クラウディウス(紀元前10−後54年、在位41‐54年)はローマ帝国の第4代の皇帝。彼は第3代皇帝カリグラの伯父です。カリグラの父であるゲルマニクスはクラウディウスの兄で、人気が高かったにもかかわらず急死してしまったのです(この兄の人気がクラウディウスが後に皇帝になった要因の一つです)。クラウディウス自身はほとんど政治的能力はなく(身体的に問題があったとか)、表舞台に出ることすらほとんどありませんでした。それがカリグラが暗殺された(41年)後、ユリウス・クラウディウス家の一員というただそれだけの理由で親衛隊に擁立され皇帝に据えられてしまったのです。それも50歳という歳で!ただ多大な人気を誇るカリスマ的な独裁者に見られる偏った政治というものは彼にはなく、結果として有能な側近をうまく使い、彼の治世は悪いものではなかったということです。
クラウディウスの欠点の1つは、妻や愛人のいいなりになるということでした。
彼の3番目の妻メッサリナは解放奴隷の役人(この一人にナルキッススがいます)らとやりたい放題だったようです。ガイウス・シリウスと重婚、彼を皇帝にしようとしたことでナルキッススらに殺害されました。
4番目の妻が、カリグラの妹、アグリッピナでした。これはクラウディウスにとっては近親婚(姪にあたる)だったのですが、法律を変えてまで結婚の許可をとっています。彼女はそれだけの絶世の美女だったと伝えられています。
アグリッピナは以前にルキウス・ドミティウス・アエノバブルスと結婚しており、彼との間に息子もいました。かの有名なネロ(37‐68年)です。しかしドミティウス・アエノバブルスはネロが幼い頃に亡くなっており、またアグリッピナ自身もカリグラと対立したことで島流にあっています。カリグラが暗殺されたことで、ようやくローマに戻れたのです。
さて、アグリッピナはネロを溺愛していました。そしてクラウディウスと結婚すると、息子をどうにかして皇帝の座に据えようと画策を始めます。クラウディウスにはメッサリナとの間にブリタニクスという後継者になるべき実の息子がいたのですが、アグリッピナはネロとクラウディウスの娘オクタヴィアを結婚させ、ネロをクラウディウスの養子にすることで後継者にし、加えて他の有力なライヴァルたちをことごとく追放してしまいます。
しかし後継者とはいえども、皇帝の座についたわけではありません。アグリッピナはすぐにでもネロを皇帝にさせたかったのです。現皇帝クラウディウスですら、アグリッピナにとってはネロの妨害者に写ったのでしょう。54年10月13日、クラウディウスは好物のキノコを食べた後突然具合が悪くなり急死してしまいます。一般的にはアグリッピナが毒キノコ中毒にみせかけて毒を盛ったとされています。
16歳にして皇帝になったネロに、当然のように母が後見人として政治の実権を握ります。しかしやがてネロが自分で政治を行おうとするようになると、彼は母と対立します(アグリッピナがネロを手中に置くため母子姦淫を行ったという伝説も有名)。自分が疎んじられていると気付いたアグリッピナは、こんどはかつて自分が退けたクラウディウスの実子ブリタニクスを擁立、これにネロは激怒、ブリタニクスを毒殺、さらに母アグリッピナにも皇帝暗殺の嫌疑をかけ、59年殺しています(この辺から有名な暴君振りが現れてくるわけです)。
さて、ネロはアグリッピナの画策でオクタヴィアと結婚したわけですが、彼女との夫婦関係は当初から良いものではなかったようです。ネロは幼い頃からの友人であるマルクス・サルヴィウス・オト(32‐69年)の妻ポッパエアに恋をします。ポッパエアも野心家だったようで、ネロとの結婚を望みます。まずネロとオクタヴィアを離縁させる必要があります。ポッパエアはオクタヴィアの不義をでっちあげたようで、ネロはそれを口実に彼女を南イタリアに追放、さらに別件で島流しにし、62年に処刑させています。そして彼女はネロと正式に結婚するのです。
ポッパエアは65年7月に急死します。妊娠中の彼女を、帰宅が遅いとネロが蹴っ飛ばして殺してしまったというのが一般的な説ですが、ネロの悪行は誇張されすぎていますので、これも果たして事実かどうか。
ネロが68年6月9日に、30歳で自害に追いこまれたことは有名。
さて、妻ポッパエアを奪われたオト(もっとも彼が権力を狙ってポッパエアをネロに近づけたとも、もともとネロが目をつけたポッパエアと形だけの結婚をさせられたのに彼女を独占したのでネロに疎まれたとも言われていますので、話は単純ではありません)は、ネロによってルシタニア(現在のポルトガル辺り)の総督に追いやられます。ここで彼は10年間を過ごします。しかし彼はその後、ネロの次の皇帝ガルバを倒し皇帝の座につきます。彼はネロの再来として人気がありましたが、ゲルマニアの駐留軍を率いるウィテリウスとの内戦に破れ自害します。
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