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最新更新 2024年11月18日
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GAETANO DONIZETTI
PIA DE' TOLOMEI
versione mista
ガエターノ・ドニゼッティ ピーア・デ・トロメイ 混合稿
Gaetano Donizetti Pia de' Tolomei versione mista
2部のトラジェディア・リリカ
Tragedia lyrica in due parti
初演 1837年2月18日 ヴェネツィア アポッロ劇場
First performance 18 February 1837, Teatro Apollo, Venezia
台本作家 サルヴァドーレ・カンマラーノ
Libretto Salvadore Cammarano
原作 ジャチント・ビアンコ 歴史劇 『ピーア・デ・トロメイ』 1836年 ナポリ
Original Giacinto Bianco Doramma Storico Pia de' Tolomei, 1836, Napoli
《ピーア・デ・トロメイ》は、ガエターノ・ドニゼッティ 1797―1848 のナポリ時代 1822―1838 の末期の傑作である。21世紀に入ってから著しく再評価されている。
作曲
1832年頃からのドニゼッティのオペラ活動は目覚ましく、多い時には年に4作の新作オペラを発表した。もちろんイタリア各地の劇場では彼のオペラが上演された。これは彼が1838年にナポリを離れてパリに移るまで続いた。
《ピーア・デ・トロメイ》は、その終わり近くに位置する作品である。
当時の有名な劇場興業主、アレッサンドロ・ラナーリ【注1】 は、1836年5月5日付でボローニャからナポリのドニゼッティに宛てた手紙で、1836/1837年のカーニヴァルと四旬節のシーズンにおけるヴェネツィアのフェニーチェ劇場の使用権利を得る見込みであることを伝え、その上でそのための新作オペラをドニゼッティに8千フランで打診している。そして4日後の5月9日に今度はヴェネツィアから、フェニーチェ劇場での興行契約を結んだことを伝え、改めて新作オペラを8千フランえ打診している。この額は、ドニゼッティがその3か月前の1836年2月4日に同じフェニーチェ劇場で初演し大成功を収めた《ベリザーリオ》で受けた報酬と同じ額である。
これに対してドニゼッティは、5月12日付でナポリから送った返信で、ラナーリの打診を「まったく取るに足らない提示 esibizione sì ridicola」【注2】と厳しく突っぱねた。
当時のイタリアオペラ界は、1833年にヴィンチェンツォ・ベッリーニがパリに移り、そして1835年9月23日に亡くなり、さらにはドニゼッティ同様に多作家として知られたジョヴァンニ・パチーニ 1796―1867 が新作オペラから遠ざかっており【注3】、安定した人気と実力を誇るオペラ作曲家はドニゼッティとサヴェーリオ・メルカダンテ 1795―1870 の二人くらいしかいなかった。前述の通り目覚ましい活動を続けるドニゼッティには、報酬が前回から据え置かれることはありえなかったのだろう。
ラナーリはすぐさま、金額の入っていない契約書をドニゼッティに送った。5月21日付のラナーリへの返信で、ドニゼッティはこう認めている。
1万フラン、同額になる20フランのナポレオン金貨の現金支払いで あるいは それと同等の貨幣で。― 【楽譜の】全所有権は アレッサンドロ・ラナーリ氏のために。
Dieci mille franchi, effettivi in tanti Napoleone d'oro da venti franchi o sua valuta equivalente. - Proprieta intera a favori del Sig. Alessandro Lanari.【注4】
ドニゼッティは5月31日付でラナーリとの契約書に署名し【注5】、それをラナーリに送る際の添え状で初めて『ピーア』に言及している。
[カンマラーノは]一座への最もふさわしい題材として ピーアを 君に 提案している
[Cammarano] ti propone la Pia soggetto adattissimo per la compagnia【注6】
ドニゼッティ自身も『ピーア・デ・トロメイ』を知っていたことは、6月28日付でラナーリに宛てた手紙の中でセスティーニに言及していることから分かる。バルトロメオ・セスティーニ Bartolomeo Sestini 1792―1822 の韻文小説『ピーア・デ・トロメイ』は、彼がパリ亡命中に30歳で亡くなった後に出版された。おそらくドニゼッティは以前から『ピーア・デ・トロメイ』をオペラの題材に考えており、この機会に取り上げようと思ったのだろう。
時を少し戻すと、フェニーチェ劇場での1836/1837年のカーニヴァルシーズンでは、プリマドンナのファンニ・タッキナルディ・ペルシアーニ(《ルチア》 1835年9月26日 ナポリ の創唱者)が目玉だったが、一方で極めて若いコントラルト、ロジーナ・マッツァレッリ Rosina Mazzarelli とも契約していた【注7】。彼女はまだ本格的な舞台デビューもしていないっとえも若い歌手だったが、フェニーチェ劇場総裁のジュゼッペ・ベルティ伯爵が彼女を強く推しており、ラナーリは前述の5月5日付の手紙からマッツァレッリに言及し、さらに彼女を脇役ではなくタッキナルディと同等の主役で起用するようドニゼッティに求めた。
ドニゼッティは5月17日付で伯爵にマッツァレッリについての意見を述べている。
マッツァレッリ嬢の劇場における才能についての 公正な情報を述べることは 誰にとっても 難しい結果に終わるだろう。彼女はまだどこの劇場でも 世に出ていない【のならば】、彼女の最初の出演の結果がどうなるか、誰が予見できるというのだろうか? 彼女はコントラルトの美しい声に恵まれ【ているだけでなく】、私が彼女を初めてそしてただ一回 聞いた【時にも】、彼女が 十分な表現力をもって歌っていることにも気付いた。
[...]
彼女は 意欲に満ちており、体つきはまずまずだ、しかし、常に繰り返すが、どのような道を歩むか 誰が予見できるというのだろうか? ―私としては 彼女の大きな幸運を願っている、残りは 彼女の手の中にある。
Delle giuste informazioni sul talento teatrale della Signora Mazzarella[sic] riesce a chiunque difficile il darle;
Essa non ha per anco esordito in alcun Teatro, chi può prevedere quale sarà l'esito della sua prima comparsa ? È dotata di una bella voce di contralto, la prima ed unica volta che io la intesi, trovai che cantava anco con bastevole espressione.
[...]
Essa è piena di buona volontà, il fisico è discreto, ma, replico sempre , chi può prevedere quale via farà. - Per me gli auguro tutta la fortuna , il resto sta in sue mani.【注7】
この手紙の別の箇所から察するに、ドニゼッティは彼女がナポリでピエトロ・ロマーニ Pietro Romani 1791―1877 のレッスンを受けていた時に彼女を一度だけ聞いたことがあるようだが、詳しいことは分からない。ともかく彼女はまだデビュー前の未知数の歌手だった。
ドニゼッティは、6月14日付でラナーリに宛てた手紙でこう述べている。
私は マッツァレッリ嬢が好評を得たことを おおいに喜んでいる:[…]
君は正しい 彼女は 《ピーア》に加わらないし、私は 彼女を 当てにしていなかった。私が必要とする歌手は: タッキナルディ夫人、テノールとバス、そして 二人のとても優秀な第二級の役【≒ 準主役】【だけである】、そこに マッツァレッリを加えることは 作品を犠牲にすることになるだろう 【…】 彼女は タッキナルディと同等の役割を果たすことができないのは 確実だから; 既にカンマラーノは仕事を始めた、方向に関しては 難しさはない、ただ衣装が バレや先に上演されるオペラと似ないように 注意してほしい。
Godo assai che la Sig. Mazzarelli abbia piaciuto: [...]
Hai ragione che nella Pia non può entrarvici nè io feci conto su lei. Gli attori che mi abbisognano sono: la Sig. Tacchinardi, il Tenore ed il Basso , con due ottimissime seconde parti, volendo farci entrare la Mazzarelli sarebbe un sacrificarla, [...] poiché con la Tacchinardi è certo che non potrebbe averci parte uguale; già Cammarano ne cominciò il lavoro, quanto alla direzione non ci sono difficoltà, bada soltanto ai costumi acciò il Ballo, o le opere prime non somiglino.【注8】
まず冒頭の1行は、マッツァレッリがこの直前にオペラデビューを果たし(後述)、好評を得たことを指していると思われる。しかしその情報を聞いても、ドニゼッティは彼女を《ピーア・デ・トロメイ》に加えることに同意しなかった。ドニゼッティは《ピーア・デ・トロメイ》を、プリマドンナ、テノール、バス(= バリトン)の3つの軸から成るオペラに構想しており、そこに主役級のコントラルトを入れる余地はなく、いわんやそれがまだ極めて若い歌手であれば作品に悪影響を与えかねない、というのだ。ラナーリと契約を結んで半月経ち、既にカンマラーノは台本を書き始めており、ドニゼッティは今さら方針を変えるつもりはなかった。
しかしマッツァレッリの起用に関しては、ベルティ伯爵が頑として譲らなかった。彼はラナーリを介してドニゼッティにマッツァレッリの起用を迫る。
結局、この件はドニゼッティが折れた。6月28に付でラナーリに宛てた手紙で、彼はこう書いている。
彼女はピーアの弟の役をやることになるだろう。彼女には【第1幕で 登場の】カヴァティーナが、【第1幕】フィナーレでは【ロドリーゴは】逃亡しなくてはならないので 【出番は】あまり多くはないが、第2幕には合唱を伴った大情景があるだろう。
Essa farà la parte del fratello di Pia. Avrà Cavatina, non molto nel Finale che deve scappare e gran scena con Cori al scondo atto.
ドニゼッティはロドリーゴをおそらく第2テノール役に想定し、必要な場面だけの出番で、アリアを与えるつもりはなかったと思われる。しかしマッツァレッリを主役の一人として出演させるため、ロドリーゴを男装女声役に改め、両幕にアリアを与えるなど、拡大せざるを得なくなった。これは《ピーア・デ・トロメイ》という作品に大きな影響を与えることになる。
オペラセリアにおける男装女声役は1837年頃にはすっかり廃れていたのだが、しかし実はドニゼッティはこの直後に作曲した《カレの包囲》 1836年11月18日 ナポリ初演 でも男装女声役を用いねばならず、2作続けて男装女声役を起用したオペラを書くことになった。
ドニゼッティはもう一つ懸念があった。肝心のプリマドンナのタッキナルディについてだった。ルチアを創唱した彼女はもちろん実力は申し分ないのだが、しかし彼女が出演するシーズンでは、彼女の夫ジュゼッペ・ペルシアーニ Giuseppe Persiani のオペラも上演され、そして彼女はしばしば夫の書いたオペラにばかり力を入れるのが常だった。フェニーチェ劇場の1836/1837年のカーニヴァルシーズンでもペルシアーニの《イネス・デ・カストロ》が上演されることになっていた【注9】。ドニゼッティは先の5月21日付の手紙でラナーリに、ジュゼッピーナ・ロンツィ・デ・ベニス Giuseppina Ronzi de Begnis を希望している様子を見せている。しかし結局プリマドンナはタッキナルディで変更なかった。
残る主要2役のうち、テノールは早い段階でアントーニオ・ポッジ Antonio Poggi に決まった。
主役のバス(すなわちバリトン)は、《ベリザーリオ》初演でタイトルロールを歌って喝采を浴びたチェレスティーノ・サルヴァトーリ Celestino Salvatori を今回も起用する予定だった。しかし彼もまた今回の不安要因だった。これについては後述する。
ドニゼッティは1836年夏秋はナポリに留まって活動していた。カンマラーノもドニゼッティもナポリにいて直接協議できたので、作曲の過程についての情報はほとんど伝わっていない。
《ピーア・デ・トロメイ》の交渉が行われていた頃の6月1日にはヌォーヴォ劇場で1幕の喜劇《夜の呼び鈴》を初演。8月24日には同じヌオーヴォ劇場で同じく1幕の喜劇《ベトリ》【注10】を初演。どちらもフランスの喜劇から題材を取って、ドニゼッティ自身が台本を書いた作品だった。そして11月19日には、前述した、サン・カルロ劇場で大作《カレの包囲》を初演。その台本作家もカンマラーノだった。《カレの包囲》は皇太后マリア・イザベッラ 1789―1848、両シチリア王フランチェスコ1世の2番目の王妃、当時の国王フェルディナンド2世の母 の聖名祝日のための祝賀作品だったので、準備期間はドニゼッティには異例の5か月近くが費やされた。加えてこのオペラは、1835年にドニゼッティが初めてパリに滞在したことから、パリのグラントペラの影響を色濃く反映させた意欲作だった。
これらの状況を考えるに、《ピーア・デ・トロメイ》の作曲は、《ベトリ》の初演の後、そしてフェニーチェ劇場が《ピーア・デ・トロメイ》の制作を正式に決定した8月末頃以降、10月に入る頃までにある程度進められ、それから《カレの包囲》の制作と準備に専念したと思われる。実際、10月11日付でヴェネツィアのアゴスティーノ・ペロッティ Agostino Perotti に宛てた手紙で、ドニゼッティは《ピーア・デ・トロメイ》の作曲について
私は第2幕の2曲目をやっている、だから私にはオーケストレイションをする前に 見直して 熟考する時間さえある。
sono al 2do pezzo del 2° atto, e così ho anco tempo di rivedere e ripensare pria d'istromentarla.【注11】
と書いている。オーケストレイションは概ね現地入りしてオーケストラの状態を確認してから行うものなので、《カレの包囲》の初演を済ませた後、ナポリを発つ前までには《ピーア・デ・トロメイ》を余裕で書き上げられる見込みだったことを意味している。
1836年12月6日、ドニゼッティはヴェネツィアへとナポリを発って、まず海路でジェノヴァに向かった。ジェノヴァでは、しかしコレラの流行のため16日もの検疫隔離を余儀なくされた。
その最終日に、ドニゼッティに絶望的な報せが届いた。12月12日の夜から翌朝にかけてフェニーチェ劇場が火事に遭い、焼け落ちてしまったのだ。公演はアポッロ劇場 Teatro Apollo【注12】で行われることになったが、その一方でヴェネツィア市長は、この大災禍において、契約した全出演者に報酬の四分の一の返上を要請した。これはドニゼッティの場合2500フランに相当するが、しかし彼はジェノヴァでの検疫隔離による旅費の増額を理由に、1000フランの返上に留めるよう申し出た。この報酬の減額がどう決着したかは分かっていない。
さて《ピーア・デ・トロメイ》にはさらに懸案があった。前述の通りネッロはチェレスティーノ・サルヴァトーリが受け持つ予定だった。しかしドニゼッティは7月には既にサルヴァトーリがひどく喉を傷めているという情報を得ていた。
カーニヴァルシーズンに彼はヴェネツィアにやって来たものの、喉の不調は極めて深刻だった。12月26日からの開幕公演の《ルチア》では4公演目の12月31日に出演し、1月15日までの10公演と一回置いて1月18日の公演に出演したが、それで降板せざるを得なかった。
代役に、この頃フィレンツェにいたバリトン、ジョルジョ・ロンコーニ Giorgio Ronconi が急遽呼ばれた。これによって《ピーア・デ・トロメイ》の初演はさらに遅れることになった。1837年1月24日付でドニゼッティはアンジェロ・ローディに宛てた手紙で『上演するには ロンコーニを待たなくてはならない si deve attendere Ronconi da Firenze per ire in iscena』【注13】と書いている。ロンコーニは2月9日頃にヴェネツィアに到着し、ドニゼッティは彼のためにネッロの音楽を調整しつつ、大急ぎで彼に新作オペラを覚え込ませることになる。1837年は2月8日の灰の水曜日から四旬節に入っており、《ピーア・デ・トロメイ》の上演に残された時間はあまりなかった。
注1 アレッサンドロ・ラナーリ 1787―1852 1830年から40年代にかけてイタリア各都市のオペラ劇場で興行主として活躍した。
注2 Donizetti / Guido Zavadini /
注3 パチーニは、1835年2月21日に同じフェニーチェ劇場で初演された《ブルグントのカルロ》の失敗以降、1839/1840年のカーニヴァルシーズンの開幕公演まで新作オペラを発表することがなかった。復帰した翌年の1840年11月29日にナポリ、サン・カルロ劇場での《サッフォ》で大成功を収めて、人気オペラ作曲家に返り咲いた。
注4 Donizetti / Guido Zavadini / p.410
注5 Ashbrook / Donizetti and his Operas / p.114
注6 Pia de' Tolomei Programma di Sala / Teatro la Fenice di Venezia / p.11
注7 マッツァレッリの経歴は 初演 の項を参考に。彼女を1822年生まれとしている資料がいくつかあるが、彼女は1836年夏にはオペラ活動を始めており、これが14歳頃というのは考えづらい。2005年のフェニーチェ劇場での上演の際のプログラム冊子では『【初演】当時17歳 allora diciassettenne』と書いてある。この情報が正確かどうかはともかく、マッツァレッリが当時まだとても若かったことは間違いないと思われる。
注8 Zavadini / Donizetti / p. 411
注9 初演は1835年1月27日、ナポリ サン・カルロ劇場。この時の興行主はラナーリで、彼とペルシア―二夫妻は親しい仲だった。《イネス・デ・カストロ》は大成功を収め、イタリアの諸都市やスペインマドリード、ポルトガル リスボン、さらにはパリのイタリア劇場でも上演された。
注10 ドニゼッティは1837年に《ベトリ》を2幕ものに改訂しており、今日ではそちらの方が一般的。
注11 Le prime rappresentazioni delle opere di Donizetti nella stampa coeva
注12 1622年開場のヴェンドラミン劇場 Teatro Vendramin (しばしば サン・サルヴァドール劇場 Teatro di San Salvador と呼ばれた)は、改装の度に名前が変わり、サン・ルカ劇場 Teatro di San Luca を経て、1833年に改装された際にアポッロ劇場と改名された。さらに1875年にゴルドーニ劇場と名を変え、今もなお現役の劇場である。ドニゼッティは商業オペラ興行デビュー作の《エンリーコ・ディ・ボルゴーニャ》 1818年11月14日 と次作の《ばか騒ぎ》 12月17日 がサン・ルカ劇場で初演され、それから19年ぶりに改名された同じ劇場で《ピーア・デ・トロメイ》を初演することになった。
初演
初演は、1837年2月18日、ヴェネツィアのアポッロ劇場で行われた。
ネッロ・デッラ・ピエトラ
Nello della Pietraジョルジョ・ロンコーニ
Giorgio Ronconiバリトン
baritone
ピーア
Piaファンニ・タッキナルディ・ペルシアーニ
Fanny Tacchinardi Persianiソプラノ
soprano
ロドリーゴ・デ・トロメイ
Rodrigo de' Tolomeiロジーナ・マッツァレッリ
Rosina Mazzarelliコントラルト
contralto
ギーノ・デリ・アルミエーリ
Ghino degli Armieriアントーニオ・ポッジ
Antonio Poggiテノール
tenore
ピエーロ
Pieroアレッサンドロ・メオーニ
Alessandro Meloniバス
basso
ビーチェ
Biceマリエッタ・ブラマーティ
Marietta Bramatiソプラノ
soprano
ランベルト
Lambertoアレッサンドロ・チェッコーニ
Alessandro Cecconiバス
basso
ウバルド
Ubaldoアレッサンドロ・ジャッキーニ
Alessandro Giacchiniテノール
tenore
ファンニ・タッキナルディ・ペルシアーニ 1812―1867 は、ローマ生まれのソプラノ。彼女はなんといってもドニゼッティ《ルチア》 初演のタイトルロールとして名高い。ルチアの声楽的特徴(ただし原調において)はタッキナルディの歌声を反映している。つまり、悲劇的な表現力にも長けていつつ、高度な装飾歌唱の技術も備えていた。彼女はさらに高音も出せ、高いト音まで出せたと言われる。なお彼女の名前の ペルシアーニ は、夫である作曲家ジュゼッペ・ペルシアーニの姓。彼女はドニゼッティのオペラでは他に《イングランドのロズモンダ》初演 1834 フィレンツェ のタイトルロールも歌った。彼女はイタリア各地で活躍した後、1837年以降はパリやロンドンでプリマドンナとして絶大な人気を博し、1850年代末まで歌い続けた。ちなみにドニゼッティは1833年10月にミラノで彼女を聞き、28日付でラナーリに宛てた手紙で『彼女は冷淡だ冷淡だ、けれども とても精密で そして 極めて音程が正確だ è freddina freddina, ben precisa però, e intonatissima』と感想を述べている。
アントーニオ・ポッジ 1806―1875 は、1830年代から40年代に活躍したテノール。ボローニャ近郊のカステル・サン・ピエトロ・テルメ(ボローニャとイモラの中間地)の生まれ。彼はロッシーニのナポリ時代の偉大なテノール、アンドレア・ノッツァーリ Andrea Nozzari に声楽を学んでいる。1827年にデビューし、ボローニャを拠点に北イタリアの諸都市でロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニらのオペラを歌った。1830年代に入るとプリモ・テノーレとして人気を確立する。ドニゼッティ《トルクワート・タッソ》初演 1833年 ローマ でロベルト・ジェラルディーニを創唱。ヴェルディ《ジョヴァンナ・ダルコ》初演 1845 ミラノ ではカルロ7世を創唱したことだろう。またヴェルディ《第1回十字軍のロンバルディア人たち》のオロンテは、妻エルミーニア・フレッツォリーニと共に各地で歌った。
ジョルジョ・ロンコーニ 1810―1890 は、1830、40年代に、力強く輝かしい声で劇的に歌うバス、つまりバリトンという声種を確立させた歌手の一人である。ドニゼッティのオペラには初演だけでも多数出演しており、《サン・ドミンゴ島の狂人》 1833年 ローマ のカルデーニオ、《トルクァート・タッソ》 1833年 ローマ のタイトルロール 、《夜の呼び鐘》 1836年 ナポリ のエンリーコ、《マリア・デ・ルーデンツ》 1837年 ヴェネツィア のコッラード・ワルドルフ、《マリア・パディッラ》 1841年 ミラノ のドン・ペドロ、《マリア・ディ・ロアン》 1843年 ウィーン のエンリーコ を創唱している。ロンコーニはまたヴェルディ《ナブッコ》初演 1842年 ミラノ のタイトルロールで高名である。
起用をめぐって一悶着あったロジーナ・マッツァレッリについては情報は多くない。彼女のオペラデビューはおそらく1836年6月半ば、フィレンツェのアルフィエーリ劇場でのベッリーニ《ノルマ》のアダルジーザだと思われる。さらに同年夏のシーズンに、リヴォルノのアッヴァロラーティ劇場 Imperiale e Real Teatro degli Avvalorati で上演された、ルイージ・リッチ《新フィガロ》のアマーリアと、ドニゼッティ《トルクワート・タッソ》のセコンダドンナ、エレオノーラ・ディ・スカンディアーノを歌ったことが出版台本から分かっている。1837年から1838年にかけてフィレンツェ、リヴォルノ、ボローニャ、ルッカなどで活動。1838/39年には再建後のフェニーチェ劇場に10月から3月まで集中して出演、3月2日にはニコラ・ヴァッカイの《メッシーナの花嫁》の初演にベアトリーチェで出演。1839/40年のシーズンはミラノのスカラ座に出演している。1840/41年はマドリッドで活動した。記録に残る最後のオペラ出演は1844/45年のカーニヴァルシーズンでのパドヴァで、ドニゼッティ《マリア・ストゥアルダ》でタイトルロールを歌った。つまり、ソプラノも手掛けられるメッゾソプラノとしてそれなりに活躍はした。
フェニーチェ劇場の公演記録によると、《ピーア・デ・トロメイ》の公演は、初日の2月18日から19、21、23、25、26、27、28日、3月2、4、5、6、8、9、11、12、14、15、18日の19回行われた。1837年は3月19日の枝の主日から聖週間に入り、いかに寛容なヴェネツィアでも《ピーア・デ・トロメイ》のような世俗の悲劇は上演できなくなるので、その前日ギリギリまで公演が続いたことが分かる。つまり、《ピーア・デ・トロメイ》がもっと早く初演されていたら公演数はもっと増えたと思われる。回数だけから言えば大成功だった。
公演評の前に、まずドニゼッティ自身の感想を。彼は2回目の公演の後の2月20日付で友人の劇作家ジューリオ・プッレ Giulio Pullé に宛てて初演の様子を伝えている。
ポッジは《ピーア》で卓越した死を演じた… 最高の人物を演じた、そしてとりわけ昨日の晩の2回目の上演ではさらに良かった! […] 《ピーア》は好まれたが、初日の晩は二日目の晩ほどではなかった。それでも 私は それについて 拍手喝采を受けた… 強く… しかし 二日目の晩は 私は 二倍の喝采を受けた… セリアの音楽は それを咀嚼する必要がある… 好まれなかったであろう曲は第1幕フィナーレだ。 […] 稽古では他の曲より際立っていた。
Poggi nella Pia fà una morte sublime... fà ottima figura, e specialmente jeri sera 2da recita ancor meglio! […] Pia piacque, ma non nella prima come nella 2da sera. Tuttavia applausi ne ebbi... forti... ma nella 2da sera n'ebbe del doppio... La musica seria bisogna masticarla... ciò che non piacerà mai si e il finale 1° […] alle prove emergeva sugli altri. […]【注1】
同じ日付で故郷ベルガモの幼馴染で作曲家のアントーニオ・ドルチ Antonio Dolci に宛てた手紙でも『《ピーア》は 第1幕フィナーレを除いて すっかり気に入られた La pia piacque tutta meno del finale de 1 atto.』【注2】と書いている。
《ピーア・デ・トロメイ》の新聞公演評は多数残されている。その中で、まず現地ヴェネツィアの新聞、ヴェネツィアの特権を与えられた新聞 Gazzetta privilegiata di Venezia の2月20日の評から。
[…]ドニゼッティのオペラは良い結果を得た、しかし熱狂的な結果ではなかった、いくつかの曲は 土曜日の初日の公演よりも 二日目の方が より好評だった、その中で例を挙げるべきものは 第1幕の プリマドンナのカヴァティーナ そして テノールのカヴァティーナ、テノールとバスのの二重唱、第2幕の合唱単独、いくつかの美しい調和、そしてとりわけオーケストラ伴奏付きのレチタティーヴォ、そこでは ポッジによって見事な技で歌われて、瀕死の男の最後が描かれている、ポッジは ここで 観客の評価を真に一致させた。しかし 気に入られなかったのは 【第1幕】フィナーレだ、そこでは ドニゼッティのいつもの霊感が認められなかった。とはいえ 彼は 最初の晩よりも 二日目の方が 【彼が上演を見守って座っている】オーケストラから そして舞台から 呼び求められたが。今では 明晰で想像力豊かなマエストロは、【ヴェネツィアを】発つ前に この不評なフィナーレを変えるだろう と言われている。
L'opera del Donizetti ebbe un esito buono, ma non d'entusiasmo, e alcuni pezzi musicali sono piaciuti più ancora alla seconda che alla prima rappresentazione di sabato, fra' quali sono da citarsi la cavatina della donna e del tenore, un duetto fra il tenore e il basso nel Ⅰ.° atto, un coro di solitarii, alcune belle armonie nel Ⅱ.°, e specialmente un recitativo con accompagnamento, in cui si esprime l'agonia d'un morente, cantato con arte maravigliosa dal Poggi che qui si conciliò veramente il voto del pubblico. Ciò però che certo non è piaciuto è il finale, in cui non si riconobbe la solita vena del Donizetti, il quale però fu domandato più volte e dall'orchestra e dal palco e più la seconda che la prima sera. Ora si dice che innanzi di partire il chiaro e fecondo maestro cambierà questo finale disgraziato. 【注3】
一方、2月24日付のミラノの新聞 海賊 Il Pirata の公演評には、観客の反応だけを客観的に書き綴っている箇所がある。以下訳を箇条書きする。
第1幕
導入 沈黙。
ポッジのカヴァティーナ【第1番】、ラルゴ【訳注 ここでは Largo はゆっくりした箇所を指している。実際には Larghetto のカンタービレ】に喝采、彼とマエストロが呼び出された。
タッキナルディのカヴァティーナ【第2番】 喝采、彼女が呼び出された。
ポッジとロンコーニの二重唱【第3番】、とても美しいアダージョ: ロンコーニの独唱部分 喝采、ポッジの独唱部分 一同の【称賛の】叫び声: 両歌手が呼び出された。
マッツァレッリのカヴァティーナ【第4番】、沈黙。
タッキナルディ、ポッジとロンコーニの小三重唱【第5番 第1幕フィナーレのLarghetto】、沈黙。
タッキナルディとマッツァレッリの小二重唱【第5番 第1幕フィナーレのCantabile】、沈黙。
フィナーレ【第5番 第1幕フィナーレのストレッタ】、沈黙、そしてたくさんのztz、ztz【訳注 不満の表明と思われる】
第2幕
マッツァレッリのアリア【第6番】、ほとんどなかったも同然。
タッキナルディとポッジの二重唱【第7番】、ラルゴ【Larghetto】に喝采: ポッジにはカヴァティーナに熱烈な喝采。二人とも呼び出される。
隠者たちの合唱【第8番の冒頭】 喝采ではなかった喝采 applausi che non erano applausi 【訳注 僅かばかりの喝采 という意味】
ロンコーニのアリア【第8番の残り】、喝采: ここで ポッジが 傷ついて 舞台に現れる: この場面は ポッジによって とても素晴らしく演じられたので、彼は繰り返し喝采を受け、3回舞台に呼び出された; […] 前述のアリアの後、ロンコーニは 舞台に再び現れた。
タッキナルディのロンドフィナーレ【第8番】、熱狂的な、マエストロ、彼女、ポッジとロンコーニが呼び出される。
台本は平凡。 […]
二つの新聞公演評から分かる通り、好評と不評が入り混じっていた。
最も好評を博したのはポッジで、特にギーノの死の場面は他の公演評も含めて絶賛されている。
タッキナルディとロンコーニも概ね好評。ロンコーニは準備期間が極めて短かったことを考えると、公演が進むにつれてさらに調子を上げて行ったと思われる。
逆に、好評を博したとはいえタッキナルディがプリマドンナの圧倒的な存在感を発揮できなかったのは、彼女がこのシーズンで既に《ルチア》で23回、夫の《イネス・デ・カストロ》で4回と、年末からずっと歌いっぱなしで疲れていたからかもしれない。
すったもんだの末で起用されたマッツァレッリは、まったく評判を得られなかった。他の公演評ではもう少し温かく受け止められてはいるが、それはあくまで新人歌手への恩情だろう。とはいえ、この時彼女が17歳くらいだったのならば、有名人気歌手3人の間で主役の一角を担うのはかなりの重責だったに違いない。つまり、ドニゼッティの懸念した通りの結果になっただけである。なおこの結果、彼女は後述する夏のセニガッリアでの《ピーア・デ・トロメイ》には出演していない。
歌手の出来栄えとは関係なく、第1幕フィナーレはまったくの不評だった。ドニゼッティがこの第1幕フィナーレを力を入れて書いたのは楽譜を見れば、そして音楽を聞けば分かる。実際、今日この第1幕フィナーレを聞いても、どうしてこの第1幕フィナーレがこうも不評だったのか今一つ分からない。
ただ後の改訂からするに、2つの問題点が見て取れる。
一つは台本の問題である。初演稿では冒頭にネッロとギーノさらにピーアが加わった場面、中間にピーアとロドリーゴの再会の場面、そしてそこにネッロとギーノが踏み込み、ロドリーゴが逃亡し、一気に混乱のストレッタに至るというものだった。ネッロとギーノの場面が二つに分けられているのは、肝心の『密会』現場に踏み込む際の劇的効果を損ねている。またネッロが踏み込んで以降は展開が慌ただしい。
もう一つは音楽的なもの。元々のストレッタはかなり景気の良い音楽だったのだが、ヴェネツィアの観客はこれをゴチャゴチャしているように受け止めたようだ。ドニゼッティは応急措置的にここを手直しし、もう少し落ち着いた印象の音楽に改めた。
ドニゼッティは、当時の一般的な規定通り、初日から3公演、つまり2月21日の公演まで立ち合い、直後にヴェネツィアを発ったと思われる。新しいストレッタはドニゼッティがヴェネツィアを発った後に上演で採用されたが、しかし2月25日付でドニゼッティに宛てた手紙でラナーリはこう書いている。
ピーアのフィナーレの 明るくされた【≒ 整理された】ストレッタは 何ら効果をもたらさなかった […] 私は 君に 私が 新しいフィナーレについて考えることを 懇願する […] この新しい曲で、《ピーア》は《ベリザーリオ》と同じくらい、ことによると それを上回るオペラになるだろう。
La schiarita stretta di Finale della Pia non produsse alcun effetto [...] Ti prego di pernsarmi al nuovo Finale [...] Con questo pezzo nuovo, la Pia sarà un'opera eguale, e forse meglio al Belisario.【注4】
後の他都市での上演を見据えて、ラナーリは第1幕フィナーレを全面的に書き直してほしいと訴えた。新たに書き直された第1幕フィナーレは、この年の夏のセニガッリアでの公演で用いられることとなる。
注1 La prima rappresentazioni delle opera delle opere di Donizetti nella stampa coeva / p. 633
注2 Donizetti / Guido Zavadini / p.426
注3 Le Opere di Gaetano Donizetti / Verzino Edoardo Clemente / p.198
注4 La prima rappresentazioni delle opera delle opere di Donizetti nella stampa coeva / p. 633
セニガッリアでの上演における改訂
ヴェネツィアでの初演から5か月ほど後の1837年夏、《ピーア・デ・トロメイ》はアドリア海沿岸の町セニガッリアで上演される。セニガッリアでは毎年8月に大きな市 いち が催されており、ラナーリは当時それに合わせてオペラ興行をしていた。彼は5月22日付でドニゼッティに正式に新しい第1幕フィナーレを要請した。
実はカンマラーノとドニゼッティも第1幕フィナーレを新たに書き直すことにして、5月6日付でラナーリに宛ててまず新たな第1幕フィナーレの台本を送付していた。ドニゼッティはこれに急ぎ音楽を付け、5月22日付で送付した。これに対するラナーリの返信から、ドニゼッティがセニガッリアの公演ではロドリーゴから両幕のアリアを外し、大幅に出番を縮小したことが分かる。
セニガッリアでの《ピーア・デ・トロメイ》は、新市立劇場 Nuovo Teatro Comunale で、1837年7月31日から始まった。
ネッロ・デッラ・ピエトラ
Nello della Pietraジョルジョ・ロンコーニ
Giorgio Ronconiバリトン
baritone
ピーア
Piaエウジェニア・タドリーニ
Eugenia Tadoliniソプラノ
soprano
ロドリーゴ・デ・トロメイ
Rodrigo de' Tolomeiレティーツィア・スデッティ
Letizia Sudettiコントラルト
contralto
ギーノ・デリ・アルミエーリ
Ghino degli Armieriナポレオーネ・モリアーニ
Napoleone Morianiテノール
tenore
ピエーロ
Pieroスタニスラオ・デミ
Stanislao Demiバス
basso
ビーチェ
Biceパオリーナ・ロヴァリス
Paolina Rovarisソプラノ
soprano
ランベルト
Lambertoドメニコ・ラッファエッリ
Domenico Raffaelliバス
basso
ウバルド
Ubaldoアレッサンドロ・ジャッキーニ
Alessandro Giacchiniテノール
tenore
ネッロのロンコーニとウバルドのジャッキーニだけがヴェネツィア初演から引き続き出演し、後は歌手が入れ替わった。
エウジェニア・タドリーニ 1808―1872 は、フォルリ(ボローニャとリミニの中間辺り)生まれのソプラノ。1830年代半ばから1840年代終わりまでプリマドンナとして人気を誇った。数多くのオペラの初演に参加し、中でもドニゼッティ《シャモニーのリンダ》 1842年 ウィーン のタイトルロール、同《マリア・ディ・ロアン》 1843年 ウィーン のタイトルロール、ヴェルディ《アルジーラ》 1845年 ナポリ のタイトルロール の創唱者として名高い。彼女はタッキナルディほど高音に強くないので、彼女に合わせてピーアの音楽は手直しされている。
ナポレオーネ・モリアーニ 1808―1878 はフィレンツェ生まれのテノール。1833年にデビュー。タドリーニと同年生まれで、同時期に人気を博し、やはり《シャモニーのリンダ》初演でカルロを創唱した。1850年代まで歌ったが、喉を傷めたため1840年代には人気は陰り、人気歌手としての活動期間はそれほど長くなかった。
セニガッリア公演では、ラナーリの要請に従って、第1幕フィナーレは新たに書き直された。まず冒頭にウーゴの場面と兵士たちの合唱が据えられ、初稿にあったネッロとギーノ、ピーアの場面はすべて削除。続くピーアとロドリーゴの二重唱は踏襲。この後に、《ウーゴ、パリ伯爵》 1832年 ミラノ から採られたコンチェルタートを挿入した。ストレッタは再度書き直された。
セニガッリアでの《ピーア・デ・トロメイ》は大成功を収めた。8月10日付のボローニャの 劇場芸術と文学 Teatro Arti e Letteratura 誌は『先の7月31日 月曜日 ドニゼッティの《ピーア・デ・トロメイ》が上演され、それは 熱狂のこの上なく輝かしい結果を得た。 Lunedì 31. scorso luglio andò in ischena la Pia de'Tolomei di Donizzetti, la quale ebbe un esito il più brillante di entusiasmo.』【注1】と絶賛で記事を書き始めている。各曲、各歌手の様子もほとんどの場合で喝采を浴びていた。懸案の第1幕フィナーレはについてもこう書いている。
マエストロによって わざわざ新たに書き直された【第1幕の】大フィナーレは、ストレッタの後 熱狂的に喝采を浴びた、それは 素晴らしい作品で効果があり、そして幕が下りた後に 大喝采で全出演者が呼び出された。
Gran finale rinnovato espressamente dal Maestro, applauditissimo a furore dopo la stretta, che e di bellissimo lavoro ed effetto, e dopo calata la tela una clamorosa chiamata a tutti gli artisti.【注2】
ヴェネツィアという大都市での公演ではなく、セニガッリアという地方都市の公演だったこともあるにせよ、とにかくも《ピーア・デ・トロメイ》はここで完全な成功を収めることができた。
セニガッリアでの公演からおよそ1か月後の1837年9月9日から、ルッカ ジーリオ劇場で、セニガッリア公演と脇役までまったく同じ歌手たちで《ピーア・デ・トロメイ》の公演があった。
さらに翌1838年5月19日からは、ローマ アルジェンティーナ劇場で公演があった。ドニゼッティは、義兄トトことアントーニオ・ヴァッセッリ Antonio Vasselli (前年に亡くなった妻ヴィルジーニアの兄)を介して公演を監修したという。この時のピーアはジュゼッピーナ・ストレッポーニ 1815―1897 だった。ネッロのロンコーニ、ギーノのモリアーニは変わらず。ロドリーゴはジュゼッピーナ・レーガ Giuseppina Lega という準主役、脇役専門の歌手だったが、第2幕のアリアなどいくつかの部分が元に戻された。
注1,注2 Cenni Storici intorno alle Lettere Invenzioni Arti al Commercio ed agli Spettacoli Teatrali per l'anno 1837 al 1838 / p.197
ナポリの上演における改訂
セニガッリアでの大成功によって《ピーア・デ・トロメイ》の形態は確定したかに思われたが、予期せぬことからドニゼッティは《ピーア・デ・トロメイ》をもう一度大きく改訂することになった。
ナポリのドニゼッティは、1838年の秋のシーズンのために新作《ポリウト Poliuto》を制作していた。しかしこの3世紀の聖人ポリュクトゥスを主役に据えたオペラの台本は、国王フェルディナンド2世直々の意向で8月11日付で不許可になってしまった。検閲による不許可と異なり、台本を修正して通すことも不可能だった。
興行主ドメニコ・バルバイヤ Domenico Barbaja 1777―1841 は、新作オペラの上演の代わりに、ドニゼッティのオペラでまだナポリで上演されたことのない作品を大幅に手直しして舞台に掛けることにした。そこで選ばれたのが《ピーア・デ・トロメイ》だった【注1】。バルバイヤはラナーリから上演権利を借り受け、カンマラーノとドニゼッティは《ピーア・デ・トロメイ》の改訂に乗り出した。
しかしことは簡単ではなかった。劇場に関わるナポリの様々な当局の責任者たちは『お古の新作オペラ』に好意的でなく、ダラダラと結論が先延ばしされてしまった。結果としてドニゼッティは必要以上に大幅な改訂をせざるを得なくなった。たとえば、検閲では本来のピーアの死による幕切れは問題にならなかったにもかかわらず、当局からの圧力でこれをピーアが死を免れるハッピーエンドに変えざるを得なかった。9月7日付でナポリのドニゼッティがジャコモ・ペドローニに宛てた有名なぼやきの手紙が残されている。
[…] ついに 追放されたポリウトの代わりに 私がピーアを いくらか改変をして与えることが決まった。件のピーアは、【もう】 死ぬことはない(だが、ダンテは…)。ダンテのことは 気にしないようにしよう。[…]
[...] Finalmente è deciso che io dia Pia con alcuni cangiamenti in luogo di Poliutto proscritto. La qual Pia, non deve morire (ma, Dante...). Non ci fottiamo di Dante. [...]【注2】
1838年、ナポリでの《ピーア・デ・トロメイ》は、ドニゼッティにとって不本意なものだったに違いないので、ここでは主な改訂箇所を簡単に紹介するに留める。
第3番 ギーノとネッロの二重唱のカバレッタを改訂。
第5番 第1幕フィナーレ、セニガッリアで新たに書き直された第1幕フィナーレのうち、《ウーゴ、パリの伯爵》から更生された Largo のコンチェルタートを手直し。
第6番 第2幕冒頭の合唱を、兵士たちの合唱から、新たに書いたグエルフィ党員たちの合唱に差し替え。
第9番 第2幕フィナーレ、前述のドニゼッティの手紙の通り、ピーアの死なないハッピーエンドに変更。ピーアが盃を空けようとした瞬間にネッロの声が聞こえ、驚いた彼女は盃を落としてしまう。そして誤解を解いて駆けつけたネッロと喜びあって幕となる。
その他にも細かい手直しが様々にある。
ナポリでのハッピーエンドの《ピーア・デ・トロメイ》は、1838年9月30日から公演があった。ピーアがジュゼッピーナ・ロンツィ・デ・ベニス Giuseppina Ronzi de Begnis 1800―1853 (前述の通りドニゼッティは初演でも彼女をピーアに起用したいと思っていた)、ネッロがポール・バロワレ Paul Barroilhet 1810―1871、ギーノがジョヴァンニ・バサドンナ Giovanni Basadonna 1806―1851、ロドリーゴがエロイーザ・ブッチーニ Eloisa Buccini。
緊急避難的オペラは成功しづらい傾向があり、ナポリでのハッピーエンドの《ピーア・デ・トロメイ》も例外ではないが、しかしロンツィ・デ・ベニスをはじめとする歌手たちが優秀だっただったこともあって、失敗は免れたようだ。
9月30日の初日の後、10月4、7日と規定の3回の公演に立ち会った後、完全にナポリを見限ったドニゼッティは、10月10日頃にパリへと向かって発った。1822年から16年間拠点としたナポリで彼が最後に上演に関わったのが、ハッピーエンドの《ピーア・デ・トロメイ》になった。
今日、あえてこのナポリでの《ピーア・デ・トロメイ》を上演することはまずないと思われるが、第1幕フィナーレはだけはナポリでの形態(セニガッリアで新たに書き直した第1幕フィナーレに、さらにラルゴのコンチェルタートにはナポリでの改訂稿を採用)を用いて上演されることが一般的になっている。
注1 この時、もう一つ同様にナポリで上演されていないオペラを改訂して上演する計画があり、それは《ルクレツィア・ボルジア》 1833年 ミラノ を大幅に書き改めた《ダリンダ Dalinda》だった。《ルクレツィア・ボルジア》は1834年春にナポリで上演が計画されたが、台本が検閲を通らずナポリでは未上演のままだった。設定から大幅に改められた《ダリンダ》だったが、結局ナポリでは台本が検閲を通らず、直後にドニゼッティはナポリを離れパリに移って《ダリンダ》を顧みることがなく、ほとんど散逸状態にあった。2019年に楽譜が発見され、2023年5月14日にベルリンでようやく日の目を見た。
注2 Ashbrook / Donizetti La vita / p.121
その後の19世紀における上演
ナポリでの上演の後、ドニゼッティが直接《ピーア・デ・トロメイ》に関わったことはなかったようである。したがってドニゼッティの生前にウィーンやパリで上演されることはなかった。
19世紀における《ピーア・デ・トロメイ》の上演は、Opera RaraのCDの解説冊子にトム・カウフマンによる表が掲載されているで、それを参照してほしい。
1839年6月19日からスカラ座で催されたミラノ初演では、ネッロが ロンコーニ、ピーアが ストレッポーニ、ギーノがモリアーニと、1838年5月のローマでの上演と同じ強力な歌手たちが出演したにもかかわらず、失敗に終わった。この時は、おそらく本来の幕切れが検閲を通らなかったので、ナポリ稿のハッピーエンドが採用された。
イタリアでの《ピーア・デ・トロメイ》の上演が盛んにならなかったことから、1843年、ラナーリは《ピーア・デ・トロメイ》の権利をポルトガル、リスボンのサン・カルロス劇場の監督、アントーニオ・ポルトに払い下げた。これによって1844、45年にスペイン、バルセロナで、1847年にリスボンで上演があった。幸いなことにこの時用いられた楽譜にはヴェネツィア初演時の音楽も含まれており、たとえば第2幕冒頭のオリジナルの合唱(既にセニガッリアでの上演の際には外された)はリスボンの上演で用いられた楽譜だけに残っていて、そこから復活させることができたという。
《ピーア・デ・トロメイ》は1850年代にも地方都市で散発的に上演された。カウフマンが挙げた19世紀最後の公演は1862年のリヴォルノである。
近代の上演
《ピーア・デ・トロメイ》の近代蘇演は、1967年9月3、5日、シエナのリンノヴァーティ劇場での公演。合唱とオーケストラはボローニャ市立歌劇場のもので、つまりボローニャ市立歌劇場の協力による上演だったと思われる。初日のライヴ録音がCDになっており ⇒ 参考資料、出演者などはそちらを参照に。指揮を務めたブルーノ・リガッチ Bruno Rigacci がナポリに保存されている自筆総譜を基に上演譜を作成しているが、もちろんハッピーエンドは採用しなかった。ロドリーゴはテノールに当て、アリアは両方とも省いた。全体に短縮を図っている一方で、第2幕 第8番のうちの隠者たちの合唱(本来はピエーロと合唱が一貫して一緒になって歌う)ではピエーロの独唱と合唱を掛け合いのように改変している。
蘇演の5か月後、1968年2月10、11日にはスイス、ルガーノで、スイス・イタリア語放送 RSI が《ピーア・デ・トロメイ》の抜粋を放送用に収録した。出演者などは ⇒ 参考資料。リガッチの指揮、ピーアのメネグッツェルはシエナでの蘇演と同じ。
その翌月の1968年3月にボローニャ市立歌劇場が《ピーア・デ・トロメイ》を上演した。ボローニャ市立歌劇場の上演記録。あまり詳しい情報が記載されていないが、公演は1968月15から23日、出演者は、ピーアがシエナでも歌ったメネグッツェルにオンディーナ・オッタも分担、ビーチェがカルメン・ラヴァーニに変わったが、後はシエナと同じ。ここでもロドリーゴはテノールだった。なお3月23日の公演はボローニャ市立歌劇場ではなく、ボローニャ近郊の小さな町ブドリオでオッタがピーアを歌って催されたらしい。
1976年10月3日、RAIミラノが《ピーア・デ・トロメイ》を放送用に録音した。出演者などは ⇒ 参考資料 のCDを。これもブルーノ・リガッチが自身による校訂譜を用いて指揮しているが、ここではロドリーゴをメッゾソプラノに戻し、第1幕のアリアも歌わせている。
1978年2月26日、《ピーア・デ・トロメイ》はプロ・オペラ Pro Opera という団体による演奏会形式上演で英国初演された。ロンドン、エリザベス女王ホール。ネッロが ジョナサン・サマーズ Jonathan Summers、ピーアが ロイス・マクドナル Lois McDonall、ロドリーゴが デラ・ジョーンズ Della Jones、ギーノが アンソニー・ローデン Anthony Roden、ピエーロが ジョン・トムリンソン John Tomlinson、ビーチェが メリル・ジェンキンス Merril Jenkins、ウバルドが アーミステッド・ウィルキンソン Armistead Wilkinson、合唱は プロ・オペラ・コーラス Pro Opera Chorus、合唱指導は ローズマリー・バーンズ Rosemary Barnes、オーケストラは プロ・オペラ管弦楽団 Pro Opera Orchestra、指揮は レスリー・ヘッド Leslie Head。英国のドニゼッティ協会 The Donizetti Society の後援を受けた公演で、楽譜の選択がかなり凝っている。ロドリーゴのアリアは二つとも歌われた。第1幕フィナーレは、冒頭は初演稿つまりネッロ、ギーノとピーアの三重唱を採用、その後はセニガッリアでの新たに書き直されたものを採用。第2幕冒頭の合唱はナポリでのグエルフィ党員たちの合唱を採用。つまりかなりハイブリッドな形態での上演だった。
この後、およそ四半世紀の間、《ピーア・デ・トロメイ》の上演はなかった。
《ピーア・デ・トロメイ》の転機はガブリエーレ・ドットとロジャー・パーカーによる校訂のクリティカルエディションが成立したことである。楽譜が発刊されるより前の2004年と2005年に、クリティカルエディションを使用した重要な上演が続いた。
2004年10月23日、英国、ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールでOpera Raraによる演奏会形式上演が催された。その前か後に、ヘンリー・ウッド・ホールで初演稿全曲とセニガッリア、ナポリでの異稿を含めた網羅的な録音が行われ、CDで発売された。出演者などは ⇒ 参考資料 のCDを。
2005年4月には、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場で舞台上演があった。公演記録。公演は2005年4月15、17、19、21、24日。映像と音声が収録され、DVDとCDが発売された。出演者などは ⇒ 参考資料 DVD、CD を。
クリティカルエディションが成立して以降の上演は、情報が十分でない。
英国のイングリッシュ・ツアリング・オペラ English Touring Opera が2016年に《ピーア・デ・トロメイ》を取り上げている。出演者などはリンク先を。公式サイトの記録には出演者は記載されているものの公演日と場所が抜けているが、いくつかの情報を集めると、3月10日、ロンドンのハックニー・エンパイア Hackney Empire を皮切りに、4月7日にサフォーク州のスネイプ・モルティングスのコンサートホール、4月12日にグロスターシャー州チェルトナムのエヴリマン劇場、4月24日にダービーシャー、バクストンのバクストン・オペラ・ハウスで、4月26日にケンブリッジシャー、ケンブリッジのケンブリッジ・アーツ劇場で、5月24日にデヴォン、エクセターのノースコット劇場で、6月3日にヨークのヨーク・ロイヤル劇場で上演された。
2017年から翌年にかけて、《ピーア・デ・トロメイ》のあるプロダクションが伊米4都市で上演された。
最初であるピサの公演の記録は既に劇場の公式サイトから消されてしまったが、複数のインターネット上の記録を基にすると、2017年10月14、15日、ヴェルディ劇場。ネッロ・ディ・ピエトラは ヴァルディス・ヤンソンス Valdis Jansons とマウロ・ボンファッティ Mauro Bonfanti、ピーアは フランチェスカ・ティブルツィ Francesca Tiburzi とソーニア・チャーニ Sonia Ciani、ロドリーゴは マリーナ・コンパラート Marina Comparato とカメリカ・カデル Kamelia Kader、ギーノ・デリ・アルミエーリは ジューリオ・ペッリーグラ Giulio Pelligra、ピエーロはアンドレア・コメッリ Andrea Comelli、ビーチェは シルヴィア・レガッツォ Silvia Regazzo、ランベルトは クラウディオ・マンニーノ Claudio Mannino、ウバルドは クリスティアン・コッリア Christian Collia、シエナの塔の守衛は ニコラ・ヴォカトゥーロ Nicola Vocaturo。指揮はクリスティアン・フランクリン Christopher Franklin、オーケストラはトスカーナ管弦楽団 Orchestra della Toscana。合唱指導は マルコ・バルガーニャ Marco Bargagna。演出は、アンドレア・チーニ Andrea Cigni、舞台装置は ダーリオ・ジェッサーティ Dario Gessati、衣装は トンマーゾ・ラガットッラ Tommaso Lagattolla、照明は フィアンメッタ・バルディセッリ Fiammetta Baldiserri。
次のリヴォルノでの公演は、2018年1月20、21日、ゴルドーニ劇場。ゴルドーニ劇場財団の公演案内のチラシがPDFファイルで閲覧でき、両日とも歌手はピサとまったく同じであることが分かる。
ルッカのジーリオ劇場での上演は劇場サイトの記録が残っている。20108年3月17日(1公演のみ)、ジーリオ劇場 Teatro del Giglio。ほとんどの配役はピサ、リヴォルノの初日と同じだが、ウバルドとシエナの塔の守衛だけ変更になった。
そしてこのプロダクションは大西洋を越えて、スポレートUSAフェスティヴァルで上演された。これが《ピーア・デ・トロメイ》の米国初演。公式サイトから公演詳細のPDFファイルがダウンロードできる。公演は、2018年5月27、31日、チャールストン大学、6月6、8日、ソッティル劇場。歌手や指揮者はまったく新たになっている(PDFファイルを参照)。
面白いことに《ピーア・デ・トロメイ》は日本で頻繁に上演されている。
日本初演は2007年11月3、4日、昭和音大主催の公演、昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ。公式な公演記録は既に削除されているようだが、出演者などは私がこの公演を両日見た時に書き残しており、それによると、11月3日は、ネッロ 折江忠道、ピーア 納富景子、ロドリーゴ 吉田郁恵、ギーノ ドメニコ・メニーニ、ピエーロ 岡野 守、ビーチェ 伊倉睦実、ランベルト 渡邊朋哉、ウバルド 新後閑大介、牢番 三浦義孝。11月4日は同じ順番で、党主税、伊藤真友美、丹呉由利子、小山 陽二郎、小田桐貴樹、道満百代、岡山肇、冨田裕貴、三浦義孝。昭和音楽大学合唱団、合唱指導 及川 貢、山舘 冬樹。昭和音楽大学管弦楽部、指揮 星出豊。演出 マルコ・ガンディーニ、美術 イタロ・グラッシ、衣裳 シルヴィア・アイモニーノ、照明 奥畑康夫。大学もしくは大学院在学中の人のみならず、既にプロで活躍している歌手がかなり含まれていることが分かる。
このプロダクションは、2010年10月9、10日、同じく昭和音大主催で再演、昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ。残念ながらこちらは出演者に関する十分な情報が既にインターネット上にはない。
2011年2月19、20、京都市立芸術大学などの主催、京都市立芸術大学講堂。。リンク先に出演者の情報と、さらに公演チラシの画像も開ける。
そして、2024年11月22、23、24日、東京の日生劇場で、藤原歌劇団と日生劇場の共催で上演予定になっている。
ただし、日本での公演ではいずれもクリティカルエディションの使用を謳っていない。
ピーア
哀れなピーアは、ダンテの『神曲』の『煉獄』第5歌に登場することでよく知られている。
ピーアとは13世紀末にイタリアに実在した人物といわれている。彼女はシエナの貴族トロメイ家の出身で、シエナからほど近いマレンマのカステッロ・デッラ・ピエトラ(「石の城」の意)の当主、ネッロ・デイ・パンノッキエスキに嫁いだ。しかし1297年、ネッロはピーアを殺害してしまった。新たにマルゲリータ・デッリ・アルドブランデスキ伯爵夫人と結婚するためだったと言われている。ピーアが窓辺に立っている時に、ネッロの指図で手下がピーアの足をすくい転落死させた、とも伝えられている。
貞淑な妻でありながら殺されてしまったピーアには同情が集り、様々な説話が広まった。そこからダンテは『煉獄』にピーアを登場させた。
ダンテの文からさらに様々な文学、絵画が生まれた。
19世紀のイタリアではバルトロメオ・セスティーニ Bartolomeo Sestini 1792―1822 の韻文小節が知られており、、前述した通りドニゼッティもこれは知っていた。しかしカンマラーノが直接参考にしたのは、ジャチント・ビアンコの戯曲『ピーア・デ・トロメイ』だと思われる。これは1836年4月19日、つまりドニゼッティがラナーリから新作オペラの依頼を受ける直前に、ナポリのフィオレンティーニ劇場で初演され大成功を収めたばかりだった。
シエナとフィレンツェの抗争
ピーアの物語の背景には、ギベリン党とグエルフィ党の対立、特にシエナとフィレンツェの抗争がある。
ギベリン、グエルフィの名前は、神聖ローマ帝国における二大勢力に由来している。一方はホーエンシュタウフェン家である。バルバロッサ(赤髭王)という名で知られるホーエンシュタウフェン家出身の皇帝フリードリヒ1世は、ヴァイブリンゲン(南ドイツ、現在のバーデン=ヴュルテンベルク州の都市)に城を持っていた。このヴァイブリンゲンが元となって、ホーエンシュタウフェン派はウィーベリンと呼ばれるようになった。一方、反ホーエンシュタウフェン派であったヴェルフ家はそのままヴェルフと呼ばれた。これらがイタリアに伝わり、ギベリン、グエルフィと変化した。
神聖ローマ帝国は頻繁にイタリアに進攻し政治的干渉を強めた。中でもフリードリヒ1世は12世紀の半ばに執拗にイタリアに攻め込み、イタリアの諸都市で強い反発がおきた。その中心となったのが教皇だった。
やがて神聖ローマ帝国寄りの勢力が「皇帝派」、その反対勢力が「教皇派」と大別されるようになり、前者がホーエンシュタウフェン家側なので「ギベリン党」、後者はその対立勢力として「グエルフィ党」と呼ばれるようになった。
さて、1197年にシチリア王を受け継いだ神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世 1194―1250 は、トスカーナ近辺に強権を振りかざし、時の教皇インノケンティウス4世 在位1243―1254 と激しく対立した(教皇は皇帝を破門した)。しかし1250年にフリードリヒ2世が亡くなると、反皇帝勢力の巻き返しが一気に強まる。フィレンツェは教皇寄りに、シエナは皇帝寄りの立場をとり、対立する。1260年に両都市が激突する(モンタペルティの戦い)。シエナ軍は、ホーエンシュタウフェン家のシチリア王マンフレーディ 1232―1266 フリードリヒ2世の庶子 の協力を得て、フィレンツェ軍を打ち破った(第8番でこのことが言及されている)。これに対して教皇は、フランス王ルイ9世の弟シャルル・ダンジュに協力を要請、彼はイタリアから神聖ローマ帝国の勢力を一掃させ、結果ホーエンシュタウフェン家は断絶してしまった。シエナは、フランスに加勢を受けたフィレンツェの勢力(= 教皇派、グエルフィ党)から反撃され、1270年には敗北した。
あらすじ
物語の前置き
マレンマ【注】の当主ネッロは、かつて対立していたシエナのトロメイ家から、政略結婚としてピーアを妻に迎えた。しかしピーアの弟ロドリーゴは、いまだネッロと対立関係にあり、彼女は弟と密かに会うことを強いられていた。一方、かつてピーアに恋して彼女から拒まれた、ネッロの従弟ギーノは、ピーアの密会を不倫と疑っている。
【注】 地名の マレンマ Maremma は、南トスカーナの海沿いに広がるトスカーナ湿地帯を指す。maremma は 湿地 を意味する。
第1幕
ピーアの館に密使が到着したと、ネッロの従者ウバルドと家臣たちが噂し合っている。ギーノが押さえた手紙から、彼はピーアの不倫していると確信する。ギーノはピーアとの面会を求めるが拒まれる。怒ったギーノは、かつて自分を跳ねつけた彼女を苦しめてやると誓う。
ピーアは、捕われているという弟のロドリーゴの様子を伝える報せが届かないことを心配し、神に祈る。トロメイ家の家臣ランベルトが、見知らぬ男から受け取った手紙をピーアに届ける。その手紙を読んだピーアは、弟と再会できることを喜ぶ。
戦いに出ているネッロに、ギーノは、ピーアが不貞であると報告する。ネッロは激しく動揺し怒る。
牢獄。ロドリーゴは、自分が死んだら姉まで悲しみで死んでしまうだろうと案じている。ピーアに協力する看守の助けによって、ロドリーゴは牢を脱出する。
弟の到着を待っているピーアに、ランベルトが、庭に兵士が隠れていると報せる。ロドリーゴが現れ、姉弟は再会を喜ぶが、ネッロとギーノが踏み込んでくるので、ランベルトはロドリーゴを秘密の通路へ導く。押し入ったネッロは妻の不貞を確信し、激しく怒る。混乱で幕となる。
第2幕
フィレンツェ軍の兵士たちが勇しく歌っている。ロドリーゴの元を訪れたランベルトがピーアの窮状を伝え、ロドリーゴは悲しむ。戦いを報せるラッパが鳴り、ロドリーゴはピーアを救おうと出撃する。
ギーノは囚われのピーアに、自分の愛を受け入れるなら助けようと告げる。しかしピーアから密会の相手が彼女の弟だと明かされ、彼は驚く。ギーノはなおもピーアに迫るが、彼女は無実の死を選ぶと答える。ピーアの死に耐えられないギーノは、ネッロに真実を告げて彼女を救い、自らは戦死してしまおうと決意する。しかし二人が去るのと入れ違いに、夜明けまでに解放の指示がなければピーアを殺すようにというネッロからの指示がもたらされる。
隠者の庵。嵐が吹き荒れている。戦いから戻る途中のネッロが避難してくる。隠者ピエーロは、ピーアは無実だとネッロに言い聞かせる。しかしネッロは激しい嫉妬に苦しむばかり。そこに戦いで傷ついて瀕死のギーノが転がり込んでくる。彼はネッロに、ピーアの密会の相手が彼女の弟だったこと、自分は彼女を愛していたことを告げ、事切れる。ネッロは全てを理解するが、激しい嵐のため夜明けまで出発できない。
牢獄。夜が明けたので、ウバルドは指示通りにピーアに毒の入った水を飲ませる。ネッロが死ぬ夢を見たピーアは、夫への愛を思い浮かべる。ネッロが駆けつけ、誤解を謝り妻に許しを請う。しかしピーアにはもう毒が回り始めていた。ロドリーゴがピーアを解放しに押し入る。だがピーアはネッロを殺そうとするロドリーゴを制し、息も絶え絶えに、自分を哀れに思うならもういがみ合うことはやめて欲しいと願い、息絶える。
音楽
前奏曲
前奏曲は23小節と短いもので、またオペラ本体とは素材は関連しない、まったくの 枕
である。
第1幕
第1番 導入、シェーナとギーノのカヴァティーナ。導入は基本的に Larghetto 4/4 変ホ長調。いわゆる幕開けの合唱だが、謎の使者について思案する内容なので華やかな音楽ではない。ギーノとウバルドのシェーナは7つの部分から成り、ギーノのピーアへの愛憎を丁寧に描いている。ギーノのカヴァティーナは、緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成。緩(カンタービレ) Larghetto 9/8 変ロ長調 Non può dirti la parola は、簡素な伴奏と分かりやすい旋律で始まるが、ギーノが Ah! l'incendio che mi strugge / è delirio, e non amor! ああ! 私を苦しめている激情は 狂乱であって 愛ではない! と言った直後から音楽が不安定になって、歌は半音階下行し、ギーノの苦悩と動揺が示されている。テンポ・ディ・メッゾ(中間部) Allegro 4/4 変ロ長調 ではビーチェが ピーアの面会の申し出を拒否したことを伝え、怒ったギーノの音楽が激しくなる。急(カバレッタ) Moderato 4/4 変ロ長調 Mi volesti sventurato? は。1840年代以降に主流となる中音域の力強さを活用したテノールのカバレッタの先駆け的な音楽である。なお前半と後半で一箇所だけ音型が異なっている。
第2番 合唱、シェーナとピーアのカヴァティーナ。ビーチェと女声合唱の合唱 Qui posa il fianco. È vivida Andantino 4/ ヘ長調 は、後に《王の愛妾》第1幕の Rayons dorés, tiède zéphyre に更生されたことで知られる、優美な女声合唱の音楽。ピーアのカヴァティーナは 緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成。緩(カンタービレ) Larghetto 2/4 変イ長調 O tu che desti il fulmine, は、神への切々とした祈りと技巧的な歌が行き交う。ピーアが ah と嘆く時、変イ長調で変ハ、変ホ、重変ロの和音に飛んで最高音の変ハ音を伸ばすのが非常に効いている。テンポ・ディ・メッゾでは、ランベルトが謎の男(実はウバルド)から受け取った手紙をピーアに渡し、ロドリーゴが来ることを知った彼女が喜ぶ。Allegro を基本に変イ長調 → 変ロ長調 → ト長調 と調を変えて、5つの部分によってピーアの心情の変化を描いている。急(カバレッタ) Moderato 4/4 ト長調 Di pura gioia in estasi ではピーアの喜びが弾け、ことにタッキナルディが得意にしたであろうオクターヴ跳躍が用いられ、そして最高音はニ音に達する。
第3番 シェーナと ギーノとネッロの二重唱。117小節のシェーナは、ギーノによって妻ピーアへの疑念が燃え上るネッロの姿が劇的に描かれている。Moderato の冒頭で示された伴奏音型が、ネッロの怒りが増大するにつれ激しさを増して恐怖の様相を示す。二重唱は 緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成。この曲はシェーナの途中 Moderato から変イ長調を基本としているが、緩(カンタービレ) Larghetto 6/8 ハ長調 Parea celeste spirito だけは長三度上のハ長調で、転調によってネッロ絶望の嘆きを浮かび上がらせている。歌としてもネッロの方が主である。一方のギーノはピーアへの復讐が始まったことに(複雑な)喜びを見せて、二重唱でありながら締めを除くと二人の歌は重ならない。テンポ・ディ・メッゾで変イ長調に戻り、急(カバレッタ) Allegretto 3/4 変イ長調 Del ciel che non punisce では、二人は違いはあっても復讐に燃えており、同じ旋律で歌い並行する二重唱を成して、ネッロがギーノの奸計に嵌ってしまったことが示されている。
第4番 シェーナとロドリーゴのカヴァティーナ。シェーナの18小節の前奏 Maestoso 4/4 ハ短調 は地下牢の重苦しい空気をよく描いている。ロドリーゴのカヴァティーナは 緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成。緩(カンタービレ) Cantabile 12/8 ホ長調 Mille volte sul campo d'onore は、手堅くまとめつつ、新人歌手に負担がかからないよう難易度の高くない技巧で効果が上がるよう工夫がなされている。急(カバレッタ) Poco meno 3/4 ホ長調 L'astro che regge i miei destini は、牢獄から解放されるロドリーゴの沸き立つ喜びが勇ましい音楽で描かれている。ここでもドニゼッティは限られた力量でカバレッタが盛り上がるよう工夫を凝らしている。最高音の嬰ト音が2回。
第1幕フィナーレ(ここではナポリでの形態、すなわち セニガッリアで新たに書き直した第1幕フィナーレに、さらにラルゴのコンチェルタートにはナポリで改訂稿を採用したもの を扱う)は、ウバルドと合唱の場面、シェーナ、ピーアとロドリーゴの小二重唱、シェーナ、コンチェルタート(合唱付き五重唱)、シェーナ、ストレッタ から成る。ウバルトと合唱の合唱 Moderato non mosso 4/4 変ホ長調 Inoltriam fra l'ombre avvolti: は、かろうじて聞こえる そして スタッカートで と指示が付いており、低い音域でブツブツ呟く男声合唱が静かな不気味さを醸している。続くシェーナは Andante、Larghettoの穏やかな音楽が、急を知らせるランベルトの登場によって Allegro agitato 4/4 ニ短調 の激しい音楽に変わる。ロドリーゴとの再会の二重唱 Cantabile 12/8 ホ長調 Fra queste braccia は、ソプラノと男声コントラルトが並行して美しい歌の絡みを披露する伝統的な(そして少し古めかしい)美しい音楽。続くシェーナでは、舞台裏からのネッロの声から、ギーノ、男声合唱が加わり、間一髪でロドリーゴが逃亡し、と僅か54小節で次々に状況が変わり一気に緊張感が高まる。初演稿ではこの勢いのままストレッタに入るが、ここではコンチェルタート
対訳付き音楽設計図
このページで扱われている対訳付き音楽設計図は、《ピーア・デ・トロメイ》の混合稿に基づいている。
混合稿とは、1837年、ヴェネツィアでの初演稿を基に、第1幕フィナーレを1838年、ナポリで上演された際のもの(1837年、セニガッリアでの上演のために新たに書き直して差替えた第1幕フィナーレに、ナポリでの上演のためにそのコンチェルタートを改訂したものを採用)を用いている。これは折衷的な楽譜の扱いで、ドニゼッティ自身がこの形態で《ピーア・デ・トロメイ》を上演したことはない(つまり上演形態には正当性に欠ける)のだが、近年では一般的な上演形態になっている。
登場人物
ネッロ・デッラ・ピエトラ
NELLO DELLA PIETRA
バリトン
baritone
ピーア
PIA,彼の妻
sua moglieソプラノ
soprano
ロドリーゴ・デ・トロメイ
RODRIGO DE' TOLOMEI,ピーアの弟
fratello di Piaメッゾソプラノ
mezzosoprao
ギーノ・デリ・アルミエーリ
GHINO DEGLI ARMIERI,ネッロのいとこ
cusino di Nelloテノール
tenore
ピエーロ
PIERO,隠者
solitarioバス
basso
ビーチェ
BICE,ピーアの侍女
damigella di Piaソプラノ
soprano
ランベルト
LAMBERTO,トロメイ家の 昔からの召使
antico familiare de' Tolomeiバス
basso
ウバルド
UBALDO,ネッロの召使
familiare di Nelloテノール
tenore
シエナの塔の守衛
IL CUSTODE DELLA TORRE DI SIENA
テノール
tenore
日本語訳は極力文学的な色づけをせず、分析的な直訳にしてある。
台本は、ガブリエーレ・ドット Gabriele Dotto とロジャー・パーカー Roger Parker 校訂のクリティカルエディションに掲載されている歌詞と一致させている。したがって印刷台本(やそれに基づいたインターネット上で閲覧できる台本)とは異なっている場合がある。
Preludio | Allegro 4/4 E-flat major |
23小節の短い前奏曲。 | |
ATTO PRIMO | |||
[N. 1] (Introduzione), Scena e Cavatina Ghino Coro |
Larghetto 4/4 E-flat major |
(Sala terrena entro un Castello de' Tolomei)(トロメイ家の城内の 地上階の広間) (Scena Ⅰ: Familiari di Nello)(第1場: ネッロの従者たち) COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅰ E BASSI Ⅰネッロの従者たちの合唱 テノールⅠ と バスⅠ Ancor del fosco notturno veloまだ 暗い 夜の帳から tutto sgombrato non era il cielo,空は 完全には 明け渡されていなかった【≒ 空には まだ 暗い 夜の帳が 残っていた】、 quando ravvolto nel suo mantello彼の外套に 身を包んで segreto messo giunse al castello.秘密の使者が 城に 到着した 【↑】時には。 COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅱネッロの従者たちの合唱 テノールⅡ Fu tratto forse dinanzi a Pia?おそらく 彼は ピーアの前に 連行された【≒ ピーアのところに 連れて行かれた】のではないか? COROO FAMILIARI DI NELLO BASSI Ⅱネッロの従者たちの合唱 バスⅡ Forse il consorte, quell'uomo invia?ことによると 配偶者が、あの男を遣わせたのか? COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅰネッロの従者たちの合唱 テノールⅠ Lo accolse Ubaldo?彼を ウバルドが 迎えたのか? COROO FAMILIARI DI NELLO BASSI Ⅱネッロの従者たちの合唱 バスⅡ Ei viene appunto!彼が ちょうど 来る! |
導入の合唱、シェーナと、緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成のギーノのカヴァティーナ。 導入の合唱。 (Sala terrena entro un Castello de' Tolomei) 第5場の削除されたビーチェと侍女たちの対話から、マレンマとシエナの戦いが始まったことで、ネッロはピーアを自身の城から離れたトロメイ家の城に避難させていることが分かる。 |
Più allegro 4/4 E-flat majorr |
(Scena Ⅱ: Ubaldo, e detti)(第2場: ウバルト、そして 前の場の人たち) COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅰネッロの従者たちの合唱 テノールⅠ Di', quel messaggio?...言いなさい、何の伝達なのか? COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅱネッロの従者たちの合唱 テノールⅡ Dal campo è giunto?それは 戦場から 届いたのか? COROO FAMILIARI DI NELLO BASSI Ⅰネッロの従者たちの合唱 バスⅠ Reca novelle triste o felici?それは 悲しい知らせを 運んできたのか それとも 幸せな【知らせを】? COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅱネッロの従者たちの合唱 テノールⅡ Parla...話しなさい… COROO FAMILIARI DI NELLO BASSI Ⅱネッロの従者たちの合唱 バスⅡ Parla...話しなさい… COROO FAMILIARI DI NELLO TENORI Ⅰネッロの従者たちの合唱 テノールⅠ Disvela...明らかにしなさい… COROO FAMILIARI DI NELLO TUTTIネッロの従者たち 全員 Disvela...明らかにしなさい… Parla.話しなさい… UBALDOウバルド (a voce bassa ed in tuono misterioso)(低い声で そして 意味深長な声で) Udite, amici.聞きなさい、友たちよ |
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Primo tempo 4/4 E-flat major |
Né Pia, né quanti le son dappressoピーアも、彼女の傍に いる人すべても denno contezza aver del messo.使者の 正確な情報を 持っていない はずである。 Crudel mistero colui m'apprese...その男は 残酷な謎を 私に 教えた… (gli altri vorrebbero interrogarlo)(他の者たちは 彼に 尋ねることを 欲しがる) Sol debbe a Ghino esser palese.それは ギーノにだけ 明かされる べきである。 V'allontanate.遠ざかりなさい。 CORO合唱 (piano fra loro)(小声で 彼らの内で) Fatal messaggio!死に至らせる【≒ 不安をもたらす】伝達だ! Fra noi tremendo egli apparì!...私たちの間には それは 恐ろしく 思われた!… Qual di cometa sanguigno raggio彗星の 血の色をした光のように che di spavento la terra empì!それは なんと 大地を 恐怖で 満たした ことか! (si dileguano)(消え去る) |
denno contezza aver del messo. denno = devono。 |
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Andante 4/4 C major |
(Scena Ⅲ: Ghino e detto)(第2場: ギーノと 前の場の人たち) UBALDOウバルド Signor, giungi opportuno.貴君よ、君は ちょうどいい時に 来ている。 GHINOギーノ Il mio sospetto私の疑いは forse?...おそらく?… UBALDOウバルド Divien certezza.確かさに なっている。 Sorpresi un foglio.私は 手紙を 現場で取り押さえた【≒ 配達途中の手紙を 奪った】。 GHINOギーノ Di tue cure, Ubaldo,君の配慮に、ウバルドよ、 premio condegno avrai.君は 見合った報酬を 受け取るだろう。 |
シェーナ。 Sorpresi un foglio. この sorprendere は 現場で取り押さえる,不意に捕まえる の意味。ここでは intercettare 途中で奪う の同義。 |
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Larghetto 4/4 C major |
legge読む 《Quando sepolto隠される 【↓】時 fia nel silenzio della notte il mondo,天地が 夜の静寂の中に【隠される時】、 inosservato per la via del parco気付かれないように 庭園の道を 通って a te verrò: l'assenza私は 君のところに 行こう: del tuo sposo abborrito a me concede君の 憎悪された夫の 【↑】不在は 私に 許す d'abbracciarti la gioia, e tal mercede君を抱擁する 喜びを、そして そのような報いが soffrir mi fa la vita.》私に 人生を 耐えさせている。」 |
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Moderato assai 4/4 C major |
Oh Pia mendace,ああ 嘘吐きのピーアめ、 ov'è il rigore, l'austera厳しさは どこにあるのか、厳格な virtude ov'è, che rampognar ti fea美徳は どこにあるのか、それは 君に 叱責させた l'amor di Ghino?ギーノの愛を? |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
Ah, sempre, o fatal donna,ああ、永久に、ああ 死に至らせる女よ、 separati ne avesse私たちを 遠ざけていたならば quella tremenda eredità degli avi,祖先の あの 凄まじい遺産が、 la vendetta, il furor,【すなわち 先祖代々の】復讐が、怒りが、 che tanto sventurato【↓】今 私は あまり 不幸では or non sarei, né vinto e laceratoないだろうに、打ち負かされも そして 引き裂かれも 【していないだろうに】 da rimorso infernal, d'un mio congiuntoひどい呵責によって、私の従兄の【= ネッロの】 la sposa amando!妻を 愛することで! UBALDOウバルド E che risolvi, o Ghino?それで 君は 何を 決心したのか、ああ ギーノよ? |
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Larghetto 4/4 C major |
GHINOギーノ Chiesi vederla... Ah, se repulse ardisci私は 彼女に 会うことを 求めた… ああ、もし 君が【= ピーアが】 厚かましくも 拒否を oppormi ancor, paventa...またも 私に する 【↑】ならば、 |
oppormi ancor, paventa... opporre は ob-(対の,逆の)+ porre 置く で、対抗手段を据える という意味。もし君が 厚かましくも 私に対して (対抗手段である)拒否を 構えるならば。 |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
Un detto mio ti perde... Ove trascorro,私の一言が 君を 破滅させる… 私は どこへと 限度を越しているのだ、 |
Un detto mio ti perde... Ove trascorro, trascorrere は 通って行く,通過する の意味だが、ここでは 限度を超す の意味。ピーアを破滅させるという考えが限度を越していることに気付き、我に返っている。 |
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Andante 4/4 C major |
ah, ne morrei da fera doglia oppresso...ああ、私は 残酷な苦痛に 圧迫されて 死にたいのだが… UBALDOウバルド E tanto l'ami ancor?それでは 君は 彼女を まだ それほどに 愛しているのか? GHINOギーノ Più di me stesso.私自身よりも もっと。 |
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Larghetto 9/8 B-flat major |
Non può dirti la parola私は 君に 言葉を 言うことが できない、 qual desio m'incalza e punge...どのような欲求が 私を 休む暇なく追い立てて そして 駆り立てているのか… La speranza che s'invola希望は それは 消え去っている nuove fiamme al foco aggiunge.新たな炎を 熱情に 付け加えている。 Pia m'abborre, Pia mi fugge...ピーアは 私を 憎悪し、ピーアは 私を 避けている。 ma non fugge dal mio cor.しかし 彼女は 私の心から 逃げ【ることはでき】ない。 Ah! l'incendio che mi struggeああ! 火災【≒ 激情】は それは 私を 苦しめている è delirio, e non amor!狂乱だ、そして 愛ではない! |
緩(カンタービレ) / 急(カバレッタ)の二部構成のカヴァティーナ。 緩(カンタービレ) è delirio, e non amor! e non amor! は、繰り返し歌われる時には non è amor! になる。 |
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Allegro 4/4 B-flat major |
(Scena Ⅳ: Bice e detti)(第4場: ビーチェと 前の場の人たち) GHINOギーノ Ebben?それで? BICEビーチェ Venir davanti a lei彼女の前に来ることは più non ti lice.もう 君には 許されていない。 GHINOギーノ Chi a me lo vieta?誰が そのことを【= ギーノが ピーアに 会うことを】 私に 禁じたのか? BICEビーチェ Pia.ピーアが。 GHINOギーノ La cagione?原因は? BICEビーチェ Saper la dei!...君は それを【= 原因を】 知っているはずだ!… E Nello, anch'egli potria!...そして ネッロは、彼も また 【原因を 知っている】 かもしれない!… GHINOギーノ T'acqueta.落ち着きなさい【≒ 黙りなさい】。 Troppo dicesti!君は あまりにも多く 言った【≒ 言葉が 過ぎる】! BICEビーチェ Nel mio linguaggio私の言葉で ella ti parla: pensavi, e trema.彼女は 君に 言っている: それについて 考えなさい、そして 震えなさい と。 Mai piu dinanzi a lei.もう二度と 彼女の前に。 parte去る |
テンポ・ディ・メッゾ(中間部)。 |
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Allegro 4/4 B-flat major |
UBALDOウバルド (a Ghino)(ギーノに) Muto rimani a tant'oltraggio!あれほどの侮辱に 君は 黙ったままでいる! GHINOギーノ Non ha favella un'ira estrema.甚だしい怒りは 話す能力を 持たなかった。 (dopo un momento di riflessione rende il foglio ad Ubaldo)(沈思の一瞬の後 ウバルドに 手渡す) Rechi all'infida ignoto messo知られていない使者が 不実な女に 運ぶように quel foglio...この手紙を… UBALDOウバルド Intendo: riposa in me.私は 了解する: 私を 当てにしなさい【≒ 私を 信頼しなさい】。 GHINOギーノ Al campo io volo... e Nello, ei stesso私は 戦場に 飛んで行く… そして ネッロが、彼自身が udrà qual onta costei gli fé.聞くだろう どのような恥辱を あの女が 彼に したのかを。 |
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Moderato 4/4 B-flat major |
Mi volesti sventurato?君は【= ピーアは】 私が 不幸であることを 望んだのか? sventurata sarai meco...君は 私と一緒に 不幸に なるだろう… i miei pianti avranno un eco,私の涙は 反響を持つだろう【≒ 私の涙は 跳ね返るだろう】、 il mio duol vendetta avrà.私のの苦悩は 復讐を 獲得するだろう。 O mio core, o cor sprezzato,ああ 私の心よ、ああ 侮蔑された心よ、 gemi indarno in questo petto:この胸の中で 虚しく 呻きなさい: dei bandir qualunque affettoおまえは どんな感情でも 追放しなくてはならない che somigli alla pietà.それは 哀れみのように見える【≒ おまえは 哀れみのように思われる いかなる感情も 追い払わねばならない 】。 |
急(カバレッタ)。 |
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Poco più 4/4 B-flat major |
UBALDOウバルド Sì, tu fosti provocato...そうだ、君は 挑発された… saria stolta la pietà.哀れみは 愚かだろう。 GHINOギーノ Ah!ああ! |
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(Ⅰ Tempo) 4/4 B-flat major |
Mi volesti sventurato?君は【= ピーアは】 私が 不幸であることを 望んだのか? sventurata sarai meco...君は 私と一緒に 不幸に なるだろう… i miei pianti avranno un eco,私の涙は 反響を持つだろう【≒ 私の涙は 跳ね返るだろう】、 il mio duol vendetta avrà.私のの苦悩は 復讐を 獲得するだろう。 O mio core, o cor sprezzato,ああ 私の心よ、ああ 侮蔑された心よ、 gemi indarno in questo petto:この胸の中で 虚しく 呻きなさい: dei bandir qualunque affettoおまえは どんな感情でも 追放しなくてはならない che somigli alla pietà.それは 哀れみのように見える【≒ おまえは 哀れみのように思われる いかなる感情も 追い払わねばならない 】。 UBALDOウバルド Sì, saria stolta la pietà.そうだ、哀れみは 愚かだろう。 (Partono da opposta via)(反対の道を通って 去る) |
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[N. 2] Coro, Scena e Cavatina Pia Pia Coro |
Andantino 4/4 F major |
(Appartamenti di Pia. Due porte laterali: quella a destra mena alla stanza da letto: altra porta nel fondo, dietro la quale un verone, che risponde sul giardino)(ピーアの居所。二つの 側面の扉: 右のそれは【= 右の側面の扉は】 寝室に 連れて行く【≒ 通じている】: 奥に 別の扉、それの向こうには 露台、それは庭園の上に 面している) (Scena [Ⅴ]: Pia, Bice e Damigelle)(第[5]場: ピーア、ビーチェと 侍女たち) BICE E CORO DI DONNEビーチェ と 婦人たちの合唱 (invitando la Pia a sedere presso il verone)(ピーアを 露台の傍に 座るよう 促して) Qui posa il fianco. È vividaここに 腰を 下ろしなさい。生気を与えてくれる quest'aura del mattino,この 朝の微風は、 imbalsamata è l'aura微風は 芳しい che muove dal giardino:それは 庭園から 進んでいる【≒ 庭園から 吹いて来る 微風は 芳しい】: di vaghi fior smaltato優美な花々で 色とりどりに飾られた ve' come ride il prato,草原が【≒ 庭園が】 どれほど 煌めいているか 見なさい、 qui tutto spira e parlaここでは すべてが 表している そして 語っている celeste voluttà...天上の喜びを… Pia... (Non ode!)ピーアよ… (彼女は 聞いていない!) Ah, qui posa il fianco. È vividaああ、ここに 腰を 下ろしなさい。生気を与えてくれる quest'aura del mattino,この 朝の微風は、 imbalsamata è l'aura微風は 芳しい che muove dal giardino:それは 庭園から 進んでいる【≒ 庭園から 吹いて来る 微風は 芳しい】: di vaghi fior smaltato優美な花々で 色とりどりに飾られた ve' come ride il prato,草原が【≒ 庭園が】 どれほど 煌めいているか 見なさい、 qui tutto spira e parlaここでは すべてが 表している そして 語っている celeste voluttà...天上の喜びを… (Non ode! A sollevarla(彼女は 聞いていない! 彼女を 慰めるための uman poter non v'ha.)人の力は ない。) |
合唱、シェーナとピーアのカヴァティーナ。 合唱。 Qui posa il fianco. È vivida この fianco は複数形 fianchi で 腰、尻 の意味になるが、ここでは単数形でその意味で用いられていると理解した。 qui tutto spira e parla ここでの spirarer は他動詞 表す。 |
(Recitativo) 4/4 (C major) |
PIAピーア (sorgendo smaniosa)(動揺を引き起こして 立ち上がって) A voi son grata... ma non è quest'alma私は 君たちに 感謝している… しかし この魂は più di gioia capace.もう 喜びの 能力が 【↑】ない【≒ 喜ぶことが できない】。 BICEビーチェ Misera!気の毒な女だ! PIAピーア In cor se mi leggessi, o Bice,もし 君が 私の心の中を 読む【ことができる】ならば、ああ ビーチェよ、 del mio stato infelice私の 不幸な状態の【心の中を】 maggior pietade avresti!...君は より大きな 哀れみを 抱くことだろう!… (Incertezza crudel!... Giunger dovea(残酷な 不確かさだ! 届くはずだった pria del giorno l'avviso...昼の光の前に【≒ 夜が明ける前に】 報せが… Al suo fuggir, compro dall'oro, è forse彼の逃亡に、【それを】 私は 金銭によって 買収している、ことによると un ostacolo insorto?...妨害が 発生したのか?… Della torre il custode塔の守衛が potria con empia frode邪悪な詐害で tradirmi?... Ah no, che di Rodrigo ei stesso私を 裏切る 【↑】可能性があるかもしれないのか? ああ いいや、彼自身が ロドリーゴの mi fé l'arcana prigionia palese...秘密の監禁状態を 私に 明らかに させた 【≒ 暴露した】 【↑】から… eppur, donde l'indugio?... Ah, ch'io mi perdo!しかし、どうして 遅滞が?… ああ、私が 頭が混乱しているとは! E fra tante dubbiezze, in cui smarritaそして たくさんの疑惑の中で、その中で 見失われている è la ragion nel core,いる 心の理性が、 certo, ah certo soltanto è il mio dolore!)確実だ、ああ ただ 私の苦悩だけが 確実だ!) |
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Larghetto 2/4 A-flat major |
O tu che desti il fulmine,ああ 君よ その者は 雷を 引き起こす、 che al nembo il fren disciogli,その者は 黒雲の抑制を 解放する【≒ 黒雲に 自由を 許す】、 le mie dolenti lagrime私の 苦しんでいる 涙を in tua pietade accogli...君の哀れみの中に 受け入れなさい… Quell'innocente vittimaあの 罪のない犠牲者を salva, e conduci a me.救いなさい、そして 私のところに つれて来なさい。 BICE E COROビーチェ と 合唱 (Geme tuttor la misera!...(哀れな女は ずっと 呻いている!… PIAピーア Ah, tu non puoi respingereああ、君は 拒否することは できない、 BICE E COROビーチェ と 合唱 speme per lei non v'è.彼女には 希望が ない。 chi fida in te, gran Dio...君に 忠実な者を、偉大な神よ… Il voto, che fra i gemiti祈りは、それを 呻き声の中で al tuo gran soglio invio,君の 偉大な玉座に 私が 送っている、 è puro come gli angeli【祈りは】 天使たちのように 清らかだ che stanno in ciel con te.)その者たちは 天で 君と共に いる。) BICE E COROビーチェ と 合唱 speme per lei non v'è.)彼女には 希望が ない。) |
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Allegro 4/4 A-flat major |
(Scena [Ⅵ]: Lamberto e dette)(第[6]場: ランベルトと 前の場の女たち) LAMBERTOランベルト (traendola in disparte)(彼女を 傍らに 引き寄せて) Pia...ピーアよ… PIAピーア Lamberto... che fu?... smarrito in voltoランベルトよ… 何が あったのか? 顔に 狼狽している sei, Lamberto!...君は【≒ 君の顔は 狼狽している】 LAMBERTOランベルト (sottovoce)(小声で) M'odi.私【の言うこと】を 聞きなさい。 |
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Poco meno 4/4 A-flat major |
PIAピーア Ascolto.私は 聞く。 LAMBERTOランベルト sommesso【心を】掻き乱して Fra le querce... accanto al rio...ナラの林の間で… 小川の すぐ傍に… ove il parco è più solingo,そこでは 庭園は より 人気 ひとけ がない【≒ その辺りは 庭園でも より 人気がない】、 accostarsi a me vegg'io私は 見る 私に 近付くのを un uom tacito e guardingo...物静かな そして 用心深い 男が… Ei gettandomi dappresso彼は 私の 近くに 投げて questo foglio, in tuon sommessoこの書類を、抑えた音で【≒ 静かに】 |
accostarsi a me vegg'io ここからしばらくランベルトは現在形を用いて過去の話をしている(歴史的現在)。訳は現在形のままにしている。 |
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(Poco meno) 4/4 B-flat major |
di recarlo a te mi dice,それを 君に 持って行くよう 私に 言う、 quindi fugge al par del lampo.それから 稲光のように 急いで立ち去る。 PIAピーア prende il foglio e l'apre手紙を受け取り そして それを開封する |
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Allegro 4/4 B-flat major |
(Le sue note!...(彼の書付だ!… Legge con angietà苦しい息遣いをもって 読む Me felice!...幸せな私!… Tolto è omai qualunque inciampo!...いまや どの障害物でも 取り除かれた【≒ あらゆる障害が なくなった】!… |
(Le sue note!... nota は メモ,覚書 などの意味だが、ここでは 短い手紙 を意味している。書付 で訳す。 |
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Allegro 4/4 G major |
LAMBERTOランベルト (osservando il cambiamento del volto di lei)(彼女の顔の変化に 気付いて) (Il dolore a lei dà tregua!(苦悩が 彼女に 中断を 与えている! che la fronte a Pia velò!)それは【= 苦悩は】 ピーアの顔を 覆っていた!) BICE E COROビーチェ と 合唱 (L'atra nube si dilegua(暗い雲は 消え去っている che la fronte a Pia velò!)それは【= 暗い雲は】 ピーアの顔を 覆っていた!) PIAピーア Oh gioia! Oh ciel, qual gioia!ああ 喜びだ! ああ 天よ、なんという喜びが! Qui fra poco il rivedrò!...ここで もうすぐ 私は 彼に 再び会えるだろう!… |
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Moderato 4/4 G major |
Di pura gioia in estasi純粋な喜びの 陶酔に è l'alma mia rapita!...私の魂は 恍惚としている!… A lui dirò: sei libero, ah,私は 彼に 言おう: 君は 自由だ と、ああ、 io ti servai la vita...私が 君の命を 取っておいた【≒ 守った】 と… E amplessi, e baci, e palpitiそして 抱擁を、そして キスを、そして 心臓拍動を confonderemo intanto...そうしている間に 【私たちは】 混ぜ合わせよう【≒ 一つに合わせよう】… E verserem quel piantoそして あの涙を 流そう、 che di dolor non è!それは 悲しみの ではない【≒ 悲しみの涙ではない 【喜びの】涙を 流そう】! |
Di pura gioia in estasi / è l'alma mia rapita!... 伊和辞典には例文で essere rapito in estasi 恍惚として 心を奪われる と載っている。 |
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Allegro 4/4 G major |
BICE, LAMBERTO E COROビーチェ、ランベルト と 合唱 (Ella cessò dal pianto!(彼女は 涙を 中止した【≒ 泣くのをやめた】! Al ciel ne sia mercé, sì.そのことについて 天に 感謝が あるように【≒ 天に 感謝しよう】、そうだ。 PIAピーア Ah!ああ! |
(Ella cessò dal pianto! ここでの cessare da - は desistere da - と同義、―を中止する,中断する,やめる。 |
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Moderato 4/4 G major |
Di pura gioia in estasi純粋な喜びの 陶酔に è l'alma mia rapita!...私の魂は 恍惚としている!… A lui dirò: sei libero, ah,私は 彼に 言おう: 君は 自由だ と、ああ、 io ti servai la vita...私が 君の命を 取っておいた【≒ 守った】 と… E amplessi, e baci, e palpitiそして 抱擁を、そして キスを、そして 心臓拍動を confonderemo intanto...そうしている間に 【私たちは】 混ぜ合わせよう【≒ 一つに合わせよう】… E verserem quel piantoそして あの涙を 流そう、 che di dolor non è!それは 悲しみの ではない【≒ 悲しみの涙ではない 【喜びの】涙を 流そう】! BICE, LAMBERTO E COROビーチェ、ランベルト と 合唱 Sì, ne sia mercé!)そうだ、そのことについて 感謝が あるように! (Pia si ritira a destra; gli altri dall'opposto lato)(ピーアは 右から 退場する; 他の者たちは 反対【≒ 左】から) |
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[N. 3] Scena e Duetto Ghino e Nello Ghino Nello |
Larghetto 4/4 C major |
Interno del Padiglione di Nelloネッロの大天幕の内側 (Scena [Ⅶ]: Nello)(第[7]場: ネッロ) |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
comparisce Nelloネッロが 現れる NELLOネッロ Giurai svenarlo, ch'egli ardì col sangue私は 彼を【= ロドリーゴを】 出血多量で死なせると 誓った、彼が 厚かましくも de' miei congiunti violar la pace私の親族たちの 【↑】血で 和平に 背いた 【↑】からだ da noi giurata, quando a Pia mi strinse私たちによって 誓約された【和平に】、私を ピーアに 結んだ時に sacro legame. Or della morte il ferro聖なる絆が。今や 死の剣が gli sta sul capo..., e gemo!彼の頭上に 据えられている…、そして 私は 呻いている! Almen la sventurataともかくも 不幸な Pia, che l'ama cotanto, il fine acerboピーアは、その者は 彼を それほどに 愛している、【↓】弟の 早過ぎる最期を non udrà del fratello...聞かないだろう… |
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(a tempo) 4/4 (C major) |
alcun s'avanza...誰かが 近づいて来る… (Scena [Ⅷ]: Ghino, e detto)(第8場: ギーノ、そして 前の場の男) GHINOギーノ Nello?ネッロか? NELLOネッロ Ghino!... tu qui!ギーノか!… 君が ここに! GHINOギーノ Mi tragge私を 引っ張っている alta cagion.大きな動機が。 NELLOネッロ Sembri agitato!...君は 落ち着かない ように見える!… GHINOギーノ È ver...それは 真実だ… |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
A palesarti orribile mistero,恐ろしい秘密を 君に 明かしに、 a trafiggerti il petto君の胸を 刺し貫きに io venni.私は 来た。 NELLOネッロ Ogni tuo dettoどの 君の言葉も mi fa tremar!私を 震えさせる! GHINOギーノ Tu n'hai ben donde!君は そのことについて 動機を 持っている【≒ もっともな理由が ある】 |
Tu n'hai ben donde! averne donde もっともな理由がある。donde は副詞だが、しばしば名詞的に用いられる。 |
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Andante 4/4 (C major) |
Pia...ピーアが… NELLOネッロ Qual nome proferisti!... e qual mi turbaなんという名前を 君は 口に出したのだ!… そして なんという nero sospetto!... No! Spirto d'averno黒い疑惑が 【↑】私 【の心】を 掻き乱しているのだ!… いいや! 地獄の霊が lo desta in me...それを【= 黒い疑惑を】 私の中に 呼び覚ましている! |
調性は形式的。 | |
Andante 4/4 (C major) |
si getta fra le braccia di Ghinoギーノの両腕の間に 身を投げる Soccorri,救いの手を差し伸べなさい、 al tuo fratello, dimmi che fida,君の兄に【= 君の従兄に】、私に 言いなさい 彼女は 誠実だ と、 di' che fida è la consorte...いいなさい 配偶者は 誠実だと… Sgombra, deh! sgombra il mio spavento estremo.一掃しなさい、お願いだから! 私の 甚だしい不安を 一掃しなさい! GHINOギーノ gli dà un cupo sguardo e tace彼に 陰鬱な視線を 与えて、それから 黙り込む NELLOネッロ Oh silenzio funesto!... Io gelo!... io tremo!ああ 死をもたらす静寂だ!… 私は 震えている! |
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Moderato 4/4 A-flat major |
represso抑制されて 【≒ 興奮を 抑えて】 È men fero, è meno orrendoより少なく 残酷だ、より少なく 恐ろしい il silenzio della tomba!墓の静寂は【≒ 墓の静けさは これほど残酷でも、恐ろしくもない】! GHINOギーノ Il mio dir fia più tremendo.私の言うことは さらに 恐ろしいだろう。 NELLOネッロ Gel di morte in cor mi piomba!死の極寒が 私の心に 突然襲い掛かっている! GHINOギーノ Infelice!不幸な人だ! NELLOネッロ Omai favella.今こそ 話しなさい。 GHINOギーノ Sei tradito!君は 裏切られた! NELLOネッロ Ah, Il ver dicesti?ああ、君は 真実を 話したのか? GHINOギーノ Ah..., purtroppo...ああ…、残念ながら… NELLOネッロ (Io fremo!) Ed ella?...(私は 震える) それで 彼女は? GHINOギーノ (esitante)(ためらって) Ella...彼女は… NELLOネッロ O Ghino, a che t'arresti?ああ ギーノよ、何のために 君は 【話すのを】止めている【≒ どうして 君は 話を 中断しているのか】? GHINOギーノ Ella è infida.彼女は 不実だ。 NELLOネッロ (tremante d'ira)(怒りに 震えて) L'onor mio?...私の名誉は?… GHINOギーノ D'atra macchia ricoprì!彼女は 【それを = 君の名誉を】 黒い汚れで 覆った! NELLOネッロ E il tuo fulmineそれでも おまえの【= 次行 偉大な神の】雷は、 |
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Più allegro 4/4 A-flat major |
gran Dio,偉大な神よ、 la spergiura non colpì?虚偽の宣誓をした女を 打たなかったのか? (cade sur uno scabello)(椅子に 倒れ込む) L'onor!名誉は! |
(cade sur uno scabello) scabello は、背もたれも肘掛けもない簡素な椅子。英語の stool スツール。 |
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Larghetto 6/8 C major |
(sorgendo, e con tutta l'effusione del dolore)(立ち上がって、そして すべての 悲しみの迸りと ともに) Parea celeste spirito彼女は 天界の精霊のように 見えた ascoso in uman velo!...人間の 覆いに 隠された【≒ 彼女は 人の姿をした 天の聖霊のように 見えた】!… per me quel riso angelico私に対して、あの 天使のような微笑みは schiudeva in terra il cielo!...地上に 天国を 開いた!… Il disinganno è giunto!誤りに気付くことが 到達した【≒ 間違っていたことに 気が付いた】! tutto distrugge un punto!...一瞬が すべてを 消滅させる! Il viver mio di lagrime私の人生は 涙の sorgente omai si fé.泉に 今や なった。 GHINOギーノ (Seppi nel cor trasfondergli(私は 彼の心の中に 注ぐことができた parte del mio veleno:私の毒の 一部を: le mie gelose furie私の嫉妬深い 激高は squarciano pur quel seno.あの胸もまた 引き裂いている。 È già scoccato il dardo...矢は 既に 射られた… Fora il pentirsi or tardo...今では 後悔することは 遅いだろう【≒ 今頃 後悔しても 遅いだろう】… Gioia dell'alme perfide悪意のある魂の 喜びを io già ti sento in me.)私は おまえを【= 悪意のある魂の 喜びを】 既に 私の中に 感じている。) NELLOネッロ Ah, ohimè.ああ、哀れな。 Perfida! l'onor...裏切者の女め! 名誉は… Il viver mio di lagrime私の人生は 涙の sorgente omai si fé.泉に 今や なった。 |
squarciano pur quel seno. pure には様々な意味があるが、ここでは ギーノの胸と同様に ネッロの胸もまた と理解し、―もまた で採った。 |
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Allegro giusto 4/4 A-flat major |
NELLOネッロ (Come colpito da rapido pensiero afferra Ghino per la destra, affissandolo acutamente, in guisa di chi cerca per gli occhi scrutare l'animo altrui.)(瞬時の考えに 打たれたかのように【≒ 突然の思いに 襲われたかのように】 ギーノの右手を 掴み、彼を 鋭く 凝視して 、他の人の魂を詮索しようとする者のように) Tu mentisti: un tanto eccesso,君は 嘘を吐いた: それほどの 行き過ぎが no, quel cor non ha macchiato.いいや、あの心を 汚すことはなかった。 GHINOギーノ Testimon sarai tu stesso君自身が 証人に【≒ 目撃者に】に なるだろう dell'oltraggio a te recato.君に もたらされた 侮辱の【証人に ≒ 目撃者に】。 Come il ciel di luce privo光を欠いた 空が chiami al sonno ed al riposo,眠りに そして 休息に 呼ぶ【≒ 誘う】とすぐに、 alla Pia verrà furtivoピーアのもとに 人目を忍んで 来るだろう chi t'offende...君を 侮辱する者が… |
Testimon sarai tu stesso この testimon は testimone のトロンカメント(語尾母音削除)。非常に近い意味を持つ testimonio に比べると testimone の方が(法律用語として用いられるほどに)正式。testimone oculare 目による証人 で 目撃者 の意味になり、ここではそのように用いられている。 Come il ciel di luce privo この come は ―するとすぐ,―するや否や |
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Più mosso 4/4 A-flat major |
NELLOネッロ (con estremo furore)(甚だしい怒りをもって) Andiam...行こう… GHINOギーノ Testimon sarai tu stesso君自身が 証人に なるだろう NELLOネッロ Fui sposo!私は 夫だった【≒ 私は もはや 夫ではない】! |
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Più allegro 4/4 A-flat major |
Sol, che tardi... il corso affretta...太陽よ、それは 遅れている… 運行を 急ぎなさい… cedi all'ombre...陰に【≒ 夜に】 場所を譲りなさい… GHINOギーノ Ah! m'odi ancor...ああ! もう一度 私【の言うこと】を 聞きなさい… NELLOネッロ Più non odo...私は もう 聞いていない… GHINOギーノ Almen...せめて… NELLOネッロ Vendetta...復讐だ… GHINOギーノ Ah, Pria...ああ その前に… NELLOネッロ Son cieco di furor.私は 怒りに 盲目になっている。 |
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Allegretto 3/4 A-flat major |
(qual uomo privo affatto di ragione)(完全に 理性を失った人のように) Del ciel che non punisce天の それは 罰しない emenderò l'errore...過ちを 私は 修正しよう【≒ 罰することのない 天の過ちを 私は 正そう】… Già il mio pugnal ferisce,もはや 私の剣は 傷つけている【≒ 私の剣は すぐにでも 傷を負わせることが できる】、 de' rei già squarcia il core...もはや 邪悪な者たちの心臓を 突き破っている… Le palpitanti vittime胸がどきどきしている【≒ 心臓が 激しく 脈打っている】犠牲者を io premo già col piè.私は もはや 足で 押し潰している。 GHINOギーノ (Sei pago amor furente?(おまえは 満足しているのか 死をもたらす愛の神よ? S'appresta atroce scempio.残忍な虐殺が 準備されている、 Le mie virtudi hai spente,私の徳を おまえが 消した、 m'hai reso un vile, un empio...おまえが 私を 卑劣な者に、邪悪な者に した… Gioisci, esulta, o demone,喜びなさい、歓喜しなさい、ああデーモンよ、 altrui perdesti e me!おまえは 他の人を 破滅させた そして 私を! |
de' rei già squarcia il core... rei 邪悪な者たち が複数形であるのに core = cuore 心臓 が単数形なのは合わないが、これは韻を踏むためで、実質的には複数形を意味していると理解した。 |
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Più allegro 3/4 A-flat major |
NELLOネッロ Parea celeste spirito.彼女は 天界の精霊のように 見えた。 GHINOギーノ Godi, o demone.喜びなさい、ああデーモンよ。 |
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[Primo tempo] 3/4 A-flat major |
NELLOネッロ Del ciel che non punisce天の それは 罰しない emenderò l'errore...過ちを 私は 修正しよう【≒ 罰することのない 天の過ちを 私は 正そう】… Già il mio pugnal ferisce,もはや 私の剣は 傷つけている【≒ 私の剣は すぐにでも 傷を負わせることが できる】、 de' rei già squarcia il core...もはや 邪悪な者たちの心臓を 突き破っている… Le palpitanti vittime胸がどきどきしている【≒ 心臓が 激しく 脈打っている】犠牲者を io premo già col piè.私は もはや 足で 押し潰している。 GHINOギーノ (Sei pago amor furente?(おまえは 満足しているのか 死をもたらす愛の神よ? S'appresta atroce scempio.残忍な虐殺が 準備されている、 Le mie virtudi hai spente,私の徳を おまえが 消した、 m'hai reso un vile, un empio...おまえが 私を 卑劣な者に、邪悪な者に した… Gioisci, esulta, o demone,喜びなさい、歓喜しなさい、ああデーモンよ、 altrui perdesti e me!)おまえは 他の人を 破滅させた そして 私を! |
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Più mosso 3/4 A-flat major |
NELLOネッロ io premo già col piè.私は もはや 足で 押し潰している。 (esce furibondo seco traendo Ghino per un braccio)(怒り狂って 出る 彼と共に ギーノの片腕を 引っ張って) GHINOギーノ altrui perdesti e me!)おまえは 他の人を 破滅させた そして 私を!) |
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[N. 4] Scena e Cavatina Rodrigo Rodrigo Carceriere |
Maestoso 4/4 c minor |
Orrido sotterraneo, appena rischiarato da una tetra lampada: in fondo un rastello di ferro, dietro cui passeggia un uomo d'armi恐怖を催させる地下室、、薄暗いランプによって わずかに照らされている: 奥に 鉄の格子戸、その背後では 一人の兵士が 歩いている (Scena [Ⅸ]: Rodrigo)(第[9]場: ロドリーゴ) |
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(Recitativo) 4/4 (c minor) |
RODRIGOロドリーゴ In questa de' viventi orrida tomba,この 生きている者の 恐ろしい墓では、 ove per sempre il raggioそこでは 常に 【↓】太陽の光線は tace del giorno, il suon di fioca squilla黙り込んでいる、【↓】ただ かすかな鐘の音の響き giunge soltanto... Ah! l'ora è questaが 達する だけだ… ああ これは 時だ arbitra di mia sorte!私の運命の 決定を下す者だ 【≒ これは 私の運命を決定する 時だ】! Fra speranza e timor, fra vita e morte希望と恐れの間で、生と死の間で mi balza il cor!... Pavento私の心臓は 飛び跳ねている【≒ 激しく 鼓動している】!… 私は 恐れているのか forse l'estremo fato?ことによると 最後の宿命を【≒ 死を】? No; ma un pensiero... Ah! pende dalla miaいいや; だが 心配が… ああ! 私のもの【= 私の命】に un'altra vita!... Oh dolce suora! oh Pia!...別の命が 掛かっている!… ああ 優しい姉よ! ああ ピーアよ!… |
giunge soltanto... Ah! l'ora è questa / arbitra di mia sorte! arbitro / arbitra は名詞で、しかし questa arbitra と繋げると意味がおかしくなるので、l'ora と arbitra が同格と理解した。 |
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Cantabile 12/8 E major |
Mille volte sul campo d'onore何度も 名誉の戦場で i perigli più crudi sfidai,最も苛酷な 危険に 私は 勇敢に立ち向かった、 mille volte la morte sprezzai;何度も 私は 死を ものともしなかった; or la temo, e la temo per te!今 私は それを 恐れている、そして 君のために 私は それを恐れている! S'io cadessi, al pietoso tuo coreもし 私が 死ぬならば、君の 哀れみ深い心に scenderebbe un acuto pugnale;鋭い短剣が 下りるだろう: e dischiusa la tomba feraleそして 死の墓は 開かれ non sarebbe soltanto per me!ないだろう 私のためだけには【≒ 死の墓は 私のためだけでなく 開かれるだろう】! |
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Moderato 4/4 E major |
(Scena [Ⅹ]: Custode, e detto)(第[10]場: 守衛、そして 前の場の男) CARCERIERE看守 (Entra il carceriere; parla a Tolomei sommessamente intanto che depone sopra una tavola la brocca d'acqua ed il pane)(看守がが入る: 彼は 低い声で トロメイ【= ロドリーゴ】に 話し掛ける 彼が テーブルの上に 水の水差しと パンを 下に置ている 間に) |
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Recitativo 4/4 (E major) |
Omai l'istante è presso今や 瞬間は 近くだ del tuo fuggir. M'ascolta:君の逃走の。私【の言うこと】を 聞きなさい。 |
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Larghetto a tempo, ma a guisa di recitativo 4/4 E major |
del custodito ingresso監視された 入り口の cangiata fia la scolta;見張りが 変えられるだろう; quella che dee succedere後任となるはずのところの それは【= 見張りは】 compra è da me. Fa' cor...私によって 買収されている。勇気を 出しなさい… (parte)(去る) |
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Poco più allegro 4/4 E major |
RODRIGOロドリーゴ Il sen mi scuote un palpito興奮が 私の胸を 揺すっている ignoto a me finor.今まで 私には 未知の【≒ これまで 感じたことのない 興奮が 私の心を 揺さ振っている】。 vede la scolta che s'avanza nel fondo e cambia la guardia, e riparte見張りを 見る その者は 奥から 近づき そして 番人を 変える、そして 再び去る Ah!ああ! |
Il sen mi scuote un palpito この palpito は単数形なので、心臓拍動 ではなく 感動,興奮。 |
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Primo tempo 4/4 E major |
(Oh Dio, che palpito!)(ああ 神よ、なんという興奮だ! ) la scolta riparte dopo aver dato alle guardie la parola d'ordine見張りは 番人に 命令の言葉を与えた後に 再び去る |
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Allegro mosso 4/4 E major |
la scolta è sparita見張りは 立ち去った |
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Allegro vivace 3/4 E major |
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Poco meno 3/4 E major |
(sfavillante di gioia)(喜びに 光り輝いて) L'astro che regge i miei destini星が それは 私の運命を 支配している sparge d'intorno nuovo fulgor!新たな輝きを 周囲に撒き散らしている! Impallidite, o Ghibellini,青ざめなさい、ああ ギベリン党員たちめ、 io riedo al campo... io vivo ancor!私は 戦場に 戻る… 私は まだ 生きている! Il sen mi scuote un palpito興奮が 私の胸を 揺すっている ignoto a me finor.今まで 私には 未知の【≒ これまで 感じたことのない 興奮が 私の心を 揺さ振っている】。 |
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Più allegro 3/4 E major |
Oh dolce suora, oh Piaああ 優しい姉よ、ああ ピーアよ io ti vedrò, suola mia ti vedrò.私は 君に 会うだろう、私の姉に 会うだろう。 Tremate!震えなさい! |
Tremate! 命令形2人称複数形なので、ギベリン党員たちに向かって言っている。 |
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3/4 E major |
(sfavillante di gioia)(喜びに 光り輝いて) L'astro che regge i miei destini星が それは 私の運命を 支配している sparge d'intorno nuovo fulgor!新たな輝きを 周囲に撒き散らしている! Impallidite, o Ghibellini,青ざめなさい、ああ ギベリン党員たちめ、 io riedo al campo... io vivo ancor!私は 戦場に 戻る… 私は まだ 生きている! |
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Più allegro 3/4 E major |
sì, vivo ancorそうだ、私は まだ 生きている riedo al campo e vivo ancor!私は 戦場に 戻る そして 私は まだ 生きている! alla porta del cancello vi è il carceriere; gli dà un mantello e fuggono insieme柵の鉄格子の扉のところに 看守がいる; 彼は 彼に マントを与え、一緒に 急いで立ち去る) |
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Finale Ⅰ, seconda versione Pia Bice Ghino Ubaldo Nello Lamberto Coro |
Moderato mosso 4/4 C major |
(Appartamento di Pia)(ピーアの居室) (Scena [Ⅹ]: Ubaldo ed armigeri dalla sinistra)(第[10]場) |
この第1幕フィナーレは、1837年7月31日からのセニガッリアでの上演に際してドニゼッティが全面的に書き改めたものに、さらにナポリでの改訂を反映させたもの。なお場数が初演稿から繋がっていない(セニガッリアでの上演では第4番(と第2幕の第6番)のロドリーゴのアリアがカットされたため)が、ここでは楽譜通りで合わせていない。 |
(Recitativo) 4/4 (C major) |
UBALDOウバルド (al coro)(合唱に) Di Ghino il cenno udiste?君たちは ギーノの指示を 聞いたのか? ascosi fra le piante, ove la notte樹木の間に 隠れえ、そこは 夜が regna più densa e oscura,より濃く、より暗く 支配している、 cautamente vegliate:用心深く 見張りなさい: s'avanzerà l'indegno a queste porte...不適切な男が この門に 近付くだろう… accesso egl'abbia, uscirne a lui sia morte.彼が 入るがいい、そこから 出ることが 彼にとって 死であるように。 |
accesso egl'abbia, uscirne a lui sia morte. avere accesso = accedere 近付く,入る |
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Moderato non mosso 4/4 E-flat major |
UBALDO E COROウバルド と 合唱 Inoltriam fra l'ombre avvolti:闇の中に 包まれに 進もう: niun ci vegga, niun ci ascolti,一人も 私たちを 見ないように、一人も 私たちを 聞かないように、 della notte col favor夜の 援助と 共に【≒ 夜陰に 乗じて】 si tradisca il traditor.裏切者を 裏切ろう。 partono pel fondo; Ubaldo serra il verone e si ritira奥を通って 去る: ウバルドは 露台に 締める そして 退く |
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Andante 2/4 C major |
(Scena [ⅩⅠ]: Pia dalla stanza da letto: ella reca un doppiere che lascia sur una tavola)(第[11]場: ピーア 寝室から: 彼女は 二枝の燭台を 持って来る それを テーブルの上に 置く) |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
PIAピーア Tutto è silenzio! un mormorio sommessoすべてが 静寂だ! 低いささやきが【≒ 小声で ささやく声が】 udir mi parve... Inganno聞こえたように 私には 思われた… それは fu del pensier, che scorge思いの間違いだった【≒ 気のせいだった】、それは【= 思いは】 見付けている perigli ovunque!至る所に 危険を! |
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Larghetto 4/4 C major |
Il tenebroso velo闇の帳を stese la notte... incalza夜は 広げた… 差し迫っている l'ora, e il fratello...時が、そして 弟は… odesi battere leggermente la porta del verone露台の扉を 軽く叩くのが 聞こえる Ah, giunge il cor mi balza!ああ、彼が 来る 私の心臓は 飛び跳ねている【≒ 激しく 鼓動している】! chiude la porta a sinistra ed apre il verone左手の扉を閉めて そして 露台を 開ける |
Ah, giunge il cor mi balza! クリティカルエディションでは(つまり自筆総譜などでは) giunge il cor mi balza! と一続きになっている。一方でたとえば1837年9月9日からのルッカ、ジーリオ劇場での上演の際の出版台本では、Ah, giunse... il cor mi balza! と giunse と遠過去形を用い、かつ二つに切れている。これは後の多くの出版台本でも同様。ここではAh, giunge と il co が切れていると理解して訳した。 |
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Allegro agitato 4/4 d minor |
(Scena [ⅩⅡ]: Lamberto, e detti)(第[12]場: ランべルト、そして 前の場の人たち) LAMBERTOランベルト ansante息を切らして Ah! signora...ああ! 貴女よ… PIAピーア Tu... Lamberto!...君が… ランベルトよ!… deh! che fu?...ああ! 何が あったのか?… LAMBERTOランベルト Si tende al certo確実に 仕掛けられている qualche agguato...何らかの罠が… PIAピーア Che?なんと? LAMBERTOランベルト gente in armi武装した人々が vidi ascosa...隠されているのを 私は 見た… (indicando dalla parte de' giardini)(庭園の一角を 指し示して) PIAピーア Tu?君が? LAMBERTOランベルト Sì, io.そうだ、私が。 PIAピーア Ah,ああ、 disperata絶望して egli è perduto!彼は 破滅している! LAMBERTOランベルト Donna! il sangue fai gelarmi!婦人よ! 君は 私の血を 凍りつかせている! di'?... non oso... avresti tu potuto?...言いなさい?… 私は 思い切ってする… 君は することができたのか?… PIAピーア L'uom che attendo,人は その者を 私は 待っている、 LAMBERTOランベルト Ebben?それで? PIAピーア è mio fratello...私の弟だ… LAMBERTOランベルト Ciel!天よ! |
ansante 1837年、ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では nella massima agitazione 最大の動揺の中で |
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(Allegro agitato) 4/4 D major |
Egli!... oh ciel, che festi!...彼が!… ああ 天よ、君は 何を したのだ!… e Nello... ahi sciagura!...そして ネッロは… ああ 不運だ!… tardi apprendo... io potea...私は 遅く 知っている【≒ それを知るのが 遅過ぎた】… 私は できたのだが… PIAピーア Chi giunge?誰が 来ているのか? LAMBERTOランベルト È desso...彼だ… RODRIGOロドリーゴ Pia...ピーアよ… LAMBERTOランベルト corre a chiudere il cancello急いで 鉄格子を 締める |
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Adagio 4/4 D major |
PIAピーア Qual fulmine tremendo!...なんという 恐ろしい 雷だ!… LAMBERTOランベルト Respira: è salvo adesso.ほっとしなさい【≒ 安心しなさい】: すぐに 彼は 安全になる。 PIAピーア E fia ver?それで それは 本当だろうか? LAMBERTOランベルト Segreta via,秘密の通り道が、 donde il padre un dì fuggia...そこから 【ピーアたちの】父親が ある日 逃亡した… (si accosta alla parete in fondo e rimossa una parte della tappezzeria, scopre un uscio segreto)(奥の壁に 近付く そして 壁掛の一部を 取り除く、秘密の抜け道を 剥き出しにする) Mira.見なさい。 PIAピーア Ah, vieni al fin fra queste braccia...ああ、やっと この両腕の間に 来なさい… |
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Cantabile 12/8 E major |
Fra queste bracciaこの両腕の間に un momento, un solo istante.一時 ひととき、たった 一瞬 Il fratel stringendo al petto弟を 胸に 抱き締めて pianger debbo e palpitar!私は 泣かざるを えない そして 心臓がどきどきせ【ざるを えない】! RODRIGOロドリーゴ Tanto duolo... e tanto affettoたくさんの悲しみが… そして たくさんの情愛が mi costringe a lagrimar...私に 涙を流すことを 強いている… PIAピーア Ah!ああ! PIA E RODRIGOピーア と ロドリーゴ (sempre l'una in braccio dell'altro e tergendosi a vicenda le lagrime)(常に 一方が 他方の腕の中に【ずっと 腕を 取り合って】 そして 互いに 涙を 拭き合って) Ah, ci tolse orrenda guerraああ、恐ろしい戦争が 私たちから 奪った un fratello, il genitore!...兄を、父を!… cruda morte di dolore悲しみの 酷い死が poi la madre c'involò!...その次に 母を 私たちから 掠め取った!… Sventurati!... sulla terra不幸な者たちだ!… 地上では pianto eterno a noi restò!永遠の涙が 私たちに 残った! |
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Allegro 4/4 C major |
(Scena [ⅩⅣ]: i suddetti e Nello di dentro)(第[14]場: 上述の人たちと ネッロ 内部から【≒ 舞台裏で】 NELLOネッロ L'uscio dischiudi, o perfida.出入口を 開きなさい、ああ 不実な女よ。 LAMBERTOランベルト Nello...ネッロだ… RODRIGOロドリーゴ Colui?あの男なのか? PIAピーア (odonsi frequenti colpi sulla porta a sinistra)(左手の扉の上で たびたびの 叩く音が 聞こえる) Non senti?君は 聞いていないのか【≒ 君には 聞こえないか】? Va'...行きなさい… (Rodrigo, fremente di rabbia, pone la destra sull'elsa, ma vien trattenuto da Lamberto)(ロドリーゴは、怒り震えて、右手を 刀の柄 つか に置く、しかし ランベルトによって 押さえられる) NELLOネッロ Traditori...裏切者たちめ… PIAピーア Ahi, misera!...ああ、哀れな女だ!… Che indugi omai? che tenti...今 君は 何を 許しているのか? 君は 何を 試みているのか? RODRIGOロドリーゴ Egli osa provocarmi...彼は あえて 私を 挑発している… io voglio...私は 望んでいる… per aprire開けようとする PIAピーア Ah! tu vuoi farmiああ! 君は 望んでいるのか 私を spirar d'angoscia, o barbaro,不安で 死 【↑】なせることを、ああ 残酷な男よ、 e di terror...そして 恐怖で… |
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Più mosso 4/4 C major |
(Scena [ⅩⅤ]: Nello, Ghino e detti)(第[15]場): ネッロ、ギーノと 前の場の人たち (intanto, soccorsa da Lamberto, ha condotto Rodrigo presso l'uscio segreto)(そうしている間に、ランベルトによって援助されて、彼女は ロドリーゴを 秘密の出入口の近くに 連れて行った) NELLOネッロ Ch'io sveni私が 出血多量で死なせるように entrambi...二人とも… (prorompendo dalla porta spalancatasi con pugnale denudato)(抜き身の剣を持って 開け放たれた扉から 噴き出して【≒ 押し入って】) PIAピーア Ah, fuggi...ああ、逃げなさい… rovescia il doppiere (nel punto istesso che Nello entra)二枝の燭台を 引き倒す (ネッロが 入るのと 同じ瞬間に) LAMBERTOランベルト (piano a Rodrigo)(ロドリーゴに 小声で) Vieni...来なさい… NELLOネッロ Oh rabbia...ああ 怒りが… LAMBERTOランベルト di lei pietade...彼女に 哀れみを… (uscendo [con Rodrigo] per l'uscio segreto e tosto si richiude)([ロドリーゴと 共に] 出る 秘密の出入口を通って そして すぐさま 逃げ道から去り そして それは すぐに 再び閉まる) GHINOギーノ chiamando呼びながら Ubaldo? Ubaldo?ウバルドは? ウバルドは? |
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Più allegro 4/4 C major |
PIAピーア Sul cor mi piomba un gel!...凍り付くような寒さが 私の心に 突然襲い掛かっている (Scena [ⅩⅥ]: Servi con altri doppieri, Ubaldo, Familiari, Damigelle, Uomini d'armi. Bice e detti)(第[16]場: 召使いたち 別の二枝の燭台を持った、ウバルド、従者たち、侍女たち、武装した男たち。ビーチェと 前の場の人たち。) accorrono (familiari, damigelle,) soldati e servi con doppieri(従者たち、侍女たち、)兵士たち と 二枝の燭台を持った召使いたち UBALDO E CORO Fuggì quel vil!あの卑怯者は 逃亡した! NELLOネッロ Raggiungasi...追いつこう… UBALDOウバルド ([esce] pel fondo con gli uomini d'armi)([出る] 奥を 通って 兵士たちと共に) NELLOネッロ Mori...死になさい… (scagliandosi per uccidere la Pia)(ピーアを 殺すために 飛びかかる) GHINOギーノ T'arresta...止まりなさい… (disarmandolo con gli altri)(彼から 武器を取り上げて 他の者たちと共に) BICEビーチェ Oh ciel!ああ 天よ! PIAピーア Sposo...夫よ… NELLOネッロ Il pugnale...剣を… GHINOギーノ a Piaピーアに Deh scostati...お願いだから 【ネッロから】 離れていきなさい… PIAピーア sposo...夫よ… GHINOギーノ non vedi il suo furor?君は 彼の怒りを 見ていないのか【≒ 君には 彼の怒りが 見えないのか】? NELLOネッロ Il mio pugnal rendetemi...私の剣を 返しなさい。 PIAピーア Io muoio...私は 死ぬ… BICE, GHINO, NELLO E CORO DONNEビーチェ、ギーノ、ネッロ と 合唱 婦人たち Qual terror!なんという 恐怖だ! PIAピーア cade al suolo tramortita地面に【≒ 床に】 倒れる 気絶して le donne appoggiano Pia su una seggiola婦人たちは ピーアを 椅子の上に 置く【≒ 椅子に 座らせる】 |
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Largo concertato nel nuovo Finale Ⅰ, N. 5, seconda versione Larghetto 3/4 f minor / A-flat major |
GHINOギーノ (Ahimè, quell'anelito il core mi gela!(なんということだ、あの 苦しい息遣いは 私の心を 凍り付かせる! sospesa una lagrima il ciglio mi vela!ぶら下がった【≒ 浮かび上がった】 一粒の涙が 私の眼を 覆っている ho l'alma commossa... la mente agitata...私は 心を揺り動かされた魂を 持っている【≒ 私の心は 揺り動かされた】… 私は 動揺した頭脳を もっている【≒ 私の思いは 掻き乱されている】… ancor dell'ingrata io sento pietà!)私は なおも 恩知らずの女に【≒ 私に つれない女に】 哀れみを感じている。) NELLOネッロ (Ah, come congiungere il cielo potea(ああ、どうやって 天は 結び付けることが できたのだ il volto d'un angelo ad alma sì rea!天使の顔を あれほどに 邪悪な魂に! di tanto delitto macchiarsi quel core!あの心は、たくさんの罪で 汚されている! è spento l'onore, più fede non v'ha!)名誉は 消され、信頼は もう ない!) PIAピーア (Non regge quest'anima in tanto periglio...(この魂は 耐え【られ】ない これほどたくさんの危険の中では… un velo funereo ingombra il mio ciglio...死をもたらすヴェールが 私の眼を 妨げている…。 fantasmi di morte intorno rimiro!私は 周囲に 死の亡霊たちを 見つめている! l'estremo respiro sul labbro mi sta!)私の唇の上には 最後の息が ある!) BICEビーチェ Deh, calma le furie del core sdegnato...お願いだから、憤慨した心の 激怒を 鎮めなさい… ah, tu della misera ben vedi, lo stato...ああ、君は よく 見ている 哀れな女の、ありさまを… l'orror, lo spavento de' sensi la priva;恐怖が、不安が、 彼女の感覚を【≒ 意識を】 奪っている; più spenta che viva dinanzi ti sta.彼女は 君の前で 生きている というよりは 殺されている【≒ 死んでいる】。 CORO DONNE Deh, calma le furie del core sdegnato...お願いだから、憤慨した心の 激怒を 鎮めなさい… [a Nello][ネッロに] ah, tu della misera ben vedi lo stato...ああ、君は よく 見ている 哀れな女の、ありさまを… l'orror, lo spavento de' sensi la priva;恐怖が、不安が、 彼女の感覚を【≒ 意識を】 奪っている; più spenta che viva dinanzi ti sta.彼女は 君の前で 生きている というよりは 殺されている【≒ 死んでいる】。 |
この Larghetto のコンチェルタートは、1838年のナポリでの上演のために改訂されたもの。 ♭4つのヘ短調 / 変イ長調 で書かれているが、冒頭しばらくは臨時記号でフラットが追加され、時に変イ長調の並行短調である変イ短調(♭7つ)にも響く。 |
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Allegro 4/4 C major |
(Scena [ⅩⅦ]: Ubaldo, uomini d'armi e detti)(第[17]場: ウバルド、武装した人たちと 前の場の人たち) UBALDOウバルド entrano in scena Ubaldo e Coroウバルドと 合唱が 舞台に 入る Quel codardo ne deluse!あの臆病者は ここから 免れたを【≒ 逃げ去った】! rinvenirlo io non potei. NELLOネッロ Ah, l'averno si dischiuseああ、地獄が 開いた per sottrarlo a' colpi miei!私の打撃から 彼を 逃れさせるために! GHINOギーノ (D'ira avvampo!)(私は 怒りで 燃え上る【≒ 怒りのあまり かっとなっている】!) NELLOネッロ Svela, o Pia,明かしなさい、ああ ピーアよ、 come... donde il vil fuggia...どうやって… どこへ あの卑怯者は 逃げたのだ… tu da me la vita avrai君は 私から 命を 受け取るだろう se di lui vendetta avrò.もし 私が 彼に 復讐するであろうならば。 PIAピーア Io tradirlo?... no, giammai...私が 彼を 裏切ると?… いいや、決して… mille volte pria morrò.その前に【≒ むしろ】 私は 千回 死のう。 |
mille volte pria morrò. この pria = prima は piuttosto むしろ の意味合い。 |
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Più allegro 4/4 C major |
ah sì, morrò.ああ そうだ、死のう。 NELLOネッロ Pensa.考えなさい。 |
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Vivace non prestissimo 2/2 C major |
NELLOネッロ (Nel massimo furore e volgendosi ad Ubardo ed a' suoi uomini d'armi)最大の怒りの中で そして ウバルドと 彼の 武装した人たちに 向かって) L'empia cingete d'aspre ritorte...邪悪な女を 粗い縄で 巻き付けなさい【≒ 縛り上げなさい】… nelle Maremme sia trascinata...彼女が マレンマに 連れて行かれるように… lunga, crudele, tremenda morte長い、残酷な、恐ろしい 死が ivi t'aspetta, o scellerata...そこで 君を 待っている、ああ 悪党の女め。 Vanne, perversa... di te soltantoここから 行きなさい、背徳の女よ… 君のことを ただ per maledirti mi sovverrò.君を 呪う ためだけに 私は 思い出すだろう。 PIA, BICE, GHINO, UBALDO E COROピーア、ビーチェ、ギーノ、ウバルド と 合唱 Ah!ああ! NELLOネッロ per maledirti mi sovverrò.君を 呪う ために 私は 思い出すだろう。 PIAピーア Qual fera morte a me s'appresta!なんという 残酷な死が 私に 準備されているのだ! v'è donna al mondo più sventurata?この世で より不幸な女が いるのだろうか? nella suprema ora funesta死をもたらす の最後の時に sarò da tutti abbandonata!私は 皆から 見捨てられるだろう! Del pio ministro a me d'accanto私のそばの 敬虔な使者の suonar la prece io non udrò!祈りが 響くのを 私は 聞くことはないだろう! GHINOギーノ (Ahi sciagurato! dove mi spinse(ああ、惨めな男だ! どこに 私を 至らしめたのだ della vendetta l'empio desio!復讐の 邪悪な欲求は! l'astro del giorno per lei s'estinse,昼間の星【≒ 太陽】は 彼女に対して 消えた ma più infelice di lei son io...しかし 私は 彼女よりも 不幸だ… Tutta la vita trarrò nel pianto全人生を 私は 涙の中で 過ごすだろう e di me stesso l'orror sarò,そして 私は 私自身の強い嫌悪に なるだろう【≒ 私は 自分自身を 嫌悪することだろう】、 UBALDO ED CORO TENORI E BASSIウバルド と 合唱 テノール と バス Omai ne segui... è vano il pianto.今は 私たちに ついて来なさい… 涙は 無駄だ。 Il tuo destino cangiar non può.それは【≒ 涙は】 君の運命を 変えることは できない。 BICE E CORO DONNEビーチェ と 合唱 女たち Iddio preghiamo, che Dio soltanto神に 祈ろう、神だけが all'infelice soccorrer può.不幸な人を 救うことが できる。 |
464小節に 2/2拍子の指示が入っているが、冒頭からそこまでの間に拍子の変更はなく、4/4 ではないと確認させるための指示なのかもしれない。 e di me stesso l'orror sarò!) この orrore は 恐怖 ではなく 強い嫌悪。 |
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Poco più 2/2 C major |
PIAピーア ah no io non udrò!ああ いいや 私は 聞くことはないだろう! BICEビーチェ sì, sol Dio salvarla può.そうだ、神だけが 彼女を 救うことが できる。 GHINOギーノ ah sì, l'orror sarò!)ああ そうだ、私は 強い嫌悪に なるだろう【≒ 私は 【自分自身を】 嫌悪することだろう】!) UBALDO ED CORO TENORI E BASSIウバルド と 合唱 テノール と バス no, non può cangiar.いいや それは【≒ 涙は】 君の運命を 変えることは できない。 NELLOネッロ per maledirti mi sovverrò.君を 呪う ためだけに 私は 思い出すだろう。 CORO DONNE合唱 女たち ah sì, Iddio soccorrer può.ああそうだ、神だけが 救うことが できる。 salvarla può.彼女を 救うことが できる。 |
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ATTO SECONDO | |||
[N. 6] (Introduzione), Scena ed Aria Rodrigo Rodrigo Coro |
Marziale mosso 3/4 A-flat major |
(Accampamento dell'esercito fiorentino presso una porta del sobborgo di Siena)(シエナの周辺地区の城門の傍の にあるフィレンツェ軍の野営) (Scena Ⅰ: Coro di Guerrieri, indi Rodrigo e Lamberto)(第1場: 戦士たちの合唱、それから ロドリーゴとランベルト) CORO合唱 Cinto di rosse nubi赤い雲々に 取り巻かれて sorgi, deh! sorgi, o sole,昇りなさい、お願いだから! 昇りなさい、ああ 太陽よ、 vieni a mirar se prole見に 来なさい noi siam d'Italia ancor!私たちが 【今も】なお イタリアの 【↑】子で ある 【↑】かどうか! Col lampeggiar dell'armi,武器のきらめきでもって、 col fero suon di guerra戦争の 荒々しい音でもって t'invoca l'alma terra恵みをもたらす大地は おまえに【= 太陽に】 祈願する che madre è del valor!それは【= 恵みをもたらす大地は】 勇気の母である! Sorgi, e vedrai gremito,昇りなさい、そうすれば おまえは 見るだろう come di tronche biade,上部を切断された【≒ 刈り取られた】麦のように、 il suol di lance e spade,槍で そして と剣で 【↑↑】いっぱいの 地を、 tinti di sangue i fior!血で 染められた 花々を! |
noi siam d'Italia ancor! ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では non siam d'Italia ancor! になっている。この合唱を含む第6番はセニガッリアでの再演では既に削除され、1838年ナポリでの上演以降は新たな合唱に差し替えられている(⇒ appendice 3d)。一方1844年リスボンでの上演ではオリジナルの合唱が用いられ、その際の出版台本では noi siam d'Italia ancor! になっている。クリティカルエディションでは noi を採用している。 come di tronche biade, 兵士たちが担っている槍や剣を、麦畑で穂の部分を刈り取られて茎の下部だけ残っている麦に見立てている。 |
Più allegro 3/4 A-flat major |
noi siam d'Italia ancor,私たちが 【今も】なお イタリアの 【子】で ある 【かどうか】! |
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Marziale 4/4 A-flat major |
LAMBERTOランベルト Rodrigo...ロドリーゴよ… RODRIGOロドリーゴ Chi vegg'io!... Tu qui!...私は 誰を 見ているのだ! 君が ここに!… LAMBERTOランベルト Pur giungo al tuo cospetto!私は やっと 君の面前に 到着している! Ben dieci lunghi giorniたっぷり 長い 十日間 palpitar mi fu d'uopo, e vincer guerra心臓がどきどきすることが 私に 必要だった【≒ 私は 十日間の長きに渡って 【恐怖に】 慄いていなければ ならなかった】、そして 戦いに 勝つことが di rinascenti ostacoli.再び生まれた 障害の【≒ 新たに生じた障害の戦いに 勝利するのに 十日間の長きを 要した】。 Apportator di trista nuova...不幸な知らせを 持って来る人だ【≒ 私は 不幸な知らせを 持って来ている】…。 RODRIGOロドリーゴ (ad un cenno di Rodrigo i cavalieri s'allontanano)(ロドリーゴの指示に 騎士たちは 遠ざかる) Oh Dio!...ああ 神よ!… che avvenne?何が 起きたのか? LAMBERTOランベルト Al tuo fuggir, Nello, fremente君の逃走に、ネッロは、震えて di cieco sdegno, a trucidar la sposa盲目の怒りで、妻を 惨殺するために il ferro alzò...剣を 上げた… RODRIGOロドリーゴ Perverso!...邪悪な男め!… LAMBERTOランベルト A lui sottratta彼から 解放された fu l'innocente; ma del crudo in seno無実の人は; しかし 【彼の】残酷な胸の中で l'ira non tacque: gemebonda, oppressa,怒りは 黙らなかった【≒ 収まらなかった】: 嘆き悲しみ、苦しめられて、 vota di sensi, quella notte istessa感覚の空 から の【≒ 意識を 失って】、まさに あの夜 nella Maremma trascinar la fece,彼は 彼女を マレンマへと 連れて行か せた、 ove fra i morti stagniそこは たくさんの沼の 間に aura letal si beve, or che infuocati死を招く微風が 吸い込まれる、焼けるような raggi saetta il dì; nel suo funebre日光を 昼が【≒ 太陽】が 放っている 【↑】今となっては【≒ そこは 今では 太陽が 焼け付く光を 放って 沼の間には 死を招く【熱】風が 吹いている】; 彼の 暗い castello, a Pia dell'inumano un cenno城の中へと、冷酷な指示が ピーアに prigion dischiuse acerba;つらい牢獄を 開けた; RODRIGOロドリーゴ Che?なんだって? LAMBERTOランベルト Forse a morir la serba.おそらく 彼は 彼女を 死に 貯蔵している【≒ 彼は 彼女が 死ぬように 閉じ込めている】。 |
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Larghetto 3/8 E-flat major |
RODRIGOロドリーゴ Ah! sì barbara minacciaああ! これほどに 残酷な恐れが di spavento il cor m'agghiaccia!...私の心を 恐怖で 凍り付かせる!… fosco il sole, e tolta parmi太陽は 暗い【≒ 太陽は 陰り】 、そして 私には 取り除かれたように 思われる la favella, ed il respir!...話す能力が、そして 呼吸が!… Se costar doveano a leiもし 彼女に 要さなくてはならないのなら tante pene i giorni miei,これほどたくさんの苦悩を 私の日々が【≒ 私の命が】 【≒ 私の命のために 彼女が 多大な苦悩を 要するのならば】、 rio destin perché non farmiなぜ 悪意のある運命は 私を mille volte pria morir?その前に【≒ むしろ】 千回 殺 させないのか? |
mille volte pria morir? この pria = prima は piuttosto むしろ の意味合い。 |
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Allegro 4/4 E-flat major |
LAMBERTOランベルト Oh qual tumulto!...ああ なんという喧噪が! RODRIGOロドリーゴ Squillano鳴り響いている le trombe in suon di guerra!...ラッパが 戦いの音で【≒ 戦いを知らせる音で】!… LAMBERTOランベルト Duci, e guerrieri accorrono!...隊長たちが、そして戦士たちが 駆けつけている!… RODRIGOロドリーゴ Rimbomba e cielo e terra!...天が そして 地が 轟いている!… (Scena Ⅱ: Seguaci di Rodrigo e detti)(第2場: ロドリーゴの家来たち と 前の場の人たち) CORO合唱 Signor...貴君よ… RODRIGOロドリーゴ Che fu?何が あった? CORO合唱 Prorompono吹き出している【≒ 押し寄せている】 ad inattesa pugna予期しない戦いへと l'orde nemiche....敵の大軍が… LAMBERTOランベルト Oh fero giorno!...ああ 荒々しい日だ!… CORO合唱 Affrettati,急ぎなさい、 l'acciar temuto impugna.恐れられた剣を 掴みなさい。 vieni... andiam...来なさい… 行こう… Lamberto è condotto da guardie in loco securoランベルトは 衛兵たちによって 安全な場所に 連れて行かれる RODRIGOロドリーゴ Tremenda folgore恐ろしい稲妻に il brando mio sarà, sì.私の剣は なるだろう、そうだ。 |
Lamberto è condotto da guardie in loco securo 1837年、ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では Alcuni Scudieri partono con Lamberto.Vedesi nel fondo l'Esercito fiorentino marciare affrettatamente 何人かの従者たちが ランベルトと共に 去る。 奥に フィレンツェの軍隊が 急いで 更新しているのが 見える |
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(Marziale) 4/4 E-flat major |
A me stesso un Dio mi rende...神は 私自身に 私を 元に戻している… corro all'armi... alla vendetta...私は 急いで向かう 戦闘に… 復讐に… (dolce)(優しく) I tuoi nodi, o Pia diletta君の結び目を【≒ 束縛を】、ああ 最愛のピーアよ、 io tra poco infrangerò.もうすぐ 私が 破ろう。 Questa brama il cor m'accende,この切望が 私の心に 火を点ける、 non desio di falsa gloria...偽の栄光の欲求が ではなく… pel cammin della vittoria勝利の道を 通って al tuo seno io volerò.君の胸へと 私は 飛んで行こう。 |
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[Più mosso] 4/4 A-flat major |
CORO合唱 Foco d'ira il cor ne accende...怒りの火が 彼の心に 火を点けている… sangue a flutti spargeremo...波々に 血を 流そう【≒ 波になるほど 敵の血を 流そう】 Ghibellini, al fato estremoギベリン党員たちよ、極度の運命【≒ 究極の運命 ≒ 死】から nulla omai sottrar vi può.今や 何も 君たちを 逃れさせることは できない。 Al campo..., all'armi...戦場に… 武器を取れ… |
Foco d'ira il cor ne accende... ここでの ne は di lui。 |
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[Primo Tempo] 4/4 E-flat major |
RODRIGOロドリーゴ A me stesso un Dio mi rende...神は 私自身に 私を 元に戻している… corro all'armi... alla vendetta...私は 急いで向かう 戦闘に… 復讐に… (dolce)(優しく) I tuoi nodi, o Pia diletta君の結び目を【≒ 束縛を】、ああ 最愛のピーアよ、 io tra poco infrangerò.もうすぐ 私が 破ろう。 Questa brama il cor m'accende,この切望が 私の心に 火を点ける、 non desio di falsa gloria...偽の栄光の欲求が ではなく… pel cammin della vittoria勝利の道を 通って al tuo seno io volerò.君の胸へと 私は 飛んで行こう。 CORO合唱 ricomincia il passagio di soldati fino alla fine【曲の】終わりまでに 兵士たちの移動が 再び始まる Ghibellini, al fato estremoギベリン党員たちよ、極度の運命【≒ 究極の運命 ≒ 死】から nulla omai sottrar vi può.今や 何も 君たちを 逃れさせることは できない。 |
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[N. 7] Scena e Duetto Ghino e Pia Pia Ghino Ubaldo |
Allegro 4/4 C major |
(Vecchia sala d'armi nel castello della Maremma. Ingresso nel fondo e due porte sui lati: una di esse mette alla prigione di Pia)(マレンマの城の中の 武器の古い広間。奥に入り口、両側面に2つの扉: その一つは ピーアの牢獄に 通じている) (Scena Ⅲ: Ghino ed Ubaldo)(第3場: ギーノと ウバルド) |
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Recitativo 4/4 (C major) |
UBALDOウバルド Tu, Ghino, alle Maremme?君が、ギーノよ、マレンマに? GHINOギーノ Ah di': la Pia?...ああ 言いなさい: ピーアは? UBALDOウバルド Geme fra quelle mura e si distruggeあの壁々の間で【≒ あの部屋の中で ≒ あの牢獄で】 彼女は 呻いている そして 彼女は 健康を損なっている per lenta morte.遅い死へと向かって。 GHINOギーノ Ho d'uopo私は 必要である vederla, Ubaldo... qui la traggi.彼女に 会うことが、ウバルドよ… ここに 彼女を 連行しなさい。 |
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Andante 4/4 C major |
UBALDOウバルド (entra nella prigione di Pia)(ピーアの牢獄の中に 入る) Ancoraいまだに sull'adorato labbro熱愛する 唇の上には starà l'oltraggio e la repulsa? o vinta侮辱と きっぱりとした拒絶が あるのだろうか? あるいは 打ち負かされたのだろうか dalla sciagura?... Fra la speme ondeggio不幸に?… 私は 揺れている 希望の間で e fra il timor.そして 不安の間で。 |
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Allegro 4/4 C major |
(Scena Ⅳ: Pia e detto)(第4場: ピーアと 前の場の人たち) |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
PIAピーア Chi vegg'io!私は 誰を 見ているのだ! GHINOギーノ L'uom che salvarti e vuole, e può.人だ その者は 君を救うことを 望んでいる、そして 【君を 救うことが】 できる。 PIAピーア Tu!... Come?君が!… どうやって? GHINOギーノ All'amor mio t'arrendi,私の愛に 屈しなさい、 e pronta fuga...そうすれば 即座の逃亡が… PIAピーア Taci,黙りなさい、 lingua d'averno. Chi son io scordasti?地獄の言葉だ。私が 誰であるか 君は 忘れたのか? GHINOギーノ (con disprezzo)(嘲笑をもって) E chi sei tu?それでは 君は 誰なのか? |
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Moderato 4/4 C major |
PIAピーア (dignitosamente)(威厳をもって) La sposa妻だ di Nello.ネッロの。 GHINOギーノ Infida sposa.不実な妻だ。 PIAピーア Io!...私が!… GHINOギーノ Non tradisti君は 背いたではないか il tuo dover, l'onore!君の義務に、名誉に In quella orribil notte un seduttoreあの恐ろしい夜に 誘惑者を non accogliesti?...君は 迎えなかったのか?… PIAピーア Ciel!... Che dici!... Accolsi天よ… 君は 何を 言っているのだ!… 私は 迎えたのだ Rodrigo, il fratel mio...ロドリーゴを、私の弟を… GHINOギーノ colpito(衝撃を受けて) Donna... fia vero!...婦人よ… それは 本当なのだろうか!… |
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Allegro 4/4 C major |
PIAピーア Crudele inganno!残酷な 思い違いだ! piangendo泣きながら GHINOギーノ (abbassa la fronte, e rimane alquanto silenzioso, come persona che medita a qual partito rattenersi)(頭を下げ、そして いくらか 沈黙したままでいる、人のように その者は 熟考している どのような状態で 自制するのか) Odimi, o Pia.私【の言うことを】を 聞きなさい、ああ ピーアよ。 Per sempre dai viventi永久に 人間たちから di Nello un cenno ti separa, e Nelloネッロの指示が 君を 分けている、そして ネッロは sveller giurò dalla sua fronte i rai誓った 彼の顔から 光線を【≒ 目を】 もぎ取ることを anzi che più vederti: tu sei君を さらに 見る くらいなら: 君は già nella tomba; dalla tomba Ghinoもはや 墓の中に 【↑】いる; 墓から ギーノ sol può sottrarti, ed egliだけが 解放することが できる、そして 彼は t'offre il suo core... o morte.君に 彼の心を 申し出ている… |
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Allegro 4/4 C major |
o morte.さもなくば 死を 【申し出ている】。 PIAピーア Iniquo!...邪悪な男だ!… GHINOギーノ Scegli. Ebben?選びなさい。それで? |
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Allegro 4/4 F major |
PIAピーア Morte o colpa? Tu ben sai死 あるいは 罪? 君は よく 分かっている la mia scelta.私の選択を。 GHINOギーノ Forsennata!...正気を失った女め!… Scegli?...選ぶのか?… |
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Poco più 4/4 C major |
PIAピーア Morte.死を。 GHINOギーノ Morte?死を? PIAピーア Morte.死を。 GHINOギーノ Ah! Ebbenああ それでは |
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Primo Tempo 4/4 C major |
morrai.君は 死ぬだろう。 Sì, morrai dai viventi abbominata...そうだ 君は 死ぬだろう 人間たちから 非難されて… e l'infamia un negro veloそして 悪名が 黒いヴェールを sul tuo nome stenderà.君の名前に 広げるだろう。 PIAピーア Benedetta e pura in cielo天で 祝福され そして 潔白で il Signor m'accoglierà.主が 私を 受け入れるだろう。 De' miei giorni tronco il corso私の日々の【≒ 私の人生の】流れは 中断される fia tra poco. Ah! pensa, o Ghino,だろう 間もなく。ああ! 考えなさい、ああ ギーノよ、 quale avrai nel cor rimorso!君が 心に どのような後悔を 抱くであろうか を! Errar vicino【↓】君の 近くで さまよっているのを uno spettro ti vedrai...亡霊が 君は 見るだろう… il mio spettro!...私の亡霊が… GHINOギーノ Taci... oh tormento...黙りなさい… ああ 苦悩が… PIAピーア No, lo vedrai.いいや 君は それを【≒ 亡霊を】 見るだろう。 GHINOギーノ taci... oh tormento...黙りなさい… ああ 苦悩が… ah...ああ… PIAピーア (cangia il tuono severo in quello della più commovente preghiera, giungendo le palme e cadendo genuflessa innanzi a lui)(厳しい口調を 最も 心を揺り動かす それ【= 口調】に 変える、手を 握り合って そして 彼の前に 跪いて 落ちて【≒ 跪いて】) Deh, ti cangia...お願いだから、変化しなさい【≒ 心を 入れ替えなさい】… GHINOギーノ Ciel!... che fai?...天よ! 君は 何をしているのか?… l'alza彼女を 立たせる Tu prostrata innanzi a me?君が 私の前で 跪くのか? |
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Larghetto 3/8 f minor |
PIAピーア Ti muova il gemito dell'innocente...無実の者の呻き声に 心を動かしなさい… la prece ascolta d'un cor morente.瀕死の心の祈りを 聞きなさい。 Rendimi, ah rendimi vita ed onore...私に 返しなさい、ああ 私に 命と 名誉を 返しなさい… e la tua colpa fia cancellata,そうすれば 君の罪は 取り消されるだろう、 ed io col cielo perdonerò.そして 私は 天と共に 【君の罪を】 容赦しよう。 GHINOギーノ (Mi scende all'anima il suo lamento,(私の魂に 彼女の呻き声が 降りている【≒ 彼女の嘆きに 私の心は 感動している】、 a ragionarmi di pentimento!私に 後悔について 論じて! Abbandonarla fra le ritorte彼女を 縄の間に 捨てるのか in braccio a lunga, terribil morte,長い、恐ろしい死の腕のなかで【≒ 長い、恐ろしい死に 抱かれたまま】 e senza colpa disonorata?...しかも 罪なく 名誉を傷つけられて? No, tanto perfido il cor non ho.いいや、私は それほどに 悪意のある心を 持っていない。 |
Abbandonarla fra le ritorte 1837年のヴェネツィアでの初演の際の出版台本では Potrei lasciarla fra le ritorte 私は 彼女を 縄の間に 捨てることが できるのだろうか となっており、これは後の公演の際の出版台本にも見られる。おそらく自筆総譜で Abbandonarla fra le ritorte に(ドニゼッティによって)書き改められたのではないだろうか。ともかく、この行は Potrei を補って理解する方が分かりやすい。 |
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Larghetto 3/8 F major |
PIAピーア Ti muova il gemito dell'innocente...無実の者の呻き声に 心を動かしなさい… ed io col cielo perdonerò.)そして 私は 天と共に 【君の罪を】 容赦しよう。) GHINOギーノ E senza colpa disonorata?...しかも 罪なく 名誉を傷つけられて? Ah no, sì perfido il cor non ho.)ああ いいや、私は それほどに 悪意のある心を 持っていない。) |
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Allegro 4/4 B-flat major |
PIAピーア Ah! nel tuo seno atroceああ! 君の 冷酷極まる胸には non giunge la mia voce!...私の声は 届かない!… (avviandosi alla sua prigione)(彼女の牢獄に 向かって) Addio...さようなら… GHINOギーノ (nella estrema commozione)(極度の感動の中で) T'arresta...止まりなさい… (cerca nasconderle il volto)(顔を 隠すことを 努力する) PIAピーア Oh giubbilo!...ああ 歓喜だ!… Veggo negli occhi tuoi...私は 君の目の中に 見ている… La mal frenata lagrima拙く抑えられた 涙を【≒ 抑えることのできない涙を】 invan celar mi vuoi.君は 虚しく 私から 隠すことを 欲している【≒ 私から 隠そうとしても 無駄だ】。 GHINOギーノ Donna...婦人よ… PIAピーア Perché t'arresti?...なぜ 君は 止まっているのか【≒ 何を 君は ぐずぐずしているのか】?… Finisci...【私から 涙を 隠そうとすることを】止めなさい!… GHINOギーノ alfin vincesti...とうとう 君が 勝った… Corro a squarciar le tenebre私は 急いで 闇を 裂きに 向かう d'inganno sì fatale...このように 死に至らせる 思い違いの【闇を】 Corro di Nello a spegnere私は 急いで消しに 向かう ネッロの il rio furor mortale...致命的な 悪意のある怒りを 【消しに】… quindi a me stesso in coreそれから 私自身の胸に un ferro immergerò.剣を 突き通そう。 PIAピーア Ah! che dici? qual furore!...ああ! 君は 何を 言っているのか? なんという恐怖だ!… GHINOギーノ Omai decisi.今や 私は 決心した。 PIAピーア Ah! no,ああ! いけない、 |
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Moderato 4/4 B-flat major |
GHINOギーノ Può la mia fiamma spegnersi私の炎は 消えることが できる col viver mio soltanto...私の命でもって のみ… meglio è morir, che vivere死ぬことは より良い、生きることよりも in disperato pianto...絶望の涙に【≒ 絶望の涙に暮れて生きるよりも、死ぬ方がいい】… ah! sul mio freddo cenereああ! 私の 冷たい 遺灰の上に spargi talvolta un fiore...時々 一輪の花を 撒きなさい… a chi negasti amore君が 愛を 拒絶した者に concedi almen pietà.せめて 哀れみを 許しなさい。 PIAピーア Sgombra sì nere immagini...それほどに黒い像を 一掃しなさい【≒ そのような暗い思いは 捨て去りなさい】 a Dio solleva il core,心を 神へと 上に向けなさい、 e forza avrai per vincereそうすれば 君は 克服するための 力を 手に入れるだろう un contumace amore.服従しない愛に【克服するための 力を】。 Scosso dal reo delirio,邪な熱狂に 揺すられて、 alla virtù rinato,徳へと 生気を取り戻して【≒ 君は 邪な愛の熱狂に 取り乱したが、徳へと 心を取り戻せば】、 raggio del ciel placato静められた空の 光線に【≒ 穏やかな空の 輝きに】 il viver tuo sarà.なるだろう 君の人生は。 GHINOギーノ Ingrata!忘恩の女め! |
raggio del ciel placato この raggio は無冠詞、単数形なので、光線 というよりは 輝き だろう。 Ingrata! 死んで愛の狂乱を消すと言っているギーノに対して、ピーアが信仰で克服するよう諭していることに対して言っている。私のことを分かってくれないのか! くらいの意味。 |
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Poco più 4/4 B-flat major |
GHINOギーノ Lascia che io parta!...私が 出発する ままにさせなさい!… PIAピーア Ah! no.ああ! いけない。 GHINOギーノ Omai decisi...今や 私は 決心した… PIAピーア No, t'arresta. Ghino!いいや、止まりなさい。ギーノよ! |
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Primo tempo 4/4 B-flat major |
GHINOギーノ Può la mia fiamma spegnersi私の炎は 消えることが できる col viver mio soltanto...私の命でもって のみ… meglio è morir, che vivere死ぬことは より良い、生きることよりも in disperato pianto...絶望の涙に【≒ 絶望の涙に暮れて生きるよりも、死ぬ方がいい】… PIAピーア A Dio solleva il core...心を 神へと 上に向けなさい。 GHINOギーノ un ferro immergerò.剣を 突き通そう。 a chi negasti amore君が 愛を 拒絶した者に concedi almen pietà.せめて 哀れみを 許しなさい。 non amore ma pietà,愛ではなく 哀れみを、 concedi almen pietà.せめて 哀れみを 許しなさい。 (parte)(去る) PIAピーア raggio del ciel placato静められた空の 光線に【≒ 穏やかな空の 輝きに】 il viver tuo sarà.なるだろう 君の人生は。 (si rende alla sua prigione)(彼女の牢獄に 赴く) |
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[Recitativo] Dopo il Duetto di Pia e Ghino |
Moderato 4/4 (C major) |
(Scena Ⅴ: UBALDO)(第5場: ウバルド) (viene dalla carcere di Pia e ne rinchiude la porta. Si avanza uno scudiere, gli porge un foglio ed esce)ピーアの牢獄から 来る そして それの【= 牢獄の】扉を 再び閉める。一人の従者が 進み出て、彼に 1枚の書類を 差し出し そして 出る UBALDOウバルド legge読む 《Divamperà tremenda oggi la guerra,「恐ろしい戦いが 今日 燃え上がるだろう ed io spento nel campoそして 私は 戦場で 殺されて forse cadrò: non voglioおそらく 倒れるだろう【≒ 私は 戦場で 死に倒れるだろう】: 私は 望んでいない che alla pena fuggir possa la colpa;罪が 処罰から 免れることが できる ことを; quindi, se rivocato il cenno mioしたがって、もし 私の指示が 取り消され non è sin che biancheggiない 【↑】ならば 白くなるまでに l'alba del dì novello,新たな日の 夜明けが【≒ 明日の夜明けが】、 mora la Pia, mora, lo impongo.ピーアが 死ぬように、死ぬように、そのことを 私は 命じる。 |
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Moderato 4/4 (C major) |
Nello.》ネッロ。」 (resta cogitabondo qualche istante, poi volge un guardo dove entrò Pia, e si ritira dall'opposto lato)(いくらかの瞬間 物思いにふけった ままでいるしばらく思いに耽る、それから 一瞥を向ける ピーアが 入った ところへ、そして 【牢獄とは】 反対の側から 退く) |
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[N. 8] Temporale, Coro [di] Eremiti ed Aria Nello Nello Coro |
Allegro vivace 6/8 d minor |
(Atrio d'un Eremitaggio: a traverso dell'intercolunnio si veggono le incolte lande della Maremma. La notte è inoltrata, il cielo è nerissimo, ed imperversa una tremenda bufera)(隠者の住まいの 中庭: 柱間 はしらま を 横切って【≒ 柱と柱の間から】から マレンマの 荒れ放題の土地が 見える。夜は 遅い、空は 真っ暗である、そして 恐ろしい嵐が 荒れ狂っている) (Scena Ⅵ: Piero ed altri Romiti)(第6場: ピエーロと 他の隠者たち) PIERO E CORO DI EREMITI Il mugghiar di sì fera procellaこれほどに 荒々しい嵐の 轟くことは par del cielo funesta minaccia!天の 死をもたらす威嚇 みたいだ! Par di Dio la tonante favella神の 雷のような言語【≒ 雷のように轟く 神の言葉】 みたいだ quando all'empio la colpa rinfaccia!...彼が 邪悪な者に 罪を 面罵する時に!… No, giammai più terribile guerraいいや、より恐ろしい戦いを il creato sconvolto non ha!神により創造された世界が 持ったことは 【↑】決して なかった! |
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Più mosso 6/8 d minor |
più terribile guerraより恐ろしい戦いを il creato sconvolto non ha, sì,神により創造された世界が 持ったことは なかった、そうだ、 par di Dio la tonante favella神の 雷のような言語 みたいだ quando all'empio la colpa rinfaccia!彼が 邪悪な者に 罪を 面罵する時に!… Ah!ああ! tutti gli Eremiti s'inginocchiano:全ての隠者たちは 跪く: |
tutti gli Eremiti s'inginocchiano: 1837年ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では si prost[rano] 跪[く] |
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Larghetto 3/4 E major |
Divo Spirto, il cui sguardo penètra神の聖霊は、その者の 眼差しは 入り込む ogni via degli abissi profondi,深い地獄の どんな道でも、 al cui cenno raggianti per l'Etraその指示に 天空に向かって 輝きながら l'ampio giro descrissero i mondi,世界は ゆったりとした一周を 描いた、 ah! placato sorridi alla terra,ああ! 静められて 大地に 微笑んみなさい、 e del nembo l'orgoglio cadrà.そうすれば 黒雲の傲慢は 倒れるだろう【≒ 終わるだろう】 |
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Allegro 3/4 C major |
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Recitativo 4/4 (C major) |
PIEROピエーロ (sorgendo e seco gli altri)(立ち上がって そして 彼と友に 他の人たちも 【立ち上がって】) Un calpestio di rapidi cavalli,速い馬の 踏み鳴らす音が、 fra il sibilar de' venti風の ピューッと鳴ることの 間で l'udito mi colpì.私の聴力を 叩いた【≒ 駿馬の ひづめの音が 風の唸る音の中から 聞こえる】。 |
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[Allegro] 4/4 C major |
(mettendosi presso la soglia con un fanale sospeso nella destra)(敷居の傍に 身を置いて 右手に 灯かりを ぶら下げて) (Scena Ⅶ: Nello, con seguaci e detti)(第7場: ネッロ、家来たちと共に そして 前の場の人たち) NELLOネッロ O Piero...ああ ピエーロよ… PIEROピエーロ Io non traveggo!...私は 見間違わない!… Nello!ネッロだ! NELLOネッロ Sconfitte dal nemico brando敵の剣によって 打ち破られ fur di Siena le squadre, e strascinateた シエナの部隊は、そして 引きずられた pel campo, entro la polve戦場をあちこちへと、埃の中の【≒ 埃だらけの】 di Manfredi le insegne... Al mio castelloマンフレーディの軍旗は… 私の城へと io mossi, e l'orme nostre私は 出発した、私たちの足跡を seguia dappresso un folto stuol repente追跡した 近くで 不意に 密集した【≒ 大勢の】 di Guelfi...グエルフィ党員たちの 【↑】軍勢が… |
di Manfredi le insegne... Al mio castello マンフレーディについては ⇒ シエナとフィレンツェの抗争 を参照。シチリア王マンフレーディ 1232―1266 はホーエンシュタウフェン朝の出つまり皇帝派、ギベリン党だったのでシエナを支援したが、フランスのシャルル・ダンジュの協力を得たグエルフィ党に逆襲されて、シエナは敗北した。 |
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Allegro 4/4 C major |
I giorni miei私の日々は【≒ 私の命は】 deggio alla fuga!... Oh rabbia!逃亡の おかげだ!… ああ 怒りが! |
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Andante 4/4 C major |
PIEROピエーロ Gli ardenti spirti acqueta,燃える精神を 鎮めなさい、 ed al voler t'inchina意志に 従いなさい (con grave accento)(重々しい口調で) di lui, che a torto non punisce.彼の、その者は 間違って 罰しない【≒ 神の意志に 従いなさい 神の罰に 誤りはない】。 NELLOネッロ O vecchio,ああ 老人よ、 una parola onde ferirmi hai detta!君は 一言を 言った それによって 私を 傷つける! PIEROピエーロ Di tua crudel vendetta君の 残酷な復讐の il grido risuonò: viva sepolta叫び声が 響いた: 生きて 埋葬された【≒ 地下牢に 閉じ込められた】 fu la tua sposa... A me t'affida.君の妻は… 私を 信頼しなさい。 Rea di nefando eccesso不埒な行き過ぎの 犯行者 non è la tua consorte.ではない 君の配偶者は。 NELLOネッロ Ah!ああ! |
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Larghetto 4/4 C major |
solo un istante dubitar vorreiただ 一瞬だけでも 疑いたい【≒ 否定したい】 dell'onta mia, un solo solo; darei私の恥辱を、ただ ただ【一瞬だけでも】: 私は 与えたい per quell'istante mille vite.その瞬間の対して 千の命を。 PIEROピエーロ Ah! credi a me.ああ! 私を 信用しなさい。 |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
NELLOネッロ Ahi! crudaああ! 残酷な certezza ho della colpa!...罪の確信を 私は 持っている【私は 【ピーアの】罪を 残酷なことに 確信している】!… fremendo震えて |
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Allegro 4/4 C major |
PIEROピエーロ Ti calma...落ち着きなさい |
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(Recitativo) 4/4 (C major) |
NELLOネッロ Pietà sì viva di lei tu senti?君は それほどに 強烈な【≒ 強い】哀れみを 彼女に 感じているのか? |
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Larghetto 4/4 E major |
E pietade non hai de' miei tormenti?そして 君は 私の苦悩に 哀れみを 持っていないのか? |
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Larghetto 12/8 B-flat major |
(gettandosi nelle braccia di Piero con abbandono di dolore)(ピエーロの両腕の中に 身を投げて 苦悩の放棄をもって) Lei perduta, in core ascondo彼女を 失って、心の中に 私は 隠している velenoso un dardo acuto...毒性の 鋭い矢を… per me tomba è fatto il mondo...この世は 私にとって 墓場に なっている… parmi il ciel aver perduto.【私は】 天国を 失ったように 私には 思われる。 Ah, la perfida consorteああ、不実な配偶者を io detesto... ed amo ancor!...私は 憎んでいる… けれども 私は まだ 愛している!… D'ogni strazio, d'ogni morteどんな責め苦よりも、どんな死よりも la mia vita è assai peggior!私の人生は もっと より悪い! l'amo ancor, io l'amo ancor,私は 彼女を まだ 愛している、私は 彼女を まだ 愛している、 la detesto e l'amo ancor!...私は 彼女を 憎んでいる けれども 私は 彼女を まだ 愛している!… |
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Allegro 4/4 B-flat major |
(si ode uno strepito d'armi, quindi un grido lamentevole)(戦闘の轟音が 聞こえる、つづいて 悲しそうな叫び声が) Fragor di spade?剣々の大音響が? GHINOギーノ (da dentro)(内側から【≒ 舞台裏から】) Ah...ああ… PIEROピエーロ Un gemito!...呻き声だ!… NELLOネッロ Si corra...駆けつけよう… (Scena Ⅷ: Ghino, e detti)(第8場: ギーノ、そして 前の場の人たち) si affaccia alla porta Ghino, sostendosi sulla spada, feritoギーノが 扉から 現れる、剣の上に 身を支えて、負傷して NELLO, PIERO E COROネッロ、ピエートロ と 合唱 Oh ciel!...ああ 天よ!… NELLOネッロ Tu?... Ghino...君か?… ギーノよ… NELLO, PIERO E COROネッロ、ピエートロ と 合唱 Scena funesta, orribile!...死を招く光景だ、恐ろしい【光景だ】!… GHINOギーノ Compiuto è il mio destino...私の運命は 果たされた… NELLOネッロ Ahi...ああ… GHINOギーノ Mi svenò... drappel私を 出血させた… di Guelfi...グエルフィ党の 【↑】軍隊が!… NELLOネッロ Ti svenò drappel di Guelfi? e donde?...グエルフィ党の軍隊が 君を 出血させたのか? それで どこで? GHINOギーノ Oh Nello...ああ ネッロ… |
si affaccia alla porta Ghino, sostendosi sulla spada, ferito 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では è ferito mortalemente: si avanza a lenti passi ed appoggiandosi alla spada 生命にかかわるほど 負傷している: ゆっくりした足取りで 進み出る そして 剣に もたれて |
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Larghetto 4/4 B-flat major |
mi tragge... a te benefica,私を 引っ張っている… 君のところへと 慈善心に富む、 celeste mano... La Pia...天の手が… ピーアは… non è colpevole...罪を犯して いない… NELLOネッロ Fia vero?それは 本当だろうか? GHINOギーノ Ah no... non è colpevole...ああ そうだ… 彼女は 罪を犯して いない… NELLOネッロ E l'uom ch'ardiaそれでは 男は その者は 厚かましくも venir fra l'ombre avvolto, parla...闇の中に包まれて 来た、言いなさい… GHINOギーノ Era il fratel...彼は 弟だ!… NELLOネッロ Che ascolto!私は 何を 聞いているのだ! GHINOギーノ Lei salva... ed al mio cenere彼女を 救いなさい… そして 私の遺灰に non maledir no...叱責するでない いいや… (dolce)(優しく) L'amai...私は 彼女を 愛した… NELLOネッロ O Pia...ああ ピーアよ… GHINOギーノ Fui dispregiato... e perderla私は 軽蔑された…、だから 彼女を破滅させると entro il mio cor... giurai...私の心の中で… 私は 誓った… NELLOネッロ Malvagio...悪者め… per avventarsi襲い掛かろうとする PIEROピエーロ a Nelloネッロに Arrestati...止めなさい… Il ciel ti vendicò.天が 君の 復讐をするだろう。 GHINOギーノ Io muoio...私は 死ぬ… strascinandosi a stento ai piedi di Nelloネッロの足元に やっと【のことで】 よろよろ歩いて deh... perdonami...お願いだから… 私を 容赦しなさい… PIEROピエーロ Il ciel ti vendicò.天が 君の 復讐をするだろう。 GHINOギーノ Perdo...容赦… PIERO E COROピエーロ と 合唱 Signor...貴君よ… (supplichevoli a Nello)(ネッロに 嘆願するように) GHINOギーノ perdo... Nello... ah...容赦を… ネッロよ… ああ… (la sua parola è tronca dall'ultimo singulto.(彼の言葉は 途切れた 最後の しゃくりあげること【≒ 喘ぎ】によって) |
per avventarsi 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では mettendo la mano sull'elsa 手を 刀の柄 つか の上に 置いて |
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Allegro 4/4 B-flat major |
PIERO E COROピエーロ と 合唱 Spirò!彼は 息を引き取った! Nello protende la destra sul di lui capo in atto di perdono)ネッロは 右手を 彼の頭の上に 伸ばす 容赦の表明に GHINOギーノ lo trasportano altrove彼を 別のところに 運ぶ NELLOネッロ pensieroso考え込んで Dal mio ciglio è tolto un velo...私の眼から ヴェールが 取り除かれた… Sì, Rodrigo... in campo egli era!...そうだ、ロドリーゴよ… 彼は 戦場に いた!… ed il foglio... ed ella...そして 書類は… そして 彼女は… |
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Allegro 4/4 B-flat major |
Oh cielo!...ああ 天よ!… (alla sua gente d'armi)(彼の 武装した人々に) Mi seguite...私に ついて来なさい… PIERO E COROピエーロ と 合唱 Ah! trista e neraああ! 不吉だ そして 暗い è la notte...夜は… NELLOネッロ Pia...ピーアよ… PIERO E COROピエーロ と 合唱 i nembi orrendi恐ろしい黒雲が imperversano tuttor...いまだに 荒れ狂っている… NELLOネッロ Mi seguite...私に ついて来なさい… PIERO E COROピエーロ と 合唱 deh t'arresta!お願いだから 止まりなさい! PIEROピエーロ Qui soggiorna, l'alba attendi...ここに 滞在しなさい、夜明けを 待ちなさい… NELLOネッロ (come tocco dal fulmine)(雷に 触れられた ように【≒ 雷に 打たれたように】) L'alba!... l'alba!...夜明け!… 夜明け!… Preso da tremito (convulso e con prorompimento di lagrime)(押さえ切れない)震えに 捉えられて (そして 涙の迸りをもって) Oh mio terror!ああ 私の恐怖だ! |
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Allegro agitato 4/4 B-flat major |
Ciel pietoso, un cor ti parla哀れみ深い天よ、心が 君に 話している pien d'angoscia, di spavento...不安に 満ちた【心が】、恐怖に【満ちた 心が】… tu soltanto puoi salvarla...君だけが 彼女を 救出できる… opra, o Nume, un tuo portento...起こしなさい、ああ 神よ、君の奇跡を… e quell'angelo d'amoreそして あの 愛の天使を serbi a me la tua pietà君の哀れみが 私に 取って置くように; E l'inferno che ho nel coreそうすれば 地獄は それを 私は 心の中に 持っている ciel di gioia diverrà.喜びの天国に なるだろう。 PIERO E COROピエーロ と 合唱 (Onde in lui cotanto orrore!...)(なぜ 彼に あれほど大きな 恐怖が!…) Giusto ciel che mai sarà?公正な天よ、いったい どうなるのだろうか? |
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[N. 9] Scena e Finale [Pia] Pia Rodrigo Ubaldo Nello Coro |
(Moderato) 4/4 e minor |
(Prigione di Pia. Sull'alto una finestra con spranghe di ferro: scala in fondo, alla cui sommità è la porta. Pia seduta sur uno scabello, con la testa appoggiata ad una rozza tavola: ella è immersa in torbido sopore; pallida n'è la fronte, difficile il respiro, e sovente un tremore agita le sue membra. Ubaldo viene dalla scala, rilegge tacitamente il foglio di Nello, alza gli occhi alla finestra, albeggia: egli si trae dalle vesti un'ampolla, e ne versa il licore entro una tazza colma d'acqua, che sta sulla tavola)(ピーアの牢獄。高所の上に 鉄の かんぬきのある 窓: 奥に階段、それの頂上に 扉が ある。ピーア 椅子に座って、頭で 粗削りなテーブルに もたせかけられて【≒ 頭を テーブルの上に 乗せて】: 彼女は 不安なまどろみに 浸っている: 彼女の 顔は 青ざめ、呼吸は 困難な、そして しばしば 震えが 彼女の四肢を 揺さぶる。ウバルドが 階段から 来て、ネッロの書類を 無言で 再び読み、窓に 目を 上げる、夜が明けている: 彼は 服から小瓶を 引き出し、そして 水で満たされたカップの中に 液体を 注ぐ) (Scena Ⅸ:) [Pia ed Ubaldo](第9場:)[ピーアと ウバルド] UBALDOウバルド A questo nappo beverà tra pocoこの杯から 間もなく 飲むだろう il tuo labbro assetato, e dormirai君の 渇いた唇は、そして 君は 眠るだろう ben altro sonno!まったく別の眠りを! |
il tuo labbro assetato, e dormirai / ben altro sonno! dormire sonno で 眠る の意味になる。ここではそのまま 眠りを 眠る で訳した。 |
Allegro 4/4 e minor |
PIAピーア si sveglia spaventata恐怖に満ちて 目を覚ます Eterno Dio!永遠の神よ! |
si sveglia spaventata 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では con grido acutissimo e balzando in piedi spaventata 極めて鋭い叫び声と共に そして 恐怖に満ちて 立って 跳ね上がって |
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(Recitativo) 4/4 (e minor) |
Respiro!私は 息をついている【≒ ほっとした】! Il mio pensier deliro私の 錯乱した思いが creò nel sonno immagini feroci...夢の中で 残酷な心象を 作った… come riandando le cose sognate夢を見たことを 思い出す ように A questo sen, pentitoこの胸に、後悔に暮れる il consorte stringea... quando nel fianco配偶者を 私は 抱きしめた… その時 【↓↓】彼の 脇腹に l'acciaro insidioso人を欺く【≒ 陰謀の】刃を gl'immerge un Guelfo... a' piedi miei lo sposoグエルフィ党員が 突き通す… 私の足元に 夫は |
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Allegro 4/4 e minor |
cadde spirando... orribil sogno!...死に倒れる… 恐ろしい夢だ! |
cadde spirando... orribil sogno!... この間に、台本にはあったがドニゼッティが音楽をつけなかった10行半があった。それはピーアの見た悪夢の内容で、ネッロを襲った下手人の顔はロドリーゴ、死んだネッロは立ち上がって彼を捕まえ、ともども地獄の底に落ちた、というもの。 |
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Larghetto 4/4 e minor |
Ah... la febbre cocenteああ… 焼け付くような熱が più cresce...さらに 大きくなっている… ah sposo mio... oh Nello!ああ 私の夫よ… ああ ネッロよ! atroce sete mi divora!...耐え難い 喉の渇きが 私を 貪り食っている!… |
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Larghetto 4/4 G major |
prende il nappo e beve; Ubaldo vorebbe trattenerla per impulso ma non è più in tempo杯を 掴み そして 飲む: ウバルドは 衝動に駆られて 彼女を 止めることを 欲する しかし もう 間に合わない) UBALDOウバルド (Meglio è penar brev'ora,(短い時間 苦しむことは より良い【≒ 束の間 苦しむ方が よい】、 e poi riposo eterno!そして その後に 永遠の休息が! Al dì novello respirar più liete新たな日に より 喜ばしい aure mi fia concesso.)微風を 【↑】呼吸することが 私に 許される だろう。) |
prende il nappo e beve; [...] 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では La coppa fatale si presenta al di lei sguardo, ed ella vi stende ansiosa la mano. Ubaldo rimasto sempre indietro fa un moto, quasi involontario, per trattenerla, ma ristà immantinente. Pia beve. 死をもたらすグラスが 彼女の視線に 現れる、そして 彼女は それに 不安気に 手を伸ばす。ずっと 後ろに 留まっていた ウバルドが 動きを する、ほとんど 無意識に、彼女を 引き留めようと、しかし 即座に やめる。ピーアは 飲む。 |
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(Cantabile) 4/4 G major |
PIAピーア abbandonandosi a sedere座ろうと 身を投げ出して Ah! la pietade, o Ghino,ああ! 哀れみが、ああ ギーノよ、 l'ali impenni al tuo corso...君の 走ることに 羽を つけるように【≒ 哀れみによって 君が 【ネッロのもとへと】 急いで走って行くように】… e tu vieni, o crudel, deh vieniそして 君は 来なさい、ああ 残酷な人よ、お願いだから 来なさい a rasciugar d'un'infelice il pianto.不幸な者の涙を 拭いに。 |
Ah! la pietade, o Ghino, / l'ali impenni al tuo corso... この言葉は 第7番 ギーノとピーアの二重唱 でのギーノの台詞 Corro di Nello a spegnere / il rio furor mortale... 私は 急いで消しに 向かう ネッロの / 致命的な 悪意のある怒りを… を受けたもの。corso 走ること と correre 走る は近縁。 |
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Larghetto 4/4 D-flat major |
Sposo, ah! tronca ogni dimora...夫よ、ああ! どんな遅れも 切り落としなさい【≒ 遅れるでない】… al mio sen, deh! vola o Nello;私の胸に、お願いだから! 飛んで来なさい ああ ネッロよ; dimmi: t'amo... dillo, sposo, e dall'avello私に 言いいなさい: 私は 君を 愛している と… そのことを 言いなさい、夫よ、そうすれば 石棺から quest'accento mi torrà.この口調が【≒ その言葉が】 私を 救い出すだろう。 Ah! la Pia, se indugi ancoraああ! ピーアは、もし 君が まだ ぐずぐずしているならば preda fia d'acerba morte,つらい死の 犠牲に なるだろう。 Ed al bacio del consorteそして 配偶者のキスに più risponder non potrà,彼女は もう 応えることが できなくなるだろう vieni, o Nello, dimmi: t'amo... ah,来なさい、ああ ネッロよ、私に 言いなさい; 君を 愛している と…ああ、 dillo, ah, quest'accentoそのことを いいなさい、ああ、この口調が【≒ その言葉が】 dall'avello mi torrà.石棺から 私を 救い出すだろう。 vieni, ah, vieni, o Nello, vieni.来なさい、ああ、来なさい、ああ ネッロよ、来なさい。 |
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Allegro 4/4 f minor |
(Scena Ⅹ: Nello con seguaci e detti)(第10場: ネッロ 家来たちと共に そして 前の場の人たち) NELLOネッロ (in fondo)(奥で) Pia...ピーアよ… PIAピーア La voce...声が… NELLOネッロ (accorrendo)(駆けつけて) Sposa...妻よ… PIAピーア I miei fervidi sospiri,私の 燃え立った願い事を【≒ 私の 燃い 願いを】、 cielo udisti!...天が 聞き入れた!… è desso, è desso!...彼だ、彼だ!… NELLOネッロ Non vaneggio... tu respiri?私は うわ言を言っていない… 君は 息をしているのか? gioia immensa!...計り知れない 喜びだ!… PIAピーア Rea non sono...私は 邪悪な女では ない… NELLOネッロ Sì, m'è noto...そうだ、それは 私には よく知られている【≒ 私は それを よく分かっている】 s'inginocchia跪く Il tuo perdono...君の容赦を… PIAピーア lo alza彼を 立たせる Al mio sen...私の胸に… |
s'inginocchia 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では volendo inginocchiarsi 跪くことを 欲して lo alza 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では abbracciandolo 彼を 抱擁して |
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(Più allegro) 4/4 C major |
Gran Dio!... non reggo偉大な神よ!… 私は 耐えない all'eccesso del contento...満足の 行き過ぎに【≒ 私は あまりの喜びに 耐えられない】… tremo... agghiaccio... nulla... veggo...私は 震えている… 凍り付いている… 何も… 見【え】ない… NELLOネッロ Pia...ピーアよ… (adagiandola sopra lo scabello)(椅子の上に 彼女を 慎重に置いて【≒ ゆっくり 座らせて】) PIAピーア Nello...ネッロよ… Mancar mi sento...私は ぐったりするのを 感じている【≒ 気絶する】… NELLOネッロ (è compreso da un atroce sospetto; i suoi occhi si rivolgono ad Ubaldo, che in preda al suo terrore cerca d'involarsi)(彼は 恐ろしい疑いに 満たされる; 彼の目は ウバルドに 向けられる、その者は 彼の恐怖の餌食となって 消え去ろうと 努力する) Che facesti, sciagurato?君は 何を したのか、悪人よ? UBALDOウバルド (gettandogli innanzi ai piedi il di lui foglio)(彼の足元の前に 彼の書類を 放り投げる Surse il dì, né rivocato日が 日が【≒ 太陽が】 昇った、それでも 取り消されな fu quel cenno...かった あの指示は… NELLOネッロ (con orrenda ansietà)(恐ろしい 不安をもって) Ebben?...それで?… |
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4/4 A-flat major |
UBALDOウバルド (esitante)(ためらって) Le porsi...私は 彼女に 提供した… NELLOネッロ Parla, o crudo...言いなさい、ああ 残酷な男よ… s'ode un rumor di spade剣の物音が 聞こえる CORO合唱 I Guelfi!...グエルフィ党員たちだ!… NELLOネッロ Parla... parla, sciagurato....言いなさい… 言いなさい、邪悪な男よ… UBALDOウバルド Un veleno...毒を… NELLOネッロ grido叫ぶ Ah!...ああ! (Scena ultima: Rodrigo seguito da una schiera di Guelfi, e detti)(最終場: ロドリーゴ グエルフィ党員たちの部隊に ついて来られて) RODRIGOロドリーゴ (esce) Rodrigo e Seguaciロドリーゴと 家来たちは (出る【≒ 舞台に 現れる】) In tempo corsi, o suora,遅れずに 私は 駆けつけた、ああ 姉よ、 a salvarti...君を 救出しに… |
grido 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では Nello alza un grido disperato ネッロは 絶望の叫びを 上げる |
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Maestoso 4/4 f minor |
NELLOネッロ A vendicarla...彼女の 復讐をしに だ… io l'uccisi.私は 彼女を 殺した。 RODRIGOロドリーゴ Che!...なんだって!… NELLOネッロ Nel seno胸の中に ella chiude un rio veleno...彼女は 悪質な毒を 収納している… RODRIGOロドリーゴ Ah!...ああ!… (scagliandosi per trucidar Nello)ネッロを 惨殺しようと 飛び掛かって NELLOネッロ Ferisci.傷を負わせなさい。 PIAピーア (raccogliendosi le sue ultime forze, e cadendo a' piè di Rodrigo)(彼女の 最後の力を 自らに 集めて そして ロドリーゴの足元に崩れ落ちて) No... che fai?...いけない… 君は 何を しているのか? RODRIGOロドリーゴ Donna...婦人よ… PIAピーア No: colpa in lui non è...いいや:彼には 罪は ない… Sposa infida mi credea...彼は 私を 不実な妻だと 信じた… un rival credeva in te...彼は 君を 恋敵だと 信じた… (si volge ora allo sposo, ora al fratello nell'ambascia degli estremi aneliti)(時には 夫の方を 向き、時には 弟の方を 向く 最後の 苦しい息遣いの 呼吸困難の中で) RODRIGOロドリーゴ (resta immobile atteggiato d'estremo dolore)(不動のままでいる 極度の悲しみの表情をして) |
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Andante 4/4 D-flat major |
PIAピーア Ah! di Pia... che muore e gemeああ! ピーアへの… その者は 死ぬ そして 呻いている se pietà... vi scende in petto...もし 【ピーアへの】哀れみが… 君たちの胸の中に 降りる ならば… fine all'odio un santo affetto憎しみに 終わりを 聖なる情愛が l'alme vostre unisca ognor...君たちの魂を これからもずっと 結びつけるように… E per me versate insieme...そして 私のために 一緒に 流しなさい qualche lagrima... talor...いくらかの涙を… 時々… ah, per me versate insiemeああ、私のために 流しなさい 一緒に una lagrima d'amor... ah,愛の涙を… ああ、 per me versate insieme私のために 流しなさい 一緒に una lagrima tallor...涙を 時々… RODRIGO E NELLOロドリーゴ と ネッロ Ah...ああ… CORO合唱 La pietà mi spezza il cor!哀れみが 私の心を 粉々にしている! (Tutti piangono amaramente: la spada fugge di mano a Rodrigo. Nello si precipita fra le sue braccia: una lagrima di gioia spunta negli occhi di Pia)(全員が 悲痛な気持ちで 泣いている: 剣が ロドリーゴの手から 逃げる【≒ 滑り落ちる】。ネッロは 彼の腕の中に 身を投げる: 一粒の 喜びの涙が ピーアの目の中に 現れる【≒ 浮かぶ】) RODRIGOロドリーゴ Sorella mia...私の姉よ… NELLOネッロ Amata sposa...最愛の妻よ… PIAピーア Fratello... oh Nello,弟よ… ああ ネッロよ、 Nello mio...私のネッロよ… (si abbracciano Rodrigo e Nello)(ロドリーゴと ネッロは 抱き合う) Or la morte a cui son presso...今や 死は それの 傍に 私は いる… non ha... duolo... non ha spavento...【死は】 持っていない… 悲しみを… 恐怖を 持っていない… è un sorriso di... contento,それは【= 死は】 微笑だ… 満足【≒ 喜び】の、 è del giusto la mercé...それは 正しいことの褒美だ… Da quel caro... e santo... amplessoその 貴重な… そして 聖なる… 抱擁から incomincia... il ciel per me...私にとって 天国が… 始まる… sì, per me... incomincia il ciel per me,そうだ、私にとって… 私にとって 天国が 始まる、 ah, per me versate insiemeああ、私のために 流しなさい 一緒に una lagrima d'amor! ah,愛の涙を! ああ、 per me versate insieme私のために 流しなさい 一緒に una lagrima tallor...一粒の涙を 時々… |
Or la morte a cui son presso... essere presso alla morte で まさに息を引き取ろうとしていた という意味になる。 |
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Allegro 4/4 D-flat major |
RODRIGOロドリーゴ Pia!ピーアよ! PIAピーア Ah... ah... ahimè!ああ… ああ… ああ! spira息を引き取る NELLOネッロ Consorte!配偶者よ! CORO合唱 Ella è spenta; ma per lei彼女は 死んだ; けれども 彼女に対して non la tomba, il ciel s'aprì!墓ではなく、天国が 開くだろう! RODRIGO E NELLOロドリーゴ と ネッロ Agli occhi miei私の両目から fosco vel ricopre il dì!暗いヴェールが 日【≒ 陽の光】を 再び覆っている! |
spira 1837年 ヴェネツィアでの初演の際の出版台本では ella spira fra le loro braccio 彼女は 彼らの腕の中で 息を引き取る |
参考資料
Gaetano Donizetti / Pia de' Tolomei / Riduzione per canto e pianoforte condotta sull'Edizione Critica / Gabriele Dotto, Rodger Parker / RICORDI / 2009, Italy / ISBN 9788875928674 / ISMN 9790041388649
Le prime rappresentazioni delle opere di Donizetti nella stampa coeva / a cura di Annalisa Bini e Jeremy Commons / 1997 / Accademia Nazionale di Santa Cecilia
Donizetti / Guido Zavadini / Istituto Italiano d'Arti Grafiche / Bergamo / 1948
Donizetti and his Operas / William Ashbrook / 1982 / Cambridge University Press / ISBN 0521276632
CD
DYNAMIC |
Nello della PietraAndrew Schroederbaritone PiaPatrizia Ciofisoprano Rodrigo de' TolomeiLaura Polverellicontralto Ghino degli ArmieriDario Schmuncktenore PieroDaniel Borowskibasso BiceClara Politosoprano LambertoCarlo Cignibasso UbaldoFrancesco Melitenore Il custode della torre di sienaLuca Favarontenore Orchestra e Coro del Teatro La Fenice di Venezia Direttore del CoroEmanuela Di Pietro DirettorePaolo Arrivabeni RegistaChristian Gangneron CostumistaClaude Masson ScenografoThierry Leproust April 2005 Teatro La Fenice, Venezia, Italy |
CD |
Nello della PietraRoberto Servilebaritone PiaMajella Cullaghsoprano Rodrigo de' TolomeiManuela Custercontralto Ghino degli ArmieriBruce Fordtenore PieroMirco Palazzibasso BicePatrizia Bicciresoprano LambertoMarco Vincobasso UbaldoMark Wildetenore Il custode della torre di sienaChristopher Turnertenore Geoffrey Mitchell Choir London Philharmonic Orchestra ConductorDavid Parry October 2004 Hnery Wood Hall, London, UK |
2004年4月
CD |
Nello della PietraGiulio Fioravantibaritone PiaLella Cuberlisoprano Rodrigo de' TolomeiBenedetta Pecchiolimezzosoprano Ghino degli ArmieriRenzo Casellatotenore PieroAlfredo Zanazzobasso BiceMaria Minettosoprano LambertoFerruccio Mazzolibasso UbaldoCarlo Tuandtenore Il custode della torre di sienaIvan Del Mantotenore Orchestra Sinfonica e Coro di Milano della RAI DirettoreBruno Rigacci 3 October 1976 Milano, Italy |
1976年10月3日、RAIミラノによる放送用録音。2005年に放送局の音源を用いたCDが発売された。
これもブルーノ・リガッチが自身による校訂譜を用いて指揮しているが、ロドリーゴはメッゾソプラノを起用している。
CD |
Nello della PietraFranco Pagliazzibaritone PiaJolanda Meneguzzersoprano Rodrigo de' TolomeiRodolfo Malacarnecontralto Ghino degli ArmieriGiuseppe Barattitenore LambertoFranco Ventrigliabasso BiceMaria Grazia Ferrarinisoprano UbaldoAdriano Ferrariotenore Coro e Orchestra della Radiotelevisione della Svizzera Italiana Bruno Rigacci 10. 11 February 1968 Studio Auditorio RSI, Lugano, Swizzarland |
1968年2月10、11日に収録された放送用のステレオ録音。70分の放送枠に収めるため半分程度の抜粋で、少しばかりの語りで物語を説明している。
ピーアのメネグッツェルとはシエナと同じ。しかしネッロとギーノはこちらでは今一つ。それ以上に第1幕フィナーレがネッロの闖入からコンチェルタートまでで終わりストレッタを欠いているのは、放送時間の制約ゆえとはいえ、録音の価値を著しく下げている。
CD |
Nello della PietraWalter Albertibaritone PiaJolanda Meneguzzersoprano Rodrigo de' TolomeiFlorindo Andreollitenore Ghino degli ArmieriAldo Bottiontenore PieroFranco Ventrigliabasso BiceBarbara Testasoprano LambertoFranco Ventrigliabasso UbaldoParide Venturitenore Orchestra e Coro del Teatro Comunale di Bologna Maestro del CoroGaetano Riccitelli DirettoreBruno Rigacci 3 September 1967 Siena, Italy |
1967年9月3日、シエナでの近代蘇演のライヴ録音。ピーアのヨランダ・メネグッツェル 1929―2020 は1960年代を中心に活躍したイタリアのソプラノ。やや強めの声と劇的な表現で良く歌っているが、哀れなピーアのイメージにはあまり合っていない。最も良いのはギーノのアルド・ボッティオンだろう。ネッロのワルテル・アルベルティはだいぶ荒っぽい歌い方だが悪くはない。ロドリーゴをテノールのフロリンド・アンドレオッリが歌っている。
ブルーノ・リガッチの用意した上演譜については ⇒ 近代の上演 を。演奏は決して悪くないが、1967年のイタリアでのライヴ録音としては標準的な音質も今となっては物足りないもので、今日ではあまり価値のある録音とは言い難い。