lo fece a me.私のそれ【=心】を氷にしたのだ。 (parte)(退場する) |
ダ・カーポを用いた三部形式のアリア テジフォーネ =ティシポネ,ギリシャ神話の復讐の女神 |
Recitativo |
Scena III第3場 Polinesso e Dalindaポリネッソとダリンダ POLINESSOポリネッソ Orgogliosa beltade!高慢な美女め! DALINDAダリンダ Signore, in vano tenti... lascia d'amarla.貴殿よ、君は無駄に試みている… 彼女を愛することを止めなさい。 Io credo che Ariodante...私は信じているアリオダンテが… POLINESSOポリネッソ È mio rival?彼が私の恋敵なのか? DALINDAダリンダ Anzi gradito amante.むしろ【彼は彼女に】喜んで受け入れられた恋人。 POLINESSOポリネッソ E il genitor?それで【彼女の】父親は? DALINDAダリンダ Approva gli affetti lor;彼は彼らの情愛を認めている; E che sperar tu puoi?それで君は何を望むことができるのか? (riguardandolo teneramente)(優しく彼を見つめながら) |
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Aria Dalinda |
Andante 4/4 b minor |
DALINDAダリンダ Apri le luci, e mira両目を開けなさい、そしてよく見なさい Gli ascosi altrui martiri:別の人の隠された苦悩を: V'è chi per te sospira,君に溜め息を吐く人がいる、 E non l'intendi ancor.だが君はまだ彼女を分かっていない。 E in tacita favellaそうすれば【↓】溜め息の霞に包まれた Col fumo de' sospiri【↑】無音の言葉の中で、 Ti scopre, oh Dei! la bellaああ神々よ! 彼女は君に露にする Fiamma che le arde il sen.【彼女の】胸を燃やす美しい炎を。 (parte)(退場する) |
ダ・カーポを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena IV第4場 Polinesso soloポリネッソ一人 Mie speranze, che fate?私の希望よ、お前たちは何をする? Così vi abbandonate?こうしてお前たちはお前たち自身【=希望】を棄て去るのか? No, fa cuor, Polinesso;いや、元気を出せ、ポリネッソよ; Giacchè Dalinda a te si scopre amante,ダリンダがお前に恋する人だと明かしたのだから、 Alziam mole d'ingegno私たちは巨大な策略を立てよう Per atterrar il mio rivale al regno.王位への私の対抗者を打ち倒すために。 |
アリオダンテを il mio rivale al regno 王位への私の対抗者 と呼んでいることから、ポリネッソが将来の国王の座を狙ってジネーヴラと結婚しようとしていることが分かる | |
Aria Polinesso |
Andante 3/4 C Major |
POLINESSOポリネッソ Coperta la frode【↓】粗末な毛織物で Di lana servile【↑】覆われた欺瞞は Si fugge e detesta,避けられそして嫌悪され、 E inganno s'appella.そして策略は非難される。 Si chiama con lode【だが】賞賛をもって呼ばれる Prudenza virile大人の思慮深さと S'avvien che si vestaもしそれ【=欺瞞】が身を飾ろうものなら Di spoglia più bella.より美しい衣服で。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア s'avvien = se avviene |
Aria Ariodante |
Andante larghetto 4/4 E-flat Major |
Scena V第5場 Giardino reale王宮の庭園 Ariodante, e poi Ginevraアリオダンテ、そしてそれからジネーヴラ ARIODANTEアリオダンテ Qui d'amor nel suo linguaggioここではその【=それぞれの】愛の言葉で、 Parla il rio, l'erbetta, e'l faggio小川が、若草が、ブナが話しかけている Al mio core innamorato.恋に落ちている私の心に。 |
単一形式のアリア |
Recitativo |
ARIODANTEアリオダンテ T'amerò dunque sempre, idolo mio.では私はこれからもずっと君を愛するつもりだ、私の偶像よ。 GINEVRAジネーヴラ Ama costante pur, ti dico anch'io.どうか節操固く愛しなさい、と私も君に言う。 ARIODANTEアリオダンテ Tu sovrana, io vassallo...君は君主の娘、私は臣下… GINEVRAジネーヴラ Ariodante, mercé del nume arcieroアリオダンテよ、矢を持った愛の神のおかげで Più sovrana non è quest'alma amante;この愛する魂はもはや君主の娘ではない; Servo non è chi ha del mio cor l'impero.私の心を支配する人は下僕ではない。 ARIODANTEアリオダンテ Quasi attonita l'alma唖然としている【私の】魂はほとんど Ancor nol crede.まだそれを信じていない。 GINEVRAジネーヴラ Dunque la destra mia,それでは私の右手が、 Di ciò che t'offre amor pegno ti sia.愛が君に提供するものについての君への証になるように。 |
Ama costante pur, 多くの場合、このジネーヴラの台詞は、 Alma costante pur, 同様に固い節操の魂も、 となっている。ここでは BÄRENREITER のピアノ伴奏譜に従っている | |
Duetto GINEVRA Ariodante |
Larghetto 3/8 A Major |
GINEVRAジネーヴラ Prendi, prendi da questa mano受け取りなさい、この手から受け取りなさい Il pegno di mia fé.私の信頼の証を。 ARIODANTEアリオダンテ Prendo, prendo da questa mano私は受け取る、この手から受け取る Il premio di mia fé.私の信頼の報いを。 A Due二人で Del fato più inumano極めて非情な運命の Il barbaro rigore,過酷な厳しさが、 Mai così bell'ardore私の中のこのように美しい炎を Estinguer possa in me.決して消すことができないように。 |
不完全な三部形式の二重唱。Bの後Aに戻ってすぐ中断して次のレチタティーヴォに続く 曲尾に Segue Recitativo レチタティーヴォに続く の指示 |
Recitativo |
Scena VI第6場 Mentre replicano il duetto porgendosi la mano, il Re entra nel mezzo, e prende la mano d'Ariodante e della figlia二人が手を差し出しあいながら二重唱を繰り返す間に、王が間に入り、アリオダンテの手と娘の手を取る Ariodante, Ginevra, Re, Odoardo e guardieアリオダンテ、ジネーヴラ、王、オドアルドと衛兵たち Re王 Non vi turbate, bell'alme innamorate.狼狽するな、恋する美しい魂たちよ。 GINEVRAジネーヴラ Padre...父よ… ARIODANTEアリオダンテ Mio Re ...私の王よ… Re王 Tacete; e de' vostri contenti黙りなさい; そして君たちの満足の Me a parte ancor prendete,一部に私も加えなさい。 Ché della vita, e degli spirti miei私の命の、そして私の精神の (a Ginevra)(ジネーヴラに) Una parte sei tu;一部が君だ; (ad Ariodante) (アリオダンテに) L'altra tu sei.そしても別の【一部】が君だ。 ARIODANTEアリオダンテ (in atto di inginocchiarsi)(跪こうとして) Alle tue reggie piante...王の君の足の裏に【=足元に】… Re王 Sorgi, amato Ariodante;立ちなさい、愛するアリオダンテよ; In questa età degg'io alla figlia pensar,この年齢では私は娘のことを考えなくてはならない、 Pensar al regno,王国のことを考えなくてはならない。 Né s'offre al pensier mioそれでも私の考えに現われはしない、 Di te più degno sposo,君よりも相応しい夫が、 E re più degno.そして【君よりも】相応しい王は。 GINEVRAジネーヴラ A tanta gioia, oh Dei!これほど大きな喜びに、ああ神々よ! ARIODANTEアリオダンテ A tanta sorte...これほど大きな運命に… GINEVRAジネーヴラ Se resiste il cor mio...もし私の心が耐えるならば… ARIODANTEアリオダンテ Se il cor non muore,...もし私の心が死なないならば… A Due è prodigio d'amore.それは愛の奇跡だ。 Re王 Or va, figlia, comparti per le nozze vicine,今こそ行きなさい、娘よ、間近の結婚式のためにふんだんに与えなさい、 Più contenti al tuo core,君の心にもっと多くの満足を、 Più vezzi al volto tuo,君の心にもっと多くの愛らしさを、 Più gemme al crine.【君の】髪にもっと多くの宝石を。 |
prendere a parte di qualcosa 何々に参加させる offrirsi a qualcosa 何々の前に姿を現す,現れる comparti per le nozze vicine, この場合の compartire は distribuire に近く、(大量に)配布する,ばら撒く の意。 | |
Aria Ginevra |
Allegro 6/8 B-flat Major |
GINEVRAジネーヴラ Volate, amori,飛べ、愛の神たちよ、 Di due bei cori二つの美しい心の La gioia immensa a celebrar.計り知れない喜びを祝うために。 Il gaudio è tanto,歓喜があまりも大きく、 Che come, e quanto,どのように、そしてどのくらい Dir non saprei debba esultar.喜びを爆発させるべきか言うことができなさそうだ。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena VII第7場 Ariodante, re, Odoardo e guardieアリオダンテ、王、オドアルドと衛兵たち Re王 Vanne pronto, Odoardo,素早く行け、オドアルドよ、 Le pompe a preparar;豪華【な結婚式】を用意しに; E il novo giorno sia coll'alto imeneoそして新しい日【=明日】が気高い結婚で Lieto e giocondo.喜ばしく幸せになるように。 Odoardoオドアルド E goda questa reggia,そして心から喜ぶようにこの王宮が、 Il regno, il mondo.王国が、世界が。 (parte)(退場する) Re王 E tu, al par di Ginevra,そして君、ジネーヴラと同じく、 Amato Ariodante,【私から】愛されているアリオダンテよ、 Dalla man del tuo re gradisci'l donno;君の王の手から贈り物を喜んで受け取りなさい; Più darti non poss'io,私はさらに多く君に与えられない、 Se me stesso ti do, la figlia, e il trono.もし私が私自身を、娘を、そして玉座を君に与えるならば。 |
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Aria Re |
Andante allegro 3/8 F Major |
Voli colla sua trombaラッパを手にして飛ぶように La fama in tutto il mondo【高い】世評が世界中を Le gioie a publicar.歓喜を広めるために。 Il ciel lieto rimbomba,喜ぶ天が轟く【=高らかに声を響かせる】、 Che giorno più giocondoこれよりも喜びに溢れる日を Sorte non può mandar.運命は贈れない、と。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア 自筆譜では印刷譜よりいくらか長いものだったが、初演に際して難易度が高い箇所を削除し、印刷譜ではそれが反映されている |
Recitativo |
Scena VIII第8場 Ariodante soloアリオダンテ一人 ARIODANTEアリオダンテ Oh! felice mio core! Dopoああ! 幸せな私の心よ! Tanti tormenti pur giungesti多くの苦悩の後、お前【=私の心】はやっと達した Alla sfera de' contenti.喜びの領域に。 |
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Aria Ariodante |
Allegro 4/4 A Major |
ARIODANTEアリオダンテ Con l'ali di costanza意志堅固の翼で Alza il suo volo amor,愛【の神】はその飛揚を高くして、 Fa trionfar nel cor,心の中に勝ち誇らせる、 Fede e speranza.信頼と希望を。 Non devo più temere私はもう恐れる必要はない di sorte il rio tenor,悪い状態の運命を、 ma col mio bel tesor,それどころか私の美しい宝の人と、 sempre godere.これからずっと楽しむつもりだ。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア costanza は 節操,意志の強固 の意。 英訳で constancy、仏訳で constance と同義の語が当てられることがある一方で、仏訳で fidèle、独訳で Treue とどちらも 誠実 の意味の語に訳されることも多い。 amor は、翼を持っているので 愛の神アモーレAmore と理解できる一方で、気紛れな性格とされるアモーレ(Cupido クピードと同様)が 意志の固い翼 l'ali di costanza を持っているのは不思議にも思われる。 ところで Bärenreter のピアノ伴奏譜の独訳歌詞では Auf Flügen meiner Treue schwingt Amor sich empor 私の誠実の翼に乗って愛の神は舞い上がる としている。 ここでの amor を 愛の神 と採るか、抽象的な 愛 と採るか、いずれにしても costanza であるのは、このアリアの前に置かれたアリオダンテのレチタティーヴォとこのアリアのBの部分の歌詞から推測されるに、アリオダンテの心で間違いないだろう。 |
Recitativo |
Scena IX第9場 Polinesso e Dalinda, parlando insiemeポリネッソとダリンダ、一緒に話しながら POLINESSOポリネッソ Conosco il merto tuo, cara Dalinda,私は君の良いところを知っている、いとしいダリンダよ、 E col tuo mezzo io voglio scuotereそして君の手段を用いて【=君の助けを借りて】私は振り落としたい Il giogo indegno,相応しくないくびきを【=私は自分には相応しくないジネーヴラとの結婚を断念したい】、 Render scherni a' disprezzi,【ジネーヴラの】軽蔑には戯れで返したい、 Lasciar Ginevra, le sue nozze, e il regno.ジネーヴラを、彼女の結婚式を、そして王国を放棄したい。 DALINDAダリンダ (Che sento? Oh! me felice!)(私は何を聞いたのか? ああ! 幸せな私!) Al tuo cenno, Signor...君の指示に【従う】、貴殿よ… POLINESSOポリネッソ Sì, in questa notte quando dorme Ginevra,それでいい、今夜ジネーブラが眠っている時、 Ti adorna di sue vesti,君は彼女の服で身を飾って、 Cerca imitarla in tutto,すっかり彼女を模倣しようと務め、 Disponi come lei le chiome...彼女のように髪を整えて… DALINDAダリンダ E poi?そしてそうしたら? POLINESSOポリネッソ Per la segreta porta【↓】王宮の庭園の Del reale giardino【↑】秘密の扉を通じて Nelle sue stanze m'introduci,彼女の部屋へと私を招き入れなさい、 E fingi di Ginevra il sembiante.そしてジネーヴラの姿のふりをしなさい。 DALINDAダリンダ Ma il mio onor?...けれど私の名誉は?… POLINESSOポリネッソ So il rispetto私は礼を知っている Che conviene a nobile donzella.高貴な娘に相応しい礼を。 E non risolvi ancor?それでも君はまだ決心しないのか? DALINDAダリンダ Forza d'amore!愛の力だ! Nulla si può negare a chi s'adora.【ある人から】熱愛される者には否定され得ることは何もない。 POLINESSOポリネッソ Tutto sarà per te poscia il mio core.後(のち)には私の心はすべて君へと向くだろう。 |
最初のポリネッソの台詞は、それを聞いたダリンダが喜んでいるのだから、単に彼女に策略を打ち明けているわけではない。scuotere il giogo で くびきを振り落とすという意味だが、くびき(牛馬にかける横木,転じて 束縛)はしばしば結婚の暗喩になる。ポリネッソはここで、ジネーヴラと結婚する野心を断念するふりをしてダリンダを喜ばせ、それで彼女を彼の策略に巻き込もうとしている。 | |
Aria Polinesso | Allegro ma non troppo 2/2 F Major |
POLINESSOポリネッソ Spero per voi, sì, sì,私はお前たちに期待している、そうだ、そうだ、 Begli occhi in questo dì美しい両目よこの日に【=今日】 Sanar mie piaghe.私の傷を癒すことを。 E a voi sacrar vogl'ioそうしたら私はお前たちに捧げたい、 Gli affetti del cor mio,私の心の情愛を、 Pupille vaghe.優美な両瞳よ。 (Parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア。 ダリンダの pupille 両瞳 に対して二人称複数親称 voi お前たち で呼びかけている |
Recitativo |
Scena X第10場 Dalinda e Lurcanioダリンダとルルカーニョ LURCANIOルルカーニョ Dalinda, in occidente già cade il sole,ダリンダよ、西にもう太陽は沈んでいる、 E ne' bei lumi tuoi un sol più chiaroなのに君の美しい両目の中にはもっと明るい太陽が Ecco ne spunta a noi.ほら私たちへと姿を現している。 DALINDAダリンダ Signor, meco tu scherzi.貴殿よ、君は私を用いてふざけている。 LURCANIOルルカーニョ Sei la mia sola speme.君は私の唯一の希望だ。 DALINDAダリンダ Non son per te, Signor...私は君に向いていない【=君とは身分が相応でない】、貴殿よ… LURCANIOルルカーニョ Sei l'idol mio.君は私の偶像だ。 DALINDAダリンダ Ergi a scopo maggiore il tuo desio.君の求めるものをより大きな目標へと高めなさい。 (parte)(退場する) |
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Aria Lurcanio |
Andante 3/4 e minor |
LURCANIOルルカーニョ Del mio sol vezzosi rai,私の太陽である愛らしい両目よ、 V'ascondete ora da me;お前たちは今私から身を隠している; Ma perché?だがなぜだ? Senza voi viver non so.お前たちなしでは私は生きていけない。 Quell'ardor che da voi scese,お前たちから降り注いだあの炎は、 Che m'accese, e m'arde ancora,それは私に火を点け、そしてまだ私を燃やしていて、 E arderà persin ch'io moraさらに私が死んですら【私を】燃やすであろう Quella vita al cor donò.【その炎が】あの命を【私の】心に与えたのだ。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena XI第11場 Dalinda solaダリンダ一人 Ah! che quest'alma amanteああ! この愛する魂が Arde per altro foco他の火によって燃えていることは、 E in eterno sarà sempre costante.そしてこれからもずっと永遠に変わらないだろう。 |
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Aria Dalinda | Allegro 4/4 B-flat Major |
DALINDAダリンダ Il primo ardor初めての熱情は è così caro a questo cor,この心にこれほどいとしいので、 Ch'estinguerlo non vuolそれを消したいとは思わない Quest'alma amante.この恋する魂は。 Io son fedel私は貞節で Né mai crudel,決して非情でなく、 E sempre a lui saràそして彼にこれからもずっと Il cor costante.心は揺ぎないだろう。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena XII第12場 Valle deliziosa気持ちよい谷間 Ariodante, ammirando la bellezza del locoアリオダンテ、場所の美しさに見とれながら ARIODANTEアリオダンテ Pare, ovunque mi aggiri,歩き回るところはどこでも、 Che incontri'l gaudio e'l brio.歓喜と陽気に出くわすように思われる。 Scena XIII第13場 Ariodante e Ginevraアリオダンテとジネーヴラ GINEVRAジネーヴラ E qual propizia stella mi guida a te,そしてどのような好意的な星が私を君へと導いたのか、 Mio ben?私の愛する人よ。 ARIODANTEアリオダンテ Tu sol sei quella.君だけがあれ【=その星】だ。 GINEVRAジネーヴラ Consolati, mio caro;安心しなさい、私のいとしい人よ; Già siam vicini al porto;私たちは既に港へと近づいている; E il novo giorno del bel nostro imeneoそして新しい日【=明日】は素晴らしい私たちの結婚で Ne anderà adorno.飾られるだろう。 ARIODANTEアリオダンテ Felici abitator di questo suolo,この国の幸せな住人たちよ、 Ninfe leggiadre, e amanti pastorelle,愛らしいニンファたちよ、そして恋する羊飼いの娘たちよ、 Le nostre gioie intanto私たちの喜びをまずは Venite a celebrar col ballo, e il canto.踊りで、そして歌で祝いに来てくれ。 |
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Sinfonia | Larghetto 6/8 F Major |
Duetto e Coro Ginevra Ariodante |
A tempo di Gavotta 2/2 F Major |
GINEVRA E ARIODANTEジネーヴラとアリオダンテ Se rinasce nel mio cor私の心の中に再び生まれるならば、 Bella gioia, bella speme,素晴らしい喜び、素晴らしい希望が La produce un fido amor.それを誠実な愛が生み出している【=それを生み出しているのは誠実な愛だ】。 Chi non sa costante amar,意志固く愛することのできない者は、 Vero gaudio, vero bene真の歓喜、真の幸福を Non isperi mai di trovar.見つけることは決して望めないだろう。 CORO合唱 Sì, godete al vostro amor,そうだ、君たちの愛に心から喜べ、 Alme belle, fidi amanti,【二人の】美しい魂よ、誠実な恋人たちよ、 Questo fa beato il cor.これ【=君たちの愛】が心を最高に幸せにする。 GINEVRA, ARIODANTE E COROジネーヴラ、アリオダンテと合唱 Cerchi ogn'uno d'imitar各々が模倣するよう努めるように La costanza, la speranza,【二人の】意志の固さを、希望を、 Che vi fa lieti esultar.そのことが君たちを幸せに喜ばせる。 |
曲尾に Segue il Ballo 踊りに続く の指示 isperare = sperare |
Ballo | 2/2 F Major |
Ballo di ninfe, pastore e pastorelli Ballo は Duetto e Coro の音楽を引き継いでいる |
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Musette I | Lentement 3/4 D Major |
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Musette II | Andante 6/8 D Major |
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Allegro 4/4 d minor |
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Coro e Soli | A tempo di Gavotta 2/2 F Major |
CORO合唱 Sì, godete al vostro amor,そうだ、君たちの愛に心から喜べ、 Alme belle, fidi amanti,【二人の】美しい魂よ、誠実な恋人たちよ、 Questo fa beato il cor.これ【=君たちの愛】が心を最高に幸せにする。 GINEVRA E ARIODANTEジネーヴラとアリオダンテ Se rinasce nel mio cor私の心の中に再び生まれるならば Bella gioia, bella speme,素晴らしい喜び、素晴らしい希望が La produce un fido amor.それを誠実な愛が生み出している【=それを生み出しているのは誠実な愛だ】。 GINEVRA, ARIODANTE E COROジネーヴラ、アリオダンテと合唱 Cerchi ogn'uno d'imitar各々が模倣するよう努めるように、 La costanza, la speranza,【二人の】意志の固さを、希望を Che vi fa lieti esultar.そのことが君たちを幸せに喜ばせる。 |
Duetto e Coro とほぼ同じ音楽。 |
ATTO SECONDO | |||
Sinfonia | 4/4 D Major |
Scena I第1場 Notte con lume di Luna Luogo di antiche rovine, con la veduta in mezzo della porta segreta del giardino reale, corrispondente agli appartamenti di Ginevra月の光のある夜 古い遺跡のある場所、中央に王宮の庭園の秘密の扉が見え、【それは】ジネーヴラの居室に通じている Polinesso soloポリネッソ一人 |
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Recitativo |
POLINESSOポリネッソ Di Dalinda l'amoreダリンダの愛は Quanto giunge opportuno al mio disegno!なんと適切に私の企みに合っていることか! Vieni pure, Ariodante, guidalo,さあ来い、アリオダンテよ、【そして】彼を案内しろ、 O sorte, in si remota parte,ああ運命よ、この遠い辺りへと、 Ché questo è il campidoglio a mia bell'arte.なぜならこれは私の素晴らしい技にとって勝利の地だから。 Scena II第2場 Ariodante, Polinesso, poi Lurcanio in disparte, e poi Dalinda in abito di Ginevraアリオダンテ、ポリネッソ、それから離れたところにルルカーニョ、そしてそれからジネーヴラの服を着たダリンダ POLINESSOポリネッソ Eccolo; o amico,ほら彼だ; ああ友よ、 E come qui ti ritrovo?そしてどうしてここで私は君を再び見つけるのだろうか? ARIODANTEアリオダンテ È tanto il giubilo dell'alma,魂の歓喜が大きくて Che non ponno chiudersi le mie luci私の眼は瞑ることができない Ancora al sonno.まだ眠りへと。 Ginevra, l'idol mio, mercé d'amore...ジネーヴラよ、私の偶像よ、愛のおかげで… POLINESSOポリネッソ Che fia?彼女がどうなるだろうというのか? ARIODANTEアリオダンテ Mia sposa...私の妻に… POLINESSOポリネッソ Sogni.君は夢を見ている。 ARIODANTEアリオダンテ Esulta il core.心は狂喜している。 POLINESSOポリネッソ Scherzi, Ariodante?君は冗談を言っているのか、アリオダンテよ? ARIODANTEアリオダンテ È ver; ella poc'anziこれは本当だ; 彼女は少し前に mi diè in pegno la destra.証に右手を差し出した。 POLINESSOポリネッソ E a me dispensa amorosi contenti.そして彼女は私に【も】愛の喜びを授けている。 ARIODANTEアリオダンテ Olà, Duca, che parli?おい、公爵よ、君は何を言う? (mettendo la mano sopra la spada)(片手を剣の上に置きながら) Il ferro mio ti sosterrà che menti.私の剣が君が嘘を吐いていると君に断言するだろう。 POLINESSOポリネッソ T'acquieta; se tu vuoi落ち着け; もし君が Crederlo agli occhi tuoi,君の両目でそれを信じたいのであれば、 Farti veder l'inganno ora m'impegno.私は君の思い違いを今見せることを約束する。 (Entra Lurcanio a parte)(離れたところにルルカーニョが入場) LURCANIOルルカーニョ (Col Duca il mio germano?(公爵と一緒に私の兄が? Io qui mi celo.)私はここに隠れるぞ。) (si nasconde tra le rovine)(遺跡の間に身を隠す) POLINESSOポリネッソ Qui ti nascondi...ここに君は身を潜めて… ARIODANTEアリオダンテ È questa notte fia se menzognero,今夜は、もし君が嘘を吐いているならば君の日々【=人生】の最後の日であるように、 O se verace sei,あるいはもし君が誠実ならば、 L'ultimo de' tuoi giorni, oppur de' miei.私の【日々の最後の日】であるように。 |
ここでの campidoglio (小文字始まり)は、ローマのカンピドーリオの丘そのものを指すのではなく、勝利を象徴する言葉として用いられている | |
Aria Ariodante |
Allegro 4/4 E Major Larghetto 4/4 e minor |
ARIODANTEアリオダンテ Tu, preparati a morire,君よ、死ぬ準備をしろ、 Se mentire ti vedrò.もし君が嘘を吐いていると私が判断するであろうならば。 Se la bella m'ha ingannato,もしあの美しい人が私を欺いたのならば、 Disperato io morirò.私は絶望して死ぬだろう。 |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Ariodante si nasconde tra le rovine, e Polinesso batta alla porta più volte, che gli viene aperta da Dalinda in abito di Ginevraアリオダンテは遺跡の間に身を隠す、そしてポリネッソは扉を何度も叩く、それはダリンダによって彼に開かれる POLINESSOポリネッソ Ginevra?ジネーヴラか? DALINDAダリンダ Oh mio Signore!ああ、私の貴殿よ! (entra Polinesso, e la porta si chiude)(ポリネッソは【中へ】入り、すると扉は閉まる) LURCANIOルルカーニョ (Impudica!)(みだらな女だ!) ARIODANTEアリオダンテ Occhi miei, che vedeste?私の両目よ、お前たちは何を見たのだ? (Va sulla porta risolutamente)(決然と扉に向かって行く) È pur dessa... Su questa soglia infame,本当に彼女だ… この恥ずべき戸口の上で、 Si dia morte al dolore.死が悲しみに与えられるように。 (cava la spada, e posa il pomo in terra per uccidersi, quando Lurcanio lo trattiene, e gli toglie la spada)(剣を引き抜き、そして自殺するために剣の握りを地面に据える、その時ルルカーニョが彼を押し留めて、そして彼の剣を奪う) LURCANIOルルカーニョ Ferma, germano; a che tanto furore?止めろ、兄よ; どうしてこれほどの激情を? |
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Aria Lurcanio | Allegro 6/8 G Major |
LURCANIOルルカーニョ Tu vivi, e punito君は生きるのだ、そして Rimanga l'eccesso犯行が罰せられるように D'amore tradito, d'offesa onesta.裏切られた愛についての、傷付けられた誠実さについての。 Che il volger crudeleというのは、残酷にも向けることは、 Il ferro in sé stesso,剣を自分自身に、 Per donna infedele, è troppa viltá.不実な女のために、あまりにも小胆な行為だからだ。 (gli porta via la spada)(彼は剣を持ち去る) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena III第3場 Ariodante soloアリオダンテ一人 ARIODANTEアリオダンテ E vivo ancora?そして私はまだ生きるのか? E senza il ferro, Oh! Dei! Che farò?そして剣なしで、ああ! 神々よ! 私は何をすればよいのだろうか? Che mi dite, o affanni miei?お前たちは私に何を言っているのだ、ああ私の苦しみよ? |
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Aria Ariodante |
Larghetto 3/4 g minor |
ARIODANTEアリオダンテ Scherza, infida, in grembo al drudo,戯れろ、不実な女よ、情人の膝の上で【=情人に抱かれて】、 Io tradito a morte in braccio私は君の不義によって裏切られ Per tua colpa ora men vo.今は死の腕に抱かれに去る。 Ma a spezzar l'indegno laccio,だが恥ずべき関係を千切るために、 Ombra mesta e spirto ignudo,悲しげな亡霊と裸の【=肉体を持たない】霊魂【になって】、 Per tua pena io tornerò.君の処罰のために私は戻って来るつもりだ。 (parte) (退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア grembo は 膝 の意だが、in grembo a で何かに抱かれるという意味合いになる。 |
Recitativo |
Scena IV第4場 Polinesso, e Dalinda con abito di Ginevraポリネッソ、そしてジネーヴラの服を着たダリンダ POLINESSOポリネッソ (va guardando per la scena)(舞台の方を繰り返し見ながら) (Lo stral ferì nel segno;(矢は標的を傷付けた; Disperato partì; oh! me beato!)彼は絶望して去った; ああ! 私は最高に幸せだ!) DALINDAダリンダ Addio, Signor;さようなら、貴殿よ; Già s'avvicina il giorno.もう陽が近づいている。 POLINESSOポリネッソ Se i rimproveri miei a queste spoglieもし【今まで】これらの衣服に向けての私の小言 Sol diretti udisti, udiraiばかり君が聞いたのならば、君は聞くだろう Da qui avante tenerezze d'amor,これからは愛の優しい言葉を、 Sensi d'amante.愛する人の気持ちを。 |
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Aria Dalinda |
Larghetto 6/8 e minor |
DALINDAダリンダ Se tanto piace al cor心にとても気に入るというのに、 Il volto tuo, signor,君の顔が、貴殿よ、 Quando disprezzi;君が【私を】蔑すむ時に【ですら】; Al cor quanto sarà心にはどれだけ Cara la tua beltà,君の美しさがいとしくなるだろう、 Quando accarezzi.君が【私を】愛撫する時には。 (parte)(退場する) |
単一形式のアリア |
Recitativo |
Scena V第5場 Polinesso soloポリネッソ一人 POLINESSOポリネッソ Felice fu il mio inganno私の策略はうまくいった Che porta al mio rival l'ultimo danno.それは私の恋敵に究極の打撃を与えている。 |
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Aria Polinesso | Andante 6/8 a minor |
POLINESSOポリネッソ Se l'inganno sortisce felice,策略が幸福な結果をもたらすならば、 Io detesto per sempre virtù.私は永久に徳を嫌悪する。 Chi non vuol se non quello che lice許されることのほかは望まない者は Vive sempre infelice quaggiù.この世で常に不幸に生きる。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア Chi non vuol se non quello che lice この場合の licere は、法や道理で許される,認められる の意味。 |
Recitativo |
Scena VI第6場 Galleria回廊 Re con guardie, accompagnato da consiglieri, e poi Odoardo衛兵を伴った王、顧問たちに付き従われている、そしてそれからオドアルド RE王 Andiam, fidi, al consiglio per dichiarar, che il行こう、忠実な者たちよ、表明するために議会へと、 Principe Ariodante d'esser mio erede è degno.王子アリオダンテが私の世継ぎとなるに相応しいことを。 ODOARDOオドアルド Misero Re! più sventurato regno!不幸な王よ! さらに不運な王国よ! RE王 Odoardo, che fia? Parla...オドアルド、どうしたという? 話せ… ODOARDOオドアルド La doglia mia, il mio pianto ti parli.私の苦痛が、私の涙が君に語るように。 RE王 Oh! Ciel, conforto!ああ! 天よ、心の支えを! ODOARDOオドアルド Ariodante...アリオダンテが… RE王 Che?どうした? ODOARDOオドアルド Signor, è morto.陛下、彼は死んだ。 RE王 Come? che intendo? Oh! Dei!なんだって? 私は何を聞いた? ああ! 神々よ! ODOARDOオドアルド Il suo scudiero portò avviso彼の従者が報せをもたらした Alla corte; che tristo al mar vicin, quasi宮廷に; 【それによると】不幸なことに近くの海で、 un baleno ratto gettosi all'ombreまるで稲妻のように素早く身を投げた、 Salse in seno.塩辛い闇の懐へ【=夜の海の中へ】、と。 RE王 Dallo stesso scudiero intender voglio同じ従者から私は聞きたい La cagion di sua morte.彼の死の理由を。 Oh! figlia! Oh! me infelice!ああ! 娘よ! ああ! 不幸な私よ! Oh! iniqua sorte!ああ! 非道な運命よ! |
多くの場合 all'ombre salse 塩辛い闇に ではなく all'onde salse 塩辛い波に になっている。ここでは Bärenreiter の楽譜に従った。 |
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Aria Re |
Allegro 3/8 B-flat Major |
RE王 Più contento e più felice【この王国より】より満ち足りてそしてより幸せな Regno al mondo il sol cadente王国を世界中で【昨日の夕方に】西に沈む太陽は、 Dall'occaso non mirò.【かつて】見たことはなかった。 Né più afflitto e più infeliceそして【この王国より】より苦しんでそしてより不幸な Mai di questo il sol nascente王国をこの【今朝の】昇る太陽が Regno al mondo ritrovò.世界中で見たこともかつてなかった。 (parte)(退場する) |
ダ・カーポを用いた三部形式のアリア これは初演時に歌われたアリア。ヘンデルは元々 Invida sorte avara, というまったく別の歌詞、音楽の曲を書いていたが、 ⇒ 補遺 おそらく初演で王を歌ったギュスターヴァズ・ウォルツの力量に合わせて初演前にこちらのアリアに差し替えた。 近年の上演では Invida sorte avara, が採用されることが圧倒的に多い。 |
Aria Ginevra | Larghetto e staccato 3/4 c minor |
Scena VII第7場 Ginevra, Dalinda, e poi il Reジネーヴラ、ダリンダ、そしてそれから王 GINEVRAジネーヴラ Mi palpita il core私の心臓が鼓動する、 Né intendo perché.私にはなぜだか分からないが。 È gioia? o dolore?それは喜び? それとも悲しみ? Chi sa, che cos'è?それが何なのか、誰が分かるのか? |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
DALINDAダリンダ Sta lieta, o Principessa.喜んでいなさい、ああ王女よ。 entra Re王が入場する RE王 Figlia, un'alma reale娘よ、王族の魂は Si distingue dall'altre,他の者たちから区別されている、 Allor che forte resiste強く堪え忍ぶ時には Ai colpi rei d'iniqua sorte.非道な運命の邪悪な打撃に。 GINEVRAジネーヴラ Qual preludio funesto?どのような不吉な前兆なのか? RE王 Ah! ria sventura!ああ! ひどい災いだ! GINEVRAジネーヴラ Deh! caro genitor, parla...ああ! いとしい父よ、話しなさい… RE王 Il sostegno... la speranza del regno…王国の支えが… 希望が… GINEVRAジネーヴラ Misera, oimè!哀れな私、ああ! RE王 Nel vicin mare assorto, lo sposo Ariodante...近くの海に沈んだ、許婚のアリオダンテが… DALINDA Oh! Cielo!ああ! 天よ! GINEVRAジネーヴラ Oh! Dei!ああ! 神々よ! RE王 Dal suo furor portato...彼の激情に駆られて… GINEVRAジネーヴラ Oh! padre!ああ! 父よ! RE王 È morto.彼は死んだ。 GINEVRAジネーヴラ Ahi! resister non so,ああ! 私は堪えることができない、 (cade svenuta sulla seggiola)(気を失って椅子に崩れ落ちる) Son morta anch'io.私も死ぬ。 DALINDAダリンダ Mia Signora?私の女主人よ? RE王 Mia figlia? Coraggio, ti conforta.私の娘よ? しっかりしろ、気をたしかに。 DALINDAダリンダ Ahi! sventura!ああ! 不運な! RE王 Ahi! dolor! Figlia?ああ! 悲しみよ! 娘よ? GINEVRAジネーヴラ Son morta.私は死ぬ。 RE王 Nel vicin letto, o servi,近くのベッドに、ああ召使いたちよ、 Vada col vostro aiuto;君たちの助力で彼女が行くように; A lei ritorno presto faronne;私は彼女の元にすぐ戻るつもりだ; Ahi! sventurato giorno!ああ! 不幸な日だ! Ginevra viene portata via da Dalinda, paggi ecc. il Re nel partire incontra Oduardo e Lurcanio.ジネーヴラはダリンダ、小姓たち等々によって連れ運ばれる。王は退場しながらオドアルドとルルカーニョに出くわす。 Scena VIII第8場 Re, Odoardo e Lurcanio王, オドアルドとルルカーニョ LURCANIOルルカーニョ Mio Re.私の王よ。 RE王 Lurcanio, oh! Dei! Deh! ti consola;ルルカーニョよ、ああ! 神々よ! ああ! 君の悲しみを和らげなさい; Un padre ritrovi in me,君は私に父を見つける、 Se il tuo germano è morto.もし君の兄が死んだなら。 LURCANIOルルカーニョ Sire; chiedo giustizia, e non conforto.陛下、私は裁きを求める、そして慰め【を求めているの】ではない。 RE王 Giustizia, e contro chi?裁き、それで誰に対してなのか? LURCANIOルルカーニョ Contro del reo della morte死の犯行者に対して Del mio caro germano.私のいとしい兄の。 RE王 Come? se il suo furore...何だと? 彼の激情が… LURCANIOルルカーニョ No, Sire, ebbe un autore.いいえ、陛下、犯人がいた。 RE王 Chi fu?誰だったという? LURCANIOルルカーニョ L'impudicizia...みだらな女が… RE王 Oh! meraviglia!ああ! 驚くべきことだ! Ma chi fu l'impudica?だが誰がみだらだったのか? LURCANIOルルカーニョ Ella è tua figlia.その女は君の娘だ。 RE王 Oh Dei, che sento!ああ神々よ、私は何を聞くのか! LURCANIOルルカーニョ (gli dà un foglio)(彼に1枚の紙を渡す) Leggi.読みなさい。 RE王 (legge) (読む) Per la segreta porta庭園の秘密の扉を通って Del giardino nella scorsa notte昨夜 Introdusse Ginevraジネーヴラは導き入れた Un certo amante...ある愛人を… (continua a legger, ma basso)(読み続ける、しかし低い声で) (legge alto di nuovo)(再び大きな声で読む) Ti esposi il vero,私は君に真実を述べ、 E quando vi sia chi la diffenda,そして彼女を擁護する者がいる時には、 L'accusa io m'offro sostener coi brando.私は剣で告発を支持することを申し出る。 (s'abbandona mesto sulla seggiola)(悲嘆して椅子に身を任せる) |
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Aria Lurcanio | Allegro 4/4 G Major |
LURCANIOルルカーニョ Il tuo sangue, ed il tuo zelo君の血が、そして君の熱意が、 Per la figlia e per Astrea,【前者は】君の娘に向けて、そして【後者は】アストレアに向けて、 Gran contrasto or fanno in te.今や君の中で大きな対立を引き起こしている。 Ma tu mostra al mondo, al cielo,だが君は世界に見せるのだ Ch'in punir la figlia rea犯行者である娘を罰することで Non sei padre, essendo re.君が父親ではなく、王であることを。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア アストレア=アストライアは、ギリシャ神話の正義の女神。 |
Recitativo |
Scena IX第9場 Re, Odoardo, Ginevra e Dalinda王、オドアルド、ジネーヴラとダリンダ ODOARDOオドアルド Quante sventure un giorno sol ne porta!なんと多くの不幸をたった一日が私たちにもたらしたことか! DALINDAダリンダ Sire; vedi il dolore, che trasporta la figlia;陛下; 悲しみを見なさい、それは娘を現実から引き離している; Squarcia le vesti, e'l volto,彼女は服を引き裂き、そして顔を【掻き毟って】、 Fatta di se nemica.自らに敵意を抱いている。 GINEVRAジネーヴラ Padre...父よ… RE王 Non è mia figlia私の娘ではない Una impudica.みだらな女は。 (s’alza con dispetto, e parte)(苛立って立ち上がり、退場する) |
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Accompagnato e Recitativo GINEVRA DALINDA | 4/4 (C Major) |
Scena X第10場 Ginevra e Dalindaジネーヴラとダリンダ GINEVRAジネーヴラ A me impudica?私にみだらな女と? DALINDAダリンダ (Oh! Ciel, che intesi!)(ああ! 天よ、私は何を聞いたのだ!) GINEVRAジネーヴラ A me? impudica? e perché?私に? みだらな女? そしてなぜ? DALINDAダリンダ (Misera figlia!)(哀れな娘!) GINEVRAジネーヴラ A me? a me impudica?私に? 私にみだらな女と? DALINDAダリンダ Oh Dei!ああ神々よ! GINEVRAジネーヴラ Chi sei tu? Chi fu quelli? E chi son io?君は誰だ? あれらは誰だったのか? そして私は誰なのか? DALINDAダリンダ (Ohimè delira!)(ああ; 彼女は錯乱している!) GINEVRAジネーヴラ Uscite dalla reggia di Dite,ディーテの宮殿から出て来なさい、 Furie, che più tardate?フーリエよ、お前たちはさらに遅れるのか? Su, su, precipatate nell'Erebo profondoさあ、さあ、深いエレーボへと落とせ、 Quanto d'amor voi ritrovate al mondo.お前たちが地上で見つける愛というものを。 DALINDAダリンダ Principessa?王女よ? GINEVRAジネーヴラ Dov'è? Ch'il sa me'l dica.彼はどこにいる? それを知っている者はそれを私に言いなさい。 DALINDAダリンダ Torna, torna in te stessa; abbi conforto.返りなさい、我に返りなさい; 心の支えを持ちなさい【=しっかりしなさい】。 GINEVRAジネーヴラ Che importo a me, se il mio bel sole è morto.私に何が重要なのか、もし私の美しい太陽の人が死んだなら。 (piange) (泣く) DALINDAダリンダ Si rischiara la mente.精神が危険に晒されている。 GINEVRAジネーヴラ Dalinda, non son io quell'impudica?ダリンダよ、私はあのみだらな女ではないな? Non fu il padre che'l disse?父が言ったような者ではなかったな? E perché il disse?ではなぜ彼はそう言ったのか? DALINDAダリンダ Nol so.私はそれを分かりません。 GINEVRAジネーヴラ Lo so ben io per mio martoro.私はそれを私の苦しみのためだとよく分かっている。 DALINDAダリンダ Consolati.気を和らげなさい。 GINEVRAジネーヴラ Ove son? vivo? o deliro?私はどこにいる? 私は生きているのか? それとも正気を失っているのか? |
ディーテ Dite = ディース・パテル Dis Pater は、ローマ神話における地下の世界の支配者。ギリシャ神話のハデス(ハーデース)、ローマ神話のプルートーと同一視される。 フーリエ=フリアエは、復讐の女神たち(一般的に三姉妹)。 エレーボ=エレボスは、ギリシャ神話の地下深くの世界。 |
Aria Ginevra | Larghetto 4/4 e minor |
GINEVRAジネーヴラ Il mio crudel martoro私の酷い苦悩は Crescer non può di più;さらに大きくなることはできない; Morte, dove sei tu,死よ、お前はどこにいる、 Che ancor non moro?私はまだ死んでいないというのに? Vieni; de' mali miei,【死よ、】来なさい; 私の不幸の中で、 No, che il peggior non sei,いいえ、お前は最悪ではなく、 Ma sei ristoro.それどころかお前は安らぎなのだから。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Entrée de' Mori | 4/4 e minor |
この2つの舞曲による第2幕の幕切れは初演時のもの。ヘンデルは元々の第2幕の幕切れに4つの舞曲とジネーヴラのアッコンパニャートを据えていたが、 ⇒ 補遺 初演前にこのより短い幕切れに差し替えた 今日では長い幕切れが採用されることの方が多い |
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Rondeau | 3/8 e minor |
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ATTO TERZO | |||
Aria Dalinda |
Larghetto 4/4 d minor |
Scena I第1場 Bosco森 Ariodante, e poi Dalinda che fugge, assalita da due. Ariodante in altro abito pone in fuga gli assalitori.アリオダンテ、そしてそれから二人によって追われ、襲撃されているダリンダ。【普段とは】違う服装をしているアリオダンテが襲撃者たちを逃走させる。 ARIODANTEアリオダンテ Numi! Lasciarmi vivere,神々よ! 私を生かしておくことが、 per darmi mille morti私に千の死をあたえるために、 è questa la pietà?これが慈悲なのか? (parte)(退場する) |
単一形式のアリア 8小節の前奏部分に Sinfonia の指示 アリオダンテは海に身を投げたが、死ぬことなく浜辺に打ち上げられた |
Recitativo |
DALINDAダリンダ (di dentro)(内部から) Perfidi! Io son tradita! Ah! Duca iniquo!背信の者たちめ! 私は裏切られた! ああ! 非道な公爵め! ARIODANTEアリオダンテ (incalza li assalitori dentro la scena)(舞台裏で襲撃者たちを追い払う) Indietro, traditori.下がれ、裏切り者どもめ。 DALINDAダリンダ Oh! Dei! Ariodante?ああ! 神々よ! アリオダンテか? ARIODANTEアリオダンテ (entra)(入場する) Non è questa Dalinda? è dessa.この女はダリンダではないのか? 彼女だ。 DALINDAダリンダ È desso, Prence, tu vivi? È ver?...彼だ、王子よ、君は生きているのか? 本当なのか?… ARIODANTEアリオダンテ Vivo, Dalinda, per Ginevra infedel.私は生きている、ダリンダよ、不貞なジネーヴラのために。 DALINDAダリンダ E creder puoi Ginevraでは君は信じられるのか Rea d'offeso onore?ジネーヴラを傷付けられた名誉の犯人だと? ARIODANTEアリオダンテ Io devo creder agli occhi miei.私は私の両目を信用しなければならない。 DALINDAダリンダ Ingannato tu sei dal Duca d'Albania君はオールバニ公に Perfido indegno, che a me insidia la vita,不実で恥ずべき男によって欺かれている、彼は私の命に危害を加えて、 Ed a te il regno.そして君の王位に【危害を加えている】。 ARIODANTEアリオダンテ Come? dunque colei...何だと? ではあの女は… Che al mio amor, al suo onor tanto rubella,私の愛に、彼女の名誉に夥しく背いた者は、 Vidi, non fu Ginevra?私が見たのは、ジネーヴラではなかったのか? DALINDAダリンダ Eh! no! Io fui quella.ええ! 違う! 私がその女だった。 ARIODANTEアリオダンテ Misero me!哀れな私よ! DALINDAダリンダ Senti, Signor, amai quanto聞きなさい、貴殿よ、どれほど L'anima mia...私の魂が彼を愛したか… ARIODANTEアリオダンテ Seguimi, il resto intenderò per via.私について来なさい、残りは道中で聞くつもりだ。 |
di dentro も dentro la scena も、どちらも 舞台裏で という意見合い。 Duca d'Albania は英語で Duke of Albany オールバニ公、スコットランドの爵位 regno は 王国 でも意味は通じるが、ここでは 王位 で採った |
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Aria Ariodante |
Largo e staccato 4/4 c minor |
ARIODANTEアリオダンテ Cieca notte, infidi sguardi,目の利かない闇夜、信用ならない眼差し、 spoglie infauste, insano core,不幸をもたらす衣服、正常でない心、 voi tradiste una gran fé.お前たちは大きな信頼を裏切った。 Rio sospetto, occhi buggiardi,悪質な疑い、嘘をつく両目、 empio amico e traditore,邪悪な友と裏切り者、 ogni ben rapisti a me.お前たちがあらゆる幸福を私から奪った。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena II第2場 Dalinda solaダリンダ一人 DALINDAダリンダ Ingrato Polinesso! E in che peccai,恩知らずのポリネッソよ! そして私は過ちを犯したのか、 che con la morte ricompensi amore?君が愛に死で報いることにおいて? Ah! Sì, questo è l'error, troppo t'amai.ああ! そうだ、これが誤りだ、君をあまりに愛した。 |
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Aria Dalinda |
Allegro 3/8 b minor |
DALINDAダリンダ Neghittosi, or voi che fate?ぐずぐずして、今お前たちは何をしているのだ? Fulminate, Cieli,雷を落としなさい、天よ、 Omai sul capo all'empio.今こそ悪人の頭上に。 Fate scempio dell'ingrato,恩知らずの男の破滅を果たしなさい、 Del crudel che m'ha tradito,私を裏切った酷い男の【破滅を】、 Impunita l'empietà, riderà【もし】悪行が罰を免れるなら、彼は後でせせら笑うだろう nel veder poi fulminato雷に打たれるのを見て qualche scoglio, o qualche tempio.何か岩が、あるいは何か神殿が。 |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア 天 Cieli は複数形。それを voi お前たち と呼びかけている。 scoglio は単に 岩 の意味だが、この場合は tempio 寺院 との対比から、何かスコットランドの神聖な岩山を指しているのかもしれない。 |
Recitativo |
Scena III第3場 Giardino Reale王宮の庭園 Re, Odoardo, poi Polinesso王、オドアルド、それからポリネッソ ODOARDOオドアルド Sire; deh, non negare陛下、ああ、どうか否定しないよう A figlia supplicante哀願する娘に対して Di baciar la tua man pria di morire.【彼女が】死の前に君の手に口づけすることを。 RE王 Non più; sin che io non vedaもはやない、私が見るまでは cavalier comparir, che la difenda,彼女を擁護する騎士が現れるのを、 non speri di vedere il volto mio.私の顔を見ることを彼女が望むことは。 POLINESSOポリネッソ Mio Re, prepara il campo,私の王よ、決闘の場を準備しなさい、 che di Ginevra il difensor son io.私がジネーヴラの擁護者になるから。 |
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Aria Alcina |
Allegro 4/4 D Major |
POLINESSOポリネッソ Dover, giustizia, amor義務、正義、愛が m'accendono nel cor私の心の中で燃やしている desio di gloria.栄光の欲求を。 Se a brame così belleもしこれほど素晴らしい熱望に arridono le stelle,星々が微笑むのなら、 abbiam vittoria.私たちは勝利を得る。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア |
Recitativo |
Scena IV第9場 Re ed Odoardo王とオドアルド RE王 Or venga a me la figlia.今こそ私の元に娘が来るように。 (parte Odoardo)(オドアルドは退場する) Affetti miei, simulaste abbastanza di giudice,私の情愛よ、十分にふりをしろ、裁判官の、 E di re, zelo è rigore:そして王の、熱意は厳正であると。 Or ripigliam di padre amante il core.今は我々は愛する父の心を取り戻そう。 Scena V第5場 Re, e Ginevra accompagnata di guardie王、そして衛兵たちに随行されるジネーヴラ RE王 Ecco la figlia. Ahi vista!ほら娘だ。ああ【なんという】光景だ! GINEVRAジネーヴラ Padre; ahi, dolce nome!父よ; ああ、甘い名前だ! A' tuoi piedi vengh'io,君の足元に私は来ている、 Non per chieder perdon, che non errai, ma...慈悲を乞うためではない、私は過ちを犯していないのだから、けれど… RE王 (Ohimè!) Figlia, che chiedi?(ああ!) 娘よ、君は何を求めている? GINEVRAジネーヴラ Chiedo di non morir coll'odio tuo,私は君の憎しみを伴って死なないことを求める。 perche morò innocente.なぜなら私は無実で死ぬであろうから (s'inginocchia)(跪く) Accorda il dono di poter priaまず【私に】贈り物を与えなさい baciar la cara mano.【君の】いとしい手に口づけすることができるという che le note segnò del morir mio;私の死の通達に署名した【手に】。 poi son contenta...そうすれば私は満足だ… RE王 (le dà la mano)(彼女に手を差し出す) Prendi. (Oh! Figlia! Oh Dio!) 取りなさい。 (ああ! 娘よ! ああ神よ!) |
Bärenreiter刊の楽譜では zelo è rigore となっているのでここでもそれにしたがっているが、多くの場合 zelo e rigore となっており、この場合は、 私の情愛よ、十分に装え、、裁判官の、そして王の、熱意と厳正を: という訳になる。 |
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Aria Ginevra |
Largo assai 4/4 d minor |
GINEVRAジネーヴラ Io ti bacio, o mano augusta,私はお前に口づけする、ああ君主の手よ、 dolce a me, benché severa.【お前は】私にとって優しい、厳格だけれども。 Mi sei cara, ancorché ingiusta:お前は私とっていとしい、たとえ不当であっても: sei del padre, ancorché fiera.お前は父のものだ、たとえ残酷でも。 |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア 父王の手 mano に二人称単数親称 お前 で呼びかけている |
Recitativo |
RE王 Figlia; da dubbia sorte娘よ; 疑い深い運命によって pendi ancor fra la vita,君はまだぶら下がっている、命と e fra la mortel; se innocente tu sei,死の間で; もし君が潔白なのなら sperar ti lice, che vinca il tuo campion.君には望むことが許される、君の擁護者が勝利することを。 GINEVRAジネーヴラ Chi è?それは誰なのか? RE王 Polinesso.ポリネッソだ。 GINEVRAジネーヴラ Rinunzio a tal difesa!私はそんな擁護を辞退する! RE王 Ed io la voglio, ché sostener desioだが私はそれを望む、なぜなら私は支えることを切望するからだ l'onor tuo, l'onor mio,君の名誉を、私の名誉を、 l'onor del soglio.玉座の名誉を。 |
ここでの desio は名詞ではなく、desiare (= desiderare)の一人称単数 | |
Aria Re |
Larghetto 12/8 E Major |
RE王 Al sen ti stringo, e parto;私は胸に君を抱きしめ、そして私は去る; Ma forma il core in meだが私の中の心は作っている Moto contrario al piè;足とは反対の動きを【=心は足に反して去りはしない】; Mia figlia, addio.私の娘よ、さようなら。 Ti lascio, oh Dio, non so,私は君を置いて行く、ああ神よ、私には分からない、 Se più ti rivedrò,私が君にさらに再び会えるであろうかどうか、 Cor del cor mio.私の心の心【である娘】よ。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア Bärenreiter のピアノ伴奏筆では Ma forma il core in me になっており、この訳でもそれに従っているが、しかし多くの場合で forma ではなく ferma を用いている。この場合は だが私の中の心は止めている / 足とは反対の動きを となり、王が娘から去り難い気持ちを押し留めている、という意見合いになる。 |
Recitativo |
Scena VI第6場 Ginevra e guardieジネーヴラと衛兵たち GINEVRAジネーヴラ Così mi lascia il padre? Oh cor, sta forte!このようにして父は私を置いて行くのか? ああ心よ、強くいなさい【=しっかりしなさい】 Il minor de' miei mali è sol la morte.私の不幸の中でもっとも小さいものは死だけだ。 |
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Aria Ginevra |
Largo 3/4 f-sharp minor |
GINEVRAジネーヴラ Sì, morrò; ma l'onor mio meco, oh! Dio!そうだ、私は死ぬつもりだ; だが私の名誉は私と一緒に、ああ! 神よ! Morir dovra?死ななくてはならないのか? |
二部形式のアリア |
Allegro 4/4 f-sharp minor |
Giusto Ciel, deh, pietà公平な天よ、ああ、哀れみを del reggio onor.王族の名誉に。 (parte)(退場する) |
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Sinfonia | 3/4 D Major |
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Recitativo |
Scena VII第8場 Steccato決闘場 Re sul trono, con guardie, Odoardo, Lurcanio armato, e poi Polinesso pure armato; popolo玉座に王、衛兵たちを伴っている、オドアルド、武具を身につけたルルカーニョ、そしてやはり武具を身につけたポリネッソ; 人々 LURCANIOルルカーニョ Arrida il cielo alla giustizia:天が正義に微笑むように: Or scenda nel campo chi sostiene今こそ戦いの場に降りるように Innocente Ginevra, e la difenda.無実のジネーヴラを支持する者は、そして彼女を擁護するように。 POLINESSOポリネッソ Lurcanio, il diffensore è gia presente;ルルカーニョよ、擁護者は既にいる; E sostien questo brandoそしてこの剣が支持するように Che chi accusa Ginevra è falso,ジネーヴラを告発する者が間違っていて、 E mente.嘘を吐いていることを。 (si battono)(戦い合う) ODOARDOオドアルド Ciel, punisci chi ha torto.天よ、間違っている者を罰せよ。 LURCANIOルルカーニョ Questo colpo, consacro all'ombraこの一撃を、私は捧げる Del german.兄の霊に。 RE王 Numi!神々よ! POLINESSOポリネッソ Son morto.私は死ぬ。 RE王 Corri, Odoardo, assisti al駆けつけろ、オドアルドよ、救護しなさい Duca moribondo...死に瀕した公爵を… (Odoardo fa sostenere il Duca, e fa condurlo fuori del campo)(オドアルドは公爵を支える、そして彼を決闘場の外に連れて行く) LURCANIOルルカーニョ Or s'altri aspira a diffender la rea,今や他の者が犯行者を擁護することを要求するならば、 venga: l'attendo.彼は来るがいい: 私は彼を待つ。 RE王 (s'alza per scender del trono, in atto di andar nello steccato)(玉座から降りるために立ち上がり、決闘場に行こうとして) S'altri non v'è, io l'onor mioもし他の者がいなければ、私が私の名誉を Difendo!守る! Scena VIII第8場 Re, Lurcanio, Ariodante con visiera calate, e guardie王、ルルカーニョ、【兜の】面頬を下げているアリオダンテ、そして衛兵たち ARIODANTEアリオダンテ Ferma, Signor, non manca止めなさい、陛下、不在してはいない Difesa all'innocenza.無実の擁護者は。 RE王 Oh! Ciel! che intendo?ああ! 天よ! 私は何を聞いたのか? ARIODANTEアリオダンテ Io Ginevra difendo.私がジネーヴラを擁護する。 LURCANIOルルカーニョ Or stringi il ferro.さあ剣を握れ。 ARIODANTEアリオダンテ Lurcanio, io non difendo l'innocenza d'altruiルルカーニョ、私は他の人の無実を擁護しない Con un delitto.罪【=人殺し =決闘での勝利】を用いては。 (alza la visiera)(面頬を上げる) LURCANIOルルカーニョ Che vedo?何を私は見ているのだ? RE王 Occhi, che scerno? Oh! fato!両目よ、何を私は見定めているのか? ああ! 運命よ! LURCANIOルルカーニョ Oh! Dei! Germano!ああ! 神々よ! 兄だ! RE王 Ariodante! ove son io?アリオダンテだ! 私はどこにいるのだ? LURCANIOルルカーニョ Tu vivi?君は生きているのか? RE王 Tu respiri?君は息をしているのか? ARIODANTEアリオダンテ Amica sorte fé親切な運命が Ch'il periglio e l'innocenza私の王女の危機と無実を Intesi della mia principessa, e...知らせたのだ、そして… LURCANIOルルカーニョ Da chi? e come?誰から? そしてどうやって? ARIODANTEアリオダンテ Signor, se mi prometti perdonare陛下、もし君が私に容赦すると約束するなら A Dalinda un delitto innocente...ダリンダの悪意のない罪を… Scena IX第9場 Detti, Dalinda e Odoardo既に登場している人たち、ダリンダとオドアルド RE王 E Dalinda, dov'è?それでダリンダは、どこにいる? DALINDAダリンダ Ti è qui presente.ここに君の前にいる。 (s'inginocchia)(跪く) Mio Re, di Polinesso complice, ma innocente...私の王よ、【私は】ポリネッソの従犯者、けれども悪意はなく… ODOARDOオドアルド Sire; il duca morendo confessò陛下、死に行く公爵が告白した Le sue frodi.彼の不正行為を。 DALINDAダリンダ E pur non sono...そしてそれでもやはり私は… RE王 Ergiti; tutto oblio, tutto perdono.立ちなさい、私はすべてを忘れ、私はすべてを許す。 Non più: corro alla figlia;もうよい: 私は娘の元に急いで向かう; Tu seguimi, Ariodante, e cangi in tanto君は私について来るのだ、アリオダンテよ、そしてその間に替えるように E la mia corte, e'l regno in giubili i singulti,私の宮廷が、そして私の王国がしゃくり泣きを歓喜に、 In riso il pianto.涙を笑いに。 (parte)(退場する) |
fare inteso qualcuno di qualcosa 誰に何を知らせる |
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Aria Ariodante |
Andante 3/4 D Major |
ARIODANTEアリオダンテ Dopo notte atra e funesta,どす黒く陰鬱な夜の後で、 Splende in ciel più vago il sole,空にはより美しく太陽が輝き、 E di gioia empie la terra.そしてそれは大地を喜びで満たしている。 Mentre in orrida tempesta恐ろしい嵐の中で Il mio legno è quasi assorto,私の船はほとんど沈んでいたのに Giunge in porto e'l lido afferra.それは港に着いて岸を捕らえている。 (parte)(退場する) |
ダル・セーニョを用いた三部形式のアリア legno は 木 の意味だが、乗り物(かつて船や馬車は木製だった)を指すことがある。 |
Recitativo |
Scena X第10場 Lurcanio e Dalindaルルカーニョとダリンダ LURCANIOルルカーニョ Dalinda, ecco risorge col germanoダリンダよ、さあ復活した兄と共に生き返っている risorto il mio bel foco.私の美しい火が。 DALINDAダリンダ Signor; grande è l'onore,貴殿よ; 名誉はとても大きい、 ma per esserne degna,けれどそれに相応しくあるために、 io voglio pria chiaro farti palesse私はその前に君にはっきりと明らかにしたい l'altrui perfidia, e l'innocenza mia.他の人【=ポリネッソ】の悪行と、私の潔白を。 |
fare palese qualcosa 何々を明示する,暴露する なお Bärenreiter のピアノ伴奏筆では palesse になっている |
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Duetto Dalinda Lurcanios |
Andante 3/4 A Major |
LURCANIOルルカーニョ Dite spera, e son contento,期待しろ言ってくれ、そうすれば私は満足だ Dolci labbra del mio ben.私のいとしい人の甘い唇よ。 DALINDAダリンダ Spera, io già mi pento,期待しなさい、私はもう後悔していて、 novo ardor m'accende il sen.新しい熱情が私の胸を燃やしている。 LURCANIOルルカーニョ Dunque amasti? Oh Dio, che sento!では君は【ポリネッソを】愛したのか? ああ神よ、私は何を聞いているのだ? Ed amasti?では君は愛したのか? DALINDAダリンダ Un traditor!裏切り者を! LURCANIOルルカーニョ Ami ancor?まだ愛しているのか? DALINDAダリンダ Io già mi pento私はもう後悔している Che si male amai sin'or.今まで不運にも愛してしまったことを。 (parte)(退場する) (parte)(退場する) |
三部形式の二重唱 |
Recitativo |
Scena XI第11場 Appartamento destinato per carcere di Ginevra ジネーヴラの拘留のために割り当てられた居室 GINEVRAジネーヴラ Da dubbia infausta sorte,当てにならない不吉な運命に Quanto pender degg'ioどれだけの間私はぶら下がっていなくてはならないのだろうか Incerta tra la vita, e tra la morte, senza conforto,生と死の間で不確かで、心の支えなしに、 Abbandonata e sola?見捨てられそして独りで。 Chi mi soccorre, oh Dei! Chi mi consola?誰が私を救うのだ、ああ神々よ! 誰が私を慰めるのだ? |
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Arioso e Sinfonia Ginevra |
Largo 4/4 d minor |
GINEVRAジネーヴラ Manca, oh Dei! la mia costanza,尽きるのだ、ああ神々よ! 私の意志の固さは Mentre ha fine il mio dolor;私の悲しみが終わりになる時までには; Né mi resta la speranza di morir...それでも私には死の望みが残されていない… |
曲尾に Segue la Sinfonia. の指示 ♭一つのニ短調で書かれているが、臨時記号を用いて実際には♭二つのト短調に響く |
Allegro 4/4 F Major |
Scena XII第12場 Al suono d'una allegra Sinfonia viene il Re, Ariodante, Dalinda, Lurcanio, ed Odoard陽気なシンフォニアの音に合わせて王、アリオダンテ、ダリンダ、ルルカーニョ、そしてオドアルドがやって来る |
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Recitativo |
RE王 Figlia, innocente figlia,娘よ、潔白な娘よ、 Libertà, libertà:自由だ、自由だ: Vieni al trionfo,勝利に来なさい、 Al giubilo, agli amplessi.歓喜に、抱擁に。 ARIODANTEアリオダンテ Sposa, una dolce sposa!許婚よ、いとしい許婚よ! A me la morte si dee,私に死があるべきだ、 Ché sospettai della tua fede.私は君の信頼を疑ったのだから。 DALINDAダリンダ Principessa, al tuo piede...王女よ、君の足元に… LURCANIOルルカーニョ Ginevra, un empio inganno, ond'io sospiro...ジネーヴラよ、邪悪な策略、その結果私は苦悩している… GINEVRAジネーヴラ Sogno? veglio? che fo?私は夢を見ているのか? 起きているのか? 何をしているのか? Vivo? o deliro? Ma come? Oh! ciel!...生きているのか? それとも正気を失っているのか? しかしどうして? ああ! 天よ!… RE王 Non più, mia figlia,もうよい、私の娘よ、 Il tutto in breve intenderai;すべてを間もなく君は理解するだろう。 Stringi frattanto al sen lo sposo,そうする間に胸に許婚を抱きしめなさい、 E si sbandisca il pianto.そして涙を払いなさい。 (Ginevra ed Ariodante s'abbracciano)(ジネーヴラとアリオダンテは抱き合う) LURCANIOルルカーニョ Dalinda, del mio amor chiedo mercede.ダリンダよ、私の愛の褒美を私は求める。 DALINDAダリンダ Picciol premio al tuo amor sia la mia fede.君の愛への小さな褒美が私の信頼であるように。 RE王 Or la mia corte, e'l regno,今こそ私の宮廷は、そして王国は、 Con danze, feste e sontuosa pompa,踊り、祝祭そして贅沢な豪華さで Dia di gioia commun pubblico segno.一般大衆が歓喜の様子を見せるように。 (Tutti partono, eccetto Ariodante e Ginevra)(全員退場する、アリオダンテとジネーヴラを除いて) |
dare segno di qualcosa 何かの気配・徴候・様子を見せる | |
Duetto GINEVRA Ariodante |
Allegro 4/4 A Major |
ARIODANTEアリオダンテ Bramo aver mille vite,私は千の命を持つことを切望する per consacrarle a te.それらを君に捧げるために。 GINEVRAジネーヴラ Bramo aver mille cori,私は千の心を持つことを切望する per consacrarli a te.それらを君に捧げるために。 ARIODANTEアリオダンテ Ma in questa che ti dono,けれど私が君に贈るこれ【=この命】には、 più ch'in mille, vi sono千【の命】にあるよりもたくさんある amor, costanza e fé.愛、意志の固さそして信頼が。 GINEVRAジネーヴラ Ma in questo che ti dono,けれど私が君に贈るこれ【=この心】には、 più ch'in mille, vi sono千【の心】にあるよりもたくさんある amor, costanza e fé.愛、意志の固さそして信頼が。 (parte)(退場する) (parte)(退場する) |
ダ・カーポを用いた三部形式の二重唱 |
Coro Coro |
Allegro 3/4 D Major |
Scena Ultima最終場 Salone reale, nel fondo di cui gran scalinata ornata, e sostenuta da colonne. Dalle due parti della scalinata abbasso due gran porte, in alto una galleria per la 2da orchestra di stromenti da fiato.王宮の大広間、その奥には装飾を施された大階段、そして柱で支えられている。大階段の低い方の両側から二つの大きな扉、高いところには管楽器の第2楽隊のための通廊。 Re, Ginevra ed Ariodante, presi per la mano. Dalinda ed Lurcanio parimenti presi per la mano, ed Odoardo. Cavalieri e dame al seguito del Re, discendono tutti con solennità per la scalinata. Nel tempo medesimo, entrano per le due porte guardie e popolo. Mentre il Re discende incomincia il coro, e le dame ed i cavalieri formano il ballo.王、ジネーヴラとアリオダンテ、手を繋いで。ダリンダとルルカーニョ、同様に手を繋いで、そしてオドアルド。王に随行して騎士たちと貴婦人たち、皆厳かに階段を通って降りて来る。同じ時に、二つの扉を通って衛兵たちと人々が入場する。王が【階段を】降りている時合唱が【歌い】始め、そして貴婦人たちと騎士たちが踊りを形作る。 CORO合唱 Ognuno acclami銘々が歓呼して迎えるように bella virtute,美しい徳を、 che sempre lietaそれはいつでも喜ばしく sa trionfar.勝ち誇ることができる。 |
曲尾に Segue il Ballo. バレに続く。 の指示 |
Gabotte |
2/2 g minor |
序曲の Gabotte とほぼ同じ | |
Rondeau |
3/4 G Major |
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Andante allegro 4/4 G Major |
曲尾に Segue il Coro. 合唱に続く の指示 |
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Coro Coro |
4/4 G Major |
CORO合唱 Sa trionfar ognorいつも勝利を収めることができる Virtute in ogni cor,徳は各々の心の中で、 Se l'innocenza bella ha sol per scorta;もしそれ【=心】がただ美しい潔白だけを付添いとして持っているならば; Sa innamorar il ciel,それ【=徳】は天を魅了することができ、 Sprezzar di parca il tel,パルカの投げ槍をへし折ることができ、 Portar la gioia all'alma, e la conforta.魂に歓喜をもたらすことができ、そしてそれ【=魂】を力づけることができる。 |
Andante allegro の音楽を引き継いでおり、事実上一体になっている。 parca パルカ はローマ神話の運命の女神 |
Appendici | |||
Aria alternativa del Re, Atto 2 | |||
Aria Re |
Larghetto 12/8 f minor |
Re王 Invida sorte avara,貪欲で嫉妬深い運命は、 Misero! in questo dì,哀れな男だ! この日に、 Nel prence mi rapì王子の中にある Parte del core.私の心の半分を奪った。 Or nella figlia cara今やいとしい娘の中にある Del cor l'altra metà,私の心のもう半分を、 Oh Dei! mi rapiràああ神々よ! 奪うだろう Forse il dolore.おそらく悲しみが。 (parte)(退場する) |
第2幕の王のアリアの初演前の稿。 Avara sorte invidiosa mi rapì parte del core nel prence, misero! in questo dì. Or il dolore, oh Dei! forse mi rapirà l'altra metà del cor nella figlia cara. |
Atto 2, Finale orginale Balli e Accompagnato Ginevra | |||
Entrée des Songes agréables | Larghetto 3/8 E Major |
第2幕の幕切れの本来の形態。ヘンデルは初演前にこれを止めて、舞曲2曲の短い幕切れに差し替えた。 ここで用いられている舞曲は、次作である《アルチーナ》の第2幕幕切れに転用された。 |
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Entrée des Songes funestes | 4/4 a minor |
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allegro 4/4 a minor |
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Entrée des Songes agrébles effrayés | 4/4 A Major |
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Le combat des Songes funestes et agéables | 3/4 A Major |
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Accompagnato Ginevra |
4/4 A Major |
GINEVRAジネーヴラ (si risveglia sorpresa)(驚いて再び目覚め) Che vidi? Oh! Dei! misera me!私は何を見たのか? ああ! 神々よ! 哀れな私! Non ponno aver quiete mie pene私の苦悩は平静を得ることができない Anche nel sonno.眠りの中でも。 |
参考資料
Handel, Georg Friedrich / Ariodante HWV 33 / Bärenreiter-Verlag / Editied by Burrows, Donald / Klavierauszug / BA04079-90 / ISMN 9790006532858
THE OXFORD COMPANION TO Theatre & Performancey, edited by Dennis Kennedy / OXFORD UNIVERSITY PRESS
2017年のザルツブルク音楽祭での上演のライヴ収録。公演は2017年7月2、5日。
2007年、イタリアのスポレート音楽祭での上演のライヴ収録。記録によると公演は、2007年7月1、4、6、14日。
バイエルン国立歌劇場、ナティオナルテアターでの上演のライヴ録音。新制作の初日が2000年1月17日で、その時の録音ではないかと思われる。
イングリッシュ・ナショナル・オペラの上演のライヴ収録、したがって英語歌唱。このプロダクションは1993年4月28日が初日で、たいへんな好評を得た。1996年5月11日からジネーブラ、スコットランド王、オドアルドの歌手を変更して再演され、これはその時の収録。